JP5612460B2 - 構造体 - Google Patents
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Description
従来、ジンクリッチペイントには、その防錆性能を顕著に向上させるためにクロム酸成分を含むものが使用されてきた。しかしながら、クロム酸成分は、環境問題の観点から、その使用を削減しようという動きが高まり、市場では非クロムジンクリッチペイントが要望され、これまでにいくつも提案されている。
非クロムジンクリッチペイントは、有機系と無機系ジンクリッチペイントに大別される。通常有機系ジンクリッチペイントは、エポキシ樹脂とアミン硬化剤で構成される(特許文献1等)。また無機系ジンクリッチペイントは、アルキルシリケートの無機系の結合剤で構成される(特許文献2等)。一般に、有機系ジンクリッチペイントは、無機系に比べ、変形や衝撃などに対しては良好であるものの、塗膜のふくれが発生しやすく、耐溶剤性および耐食性に劣る。一方、無機系ジンクリッチペイントは、耐食性に優れるものの、酸(酸性雨)などで金属が溶解するという問題がある。
上記重ね塗り技術としては、特許文献3において、クロム酸を含有する無機系ジンクリッチペイントで被覆した後、さらにケイ酸ナトリウム上塗り塗装を施す方法が記載されている。また、特許文献2においても、同様の上塗り塗装を施すことが記載されている。これにより、ジンクリッチペイント塗膜の耐食性をさらに向上させることが可能であるが、アルキルシリケートまたは水ガラス等の珪酸塩で構成される無機系バインダーの塗膜では、塗膜が硬質で可撓性のため、密着性および柔軟性が不足し、塗膜にクラックや剥離が生じ易い。
特許文献5には、ウレタン結合含有ジオール(メタ)アクリレート化合物を利用したハイブリッド材料が、亜鉛めっき用の防錆コート剤として使用できることが記載されている。
しかしながら、その防錆効果は、亜鉛めっきの腐食である白錆の発生を抑制する効果について検討されているに過ぎず、ジンクリッチペイントに対する耐食性の向上、耐溶剤性の向上、耐衝撃性の向上などの効果については検討がなされていない。従って、このようなジンクリッチペイントに対する作用効果を有する構造体の開発が望まれている。
本発明の構造体は、鉄系金属基材と、該基材表面に形成された特定のA層と、該A層表面に形成された特定のB層とを備える。
上記鉄系金属基材は、鉄や鋼等の鉄系金属であれば、その形状は特に限定されない。例えば、鋼板やネジ等の各種成型品が挙げられる。このような基材が使用される用途としては、例えば、自動車部品や土木建築用部品における金属金具が挙げられ、更には、一部のガス器具ジョイント、コック類等の金属部品、スクリュー等の船舶用金属部品が挙げられる。
自動車部品としては、例えば、ネジ、ボルト、ワッシャー、パイプ、パイプサポート、ホースクリップ、ブラケット、ドアロック、デイスクローター、コネクターが挙げられる。
土木建築用部品としては、例えば、電車や新幹線のレールクリップ、ボルト、バネ座金等のレール締結部品、配管用U字ボルト、外壁用留め金具、スペーサーが挙げられる。
粒子状金属(A1)は、防錆顔料として電気化学的防食作用を有する金属であれば良く、好ましくは金属として、亜鉛及び/又はアルミニウムを含む。亜鉛は、亜鉛単独、もしくは例えば、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、コバルト、マンガンの少なくとも1種との亜鉛合金が挙げられる。
粒子状金属(A1)の形態は、球状でもフレーク状でも良いが遮蔽性の点からフレーク状の粉末形態が好ましい。
粒子状金属(A1)の粒度は、A層が皮膜状態の点から粗い粒子を含まないことが好ましく、例えば、100メッシュのふるいを通過する粒度、更には200メッシュのふるいを通過する粒度が好ましい。
M (OQ1)m (Q2)a-m (2)
式中、MはSi、TiまたはZrであり、Q1は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアシル基、官能基を有する炭素数1〜20のアルキル基または官能基を有する炭素数2〜20のアシル基を示す。Q2は炭素数1〜10の脂肪族アルキル基、炭素数1〜10の芳香族アルキル基、官能基を有する炭素数1〜10の脂肪族アルキル基、官能基を有する炭素数1〜10の芳香族アルキル基、またはハロゲン原子を示す。aはMの原子価と同じ数であり、mは1〜aまでの整数である。
前記Q2としての炭素数1〜10の脂肪族アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基が挙げられ、好ましくはメチル基又はエチル基が挙げられる。
前記Q2としての炭素数1〜10の芳香族アルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェニル基が挙げられ、好ましくはフェニル基が挙げられる。
前記Q2としての官能基を有する炭素数1〜10の脂肪族アルキル基としては、例えば、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、ビニル基、エポキシ基等の官能基を有する炭素数1〜10の脂肪族アルキル基が挙げられ、好ましくはエポキシ基を有する炭素数2〜6の脂肪族アルキル基が挙げられる。
前記Q2としての官能基を有する炭素数1〜10の芳香族アルキル基としては、例えば、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、ビニル基、エポキシ基等の官能基を有する炭素数1〜10の芳香族アルキル基が挙げられ、好ましくはエポキシ基を有する炭素数2〜6の芳香族アルキル基が挙げられる。
前記Q2としてのハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子が挙げられる。
金属アルコキシド(A2)としては、例えば、テトラアルコキシシラン、またはアルキル、フェニル、ビニル、アクリロキシ、メタクリロキシ、エポキシ、アミノ、メルカプトおよびイソシアネート基を有するジまたはトリアルコキシシランが挙げられる。具体的には、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。特に、グリコールエーテル及び/又はアルコールと水からなる媒体への溶解性の観点から、エポキシ基含有アルコキシシランを1種以上使用することが好ましい。
具体的には、例えば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンラクテート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、ジルコニウムトリブトキシモノステアレートが挙げられる。特に、着色性などの観点から、チタンまたはジルコニウムアルコキシドを用いることが好ましい。
酸性触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸が挙げられる。アルカリ性触媒としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニアが挙げられる。
前記触媒の使用量は使用する触媒の活性により適宜決定できるが、通常、金属アルコキシド100質量部に対して0.1〜5.0質量部程度である。
特に好ましくは、亜鉛等の金属がリッチな、例えば、ジンクリッチペイントとなるように粒子状金属(A1)を含有することが好ましい。
共重合体(B1)の分子量は特に限定されないが、重量平均分子量で10000〜500000が好ましい。10000未満では共重合体(B1)1分子あたりの官能基数が少なく、A層や金属アルコキシドまたはその加水分解縮合物(B2)との相互作用が十分でなく、密着性が低下するおそれがある。一方500000を超えると、共重合体(B1)溶液の粘度が高く扱いが困難となるおそれがある。
共重合体(B1)を調製するための単量体組成物は、上記式(1a)で表されるウレタン結合含有ジオール(メタ)アクリレート化合物(1a)と、(メタ)アクリル酸低級アルキルまたはビニル単量体(1b)と、N−メチロール基またはN−メチロールエーテル基を有するビニル単量体(1c)を特定割合で含む。
(メタ)アクリル酸低級アルキルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。スチレン誘導体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレンが挙げられる。これらは1種又は2種以上で使用することができる。特に、ガラス転移温度を最も高めることができる観点からは、メチルメタクリレートの使用が好ましい。
上記化合物(1a)が10質量%未満の場合、B層にクラックおよび剥離が生じ易くなり、60質量%を超える場合、B層の耐水性が低下するおそれがある。上記単量体(1b)が10質量%未満の場合、B層の耐水性が低下するおそれがあり、80質量%を超える場合、B層にクラックおよび剥離が生じ易くなるおそれがある。上記単量体(1c)が、5質量%未満の場合、B層の溶剤耐性が低下するおそれがあり、30質量%を超える場合、B層の耐水性が低下するおそれがある。
重合開始剤の使用量は、単量体組成物100質量部に対して0.01〜5.0質量部が好ましい。
本発明の構造体は、例えば、前記鉄系金属基材表面に、上記(A1)及び(A2)を含むA層形成用組成物を、皮膜状に付着させ、乾燥・焼付してA層を形成した後、A層の表面に、上記(B1)及び(B2)を含むB層形成用組成物を、皮膜状に付着させ、乾燥・焼付してB層を形成する方法等により製造することができる。
本発明の構造体を製造するにあたり、鉄系金属基材は、前処理として、水系脱脂剤や脱脂溶剤などにより脱脂し、その後ブラスティングによる表面の清浄化や粗化することが望ましい。
また、粒子状金属や添加剤など、市販原料に含まれるホワイトスピリットなどの各種有機溶剤については、1種以上の溶媒をそのまま組成物中に配合されても良い。
溶剤の含有割合は、鉄系金属基材表面に、A層形成用組成物を皮膜状に付着させ易いように、適宜選択することができる。
防錆性の強化剤の含有割合は、その所望の効果を勘案して適宜決定することができるが、通常10質量%以下である。
増粘剤含有割合は、鉄系金属基材表面に、A層形成用組成物を皮膜状に付着させ易いように、適宜選択することができる。
腐蝕抑制顔料の含有割合は、その所望の効果を勘案して適宜決定することができるが、通常10質量%以下である。
湿潤剤の含有割合は、その所望の効果を勘案して適宜決定することができるが、通常5質量%以下である。
また、A層形成用組成物には、アルカリ金属、好ましくはリチウム、ナトリウムの酸化物や、水酸化物;ストロンチウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、亜鉛の化合物を防錆力補強のために含有させることができる。
A層形成用組成物としては、市販品を用いることができる。例えば、NOFメタルコーティングス社製のジオメット(登録商標)が挙げられる。
付着させたA層形成用組成物の乾燥・焼付は、好ましくは100〜400℃で5〜60分間の条件で行うことができる。
溶剤の含有割合は、A層表面に、B層形成用組成物を皮膜状に付着させ易いように、適宜選択することができる。
界面活性剤としては、配合する成分が分散できればよく、イオン性活性剤、非イオン性活性剤が挙げられる。また金属質の基調を求める場合には、亜鉛、アルミニウム、錫又はこれら2種以上を含む合金の粒子状金属を配合することができる。
これら任意成分の含有割合は、本発明の効果を損なわない範囲で、その目的に応じて適宜選択することができる。
付着させたB層形成用組成物の乾燥・焼付は、好ましくは50〜200℃で10〜60分間の条件で行うことができる。
(基材の前処理)
基材は、鋼板(SPCC−SD、70×150×0.8mm)、および金属ボルト(M10×55、ネジピッチ1.5mm)を用いた。
前処理として、鋼板は、ジクロロメタンにより脱脂し、乾燥した。ボルトは、前処理としてショットブラストにより表面研磨をおこなった後、ジクロロメタンにて脱脂し、乾燥した。
特表2007−534794号公報に記載される方法に準じて、表1に示す材料および以下の方法により、A層形成用組成物1A〜1Dを調製した。
表1に示す有機溶剤、湿潤剤、粒子状金属、および添加剤をラボ用高速ディスパーで攪拌し、スラリーベースを調製した。一方、表1に示す水、金属アルコキシド、および液安定化剤をラボ用高速ディスパーで攪拌し、水系の混合液を調製した。得られたスラリーベースと混合液の2液を混合し、表1に示す増粘剤を添加して粘度調整を行なうことで、A層形成用組成物1A〜1Dを調製した。得られた各組成物は、後述する実施例及び比較例において、粘度安定や泡抜きのため一晩以上攪拌し続けた後に使用した。
(グリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルウレタンの合成)
カルシウム管、冷却管及びディーン−スターク(Dean-stark)トラップを装着したナス型フラスコに、グリセリン100g、アセトン300ml、9−トルエンスルホン酸1水和物3g及び石油エーテル300mlを加え、50℃に設定したオイルバス中で加熱還流させた。12時間後、生成水分量約23mlで、新たに水分が生成しなくなったことを確認した後、反応混合物を室温まで冷却した。次いで、酢酸ナトリウム3gを加えて更に30分間攪拌した後、エバポレータにより石油エーテル及びアセトンを留去した。得られた粗生成物を、バス温度70℃、留分温度60℃、減圧度5mmHgの条件で減圧蒸留することにより、収量130.6g、収率91%で、無色透明液体の(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロールを得た。
ナス型フラスコに、上記合成した(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロール6.60g及びピリジン1mlを加え、メタクリロイルオキシエチルイソシアナート7.37g(昭和電工株式会社製)を秤取って、滴下ロート及びカルシウム管を装着した。室温、遮光下において、メタクリロイルオキシエチルイソシアナートをゆっくりと滴下した。50℃に設定したオイルバス中で7時間反応させた。反応終了後、ピリジン及び過剰の(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロールを減圧留去することにより、収量12.7g、収率93%で、白色固体の(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロール−3−メタクリロイルオキシエチルウレタンを得た。
スクリュー管にマグネチックスターラを入れ、前記合成した(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロール−3−メタクリロイルオキシエチルウレタン1.0g、メタノール3.9ml及び4Nの塩酸100μlを加え、室温下30分間攪拌反応させたところ、懸濁液が透明溶液となった。更に60分間攪拌反応させた後、減圧乾燥により無色粘性液体のグリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルウレタン(GLYMOUと略す)を得た。収量は852mg、収率は99%であった。
上記で得られたGLYMOU5.0g、メチルメタクリレート(MMA)4.0g、N−メチロールアクリルアミド(NMAAm)1.0g、水/エタノール混合溶媒(質量比1:4)40gおよび2,2'−アゾビスイソブチロニトリル100mgを、ねじ口試験管に秤取り、30秒間アルゴンガスでバブリングした。すばやく密栓した後、予め65℃に設定した振とう機によって24時間反応させ、GLYMOU−MMA−NMAAmポリマー溶液(以下、重合体B1-1と略す)を合成した。
得られた重合体B1-1の分子量を下記条件においてGPCを用いて測定した。その結果、得られた重合体の重量平均分子量は約68000であった。
(GPC測定条件)
カラム:TSKgelG3000PWXL+TSKgelG5000PWXL(東ソー)、溶離液:エタノール/水(体積比3:7)10mM LiCl、カラム温度:40℃、流速:0.5mL/分、検出器:RI、基準物質:ポリエチレンオキシド。
イオン交換水3.66g、プロピルセロソルブ0.91g、リン酸6.52mg、シランカップリング剤(製品名「Silane A-187」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)1.18gおよびテトラエチルシラン4.24gをスクリュー管に秤取り、予め50℃に設定したオイルバス中で3時間攪拌することで金属アルコキシド加水分解縮合物溶液B2-1(以下、共加水分解縮合物B2-1と略す)を合成した。
上記重合体B1-1を2g、共加水分解縮合物B2-1を3.9gおよびレベリング剤(商品名「BYK375」、ビックケミー社製)を0.02g秤取った後、混合し、B層形成用組成物2-1を調製した。
(重合体B1-2の合成)
モノマーの使用量を、GLYMOU2.5g、MMA6.0g、及びNMAAm1.5gに変更した以外は、製造例2−1における重合例B1-1の合成と同様に反応させ、GLYMOU−MMA−NMAAmポリマー溶液(以下、重合体B1-2と略す)を合成した。得られた重合体B1-2の重量平均分子量は約60000であった。
(B層形成用組成物2-2の調製)
重合体B1-1の代わりに、上記重合体B1-2を用いた以外は、製造例2−1におけるB層形成用組成物2-1と同様にB層形成用組成物2-2を調製した。
(重合体B1-3の合成)
モノマーの使用量を、GLYMOU0.5g、MMA9.25g、及びNMAAm0.25gに変更した以外は、製造例2−1における重合例B1-1の合成と同様に反応させ、GLYMOU−MMA−NMAAmポリマー溶液(以下、重合体B1-3と略す)を合成した。得られた重合体B1-3の重量平均分子量は約54000であった。
(B層形成用組成物2-3の調製)
重合体B1-1の代わりに、上記重合体B1-3を用いた以外は、製造例2−1におけるB層形成用組成物2-1と同様にB層形成用組成物2-3を調製した。
ポリビニルブチラール樹脂(商品名「BM−1」、積水化学社製)をエチルセロソルブに固形分が20質量%になるように溶解した。これを2.0g、共加水分解縮合物B2-1を3.9gおよびレベリング剤(商品名「BYK375」、ビックケミー社製)を0.02g秤取った後、混合し、B層形成用組成物2-4を調製した。
共加水分解縮合物B2-1を3.9g秤取り、レベリング剤(商品名「BYK375」、ビックケミー社製)を0.02g加え、B層形成用組成物2-5(以下、組成物2-5と略す)を調製した。
(金属アルコキシド加水分解縮合物溶液B2-2の合成)
イオン交換水3.66g、プロピルセロソルブ6.34g、シランカップリング剤(製品名「Silane A-187」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)を3.0g、テトラエチルシラン1.5gおよびテトラエチルチタネート0.5gをスクリュー管に秤取り、予め50℃に設定したオイルバス中で3時間攪拌することで金属アルコキシド加水分解縮合物溶液B2-2(以下、共加水分解縮合物B2-2と略す)を合成した。
(B層形成用組成物2-6の調製)
上記重合体B1-1を2g、共加水分解縮合物B2-2を3.9gおよびレベリング剤(商品名「BYK375」、ビックケミー社製)を0.02g秤取った後、混合し、B層形成用組成物2-6を調製した。
前処理工程を行った鋼板に、A層形成用組成物1Aをバーコーターによって塗布し、100℃で10分間乾燥し、その後330℃で30分間焼き付けてA層の皮膜を形成した。A層の塗着量は13.2g/m2であった。次いで、A層表面上に、B層形成用組成物2-1をバーコート法により塗布し、150℃で30分間焼き付けてB層の皮膜を形成した。B層の塗着量は3.8g/m2であった。
(塗膜の外観評価)
目視による塗膜の観察
評価、○;クラックおよび剥離なし、×;一部クラックおよび剥離あり。
(耐食性試験)
塩水噴霧試験;JIS k 5600−7−1(1999年)
防錆性(赤錆)を目視で観察
評価、◎◎;4000時間以上において赤錆発生が認められない、◎;3000−4000時間未満において赤錆発生が認められた、○;2000−3000時間未満において赤錆発生が認められた、△;1000−2000時間未満において赤錆発生が認められた、×;1000時間未満において赤錆発生が認められた。
0.1Nの硫酸をマイクロピペットにて塗膜に1000μL滴下し、商品名「キムワイプ」(日本製紙(株)製)で10往復ラビングさせ外観を目視で評価した。
評価、○;変化なし、△;若干剥離、×;完全に剥離。
(耐衝撃試験)
デュポン衝撃試験機を用い加重500g、撃芯径(mm)R10の条件で50〜100cmの高さから落下させ塗膜の状態を目視で評価した。
評価、○;100cmの高さからの落下においてもクラックおよび剥離なし、△;70cmの高さからの落下においてクラックおよび剥離あり、×;50cmの高さからの落下においてクラックおよび剥離あり。
(耐溶剤性試験)
各種溶剤(メタノール、エタノール、キシレンおよびベンゼン)を日本製紙(株)製、商品名「キムワイプ」の紙に浸み込ませ、手で10往復させ、塗膜外観を目視にて評価した。
評価、○;変化なし、△;若干剥離、×;完全に剥離。
試験片を、出光製レギュラーガソリンに浸漬させ、72時間後の塗膜外観における膨れ、及び剥がれに関し目視で評価を行った。
評価、○;変化無し、△;一部に塗膜膨れ、剥がれあり、×;完全に剥離。
(耐ブレーキ油性試験方法)
試験片を、株式会社富士化工ヤマハ製ブレーキオイルに浸漬させ、72時間後の塗膜外観における膨れ、及び剥がれに関し目視で評価を行った。
評価、○;変化無し、△;一部に皮膜膨れ、剥がれあり、×;完全に剥離。
鋼板の代わりに、前処理工程を行なったボルトを用い、バーコート法の代わりに浸漬回転法を用いて各組成物を塗布した以外は、実施例1と同様に塗膜を形成し、各試験を行った。結果を表2に示す。
B層形成用組成物2-1の代わりに、B層形成用組成物2-2を用いた以外は、実施例1と同様に塗膜を形成し、各試験を行った。結果を表2に示す。
B層形成用組成物2-1の代わりに、B層形成用組成物2-2を用いた以外は、実施例2と同様に塗膜を形成し、各試験を行った。結果を表2に示す。
前処理工程を行った鋼板に、A層形成用組成物1Aをバーコーターによって塗布し、120℃で10分間乾燥し、その後330℃で30分間焼き付けた。さらに、A層形成用組成物1Aをバーコーターによって塗布し、120℃で10分間乾燥し、その後330℃で30分間焼き付けてA層を形成した。次いで、A層表面上に、B層形成用組成物2-1をバーコート法により塗布し、150℃で30分間焼き付けてB層を形成し、実施例1と同様に各試験を行った。結果を表2に示す。
鋼板の代わりに、前処理工程を行なったボルトを用い、バーコート法の代わりに浸漬回転法を用いて各組成物を塗布した以外は、実施例5と同様に塗膜を形成し、各試験を行った。結果を表2に示す。
B層形成用組成物2-1の代わりに、B層形成用組成物2-2を用いた以外は、実施例5と同様に塗膜を形成し、各試験を行った。結果を表2に示す。
B層形成用組成物2-1の代わりに、B層形成用組成物2-2を用いた以外は、実施例6と同様に塗膜を形成し、各試験を行った。結果を表2に示す。
前処理工程を行った鋼板に、A層形成用組成物1Bをバーコーターによって塗布し、100℃で10分間乾燥し、その後330℃で30分間焼き付けてA層を形成した。次いで、A層表面上に、B層形成用組成物2-1をバーコート法により塗布し、150℃で30分間焼き付けてB層を形成し、実施例1と同様に各試験を行った。結果を表3に示す。
鋼板の代わりに、前処理工程を行なったボルトを用い、バーコート法の代わりに浸漬回転法を用いて各組成物を塗布した以外は、実施例9と同様に塗膜を形成し、各試験を行った。結果を表3に示す。
前処理工程を行った鋼板に、A層形成用組成物1Cをバーコーターによって塗布し、100℃で10分間乾燥し、その後330℃で30分間焼き付けてA層を形成した。次いで、A層表面上に、B層形成用組成物2-1をバーコート法により塗布し、150℃で30分間焼き付けてB層を形成し、実施例1と同様に各試験を行った。結果を表3に示す。
鋼板の代わりに、前処理工程を行なったボルトを用い、バーコート法の代わりに浸漬回転法を用いて各組成物を塗布した以外は、実施例11と同様に塗膜を形成し、各試験を行った。結果を表3に示す。
前処理工程を行った鋼板に、A層形成用組成物1Dをバーコーターによって塗布し、100℃で10分間乾燥し、その後330℃で30分間焼き付けてA層を形成した。次いで、A層表面上に、B層形成用組成物2-1をバーコート法により塗布し、150℃で30分間焼き付けてB層を形成し、実施例1と同様に各試験を行った。結果を表3に示す。
鋼板の代わりに、前処理工程を行なったボルトを用い、バーコート法の代わりに浸漬回転法を用いて各組成物を塗布した以外は、実施例13と同様に塗膜を形成し、各試験を行った。結果を表3に示す。
前処理工程を行った鋼板に、A層形成用組成物1Aをバーコーターによって塗布し、100℃で10分間乾燥し、その後330℃で30分間焼き付けてA層を形成した。次いで、A層表面上に、B層形成用組成物2-6をバーコート法により塗布し、150℃で30分間焼き付けてB層を形成し、実施例1と同様に各試験を行った。結果を表3に示す。
鋼板の代わりに、前処理工程を行なったボルトを用い、バーコート法の代わりに浸漬回転法を用いて各組成物を塗布した以外は、実施例15と同様に塗膜を形成し、各試験を行った。結果を表3に示す。
前処理工程を行った鋼板に、A層形成用組成物1Aをバーコーターによって塗布し、100℃で10分間乾燥し、その後330℃で30分間焼き付けてA層を形成した。この塗膜について実施例1と同様に各試験を行った。結果を表4に示す。
鋼板の代わりに、前処理工程を行なったボルトを用い、バーコート法の代わりに浸漬回転法を用いて塗布した以外は、比較例1と同様に塗膜を形成し、実施例1と同様に各試験を行った。結果を表4に示す。
前処理工程を行った鋼板に、A層形成用組成物1Aをバーコーターによって塗布し、120℃で10分間乾燥し、その後330℃で30分間焼き付けた。さらに、A層形成用組成物1をバーコーターによって塗布し、120℃で10分間乾燥し、その後330℃で30分間焼き付けてA層を形成した。この塗膜について実施例1と同様に各試験を行った。結果を表4に示す。
鋼板の代わりに、前処理工程を行なったボルトを用い、バーコート法の代わりに浸漬回転法を用いて塗布した以外は、比較例3と同様に塗膜を形成し、実施例1と同様に各試験を行った。結果を表4に示す。
B層形成用組成物2-1の代わりに、B層形成用組成物2-3を用いた以外は、実施例1と同様に塗膜を形成し、各試験を行った。結果を表4に示す。
B層形成用組成物2-1の代わりに、B層形成用組成物2-3を用いた以外は、実施例2と同様に塗膜を形成し、各試験を行った。結果を表4に示す。
B層形成用組成物2-1の代わりに、B層形成用組成物2-3を用いた以外は、実施例5と同様に塗膜を形成し、各試験を行った。結果を表4に示す。
B層形成用組成物2-1の代わりに、B層形成用組成物2-3を用いた以外は、実施例6と同様に塗膜を形成し、各試験を行った。結果を表4に示す。
B層形成用組成物2-1の代わりに、B層形成用組成物2-4を用いた以外は、実施例1と同様に塗膜を形成し、各試験を行った。結果を表5に示す。
B層形成用組成物2-1の代わりに、B層形成用組成物2-4を用いた以外は、実施例2と同様に塗膜を形成し、各試験を行った。結果を表5に示す。
B層形成用組成物2-1の代わりに、B層形成用組成物2-4を用いた以外は、実施例5と同様に塗膜を形成し、各試験を行った。結果を表5に示す。
B層形成用組成物2-1の代わりに、B層形成用組成物2-4を用いた以外は、実施例6と同様に塗膜を形成し、各試験を行った。結果を表5に示す。
B層形成用組成物2-1の代わりに、B層形成用組成物2-5を用いた以外は、実施例1と同様に塗膜を形成し、各試験を行った。結果を表5に示す。
B層形成用組成物2-1の代わりに、B層形成用組成物2-5を用いた以外は、実施例2と同様に塗膜を形成し、各試験を行った。結果を表5に示す。
B層形成用組成物2-1の代わりに、B層形成用組成物2-5を用いた以外は、実施例5と同様に塗膜を形成し、各試験を行った。結果を表5に示す。
B層形成用組成物2-1の代わりに、B層形成用組成物2-5を用いた以外は、実施例6と同様に塗膜を形成し、各試験を行った。結果を表5に示す。
Claims (6)
- 鉄系金属基材と、該基材表面に形成されたA層と、該A層表面に形成されたB層とを備える構造体であって、
A層が粒子状金属(A1)と、金属アルコキシドまたはその加水分解縮合物(A2)とを含み、
B層が、式(1a)で表されるウレタン結合含有ジオール(メタ)アクリレート化合物(1a)、(メタ)アクリル酸低級アルキルまたはビニル単量体(1b)、およびN−メチロール基またはN−メチロールエーテル基を有するビニル単量体(1c)を含む単量体組成物を共重合して得た共重合体(B1)と、金属アルコキシドまたはその加水分解縮合物(B2)とを含み、
前記単量体組成物中の化合物(1a):単量体(1b):単量体(1c)の割合が、質量比で、20〜50:35〜75:5〜15の範囲であることを特徴とする構造体。
- 粒子状金属(A1)が、亜鉛及び/又はアルミニウムを含む請求項1記載の構造体。
- 金属アルコキシド(A2)が、式(2)で表される金属アルコキシドである請求項1又は2記載の構造体。
M(OQ1)m(Q2)a-m (2)
(式中、MはSi、TiまたはZrであり、Q1は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアシル基、官能基を有する炭素数1〜20のアルキル基または官能基を有する炭素数2〜20のアシル基を示す。Q2は炭素数1〜10の脂肪族アルキル基、炭素数1〜10の芳香族アルキル基、官能基を有する炭素数1〜10の脂肪族アルキル基、官能基を有する炭素数1〜10の芳香族アルキル基、またはハロゲン原子を示す。aはMの原子価と同じ数であり、mは1〜aまでの整数である。) - A層が、粒子状金属(A1)20〜97質量%と、金属アルコキシドまたはその加水分解縮合物(A2)3〜80質量%とを含有するA層形成用組成物を、鉄系金属基材表面に付着させ、100〜400℃で乾燥・焼付して得た、塗着量が5〜100g/m2の膜である請求項1〜3のいずれかに記載の構造体。
- 金属アルコキシド(B2)が、式(2)で表される金属アルコキシドである請求項1〜4のいずれかに記載の構造体。
M(OQ1)m(Q2)a-m (2)
(式中、MはSi、TiまたはZrであり、Q1は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアシル基、官能基を有する炭素数1〜20のアルキル基または官能基を有する炭素数2〜20のアシル基を示す。Q2は炭素数1〜10の脂肪族アルキル基、炭素数1〜10の芳香族アルキル基、官能基を有する炭素数1〜10の脂肪族アルキル基、官能基を有する炭素数1〜10の芳香族アルキル基、またはハロゲン原子を示す。aはMの原子価と同じ数であり、mは1〜aまでの整数である。) - B層が、共重合体(B1)2〜90質量%と、金属アルコキシドまたはその加水分解縮合物(B2)10〜98質量%とを含有するB層形成用組成物を、A層表面に付着させ、50〜200℃で乾燥・焼付して得た、塗着量が0.5〜15g/m2の膜である請求項1〜5のいずれかに記載の構造体。
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