JP5618509B2 - メラニン前駆体製造における反応終点決定方法 - Google Patents
メラニン前駆体製造における反応終点決定方法 Download PDFInfo
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Description
(I-1)DOPA及びその類縁体からなる群から選択される少なくとも1種の基質化合物に、酸化酵素または当該酵素を含有する微生物を反応させてメラニン前駆体を製造する方法であって、
(1)反応液にアルカリまたは酸を供給して反応液のpHを5〜6に維持する工程、及び
(2)(a)反応液のpH、(b)反応系におけるO2吸収量とCO2発生量の差異(「O2吸収量−CO2発生量」)、および(c)反応液中の溶存酸素量、からなる群から選択されるいずれか少なくとも1つを連続的に測定し、測定値の経時的変化をモニターする工程、
を有し、
(3)上記(a)〜(c)のいずれか少なくとも1つの経時的変化の傾向の切り替わりを指標として反応を終了することを特徴とする、
メラニン前駆体の製造方法。
(1)の工程における反応液へのアルカリまたは酸の供給と、(2)の工程における反応液のpHの経時的変化のモニターが連動制御されており、
反応液のpH低下が上昇に転じ、反応液へのアルカリ供給から酸の供給に切り替わることを指標として、反応を終了することを特徴とする、(I-1)記載のメラニン前駆体の製造方法。
反応系における1分あたりの「O2吸収量−CO2発生量」が最大値の20%にまで低下したことを指標として反応を終了することを特徴とする、(I-1)記載のメラニン前駆体の製造方法。
反応液中の溶存酸素量が減少から上昇に転じ、最大になった時点を反応終点の指標として反応を終了することを特徴とする、(I-1)記載のメラニン前駆体の製造方法。
(I-5)上記酸化酵素がカテコールオキシダーゼ活性を有する酵素である、(I-1)乃至(I-4)記載の製造方法。
(I-6)上記カテコールオキシダーゼ活性を有する酵素がチロシナーゼである、(I-5)記載の製造方法。
(I-7)上記微生物が酵母である、(I-1)乃至(I-6)記載の製造方法。
(II-1)DOPA及びこれらの類縁体からなる群から選択される少なくとも1種の基質化合物に、酸化酵素または当該酵素を含有する微生物を反応させてメラニン前駆体を製造する方法において反応終点を決定する方法であって、
(1)反応液にアルカリまたは酸を供給して反応液のpHを5〜6に維持する工程、及び
(2)(a)反応液のpH、(b)反応系におけるO2吸収量とCO2発生量の差異(「O2吸収量−CO2発生量」)、および(c)反応液中の溶存酸素量、からなる群から選択されるいずれか少なくとも1つを連続的に測定し、測定値の経時的変化をモニターする工程、
を有し、
(3)上記(a)〜(c)のいずれか少なくとも1つの経時的変化の傾向の切り替わりを反応終点の指標とする、上記方法。
(1)の工程における反応液へのアルカリまたは酸の供給と、(2)の工程における反応液のpHの経時的変化のモニターが連動制御されており、
反応液にアルカリを供給したときのpH変化が低下から上昇に転じ、反応液へのアルカリ供給から酸の供給に切り替わることを反応終点の指標とすることを特徴とする、(II-1)記載の反応終点の決定方法。
反応系における1分あたりの「O2吸収量−CO2発生量」が最大値の20%にまで低下したことを指標とすることを特徴とする、(II-1)記載の反応終点の決定方法。
反応液中の溶存酸素量が減少から上昇に転じ、最大になった時点を反応終点の指標とすることを特徴とする、(II-1)記載の反応終点の決定方法。
(II-5)上記酸化酵素がカテコールオキシダーゼ活性を有する酵素である、(II-1)乃至(II-4)記載の反応終点の決定方法。
(II-6)上記カテコールオキシダーゼ活性を有する酵素がチロシナーゼである、(II-5)記載の反応終点の決定方法。
(II-7)上記微生物が酵母である、(II-1)乃至(II-6)記載の反応終点の決定方法。
本発明の製造方法が対象とするメラニン前駆体は、DOPA及びその類縁体からなる群から選択される少なくとも1種の基質化合物から、酵素を用いた酸化反応により製造される化合物またはそれらの化合物群である。これらの化合物または化合物群は、空気中の酸素ですみやかに酸化重合しメラニンを形成するため、メラニン前駆体と総称される。具体的には、メラニンの構成モノマー(例えば、ドーパクロム、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸、5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドリン、5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸)、並びにこれらのモノマーが2〜5分子程度重合してなる水溶性オリゴマーを挙げることができる。好ましくはドーパクロム、5,6-ジヒドロキシインドール、および5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸である。
本発明のメラニン前駆体の製造において、基質化合物としては、DOPA及びDOPA類縁体からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を使用する。DOPA及びDOPA類縁体は、L体(3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-L-アラニン)(以下、「L-DOPA」とも称する)又はD体(3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-D-アラニン)のいずれであってもよい。DOPA類縁体としては、ドーパミン(Dopamine)や、DOPAの低級(炭素数1〜4)アルキルエステル、およびα−低級(炭素数1〜4)アルキルDOPA等が挙げられ、これらの異性体であってもよい。中でも、天然型メラニン前駆体が得られる点で、L-DOPAを用いることが好ましく、酵素に対する親和性の点でもL-DOPAを用いることが好ましい。
本発明のメラニン前駆体の製造に使用する酵素は、前述する基質化合物を酸化する作用を有するものであればよい。具体的には、酸化酵素を挙げることができる。中でも好ましくはカテコールオキシダーゼ活性を有する酵素である。
本発明の製造方法には、上記酵素に代えて上記酵素を含有する微生物を使用することもできる。
(c-1)「酸化酵素」遺伝子を本来発現させているプロモーターよりも高活性のプロモーターの下でこの遺伝子を発現させている微生物。
(c-2)「酸化酵素」遺伝子を複数コピー有する微生物。
(c-3)「酸化酵素」遺伝子の変異体を有することにより高い酵素活性(好ましくはカテコールオキシダーゼ活性、より好ましくはチロシナーゼ活性)を示す微生物。
(2)この微生物を水に懸濁して遠心分離し、上清を除去する。
(3)(2)の工程を繰り返すことにより、微生物を洗浄する。
(4)(3)で得られた微生物を水に懸濁したものを微生物懸濁液とする。
なお、酸化酵素活性を示す酵素、特にチロシナーゼが活性を示すためには、触媒活性中心に2価銅イオンが配位することが必要である。このため、メラニン前駆体の製造に、酸化酵素活性を示す酵素、または当該酵素を含有する微生物のいずれを用いる場合でも、これらの酵素又は微生物を、予め2価銅イオンで処理することにより、酸化酵素の触媒活性中心に2価銅イオンを配位させることが好ましい。かかる方法として、具体的には、酵素又は微生物を0.1〜2mM程度の硫酸銅溶液等に懸濁し、30〜40℃程度で0.5〜2時間程度静置する方法を挙げることができる。
本発明の製造方法は、前述する基質化合物に、前述する酵素または当該酵素を含有する微生物を反応させる酸化反応において、下記の(1)及び(2)の工程を有することを特徴とする。
(1)反応液のpHを5〜6に維持する工程、
(2)(a)反応液のpH、(b)反応系におけるO2吸収量とCO2発生量の差異(「O2吸収量−CO2発生量」)、および(c)反応液中の溶存酸素量、からなる群から選択されるいずれか少なくとも1つを連続的に測定し、その測定値の経時的変化をモニターする工程。
(b)反応系から排出されてくるガス中のO2濃度とCO2濃度を連続的に測定し、反応系の(「O2吸収量−CO2発生量」)を算出し、その経時的変化をモニターする工程、
(c)反応液中の溶存酸素量を連続的に測定し、その測定値の経時的変化をモニターする工程。
当該方法は、反応液のpHを連続的に測定し、その測定値を経時的にモニタリングすることによって実施できる。なお、ここで「pHを連続的に測定する」とは、少なくとも反応時間中、継続してpHを測定することを意味し、その限りにおいて絶え間なく測定する場合のみならず、間欠的に複数回測定する場合も含まれる。反応終点を見逃さないためには、絶え間なく測定することが好ましい。
当該方法は、反応系のO2吸収量及びCO2発生量を連続的に測定し、その測定値から「O2吸収量−CO2発生量」を算出することによって実施できる。なお、ここで「『O2吸収量−CO2発生量』を連続的に測定する」とは、少なくとも反応時間中、継続して当該「O2吸収量−CO2発生量」を測定することを意味し、その限りにおいて絶え間なく測定する場合のみならず、間欠的に複数回測定する場合も含まれる。反応終点を見逃さないためには、絶え間なく測定することが好ましい。
当該方法は、反応液の溶存酸素量を連続的に測定し、その測定値を経時的にモニタリングすることによって実施できる。なお、ここで「溶存酸素量を連続的に測定する」とは、少なくとも反応時間中、継続して当該溶存酸素量を測定することを意味し、その限りにおいて絶え間なく測定する場合のみならず、間欠的に複数回測定する場合も含まれる。反応終点を見逃さないためには、絶え間なく測定することが好ましい。
斯くして調製されたメラニン前駆体を含む反応液(メラニン前駆体含有溶液)には、メラニン前駆体のほかに、使用した酵素又は微生物、更には通気及び撹拌により細胞が破損して生じたタンパク質又は細胞から流出したタンパク質や、メラニン前駆体が重合したメラニンも含まれる。従って、必要に応じて、反応液からメラニン前駆体以外の成分を除去してもよい。例えば酵素や微生物細胞の除去は、限外ろ過等のろ過、遠心分離等の手段により行うことができる。また、タンパク質やメラニンの除去は、限外ろ過、ゲルろ過クロマトグラフィー等の手段により行うことができる。
本発明はまたメラニン前駆体の製造において反応終点を決定する方法を提供する。
(1)反応液のpHを5〜6に維持する工程、及び
(2)(a)反応液のpH、(b)反応系におけるO2吸収量とCO2発生量の差異(「O2吸収量−CO2発生量」)、および(c)反応液中の溶存酸素量、からなる群から選択されるいずれか少なくとも1つを連続的に測定して、その測定値の経時的変化をモニターする工程、
を有し、
(3)(a)〜(c)のいずれか少なくとも1つの経時的変化の傾向の切り替わりを反応終点の指標とすることによって実施することができる。
(1)カテコールオキシダーゼ産生微生物(melB産生酵母)の調製
カテコールオキシダーゼとしてチロシナーゼ(melB)、微生物として酵母(Saccharomyces cerevisiae)を用いて、カテコールオキシダーゼ産生微生物を調製した。なお、チロシナーゼ(melB)は麹菌Aspergillus oryzaeから単離された酵素である(特許第3903125号公報)。そのアミノ酸配列、並びにそれをコードするmelB遺伝子のクローニング方法およびその塩基配列も、上記特許第3903125号公報に記載されている。
特許第3903125号公報の記載に従って、麹菌Aspergillus oryzaeからmelB遺伝子をクローニングした。具体的には、麹菌「Aspergillus oryzae OSI-1013」株(受託番号FERM P-16528、平成9年11月20日に日本国茨城県つくば市東1-1-1 つくばセンター 中央第6に住所を有する独立行政法人産業技術総合研究所・特許生物寄託センター(旧:工業技術院生命工学工業技術研究所・特許微生物寄託センター)に寄託)を蒸米に接種し、製麹した麹を1.5g秤量し、液体窒素中で完全に破砕した。日本ジーン社製ISOGENを用いて、これから240μgの全RNAを抽出した。120μgの全RNAからタカラバイオ株式会社製Oligotex-dT30<Super>を用いて、1μgのmRNAを精製した。このmRNAを、Clontech社製SMART cDNA Library Construction KitによりcDNAライブラリーを作成し、PCRによりmelB cDNAのみを増幅した。得られたPCR産物はアガロースゲル電気泳動で、目的の約1.8Kbpのバンドのみが増幅されていることを確認した。また、塩基配列解析の結果、正常にイントロン配列が取り除かれていることも確認した。なお、特許第3903125号公報の配列番号2に記載されているmelB遺伝子の塩基配列のうち、1〜1436番目の塩基配列はプロモーター領域、3636〜4174番目の塩基配列はターミネーター領域に相当し、1437〜3635番目の塩基配列は、melB cDNAに相当するコーティング領域に相当する。
上記(a)で得られたmelB cDNAを、酵母Saccharomyces cerevisiae用発現ベクター(特開2003-265177号公報)に発現可能な状態で接続した。具体的には、特開2003-265177号公報の記載に準じて、SED1プロモーターとADH1ターミネーターを持つ上記発現ベクターのプロモーター直下のSmaI部位に、上記(a)で取得したmelB cDNAを挿入した。URA3マーカー内部に存在するStuI部位で切断することにより得られるmelB cDNAを含む断片を導入用カセットとして精製した。
上記で得られたmelB産生酵母(組換え酵母)を常法に従って培養し、遠心分離によって菌体を回収し、蒸留水で洗浄した。次いで、菌体(湿重量約100mg)に0.1mMの硫酸銅を含む水溶液1mLを加え、40℃で20分間保持した。その後、遠心分離により菌体を回収し、これを50mMの酢酸緩衝液(NaOAc-HCl)(pH3.0)1mLに懸濁し、室温で10分間静置した。その後、遠心分離により菌体を回収し、過剰な銅イオンを除去するため、20mMのEDTA溶液(KOHを使用してpH5に調整)で洗浄し、遠心分離して菌体を回収した。斯くして活性化処理された菌体を水1mLに懸濁して、これを微生物懸濁液とした。
(1)試験液の処理
測定する試験液の遠心上清0.5mlと3%(w/v)アスコルビン酸ナトリウム水溶液0.5mlを混和する。本溶液を65℃で15分間加熱後、0.1%(w/v)リン酸水溶液9.0mlを添加してよく混ぜる。かかる処理により、試験液中に含まれているドーパクロムは全量5,6-ジヒドロキシインドールに変換され定量することができる。
斯くして調製した試験液の遠心上清を下記条件のHPLCに供し、標準化合物(L-DOPA:和光純薬社製、5,6-ジヒドロキシインドール:BIO SYNTH社製)で作成した検量線から、反応液中のL-DOPAおよびドーパクロムの濃度を測定する。
HPLC装置:Waters社製HPLC Alliance2695-2996
カラム: Waters社製SunfireC18(4.6×150mm)
移動相:A液−1.5%(w/v)リン酸溶液、B液−99.9%メタノール(B液が初発0%、5分後に50%となるようにグラジエントを設定)
試験液注入量:10μl
流速:1.0ml/min
検出:極大吸収波長である280nmにおける吸光度でモニター。
(1)反応液を通って出てくるガス中のO2濃度およびCO2濃度の測定方法
反応系における反応液を通って出てくるガス中のO2濃度およびCO2濃度は、株式会社堀場製作所製のマルチガス分析ユニットVA-3015及びマルチガスサンプリングユニットVS-3001を使用することで測定することができる(図4中の「ガス分析計(O2/CO2測定部)7」に相当)。反応液を通って出てくるガス中のO2濃度(排ガス中のO2濃度)はVA-3015内蔵のジルコニア式O2分析計にて測定できる。また反応液を通って出てくるガス中のCO2濃度(排ガス中のCO2濃度)はVA-3015内蔵の赤外分析計にて測定できる。
1分あたりの「O2吸収量−CO2発生量」は、上記方法で測定した排ガス中のO2濃度およびCO2濃度から、下式に従って算出することができる。
図7に示す反応システムにおいて、溶存酸素測定部9として溶存酸素計を付帯している10L容量の反応槽2(丸菱バイオエンジ社製(MDL-8C))を使用した。また電極として、東亜DKK社製ガルバニ型溶存酸素電極(OX-3200またはOE-8PT2)を使用した。電極は、予め、無酸素液(飽和亜硫酸ナトリウム溶液)に浸して0に合わせ、次いで十分に酸素を通気した純水中に浸して指示値が安定したら飽和DO値(100%)に設定したものを使用した。これにより、反応液中の溶存酸素飽和度(%)を測定することができる。
図1に示す反応システムの概略図を参考にして説明する。
当該反応システム1は、反応液3を収容した反応槽2、反応液にアルカリを供給するアルカリ供給部4、反応液に酸を供給する酸供給部5、反応液のpHをモニターするpH検出部6を少なくとも備えており、アルカリ供給部4と酸供給部5はpH検出部6と連動しており、反応液3のpHが常に5〜6、好ましくはpH5.3付近に維持されるように、制御部17によりオンラインでコントロールされている。すなわち、反応液3のpHが5より低くなる場合はアルカリ供給部4からアルカリ水溶液が自動添加されて反応液3のpHが5.3付近になるように調整され、逆に反応液3のpHが6より高くなる場合は酸供給部5から酸水溶液が自動添加されて反応液3のpHが5.3付近になるように調整されている。なお、ここでは、アルカリ水溶液として6Nの水酸化ナトリウム水溶液を、酸水溶液として3Nの硫酸水溶液を使用した。
pH測定部6を備えた30L容量の反応槽2に、イオン交換水23.4L、L-DOPA(3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アラニン)324gを仕込み、アルカリ供給部4から6NのNaOH水溶液を添加して、反応液のpHを5.3付近になるように調整した。これに参考例1に記載する方法で調製した微生物懸濁液4.05L(酵素活性14,580kU)を添加して、反応を開始した(反応液3の総量27L)。反応は、反応液3の温度を25℃前後に調整し、酸素供給部11から酸素を10L/minの割合で供給しながら、撹拌下(800rpm)で行った。また排気バルブ14は全閉し、閉鎖系で反応を行った。なお、前述するように、反応は、反応液のpHが5.3付近になるように、アルカリ供給部4から6NのNaOH水溶液の添加が、また酸供給部5から3NのH2SO4水溶液の添加が、自動制御されている。
図4に示す反応システムの概略図を参考にして説明する。
当該反応システム1は、反応液3を収容した反応槽2、反応液にアルカリを供給するアルカリ供給部4、反応液に酸を供給する酸供給部5、反応液のpHをモニターするpH検出部6、反応液に酸素供給する酸素供給部11、およびO2/CO2測定部7を少なくとも備えており、アルカリ供給部4と酸供給部5はpH検出部6と連動しており、反応液のpHが常に5〜6、好ましくはpH5.3付近に維持されるように、制御部17によりオンラインでコントロールされている。すなわち、反応液3のpHが5より低くなる場合はアルカリ供給部4からアルカリ水溶液が自動添加されて反応液3のpHが5.3付近になるように調整され、逆に反応液3のpHが6より高くなる場合は酸供給部5から酸水溶液が自動添加されて反応液3のpHが5.3付近になるように調整されている。なお、ここでは、アルカリ水溶液として6Nの水酸化ナトリウム水溶液を、酸水溶液として3Nの硫酸水溶液を使用した。
pH測定部6並びにガス分析計(O2/CO2測定部)7を備えた5L容量の反応槽2に、イオン交換水2.6L、L-DOPA48gを仕込み、アルカリ供給部4から6NのNaOH水溶液を添加して、反応液のpHが5.3付近になるように調整した。これに参考例1に記載する方法で調製した微生物懸濁液0.4L(酵素活性720kU)を添加して、反応を開始した(反応液3の総量5L)。反応は、反応液3の温度を25℃前後に調整し、酸素供給部11から酸素を10L/minの割合で供給しながら、撹拌下(800rpm)で行った。また排気バルブ14は全閉し、閉鎖系で反応を行った。なお、前述するように、反応は、反応液のpHが5.3付近になるように、アルカリ供給部4から6NのNaOH水溶液の添加が、また酸供給部5から3NのH2SO4水溶液の添加が、自動制御されている。
図7に示す反応システムの概略図を参考にして説明する。
当該反応システム1は、反応液3を収容した反応槽2、反応液にアルカリを供給するアルカリ供給部4、反応液に酸を供給する酸供給部5、反応液のpHをモニターするpH検出部6、反応液に酸素供給する酸素供給部11、反応液の溶存酸素量を測定するDO測定部9を少なくとも備えており、アルカリ供給部4と酸供給部5はpH検出部6と連動しており、反応液のpHが常に5〜6、好ましくはpH5.3付近に維持されるように、制御部17によりオンラインでコントロールされている。すなわち、反応液3のpHが5より低くなる場合はアルカリ供給部4からアルカリ水溶液が自動添加されて反応液3のpHが5.3付近になるように調整され、逆に反応液3のpHが6より高くなる場合は酸供給部5から酸水溶液が自動添加されて反応液3のpHが5.3付近になるように調整されている。なお、ここでは、アルカリ水溶液として6Nの水酸化ナトリウム水溶液を、酸水溶液として3Nの硫酸水溶液を使用した。
pH測定部6およびDO測定部9を備えた5L容量の培養槽2に、イオン交換水2.6L、L-DOPA(3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アラニン)48gを仕込み、アルカリ供給部4から6NのNaOH水溶液を添加して、反応液のpHを5.3付近になるように調整した。これに参考例1に記載する方法で調製した微生物懸濁液0.4L(酵素活性720kU)を添加して、反応を開始した(反応液3の総量5L)。反応は、反応液3の温度を25℃前後に調整し、酸素供給部11から酸素を10L/minの割合で供給しながら、撹拌下(800rpm)で行った。また排気バルブ14は全閉し、閉鎖系で反応を行った。なお、前述するように、反応は、反応液のpHが5.3付近になるように、アルカリ供給部4から6NのNaOH水溶液の添加が、また酸供給部5から3NのH2SO4水溶液の添加が自動制御されている。
2.反応槽
3.反応液
4.アルカリ供給部
5.酸供給部
6.pH検出部
7.ガス分析計(O2/CO2測定部)
9.酸素溶存量測定部(DO測定部)
11.O2/空気供給部
12.圧力調整部
13.ニードルバルブ
14.排気バルブ
15.流量計
16.圧力計
17. 制御部
Claims (6)
- 3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アラニン(DOPA)及びこれらの類縁体からなる群から選択される少なくとも1種の基質化合物に、カテコールオキシダーゼ活性を有する酵素または当該酵素を含有する微生物を反応させてメラニン前駆体を製造する方法であって、
(1)反応液にアルカリまたは酸を供給して反応液のpHを5〜6に維持する工程、及び
(2)反応液のpHを連続して測定し、測定値の経時的変化をモニターする工程、を有し、
(3)(1)の工程における反応液へのアルカリまたは酸の供給と、(2)の工程における反応液のpHの経時的変化のモニターが連動制御されており、
反応液のpH低下が上昇に転じ、反応液へのアルカリ供給から酸の供給に切り替わることを指標として、反応を終了することを特徴とする、メラニン前駆体の製造方法。 - 3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アラニン(DOPA)及びこれらの類縁体からなる群から選択される少なくとも1種の基質化合物に、カテコールオキシダーゼ活性を有する酵素または当該酵素を含有する微生物を反応させてメラニン前駆体を製造する方法であって、
(1)反応液にアルカリまたは酸を供給して反応液のpHを5〜6に維持する工程、及び
(2)反応系におけるO 2 吸収量とCO 2 発生量の差異(「O 2 吸収量−CO 2 発生量」)を連続して測定し、測定値の経時的変化をモニターする工程、を有し、
(3)反応系における1分あたりの「O2吸収量−CO2発生量」が低くなり、1分当たりの「O2吸収量−CO2発生量」が最大値の20%以下に低下することを指標として反応を終了することを特徴とする、メラニン前駆体の製造方法。 - 3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アラニン(DOPA)及びこれらの類縁体からなる群から選択される少なくとも1種の基質化合物に、カテコールオキシダーゼ活性を有する酵素または当該酵素を含有する微生物を反応させてメラニン前駆体を製造する方法であって、
(1)反応液にアルカリまたは酸を供給して反応液のpHを5〜6に維持する工程、及び
(2)反応液中の溶存酸素量を連続して測定し、測定値の経時的変化をモニターする工程、を有し、
(3)反応液中の溶存酸素量が減少から上昇に転じ、最大になった時点を反応終点の指標として反応を終了することを特徴とする、メラニン前駆体の製造方法。 - 3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アラニン(DOPA)及びこれらの類縁体からなる群から選択される少なくとも1種の基質化合物に、カテコールオキシダーゼ活性を有する酵素または当該酵素を含有する微生物を反応させてメラニン前駆体を製造する方法において反応終点を決定する方法であって、
(1)反応液にアルカリまたは酸を供給して反応液のpHを5〜6に維持する工程、及び
(2)反応液のpHを連続的に測定し、測定値の経時的変化をモニターする工程、を有し、
(3)(1)の工程における反応液へのアルカリまたは酸の供給と、(2)の工程における反応液のpHの経時的変化のモニターが連動制御されており、
反応液にアルカリを供給したときのpH変化が低下から上昇に転じ、反応液へのアルカリ供給から酸の供給に切り替わることを反応終点の指標とすることを特徴とする、反応終点の決定方法。 - 3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アラニン(DOPA)及びこれらの類縁体からなる群から選択される少なくとも1種の基質化合物に、カテコールオキシダーゼ活性を有する酵素または当該酵素を含有する微生物を反応させてメラニン前駆体を製造する方法において反応終点を決定する方法であって、
(1)反応液にアルカリまたは酸を供給して反応液のpHを5〜6に維持する工程、及び
(2)反応系におけるO 2 吸収量とCO 2 発生量の差異(「O 2 吸収量−CO 2 発生量」)を連続的に測定し、測定値の経時的変化をモニターする工程、を有し、
(3)反応系における1分あたりの「O2吸収量−CO2発生量」が低くなり、1分当たりの「O2吸収量−CO2発生量」が最大値の20%以下に低下することを反応終点の指標とすることを特徴とする、反応終点の決定方法。 - 3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アラニン(DOPA)及びこれらの類縁体からなる群から選択される少なくとも1種の基質化合物に、カテコールオキシダーゼ活性を有する酵素または当該酵素を含有する微生物を反応させてメラニン前駆体を製造する方法において反応終点を決定する方法であって、
(1)反応液にアルカリまたは酸を供給して反応液のpHを5〜6に維持する工程、及び
(2)反応液中の溶存酸素量を連続的に測定し、測定値の経時的変化をモニターする工程、を有し、
(3)反応液中の溶存酸素量が減少から上昇に転じ、最大になった時点を反応終点の指標とすることを特徴とする、反応終点の決定方法。
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