JP5617144B2 - サスペンションメンバ - Google Patents

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Description

本発明は、左右の前輪用サスペンションアームを支持するべく車両の前後左右に離間配置された4つのアーム支持部と、前記4つのアーム支持部の間で前後左右方向に延出された板状本体とを備えたサスペンションメンバに関する。
この種のサスペンションメンバに関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献1がある。この特許文献1に記されたサスペンションメンバでは、2つのプレス成形体を上下に重ね合わせて接合した一般的なサスペンションメンバに対する軽量化を図るために、サスペンションメンバのベース部をアルミニウム合金によって一体的に鋳造している。ベース部は、前後左右方向に延出された板状本体と、板状本体の前後の2辺などから下方に延設されたフランジ部とを有する。尚、4つのアーム支持部を構成するロアアーム取り付け用のブラケットはベース部の左右両端にボルトで連結されている。
特開2010−69965号公報(0031段落、図6)
特許文献1に記されたサスペンションメンバでは、左右のサスペンションアームから加えられる車両幅方向に沿った軸心周りでの捻りを伴う外力などに基づいて、前後のフランジ部の下端側の間隔を前後に広げるような応力が作用すると論じ、この応力によるベース部の過剰な変形や破損を防ぐために、板状本体の下面から一体的に立設された多数のリブ(左右の合計で30枚を超える)が、特に前後のフランジ部どうしを接続するように、平面視で縦横斜めに高密度で張りめぐらされている。その結果、アルミニウム合金による鋳造部品を用いているにも関わらず十分な軽量化が達成されないという問題が見られた。
また、特許文献1に記されたサスペンションメンバでは、前述したフランジ部の下端側を前後に広げるような応力によるベース部の過剰な変形や破損を防ぐために、フランジ部を先端から基端に向かって次第に肉厚の増すテーパ状とすることで、ベース部の断面の図心を板状本体寄りに近付ける手法を採用している。しかし、この手法でもフランジ部の基端側肉厚化によって必然的に重量が増す傾向となるために、やはり十分な軽量化を達成し難い状況が見られた。
そこで、本発明の目的は、上に例示した従来技術が与える課題に鑑み、アルミニウム合金などによる一体鋳造によるものとし、且つ、走行中の前輪用サスペンションアームからの応力に対して十分な剛性を備えながら、より十分に軽量化が図られたサスペンションメンバを提供することにある。
本発明によるサスペンションメンバの特徴構成は、
左右の前輪用サスペンションアームを支持するべく車両の前後左右に離間配置された4つのアーム支持部と、前記4つのアーム支持部の間で前後左右方向に延出された板状本体とが備えられ、
前記板状本体の左右中央部にエンジンからのトルクロッドを取り付けるための取り付け座が設けられており、
前記板状本体における、右前側と左前側の一対のアーム支持部の間で左右方向に延設された前側外周部位と、右後側と左後側の一対のアーム支持部の間で左右方向に延設された後側外周部位と、右前側と右後側の一対のアーム支持部の間で延設された右側外周部位と、左前側と左後側の一対のアーム支持部の間で延設された左側外周部位とに、前記板状本体から立設された縦フランジが配置されており、
前記取り付け座の左右の位置において、前記前側外周部位の縦フランジと前記後側外周部位の縦フランジとを車両前後方向で連結する一対の前後縦リブが前記板状本体から立設されており、且つ、
前記前側外周部位の縦フランジと左右の各前記前後縦リブとの接合部付近と、左右方向で対応する後側の各アーム支持部付近とに平面視で斜めに延設する一対の第1傾斜縦リブと、前記後側外周部位の縦フランジと左右の各前記前後縦リブとの接合部付近と、左右方向で対応する前側の各アーム支持部付近とに平面視で斜めに延設する一対の第2傾斜縦リブとが、互いに交差するように、前記板状本体から立設されている点にある。
上記の特徴構成によるサスペンションメンバでは、サスペンションメンバの左右中心付近の箇所に加えられる左右の軸心回りでの捻れに対する剛性は、取り付け座の左右に最も高剛性の箇所を形成する一対の前後縦リブによって確保される。
また、トルクロッドからサスペンションメンバが受ける車両の前後方向を中心とした入力は、主に取り付け座の左右の位置にある一対の前後縦リブを経て、前後縦リブの更に左右に配置された第1傾斜縦リブ及び第2傾斜縦リブによって、概してサスペンションメンバの全体に効率的に分散される。
さらに、各前輪用サスペンションアームからサスペンションメンバに加えられる車両前後方向及び車両幅方向の入力は、互いに交差する一対の第1傾斜縦リブ及び第2傾斜縦リブによって、第1傾斜縦リブ及び第2傾斜縦リブと左右の中央寄りの一対の前後縦リブと縦フランジの三者が合流する接合部に伝達された上で、概してサスペンションメンバの全体に効率的に分散される。
また、各前輪用サスペンションアームからサスペンションメンバに加えられる車両上下方向の入力と、同入力に伴う車両幅方向の軸心回りでの捻れに対する剛性も、互いに交差する一対の第1傾斜縦リブ及び第2傾斜縦リブによって確保される。
このように、走行中にサスペンションメンバに加えられる主な入力に対する剛性は、取り付け座の左右の位置にある一対の前後縦リブと、前後縦リブの更に左右に配置された第1傾斜縦リブ及び第2傾斜縦リブとで十分に確保される。したがって、縦横斜めに多数のリブを設けた従来技術のサスペンションメンバに比して、サスペンションメンバの過剰な変形や破損を防止し、且つ、良好な乗り心地を維持したまま、十分に高い軽量化と低コスト化とを達成できる。
車両の前部構造を示す側面図である。 サスペンションメンバを示す平面図である。 図2のIII−IIIで示す矢視による断面図である。 図2のIV−IVで示す矢視による断面図である。 サスペンションメンバの上面を見た斜視図である。 サスペンションメンバの下面を見た斜視図である。 別実施形態によるサスペンションメンバの下面を見た斜視図である。
以下に本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図1及び図2に、ステアリングによって操向される左右の前輪50を備えた車両に用いられる前輪用のサスペンションメンバ1を示す。サスペンションメンバ1は、車両の前部で車両前後方向に延設された左右一対のサイドメンバ20を橋渡しするように、車幅方向に配設されている。
サスペンションメンバ1の左右両端付近には、左右のサスペンションアーム30が上下揺動自在に取り付けられている。左右の前輪50は、このサスペンションアーム30の遊端側に支持され、前輪50の前方又は上方に配置された横置きエンジン(不図示)によって駆動される。サスペンションアーム30の基端側は二股状に分岐されて、前側連結部30aと後側連結部30bとを有する。
(アーム支持部の構成)
このサスペンションメンバ1は、溶融アルミニウム合金を金型内へ射出、凝固させて得られた一体型のダイキャスト製であり、サスペンションアーム30を上下揺動自在に支持するべく車両の前後左右に離間配置された4つのアーム支持部3R,3L,4R,4L、及び、これら4つのアーム支持部3R,3L,4R,4Lの間で前後左右方向に一体的に延出された板状本体2を有する。
サスペンションメンバ1の前側のアーム支持部3R,3Lは、サスペンションアーム30の前側連結部30aを支持するために、下方と側方が開放された略直方体状の函状を呈している。前側連結部30aはアーム支持部3R,3Lに収納された後、アーム支持部3R,3Lに形成された前後の貫通孔h1に挿通されたボルトB1によって上下揺動自在に取り付けられる。
サスペンションメンバ1の後側のアーム支持部4R,4Lは、サスペンションアーム30の後側連結部30bを支持するために、前方と側方が開放された側面視で概してコの字状の断面形状を備えている。後側連結部30bは、アーム支持部4R,4Lに収納された後、アーム支持部4R,4Lに形成された上下の貫通孔h2に挿通されたボルトB2によって、サイドメンバ20から下方に突出した連結部20aと共に結合される。
また、サスペンションメンバ1の左右両端部付近には、サイドメンバ20を連結するための前部ステー部5R,5Lと後部ステー部6R,6Lとが一体的に形成されている。前部ステー部5R,5Lは、前側の左右一対のアーム支持部3R,3Lの後端付近から斜め上方外側に延設されている。後部ステー部6R,6Lは、後側の左右一対のアーム支持部4R,4Lの後端付近から更に後向きに延設されている。図1及び図5に示すように、左右のサイドメンバ20は、前部ステー部5R,5L及び後部ステー部6R,6Lの各先端に形成された貫通孔h3,h4を介してボルトB3,B4で連結される。
(ブラケット部の構成)
板状本体2の上面の車両幅方向に関してアーム支持部3R,3L,4R,4Lの若干内側の位置には、一対の第1ブラケット部7R,7Lが、その更に内側の位置には、一対の第2ブラケット部8R,8L(ブラケット部の一例)が上向きに膨出形成されている。第1ブラケット部7R,7L及び第2ブラケット部8R,8Lは、平面視において概して長円形のカップを伏せた形状を呈し、概して車両の前後方向に延設されている。
外側の一対の第1ブラケット部7R,7Lの天井部の上面は、スタビライザ40を取り付けるための取り付け座を構成しており、第1ブラケット部7R,7Lよりも大きな内側の一対の第2ブラケット部8R,8Lの上面は、ラックアンドピニオン式などのステアリング部材(不図示)を取り付けるための取り付け座を構成している。
スタビライザ40は、第1ブラケット部7R,7Lの取り付け座に一対のボルトB5で連結されたホルダ40Hによって、車両の幅方向に延びた軸心廻りで回転自在に支持される。また、スタビライザ40の両端部はサスペンションアーム30又は前輪50のナックル(不図示)に接続される。
さらに、板状本体2の上面の車両幅方向に関してほぼ中央の位置には、単一で比較的大型の第3ブラケット部9(補助ブラケット部の一例)がやはり上向きに膨出形成されている。第3ブラケット部9は平面視において概して矩形のカップを伏せた形状を呈している。第3ブラケット部9は、前端がエンジンの取り付け補助部60に連結されたトルクロッド65の後端65Aを取り付けるために設けられている。トルクロッド65の後端65Aを連結するための取り付け座9Sは、第3ブラケット部9の天井部の下面側に配置されている。
(上下フランジの構成)
4つのアーム支持部3R,3L,4R,4Lの設置箇所を除く板状本体2の外周部位のほぼ全てには、補強用の上下フランジ2F(縦フランジの一例)が一体的に備えられている。図2における右側の第1ブラケット部7Rの中心付近を車両前後方向に通るIV−IV矢視の断面を図4に示す。図4に示される板状本体2の後端のように、上下フランジ2Fは、板状本体2の外周部位から上方に延出された上方フランジ部FUと、板状本体2の外周部位から下方に延出された下方フランジ部FLとを備えることで、上下双方向に延出されている。
上下フランジ2Fは、板状本体2と同等の厚さと、上方フランジ部FUと下方フランジ部FLとが一直線状に連設された断面形状とを備え、全体として鉛直方向よりも僅かに下広がりに斜めに延びている。概して下方フランジ部FLは上方フランジ部FUよりも上下寸法が大きく、必要に応じて、下方フランジ部FLの下端部は厚みを増すことで補強されている。図4に示される板状本体2の前端のように、板状本体2の外周部位から下方フランジ部FLのみが延設された箇所も例外的に存在する。
尚、第3ブラケット部9の車両幅方向に関する中心の前方には、トルクロッド65の後端65Aを第3ブラケット部9の内部に受け入れるための前向き開口部9hが形成されており、この前向き開口部9hの上縁部にも上下双方向に短い寸法で延出された上下フランジ2Fが形成されている。
このように板状本体2の外周部位の大部分に上下フランジ2Fを設けた結果、サスペンションメンバ1を任意の方向を向く鉛直な平面で切った断面の大半は概してH字状を呈することで、側面視や正面視での断面の図心が板状本体2の付近に得られている。特に車両の走行中に、前輪50などから捻りを含む外力が主に加えられるのは板状本体2の中でもアーム支持部3R,3L,4R,4Lを除く箇所となるので、捻り応力が大きく作用する箇所のほぼ全ての外周部位に上下フランジ2Fが備えられていることになる。
具体的には、上下フランジ2Fが設置されている領域は、右前側のアーム支持部3Rと左前側のアーム支持部3Lとの間で左右方向に延設された前側外周部位E1と、右後側のアーム支持部4Rと左後側のアーム支持部4Lとの間で左右方向に延設された後側外周部位E2(第3ブラケット部9の設置箇所を除く)と、右前側のアーム支持部3Rと右後側のアーム支持部4Rとの間で前後方向に延設された右側外周部位E3と、左前側のアーム支持部3Lと左後側のアーム支持部4Lとの間で前後方向に延設された左側外周部位E4となる。
(縦リブの構成)
図6に示すように、サスペンションメンバ1の裏面の特定箇所には平板状などの縦リブが一体的に設けられている。縦リブは板状本体2の下面から概して鉛直方向の下向きに立設されている。縦リブは、第3ブラケット部9の左右の側壁部9Aの基端部に沿って前後方向に延出された左右一対の前後縦リブ10と、前後縦リブ10よりも車両幅方向に関して左右外側の領域に設けられた傾斜縦リブ11,12とからなる。
前後縦リブ10は、第3ブラケット部9の右側に位置する前後縦リブ10Rと、第3ブラケット部9の左側に位置する前後縦リブ10Lとからなる。
ここでは、後述する蓋状部材16を締結する箇所として前側外周部位E1及び後側外周部位E2の前後方向内側に一体的に形成されたネジボス部2Eと、ネジボス部2Eの前後方向内側に隣接配置された一対の小ボス部2Dと、一対の小ボス部2Dどうしを前後方向で接合するように延設された板状のリブ本体とを合わせて前後縦リブ10R,10Lと呼んでいる。
傾斜縦リブ11,12は、左右の前後縦リブ10R,10Lと前側外周部位E1の下方フランジ部FLとの接合部付近と、左右方向で対応する後側の各アーム支持部4R,4Lとに平面視で斜めに延設する一対の第1傾斜縦リブ11R,11L、及び、左右の前後縦リブ10R,10Lと後側外周部位E2の下方フランジ部FLとの接合部付近と、左右方向で対応する前側の各アーム支持部3R,3Lとに平面視で斜めに延設する一対の第2傾斜縦リブ12R,12Lを有する。
サスペンションメンバ1の左右中心付近の箇所に加えられる左右の軸心回りでの捻れに対する剛性は、左右一対の前後縦リブ10R,10Lによって確保される。
また、トルクロッド65からサスペンションメンバ1が受ける車両の前後方向を中心とした入力は、主に一対の前後縦リブ10R,10Lを経て、第1傾斜縦リブ11R,11L及び第2傾斜縦リブ12R,12Lによって概してサスペンションメンバ1の全体に分散される。
さらに、各サスペンションアーム30からサスペンションメンバ1に加えられる車両前後方向及び車両幅方向の入力は、互いに交差する一対の第1傾斜縦リブ11R,11L及び第2傾斜縦リブ12R,12Lによって、左右の中央寄りの一対の前後縦リブ10R,10Lに伝達され、第1傾斜縦リブ11R,11L及び第2傾斜縦リブ12R,12Lと前後縦リブ10R,10Lと上下フランジ2Fの三者が合流する接合部から、概してサスペンションメンバ1の全体に分散される。
また、各サスペンションアーム30からサスペンションメンバ1に加えられる車両上下方向の入力と、同入力に伴う車両幅方向の軸心回りでの捻れに対する剛性も、互いに交差する一対の第1傾斜縦リブ11R,11L及び第2傾斜縦リブ12R,12Lによって確保される。
さらに、スタビライザ40から第1ブラケット部7R,7Lを経てサスペンションメンバ1に加えられる概して車両幅方向の軸心回りでの捻れ方向の入力も、一対の第1傾斜縦リブ11R,11Lによって、第1傾斜縦リブ11R,11L及び第2傾斜縦リブ12R,12Lと前後縦リブ10R,10Lと上下フランジ2Fの三者が合流する接合部に向かい、概してサスペンションメンバ1の全体に分散される。
同様に、ステアリング部材から第2ブラケット部8R,8Lを経てサスペンションメンバ1に加えられる車両幅方向の入力も、一対の第2傾斜縦リブ12R,12Lによって後述する前方のネジボス部2Eに向かい、概してサスペンションメンバ1の全体に分散される。
尚、車両の左半分について更に具体的に説明すると、左側の第1傾斜縦リブ11Lは、左側の前後縦リブ10Lと前側外周部位E1の下方フランジ部FLとが接合されたコーナー部と、左後側のアーム支持部4Lの内側の下方フランジ部FLとに亘って平面視で斜めに一直線状に延設されている。また、左側の第1傾斜縦リブ11Lは、その延長線上にアーム支持部4Lの幅方向での中心、すなわち、サスペンションアーム30の後側連結部30bを取り付けるための貫通孔h2の中心が位置するように斜めに一直線状に延設されている。
同様に、左側の第2傾斜縦リブ12Lは、左側の前後縦リブ10Lと後側外周部位E2の下方フランジ部FLとの接合部付近に在るネジボス部2Eの外周部位と、左前側のアーム支持部3Lの内側後部の角部とに亘って平面視で斜めに且つ一直線状に延設されている。また、左側の第2傾斜縦リブ12Lは、その延長線上にネジボス部2Eの雌ネジの中心が位置するように斜めに一直線状に延設されている。
このように互いに一直線状に延設されている左側の第1傾斜縦リブ11Lと左側の第2傾斜縦リブ12Lとは、平面視で互いにX字状に交差し、後述するように同交差位置は第2ブラケット部8Lの内側の内側面付近に配置されている。
因みに、車両の右半分に関しては、エンジンの右端付近から後方に延設された排気管(不図示)との干渉を避ける目的で、下方フランジ部FLの対応箇所が縮小されており、右側の第1傾斜縦リブ11Rと右側の第2傾斜縦リブ12Rもまた、排気管が通過する左右の中央部付近が縮小されている。つまり、第1傾斜縦リブ11Rと右側の第2傾斜縦リブ12Rの交差位置には縦リブが存在せず、縦リブ11R,12Rどうしは同位置付近で内外に2分割されている。尚、排気管の通過する箇所では、板状本体2もまた排気管との干渉を避ける目的で、正面視において上方に突出した湾曲状の断面形状を備えた補強面RFが与えられており、この補強面RFが上述したフランジやリブの部分的な縮小に基づく剛性の不足を補完する結果となっている。
縦リブとしては、他に、第1傾斜縦リブ11R,11Lよりも前方の位置で、第1傾斜縦リブ11R,11Lとほぼ平行に延出された第3傾斜縦リブ13R,13L及び第4傾斜縦リブ14R,14Lが設けられている。
第3傾斜縦リブ13R,13Lは、第1傾斜縦リブ11R,11Lと第2傾斜縦リブ12R,12Lの交差位置と、前方のアーム支持部3R,3Lの内側後方コーナー部との中間付近に配置され、前側外周部位E1の下方フランジ部FLの一部と右側外周部位E3とに亘って、又は、前側外周部位E1の下方フランジ部FLの一部と左側外周部位E4とに亘って延設され、第2傾斜縦リブ12R,12Lと一体的に交差する形態を採っている。第3傾斜縦リブ13R,13Lは、前方のアーム支持部3R,3Lよりも車両幅方向内側に当たるサスペンションメンバ1の部位が各サスペンションアーム30からの入力によって断面崩れ(断面変形)を起こす傾向を抑制している。
第4傾斜縦リブ14R,14Lは、前方のアーム支持部3R,3Lの内側後方コーナー部と前側外周部位E1の下方フランジ部FLとに亘って延設された短いリブであり、第4傾斜縦リブ14R,14Lの後端が前方のアーム支持部3R,3Lの内側後方コーナー部にて第2傾斜縦リブ12R,12Lの前端と出会う形態になっている。第4傾斜縦リブ14R,14Lは、特に、前方のアーム支持部3R,3Lの回転状の変形を抑止する。
尚、後方のアーム支持部4R,4Lの回転状の変形は、アーム支持部4R,4Lの内側に位置する上下フランジ2Fによって主に抑止されている。
図に示すサスペンションメンバ1の例では、平面視において、第2傾斜縦リブ12R,12Lは車両幅方向に対して約45°の傾斜角度を備え、第1、第3、第4の各傾斜縦リブ(11R,11L;13R,13L;14R,14L)は車両幅方向に対して30°〜40°の傾斜角度を備えるが、各傾斜縦リブの傾斜角度は各アーム支持部3R,3L,4R,4Lや第3ブラケット部9の位置関係に応じて適宜変更される。
右側の第1傾斜縦リブ11Rと右側の第2傾斜縦リブ12Rとの各下端面は、前述したように排気管との干渉を避ける目的で、左右の中央部から左右外側に向かって次第に下降するように傾斜しているが、他の全ての縦リブ(10R,10L;11L;12L;13R,13L;14R,14L)の下端面は、概して水平方向に直線状に延設されている。
また、全ての縦リブ(10R,10L;11R,11L;12R,12L;13R,13L;14R,14L)からなる縦リブの高さは、概して縦リブの下端が下方フランジ部FLの下端よりも上方に位置するように設定されている。
以上のように、サスペンションメンバ1の板状本体2を下面側で補強する縦リブは、左右の前後縦リブ10R,10Lと、第1〜第4の各傾斜縦リブ(11R,11L;12R,12L;13R,13L;14R,14L)との合計5対の縦リブのみで十分な剛性を確保している。
(傾斜縦リブと第2ブラケット部の関係)
図6に示すように、傾斜縦リブの一部は、板状本体2の裏面から一体的に立設された状態を保ちながら、左右の各第2ブラケット部8R,8Lを斜めに横断するように延設されている。ここで、各第2ブラケット部8R,8Lの互いに対向する内側面どうしは、取り付け座の裏面に相当する第2ブラケット部8R,8Lの底面の大半も含めて、第1、第2、第3傾斜縦リブ(11R,11L;12R,12L;13R,13L)の各一部によって一体的に接続された状態となっている。
第1傾斜縦リブ11R,11Lと第2傾斜縦リブ12R,12Lとの交差位置は、第2ブラケット部8R,8Lの車両幅方向に関して内側の内側面と一致するように配置されている。同様に、第2傾斜縦リブ12R,12Lと第3傾斜縦リブ13R,13Lとの交差位置は、第2ブラケット部8R,8Lの車両幅方向に関して外側の内側面と一致するように配置されている。
その結果、第2ブラケット部8R,8Lの内側面では、第3傾斜縦リブRS3の一部と、第1傾斜縦リブ11R,11Lの一部と、第2傾斜縦リブ12R,12Lの一部とが、互いに向きを変えながら車両の前方から後方に向けて延設されることで、平面視においてジグザグ状に延びている。また、第3傾斜縦リブ13R,13Lの前端は、第2ブラケット部8R,8Lの前方内側の側面と、前方の下方フランジ部FLとが結合される位置と一致するように配置されている。
第2ブラケット部8R,8Lの設置箇所では、上方に突出形成された第2ブラケット部8R,8Lによって断面の図心が板状本体2から上方に離間する傾向がある。しかし、前述したように、第1傾斜縦リブ11R,11L及び第2傾斜縦リブ12R,12Lの一部が第2ブラケット部8R,8Lの互いに対向する内側面どうしを接続するように延出され、且つ、板状本体2の下面の標準位置を越えて更に下方まで延出されることで、第2ブラケット部8R,8Lの設置箇所でも断面の図心が周囲の板状本体2の高さ近くに維持されている。
尚、傾斜縦リブが下部フランジ部FLや第2ブラケット部8R,8Lの内側面と接合される部位では、必要に応じて、板状本体2や上下フランジ2Fの厚さを越える外径を備え、上下に延びた円柱状の小ボス部2Dが、その径方向の一部を下部フランジ部FLや第2ブラケット部8R,8Lの内側面と一体化させるように形成されており、傾斜縦リブはこの小ボス部2Dの周面から径方向外向きに一体的に延出されている。
小ボス部2Dは、主に、第3傾斜縦リブ13R,13Lと下部フランジ部FLとの接合位置や、第2傾斜縦リブ12R,12Lと第2ブラケット部8R,8Lの内側の内側面との接合位置などに設けられており、サスペンションメンバ1の成形時に、射出した溶融金属の凝固した成形体を金型から押出す押出しピンを受ける役目を有する。
このように押出しピンの受圧部としての小ボス部2Dを縦リブやフランジ部の交差部位に限定して設けることで、厚肉部の数が必要最小限に抑制されるため、射出成形時に鋳穴が生じ難くなり、不良率が低減され、同時に、軽量化と低コスト化も実現された。
(蓋状部材の構成)
第3ブラケット部9については、その天井部の下面側に位置する取り付け座9Sにトルクロッド65の後端65AをボルトB6で連結するので、その内側面どうしを接続する縦リブなどを設けることができない。その代わりに、第3ブラケット部9の下向き開口部9pには、サスペンションメンバ1と同等の剛性を備えた概して矩形の蓋状部材16が締結されている。蓋状部材16もサスペンションメンバ1と同等材質のダイキャスト製とされており、トルクロッド65の後端65Aを保護すると同時に、やはり第3ブラケット部9の設置に関わらず断面の図心を板状本体2の高さ付近に維持する役目を果たしている。尚、ダイキャスト製ではなく板金製などの蓋状部材16を用いてもよい。
第3ブラケット部9の基端部では、下部フランジFLに沿って、小ボス部2Dよりも大径のネジボス部2Eが雌ネジを形成するための箇所として一体的に形成されている。互いに前後方向で対向する各一対のネジボス部2Eの周面には、上下に延びた円柱状の小ボス部2Dがその径方向の一部をネジボス部2Eと一体化させるように形成されており、前後の小ボス部2Dの外周面から延出した板状のリブ本体と共に前述した前後縦リブ10R,10Lを構成している。
トルクロッド65の後端65Aを、第3ブラケット部9の前向き開口部9hから内部に導入し、取り付け座9Sに載置し、さらに、蓋状部材16を第3ブラケット部9の下向き開口部9pを閉じるように配置した状態で、取り付け座9Sとトルクロッド65の後端65Aと蓋状部材16の各貫通孔に長尺ボルトB6を上から挿通し、蓋状部材16の下方に配置したナットN6を螺合させる。引き続き、蓋状部材16の四隅の貫通孔に挿通した4本のボルトB7を各ネジボス部2Eの雌ネジに締め付けることで蓋状部材16がサスペンションメンバ1に締結される。
以上の結果、前後縦リブ10R,10L及び各傾斜縦リブからなる概して必要十分な数の縦リブ並びに蓋状部材16は全体として、特に、左右のサスペンションアーム30及びトルクロッド65などから入力される外力による、サスペンションメンバ1を車両幅方向に延びた横軸心回りで捻るネジリ変形、及び、前後左右のアーム支持部3R,3L,4R,4Lをサスペンションメンバ1の車両幅方向中心部に対して上下方向に変位させる曲げ変形に対する剛性を効果的に高めている。
〔別実施形態〕
〈1〉第2ブラケット部8R,8Lのみならず第1ブラケット部7R,7Lの互いに対向する内側面どうしも縦リブによって接続されている形態で実施してもよい。
〈2〉上記の実施形態とは逆に上方フランジ部FUが下方フランジ部FLよりも長い形態や、上方フランジ部FUと下方フランジ部FLの長さが概して同じ形態で実施してもよい。また、上下フランジ2Fは、斜めに延出した形態に限らず、鉛直に延出した形態で実施してもよい。また。上方フランジ部FUを省き、下方フランジ部FLのみとしてもよい。
〈3〉第1ブラケット部7R,7L、第2ブラケット部8R,8L、第3ブラケット部9の全部または一部が板状本体2の下面に下向きに膨出形成された形態で実施してもよく、その場合は、前後縦リブ10R,10Lや各傾斜縦リブなどの縦リブを板状本体2の上面側に設け、上下フランジ2Fについては、必要に応じて下方フランジ部FLを省き、上方フランジ部FUのみとしてもよい。
〈4〉排気管を例えばエンジンから側方に延出させた構成では、排気管が通過する箇所を縮小する必要がないので、図7に例示するように、前側外周部位E1や後側外周部位E2の下方フランジ部FLと、第1傾斜縦リブ11R及び第2傾斜縦リブ12Rとを含めて、排気管との干渉を避けるための縮小部や補強面RFを設けず、概して左右対称の形状とすることができる。
したがって、この別実施形態では、右側の第1傾斜縦リブ11Rも、右側の前後縦リブ10Rと前側外周部位E1の下方フランジ部FLとの接合部付近と、右後側のアーム支持部4Rとに亘って平面視で斜めに延設されている。同様に、右側の第2傾斜縦リブ12Rも、右側の前後縦リブ10Rと後側外周部位E2の下方フランジ部FLとの接合部付近と、右前側のアーム支持部3Rとに亘って平面視で斜めに延設されている。
また、右側の第1傾斜縦リブ11R及び右側の第2傾斜縦リブ12Rも、他の全ての縦リブ(10R,10L;11L;12L;13R,13L;14R,14L)の下端面と同様に、概して水平方向に直線状に延設されている。
左右の前輪用サスペンションアームを支持するべく車両の前後左右に離間配置された4つのアーム支持部と、4つのアーム支持部の間で前後左右方向に延出された板状本体とが備えられ、板状本体の上下いずれかに位置する第1面にエンジンからのトルクロッドを取り付けるための取り付け座が設けられたサスペンションメンバの構成に関する技術として利用できる。
1 サスペンションメンバ
2 板状本体
2F 上下フランジ(縦フランジ)
3L 左前側アーム支持部(アーム支持部)
3R 右前側アーム支持部(アーム支持部)
4L 左後側アーム支持部(アーム支持部)
4R 右後側アーム支持部(アーム支持部)
9S 取り付け座(トルクロッド用)
10R 前後縦リブ(右側)
10L 前後縦リブ(左側)
11R 第1傾斜縦リブ(右側)
11L 第1傾斜縦リブ(左側)
12R 第2傾斜縦リブ(右側)
12L 第2傾斜縦リブ(左側)
30 サスペンションアーム
65 トルクロッド
E1 前側外周部位
E2 後側外周部位
E3 右側外周部位
E4 左側外周部位

Claims (1)

  1. 左右の前輪用サスペンションアームを支持するべく車両の前後左右に離間配置された4つのアーム支持部と、前記4つのアーム支持部の間で前後左右方向に延出された板状本体とが備えられ、
    前記板状本体の左右中央部にエンジンからのトルクロッドを取り付けるための取り付け座が設けられており、
    前記板状本体における、右前側と左前側の一対のアーム支持部の間で左右方向に延設された前側外周部位と、右後側と左後側の一対のアーム支持部の間で左右方向に延設された後側外周部位と、右前側と右後側の一対のアーム支持部の間で延設された右側外周部位と、左前側と左後側の一対のアーム支持部の間で延設された左側外周部位とに、前記板状本体から立設された縦フランジが配置されており、
    前記取り付け座の左右の位置において、前記前側外周部位の縦フランジと前記後側外周部位の縦フランジとを車両前後方向で連結する一対の前後縦リブが前記板状本体から立設されており、且つ、
    前記前側外周部位の縦フランジと左右の各前記前後縦リブとの接合部付近と、左右方向で対応する後側の各アーム支持部付近とに平面視で斜めに延設する一対の第1傾斜縦リブと、前記後側外周部位の縦フランジと左右の各前記前後縦リブとの接合部付近と、左右方向で対応する前側の各アーム支持部付近とに平面視で斜めに延設する一対の第2傾斜縦リブとが、互いに交差するように、前記板状本体から立設されているサスペンションメンバ。
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