JP5628120B2 - 発光素子モジュール - Google Patents

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Description

本発明は、フォトダイオードを内蔵するサブマウントに発光素子を搭載した発光素子モジュールに関する。
1つの先行技術に係るレーザモジュールは、たとえば、特許文献1に開示されている。
特許文献1の図1に開示されたレーザモジュールは、平面視矩形状のサブマウントと、サブマウント上に実装されたレーザチップと、サブマウントにおけるレーザチップが設置された部分の後方に設置されたフォトダイオード(PD)部とを備えている。つまり、サブマウントは、いわゆるPD付サブマウントである。
特開2004−327608号公報
本発明の目的は、温度変化および発光素子の発光波長の変化に起因するフォトダイオードの受光感度の変動幅を小さくすることができるフォトダイオード内蔵サブマウントを備える発光素子モジュールを提供することである。
本発明の発光素子モジュールは、フォトダイオード領域を有する半導体からなるサブマウントと、前記フォトダイオード領域に隣り合う発光素子領域において、前記サブマウントの表面に固定され、−10℃〜90℃の温度範囲で発光波長が変動するレーザダイオードと、前記サブマウントを用いて形成され、前記フォトダイオード領域における前記サブマウントの表面部に配置され、前記サブマウントの前記表面からなる受光面を形成する1μm〜5μmの深さを有する第1導電型層と、前記第1導電型層の直下で前記第1導電型層と対向するように配置された第2導電型領域とを有し、前記レーザダイオードが出射した光を当該受光面から受け入れて光電流に変換するフォトダイオードとを含み、前記フォトダイオードの光電流が最大となるときのピーク受光波長が、前記レーザダイオードの前記温度範囲における発光波長の最小値以上、最大値以下であり、前記レーザダイオードは、レーザ出射端面および当該レーザ出射端面に対向する反対側端面を有し、前記反対側端面が前記受光面に対向する姿勢で配置されており、前記フォトダイオードは、発光波長が790nm〜845nmのレーザダイオードが出射した光を受け入れるものであり、前記第1導電型層から発生する空乏層の厚さが、20μm〜45μmであることを特徴としている。
また、本発明の発光素子モジュールでは、前記フォトダイオードのピーク受光波長が、前記温度範囲におけるレーザダイオードの発光波長の中央値の±5%以内であることが好適である
た、本発明の発光素子モジュールでは、前記フォトダイオードは、前記第1導電型層と前記第2導電型領域との間に介在されたi型半導体層を含むことが好適である。
また、本発明の発光素子モジュールでは、前記第2導電型領域は、前記第1導電型層の周囲および下方を取り囲み、前記サブマウントの前記表面の一部を形成していることが好適である。
また、本発明の発光素子モジュールでは、前記フォトダイオードは、前記第1導電型層に接続された第1電極および前記第2導電型領域に接続された第2電極を含み、前記第1電極および前記第2電極は、前記サブマウントの前記表面側に形成されていることが好適である。
また、本発明の発光素子モジュールでは、前記サブマウントが、Siからなることが好適である
本発明によれば、フォトダイオードの光電流が最大となるときのピーク受光波長が、発光素子の、−10℃〜90℃の温度範囲で変動する範囲の発光波長の最小値以上、最大値以下である(発光波長の最小値≦ピーク受光波長≦発光波長の最大値)。
フォトダイオードの光電流と受光波長との間には、受光波長の増加に伴い光電流も増加し、受光波長がある値のときに光電流が最大となり(このときの波長をピーク受光波長という。)、その後は、受光波長の増加に伴い光電流は減少するとの関係がある。
そのため、本発明のように、発光波長の最小値≦ピーク受光波長≦発光波長の最大値であれば、光電流の大きさが、その最大値となるピーク受光波長を境に、短波長側および長波長側に振り分けられる。したがって、当該発光波長の範囲における光電流の最大値と最小値との差を小さくすることができる。その結果、温度変化に起因して発光素子の発光波長が所定の範囲で変動しても、フォトダイオードの受光感度の変動幅を小さくすることができる。
図1は、本発明の一実施形態に係るレーザモジュールの模式的な平面図である。 図2は、図1のレーザモジュールの模式的な断面図であって、図1の切断線A−Aでの断面を示している。 図3は、レーザモジュールにおけるフォトダイオードの役割を説明するための図である。 図4は、一般的なフォトダイオードの温度特性を示すグラフである。 図5は、温度とSiのバンドギャップとの関係を示すグラフである。 図6は、空乏層の厚さWとフォトダイオードの光吸収率との関係を示すグラフである。 図7は、フォトダイオードの温度特性の改善結果を示すグラフである。 図8(a)(b)は、フォトダイオードの光電流の波長温度依存性を説明するためのグラフであって、図8(a)は半導体レーザダイオードの発光波長の温度特性を示すグラフであり、図8(b)はフォトダイオードの分光感度特性を示すグラフである。 図9(a)(b)(c)は、フォトダイオードの分光感度特性を示すグラフであって、図9(a)がピーク受光波長<発光波長の最小値の場合、図9(b)が発光波長の最小値≦ピーク受光波長≦発光波長の最大値の場合、図9(c)が発光波長の最大値<ピーク受光波長の場合をそれぞれ示している。 図10は、空乏層の厚さWの変化に伴う、フォトダイオードの分光感度特性の変化を説明するためのグラフである。 図11は、PD−p型半導体層の深さDの変化に伴う、フォトダイオードの分光感度特性の変化を説明するためのグラフである。 図12は、実施例のフォトダイオードの分光感度特性を示すグラフである。 図13は、実施例のフォトダイオードの温度特性を示すグラフである。
図1は、本発明の一実施形態に係るレーザモジュール1の模式的な平面図である。
発光素子モジュールとしてのレーザモジュール1は、たとえば熱アシスト方式の磁気ヘッドスライダに取り付けられるものである。
レーザモジュール1は、互いに隣り合う発光素子領域としてのレーザダイオード領域2およびフォトダイオード領域3を有し、平面形状が四角形状のサブマウント4と、レーザダイオード領域2に設けられた半導体レーザダイオード5と、フォトダイオード領域3に設けられたフォトダイオード6とを含む。サブマウント4は、図1の紙面における上下左右方向の長さがそれぞれ0.5mm以上である。
レーザダイオード領域2におけるサブマウント4の表面7にはLDアノードパッド8が形成されており、このLDアノードパッド8上に半導体レーザダイオード5が固定されている。半導体レーザダイオード5は、レーザ出射端面9(前端面)および当該レーザ出射端面9に対向する反対側端面10(後端面)を有する端面発光型レーザであり、反対側端面10がフォトダイオード領域3に対向するように配置されている。
半導体レーザダイオード5は、レーザ出射端面9から外部へ出力光としてのレーザ光を出射し、反対側端面10からフォトダイオード領域3へモニタ光としてのレーザ光を出射する。半導体レーザダイオード5は、たとえば、InP系、GaAs系、GaN系などの通信用、光学系ディスクストレージ用または材料分析用として用いられるものが使用可能である。また、出射されるレーザ光の発光波長は特に限定されないが、通常、375nm〜1.7μmであり、とりわけ790nm〜845nmの発光波長が好適に用いられる。
一方、フォトダイオード領域3におけるサブマウント4の表面7には、フォトダイオード6の受光面11が露出している。この受光面11は、半導体レーザダイオード5の反対側端面10に対向している。フォトダイオード6は、当該反対側端面10から出射されたレーザ光を受光面11で受け、光電流に変換する。
サブマウント4の表面7において半導体レーザダイオード5の側方には、LDアノード電極12、第1電極としてのPDアノード電極13および第2電極としてのPDカソード電極14が形成されている。LDアノード電極12と、PDアノード電極13およびPDカソード電極14とは、半導体レーザダイオード5を挟むように配置されている。つまり、LDアノード電極12は、半導体レーザダイオード5に対して同じ側(一方側)に配置され、PDアノード電極13およびPDカソード電極14は、半導体レーザダイオード5を挟んでLDアノード電極12の反対側(他方側)に配置されている。
また、LDアノード電極12は、配線15を介してLDアノードパッド8に接続されている。PDアノード電極13は、配線16およびコンタクト17を介して、フォトダイオード6の受光面11の一部(後述するPD−p型半導体層36)に接続されており、PDカソード電極14は、コンタクト18を介して、サブマウント4(後述するPD−n型半導体層35)に接続されている。
次に、図2を参照して、レーザモジュール1の断面構造を詳細に説明する。
図2は、図1のレーザモジュール1の模式的な断面図であって、図1の切断線A−Aでの断面を示している。なお、図2は、都合上、図1とは異なる縮尺で描かれている。
まず、レーザモジュール1の土台をなすサブマウント4は、この実施形態では、n型のSi基板からなり、その表面7がSiOからなる表面絶縁膜19で被覆されている。前述のLDアノードパッド8、LDアノード電極12、PDアノード電極13およびPDカソード電極14は、表面絶縁膜19の上に設けられている。PDアノード電極13およびPDカソード電極14は、表面絶縁膜19を貫通するコンタクト17,18を介して、後述するPD−p型半導体層36およびPD−n型半導体層35にそれぞれ接続されている。これらの電極が表面絶縁膜19上に設けられているので、電極(パッド)間を互いに絶縁することができる。
半導体レーザダイオード5は、基板20と、基板20上に結晶成長によって形成されたIII−V族半導体積層構造21と、基板20の裏面(III−V族半導体積層構造21と反対側の表面)に接触するように形成されたn型電極22と、III−V族半導体積層構造21の表面に接触するように形成されたp型電極23とを備えたファブリペロー型のものである。この半導体レーザダイオード5は、基板20と反対側のp型電極23を下方に向けたフェイスダウン姿勢で、当該p型電極23をサブマウント4の表面7上のLDアノードパッド8に、はんだ等を用いて接合することにより、サブマウント4に固定されている。なお、半導体レーザダイオード5のボンディング形態は、フェイスダウン姿勢に限らず、たとえば、フェイスアップ姿勢であってもよい。
基板20は、この実施形態では、n型GaAs単結晶基板で構成されている。この基板20の主面上における結晶成長によって、III−V族半導体積層構造21が形成されている。
III−V族半導体積層構造21は、発光層24と、LD−n型半導体層25と、LD−p型半導体層26とを備えている。LD−n型半導体層25は発光層24に対して基板20側に配置されており、LD−p型半導体層26は発光層24に対してp型電極23側に配置されている。こうして、発光層24が、LD−n型半導体層25およびLD−p型半導体層26によって挟持されていて、ダブルヘテロ接合が形成されている。発光層24には、LD−n型半導体層25から電子が注入され、LD−p型半導体層26から正孔が注入される。これらが発光層24で再結合することにより、光が発生するようになっている。
LD−n型半導体層25は、基板20側から順に、n型InGaAlPクラッド層27、n型InGaAlPガイド層28を積層して構成されている。一方、LD−p型半導体層26は、発光層24の上に、順に、p型InGaAlPガイド層29、p型InGaAlPクラッド層30、p型電極下地層31を積層して構成されている。
n型InGaAlPクラッド層27およびp型InGaAlPクラッド層30は、発光層24からの光をそれらの間に閉じ込める光閉じ込め効果を生じるものである。n型InGaAlPクラッド層27は、InGaAlPに、たとえばn型ドーパントとしてのSiをドープすることによってn型半導体とされている。また、p型InGaAlPクラッド層30は、InGaAlPに、たとえばp型ドーパントとしてのMgをドープすることによってp型半導体とされている。n型InGaAlPクラッド層27は、n型InGaAlPガイド層28よりもバンドギャップが広く、p型InGaAlPクラッド層308は、p型InGaAlPガイド層29よりもバンドギャップが広い。これにより、良好な閉じ込めを行うことができ、低閾値および高効率の半導体レーザダイオード5を実現できる。
n型InGaAlPガイド層28およびp型InGaAlPガイド層29は、発光層24にキャリア(電子および正孔)を閉じ込めるためのキャリア閉じ込め効果を生じる半導体層であり、かつ、クラッド層とともに、発光層24への光閉じ込め構造を形成している。これにより、発光層24における電子および正孔の再結合の効率が高められるようになっている。n型InGaAlPガイド層28は、InGaAlPに、たとえばn型ドーパントとしてのSiをドープすることによりn型半導体とされており、p型InGaAlPガイド層29は、InGaAlPに、たとえばp型ドーパントとしてのMgをドープすることによってp型半導体とされている。
発光層24は、たとえばMQW(多重量子井戸:multiple-quantum well)構造を有しており、電子と正孔とが再結合することにより光が発生し、その発生した光を増幅させるための層である。
発光層24は、この実施形態では、InGaP層からなる量子井戸層とInGaAlP層からなる障壁層(バリア層)とを交互に複数周期繰り返し積層して構成された多重量子井戸(InGaP/InGaAlP)構造を有している。
III−V族半導体積層構造21は、劈開により形成された鏡面からなる一対の端面9,10(劈開面)を有している。この一対の端面(レーザ出射端面9および反対側端面10)は、互いに平行である。これらの端面9,10は、全反射による発振を励起するために、たとえばZrOからなる端面絶縁膜32,33(反射層)によって被覆されている。発光中心34は、前面側の端面絶縁膜32の発光層24の位置に存在する。
こうして、n型InGaAlPガイド層28、発光層24およびp型InGaAlPガイド層29によって、端面9,10を共振器端面とするファブリペロー共振器が形成されている。すなわち、発光層24で発生した光は、レーザ出射端面9と反対側端面10との間を往復しながら、誘導放出によって増幅される。そして、増幅された光の一部が、レーザ出射端面9から外部へ出力光として、反対側端面10からフォトダイオード領域3へモニタ光として素子外に取り出される。
n型電極22およびp型電極23は、たとえばAuまたはAu合金からなり、それぞれ基板20およびp型電極下地層31にオーミック接続されている。
このような構成によって、n型電極22およびp型電極23を電源に接続し、LD−n型半導体層25およびLD−p型半導体層26から電子および正孔を発光層24に注入することによって、この発光層24内で電子および正孔の再結合を生じさせ、発光波長790nm〜845nmの光を発生させることができる。この光は、レーザ出射端面9と反対側端面10との間をガイド層に沿って往復しながら、誘導放出によって増幅される。そして、レーザ出射端面9から、より多くのレーザ出力が外部に取り出されることになる。
ここで、この実施形態のように、半導体レーザダイオード5をフェイスダウン姿勢でサブマウント4に接合する理由は次のとおりである。一般に、端面発光型の半導体レーザダイオード5では、発光層24は半導体レーザダイオード5の積層方向で見たときにn型電極22よりもp型電極23に近い位置にある。したがって、動作時の発熱量が最も多い発光層24により近いp型電極23を底面として(ジャンクションダウン)、半導体レーザダイオード5をサブマウント4に搭載することによって、半導体レーザダイオード5の自己発熱を効率的に放熱することができる。
また、半導体レーザダイオード5は半導体素子であるため、同じ電力を投入しても、素子のばらつきにより出力されるレーザ光の強度が大きく変化する。そこで、磁気ヘッドが組み込まれたハードディスク装置の初期設定を行う際に、レーザ光の出力が適正となる電力を求め、以後の作動時には初期設定で求められた電力を半導体レーザダイオード5に供給することが好ましい。半導体レーザダイオード5においては、発光層24の発光中心34と反対側端面10からも、図2に破線で示すようにレーザ光が出射するため、このレーザ光の強度を検出することで、発光中心34から出射するレーザ光(出力光)の強度を評価することが可能である。
そこで、出力光の強度を検出するため、レーザモジュール1は、サブマウント4にフォトダイオード6を内蔵している。
内蔵されたフォトダイオード6は、フォトダイオード領域3におけるサブマウント4(Si基板)からなる第2導電型領域としてのPD−n型半導体層35と、PD−n型半導体層35の表面部にウェル状に形成された第1導電型層としてのPD−p型半導体層36と、PD−n型半導体層35とPD−p型半導体層36との間に挟まれた、不純物濃度の低いPD−i型半導体層37とを含む。PD−n型半導体層35およびPD−p型半導体層36には、不純物が高濃度でドープされている。
PD−p型半導体層36は、サブマウント4の表面7からなる受光面11を形成しており、この受光面11は、反射防止膜38で被覆されている。また、受光面11から測定されたPD−p型半導体層36の深さDは、たとえば、1μm〜5μmである。
そして、このPD−p型半導体層36の周囲および下方を取り囲み、サブマウント4の表面7の一部を形成するようにPD−i型半導体層37が形成されており、さらに、PD−i型半導体層37の周囲および下方を取り囲み、サブマウント4の表面7の一部を形成するようにPD−n型半導体層35が形成されている。サブマウント4の表面7を形成するPD−i型半導体層37およびPD−n型半導体層35は、表面絶縁膜19により被覆されている。
また、受光面11から測定されたPD−i型半導体層37の深さDは、たとえば、10μm〜50μmである。
PD−p型半導体層36とPD−i型半導体層37との界面からは空乏層39が発生している。その空乏層39の厚さW(サブマウント4の表面7からの深さ)は、20μm〜45μmであることが好ましい。
このような構成によって、PD−i型半導体層37のバンドギャップよりも大きなエネルギを有する光子が半導体レーザダイオード5の反対側端面10から、790nm〜845nmの発光波長のモニタ光として照射されると、光吸収により電子・正孔対がPD−i型半導体層37に発生する。フォトダイオード6のPDアノード電極13とPDカソード電極14との間に逆バイアス電圧を印加しておくと、電子と正孔とが電界によってそれぞれ逆方向に掃引されて、電子はPD−n型半導体層35に向かって、正孔はPD−p型半導体層36に向かって移動し、光電流が発生する。
以上の説明したレーザモジュール1によれば、フォトダイオード6の光電流が最大となるときのピーク受光波長が、半導体レーザダイオード5の発光波長の最小値以上、最大値以下である(発光波長の最小値≦ピーク受光波長≦発光波長の最大値)。たとえば、この実施形態では、790nm≦ピーク受光波長≦845nmである。
フォトダイオード6の光電流と受光波長との間には、受光波長の増加に伴い光電流も増加し、受光波長がある値のときに光電流が最大となり(このときの波長をピーク受光波長という。)、その後は、受光波長の増加に伴い光電流は減少するとの関係がある。
そのため、発光波長の最小値≦ピーク受光波長≦発光波長の最大値であれば、光電流の大きさが、その最大値となるピーク受光波長を境に、短波長側および長波長側に振り分けられる。したがって、当該発光波長の範囲における光電流の最大値と最小値との差を小さくすることができる。その結果、温度に起因して発光素子の発光波長が所定の範囲で変動しても、フォトダイオード6の受光感度の変動幅を小さくすることができる。
このような本発明の効果について、以下の実施例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
まず図3に示すように、レーザモジュール1に搭載されたフォトダイオード6は、半導体レーザダイオード(LD)5の反対側端面10から出射されたレーザ光(モニタ光)を、その内部で光電流に変換し、この光電流をモニタ電流として集積回路(IC)40へ送る。
集積回路40では、フォトダイオード6から受けるモニタ電流の大きさに基づいて、半導体レーザダイオード5のレーザ出射端面9から出射されるレーザ光(出力光)の発光量を検知する。そして、その検知量に基づいて、半導体レーザダイオード5の出力光を一定に保持するために、半導体レーザダイオード5の発光量をコントロールする。
そのため、このようなフィードバック制御を精度よく行うには、周囲に温度変化等の環境変化が起きてもフォトダイオード6の受光感度を一定に保持できるようにし、同じ発光量であるのに、フォトダイオード6から集積回路40へ送られる光電流の大きさが受光感度の変動に伴って変動しないようにする必要がある。つまり、ある発光量のレーザ光が出射されている場合は、当該発光量に対応する一定の光電流が集積回路40に送られることが好ましい。
ここで、受光感度とは、フォトダイオード6に入射する光のエネルギと光電流の電気信号の変換効率を示す値のことであって、具体的には、フォトダイオード6の光子(フォトン)1個が入ったときに取り出すことができる電子・正孔対の割合のことである。
図4は、一般的なフォトダイオードの温度特性を示すグラフである。
図4に示すように、一般的なフォトダイオードの受光感度は、正の温度係数を有しており、たとえば、温度が25℃のときの受光感度を100%とすると、温度が25℃よりも大きくなるに伴って大きくなる。そのため、レーザモジュール1のように、半導体レーザダイオード5の放熱板の役割も果すサブマウント4を用いてフォトダイオード6が形成されており、半導体レーザダイオード5の出力(発熱)によってサブマウント4の温度が上昇する環境下では、半導体レーザダイオード5の出力に伴って発生する熱が、サブマウント4を介してフォトダイオード6に伝わるので、温度との関係において、フォトダイオード6の受光感度を一定に保持することが難しい。
そこで、本発明者は、フォトダイオード6の受光感度が正の温度係数を有する要因を検討したところ、その要因が、フォトダイオード6のベースがSi基板(サブマウント4)であることを見出し、その改善策を見出した。
つまり、図5に示すように、Siのバンドギャップは、温度の増加に伴って小さくなる。フォトダイオード6では、PD−i型半導体層37のバンドギャップよりも大きなエネルギを有する光子が照射されたときに光吸収が起きるので、そうすると、サブマウント4の温度上昇に伴ってSiのバンドギャップが小さくなって光吸収が起き易くなれば、結果として、電子・正孔対の発生割合が増えて、フォトダイオード6の受光感度が増加することとなる。
このような受光感度の温度特性を改善する(つまり、受光感度を温度に関係なく一定にする)には、たとえば、25℃における受光感度に対する、温度T℃における受光感度の変化量で示される温度変化率(%)(=感度変化量/25℃の受光感度)を小さくして、温度がいくら高温や低温になっても、25℃の受光感度を保持できるようにすればよい。
図6を参照すると、25℃の受光感度(25℃時)と、25℃よりも高温になったときの受光感度(高温時)とを比べると、両者とも空乏層39の厚さWの増加に伴って、その光吸収率が増加しているが、空乏層39の厚さWが薄いと(たとえば、15μm程度)では、光吸収率に10%程度の差が生じている。一方で、この光吸収率の差は、W=15μm付近をピークに、厚さWの増加に伴って縮小していき、W=30μm以上ではほとんどなくなっている。
そこで、空乏層の厚さW=45μmとなる条件でフォトダイオード6を作製したところ、フォトダイオード6の受光感度の温度特性を大幅に改善することができた。結果を図7に示す。すなわち、図7に示すように、光吸収率がほぼ100%となる条件(空乏層の厚さW=45μm)のフォトダイオード6であれば、温度がいくら変動しても、受光感度をほぼ一定に保持することができた。
しかしながら、フォトダイオード6の受光感度は、温度だけでなく、受光面11へ入射されるレーザ光の波長(受光波長)にも依存しており、そのレーザ光を出射する半導体レーザダイオード5の発光波長は、温度により影響を受ける。具体的には、図8(a)(b)に示すとおりである。
図8(a)に示すように、半導体レーザダイオード5の発光波長が温度の増加に伴って大きくなり、実施例では、0.3nm/℃の波長変化があった。一方、フォトダイオード6の受光感度が受光波長の変化に伴ってどのように変化するのかを調べたところ、図8(b)に示すように、ある一定の波長のときにピーク値(最大値)を持つ放物線状に変化することを確認できた。
したがって、フォトダイオード6の受光感度の温度特性を改善するには、温度変化による半導体レーザダイオード5の波長変化を含めた、トータルでの検討が必要である。
レーザ光の波長依存を適正にすべく、本発明者は、半導体レーザダイオード5の波長とフォトダイオード6のピーク波長との関係を3つの場合で考えた。具体的には、25℃における半導体レーザダイオード5の波長範囲を、その温度変化の影響も考慮して790nm〜845nmと設定し、(1)ピーク受光波長<発光波長の最小値、(2)発光波長の最小値≦ピーク受光波長≦発光波長の最大値、(3)発光波長の最大値<ピーク受光波長の3パターンに分けた。(1)〜(3)のパターンを、図9(a)〜図9(c)にそれぞれ示す。図9(a)〜図9(c)において、半導体レーザダイオード5の波長範囲にハッチングを施している。
まず、図9(a)および図9(c)の場合では、光電流の大きさが半導体レーザダイオード5の波長範囲において、減少し続けるか(図9(a))、上昇し続けている(図9(c)。そのため、光電流の最大値と最小値との差が大きくなり、結果として、フォトダイオード6の受光感度のばらつきが大きくなる。
これに対し、図9(b)の場合のように、発光波長の最小値≦ピーク受光波長≦発光波長の最大値とすれば、光電流の大きさが、その最大値となるピーク受光波長(820nm付近)を境に、短波長側および長波長側に振り分けられるため、当該発光波長の範囲における光電流の最大値と最小値との差が小さくなることを確認できた。つまり、図9(b)に示した条件を設定することにより、半導体レーザダイオード5の波長変動による影響が小さくなることを確認できた。とりわけ、フォトダイオード6のピーク受光波長が、半導体レーザダイオード5の発光波長の中央値の±5%以内であることが好適であることを確認した。
さらに本発明者は、図6および図7に示したように、空乏層39の厚さWは、フォトダイオード6の温度変化率を小さくする観点から、20μm〜45μmにすることが好適であることを見出したが、厚さWがこの範囲では、図10に示すように、フォトダイオード6の受光ピーク波長が長波長側にシフトし、ピークが尖って、発光波長範囲での平坦性が損なわれるため、さらなる改善策を検討した。
なお、図10では、PD−p型半導体層36(p層)の深さDを6μmに統一し、空乏層39の厚さWを18μm、30μmおよび45μmの3パターンについて、ピーク受光波長の変化を調べた。
そして、これら3パターンのうち、フォトダイオード6の温度変化率の縮小効果を享受できる30μmの場合について、PD−p型半導体層36の深さDを2μm、6μmの2パターンに分けて、フォトダイオード6のピーク受光波長がどのように変化するのかを調べたところ、PD−p型半導体層36の深さDを浅く(薄く)すれば、短波長側の光吸収率が上昇して、ピーク受光波長付近の形状が平坦化できることを確認できた。結果を図11に示す。
このような検討の結果、空乏層39の厚さW=30μm、PD−p型半導体層36の深さD=2μmのフォトダイオード6を備えるレーザモジュール1を作製し、その分光感度を調べた結果、図12に示すように、810nm付近をピークに緩やかな分光感度曲線が得られた。
そして、このレーザモジュール1のフォトダイオード6の温度特性を調べた結果、周波数特性を掛け合わせても、図13に示すように平坦化された温度特性が得られることを確認できた。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はさらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、フォトダイオード6において、各半導体部分の導電型を反転した構成が採用されてもよい。たとえば、p型の部分がn型であり、n型の部分がp型であってもよい。また、i型半導体層は省略することもできる。
また、サブマウント4は、その全体が同じ導電型の半導体からなっている必要はなく、たとえば、フォトダイオード領域3のみにn型の領域が形成された基板であってもよい。
また、サブマウント4に搭載する発光素子は、半導体レーザダイオード5に限らず、発光ダイオード(LED)であってもよい。その場合、発光ダイオードは、光取出し面が上方に向く姿勢で配置されることが好ましい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
また、この明細書および図面の記載から、抽出される参考発明の特徴を以下に示す。
参考発明のフォトダイオード内蔵サブマウントは、フォトダイオード領域を有する半導体からなるサブマウントであって、前記サブマウントを用いて形成され、前記フォトダイオード領域における前記サブマウントの表面部に配置され、前記サブマウントの表面からなる受光面を形成する第1導電型層と、前記第1導電型層の直下で前記第1導電型層と対向するように配置された第2導電型領域とを有し、発光素子が出射した光を当該受光面から受け入れて光電流に変換するフォトダイオードとを含み、前記フォトダイオードの光電流が最大となるときのピーク受光波長が、前記発光素子の発光波長の最小値以上、最大値以下であることを特徴としている。
また、参考発明のフォトダイオード内蔵サブマウントでは、前記フォトダイオードのピーク受光波長が、前記発光素子の発光波長の中央値の±5%以内であることが好適である。
また、参考発明のフォトダイオード内蔵サブマウントでは、前記フォトダイオードは、発光波長が790nm〜845nmの発光素子が出射した光を受け入れるものであり、前記第1導電型層から発生する空乏層の厚さが、20μm〜45μmであることが好適である。
また、参考発明のフォトダイオード内蔵サブマウントでは、前記第1導電型層の深さが、1μm〜5μmであることが好適である。
また、参考発明のフォトダイオード内蔵サブマウントでは、前記フォトダイオードは、前記第1導電型層と前記第2導電型領域との間に介在されたi型半導体層を含むことが好適である。
また、参考発明のフォトダイオード内蔵サブマウントでは、前記第2導電型領域は、前記第1導電型層の周囲および下方を取り囲み、前記サブマウントの前記表面の一部を形成していることが好適である。
また、参考発明のフォトダイオード内蔵サブマウントでは、前記フォトダイオードは、前記第1導電型層に接続された第1電極および前記第2導電型領域に接続された第2電極を含み、前記第1電極および前記第2電極は、前記サブマウントの前記表面側に形成されていることが好適である。
また、参考発明のフォトダイオード内蔵サブマウントでは、前記サブマウントが、Siからなることが好適である。
また、参考発明の発光素子モジュールは、参考発明のフォトダイオード内蔵サブマウントと、前記フォトダイオード領域に隣り合う部分に発光素子領域において、前記サブマウントの前記表面に固定された発光素子とを含むことを特徴としている。
また、参考発明の発光素子モジュールでは、前記発光素子は、レーザ出射端面および当該レーザ出射端面に対向する反対側端面を有するレーザダイオードを含み、前記レーザダイオードは、前記反対側端面が前記受光面に対向する姿勢で配置されていることが好適である。
また、参考発明の発光素子モジュールでは、前記発光素子は、光取出し面を有する発光ダイオードを含み、前記発光ダイオードは、前記光取出し面が上方に向く姿勢で配置されていることが好適である。
参考発明によれば、フォトダイオードの光電流が最大となるときのピーク受光波長が、発光素子の発光波長の最小値以上、最大値以下である(発光波長の最小値≦ピーク受光波長≦発光波長の最大値)。
フォトダイオードの光電流と受光波長との間には、受光波長の増加に伴い光電流も増加し、受光波長がある値のときに光電流が最大となり(このときの波長をピーク受光波長という。)、その後は、受光波長の増加に伴い光電流は減少するとの関係がある。
そのため、参考発明のように、発光波長の最小値≦ピーク受光波長≦発光波長の最大値であれば、光電流の大きさが、その最大値となるピーク受光波長を境に、短波長側および長波長側に振り分けられる。したがって、当該発光波長の範囲における光電流の最大値と最小値との差を小さくすることができる。その結果、温度変化に起因して発光素子の発光波長が所定の範囲で変動しても、フォトダイオードの受光感度の変動幅を小さくすることができる。
1 レーザモジュール
2 レーザダイオード領域
3 フォトダイオード領域
4 サブマウント
5 半導体レーザダイオード
6 フォトダイオード
7 (サブマウントの)表面
8 LDアノードパッド
9 レーザ出射端面
10 反対側端面
11 受光面
12 LDアノード電極
13 PDアノード電極
14 PDカソード電極
15 (LDアノードの)配線
16 (PDアノードの)配線
17 (PDアノードの)コンタクト
18 (PDカソードの)コンタクト
19 表面絶縁膜
20 基板
21 III−V族半導体積層構造
22 n型電極
23 p型電極
24 発光層
25 LD−n型半導体層
26 LD−p型半導体層
27 n型InGaAlPクラッド層
28 n型InGaAlPガイド層
29 p型InGaAlPガイド層
30 p型InGaAlPクラッド層
31 p型電極下地層
32 (前面側の)端面絶縁膜
33 (後面側の)端面絶縁膜
34 発光中心
35 PD−n型半導体層
36 PD−p型半導体層
37 PD−i型半導体層
38 反射防止膜
39 空乏層
40 集積回路

Claims (6)

  1. フォトダイオード領域を有する半導体からなるサブマウントと、
    前記フォトダイオード領域に隣り合う発光素子領域において、前記サブマウントの表面に固定され、−10℃〜90℃の温度範囲で発光波長が変動するレーザダイオードと、
    前記サブマウントを用いて形成され、前記フォトダイオード領域における前記サブマウントの表面部に配置され、前記サブマウントの前記表面からなる受光面を形成する1μm〜5μmの深さを有する第1導電型層と、前記第1導電型層の直下で前記第1導電型層と対向するように配置された第2導電型領域とを有し、前記レーザダイオードが出射した光を当該受光面から受け入れて光電流に変換するフォトダイオードとを含み、
    前記フォトダイオードの光電流が最大となるときのピーク受光波長が、前記レーザダイオードの前記温度範囲における発光波長の最小値以上、最大値以下であり、
    前記レーザダイオードは、レーザ出射端面および当該レーザ出射端面に対向する反対側端面を有し、前記反対側端面が前記受光面に対向する姿勢で配置されており、
    前記フォトダイオードは、発光波長が790nm〜845nmのレーザダイオードが出射した光を受け入れるものであり、
    前記第1導電型層から発生する空乏層の厚さが、20μm〜45μmである、発光素子モジュール。
  2. 前記フォトダイオードのピーク受光波長が、前記温度範囲におけるレーザダイオードの発光波長の中央値の±5%以内である、請求項1に記載の発光素子モジュール。
  3. 前記フォトダイオードは、前記第1導電型層と前記第2導電型領域との間に介在されたi型半導体層を含む、請求項1または2に記載の発光素子モジュール。
  4. 前記第2導電型領域は、前記第1導電型層の周囲および下方を取り囲み、前記サブマウントの前記表面の一部を形成している、請求項1〜のいずれか一項に記載の発光素子モジュール。
  5. 前記フォトダイオードは、前記第1導電型層に接続された第1電極および前記第2導電型領域に接続された第2電極を含み、
    前記第1電極および前記第2電極は、前記サブマウントの前記表面側に形成されている、請求項に記載の発光素子モジュール。
  6. 前記サブマウントが、Siからなる、請求項1〜のいずれか一項に記載の発光素子モ
    ジュール。
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