JP5615411B1 - 床排水トラップの再生工法 - Google Patents

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【課題】内面形状が複雑であっても容易かつ確実に補修・再生できる新規な床排水トラップの再生工法を提供する。【解決手段】床部に埋設された排水トラップ本体10からその床部を貫通して床下に延びる直管部50を所定の位置で切断する工程と、直管部50の切断部側または前記トラップ本体10の立上り部側からその内部に筒状をした熱可塑性樹脂からなる再生部材200を挿入し、再生部材200の先端が立上り部から突き出た状態で保持する再生部材取付工程と、再生部材200を加熱膨張させて直管部50および排水トラップ10の立上り部並びにそれらの接続部分の内面に密着させる再生部材加熱密着工程と、再生部材200の先端および下端を処理する再生部材端部処理工程とを含む。【選択図】図12

Description

本発明は、浴室や洗い場などの床面に設置されている床排水トラップの再生工法に関するものである。
係る床排水トラップは、排水管に繋がる封水部が腐食・破損等すると、水による封止機能が損なわれ、下水管側から悪臭や細菌などが室内に逆流して室内環境を著しく悪化する。このように床排水トラップが十分に機能しなくなった場合には、床排水トラップを新しいものに交換する必要があるが、既存の排水トラップはその本体が床面に埋設されるように設置されているケースが多いため、コンクリートのはつり作業および防水の再生工事などが必要となり、その作業は大掛かりとなる。
そのため、排水トラップ全体を交換するよりも機能しなくなった部分を補修して再生することが望ましく、その補修・再生工法も従来から様々なものが提案されている。例えば以下の特許文献1では、硬化性樹脂を含浸させた布材をトラップや配管の内面に取り付け、含浸させた硬化性樹脂を硬化させることで排水トラップや排水管を再生している。
しかし、この工法では排水トラップの封水部が腐食・破損して封水効果を喪失するような損傷が激しいケースには適用が困難である。そのため、例えば以下の特許文献2では、腐食・破損した封水部の立上り部全体を電動カッターでその根元から切り取って除去した後、排水トラップ内部の清掃、防錆処理をし、その後、プラスチック製筒体で形成した補修部材を排水パイプに挿入するように取り付けて立上り部などを再生している。
特開2004−316404号公報 特開2012−117237号公報
しかしながら、前述したような従来の排水トラップ補修工法では、腐食したり破損した立上り部を電動カッターで根元から切り取って除去するため、手間がかかる。また、排水トラップの上方から排水パイプ内にこれよりも小径のストッパ付きプラスチック製筒体を挿入するため、その筒体と直管部との間に大きな隙間が生じる場合がある。
すなわち、既存の排水トラップの立上り部の内面や排水口の直管部との連結部分の内面形状(穴径)は複雑で一定でないものが多いため、トラップ本体側から挿入されるプラスチック製筒体の径は、その内面のうち最も小さい穴径に合わせなくてはならない。そのため、プラスチック製筒体と直管部との間に大きな隙間が生じ、ここから腐食が進行することが考えられる。
また、プラスチック製筒体の外面あるいは直管部との連結部分の内面に接着剤を塗布してその隙間を埋めたり、あるいはその内面を削り取るなどして内径を均一に加工することも考えられるが、いずれの方法も十分でなく、また多くの手間がかかる。
そこで、本発明はこれらの課題を解決するために案出されたものであり、その目的は、内面形状が複雑であっても容易かつ確実に補修・再生できる新規な床排水トラップの再生工法を提供するものである。
前記課題を解決するために第1の発明は、床部に埋設されたトラップ本体からその床部を貫通して床下に延びる直管部を所定の位置で切断する直管部切断工程と、当該直管部の切断部側または前記トラップ本体の立上り部側からその内部に熱可塑性樹脂からなる筒状の再生部材を挿入し、当該再生部材の先端が前記立上り部から突き出た状態で保持する再生部材取付工程と、前記再生部材を加熱膨張させて前記直管部および立上り部並びにそれらの接続部分の内面に密着させる再生部材加熱密着工程と、前記再生部材の先端および下端を処理する再生部材端部処理工程とを含むことを特徴とする床排水トラップの再生工法である。
このような再生工法によれば、直管部内に挿入した熱可塑性の再生部材を加熱膨張させて直管部および立上り部並びにそれらの接続部分の内面に密着させるようにしたことから、それらの内面形状が複雑であっても、この再生部材によってそれらの部分をほぼ隙間無く完全に覆って保護することができる。
第2の発明は、第1の発明において、前記再生部材は、予め前記トラップ本体の立上り部から直管部の内径に合わせて加工したプラスチックパイプからなる床排水トラップの再生工法である。このように前記再生部材として、トラップ本体の立上り部から直管部の内径に合わせて予め加工したプラスチックパイプを用いれば、均一な肉厚を維持しつつ、短時間の加熱で直管部および排水トラップの立上り部並びにそれらの接続部分の内面に容易かつ確実に密着させることができる。また、プラスチックは優れた耐食性や耐油性などを有するため、長期に亘ってこれらを保護することができる。
第3の発明は、第1または第2の発明において前記再生部材端部処理工程は、前記再生部材の下端を加熱軟化させてから前記直管部の下端部を覆うように内側から外側に捲るつば返し処理を含む床排水トラップの再生工法である。このようなつば返し処理を施すことにより直管部の内面は勿論、腐食しやすい直管部の切断端部も容易かつ確実に保護することができる。
第4の発明は、第1乃至第の発明において前記再生部材端部処理工程は、前記再生部材の上端を加熱軟化させてから前記立上り部の上端部を覆うように内側から外側に捲るつば返し処理を含む床排水トラップの再生工法である。このようなつば返し処理を施すことにより、立上り部の内面は勿論、腐食しやすい立上り部の先端部も容易かつ確実に保護にすることができる。
第5の発明は、第1乃至第4の発明において前記再生部材端部処理工程は、前記立上り部の一部または全部が欠損しているときは、前記再生部材上端の高さが前記立上り部の元の高さとほぼ一致するように加工または調整した後、前記立上り部の欠損部分を埋めるように前記再生部材の周囲にパテを盛る処理を含む床排水トラップの再生工法である。
このようなパテ盛り処理を行えば、立上り部の一部または全部が欠損していてもその部分を除去することなく容易に補修・再生することができる。
本発明の再生工法によれば、直管部内に挿入した熱可塑性の再生部材を加熱膨張させて直管部および排水トラップの立上り部並びにそれらの接続部分の内面に密着させるようにしたことから、それらの内面形状が複雑であっても、この再生部材によってそれらの部分を隙間無くほぼ完全に覆って保護することができる。
本発明工法を適用する既存の床排水トラップ100の一例を示す断面図である。 老朽化したトラップ本体10の一例を示す断面図である。 本発明工法の処理の流れを示すフローチャート図である。 床排水トラップ100の直管部50の切断例を示す断面図である。 床排水トラップ100内部の研磨工程を示す概念図である。 再生部材200を床排水トラップ100に取り付け工程を示す説明図である。 再生部材200を一例を示す斜視図である。 再生部材200を熱風で加熱処理する工程を説明図である。 再生部材200を直管部50などの内面に密着させた状態を示す断面図である。 再生部材200の下端部処理工程を示す概念図である。 立上り部30の再生工程を示す概念図である。 再生処理が終了した床排水トラップ100の一例を示す断面図である。 再生部材200の上端部処理工程を示す概念図である。
次に、本発明を添付図面を参照しながら説明する。図1は本発明工法を適用可能な既存の床排水トラップ100の一例を示したものである。図示するようにこの床排水トラップ100は、浴室や洗い場などの床面を構成するコンクリート製の床110内に埋設するように設置されており、その床面の防水層120上を流れる水を集めて排水管130に流すようになっている。
この床排水トラップ100は、金属製の鋳物などから形成されており、上方が開口した器状のトラップ本体10と、このトラップ本体10の中央を貫通するように形成された排水口20と、この排水口20の縁部に設けられた筒状の立上り部30と、この立上り部30を上方から覆うように取り付けられる椀体40と、前記立上り部30と連続するように前記排水口20にネジにより螺合されて、これより下方に延びる直管部50とから主に構成されている。
トラップ本体10は、その上端が床面とほぼ同じ高さあるいはそれよりも低くなっており、排水路120に流れ落ちた水の全てがトラップ本体10内に流れ込むように設置されている。なお、このトラップ本体10の開口部には網目状の目皿80が着脱自在に取り付けられている。立上り部30は、トラップ本体10の中央に形成された排水口20から上方に延びるような筒状体から構成されており、その高さは少なくともトラップ本体10の上端部よりも低くなっている。
椀体40は、その口径がこの立上り部30の径よりも十分に大きなお椀状に形成されており、その開口部を下向きにして立上り部30の上端部を覆い隠すように取り付けられている。そして、この椀体40の内側にはこれより径方向中央に延びるリブ41がその周方向に複数設けられており、立上り部30に取り付けた状態で常に立上り部30の周囲に所定の間隙が形成されるようになっている。なお、図中42はこの椀体40を着脱するための摘み部である。そして、この椀体40と前記立上り部30によって封水部が構成されるようになっている。
直管部50は、その上端が排水口20にネジにより着脱自在に螺合されると共に、その下端部がコンクリート製の床110を貫通するようにトラップ本体10の排水口20から垂直下方に延びており、その排水口20と排水管130とを連結するようになっている。また、図示するようにこの直管部50の内径は排水口20の口径および立上り部30の内径とは異なっているため、その接続部分にはテーパ状の段部60が形成されている。
そして、このような構成をした既存の床排水トラップ100にあっては、トラップ本体10内に流れ込んだ水の量が増えてその高さが立上り部30の上端部に達すると、オーバーフローしてその立上り部30内に流れ込み、直管部50を通過して排水管130に流れて排水されることになる。このとき、立上り部30の開口部は椀体40とトラップ本体10内に溜まった水によって常に塞がれた状態(水封)となっているため、下水側の悪臭や細菌などが排水管130を逆流して立上り部30から室内に流れ込むようなことはない。
このような構成をした既存の床排水トラップ100は、一般に設置から十数年〜数十年経過すると、錆等による腐食が進み、最悪の場合には図2に示すように立上り部30の一部が欠損して水封機能を喪失してしまうことがある。また、直管部50のねじ部が腐食して隙間Sが生じ、この隙間Sから排水の一部が漏れてしまうことがある。
そこで本発明工法はこの床排水トラップ100がこのような状態になったとき、あるいはその前に以下に述べるような補修を施すことで床排水トラップ100を再生する工法である。そして、図3は本発明工法の処理工程の流れの一例を示し、図4乃至図13はこれら各処理工程の概念を示したものである。以下、本発明工法をこれら各図を参照しながら説明する。
先ず図3のステップS100に示すように、処理対象となる床排水トラップ100が設けられた浴室内の床にブルーシートなどを敷いてその床排水トラップ100の周りを養生した後、目皿80および椀体40を取り外してからトラップ本体10内に溜まった水をスポイトなどで吸い取り、ウエスでトラップ本体10内部をきれいに拭き取って清掃する。
次に、ステップS102および図4に示すように、床下または階下側から排水管130を露出させてから直管部50を排水管130の接続部分から水平に切断して排水管130を取り外す。次に、ステップS104および図5に示すようにトラップ本体10内部および立上り部30や直管部50の内面を研磨して錆などの腐食部分を削り落とす。この研磨作業は、例えばマイナスドライバーや棒サンダー、HD工具などの研磨装置70を使用して丁寧に行う。
次に、ステップS106および図6に示すように、筒状の再生部材200を直管部50の切断部側からその直管部50内に挿入して取り付ける。この再生部材200は、熱可塑性のプラスチックパイプなどから形成されており、本実施の形態にあっては図7に示すように大径部210と小径部220とテーパー部230とを有するとっくり形状、すなわち、立上り部30と直管部50の内面形状とほぼ相似形に形成されている。なお、この再生部材200は、立上がり部30の開口部(上端)側から挿入するようにしても良い。
この再生部材200は、熱可塑性樹脂(ポリマー)から形成されており、熱を加えると半径方向に膨張(径大)する性質を有し、加熱後に冷却するとそのままの形状を維持する性質を有している。なお、この再生部材200の取り付けに際しては予め直管部50内に熱風を送るなどして内部を十分乾燥させておくことが望ましい。
そして、次のステップS108および図8に示すように、この再生部材200の上端部が立上り部30の先端から所定量(例えば数mm〜数cm)突き出るように維持した状態でその上下端部のいずれか一方からその再生部材200内に数百℃の熱風を送り込む。すると、この再生部材200が膨張するように変形して図9に示すように立上り部30と直管部50の内面にしっかりと密着する。
その後、ステップS110、S112に示すように再生部材200の端部の処理を行う。具体的には先ず図10(A)および(B)に示すように直管部50の下端部から露出した再生部材200の下端部を加熱軟化させた状態で手作業によって180°外側に一気に捲り上げるように反転(つば返し)して直管部50の下端部を覆う。その後、同図(C)に示すように、直管部50の外側に捲られた部分をグラインダーなどで削り取って出っ張りを無くす処理を行う。
次に、図11(A)に示すように再生部材200の上端部の突出量が多いときは、その上端を切断するなどしてその上端位置を立上り部30の元の高さとほぼ同じ高さに調整した後、同図(B)に示すようにその上端を加熱して外側にやや広げるようにラッパ状に塑性加工する。その後、同図(C)に示すように立上り部30の欠損部分を埋めるようにその再生部材200の周囲にエポキシ系樹脂Pを盛って欠損した立上り部30を元の形になるように再生する。
そして、このエポキシ系樹脂Pが十分乾燥したならば、次のステップS114および図10(D)に示すようにトラップ本体10の表面(内側)にエポキシ樹脂などのコーティング剤を塗布してその内側全体に保護層Cを形成する。この保護層Cが十分に乾燥したならば図12に示すように立上り部30に椀体40をセットしてからステップS116に示すように水を流してトラップ機能検査を行う。そして、この検査に合格したならば最後のステップS118に示すように直管部50に排水管130を接続すると共に目皿80の設置、養生などを撤去することで作業が終了する。
このような本発明の床排水トラップの再生工法によれば、予め立上がり部30や直管部50の内径に合わせて加工した熱可塑性のプラスチックパイプからなる再生部材200を用い、この再生部材200が直管部50および立上り部30並びにそれらの接続部分の内面に密着するように取り付けられることから、それらの内面形状が複雑であっても、この再生部材200によってそれらの部分をほぼ隙間無く完全に覆って保護することができる。また、予め立上がり部30や直管部50の内径に合わせてプラスチックパイプを加工することにより、均一な肉厚を維持しつつ、短時間の加熱で膨張させて密着させることができる。さらに、プラスチック(ポリマー)は優れた耐食性や耐油性などを有するため、長期に亘ってその機能を維持して、これらを保護することができる。
また、直管部50の切断端部に再生部材200によるつば返し処理を施すことにより、直管部50の内面は勿論、腐食しやすい直管部50の切断端部も容易かつ確実に保護することができる。さらに、立上り部30の欠損部分を埋めるようにその再生部材200の周囲にパテを盛るようにしたことから、立上り部30の一部または全部が欠損していてもこれを除去することなく残った部分を有効利用して容易に補修・再生することができる。
また、前記のように立上り部30に大きな欠損がない場合は、図13に示すように直管部50の下端部と同様、再生部材200の立上り部30の上端から突き出た部分を加熱して軟化させた後、その部分を外側に捲るように180°下側に反転(つば返し)させる。これによって、直管部50だけでなく立上り部30の上端部も容易かつ確実に保護することができる。
100…排水トラップ
110…床
120…排水路
130…排水管
200…再生部材
10…トラップ本体
20…排水口
30…立上り部
40…椀体
41…リブ
42…摘み部
50…直管部
60…段部
70…研磨装置
80…目皿
C…保護層
P…エポキシ系樹脂

Claims (5)

  1. 床部に埋設されたトラップ本体からその床部を貫通して床下に延びる直管部を所定の位置で切断する直管部切断工程と、
    当該直管部の切断部側または前記トラップ本体の立上り部側からその内部に熱可塑性樹脂からなる筒状の再生部材を挿入し、当該再生部材の先端が前記立上り部から突き出た状態で保持する再生部材取付工程と、
    前記再生部材を加熱膨張させて前記直管部および立上り部並びにそれらの接続部分の内面に密着させる再生部材加熱密着工程と、
    前記再生部材の先端および下端を処理する再生部材端部処理工程とを含むことを特徴とする床排水トラップの再生工法。
  2. 前記再生部材は、予め前記トラップ本体の立上り部から直管部の内径に合わせて加工したプラスチックパイプからなる請求項1に記載の床排水トラップの再生工法。
  3. 前記再生部材端部処理工程は、前記再生部材の下端を加熱軟化させてから前記直管部の下端部を覆うように内側から外側に捲るつば返し処理を含む請求項1または2に記載の床排水トラップの再生工法。
  4. 前記再生部材端部処理工程は、前記再生部材の上端を加熱軟化させてから前記立上り部の上端部を覆うように内側から外側に捲るつば返し処理を含む請求項1乃至のいずれかに記載の床排水トラップの再生工法。
  5. 前記再生部材端部処理工程は、前記立上り部の一部または全部が欠損しているときは、前記再生部材上端の高さが前記立上り部の元の高さとほぼ一致するように加工または調整した後、前記立上り部の欠損部分を埋めるように前記再生部材の周囲に樹脂を盛り合わせる処理を含む請求項1乃至4のいずれかに記載の床排水トラップの再生工法。
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