以下、本発明について、必要に応じて図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明のランフラットタイヤは、サイド補強層および/または該ビードフィラーに、
少なくとも1つの官能基を有し、かつシス含量が80.0%以上である変性共役ジエン系重合体をゴム成分として含むゴム組成物を用いることを特徴とする。
[ランフラットタイヤ]
本発明のランフラットタイヤを図1に示す。図1は、該タイヤの一実施態様の断面を示す模式図である。図1において、本発明の好適な実施態様は、一対のビードコア1、1’間にわたってトロイド状に連なり、両端部が該ビードコア1をタイヤ内部から外側へ巻き上げられる少なくとも1枚のラジアルカーカスプライからなるカーカス層2と、該カーカス層2のサイド領域のタイヤ軸方向外側に配置されて外側部を形成するサイドゴム層3と、該カーカス層2のクラウン領域のタイヤ径方向外側に配置されて接地部を形成するトレッドゴム層4と、該トレッドゴム層4と該カーカス層2のクラウン領域の間に配置されて補強ベルトを形成するベルト層5と、該カーカス層2のタイヤ内方全面に配置されて気密膜を形成するインナーライナー6と、一方の該ビードコア1から他方の該ビードコア1’へ延びる該カーカス層2本体部分と該ビードコア1に巻き上げられる巻上部分との間に配置されるビードフィラー7と、該カーカス層のサイド領域の該ビードフィラー7側部からショルダー区域10にかけて、該カーカス層2と該インナーライナー6との間に、タイヤ回転軸に沿った断面形状が略三日月形である、少なくとも1枚のサイド補強層8とを備えるタイヤであって、サイド補強層8および/またはビードフィラー7に後述するゴム組成物を用いるものである。これにより、本発明の目的の効果を発揮するランフラットタイヤを得ることができる。該タイヤは、乗用車用、軽自動車用、軽トラック用およびトラック・バス用ランフラットタイヤとして好適に用いることができる。
[変性共役ジエン系重合体]
本発明に用いるゴム組成物は、ゴム成分として変性共役ジエン系重合体を含んでなり、かかる変性共役ジエン系重合体は、少なくとも1つの官能基を有し、かつシス含量が80.0%以上、好ましくは85.0%以上、より好ましくは88.0%以上であり、後述する共役ジエン系重合体を変性して得られる重合体であるのが望ましい。シス含量が上記範囲内であると、優れた破壊特性を発揮し、得られるゴム組成物の強度が増してランフラット耐久性が向上することとなる。また、ゴム組成物にさらに後述する無機充填剤やカーボンブラックなどの充填材を配合する場合、これらとの親和性が高く、これを良好に分散させることができるので、優れた耐発熱性を発揮することも可能となる。また、ビニル含量(1,2−ビニル結合含量)は好ましくは1.5%以下、より好ましくは1.0%以下である。なお、シス含量とは、変性共役ジエン系重合体中の共役ジエン化合物単位における1,4−シス結合の割合を意味し、ビニル含量とは、変性共役ジエン系重合体中の共役ジエン化合物単位における1,2−ビニル結合の割合を意味する。
また、変性共役ジエン系重合体が有する官能基は、N、Sn、Si、S、およびOからなる群より選ばれる少なくとも1つの原子を含むのが望ましい。かかる変性共役ジエン系重合体がこのような官能基を有すると、得られるゴム組成物は優れた低発熱性を発揮することができるので、ランフラット走行時における発熱を有効に抑制することが可能となり、ランフラット耐久性の向上にも充分に寄与することとなる。
上記変性共役ジエン系重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw)/(Mn)は、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下である。ここで、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の値である。該変性共役ジエン系重合体のMw/Mnを上記範囲内にすることで、これから得られるゴム組成物の作業性を低下させることなく、混練りが容易となり、ゴム組成物の物性を充分に向上させることができる。また、上記数平均分子量(Mn)は、好ましくは100,000〜500,000、より好ましくは150,000〜400,000であるのが望ましい。
[共役ジエン系重合体]
上記変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン単量体を重合して得られる共役ジエン系重合体を変性してなり、主鎖として任意の位置に活性基を有する擬似リビング鎖を有している。この活性基を後述する変性剤と反応させることによって、共役ジエン系重合体に官能基を導入して変性共役ジエン系重合体を得るのが望ましい。該共役ジエン単量体としてはブタジエン系重合体であるのが好ましい。すなわち、1,3−ブタジエン単量体からなるのが好ましく、1,3−ブタジエン単量体のみからなるのが特に好ましく、いわゆるポリブタジエンゴム(BR)であるのが望ましい。なお、ブタジエン系重合体である場合、1,3−ブタジエン単量体単位が80〜100質量%で、1,3−ブタジエンと共重合可能なその他の単量体単位が20〜0質量%であるのが好ましい。重合体中の1,3−ブタジエン単量体単位含量が80質量%未満では、得られる変性共役ジエン系重合体の1,4−シス結合含量が低下するため、本発明の効果が発現しにくくなる。
ここで、1,3−ブタジエンと共重合可能なその他の単量体としては、例えば、炭素数5〜8の共役ジエン単量体、芳香族ビニル単量体等が挙げられ、これらの中でも、炭素数5〜8の共役ジエン単量体が好ましい。上記炭素数5〜8の共役ジエン単量体としては、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。上記芳香族ビニル単量体としては、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。
上記共役ジエン系重合体は、以下に示す触媒系により共役ジエン系単量体を重合してなるのが望ましい。このような触媒系としては、
(A)成分:周期律表の原子番号57〜71の希土類元素含有化合物、またはこれらの化合物とルイス塩基との反応物、
(B)成分:下記一般式(XVII):
AlR26R27R28・・・(XVII)
(式中、R26およびR27は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子で、
R28は炭素数1〜10の炭化水素基であり、但し、R28は上記R26またはR27と同一であっても異なっていてもよい)で表される有機アルミニウム化合物、並びに
(C)成分:ルイス酸、金属ハロゲン化物と、ルイス塩基との錯化合物、および活性ハロゲンを含む有機化合物の少なくとも一種からなる触媒系が挙げられる。
また、本発明において、共役ジエン系重合体の重合に用いる触媒系には、上記(A)〜(C)成分の他に、さらに(D)成分として、有機アルミニウムオキシ化合物、所謂アルミノキサンを添加するのが好ましい。ここで、前記触媒系は、前記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分および共役ジエン単量体の存在下で予備調製されてなるのが、さらに好ましい。
本発明において、共役ジエン系重合体の重合に用いる触媒系の(A)成分は、周期律表の原子番号57〜71の希土類元素を含有する化合物、またはこれらの化合物とルイス塩基との反応物である。ここで、原子番号57〜71の希土類元素の中でも、ネオジム、プラセオジウム、セリウム、ランタン、ガドリニウム等、またはこれらの混合物が好ましく、ネオジムが特に好ましい。
上記希土類元素含有化合物としては、炭化水素溶媒に可溶な塩が好ましく、具体的には、上記希土類元素のカルボン酸塩、アルコキサイド、β−ジケトン錯体、リン酸塩および亜リン酸塩が挙げられ、これらの中でも、カルボン酸塩およびリン酸塩が好ましく、カルボン酸塩が特に好ましい。
ここで、炭化水素溶媒としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭素数4〜10の飽和脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の炭素数5〜20の飽和脂環式炭化水素、1−ブテン、2−ブテン等のモノオレフィン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。
上記希土類元素のカルボン酸塩としては、下記一般式(XVIII):
(R29−CO2 )3M・・・(XVIII)
(式中、R29は炭素数1〜20の炭化水素基で、Mは周期律表の原子番号57〜71の希土類元素である)で表される化合物が挙げられる。ここで、R29は、飽和または不飽和でもよく、アルキル基およびアルケニル基が好ましく、直鎖状、分岐状および環状のいずれでもよい。また、カルボキシル基は、1級、2級または3級の炭素原子に結合している。該カルボン酸塩として、具体的には、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ネオデカン酸、ステアリン酸、安息香酸、ナフテン酸、バーサチック酸[シェル化学(株)製の商品名であって、カルボキシル基が3級炭素原子に結合しているカルボン酸]等の塩が挙げられ、これらの中でも、2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、ナフテン酸、バーサチック酸の塩が好ましい。
上記希土類元素のアルコキサイドとしては、下記一般式(XIX):
(R30O)3M・・・(XIX)
(式中、R30は炭素数1〜20の炭化水素基で、Mは周期律表の原子番号57〜71の希土類元素である)で表される化合物が挙げられる。R30Oで表されるアルコキシ基としては、2−エチル−ヘキシルオキシ基、オレイルオキシ基、ステアリルオキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。これらの中でも、2−エチル−ヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基が好ましい。
上記希土類元素のβ−ジケトン錯体としては、上記希土類元素のアセチルアセトン錯体、ベンゾイルアセトン錯体、プロピオニトリルアセトン錯体、バレリルアセトン錯体、エチルアセチルアセトン錯体等が挙げられる。これらの中でも、アセチルアセトン錯体、エチルアセチルアセトン錯体が好ましい。
上記希土類元素のリン酸塩および亜リン酸塩としては、上記希土類元素と、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)、リン酸ビス(1−メチルヘプチル)、リン酸ビス(p−ノニルフェニル)、リン酸ビス(ポリエチレングリコール−p−ノニルフェニル)、リン酸(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)、リン酸(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−p−ノニルフェニル、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸、ビス(1−メチルヘプチル)ホスフィン酸、ビス(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸、(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸、(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸等との塩が挙げられ、これらの中でも、上記希土類元素と、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)、リン酸ビス(1−メチルヘプチル)、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸との塩が好ましい。
上記希土類元素含有化合物の中でも、ネオジムのリン酸塩、およびネオジムのカルボン酸塩がさらに好ましく、特にネオジムの2−エチルヘキサン酸塩、ネオジムのネオデカン酸塩、ネオジムのバーサチック酸塩等のネオジムの分岐カルボン酸塩が最も好ましい。
また、(A)成分は、上記希土類元素含有化合物とルイス塩基との反応物でもよい。該反応物は、ルイス塩基によって、希土類元素含有化合物の溶剤への溶解性が向上しており、また、長期間安定に貯蔵することができる。上記希土類元素含有化合物を溶剤に容易に可溶化させるため、また、長期間安定に貯蔵するために用いられるルイス塩基は、希土類元素1モル当り0〜30モル、好ましくは1〜10モルの割合で、両者の混合物として、または予め両者を反応させた生成物として用いられる。ここで、ルイス塩基としては、アセチルアセトン、テトラヒドロフラン、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、チオフェン、ジフェニルエーテル、トリエチルアミン、有機リン化合物、1価または2価のアルコールが挙げられる。
以上に述べた(A)成分としての希土類元素含有化合物またはこれらの化合物とルイス塩基との反応物は、一種単独で使用することも、二種以上を混合して用いることもできる。
本発明において、共役ジエン系重合体の重合に用いる触媒系の(B)成分である上記一般式(XVII)で表される有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム;水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジ−n−プロピルアルミニウム、水素化ジ−n−ブチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジヘキシルアルミニウム、水素化ジイソヘキシルアルミニウム、水素化ジオクチルアルミニウム、水素化ジイソオクチルアルミニウム;エチルアルミニウムジハイドライド、n−プロピルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライド等が挙げられ、これらの中でも、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウムが好ましい。以上に述べた(B)成分としての有機アルミニウム化合物は、一種単独で使用することも、二種以上を混合して用いることもできる。
本発明において、共役ジエン系重合体の重合に用いる触媒系の(C)成分は、ルイス酸、金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物、および活性ハロゲンを含む有機化合物からなる群から選択される少なくとも一種のハロゲン化合物である。
上記ルイス酸は、ルイス酸性を有し、炭化水素に可溶である。具体的には、二臭化メチルアルミニウム、二塩化メチルアルミニウム、二臭化エチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、二臭化ブチルアルミニウム、二塩化ブチルアルミニウム、臭化ジメチルアルミニウム、塩化ジメチルアルミニウム、臭化ジエチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、臭化ジブチルアルミニウム、塩化ジブチルアルミニウム、セスキ臭化メチルアルミニウム、セスキ塩化メチルアルミニウム、セスキ臭化エチルアルミニウム、セスキ塩化エチルアルミニウム、二塩化ジブチルスズ、三臭化アルミニウム、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三塩化リン、五塩化リン、四塩化スズ、四塩化ケイ素等が例示できる。これらの中でも、塩化ジエチルアルミニウム、セスキ塩化エチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、臭化ジエチルアルミニウム、セスキ臭化エチルアルミニウム、および二臭化エチルアルミニウムが好ましい。
また、トリエチルアルミニウムと臭素の反応生成物のようなアルキルアルミニウムとハロゲンの反応生成物を用いることもできる。
上記金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物を構成する金属ハロゲン化物としては、塩化ベリリウム、臭化ベリリウム、ヨウ化ベリリウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化カドミウム、臭化カドミウム、ヨウ化カドミウム、塩化水銀、臭化水銀、ヨウ化水銀、塩化マンガン、臭化マンガン、ヨウ化マンガン、塩化レニウム、臭化レニウム、ヨウ化レニウム、塩化銅、ヨウ化銅、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、塩化金、ヨウ化金、臭化金等が挙げられ、これらの中でも、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化マンガン、塩化亜鉛、塩化銅が好ましく、塩化マグネシウム、塩化マンガン、塩化亜鉛、塩化銅が特に好ましい。
また、上記金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物を構成するルイス塩基としては、リン化合物、カルボニル化合物、窒素化合物、エーテル化合物、アルコール等が好ましい。具体的には、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジエチルホスフィノエタン、ジフェニルホスフィノエタン、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、プロピオニトリルアセトン、バレリルアセトン、エチルアセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸フェニル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジフェニル、酢酸、オクタン酸、2−エチル−ヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、安息香酸、ナフテン酸、バーサチック酸、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、2−エチル−ヘキシルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、1−デカノール、ラウリルアルコール等が挙げられ、これらの中でも、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、アセチルアセトン、2−エチルヘキサン酸、バーサチック酸、2−エチルヘキシルアルコール、1−デカノール、ラウリルアルコールが好ましい。
上記ルイス塩基は、上記金属ハロゲン化物1モル当り、通常0.01〜30モル、好ましくは0.5〜10モルの割合で反応させる。このルイス塩基との反応物を使用すると、ポリマー中に残存する金属を低減することができる。
上記活性ハロゲンを含む有機化合物としては、ベンジルクロライド等が挙げられる。
本発明において、共役ジエン系重合体の重合に用いる触媒系には、上記(A)〜(C)成分の他に、さらに(D)成分として、有機アルミノキサン化合物、いわゆるアルミノキサンを添加するのが好ましい。ここで、アルミノキサンとしては、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、プロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、クロロアルミノキサン等が挙げられる。(D)成分としてアルミノキサンを加えることで、分子量分布がシャープになり、触媒としての活性も向上する。
本発明で使用する触媒系の各成分の量または組成比は、その目的または必要性に応じて適宜選択される。このうち、(A)成分は、1,3−ブタジエンのような共役ジエン系単量体100gに対し、0.00001〜1.0ミリモル用いるのが好ましく、0.0001〜0.5ミリモル用いるのがさらに好ましい。(A)成分の使用量を上記範囲内にすることによって優れた重合活性が得られ、脱灰工程の必要性がなくなる。
また、(A)成分と(B)成分の割合は、モル比で、(A)成分:(B)成分が通常1:1〜1:700、好ましくは1:3〜1:500である。さらに、(A)成分と(C)成分中のハロゲンの割合は、モル比で、通常1:0.1〜1:30、好ましくは1:0.2〜1:15、さらに好ましくは1:2.0〜1:5.0である。また、(D)成分中のアルミニウムと(A)成分との割合は、モル比で、通常1:1〜700:1、好ましくは3:1〜500:1である。これらの触媒量または構成成分比の範囲内にすることで、高活性な触媒として作用し、また、触媒残渣を除去する工程の必要性がなくなるため好ましい。
上記の(A)〜(C)成分以外に、重合体の分子量を調節する目的で、水素ガスを共存させて重合反応を行ってもよい。
触媒成分として、上記の(A)成分、(B)成分、(C)成分および必要により用いられる(D)成分以外に、必要に応じて、1,3−ブタジエン等の共役ジエン化合物を少量、具体的には、(A)成分の化合物1モル当り0〜1000モルの割合で用いてもよい。触媒成分としての1,3−ブタジエン等の共役ジエン化合物は必須ではないが、これを併用すると、触媒活性が一段と向上する利点がある。
上記触媒の製造は、例えば、溶媒に(A)成分〜(C)成分を溶解させ、さらに必要に応じて、1,3−ブタジエン等の共役ジエン化合物を反応させる。
その際、各成分の添加順序は、特に限定されず、さらに(D)成分としてアルミノキサンを添加してもよい。重合活性の向上、重合開始誘導期間の短縮の観点からは、これら各成分を、予め混合して、反応させ、熟成させることが好ましい。ここで、熟成温度は、0〜100℃程度であり、20〜80℃が好ましい。0℃未満では、充分に熟成が行われにくく、100℃を超えると、触媒活性の低下や、分子量分布の広がりが起こる場合がある。また、熟成時間は、特に制限なく、重合反応槽に添加する前にライン中で接触させることでも熟成でき、通常は、0.5分以上あれば充分であり、数日間は安定である。
上記共役ジエン系重合体の製造においては、上記ランタン系列希土類元素含有化合物を含む触媒系を用いて有機溶媒中で、共役ジエン系単量体の溶液重合を行うことが好ましい。ここで、重合溶媒としては、不活性の有機溶媒を用いる。不活性の有機溶媒としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭素数4〜10の飽和脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の炭素数5〜20の飽和脂環式炭化水素、1−ブテン、2−ブテン等のモノオレフィン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。これらの中でも、炭素数5〜6の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素が特に好ましい。これらの溶媒は、一種単独で使用してもよく、二種以上を混合して使用してもよい。また、溶液中の単量体の濃度は、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。
本発明において、共役ジエン系重合体の重合反応における温度は、好ましくは−80〜150℃、より好ましくは−20〜120℃の範囲で選定される。重合反応は、発生圧力下で行うことができるが、通常は単量体を実質的に液相に保つに十分な圧力で操作することが望ましい。すなわち、圧力は重合される個々の物質や、用いる重合媒体および重合温度にもよるが、所望ならばより高い圧力を用いることができ、このような圧力は重合反応に関して不活性なガスで反応器を加圧する等の適当な方法で得られる。
これらの重合においては、重合開始剤、溶媒、単量体等、重合に関与する全ての原材料は、水、酸素、二酸化炭素、プロトン性化合物等の反応阻害物質を除去したものを用いることが望ましい。また、上記共役ジエン系重合体の製造は、回分式および連続式のいずれで行ってもよい。重合形式は、回転式および連続式のいずれであってもよいが、上記変性共役ジエン系重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw)/(Mn)を好適な範囲内とするには、回転式であるのが望ましい。
[変性剤]
上記変性共役ジエン系重合体は、上記共役ジエン系重合体が変性されてなる重合体であり、変性剤を用いた反応によって上記官能基が導入されてなるのが望ましい。かかる変性剤は、擬似リビング鎖と反応する部位(r1)および充填剤と反応する部位(r2)を備えるもの、或いは前記部位(r1)の前駆体(r’1)および前記部位(r2)の前駆体(r’2)を備えるものであって活性プロトンを含まない変性剤であるのが好ましい。ただし、上記(r1)および(r2)は同一であっても異なっていてもよい。ここで、上記(r1)は、擬似リビング鎖の任意の位置で反応し得る部位であるが、擬似リビング鎖の末端と反応する部位であるのがより望ましい。なお、擬似リビング鎖とは、上記共役ジエン系重合体により形成される擬似リビング重合体(pseudo−living polymer)を構成する主鎖を意味し、上記(r1)はかかる擬似リビング鎖との高い反応性を有する部位である。また、上記(r2)は、充填剤との反応性が高く、かかる充填剤との親和性の向上に大きく寄与する部位である。さらに、活性プロトンとは、プロトリシス(protolysis)反応でプロトンを重合体に供与する置換基を意味する。
変性剤が上記(r1)および(r2)、或いは(r’1)および(r’2)を備えることにより、上記共役ジエン系重合体に上述のような官能基を容易に導入することができるとともに、充填剤との相溶性に大きく寄与することができる。このような変性剤としては、たとえば変性剤(a)〜(i)成分の化合物が好適なものとして挙げられる。
上記変性剤としての(a)成分は、一般式(I)
で表される変性剤であり、前記一般式(I)において、X
1〜X
5は、水素原子、あるいはハロゲン原子、カルボニル基、チオカルボニル基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、エポキシ基、チオエポキシ基、ハロゲン化シリル基、ヒドロカルビルオキシシリル基およびスルホニルオキシ基の中から選ばれる少なくとも1種を含む官能基を示す。X
1〜X
5はたがいに同一であっても異なっていてもよいが、それらの中の少なくとも1つは水素原子ではない。
R1〜R5は、それぞれ独立して単結合または炭素数1〜18の二価の炭化水素基を示す。この二価の炭化水素基としては、例えば炭素数1〜18のアルキレン基、炭素数2〜18のアルケニレン基、炭素数6〜18のアリーレン基、炭素数7〜18のアラルキレン基等が挙げられるが、これらの中で、炭素数1〜18のアルキレン基、特に炭素数1〜10のアルキレン基が好ましい。このアルキレン基は直鎖状、枝分かれ状、環状のいずれであってもよいが、特に直鎖状のものが好適である。この直鎖状のアルキレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基等が挙げられる。
また、X1〜X5およびR1〜R5のいずれかを介して複数のアジリジン環が結合していてもよい。
この変性剤としては、前記一般式(I)において、X1が水素原子ではなく、かつR1が単結合ではないものであることが好ましい。
前記一般式(I)で表される変性剤としては、例えば1−アセチルアジリジン、1−プロピオニルアジリジン、1−ブチルアジリジン、1−イソブチルアジリジン、1−バレリルアジリジン、1−イソバレリルアジリジン、1−ピバロイルアジリジン、1−アセチル−2−メチルアジリジン、2−メチル−1−プロピオニルアジリジン、1−ブチル2−メチルアジリジン、2−メチル−1−イソブチルアジリジン、2−メチル−1−バレリルアジリジン、1−イソバレリル−2−メチルアジリジン、2−メチル−1−ピバロイルアジリジン、エチル3−(1−アジリジニル)プロピオネート、プロピル3−(1−アジリジニル)プロピオネート、ブチル3−(1−アジリジニル)プロピオネート、エチレングリコールビス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、エチル3−(2−メチル−1−アジリジニル)プロピオネート、プロピル3−(2−メチル−1−アジリジニル)プロピオネート、ブチル3−(2−メチル−1−アジリジニル)プロピオネート、エチレングリコールビス[3−(2−メチル−1−アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3−(2−メチル−1−アジリジニル)プロピオネート]、ネオペンチルグリコールビス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、ネオペンチルグリコールビス[3−(2−メチル−1−アジリジニル)プロピオネート]、ジ(1−アジリジニルカルボニル)メタン、1,2−ジ(1−アジリジニルカルボニル)エタン、1,3−ジ(1−アジリジニルカルボニル)プロパン、1,4−ジ(1−アジリジニルカルボニル)ブタン、1,5−ジ(1−アジリジニルカルボニル)ペンタン、ジ(2−メチル−1−アジリジニルカルボニル)メタン、1,2−ジ(2−メチル−1−アジリジニルカルボニル)エタン、1,3−ジ(2−メチル−1−アジリジニルカルボニル)プロパン、1,4−ジ(2−メチル−1−アジリジニルカルボニル)ブタン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記変性剤としての(b)成分は、ハロゲン化有機金属化合物またはハロゲン化金属化合物である変性剤は、下記式(V)で表される。
R6 nM’Z4-n、M’Z4、M’Z3 ・・・(V)
式中、R6〜R8は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、R9は炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基であり、側鎖にカルボニル基またはエステル基を含んでいてもよく、M’はスズ原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子またはリン原子、Zはハロゲン原子、nは0〜3の整数である。
上記式(V)中、M’がスズ原子の場合には、(b)成分としては、例えばトリフェニルスズクロリド、トリブチルスズクロリド、トリイソプロピルスズクロリド、トリヘキシルスズクロリド、トリオクチルスズクロリド、ジフェニルスズジクロリド、ジブチルスズジクロリド、ジヘキシルスズジクロリド、ジオクチルスズジクロリド、フェニルスズトリクロリド、ブチルスズトリクロリド、オクチルスズトリクロリド、四塩化スズ等が挙げられる。
また、上記式(V)中、M’がケイ素原子の場合には、(b)成分としては、例えばトリフェニルクロロシラン、トリヘキシルクロロシラン、トリオクチルクロロシラン、トリブチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジヘキシルジクロロシラン、ジオクチルジクロロシラン、ジブチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルジクロロシラン、フェニルクロロシラン、ヘキシルトリジクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、四塩化ケイ素等が挙げられる。
さらに、上記式(V)中、M’がゲルマニウム原子の場合には、(b)成分としては、例えばトリフェニルゲルマニウムクロリド、ジブチルゲルマニウムジクロリド、ジフェニルゲルマニウムジクロリド、ブチルゲルマニウムトリクロリド、四塩化ゲルマニウム等が挙げられるさらに、式(V)中、M’がリン原子の場合には、(b)成分としては、例えば三塩化リン等が挙げられる。
また、本発明において、(b)成分として、下記式(VI)で表されるエステル基、または下記式(VII)で表されるカルボニル基を分子中に含んだ有機金属化合物を変性剤として使用することもできる。
R7 nM’(−R8−COOR9)4-n ・・・(VI)
R7 nM’(−R8−COOR9)4-n ・・・(VII)
式中、R7〜R8は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、R9は炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基であり、側鎖にカルボニル基またはエステル基を含んでいてもよく、M’はスズ原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子またはリン原子、nは0〜3の整数である。
これらの(b)成分は、任意の割合で併用してもよい。
上記変性剤としての(c)成分であるヘテロクムレン化合物は、下記式(VIII)で表される構造を有する変性剤である。
Y=C=Y’結合・・・(VIII)
式中、Yは炭素原子、酸素原子、窒素原子または硫黄原子、Y’は酸素原子、窒素原子または硫黄原子である。
ここで、(c)成分のうち、Yが炭素原子、Y’が酸素原子の場合、ケテン化合物であり、Yが炭素原子、Y’が硫黄原子の場合、チオケテン化合物であり、Yが窒素原子、Y’が酸素原子の場合、イソシアナート化合物であり、Yが窒素原子、Y’が硫黄原子の場合、チオイソシアナート化合物であり、YおよびY’がともに窒素原子の場合、カルボジイミド化合物であり、YおよびY’がともに酸素原子の場合、二酸化炭素であり、Yが酸素原子、Y’が硫黄原子の場合、硫化カルボニルであり、YおよびY’がともに硫黄原子の場合、二硫化炭素である。しかしながら、(c)成分は、これらの組み合わせに限定されるものではない。
このうち、ケテン化合物としては、例えばエチルケテン、ブチルケテン、フェニルケテン、トルイルケテン等が挙げられる。チオケテン化合物としては、例えばエチレンチオケテン、ブチルチオケテン、フェニルチオケテン、トルイルチオケテン等が挙げられる。イソシアナート化合物としては、例えばフェニルイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメリックタイプのジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート等が挙げられる。チオイソシアナート化合物としては、例えばフェニルチオイソシアナート、2,4−トリレンジチオイソシアナート、ヘキサメチレンジチオイソシアナート等が挙げられる。カルボジイミド化合物としては、例えばN,N′−ジフェニルカルボジイミド、N,N′−エチルカルボジイミド等が挙げられる。
上記変性剤としての(d)成分であるヘテロ3員環化合物は、下記式(II)で表される構造を有する変性剤である。
式中、Y’は、酸素原子、窒素原子またはイオウ原子である。
ここで、(d)成分のうち、例えばY’が、酸素原子の場合、エポキシ化合物であり、窒素原子の場合、エチレンイミン誘導体であり、硫黄原子の場合、チイラン化合物である。ここで、エポキシ化合物としては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エポキシ化大豆油、エポキシ化天然ゴム等が挙げられる。また、エチレンイミン誘導体としては、例えばエチレンイミン、プロピレンイミン、N−フェニルエチレンイミン、N−(β−シアノエチル)エチレンイミン等が挙げられる。さらに、チイラン化合物としては、例えばチイラン、メチルチイラン、フェニルチイラン等が挙げられる。
上記変性剤としての(e)成分であるハロゲン化イソシアノ化合物は、下記式(IX)で表される構造を有する変性剤である。
−N=C−X結合・・・(IX)
式中、Xはハロゲン原子である。
(e)成分であるハロゲン化イソシアノ化合物としては、例えば2−アミノ−6−クロロピリジン、2,5−ジブロモピリジン、4−クロロ−2−フェニルキナゾリン、2,4,5−トリブロモイミダゾール、3,6−ジクロロ−4−メチルピリダジン、3,4,5−トリクロロピリダジン、4−アミノ−6−クロロ−2−メルカプトピリミジン、2−アミノ−4−クロロ−6−メチルピリミジン、2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン、6−クロロ−2,4−ジメトキシピリミジン、2−クロロピリミジン、2,4−ジクロロ−6−メチルピリミジン、4,6−ジクロロ−2−(メチルチオ)ピリミジン、2,4,5,6−テトラクロロピリミジン、2,4,6−トリクロロピリミジン、2−アミノ−6−クロロピラジン、2,6−ジクロロピラジン、2,4−ビス(メチルチオ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン、2−ブロモ−5−ニトロチアゾール、2−クロロベンゾチアゾール、2−クロロベンゾオキサゾール等が挙げられる。
上記変性剤としての(f)成分であるカルボン酸、酸ハロゲン化物、エステル化合物、炭酸エステル化合物または酸無水物は、下記式(X)〜(XIV)および(III)で表される構造を有する変性剤である。
R10−(COOH)m ・・・(X)
R11(COZ)m ・・・(XI)
R12−(COO−R13) ・・・(XII)
R14−OCOO−R15 ・・・(XIII)
R16−(COOCO−R17)・・・(XIV)
式中、R
10〜R
18は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜50の炭素原子を含む炭化水素基、Zはハロゲン原子、mは1〜5の整数である。
ここで、(f)成分のうち、式(X)で表されるカルボン酸としては、例えば酢酸、ステアリン酸、アジピン酸、マレイン酸、安息香酸、アクリル酸、メタアクリル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、メリット酸、ポリメタアクリル酸エステル化合物またはポリアクリル酸化合物の全部あるいは部分加水分解物等が挙げられる。
式(XI)で表される酸ハロゲン化物としては、例えば酢酸クロリド、プロピオン酸クロリド、ブタン酸クロリド、イソブタン酸クロリド、オクタン酸クロリド、アクリル酸クロリド、安息香酸クロリド、ステアリン酸クロリド、フタル酸クロリド、マレイン酸クロリド、オキサリン酸クロリド、ヨウ化アセチル、ヨウ化ベンゾイル、フッ化アセチル、フッ化ベンゾイル等が挙げられる。
式(XII)で表されるエステル化合物としては、例えば酢酸エチル、ステアリン酸エチル、アジピン酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、安息香酸メチル、アクリル酸エチル、メタアクリル酸エチル、フタル酸ジエチル、テレフタル酸ジメチル、トリメリット酸トリブチル、ピロメリット酸テトラオクチル、メリット酸ヘキサエチル、酢酸フェニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリイソブチルアクリレート等が、また、式(XIII)で表される炭酸エステル化合物としては、例えば炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジヘキシル、炭酸ジフェニル等が挙げられる。酸無水物としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水イソ酪酸、無水イソ吉草酸、無水ヘプタン酸、無水安息香酸、無水ケイ皮酸等の式(XIV)で表される分子間の酸無水物や、無水コハク酸、無水メチルコハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水シトラコン酸、無水フタル酸、スチレン−無水マレイン酸共重合体等の式(III)で表される分子内の酸無水物が挙げられる。
なお、(f)成分に挙げた化合物は、本発明の目的を損なわない範囲で、カップリング剤分子中に、例えばエーテル基、3級アミノ基等の非プロトン性の極性基を含むものであっても構わない。また、(f)成分は、一種単独で使用することも、あるいは二種以上を混合して用いることもできる。さらに、(f)成分は、フリーのアルコール基、フェノール基を含む化合物を不純物として含むものであってもよい。また、(f)成分は、単独もしくはこれらの化合物の二種以上の混合物であってもよい。さらに、フリーのアルコール基、フェノール基を含む化合物を不純物として含むものであってもよい。
上記変性剤としての(g)成分としてのカルボン酸の金属塩は、下記式(XV)〜(XVI)および(IV)で表される構造を有する変性剤である。
R19 kM’’(OCOR20)4-k ・・・(XV)
R21 kM’’(OCO−R22−COOR23)4-k ・・・(XVI)
式(IV)中、R
19〜R
25は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、M’’はスズ原子、ケイ素原子またはゲルマニウム原子、kは0〜3の整数、pは0または1である。
ここで、(g)成分のうち、上記式(XV)で表される化合物としては、例えばトリフェニルスズラウレート、トリフェニルスズ−2−エチルヘキサテート、トリフェニルスズナフテート、トリフェニルスズアセテート、トリフェニルスズアクリレート、トリ−n−ブチルスズラウレート、トリ−n−ブチルスズ−2−エチルヘキサテート、トリ−n−ブチルスズナフテート、トリ−n−ブチルスズアセテート、トリ−n−ブチルスズアクリレート、トリ−t−ブチルスズラウレート、トリ−t−ブチルスズ−2−エチルヘキサテート、トリ−t−ブチルスズナフテート、トリ−t−ブチルスズアセテート、トリ−t−ブチルスズアクリレート、トリイソブチルスズラウレート、トリイソブチルスズ−2−エチルヘキサテート、トリイソブチルスズナフテート、トリイソブチルスズアセテート、トリイソブチルスズアクリレート、トリイソプロピルスズラウレート、トリイソプロピルスズ−2−エチルヘキサテート、トリイソプロピルスズナフテート、トリイソプロピルスズアセテート、トリイソプロピルスズアクリレート、トリヘキシルスズラウレート、トリヘキシルスズ−2−エチルヘキサテート、トリヘキシルスズアセテート、トリヘキシルスズアクリレート、トリオクチルスズラウレート、トリオクチルスズ−2−エチルヘキサテート、トリオクチルスズナフテート、トリオクチルスズアセテート、トリオクチルスズアクリレート、トリ−2−エチルヘキシルスズラウレート、トリ−2−エチルヘキシルスズ−2−エチルヘキサテート、トリ−2−エチルヘキシルスズナフテート、トリ−2−エチルヘキシルスズアセテート、トリ−2−エチルヘキシルスズアクリレート、トリステアリルスズラウレート、トリステアリルスズ−2−エチルヘキサテート、トリステアリルスズナフテート、トリステアリルスズアセテート、トリステアリルスズアクリレート、トリベンジルスズラウレート、トリベンジルスズ−2−エチルヘキサテート、トリベンジルスズナフテート、トリベンジルスズアセテート、トリベンジルスズアクリレート、ジフェニルスズジラウレート、ジフェニルスズ−2−エチルヘキサテート、ジフェニルスズジステアレート、ジフェニルスズジナフテート、ジフェニルスズジアセテート、ジフェニルスズジアクリレート、ジ−n−ブチルスズジラウレート、ジ−n−ブチルスズジ−2−エチルヘキサテート、ジ−n−ブチルスズジステアレート、ジ−n−ブチルスズジナフテート、ジ−n−ブチルスズジアセテート、ジ−n−ブチルスズジアクリレート、ジ−t−ブチルスズジラウレート、ジ−t−ブチルスズジ−2−エチルヘキサテート、ジ−t−ブチルスズジステアレート、ジ−t−ブチルスズジナフテート、ジ−t−ブチルスズジアセテート、ジ−t−ブチルスズジアクリレート、ジイソブチルスズジラウレート、ジイソブチルスズジ−2−エチルヘキサテート、ジイソブチルスズジステアレート、ジイソブチルスズジナフテート、ジイソブチルスズジアセテート、ジイソブチルスズジアクリレート、ジイソプロピルスズジラウレート、ジイソプロピルスズ−2−エチルヘキサテート、ジイソプロピルスズジステアレート、ジイソプロピルスズジナフテート、ジイソプロピルスズジアセテート、ジイソプロピルスズジアクリレート、ジヘキシルスズジラウレート、ジヘキシルスズジ−2−エチルヘキサテート、ジヘキシルスズジステアレート、ジヘキシルスズジナフテート、ジヘキシルスズジアセテート、ジヘキシルスズジアクリレート、ジ−2−エチルヘキシルスズジラウレート、ジ−2−エチルヘキシルスズ−2−エチルヘキサテート、ジ−2−エチルヘキシルスズジステアレート、ジ−2−エチルヘキシルスズジナフテート、ジ−2−エチルヘキシルスズジアセテート、ジ−2−エチルヘキシルスズジアクリレート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジ−2−エチルヘキサテート、ジオクチルスズジステアレート、ジオクチルスズジナフテート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジアクリレート、ジステアリルスズジラウレート、ジステアリルスズジ−2−エチルヘキサテート、ジステアリルスズジステアレート、ジステアリルスズジナフテート、ジステアリルスズジアセテート、ジステアリルスズジアクリレート、ジベンジルスズジラウレート、ジベンジルスズジ−2−エチルヘキサテート、ジベンジルスズジステアレート、ジベンジルスズジナフテート、ジベンジルスズジアセテート、ジベンジルスズジアクリレート、フェニルスズトリラウレート、フェニルスズトリ−2−エチルヘキサテート、フェニルスズトリナフテート、フェニルスズトリアセテート、フェニルスズトリアクリレート、n−ブチルスズトリラウレート、n−ブチルスズトリ−2−エチルヘキサテート、n−ブチルスズトリナフテート、n−ブチルスズトリアセテート、n−ブチルスズトリアクリレート、t−ブチルスズトリラウレート、t−ブチルスズトリ−2−エチルヘキサテート、t−ブチルスズトリナフテート、t−ブチルスズトリアセテート、t−ブチルスズトリアクリレート、イソブチルスズトリラウレート、イソブチルスズトリ−2−エチルヘキサテート、イソブチルスズトリナフテート、イソブチルスズトリアセテート、イソブチルスズトリアクリレート、イソプロピルスズトリラウレート、イソプロピルスズトリ−2−エチルヘキサテート、イソプロピルスズトリナフテート、イソプロピルスズトリアセテート、イソプロピルスズトリアクリレート、ヘキシルスズトリラウレート、ヘキシルスズトリ−2−エチルヘキサテート、ヘキシルスズトリナフテート、ヘキシルスズトリアセテート、ヘキシルスズトリアクリレート、オクチルスズトリラウレート、オクチルスズトリ−2−エチルヘキサテート、オクチルスズトリナフテート、オクチルスズトリアセテート、オクチルスズトリアクリレート、2−エチルヘキシルスズトリラウレート、2−エチルヘキシルスズトリ−2−エチルヘキサテート、2−エチルヘキシルスズトリナフテート、2−エチルヘキシルスズトリアセテート、2−エチルヘキシルスズトリアクリレート、ステアリルスズトリラウレート、ステアリルスズトリ−2−エチルヘキサテート、ステアリルスズトリナフテート、ステアリルスズトリアセテート、ステアリルスズトリアクリレート、ベンジルスズトリラウレート、ベンジルスズトリ−2−エチルヘキサテート、ベンジルスズトリナフテート、ベンジルスズトリアセテート、ベンジルスズトリアクリレート等が挙げられる。
また、上記式(XVI)で表される化合物としては、例えばジフェニルスズビスメチルマレート、ジフェニルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジフェニルスズビスオクチルマレート、ジフェニルスズビスオクチルマレート、ジフェニルスズビスベンジルマレート、ジ−n−ブチルスズビスメチルマレート、ジ−n−ブチルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジ−n−ブチルスズビスオクチルマレート、ジ−n−ブチルスズビスベンジルマレート、ジ−t−ブチルスズビスメチルマレート、ジ−t−ブチルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジ−t−ブチルスズビスオクチルマレート、ジ−t−ブチルスズビスベンジルマレート、ジイソブチルスズビスメチルマレート、ジイソブチルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジイソブチルスズビスオクチルマレート、ジイソブチルスズビスベンジルマレート、ジイソプロピルスズビスメチルマレート、ジイソプロピルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジイソプロピルスズビスオクチルマレート、ジイソプロピルスズビスベンジルマレート、ジヘキシルスズビスメチルマレート、ジヘキシルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジヘキシルスズビスオクチルマレート、ジヘキシルスズビスベンジルマレート、ジ−2−エチルヘキシルスズビスメチルマレート、ジ−2−エチルヘキシルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジ−2−エチルヘキシルスズビスオクチルマレート、ジ−2−エチルヘキシルスズビスベンジルマレート、ジオクチルスズビスメチルマレート、ジオクチルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジオクチルスズビスオクチルマレート、ジオクチルスズビスベンジルマレート、ジステアリルスズビスメチルマレート、ジステアリルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジステアリルスズビスオクチルマレート、ジステアリルスズビスベンジルマレート、ジベンジルスズビスメチルマレート、ジベンジルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジベンジルスズビスオクチルマレート、ジベンジルスズビスベンジルマレート、ジフェニルスズビスメチルアジテート、ジフェニルスズビス−2− エチルヘキサテート、ジフェニルスズビスオクチルアジテート、ジフェニルスズビスベンジルアジテート、ジ−n−ブチルスズビスメチルアジテート、ジ−n−ブチルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジ−n−ブチルスズビスオクチルアジテート、ジ−n−ブチルスズビスベンジルアジテート、ジ−t−ブチルスズビスメチルアジテート、ジ−t−ブチルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジ−t−ブチルスズビスオクチルアジテート、ジ−t−ブチルスズビスベンジルアジテート、ジイソブチルスズビスメチルアジテート、ジイソブチルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジイソブチルスズビスオクチルアジテート、ジイソブチルスズビスベンジルアジテート、ジイソプロピルスズビスメチルアジテート、ジイソプロピルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジイソプロピルスズビスオクチルアジテート、ジイソプロピルスズビスベンジルアジテート、ジヘキシルスズビスメチルアジテート、ジヘキシルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジヘキシルスズビスメチルアジテート、ジヘキシルスズビスベンジルアジテート、ジ−2−エチルヘキシルスズビスメチルアジテート、ジ−2−エチルヘキシルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジ−2−エチルヘキシルスズビスオクチルアジテート、ジ−2−エチルヘキシルスズビスベンジルアジテート、ジオクチルスズビスメチルアジテート、ジオクチルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジオクチルスズビスオクチルアジテート、ジオクチルスズビスベンジルアジテート、ジステアリルスズビスメチルアジテート、ジステアリルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジステアリルスズビスオクチルアジテート、ジステアリルスズビスベンジルアジテート、ジベンジルスズビスメチルアジテート、ジベンジルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジベンジルスズビスオクチルアジテート、ジベンジルスズビスベンジルアジテート等が挙げられる。
さらに、上記式(IV)で表される化合物としては、例えばジフェニルスズマレート、ジ−n−ブチルスズマレート、ジ−t−ブチルスズマレート、ジイソブチルスズマレート、ジイソプロピルスズマレート、ジヘキシルスズマレート、ジ−2−エチルヘキシルスズマレート、ジオクチルスズマレート、ジステアリルスズマレート、ジベンジルスズマレート、ジフェニルスズアジテート、ジ−n−ブチルスズアジテート、ジ−t−ブチルスズアジテート、ジイソブチルスズアジテート、ジイソプロピルスズアジテート、ジヘキシルスズジアセテート、ジ−2−エチルヘキシルスズアジテート、ジオクチルスズアジテート、ジステアリルスズアジテート、ジベンジルスズアジテート等が挙げられる。
上記変性剤としての(h)成分は、N−置換アミノケトン、N−置換アミノチオケトン、N−置換アミノアルデヒド、N−置換アミノチオアルデヒド、および分子中に−C−(=M)−N<結合(Mは酸素原子または硫黄原子を表す)を有する化合物からなる変性剤である。
(h)成分としては、4−ジメチルアミノアセトフェノン、4−ジエチルアミノアセトフェノン、1,3−ビス(ジフェニルアミノ)−2−プロパノン、1,7−ビス(メチルエチルアミノ)−4−ヘプタノン、4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−ジ−t−ブチルアミノベンゾフェノン、4−ジフェニルアミノベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノン、等のN−置換アミノケトン類および対応するN−アミノチオケトン類;4−ジメチルアミノベンズアルデヒド、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド、4−ジビニルアミノベンズアルデヒド等のN−置換アミノアルデヒド類および対応するN−置換アミノチオアルデヒド類;分子中に−C−(=Y1)−N<結合(Y1は酸素原子または硫黄原子を表す)を有する化合物、例えば、N−メチル−β−プロピオラクタム、N−フェニル−β−プロピオラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、N−フェニル−2−ピロリドン、N−t−ブチル−2−ピロリドン、N−フェニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピペリドン、N−フェニル−2−ピペリドン、N−メチル−ε−カプロラクタム、N−フェニル−ε−カプロラクタム、N−メチル−ω−カプロラクタム、N−フェニル−ω−カプロラクタム、N−メチル−ω−ラウリロラクタム、N−ビニル−ω−ラウリロラクタム、等のN−置換ラクタム類および対応するN―置換チオラクタム類 1,3−ジメチルエチレン尿素、1,3−ジビニルエチレン尿素、1,3−ジエチルー2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−エチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のN−置換環状尿素類および対応するN−置換環状チオ尿素類等が挙げられる。
上記変性剤としての(i)成分は、下記式(XX)または式(XXI)で表される複素環式ニトリル化合物である。
θ−C≡N ・・・(XX)
θ−R−C≡N ・・・(XXI)
上記式(XX)および(XXI)中、θは複素環基を示す。さらにθが窒素原子を含む複素環基であるのが好ましく、また酸素原子を含む複素環基、硫黄原子を含む複素環基、2以上のヘテロ原子を含む複素環基、および1以上のシアノ基を含む複素環基からなる群より選ばれる少なくとも1種の複素環基であるのが好ましい。さらに、チオフェン、ピリジン、フラン、ピペリジン、ジオキサンなどの複素芳香環基または複素非芳香環基であってもよく、さらに単環式、二環式、三環式、または多環式の複素環基であってもよい。
このようなθとして具体的には、たとえば、窒素原子を含む複素環基として、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、ピラジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、3−ピリダジニル、4−ピリダジニル、N−メチル−2−ピロリル、N−メチル−3−ピロリル、N−メチル−2−イミダゾリル、N−メチル−4−イミダゾリル、N−メチル−5−イミダゾリル、N−メチル−3−ピラゾリル、N−メチル−4−ピラゾリル、N−メチル−5−ピラゾリル、N−メチル−1,2,3−トリアゾール−4−イル、N−メチル−1,2,3−トリアゾール−5−イル、N−メチル−1,2,4−トリアゾール−3−イル、N−メチル−1,2,4−トリアゾール−5−イル、1,2,4−トリアジン−3−イル、1,2,4−トリアジン−5−イル、1,2,4−トリアジン−6−イル、1,3,5−トリアジニル、N−メチル−2−ピロリン−2−イル、N−メチル−2−ピロリン−3−イル、N−メチル−2−ピロリン−4−イル、N−メチル−2−ピロリン−5−イル、N−メチル−3−ピロリン−2−イル、N−メチル−3−ピロリン−3−イル、N−メチル−2−イミダゾリン−2−イル、N−メチル−2−イミダゾリン−4−イル、N−メチル−2−イミダゾリン−5−イル、N−メチル−2−ピラゾリン−3−イル、N−メチル−2−ピラゾリン−4−イル、N−メチル−2−ピラゾリン−5−イル、2−キノリル、3−キノリル、4−キノリル、1−イソキノリル、3−イソキノリル、4−イソキノリル、N−メチルインドール−2−イル、N−メチルインドール−3−イル、N−メチルイソインドール−1−イル、N−メチルイソインドール−3−イル、1−インドリジニル、2−インドリジニル、3−インドリジニル、1−フタラジニル、2−キナゾリニル、4−キナゾリニル、2−キノキサリニル、3−シンノリニル、4−シンノリニル、1−メチルインダゾール−3−イン、1,5−ナフチリジン−2−イル、1,5−ナフチリジン−3−イル、1,5−ナフチリジン−4−イル、1,8−ナフチリジン−2−イル、1,8−ナフチリジン−3−イル、1,8−ナフチリジン−4−イル、2−プテリジニル、4−プテリジニル、6−プテリジニル、7−プテリジニル、1−メチルベンズイミダゾール−2−イル、6−フェナンスリジニル、N−メチル−2−プリニル、N−メチル−6−プリニル、N−メチル−8−プリニル、N−メチル−β−カルボリン−1−イル、N−メチル−β−カルボリン−3−イル、N−メチル−β−カルボリン−4−イル、9−アクリジニル、1,7−フェナントロリン−2−イル、1,7−フェナントロリン−3−イル、1,7−フェナントロリン−4−イル、1,10−フェナントロリン−2−イル、1,10−フェナントロリン−3−イル、1,10−フェナントロリン−4−イル、4,7−フェナントロリン−1−イル、4,7−フェナントロリン−2−イル、4,7−フェナントロリン−3−イル、1−フェナジニル、2−フェナジニル、ピロリジノ、ピペリジノが挙げられる。
酸素原子を含む複素環基として、2−フリル、3−フリル、2−ベンゾ[b]フリル、3−ベンゾ[b]フリル、1−イソベンゾ[b]フリル、3−イソベンゾ[b]フリル、2−ナフト[2,3−b]フリル、3−ナフト[2,3−b]フリルが挙げられる。
硫黄原子を含む複素環基として、2−チエニル、3−チエニル、2−ベンゾ[b]チエニル、3−ベンゾ[b]チエニル、1−イソベンゾ[b]チエニル、3−イソベンゾ[b]チエニル、2−ナフト[2,3−b]チエニル、3−ナフト[2,3−b]チエニルが挙げられる。
2以上のヘテロ原子を含む複素環基として、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、3−イソチアゾリル、4−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル、1,2,3−オキサジアゾール−4−イル、1,2,3−オキサジアゾール−5−イル、1,3,4−オキサジアゾール−2−イル、1,2,3−チアジアゾール−4−イル、1,2,3−チアジアゾール−5−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−イル、2−オキサゾリン−2−イル、2−オキサゾリン−4−イル、2−オキサゾリン−5−イル、3−イソオキサゾリニル、4−イソオキサゾリニル、5−イソオキサゾリニル、2−チアゾリン−2−イル、2−チアゾリン−4−イル、2−チアゾリン−5−イル、3−イソチアゾリニル、4−イソチアゾリニル、5−イソチアゾリニル、2−ベンゾチアゾリル、モルホリノが挙げられる。
これらのなかでも、θは窒素原子を含む複素環基であるのが好ましく、特に2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジルであるのが好ましい。
上記式(XX)および(XXI)中、Rは2価の炭化水素基を示し、後述する複素環式ニトリル化合物に対応したアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基などに相当する。
このような複素環式ニトリル化合物としては、具体的には、たとえば、窒素原子を含む複素環基を有する化合物として、2−ピリジンカルボニトリル、3−ピリジンカルボニトリル、4−ピリジンカルボニトリル、ピラジンカルボニトリル、2−ピリミジンカルボニトリル、4−ピリミジンカルボニトリル、5−ピリミジンカルボニトリル、3−ピリダジンカルボニトリル、4−ピリダジンカルボニトリル、N−メチル−2−ピロールカルボニトリル、N−メチル−3−ピロールカルボニトリル、N−メチル−2−イミダゾールカルボニトリル、N−メチル−4−イミダゾールカルボニトリル、N−メチル−5−イミダゾールカルボニトリル、N−メチル−3−ピラゾールカルボニトリル、N−メチル−4−ピラゾールカルボニトリル、N−メチル−5−ピラゾールカルボニトリル、N−メチル−1,2,3−トリアゾール−4−カルボニトリル、N−メチル−1,2,3−トリアゾール−5−カルボニトリル、N−メチル−1,2,4−トリアゾール−3−カルボニトリル、N−メチル−1,2,4−トリアゾール−5−カルボニトリル、1,2,4−トリアジン−3−カルボニトリル、1,2,4−トリアジン−5−カルボニトリル、1,2,4−トリアジン−6−カルボニトリル、1,3,5−トリアジンカルボニトリル、N−メチル−2−ピロリン−2−カルボニトリル、N−メチル−2−ピロリン−3−カルボニトリル、N−メチル−2−ピロリン−4−カルボニトリル、N−メチル−2−ピロリン−5−カルボニトリル、N−メチル−3−ピロリン−2−カルボニトリル、N−メチル−3−ピロリン−3−カルボニトリル、N−メチル−2−イミダゾリン−2−カルボニトリル、N−メチル−2−イミダゾリン−4−カルボニトリル、N−メチル−2−イミダゾリン−5−カルボニトリル、N−メチル−2−ピラゾリン−3−カルボニトリル、N−メチル−2−ピラゾリン−4−カルボニトリル、N−メチル−2−ピラゾリン−5−カルボニトリル、2−キノリンカルボニトリル、3−キノリンカルボニトリル、4−キノリンカルボニトリル、1−イソキノリンカルボニトリル、3−イソキノリンカルボニトリル、4−イソキノリンカルボニトリル、N−メチルインドール−2−カルボニトリル、N−メチルインドール−3−カルボニトリル、N−メチルイソインドール−1−カルボニトリル、N−メチルイソインドール−3−カルボニトリル、1−インドリジンカルボニトリル、2−インドリジンカルボニトリル、3−インドリジンカルボニトリル、1−フタラジンカルボニトリル、2−キナゾリンカルボニトリル、4−キナゾリンカルボニトリル、2−キノキサリンカルボニトリル、3−シンノリンカルボニトリル、4−シンノリンカルボニトリル、1−メチルインダゾール−3−カルボニトリル、1,5−ナフチリジン−2−カルボニトリル、1,5−ナフチリジン−3−カルボニトリル、1,5−ナフチリジン−4−カルボニトリル、1,8−ナフチリジン−2−カルボニトリル、1,8−ナフチリジン−3−カルボニトリル、1,8−ナフチリジン−4−カルボニトリル、2−プテリジンカルボニトリル、4−プテリジンカルボニトリル、6−プテリジンカルボニトリル、7−プテリジンカルボニトリル、1−メチルベンズイミダゾール−2−カルボニトリル、フェナントリジン−6−カルボニトリル、N−メチル−2−プリンカルボニトリル、N−メチル−6−プリンカルボニトリル、N−メチル−8−プリンカルボニトリル、N−メチル−β−カルボリン−1−カルボニトリル、N−メチル−β−カルボリン−3−カルボニトリル、N−メチル−β−カルボリン−4−カルボニトリル、9−アクリジンカルボニトリル、1,7−フェナントロリン−2−カルボニトリル、1,7−フェナントロリン−3−カルボニトリル、1,7−フェナントロリン−4−カルボニトリル、1,10−フェナントロリン−2−カルボニトリル、1,10−フェナントロリン−3−カルボニトリル、1,10−フェナントロリン−4−カルボニトリル、4,7−フェナントロリン−1−カルボニトリル、4,7−フェナントロリン−2−カルボニトリル、4,7−フェナントロリン−3−カルボニトリル、1−フェナジンカルボニトリル、2−フェナジンカルボニトリル、1−ピロリジンカルボニトリル、1−ピペリジンカルボニトリルが挙げられる。
酸素原子を含む複素環基を有する化合物としては、2−フロニトリル、3−フロニトリル、2−ベンゾ[b]フランカルボニトリル、3−ベンゾ[b]フランカルボニトリル、イソベンゾ[b]フラン−1−カルボニトリル、イソベンゾ[b]フラン−3−カルボニトリル、ナフト[2,3−b]フラン−2−カルボニトリル、ナフト[2,3−b]フラン−3−カルボニトリルが挙げられる。
硫黄原子を含む複素環基を有する化合物として、2−チオフェンカルボニトリル、3−チオフェンカルボニトリル、ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボニトリル、ベンゾ[b]チオフェン−3−カルボニトリル、イソベンゾ[b]チオフェン−1−カルボニトリル、イソベンゾ[b]チオフェン−3−カルボニトリル、ナフト[2,3−b]チオフェン−2−カルボニトリル、ナフト[2,3−b]チオフェン−3−カルボニトリルが挙げられる。
2以上のヘテロ原子を含む複素環基を有する化合物として、2−オキサゾールカルボニトリル、4−オキサゾールカルボニトリル、5−オキサゾールカルボニトリル、3−イソオキサゾールカルボニトリル、4−イソオキサゾールカルボニトリル、5−イソオキサゾールカルボニトリル、2−チアゾールカルボニトリル、4−チアゾールカルボニトリル、5−チアゾールカルボニトリル、3−イソチアゾールカルボニトリル、4−イソチアゾールカルボニトリル、5−イソチアゾールカルボニトリル、1,2,3−オキサゾール−4−カルボニトリル、1,2,3−オキサゾール−5−カルボニトリル、1,3,4−オキサゾール−2−カルボニトリル、1,2,3−チアゾール−4−カルボニトリル、1,2,3−チアゾール−5−カルボニトリル、1,3,4−チアゾール−2−カルボニトリル、2−オキサゾリン−2−カルボニトリル、2−オキサゾリン−4−カルボニトリル、2−オキサゾリン−5−カルボニトリル、3−イソオキサゾリンカルボニトリル、4−イソオキサゾリンカルボニトリル、5−イソオキサゾリンカルボニトリル、2−チアゾリン−2−カルボニトリル、2−チアゾリン−4−カルボニトリル、2−チアゾリン−5−カルボニトリル、3−イソチアゾリンカルボニトリル、4−イソチアゾリンカルボニトリル、5−イソチアゾリンカルボニトリル、ベンゾチアゾール−2−カルボニトリル、4−モルホリンカルボニトリルが挙げられる。
2以上のシアノ基を有する化合物として、2,3−ピリジンジカルボニトリル、2,4−ピリジンジカルボニトリル、2,5−ピリジンジカルボニトリル、2,6−ピリジンジカルボニトリル、3,4−ピリジンジカルボニトリル、2,4−ピリミジンジカルボニトリル、2,5−ピリミジンジカルボニトリル、4,5−ピリミジンジカルボニトリル、4,6−ピリミジンジカルボニトリル、2,3−ピラジンジカルボニトリル、2,5−ピラジンジカルボニトリル、2,6−ピラジンジカルボニトリル、2,3−フランジカルボニトリル、2,4−フランジカルボニトリル、2,5−フランジカルボニトリル、2,3−チオフェンジカルボニトリル、2,4−チオフェンジカルボニトリル、2,5−チオフェンジカルボニトリル、N−メチル−2,3−ピロールジカルボニトリル、N−メチル−2,4−ピロールジカルボニトリル、N−メチル−2,5−ピロールジカルボニトリル、1,3,5−トリアジン−2,4−ジカルボニトリル、1,2,4−トリアジン−3,5−ジカルボニトリル、3,2,4−トリアジン−3,6−ジカルボニトリル、2,3,4−ピリジントリカルボニトリル、2,3,5−ピリジントリカルボニトリル、2,3,6−ピリジントリカルボニトリル、2,4,5−ピリジントリカルボニトリル、2,4,6−ピリジントリカルボニトリル、3,4,5−ピリジントリカルボニトリル、2,4,5−ピリミジントリカルボニトリル、2,4,6−ピリミジントリカルボニトリル、4,5,6−ピリミジントリカルボニトリル、ピラジントリカルボニトリル、2,3,4−フラントリカルボニトリル、2,3,5−フラントリカルボニトリル、2,3,4−チオフェントリカルボニトリル、2,3,5−チオフェントリカルボニトリル、N−メチル−2,3,4−ピロールトリカルボニトリル、N−メチル−2,3,5−ピロールトリカルボニトリル、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリカルボニトリル、1,2,4−トリアジン−3,5,6−トリカルボニトリルが挙げられる。
これらのなかでも、2−シアノピリジン(2−ピリジンカルボニトリル)、3−シアノピリジン(3−ピリジンカルボニトリル)、4−シアノピリジン(4−ピリジンカルボニトリル)が好適なものとして挙げられる。
上記のように共役ジエン系重合体を複素環式ニトリル化合物で変性する方法としては、重合体と複素環式ニトリル化合物を反応させればよく、たとえば、1,3−ブタジエン単量体を、必要に応じてその他の単量体を加えて触媒または開始剤ともに混合および反応させることで重合混合物を得て、これに複素環式ニトリル化合物を添加する方法が挙げられる。また、活性化された重合混合物に複素環式ニトリル化合物を添加してもよく、1,3−ブタジエン単量体を重合させて形成した反応性ポリマーと複素環式ニトリル化合物とを反応させてもよい。さらに、活性化された重合混合物に複素環式ニトリル化合物を添加し、これに官能化剤を添加してもよい。
このようにして得られた重合混合物を冷却し、通常の方法を用いて脱溶媒および乾燥を経ることにより、変性共役ジエン系重合体を得る。たとえば、ポリマーセメントから回収したポリマーを溶媒に流し込み、次いで得られたポリマーをドラムドライヤー等の乾燥機を用いて乾燥する。このとき、ドラムドライヤーで乾燥したポリマーセメントから直接ポリマーを回収してもよい。得られた乾燥ポリマー中の揮発性物質は1重量%以下となる。
得られる変性された共役ジエン系重合体の構造は、たとえば触媒や開始剤の種類や添加量のように反応性ポリマーを調製するのに用いた条件や、複素環式ニトリル化合物の種類や配合量のように反応性ポリマーと複素環式ニトリル化合物とを反応させるのに用いた条件に左右される。
以上の(a)〜(i)成分の変性剤は、一種単独で使用することも、あるいは二種以上を混合して用いることもできる。
ここで、上記重合触媒系の(A)成分に対するこれら変性剤の使用量は、得られる変性重合体の変性率によって相違するが、モル比で、0.1〜100、好ましくは1.0〜50である、変性剤の使用量を上記範囲内にすることによって、変性反応が進行し、トルエン不溶分(ゲル)が生成しない低発熱性、ランフラット耐久性に優れる変性共役ジエン系重合体を得ることができる。
この変性反応は、通常、室温〜100℃の攪拌下0.5分〜2時間、好ましくは3分〜1時間の範囲である。高い末端リビング率を得るための触媒および重合条件で重合し、引き続き末端変性反応をおこなうことによって、末端変性率の高い変性共役ジエン系重合体が得られる。
本発明においては、このようにして得られた共役ジエン系重合体に、上記(a)〜(i)成分で表される変性剤を、該重合体の擬似リビング鎖に対して、好ましくは化学量論的量またはそれより過剰に加え、該重合体と反応させる。本発明においては、この変性反応後に、所望により、公知の老化防止剤や重合反応を停止する目的でアルコール等を加えることができる。
このようにして変性処理したのち、脱溶媒等の従来公知の後処理を行い、目的の変性共役ジエン系重合体を得ることができる。なお、得られる変性共役ジエン系重合体の変性率は10%以上、好ましくは15%以上である。変性率が上記範囲内であると、本発明の目的とする効果が充分に発揮されやすい。
[変性率]
上記変性共役ジエン系重合体の変性率(末端変性率)について図2に基づいて詳細に説明する。
縦軸は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって得られたUV/RIの値を示す。UVはポリマーと反応した変性剤に起因するUV吸光度から得られるピーク面積値を示し、RIはポリマーそのものの示差屈折率(RI)から得られるピーク面積値を示す。
横軸は(1/Mn)×103の値を示し、Mnは絶対分子量(数平均分子量)である。図2においてLowCisBRはLi系触媒によるアニオン重合によって重合され、変性剤4,4’−ビス(ジエチルアミノベンゾフェノン)(以下、「DEAB」ともいう)によって変性されたものであり、数分子量Mnが異なった3種類のUV/RIの値がプロットされ、直線として近似することができる。アニオン重合の場合は100%変性されることから、LowCisBRのUV/RIを100%として、次式のようにAで表す。
UV(Li−Br)/RI(Li−Br)=A
一方、配位重合である本発明におけるランタン系列希土類元素(Nd)含有化合物を含む触媒を用い、DEABで変性したHighCisBRについても数分子量Mnが異なった5種類のUV/RIの値がプロットされ、上記同様に直線として近似することができる。配位重合の場合は、重合中にリビングでなくなる部分があり、100%変性することは難しい。
HighCisBRのUV/RIを次式で示すようにBで表したとき、
UV(Nd−Br)/RI(Nd−Br)=B
本発明における変性率を以下のように定義する。
変性率=B/A×100(%)
なお、変性率はHighCisBRと同じ絶対分子量(数平均分子量)のLowCisBRを用いて得られたA値およびB値から本発明における変性率が算出される。
さらに、イソプロパノールと反応させた無変性の重合体の変性率を0%として、図2に示す無変性のラインの値を差し引いたUV/RIの値を真値として用いる。A値およびB値についても図2に示す。
図2に示す3本の直線は検量線として用いることができ、たとえば、HihCisBRの絶対分子量Mn(数平均)がわかれば本発明における変性率を算出することができる。
なお、図2からわかるように、絶対分子量Mn(数平均)が大きくなるに従い、変性率が小さくなり、変性剤による変性が困難になることがわかる。
また、変性剤が変われば、その都度検量線を作成する必要がある。
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物に用いられる変性共役ジエン系重合体は一種単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。また、この変性共役ジエン系重合体と併用されるゴム成分としては、天然ゴム及び他のジエン系合成ゴムが挙げられ、他のジエン系合成ゴムとしては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、スチレン−イソプレン共重合体(SIR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)及びこれらの混合物が挙げられる。
本発明のゴム組成物においては、補強用充填材として、窒素吸着比表面積(N2SA)が20〜90m2/gであるカーボンブラックが用いられる。このカーボンブラックとしては、例えばGPF、FEF、SRF、HAF等が挙げられる。カーボンブラック窒素吸着比表面積は、好ましくは25〜90m2/gであり、特に好ましくは35〜90m2/gである。これらのカーボンブラックの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、10〜100質量部、好ましくは30〜90質量部である。このようなカーボンブラックの量を用いることにより、諸物性の改良効果は大きくなるが、特に耐破壊特性及び低発熱性(低燃費性)に優れるHAF及びFEFが好ましい。
通常、カーボンブラックの窒素吸着比表面積が小さくなるに従って、その組成物は低発熱性(低燃費性)になるが、本発明に係る活性末端に第一アミノ基を導入し、さらに変性反応の途中及び又は終了後に変性反応系に縮合促進剤を加えてなる変性共役ジエン系重合体と組み合わせて用いることによって、未変性の共役ジエン系重合体を使用した場合に比べ、前記カーボンブラックの効果を差し引いても、窒素吸着比表面積が小さくなるに従って本発明に係るゴム組成物は低発熱性(低燃費性)及び耐破壊特性に優れるという特徴を有している。
本発明のゴム組成物は、硫黄架橋性であり、加硫剤として硫黄が用いられる。その使用量としては、ゴム成分100質量部に対し、硫黄を1〜10質量部配合することが好ましい。1質量部未満であると架橋数が足らず、耐破壊特性が悪化するおそれがあり、10質量部を超えると耐熱性が悪化するおそれがあるからである。この観点から、硫黄を2〜8質量部配合することが特に好ましい。
本発明のゴム組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば硫黄以外の加硫剤、加硫促進剤、プロセス油、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等を含有させることができる。
本発明で使用できる加硫促進剤は、特に限定されるものではないが、例えば、M(2−メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)等のチアゾール系、或いはDPG(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系の加硫促進剤等を挙げることができ、その使用量は、ゴム成分100質量部に対し、0.1〜6.0質量部が好ましく、さらに好ましくは0.2〜4.0質量部である。
また、本発明のゴム組成物で使用できる軟化剤として用いるプロセス油としては、例えば、パラフィン系、ナフテン系、アロマチック系等を挙げることができる。引張強度、耐摩耗性を重視する用途にはアロマチック系が、ヒステリシスロス、低温特性を重視する用途にはナフテン系又はパラフィン系が用いられる。その使用量は、ゴム成分100質量部に対して、0〜50質量部が好ましく、50質量部以下であれば加硫ゴムの引張強度、低発熱性(低燃費性)が悪化するのを抑制することができる。
さらに、本発明のゴム組成物で使用できる老化防止剤としては、例えば3C(N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、6C[N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン]、AW(6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)、ジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物等を挙げることができる。その使用量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜5.0質量部が好ましく、さらに好ましくは0.3〜4.0質量部である。
本発明のゴム組成物には、補強用充填材として、さらに無機充填材および/またはカーボンブラックを配合するのが望ましい。これら補強用充填材の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、無機充填材および/またはカーボンブラックの総量が10〜100質量部、好ましくは20〜90質量部である。このような補強用充填材の配合量とすることにより、諸物性の改良効果は大きくなる傾向にある。
上記無機充填材としては、たとえば、シリカおよび/または一般式(Q)
mMl・xSiOy・zH2O (Q)
で表される化合物を挙げることができる。
上記一般式(Q)において、Mlはアルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム、およびジルコニウムの中から選ばれる金属、これらの金属の酸化物または水酸化物、およびそれらの水和物、またはこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり、m、x、yおよびzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、および0〜10の整数である。尚、上記式において、x、zがともに0である場合には、該無機化合物はアルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウムおよびジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの金属、金属酸化物または金属水酸化物となる。
上記一般式(Q)で表わされる無機充填材としては、γ−アルミナ、α−アルミナ等のアルミナ(Al2O3)、ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al2O3・H2O)、ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3]、炭酸アルミニウム[Al2(CO3)3]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al2O3)、クレー(Al2O3・2SiO2)、カオリン(Al2O3・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al2O3・4SiO2・H2O、ベントナイト(Al2O3・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(A2SiO5、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2・SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al2O3・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO3)2]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等が使用できる。また、前記一般式(XIIV)中のM1がアルミニウム金属、アルミニウムの酸化物または水酸化物、およびそれらの水和物、またはアルミニウムの炭酸塩から選ばれる少なくとも一つである場合が好ましい。
上記一般式(Q)で表されるこれらの無機化合物は、単独で使用してもよいし、二種以上を混合して使用してもよい。また、これらの化合物はシリカと混合して使用することもできる。
上記シリカとしては特に制限はなく、従来ゴムの補強用充填材として慣用されているものの中から任意に選択して用いることができる。このシリカとしては、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられるが、中でも破壊特性の改良効果並びにウェットグリップ性の両立効果が最も顕著である湿式シリカが好ましい。
上記カーボンブラックとしては特に制限はなく、従来ゴムの補強用充填材として慣用されているものの中から任意のものを選択して用いることができる。このカーボンブラックとしては、例えばGPF、FEF、SRF、HAF、IISAF等が挙げられる。カーボンブラック窒素吸着比表面積は、20〜100m2/g、好ましくは20〜90m2/g、より好ましくは30〜90m2/gである。特に、耐破壊性に優れる点から、HAF、FEFを配合するのが好ましい。
本発明のゴム組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば加硫剤、加硫促進剤、プロセス油、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸等を含有させることができる。
本発明のゴム組成物は、前記配合処方により、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を用いて混練りすることによって得られ、成形加工後、加硫を行い、サイドウォール用ゴム組成物として好適に使用される。
本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物をサイド補強層および/またはビードフィラーに用いて通常の方法によって製造される。すなわち、上記のように各種薬品を含有させた本発明のゴム組成物が未加硫の段階で各部材に加工され、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、共役ジエン系重合体の各物性は、以下の方法に従って測定した。
《重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)およびMw/Mn》
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(商品名「HLC−8220GPC」、東ソー社製)を使用し、検知器として示差屈折計を用いて、以下の条件で測定し、標準ポリスチレン換算値として算出した。
カラム;商品名「GMHXL」(東ソー社製) 2本
カラム温度;40℃
移動相;テトラヒドロフラン
流速;1.0ml/min
サンプル濃度;10mg/20ml
《変性率》
上述に記載の方法に従って、算出した。
[触媒の調製]
乾燥・置換された、ゴム栓付き容器100mLのガラスビンに、順次、ブタジエンのシクロヘキサン溶液(15.2質量%)7.11g、ネオジムネオデカノエートのシクロヘキサン溶液(0.56mol/L)0.59mL、メチルアルミノキサンMAO(東ソーアクゾ製PMAO)のトルエン溶液(アルミニウム濃度として3.23mol)10.32mL、水素化ジイソブチルアルミ(関東化学製)のヘキサン溶液(0.90mol/L)7.77mLを投入し、室温で4分間熟成した後、塩素化ジエチルアルミ(関東化学製)のヘキサン溶液(0.95mol/L)2.36mLを加え、室温で時折攪拌しながら15分間熟成した。こうして得られた触媒溶液中のネオジムの濃度は、0.011mol/Lであった。
[重合体Aの製造]
約1L容積のゴム栓付きガラスビンを乾燥・窒素置換し、乾燥精製されたブタジエンのシクロヘキサン溶液および乾燥シクロヘキサンを投入し、ブタジエン5.0質量%のシクロヘキサン溶液400gが投入された状態とした。
次いで、前もって調製した上記触媒を1.56mL(ネオジム換算0.017mmol)を投入し、10℃水浴中で4.0時間重合を行った。その後、50℃にて老化防止剤2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(以下、「老化防止剤NS−5」ともいう)のイソプロパノール5質量%溶液2mLを加えて重合反応の停止を行い、さらに微量の老化防止剤NS−5を含むイソプロパノール中で再沈殿させた後、ドラムドライヤーにて乾燥し、ほぼ100%の収率で重合体Aを得た。
[重合体Bの製造]
窒素置換された5Lオートクレーブに、窒素下、シクロヘキサン1.4kg、1,3−ブタジエン250g、2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン(0.0171mmol)シクロヘキサン溶液として注入し、これに1.71mmolのn−ブチルリチウム(BuLi)を加えた後、攪拌装置を備えた50℃温水浴中で4.5時間重合を行った。その後、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1.3gを含むメタノール溶液を加えて重合反応の停止を行い、次いでスチームストリッピングにより脱溶媒し、110℃のロールにて乾燥して、ほぼ100%の収率で重合体Bを得た。
[重合体Cの製造]
重合体Bの製造例と同様に重合を行った後、4,4’−ビス(ジエチルアミノベンゾフェノン)(以下、「DEAB」ともいう)をBuLi対比0.30当量添加して重合体Bと同様の操作を行い、重合体Cを得た。
[重合体Dの製造]
重合体Aの製造例と同様に重合を行った後、さらに重合体溶液を温度60℃に保ち、2−ピリジルアセトニトリル0.425mmolのトルエン溶液を添加し、15分間反応させた。続いて、2,4−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1.3gを含むメタノール溶液に抜き取り、重合停止させた後、スチームストリッピングにより脱溶媒し、110℃のロールで乾燥して、重合体D(変性共役ジエン系重合体)を得た。
[比較例1〜3、実施例1]
表1に示す配合処方のゴム組成物を調製し、145℃で33分間加硫して得た加硫ゴムを用いて、各々ランフラットタイヤ(タイヤサイズ 215/45ZR17)を作製した。得られたランフラットタイヤに対し、下記の方法に従って低発熱性(3%tanδ)およびランフラット耐久性を測定した。結果を表2に示す。
《低発熱性(3%tanδ)》
動的スペクトロメーター(米国レオメトリックス社製)を使用し、引張動歪3%、周波数15Hz、50℃の条件で測定した。表2において、比較例1を100として実施例および比較例を指数表示した。指数値が小さい程、低発熱性(低ロス性)に優れることを示す。
《ランフラット耐久性》
ランフラットタイヤを常圧でリム組みし、内圧230kPaを封入してから38℃の室内中に24時間放置後、バルブのコアを抜き、内圧を大気圧として、荷重4.17kN(425kg)、速度89km/h、室内温度38℃の条件でドラム走行テストを行った。各供試タイヤの故障発生までの走行距離を測定し、表2において、比較例1の走行距離を100として、以下の式により指数表示した。指数が大きい程、ランフラット耐久性が良好であることを示す。
ランフラット耐久性(指数)=(供試タイヤの走行距離/比較例1のタイヤの走行距離)×100
※1:重合体A〜D、使用した重合体の種類を表2に示す。
※2:アロマティックオイル(登録商標「アロマックス#3」、富士興産(株)製
※3:N−(1,3−ジメチルブチル)−N'−p−フェニレンジアミン、大内新興化学(株)製、ノクラック6C
※4:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学(株)製、ノクセラーCZ−G
※5:4,4’−ビス(ジメチルアミノベンゾフェノン)
表2の結果によれば、本発明で規定する要件下で変性された重合体を用いた実施例は、未変性の重合体を用いた比較例1〜2に比して、低発熱性およびランフラット耐久性ともに優れた効果を発揮することがわかる。なお、シス含量が80%以上である比較例1と、90%未満である比較例2によれば、たとえシス含量が90%以上であっても特定の要件下で変性された重合体でなければ、本発明の目的とする効果が充分に得られないことが明らかである。
また、特定の要件下で変性された重合体であってもシス含量が90%未満である比較例3と実施例を比較すれば、本発明の目的とする効果を得るには、これら双方の要件を充足することが重要であることがわかる。