以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。なお、ここでは電源装置を回生機能付き車両に適用した場合について説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるDC/DCコンバータのブロック回路図である。図2は、本発明の実施の形態1における電源装置の動作を示すフローチャートである。図3は、本発明の実施の形態1における電源装置の電流Iiと素子温度Tiに基く切替温度相関関係図であり、(a)は第1電流I1と第1素子温度T1に基く第1切替温度相関関係図を、(b)は第2電流I2と第2素子温度T2に基く第2切替温度相関関係図を、それぞれ示す。
図1において、モータジェネレータ11は、車両の駆動、および制動時の回生電力発電を行なう。このモータジェネレータ11には主電源13が電気的に接続される。主電源13はモータジェネレータ11を駆動するために数100Vの定格電圧を有する二次電池(ニッケル水素電池やリチウムイオン電池)で構成される。従って、モータジェネレータ11は主電源13の電力で車両駆動を行なうとともに、制動時に発電する回生電力の一部を主電源13に充電する。
さらに、モータジェネレータ11には、2つのDC/DCコンバータ、すなわち第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17の並列接続回路を介して蓄電部19が電気的に接続される。ここで、蓄電部19は急峻に発生する回生電力の取りこぼしをできるだけ少なくするために、急速充放電が可能な電気二重層キャパシタで構成されている。これにより、車両のさらなる高効率化を図ることができる。なお、上記したように、回生電力の一部は主電源13にも充電されるので、蓄電部19は急峻に発生するために主電源13に充電し切れない回生電力を充電する役割を担う。従って、短期間に大電力を充電するため、蓄電部19の蓄電エネルギは主電源13に比べ少ない構成としている。このことから、蓄電エネルギは蓄電部19の電圧の二乗に比例するので、蓄電部19の定格電圧は主電源13の定格電圧より1桁程度小さい値となるよう構成している。
このような構成としているので、第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17はいずれも主電源13から蓄電部19へ電圧を降圧する構成となる。また、蓄電部19が蓄えた回生電力は、例えば車両の加速時にモータジェネレータ11へ放電され、駆動力をアシストする。これにより、回生電力が有効活用され車両の高効率化が図れる。従って、蓄電部19の放電時には第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17はいずれも蓄電部19から主電源13側へ電圧を昇圧する構成となる。これらのことから、第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17は双方向コンバータ構成となる。
なお、回生電力が発生した場合に蓄電部19へ流れる電流は100A程度と極めて大きいので、第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17を用いて電流を分散させることで、第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17に内蔵される回路素子(図示せず)の必要な耐電流性や耐熱性を下げることができる。
また、本実施の形態1では、第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17は周囲温度の変化が少ない車室内に配置されている。
ここで、図1には示していない第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17に内蔵される前記回路素子とは、基本的にはそれぞれ従来の図6の構成と同様に、2個のスイッチング素子とコイルである。従って、詳細な構成図を省略している。なお、平滑コンデンサについては、第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17のそれぞれに設ける構成としてもよいし、図6と同様に、第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17で共用する構成としてもよい。本実施の形態1における第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17の図6の構成との違いは、高効率化のためにダイオードをFETに置き換えた点と、後述する制御回路からの信号に応じて双方向に動作させることができる点である。
また、本実施の形態1においては、従来の図6の構成と同様に、前記回路素子の内、前記スイッチング素子の素子温度(Ti、i=1〜n、nはDC/DCコンバータの数で本実施の形態1ではn=2)をそれぞれ検出する素子温度センサ、すなわち、図1における第1素子温度センサ21と第2素子温度センサ23が設けられている。これは、本実施の形態1の前記回路素子において、前記スイッチング素子が前記コイルより高温になる構成のためである。これらの第1素子温度センサ21と第2素子温度センサ23は、第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17のそれぞれにおいて、2つの前記スイッチング素子の内、より高温になる方の近傍に配置される。なお、各々の前記スイッチング素子における温度上昇は、配置される場所やヒートシンクの形状、空冷や水冷の有無等により、放熱特性が異なってくるので、予め実際に各々の前記スイッチング素子の温度上昇を測定することで、どの前記スイッチング素子が、より高温になるかを求めて、第1素子温度センサ21と第2素子温度センサ23の配置をそれぞれ決定すればよい。第1素子温度センサ21、第2素子温度センサ23としては、サーミスタや熱電対等のように、温度を電気信号として出力できる構成のものであればよい。
また、第1DC/DCコンバータ15には、それに流れる第1電流I1を検出する第1電流センサ25が、第2DC/DCコンバータ17には、それに流れる第2電流I2を検出する第2電流センサ27が、それぞれ設けられている。ここで、第1電流センサ25、および第2電流センサ27としては、シャント抵抗器を用いる構成とし、その両端電圧から第1電流I1と第2電流I2を検出している。なお、第1電流センサ25、および第2電流センサ27は、シャント抵抗器に限定されるものではなく、ホール素子のように磁気的に検出するものを用いてもよい。また、第1DC/DCコンバータ15や第2DC/DCコンバータ17が、それぞれ電流センサを内蔵する構成であれば、それを各々第1電流センサ25、および第2電流センサ27として用いてもよい。
第1DC/DCコンバータ15、第2DC/DCコンバータ17、第1素子温度センサ21、第2素子温度センサ23、第1電流センサ25、および第2電流センサ27は制御回路29と信号系配線で電気的に接続される。制御回路29は、マイクロコンピュータと周辺回路で構成されており、第1素子温度センサ21から第1素子温度T1を、第2素子温度センサ23から第2素子温度T2を、第1電流センサ25から第1電流I1を、第2電流センサ27から第2電流I2を、それぞれ読み込む。また、制御回路29は、第1制御信号cont1を第1DC/DCコンバータ15に出力することで、第1DC/DCコンバータ15の動作を制御するとともに、第2制御信号cont2を第2DC/DCコンバータ17に出力することで、第2DC/DCコンバータ17の動作を制御する。さらに、制御回路29は車両用制御回路(図示せず)とも信号系配線で電気的に接続されており、車両情報や電流、温度等の様々な情報をデータ信号dataにより送受信する構成としている。
次に、このような電源装置の動作について説明する。
車両の使用中において、電源装置は制動動作によりモータジェネレータ11が急峻に発生する回生電力の一部を蓄電部19に充電して回収し、再加速動作により蓄電部19に回収した電力をモータジェネレータ11に供給するよう第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17を動作させる。これにより、回生電力の有効活用が図れるとともに、再加速時に加速性を確保することができる。さらに、車両がハイブリッド車であれば、再加速時のエンジンによる燃料消費を抑制することも可能となる。
このような車両の基本動作において、制御回路29は第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17に対し、図2に示すフローチャートの制御を行なう。なお、図2のフローチャートは制御回路29のマイクロコンピュータによって実行されるメインルーチン(図示せず)から呼び出されるサブルーチンである。また、図2のサブルーチンは車両使用中に割り込みにより定期的に呼び出される。
メインルーチンから図2のサブルーチンが呼び出されると、制御回路29は、まず第1電流センサ25より第1電流I1を読み込む(ステップ番号S11)。次に、第1電流I1の絶対値が第1切替温度相関関係により第1切替温度Ts1を求めるための範囲を超えるか否かを判断する(S13)。
ここで、第1切替温度相関関係、および第1切替温度Ts1について説明する。
本実施の形態1における電源装置では、制御回路29は各DC/DCコンバータ(ここでは第1DC/DCコンバータ15、および第2DC/DCコンバータ17)における各素子温度Ti(ここでは第1素子温度T1、および第2素子温度T2)のいずれもが、それぞれの切替温度相関関係(ここでは第1切替温度相関関係、および第2切替温度相関関係)により得られる各切替温度Tsi(ここでは第1切替温度Ts1、および第2切替温度Ts2)に至るまでは、各電流Ii(ここでは第1電流I1、および第2電流I2)が均衡するように各DC/DCコンバータを制御する。そして、各素子温度Tiのいずれかが各切替温度Tsi以上となれば、各素子温度Tiが均衡するように各DC/DCコンバータを制御する。このような動作を繰り返すことで蓄電部19の充放電を制御している。なお、均衡するとは、各電流Iiや各素子温度Tiの検出誤差や、制御回路29、各DC/DCコンバータの制御誤差によるトータルの誤差範囲内で等しい状態であると定義する。
従って、第1切替温度相関関係は第1切替温度Ts1を求めるための相関関係であり、これを用いて第1電流I1の絶対値と第1素子温度T1に基く第1切替温度Ts1が得られる。この第1切替温度相関関係を図3(a)に示す。なお、図3(a)において、横軸は第1電流I1を、縦軸は第1切替温度Ts1を示す。また、第1切替温度相関関係は第1素子温度T1にも基くので、第1素子温度T1毎に複数の相関関係が存在する。
図3(a)より、第1切替温度相関関係は、まず第1電流I1の絶対値が大きいほど第1切替温度Ts1が低くなる特性を有する。そして、大電流ほど低下する特性は非線形であり、第1電流I1の絶対値が大きくなると、第1切替温度Ts1は、より急に低下する。これは次の理由による。
第1切替温度Ts1は前記スイッチング素子に流れる第1電流I1の絶対値が小さいほどその発熱は少なく、第1電流I1の絶対値が増えるほど、第1電流I1の二乗に比例して発熱が増える。従って、第1電流I1の絶対値が大きいほど、前記スイッチング素子が過昇温に至る期間が短くなるので、早く第1素子温度T1と第2素子温度T2が均衡するように第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17を制御する必要がある。そのため、第1電流I1の絶対値が大きいほど急に第1切替温度Ts1が低くなる相関関係としている。なお、この相関関係は使用する前記各スイッチング素子の特性バラツキや前記放熱特性が異なるので、DC/DCコンバータ毎に、それぞれの電流Iiに応じた切替温度Tsiを実測して制御回路29に内蔵したメモリ(図示せず)に記憶しておく。この際に、各DC/DCコンバータにおける各電流Iiの均衡制御から各素子温度Tiの均衡制御に切り替えても、直ちに各素子温度Tiが均衡するわけではなく、ある程度のオーバーシュートの後に均衡する。このオーバーシュートは素子特性や前記放熱特性によって異なるので、切替温度Tsiを実測して求める際にオーバーシュートの影響を加味して、オーバーシュートしても前記スイッチング素子が過昇温に至らないように相関関係を決定する。
次に、第1切替温度相関関係は第1素子温度T1によっても変化する。すなわち、車両の使用過程で蓄電部19の充放電が繰り返されることにより、第1素子温度T1が上昇していると、たとえ第1電流I1の絶対値が小さくても前記スイッチング素子が過昇温に至る期間が短くなるので、この場合、早く第1素子温度T1と第2素子温度T2が均衡するように第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17を制御する必要がある。そのため、第1素子温度T1が高いほど第1切替温度Ts1が低くなる相関関係としている。従って、図3(a)に示すように、第1素子温度T1が高温ほど、第1電流I1と第1切替温度Ts1との相関関係が下側になるように第1切替温度相関関係が決定される。なお、この第1素子温度T1毎の複数の相関関係も予め実測して制御回路29に内蔵したメモリ(図示せず)に記憶しておく。この際も、前記オーバーシュートの影響を加味して相関関係を決定する。また、予め求めておく第1素子温度T1毎の相関関係における温度間隔は、小さいほど高精度に第1切替温度Ts1を求められるが、データ量が増大する上、実測の手間も増えるので、第1切替温度Ts1の許容できる誤差に応じて温度間隔を決定すればよい。
なお、決定された第1切替温度相関関係は図3(a)の相関関係のデータをテーブルとしてメモリに記憶してある。これにより、第1電流I1の絶対値と第1素子温度T1が決まれば、第1切替温度相関関係のデータテーブルから即座に第1切替温度Ts1を求めることができる。但し、データのテーブル化によりメモリを多く消費するので、メモリが少ない構成の場合は、テーブルに替わって図3(a)の相関関係の近似式を記憶しておくようにしてもよい。この場合、メモリの節約が可能であるが、第1電流I1の絶対値と第1素子温度T1から近似式を用いて第1切替温度Ts1を計算する必要があるため、高速演算が可能なマイクロコンピュータを用いることが望ましい。
また、第1切替温度相関関係は、生産過程で個々の電源装置毎に実測して求めてもよいし、個々の電源装置毎の第1切替温度相関関係にバラツキが少ない場合は、個々に求めずに、実測で求めた代表的な第1切替温度相関関係をメモリに記憶するようにしてもよい。
以上のようにして、第1素子温度T1が高いほど、かつ第1電流Iiの絶対値が大きいほど第1切替温度Ts1が低くなる第1切替温度相関関係が得られる。従って、第1切替温度Ts1を求めるためには、第1電流I1と第1素子温度T1が必要となる。しかし、第1電流I1と第1素子温度T1がどのような値であっても第1切替温度Ts1が求められるわけではなく、図3(a)に示した第1切替温度相関関係の範囲内でなければならない。すなわち、第1電流I1の絶対値については、前記スイッチング素子に流れても問題のない上限電流Im以下である必要がある。この上限電流Imは使用する前記スイッチング素子の定格電流であってもよいし、さらにマージンを考慮した分、低く設定してもよい。従って、第1切替温度相関関係により第1切替温度Ts1を求めるための第1電流I1(絶対値)の範囲は0アンペア以上で上限電流Im以下となる。
同様に、第1素子温度T1についても、前記スイッチング素子が動作可能な上限温度Tm以下である必要がある。この上限温度Tmは使用する前記スイッチング素子によって定まる定格上限温度(例えば100℃)であってもよいし、さらにマージンを考慮した分、低く設定してもよい。また、第1素子温度T1の下限については、通常の車載用部品における下限保証温度の−40℃としている。従って、第1切替温度相関関係により第1切替温度Ts1を求めるための第1素子温度T1の範囲は下限温度である−40℃以上で上限温度Tm以下となる。
なお、図3(a)に示すように、第1切替温度Ts1は第1電流I1が0アンペアの時に第1素子温度T1の値によらず、上記した上限温度Tmとなる。これは、第1電流I1が流れていなければ前記スイッチング素子が発熱して過昇温に至る要因がないため、第1電流I1が0アンペアの時の第1切替温度Ts1は第1素子温度T1の範囲における最大値、すなわち前記スイッチング素子の上限温度Tmとしてもよいことによる。
これらのことから、上記した第1電流I1の絶対値の範囲と、第1素子温度T1の範囲により、第1切替温度Ts1は図3(a)の第1切替温度相関関係で示される範囲において得ることができる。
ここで、図2のS13に戻り、第1電流I1の絶対値が上記した第1切替温度相関関係により第1切替温度Ts1を求めるための範囲を超えれば(S13のYes)、第1電流I1の絶対値が上限電流Imを超えていることになるので、制御回路29は前記スイッチング素子が過電流により過昇温に至らないように、直ちに第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17を停止する(S14)。具体的には、制御回路29は第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17に、第1制御信号cont1と第2制御信号cont2をそれぞれに出力する。その結果、第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17が停止するので、電流Iiが流れなくなり、前記スイッチング素子が放熱される。従って、過昇温の可能性を低減することができる。その後、制御回路29は過昇温の可能性があった事実を車両用制御回路に伝えるために、過昇温信号をデータ信号dataとして出力する(S15)。これにより、車両用制御回路は例えばモータジェネレータ11が発電する回生電力量を減らすなどの制御を行い、電源装置全体の保護を行なう。その後、制御回路29はS14で第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17を停止したことにより、それらの制御をする必要がなくなったため、図2のサブルーチンを終了し、メインルーチンに戻る。
一方、第1電流I1の絶対値が上記した第1切替温度相関関係により第1切替温度Ts1を求めるための範囲内であれば(S13のNo)、制御回路29は第2電流センサ27から第2電流I2を読み込む(S16)。その後、第2電流I2の絶対値が第2切替温度相関関係により第2切替温度Ts2を求めるための範囲を超えるか否かを判断する(S17)。
ここで、第2切替温度相関関係について説明する。これは、基本的にはS13で説明した第1切替温度相関関係と同様にして決定される。しかし、使用されるスイッチング素子にバラツキがあり、また、第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17の配置場所が異なることに起因した放熱特性の違い等が存在する。従って、第2切替温度相関関係は必ずしも第1切替温度相関関係と同じであるとは限らない。ゆえに、第2切替温度相関関係についても予め決定してメモリに記憶しておく必要がある。本実施の形態1では、図3(b)に示す第2切替温度相関関係が得られる。なお、図3(b)において、横軸は第2電流I2を、縦軸は第2切替温度Ts2を、それぞれ示す。
図3(b)の第2切替温度相関関係は、図3(a)とは異なった相関関係となる。すなわち、第2電流I2の絶対値が大きくなっても、第2切替温度Ts2が、図3(a)の第1切替温度Ts1ほど大きく下がらない相関関係となる。これは、第2DC/DCコンバータ17が第1DC/DCコンバータ15に比較し、放熱特性が良好であったためである。すなわち、第2DC/DCコンバータ17の配置位置は、ヒートシンク容量や冷却性能が第1DC/DCコンバータ15の配置位置より優れているため、大電流を流しても第2素子温度T2が第1素子温度T1ほど高くならない。従って、同じ電流絶対値であっても、第2切替温度Ts2は第1素子温度T1よりも高く設定できる。ゆえに、第2切替温度相関関係は図3(b)に示すものが決定される。このように、各切替温度相関関係は各DC/DCコンバータ毎に異なる可能性を有するので、それぞれを実測して決定することが望ましい。
但し、第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17の放熱特性が等価になるように設計し、実際に第1切替温度相関関係と第2切替温度相関関係とが誤差範囲内で同じであれば、1種類の切替温度相関関係を用いてもよい。
なお、図3(b)における上限電流Imと上限温度Tmは、第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17において同種のスイッチング素子を用いているので、その素子仕様から同じ値と決定している。しかし、使用するスイッチング素子が異なる特性であれば、それぞれ異なる上限電流Imと上限温度Tmを決定してもよい。
以上をまとめると、電流Iiと素子温度Tiの2つのパラメータがそろって初めて各切替温度相関関係が得られ、それぞれの切替温度Tsiを求めることが可能となる。
ここで、図2のS17に戻り、第2電流I2の絶対値が上記した第2切替温度相関関係により第2切替温度Ts2を求めるための範囲を超えれば(S17のYes)、第2電流I2の絶対値が上限電流Imを超えていることになるので、制御回路29は前記スイッチング素子が過電流により過昇温に至らないように、上記したS14以降の動作を行う。
一方、第2電流I2の絶対値が上記した第2切替温度相関関係により第2切替温度Ts2を求めるための範囲内であれば(S17のNo)、次に制御回路29は第1DC/DCコンバータ15に内蔵された第1素子温度T1を読み込む(S19)。その後、第1素子温度T1が第1切替温度相関関係により第1切替温度Ts1を求めるための範囲を超えるか否かを判断する(S21)。ここで、上記したように第1素子温度T1の範囲は通常の車載用部品における下限保証温度の−40℃から上限温度Tmまでであるので、第1素子温度T1が上記した範囲を超えていれば(S21のYes)、上記したS14にジャンプする。これにより、第1素子温度T1が上限温度Tmより高ければ、制御回路29は、前記スイッチング素子が放熱されるように制御するので、過昇温の可能性を低減することができる。また、第1素子温度T1が−40℃より低ければ、電源装置全体の動作保証外となるので、制御回路29はS14で第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17を停止することで、高信頼性を得ている。なお、図2のサブルーチンはメインルーチンにより繰り返し実行されるので、車両の使用に伴い第1素子温度T1が上昇してくると、S21でNoとなるので、制御回路29は通常の電源装置の動作を行うように制御される。
一方、第1素子温度T1が第1切替温度相関関係により第1切替温度Ts1を求めるための範囲以内であれば(S21のNo)、次に制御回路29は第2DC/DCコンバータ17に内蔵された第2素子温度T2を読み込む(S23)。その後、第2素子温度T2が第2切替温度相関関係により第2切替温度Ts2を求めるための範囲を超えるか否かを判断する(S25)。ここで、S25の動作はS21と同等であるので、詳細な説明を省略する。すなわち、もし第2素子温度T2が第2切替温度相関関係により第2切替温度Ts2を求めるための範囲を超えていれば(S25のYes)、上記したS14にジャンプする。
ここまでの動作をまとめると、制御回路29は、各切替温度Tsiを求める際に、電流Iiの絶対値、または素子温度Tiが各切替温度相関関係により各切替温度Tsiを求めるための範囲を超える場合は、DC/DCコンバータを停止するようにしている。これにより、前記スイッチング素子の過昇温の可能性を低減できる。
一方、第2素子温度T2が第2切替温度相関関係により第2切替温度Ts2を求めるための範囲以内であれば(S25のNo)、この時点で第1電流I1の絶対値と第1素子温度T1が第1切替温度相関関係により第1切替温度Ts1を求めるための範囲以内であり、かつ第2電流I2の絶対値と第2素子温度T2が第2切替温度相関関係により第2切替温度Ts2を求めるための範囲以内であるので、制御回路29は第1切替温度Ts1と第2切替温度Ts2を求めることができる。具体的には、まず第1電流I1の絶対値と第1素子温度T1から、図3(a)の第1切替温度相関関係により第1切替温度Ts1を求める(S27)。次に、第2電流I2の絶対値と第2素子温度T2から、図3(b)の第2切替温度相関関係により第2切替温度Ts2を求める(S29)。
次に、制御回路29は、第1素子温度T1と第1切替温度Ts1を比較する(S31)。もし、第1素子温度T1が第1切替温度Ts1以上であれば(S31のYes)、蓄電部19の充放電により第1素子温度T1が上昇して第1切替温度Ts1に至っているか、超えている状態である。従って、制御回路29は第1素子温度T1と第2素子温度T2が均衡するように第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17を制御するために、後述するS37にジャンプする。
一方、第1素子温度T1が第1切替温度Ts1未満であれば(S31のNo)、蓄電部19の充放電を行なっていても、まだ第1素子温度T1が第1切替温度Ts1に至っていない状態である。そこで、次に第2素子温度T2と第2切替温度Ts2を比較する(S33)。もし、第2素子温度T2が第2切替温度Ts2以上であれば(S33のYes)、蓄電部19の充放電により第2素子温度T2が上昇して第2切替温度Ts2に至っているか、超えている状態である。従って、制御回路29はS31のYesと同様に、第1素子温度T1と第2素子温度T2が均衡するように第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17を制御するために、後述するS37にジャンプする。
一方、第2素子温度T2が第2切替温度Ts2未満であれば(S33のNo)、この時点で、S31でNo、S33でNoであったので、蓄電部19の充放電を行なっていても、第1素子温度T1と第2素子温度T2の両方が過昇温に至るまでにまだ余裕がある状態であることがわかる。そこで、制御回路29は、第1電流I1と第2電流I2が均衡するように第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17を制御する(S35)。具体的には、制御回路29は第1電流I1と第2電流I2とを、それぞれS11とS16で読み込んでいるので、両者を比較し、第1電流I1が第2電流I2より大きければ、第1DC/DCコンバータ15に流れる第1電流I1が小さくなるように第1制御信号cont1を出力するとともに、第2DC/DCコンバータ17に流れる第2電流I2が大きくなるように第2制御信号cont2を出力する。一方、第1電流I1が第2電流I2より小さければ、第1DC/DCコンバータ15に流れる第1電流I1が大きくなるように第1制御信号cont1を出力するとともに、第2DC/DCコンバータ17に流れる第2電流I2が小さくなるように第2制御信号cont2を出力する。なお、第1電流I1と第2電流I2をどれだけ変化させるかは、両者の電流差に基いて決定される。また、第1電流I1と第2電流I2が誤差範囲内で等しければ、既に第1電流I1と第2電流I2が均衡しているので、制御回路29は、その状態を維持するように第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17を制御する。
このような動作により、第1素子温度T1と第2素子温度T2の両方が過昇温に至るまでに余裕があれば、制御回路29は第1電流I1と第2電流I2が均衡するように第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17をそれぞれ制御するので、第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17の相互間に流れる還流電流を低減できるので、その分、無駄になる電力を抑制でき高効率化が図れる。
その後、制御回路29は図2のサブルーチンを終了し、メインルーチンに戻る。
ここで、S31でYesの場合は第1素子温度T1が第1切替温度Ts1に、またS33でYesの場合は第2素子温度T2が第2切替温度Ts2に、それぞれ至っているので、制御回路29は第1素子温度T1と第2素子温度T2が均衡するように第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17を制御する(S37)。具体的には、制御回路29は第1素子温度T1と第2素子温度T2とを、それぞれS19とS23で読み込んでいるので、両者を比較し、第1素子温度T1が第2素子温度T2より大きければ、第1DC/DCコンバータ15に流れる第1電流I1の絶対値が小さくなるように第1制御信号cont1を出力するとともに、第2DC/DCコンバータ17に流れる第2電流I2の絶対値が大きくなるように第2制御信号cont2を出力する。一方、第1素子温度T1が第2素子温度T2より小さければ、第1DC/DCコンバータ15に流れる第1電流I1の絶対値が大きくなるように第1制御信号cont1を出力するとともに、第2DC/DCコンバータ17に流れる第2電流I2の絶対値が小さくなるように第2制御信号cont2を出力する。なお、第1電流I1と第2電流I2をどれだけ変化させるかは、第1素子温度T1と第2素子温度T2との温度差に基いて決定される。また、第1素子温度T1と第2素子温度T2が誤差範囲内で等しければ、既に第1素子温度T1と第2素子温度T2が均衡しているので、制御回路29は、その状態を維持するように第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17を制御する。
このような動作により、第1素子温度T1と第2素子温度T2のいずれかが、それぞれの切替温度Tsiに至っていれば、前記スイッチング素子が過昇温に至る可能性が高くなるので、制御回路29は第1素子温度T1と第2素子温度T2が均衡するように第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17をそれぞれ制御する。その結果、前記スイッチング素子の過昇温可能性を低減することができる。
その後、制御回路29は図2のサブルーチンを終了し、メインルーチンに戻る。
メインルーチンは、上記したように図2のサブルーチンを車両使用中に割り込みにより定期的に呼び出して繰り返し実行する。従って、S37の動作を行って第1電流I1と第2電流I2のアンバランスが発生する状態であっても、蓄電部19は充放電を繰り返すので、第1電流I1の絶対値と第2電流I2の絶対値が下がる局面が存在する。その結果、各素子温度Tiが高くても、図3に示すように各切替温度Tsiは上がる方向となる。また、第1電流I1の絶対値と第2電流I2の絶対値が下がる期間が長ければ各素子温度Tiも下がるので、この場合は図3に示すように各切替温度Tsiはさらに上がる方向となる。ゆえに、いずれ第1電流I1と第2電流I2が均衡する動作に戻る。このように、各切替温度Tsiを境に第1電流I1と第2電流I2の均衡動作と、第1素子温度T1と第2素子温度T2の均衡動作を繰り返すことで、前記スイッチング素子が過昇温に至る可能性が低い間は還流電流が少なく高効率な動作を行い、過昇温に至る可能性が高くなると第1素子温度T1と第2素子温度T2を均衡させ過昇温になる可能性を低減している。
以上の構成、動作により、前記スイッチング素子の過昇温を低減できる高効率な電源装置が実現できる。
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における電源装置のブロック回路図である。図5は、本発明の実施の形態2における電源装置の動作を示すフローチャートである。
本実施の形態2における電源装置の構成において、実施の形態1の図1に示す構成と同じ部分には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。すなわち、本実施の形態2において実施の形態1と異なる点は、図4に示す以下の部分である。
1)第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17のそれぞれに、第1周囲温度Ta1を測定する第1周囲温度センサ31と、第2周囲温度Ta2を測定する第2周囲温度センサ33を備えた。なお、本実施の形態2では、第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17はボンネット内に配置される。
2)第1周囲温度センサ31と第2周囲温度センサ33を信号系配線で制御回路29と電気的に接続した。
このような構成とすることで、制御回路29は第1周囲温度センサ31から第1DC/DCコンバータ15の第1周囲温度Ta1を、第2周囲温度センサ33から第2DC/DCコンバータ17の第2周囲温度Ta2を、それぞれ読み込むことができる。
ここで、第1周囲温度センサ31と第2周囲温度センサ33の詳細について説明する。
第1周囲温度センサ31と第2周囲温度センサ33は、第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17において、両者それぞれの周囲の温度が測定できる位置に配置される構成とすればよい。従って、第1周囲温度センサ31と第2周囲温度センサ33の位置は、第1DC/DCコンバータ15や第2DC/DCコンバータ17の近傍であればよい。
但し、電源装置全体の小型化を考慮すると、第1周囲温度センサ31と第2周囲温度センサ33を、それぞれ第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17に組み込む構成が望ましい。このような構成とする場合、第1DC/DCコンバータ15や第2DC/DCコンバータ17の機構設計によっては、前記スイッチング素子の温度上昇の影響を受ける部分が存在する。そこで、本実施の形態2では、第1周囲温度センサ31と第2周囲温度センサ33とが、それぞれ第1DC/DCコンバータ15の中、および第2DC/DCコンバータ17の中で、各々のスイッチング素子の発熱伝達範囲外の位置に配置される構成としている。具体的には、図4に示すように、第1DC/DCコンバータ15の中で、発熱伝達範囲外である第1素子温度センサ21から最も遠い位置に第1周囲温度センサ31を配置するとともに、第2DC/DCコンバータ17の中で、発熱伝達範囲外である第2素子温度センサ23から最も遠い位置に第2周囲温度センサ33を配置している。これにより、前記スイッチング素子の発熱における第1周囲温度Ta1と第2周囲温度Ta2の変化による誤差を低減できるので、上記した第1切替温度Ts1と第2切替温度Ts2の精度が向上し、還流電流による損失を低減できる。ゆえに、高効率化を図ることが可能となる。
なお、第1DC/DCコンバータ15の中、および第2DC/DCコンバータ17の中とは、第1DC/DCコンバータ15、および第2DC/DCコンバータ17が構成される構造体の範囲内という意味であり、例えば第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17が、それぞれ専用のケース内に構成されるのであれば、そのケースの中ということになる。また、第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17が、それぞれ回路基板上に構成部品(ヒートシンク等の放熱部品も含む)を実装した状態で形成されていれば、回路基板と構成部品を合わせた体積内となる。
また、各スイッチング素子の発熱伝達範囲は、上記した機構設計によって放熱特性が異なってくるので、一概に決定されない。従って、予め実際に各々のスイッチング素子が昇温した際の、第1DC/DCコンバータ15の中、および第2DC/DCコンバータ17の中の各部における温度上昇を測定することで発熱伝達範囲を求め、その範囲外で、かつ第1DC/DCコンバータ15の中、および第2DC/DCコンバータ17の中の位置に、第1周囲温度センサ31と第2周囲温度センサ33をそれぞれ配置すればよい。
また、第1周囲温度センサ31と第2周囲温度センサ33は、第1素子温度センサ21や第2素子温度センサ23と同様に、サーミスタや熱電対等のような、温度を電気信号として出力できる構成のものであればよい。
次に、このような電源装置の動作における特徴となる部分について、図5のフローチャートを参照しながら説明する。なお、図5において、図2と同じ動作については同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
メインルーチンから図5のサブルーチンが実行されると、図2と同様にS11からS25までの動作を行う。
S25でNoの場合は、第1切替温度Ts1と第2切替温度Ts2を求めることができる状態であるので、次に制御回路29は第1周囲温度センサ31より第1周囲温度Ta1を読み込む(S51)。そして、制御回路29は第1周囲温度Ta1に対応する第1切替温度相関関係を選択する(S53)。
ここで、制御回路29がS51からS53までの動作を行う理由を説明する。
図3(a)に示す第1切替温度相関関係は、第1周囲温度Ta1が常温(ここでは25℃)において得られたものであり、1種類しかない。これは、上記したように、実施の形態1における第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17が車室内に配置され、これらの周囲温度が常温から大きく変化することがない環境にあることによる。
一方、本実施の形態2では、第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17をボンネット内に配置する構成としているので、それらの周囲温度は車両使用中に大きく変化する。そして、第1周囲温度Ta1が高温であるほど、前記スイッチング素子が過昇温に至るまでの余裕が少なくなるので、第1切替温度Ts1を予め低く設定しておく必要がある。ゆえに、第1切替温度相関関係としては、第1周囲温度Ta1に応じて複数求めておく。すなわち、まず図3(a)に示した相関関係を第1周囲温度Ta1毎に複数求めてメモリに記憶しておく。従って、図3(a)の相関関係が第1周囲温度Ta1を、ある温度間隔毎に変えた状態で、それぞれ求められることになる。なお、温度間隔については、上記した第1素子温度T1毎に相関関係を求める際の温度間隔と同様に、第1切替温度Ts1の許容できる誤差に応じて決めればよい。この状態で、S51にて読み込んだ第1周囲温度Ta1に対応する第1切替温度相関関係を選択する(S53)。その結果、第1周囲温度Ta1が高温であれば、第1切替温度Ts1が低く設定された第1切替温度相関関係が選択されるので、それを用いて早めに制御回路29が第1素子温度T1と第2素子温度T2が均衡する制御を行なっている。
なお、複数の第1切替温度相関関係は、実施の形態1と同様に、テーブルとしてメモリに記憶してもよいし、近似式として記憶してもよい。
ここで図5に戻り、制御回路29は第1電流I1の絶対値と第1素子温度T1から、S53で選択された第1切替温度相関関係を用いて第1切替温度Ts1を求める(S55)。これにより、第1周囲温度Ta1により補正された第1切替温度Ts1が得られるので、第1素子温度T1が過昇温に至る可能性をさらに低減することができる。
次に、制御回路29は第2周囲温度センサ33より第2周囲温度Ta2を読み込む(S57)。そして、制御回路29は第2周囲温度Ta2に対応する第2切替温度相関関係を選択する(S59)。これらの動作はS51からS53と同等である。また、第1切替温度相関関係と同様にして、第2切替温度相関関係においても、図3(b)に示した相関関係を第2周囲温度Ta2毎に複数求めてメモリに記憶してある。
次に、制御回路29は第2電流I2の絶対値と第2素子温度T2から、S59で選択された第2切替温度相関関係を用いて第2切替温度Ts2を求める(S61)。これにより、第2周囲温度Ta2により補正された第2切替温度Ts2が得られるので、第2素子温度T2においても過昇温に至る可能性をさらに低減することができる。
S61以降の動作は実施の形態1で説明したS31以降の動作と同じであるので、説明を省略する。
以上の構成、動作により、実施の形態1の動作に加え、第1切替温度Ts1と第2切替温度Ts2を、それぞれ第1周囲温度Ta1、および第2周囲温度Ta2により補正するようにしたので、前記スイッチング素子が過昇温に至る可能性をさらに低減できる高効率な電源装置が実現できる。
(実施の形態3)
本実施の形態3における電源装置の構成は、実施の形態1の図1と同じであるので、詳細な説明を省略する。すなわち、本実施の形態3における特徴部分は、実施の形態1の図2におけるS14の動作である。なお、S14以外の動作は実施の形態1と同じであるので、その詳細な説明を省略する。
実施の形態1では図2に示すように、制御回路29は、各切替温度Tsi(第1切替温度Ts1、第2切替温度Ts2)を求める際に、電流Ii(第1電流I1、第2電流I2)の絶対値、または素子温度Ti(第1素子温度T1、第2素子温度T2)が各切替温度相関関係(第1切替温度相関関係、第2切替温度相関関係)により各切替温度Tsi(第1切替温度Ts1、第2切替温度Ts2)を求めるための範囲を超える場合、すなわち、前記スイッチング素子が過昇温に至る可能性が高い場合は、DC/DCコンバータ(第1DC/DCコンバータ15、第2DC/DCコンバータ17)を停止している(S14)。
これに対し、本実施の形態3では、第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17を停止する動作に替えて、S14の時点でDC/DCコンバータ(第1DC/DCコンバータ15、第2DC/DCコンバータ17)に流れる電流Ii(第1電流I1、第2電流I2)が所定電流Isi(第1所定電流Is1、第2所定電流Is2)以下になるようにそれぞれ制御する動作を行う。
ここで、第1所定電流Is1とは、第1素子温度T1が下限温度(−40℃)である場合に、第1DC/DCコンバータ15を動作させても前記スイッチング素子からの放熱が勝り、第1素子温度T1が上昇しない最大の電流値のことである。なお、第1所定電流Is1は前記スイッチング素子の配置や放熱設計によって変わってくるので、予め実測してメモリに記憶してある。
従って、上記した第1素子温度T1の全範囲(−40℃から上限温度Tmまで)において、第1DC/DCコンバータ15を第1所定電流Is1までの第1電流I1が流れるように絞って制御することで、第1素子温度T1は上昇することがなく、例えば空冷や水冷を組み合わせる等の放熱設計によっては第1素子温度T1を低下させることができる。このように制御することにより、実施の形態1のように第1DC/DCコンバータ15を停止するよりは時間がかかるものの、第1素子温度T1が低下するので、前記スイッチング素子の過昇温の可能性を低減できる。
なお、第2所定電流Is2についても、第1所定電流Is1と同じ意味であり、同様の方法で予め求めておく。従って、第2素子温度T2が低下するので、前記スイッチング素子の過昇温の可能性を低減できる。
但し、第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17との配置の違いや、それらの内部における前記各スイッチング素子の放熱特性の違いが存在する場合は、第1所定電流Is1と第2所定電流Is2が異なる値になるので、それぞれについて実測により求める必要がある。この際、蓄電部19の充放電要求電流が大きい場合は、第1電流I1と第2電流I2が均衡しないことがある。しかし、図2のS14の時点では、前記スイッチング素子の過昇温の可能性を低減することが優先されるので、制御回路29は第1電流I1と第2電流I2が不均衡であっても、第1電流I1は第1所定電流Is1以下になるように、第2電流I2は第2所定電流Is2以下になるように、それぞれ制御する。
このような動作を行うことにより、本実施の形態3では図2のS14の時点において、制御回路29は、上記したように第1電流I1が第1所定電流Is1以下になるように第1DC/DCコンバータ15を制御するとともに、第2電流I2が第2所定電流Is2以下になるように第2DC/DCコンバータ17を制御するので、それぞれに電流Iiが流れ続ける。従って、電源装置としての本来の回生電力回収能力、および放電能力からは不十分となるが、実施の形態1のように第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17を停止させるよりは、僅かでも回生電力の有効活用が図れ、その分、高効率化が可能となる。
以上の構成、動作により、実施の形態1の動作に加え、前記スイッチング素子が過昇温に至る可能性が高い場合は、第1電流I1が第1所定電流Is1以下になるように第1DC/DCコンバータ15を制御するとともに、第2電流I2が第2所定電流Is2以下になるように第2DC/DCコンバータ17を制御するので、前記スイッチング素子が過昇温に至る可能性をさらに低減できる高効率な電源装置が実現できる。
なお、本実施の形態3で述べた構成、動作は、実施の形態2において実施してもよい。この場合、周囲温度Taiによる切替温度Tsiの補正と、前記スイッチング素子が過昇温に至る可能性が高い場合における電流Iiの所定電流Isi以下になる制御の両方を行なうことにより、前記スイッチング素子が過昇温に至る可能性を、なお一層低減できる。
また、実施の形態1〜3において、電流Iiの絶対値、または素子温度Tiが各切替温度相関関係により各切替温度Tsiを求めるための範囲を超えない仕様であったり、超えないように予め設計されている場合は、図2、および図5におけるS13〜S15、S17、S21、およびS25の動作を行わず、直ちに各切替温度Tsiを求めるようにしてもよい。この場合、制御が簡単になり、前記スイッチング素子が過昇温に至る可能性がある状態で、タイムリーに各素子温度Tiが均衡する制御に切り替えることができるので、過昇温の可能性をさらに低減できる。
また、実施の形態1〜3において、第1DC/DCコンバータ15と第2DC/DCコンバータ17は、スイッチング素子として、それぞれ2つのFETを用いる構成としたが、これは一方のスイッチング素子をダイオードとしてもよい。この場合、前記ダイオードの方が前記FETより高温になる構成であれば、第1素子温度センサ21や第2素子温度センサ23を前記ダイオードの近傍に配置する。これにより、前記スイッチング素子が過昇温に至る可能性を低減できる高効率電源装置が得られる。
また、実施の形態1〜3において、前記回路素子の内、前記スイッチング素子に第1素子温度センサ21と第2素子温度センサ23を設ける構成について説明したが、これは前記回路素子の内のコイルでもよい。すなわち、前記コイルの方が前記スイッチング素子より高温になる構成であれば、前記コイルの近傍に第1素子温度センサ21や第2素子温度センサ23を配置する。この場合の構成、動作については、上記までに説明した「スイッチング素子」を「コイル」に置き換えた構成、動作とすればよい。これにより、前記コイルが過昇温に至る可能性を低減できる高効率電源装置が得られる。
また、実施の形態1〜3において、DC/DCコンバータを2つ並列接続した構成について説明したが、これはDC/DCコンバータが3つ以上並列となる構成でもよい。この場合も、2つ並列接続の場合と同様に動作させることにより、前記回路素子が過昇温に至る可能性を低減できる高効率電源装置が得られる。
また、実施の形態1〜3において、蓄電部19として電気二重層キャパシタを用いた場合について説明したが、これに限らず、急峻に発生する回生電力を十分に受け入れることができる蓄電部品(例えば電気化学キャパシタ)であってもよい。
さらに、実施の形態1〜3において、電源装置を回生機能付き車両に用いた場合について説明したが、これに限定されず、ハイブリッド車や電気自動車の高電圧蓄電部(主電源13)により、電装品への電力供給用の鉛バッテリを充電するための電源装置として用いてもよい。この場合、蓄電部19は鉛バッテリに相当する。このような構成であっても、前記回路素子が過昇温に至る可能性を低減できる高効率電源装置が得られる。
また、実施の形態1〜3で述べた各種電流電圧値はいずれも一例であり、電源装置を使用する用途における仕様に基いて適宜最適値を決定すればよい。
また、実施の形態1〜3では電源装置を回生機能付き車両に用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えばクレーン等の産業機器やエレベータなど回生電力を充放電する機器へ適用してもよい。さらに、大電力を扱う2つの電源間の電源装置として用いてもよい。