JP5627102B2 - 電力使用量予測装置および電力使用量予測方法 - Google Patents
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Description
図9は特許文献1に開示された電力使用量予測装置の原理を説明する図であり、整定している温度制御系において温度設定値SPを変更したときの温度計測値PVと操作量MVの変化を示す図である。
通常のヒータは、経時変化により発熱効率(ワット密度)が悪くなり、昇温能力が落ちて、電力使用量が大きくなるように変化する。しかし、このような経時変化を事前に把握しておくことは困難である。ゆえに、特許文献1に開示された電力使用量予測装置では、ヒータ劣化による経時変化を修正できないので、経時変化による誤差分は全く修正されないままにせざるを得ない。
例えば、ヒータ使用の初期のころに、製品Aを主に製造していたとする。このときの熱処理の温度パターンが、200℃で予備加熱した後に300℃に昇温させるものとする。また、そのときの電力使用量がほぼ常時800Wだったとする。
このように制御条件が変わっていくと、ヒータ劣化による経時変化分と制御条件の変化分とを切り分けられなくなるので、経時変化を考慮して電力予測を継続することが難しくなる。
また、本発明は、限られた昇温機会を可能な限り利用して、ヒータ性能の経時変化分を比較することで、簡易的にヒータ劣化を判定可能にする電力使用量予測装置および電力使用量予測方法を提供することを目的とする。
また、本発明の電力使用量予測装置の1構成例は、さらに、前記昇温時間係数THの初期値TH0を記憶する昇温時間係数初期値記憶手段と、前記昇温時間係数THの初期値TH0と前記昇温時間係数補正手段が算出した昇温時間係数THの補正値との比率をヒータ劣化度として算出するヒータ劣化度算出手段と、前記ヒータ劣化度が予め規定された数値γ以上の場合に、前記ヒータが劣化したことをユーザに通知するヒータ劣化通知手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の電力使用量予測装置の1構成例は、さらに、前記ヒータ能力係数HPの初期値HP0を記憶するヒータ能力係数初期値記憶手段と、前記ヒータ能力係数HPの初期値HP0と前記ヒータ能力係数補正手段が算出したヒータ能力係数HPの補正値との比率をヒータ劣化度として算出するヒータ劣化度算出手段と、前記ヒータ劣化度が予め規定された数値γ以上の場合に、前記ヒータが劣化したことをユーザに通知するヒータ劣化通知手段とを備えることを特徴とするものである。
原理的に、制御条件が変化しても共通で利用できる指標が昇温時間係数THあるいはヒータ能力係数HPであり、ヒータによる加熱の特徴として、図9に示したように操作量MVが出力上限値OHに飽和した状態で昇温することのみを前提としている。ヒータの劣化による経時変化では、ヒータの発熱効率(ワット密度)が悪くなり、昇温能力が落ちて、電力使用量が大きくなるように変化する。ヒータの劣化は、昇温について言えば、操作量MVが出力上限値OHに飽和した状態で昇温する傾向が強くなる方向の変化である。そこで、操作量MVの飽和の状態を計測すれば、ヒータの経時変化の監視を継続することが可能になることに着眼した。このような監視によると、制御機器メーカから製造装置メーカあるいは製造装置ユーザに流通するプロセスにおいて、ヒータの経時変化を単純かつ適正に管理しやすくなるので、有効である。
本発明では、昇温時間係数THあるいはヒータ能力係数HPを判定指標にすることにより、昇温幅に依存せずに電力状態を評価できることになるので、ヒータの劣化診断が可能になる。例えばヒータの使用初期のころの標準昇温パターン(SP,PV)と異なる標準昇温パターン(SP’,PV’)になっても、理論的にはヒータ性能として昇温時間係数THあるいはヒータ能力係数HPを比較できる。すなわち、出荷前時点で標準パターンとして想定していた昇温動作が、出荷後の現場において変更になっても、ヒータ劣化を判定することができる。これにより、制御機器メーカから製造装置メーカあるいは製造装置ユーザに流通するプロセスにおいて、ヒータの劣化を単純かつ適正に判定しやすくなるので、有効である。
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。図1(A)、図1(B)は整定している温度制御系において温度設定値SPを変更したときの温度計測値PVと操作量MVの変化の例を示す図である。図1(A)はヒータの使用初期の状態を示しており、図1(B)はヒータの昇温能力が落ちて昇温の所要時間が長くなった状態を示している。本実施の形態では、図1(B)に示すようにヒータの劣化で発熱効率(ワット密度)が悪くなり、昇温能力が落ちる場合の補正について説明する。特許文献1に開示されている式(1)と式(3)のどちらも有効であるが、より高精度に実行するためには式(3)を採用するのが好ましい。本実施の形態では、特許文献1に開示されている式(3)を引用する。
PW=(SP−PV)HPTH{100/(OH−MV)} ・・・(1)
TH=T_100/(100−25) ・・・(2)
なお、電力使用量予測値PWの単位は、ヒータ能力係数HPの単位と昇温時間係数THの単位によって決まるものなので、必要に応じて適宜換算するのがよい。本実施の形態では、(SP−PV)の単位が[℃]、ヒータ能力係数HPの単位が[W]、昇温時間係数THの単位が[h/℃]なので、電力使用量予測値PWの単位は[Wh]である。
PW=(SP−PV)HPTH ・・・(3)
THx=T_OH/ΔPV ・・・(4)
THn=TH+ΔTH=TH+α(THx−TH) ・・・(5)
THu=TH0(1+βLT) ・・・(6)
THu=TH0(1+βLT2) ・・・(7)
THu=TH0exp(LT/β) ・・・(8)
if THn>THu then TH_new=THu
else TH_new=THn ・・・(9)
R=TH_new/TH0 ・・・(10)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態では、第1の実施の形態と同様にヒータ102の劣化で発熱効率(ワット密度)が悪くなり、昇温能力が落ちる場合の補正について説明する。ただし、第1の実施の形態では、ヒータ102の昇温能力の経時変化に応じて昇温時間係数THを補正しているが、実用上はヒータ能力係数HPを補正してもよい。本実施の形態では、ヒータ能力係数HPの補正について説明する。特許文献1に開示されている式(1)と式(3)のどちらも有効であるが、より高精度に実行するためには式(3)を採用するのが好ましい。本実施の形態では、特許文献1に開示されている式(3)を引用する。
HPx=HP(PWx/PW) ・・・(11)
HPn=HP+ΔHP=HP+α(HPx−HP) ・・・(12)
HPu=HP0(1+βLT) ・・・(13)
HPu=HP0(1+βLT2) ・・・(14)
HPu=HP0exp(LT/β) ・・・(15)
if HPn>HPu then HP_new=HPu
else HP_new=HPn ・・・(16)
R=HP_new/HP0 ・・・(17)
こうして、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。第1の実施の形態と同様に、補正後のヒータ能力係数HPが電力使用量の予測に適用されるのは、次回の昇温時である。
Claims (12)
- 制御対象を加熱するヒータと、制御対象の温度を計測する温度センサと、この温度センサによって計測された温度計測値PVと外部から入力された温度設定値SPに基づいて操作量MVを算出して前記ヒータに出力するコントローラとからなる制御系において、前記制御対象を昇温するときに必要とされる前記ヒータの電力使用量PWを予測する電力使用量予測装置であって、
昇温開始時点における温度設定値SPを取得する温度設定値入力手段と、
昇温開始時点における温度計測値PVを取得する温度計測値入力手段と、
昇温開始時点における操作量MVを取得する操作量入力手段と、
前記コントローラに設定されている操作量上限値OHを取得する操作量上限値取得手段と、
前記ヒータの加熱する能力を表すヒータ能力係数HPを記憶するヒータ能力係数記憶手段と、
前記制御対象を単位温度加熱するのに必要な時間を表す昇温時間係数THを記憶する昇温時間係数記憶手段と、
前記温度設定値SPと前記温度計測値PVとの差である制御偏差、前記ヒータ能力係数HPおよび前記昇温時間係数THに基づいて、前記電力使用量PWを予測する電力使用量予測手段と、
昇温を開始した後に前記操作量MVが前記操作量上限値OHに到達している時間帯において前記制御対象を単位温度加熱するのに必要な時間を表す実績値THxを求める時間実績計測手段と、
前記実績値THxに基づく補正が前記昇温時間係数THを大きくする補正になると判定した場合のみ、前記実績値THxを用いて前記昇温時間係数THを補正する昇温時間係数補正手段とを備えることを特徴とする電力使用量予測装置。 - 請求項1記載の電力使用量予測装置において、
さらに、前記ヒータの総稼動時間LTを積算する稼動時間積算手段を備え、
前記昇温時間係数補正手段は、前記実績値THxと前記昇温時間係数THとの差から補正値候補THnを算出すると共に、前記総稼動時間LTから補正範囲を算出し、前記補正値候補THnを用いた補正が前記補正範囲内に収まるようにして前記昇温時間係数THを補正することを特徴とする電力使用量予測装置。 - 請求項1記載の電力使用量予測装置において、
さらに、前記昇温時間係数THの初期値TH0を記憶する昇温時間係数初期値記憶手段と、
前記昇温時間係数THの初期値TH0と前記昇温時間係数補正手段が算出した昇温時間係数THの補正値との比率をヒータ劣化度として算出するヒータ劣化度算出手段と、
前記ヒータ劣化度が予め規定された数値γ以上の場合に、前記ヒータが劣化したことをユーザに通知するヒータ劣化通知手段とを備えることを特徴とする電力使用量予測装置。 - 制御対象を加熱するヒータと、制御対象の温度を計測する温度センサと、この温度センサによって計測された温度計測値PVと外部から入力された温度設定値SPに基づいて操作量MVを算出して前記ヒータに出力するコントローラとからなる制御系において、前記制御対象を昇温するときに必要とされる前記ヒータの電力使用量PWを予測する電力使用量予測装置であって、
昇温開始時点における温度設定値SPを取得する温度設定値入力手段と、
昇温開始時点における温度計測値PVを取得する温度計測値入力手段と、
昇温開始時点における操作量MVを取得する操作量入力手段と、
前記コントローラに設定されている操作量上限値OHを取得する操作量上限値取得手段と、
前記ヒータの加熱する能力を表すヒータ能力係数HPを記憶するヒータ能力係数記憶手段と、
前記制御対象を単位温度加熱するのに必要な時間を表す昇温時間係数THを記憶する昇温時間係数記憶手段と、
前記温度設定値SPと前記温度計測値PVとの差である制御偏差、前記ヒータ能力係数HPおよび前記昇温時間係数THに基づいて、前記電力使用量PWを予測する電力使用量予測手段と、
昇温を開始した後に前記操作量MVが前記操作量上限値OHに到達している時間帯における前記ヒータの電力使用量PWxを計測し、この電力使用量PWxと前記ヒータ能力係数HPと前記電力使用量予測手段が算出した電力使用量PWとから前記ヒータ能力係数HPの実績値HPxを算出する電力実績計測手段と、
前記実績値HPxに基づく補正がヒータ劣化により前記ヒータ能力係数HPを大きくする補正になると判定した場合のみ、前記実績値HPxを用いて前記ヒータ能力係数HPを補正するヒータ能力係数補正手段とを備えることを特徴とする電力使用量予測装置。 - 請求項4記載の電力使用量予測装置において、
さらに、前記ヒータの総稼動時間LTを積算する稼動時間積算手段を備え、
前記ヒータ能力係数補正手段は、前記実績値HPxと前記ヒータ能力係数HPとの差から補正値候補HPnを算出すると共に、前記総稼動時間LTから補正範囲を算出し、前記補正値候補HPnを用いた補正が前記補正範囲内に収まるようにして前記ヒータ能力係数HPを補正することを特徴とする電力使用量予測装置。 - 請求項4記載の電力使用量予測装置において、
さらに、前記ヒータ能力係数HPの初期値HP0を記憶するヒータ能力係数初期値記憶手段と、
前記ヒータ能力係数HPの初期値HP0と前記ヒータ能力係数補正手段が算出したヒータ能力係数HPの補正値との比率をヒータ劣化度として算出するヒータ劣化度算出手段と、
前記ヒータ劣化度が予め規定された数値γ以上の場合に、前記ヒータが劣化したことをユーザに通知するヒータ劣化通知手段とを備えることを特徴とする電力使用量予測装置。 - 制御対象を加熱するヒータと、制御対象の温度を計測する温度センサと、この温度センサによって計測された温度計測値PVと外部から入力された温度設定値SPに基づいて操作量MVを算出して前記ヒータに出力するコントローラとからなる制御系において、前記制御対象を昇温するときに必要とされる前記ヒータの電力使用量PWを予測する電力使用量予測方法であって、
昇温開始時点における温度設定値SPを取得する温度設定値入力ステップと、
昇温開始時点における温度計測値PVを取得する温度計測値入力ステップと、
昇温開始時点における操作量MVを取得する操作量入力ステップと、
前記コントローラに設定されている操作量上限値OHを取得する操作量上限値取得ステップと、
前記温度設定値SPと前記温度計測値PVとの差である制御偏差、前記ヒータの加熱する能力を表すヒータ能力係数HP、および前記制御対象を単位温度加熱するのに必要な時間を表す昇温時間係数THに基づいて、前記電力使用量PWを予測する電力使用量予測ステップと、
昇温を開始した後に前記操作量MVが前記操作量上限値OHに到達している時間帯において前記制御対象を単位温度加熱するのに必要な時間を表す実績値THxを求める時間実績計測ステップと、
前記実績値THxに基づく補正が前記昇温時間係数THを大きくする補正になると判定した場合のみ、前記実績値THxを用いて前記昇温時間係数THを補正する昇温時間係数補正ステップとを備えることを特徴とする電力使用量予測方法。 - 請求項7記載の電力使用量予測方法において、
さらに、前記ヒータの総稼動時間LTを積算する稼動時間積算ステップを備え、
前記昇温時間係数補正ステップは、前記実績値THxと前記昇温時間係数THとの差から補正値候補THnを算出すると共に、前記総稼動時間LTから補正範囲を算出し、前記補正値候補THnを用いた補正が前記補正範囲内に収まるようにして前記昇温時間係数THを補正することを特徴とする電力使用量予測方法。 - 請求項7記載の電力使用量予測方法において、
さらに、前記昇温時間係数THの初期値TH0と前記昇温時間係数補正ステップで算出した昇温時間係数THの補正値との比率をヒータ劣化度として算出するヒータ劣化度算出ステップと、
前記ヒータ劣化度が予め規定された数値γ以上の場合に、前記ヒータが劣化したことをユーザに通知するヒータ劣化通知ステップとを備えることを特徴とする電力使用量予測方法。 - 制御対象を加熱するヒータと、制御対象の温度を計測する温度センサと、この温度センサによって計測された温度計測値PVと外部から入力された温度設定値SPに基づいて操作量MVを算出して前記ヒータに出力するコントローラとからなる制御系において、前記制御対象を昇温するときに必要とされる前記ヒータの電力使用量PWを予測する電力使用量予測方法であって、
昇温開始時点における温度設定値SPを取得する温度設定値入力ステップと、
昇温開始時点における温度計測値PVを取得する温度計測値入力ステップと、
昇温開始時点における操作量MVを取得する操作量入力ステップと、
前記コントローラに設定されている操作量上限値OHを取得する操作量上限値取得ステップと、
前記温度設定値SPと前記温度計測値PVとの差である制御偏差、前記ヒータの加熱する能力を表すヒータ能力係数HP、および前記制御対象を単位温度加熱するのに必要な時間を表す昇温時間係数THに基づいて、前記電力使用量PWを予測する電力使用量予測ステップと、
昇温を開始した後に前記操作量MVが前記操作量上限値OHに到達している時間帯における前記ヒータの電力使用量PWxを計測し、この電力使用量PWxと前記ヒータ能力係数HPと前記電力使用量予測ステップで算出した電力使用量PWとから前記ヒータ能力係数HPの実績値HPxを算出する電力実績計測ステップと、
前記実績値HPxに基づく補正がヒータ劣化により前記ヒータ能力係数HPを大きくする補正になると判定した場合のみ、前記実績値HPxを用いて前記ヒータ能力係数HPを補正するヒータ能力係数補正ステップとを備えることを特徴とする電力使用量予測方法。 - 請求項10記載の電力使用量予測方法において、
さらに、前記ヒータの総稼動時間LTを積算する稼動時間積算ステップを備え、
前記ヒータ能力係数補正ステップは、前記実績値HPxと前記ヒータ能力係数HPとの差から補正値候補HPnを算出すると共に、前記総稼動時間LTから補正範囲を算出し、前記補正値候補HPnを用いた補正が前記補正範囲内に収まるようにして前記ヒータ能力係数HPを補正することを特徴とする電力使用量予測方法。 - 請求項10記載の電力使用量予測方法において、
さらに、前記ヒータ能力係数HPの初期値HP0と前記ヒータ能力係数補正ステップで算出したヒータ能力係数HPの補正値との比率をヒータ劣化度として算出するヒータ劣化度算出ステップと、
前記ヒータ劣化度が予め規定された数値γ以上の場合に、前記ヒータが劣化したことをユーザに通知するヒータ劣化通知ステップとを備えることを特徴とする電力使用量予測方法。
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