JP5612000B2 - 圧入接合の接合品質管理方法 - Google Patents
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上記発熱量の内、溶接電流と通電時間については溶接タイマー等で制御し、その制御方式はサイリスタ定電流制御により行っていた。
従ってこの電流が接合部を通らず漏電したり、ショートしたりした時の異常をこの方法では検知できない。即ち接合に使用された電流を適切にモニタリングする方法はないのが現状である。
このため最終的には、接合品の品質管理については、製造品のサンプルを取り出し、その都度破壊強度試験を行って最適接合条件範囲の条件出しを行ない、また強度等の試験を行い品質の確認及び管理を行っている。
特許文献4には、ジュール熱によってワークの溶接を行う抵抗溶接機において、両電極間の電圧を容易に測定することが出来る装置が開示されており、この装置により測定した電圧によって溶接がどの段階まで進んでいるかがわかり、それに応じて電極の加圧等を適宜行うことにより、ワークを良好に溶接できるというものである。
また、例え接合時に電流及び通電時間を測定しても、実際の接合部に正常に電流が流れ且つ良好に接合が行われているかの判断ができないため、電流等の測定だけでは接合品の品質保証の検証にはならないという問題がある。
上記飽和状態となる現象は、電流を上げるか又は通電時間を長くするかの何れについてもあらわれる現象である。
本発明に係る圧入接合における接合品質管理方法は、上記接合部12の軟化により圧入が開始された時点から、上記通電が終了するまでの時間を保持時間として確保し、かつこの保持時間を0.05秒以上としたことである。
また、本発明に係る圧入接合における接合品質管理方法は、上記非接触温度計10としてファイバ型放射温度計、又は赤外線サーモグラフィを用いたことである。
図1は、この実施の形態に係る圧入接合の接合部品管理方法を示すものである。
上記圧入接合は、受け電極2及び加圧電極4を用い、第一の部材6の孔部7に第二の部材8を接合するものである。
上記両電極間の通電により第一の部材6と第二の部材8との接合部12には電気抵抗熱による発熱が生じるが、実際の接合時に接合部12に予定通りの発熱が起きていたかどうか確認するため、温度測定手段としての非接触温度計10及び制御装置11を用いて接合部12の温度を測定する。
受け電極2には上面部の中央に円形の穴部13(直径:d)が形成され、また加圧電極4には、下面部の中央に円形の保持穴部15が形成されている。
また、圧入深さ(通常第一の部材の板厚と同じ)は1mm〜6mmの範囲が実用的で良好であり、また孔部7の内径(略第二の部材8の挿入部分16の外径)は4mm〜50mmの範囲が電源の容量等からして好ましい。
上記穴部13の穴の大きさ(d:直径)は、第二の部材8よりも少し大きく形成し穴部13に接触しないようにする。また、穴部13は第一の部材6の孔部7の内径より少し大きく形成する。
上記下部プラテン20は、上面部に受け電極2を載置し保持する保持部40、及びこの保持部40から延設される導通部42を有している。この導通部42は、電源トランス22の出力端子と電気的に接続されている。また下部プラテン20の内部には、冷却水が通過する冷却回路44が形成されている。
上記上部プラテン21は、下面部に加圧電極4を取り付ける加圧保持部50、及びこの加圧保持部50から延設される導通部52を有している。この導通部52は、電源トランス22の出力端子と電気的に接続されている。上部プラテン21の内部には、冷却水が通過する冷却回路54が形成されている。
上記各冷却回路は直列に連結され、給水装置から給水バルブ56を通過した冷却水は、順に加圧電極4、上部プラテン21、受け電極2、及び下部プラテン20の各冷却回路を通過して各部を冷却し、排水バルブ58を通過して排水される。
接合に際しては、予め製造装置18の制御部に対して、接合条件を設定する。この接合条件として、加圧力、加圧時間、電流、通電時間、及び電流の通電パターンなどがある。
上記加圧力(ここでは4000N)は、通電前に加圧したとき圧入が生じない加圧力を最大とし、また通電開始直後に短絡による火花放電を起さない加圧力を最小とする。このため、最適な加圧力は上記最大の加圧力の60%〜90%が適切である。
また、接合工程の開始前に、制御部からの指示に基づき給水バルブ56及び排水バルブ58を開いて給水装置から各冷却回路に送る冷却水の給水を開始する。
また、加圧電極4には第二の部材8を保持させる。この第二の部材8を、加圧電極4の保持穴部15に差し込み物理的に狭持保持させる。
これにより、第二の部材8と第一の部材6の孔部7との接合部12に大容量の電流が流れ、電気抵抗熱の発生とともに接合部12が軟化し第二の部材8の圧入が開始され、第二の部材8の挿入部分16が第一の部材6の孔部7内を降下移動する。
上記通電の開始から所定時間経過後、制御部からの指示により通電が停止される。この通電開始から通電の停止までの通電時間は、上記第一の部材の孔部に対する第二の部材の圧入接合が完了するまでの時間より少し長く(但し、0.5秒以内が好ましい)設定される。
この後、制御部からの指示により、加圧電極4と受け電極2間の通電が停止される。上記圧入直後は、第一の部材6の孔部7と第二の部材8との接合部12の温度は高くなっている。上記通電の停止後、ワークの冷却期間としては0.5秒〜2秒確保する。この冷却により、接合部12に焼入れが行われる。
上記接合部の急速加熱、急速冷却により、後述するように炭素当量0.15%以上の鋼材の場合、接合部12における接合界面近傍にマルテンサイト変態を生じる。
図4は、ワークとして上記各材料を用いた接合品(第一の部材に第二の部材を接合)に関し、接合部の残留応力を測定した結果を示したものである。横軸は接合位置(mm)を示すものであり、0.0が接合の中心位置を示し、この右側が第二の部材8を、左側が第一の部材6を示す。また、縦軸は残留応力(MPa)を示すものであり中心位置を0としてプラス側は引張りの残留応力(引張残留応力)の発生を、マイナス側は圧縮の残留応力(圧縮残留応力)の発生をそれぞれ示す。
これから、上記ワークの炭素当量が0.20%以上あれば、鋼材(接合部12)にマルテンサイト変態が生じこれにより十分な圧縮残留応力が得られたものと考えられる。また、炭素当量が0.06%の場合には引張残留応力が発生していることからすれば、炭素当量が0.15%程度以上であれば、鋼材(接合部12)にマルテンサイト変態が生じることが推測され、接合部12の近傍には圧縮残留応力が発生すると考えられる。
なお、材料に浸炭材を用いた場合にも、十分な圧縮残留応力が得られることが確認されている。上記圧縮残留応力を有する部材は、疲労強度が高いことは広く知られている。
この試験では、製造工程上(オンライン)で測定が可能な非接触温度計10を導入した。非接触温度計10は、対象物から放射される赤外線等を検出しこれを温度に換算して計測する。ここでは、非接触温度計10としてファイバ型放射温度計10(測定距離200mm、測定範囲φ2.5mm)を使用した。このファイバ型放射温度計10を用いて、圧入接合における発熱部として部材同士の接合部12の温度測定を行った。なお、非接触温度計10として他に赤外線サーモグラフィなども使用できる。
図5は、圧入接合時の接合部12の温度を、時間の経過にともなって測定した結果を示したグラフである。ここで、接合に用いた第一の部材は厚さ3.2mmのSPHC鋼の板材、第二の部材はS20C鋼の軸材であり、接合条件として圧入代は0.4mm、加圧力0.22MPa、通電電流16kA、通電時間は9サイクル(0.15秒:9/60)である。
圧入接合に係る接合部12の温度は、グラフが示す圧入工程における温度推移により判断する。このグラフからすれば、接合部12が軟化して圧入が開始されてから通電が終了するまでの時間は略0.07秒(70msec)である。
ここで、図6(a)は電流と接合部の温度(ピーク温度)との関係を示したものである。これは、通電電流を変えて圧入接合を繰り返し行い、各通電電流に対する接合部12の温度(ピーク温度)の測定結果を示したものである。
これから、電流が31kAまでは、電流と接合部の温度とは略比例しているが、31kA以上では電流を上げても接合部の温度は略一定で変化がなく接合部の温度は飽和している。
またこの結果から、接合部の特性を予測する場合、電流ではなく接合部の温度を測定することが品質管理にとってより重要であることが示唆されている。
これから、31kA以上の電流を通電すれば、接合強度は大体一定で飽和した状態となり略最大のものが得られることが示されている。
図6(c)は、接合部の温度(ピーク温度)と接合強度との関係を示したものである。
この例からしても、接合部の温度を測定することで、その温度に対する接合強度はこのグラフより推定できることになる。
図8(a)は、上記図7の圧入接合と同様な部材を用い、加圧力を4.3kN、通電電流を16kAとし、通電時間を変えて圧入接合を繰り返し行い、各通電時間に対する接合部12の温度(ピーク温度)の測定結果を示したグラフである。
これから、通電時間が5サイクル(0.08秒:5/60)までは通電時間と接合部の温度とは略比例しているが、5サイクル以上では通電時間を長くしても接合部の温度は略一定で変化がなく接合部の温度は飽和している。
なお、上記通電時間を変えた場合であっても、通電時間(接合部の温度)と接合強度との関係は、上記電流を変えた場合と同様であることが確認されている。
このように、上記電流を上昇させた場合に接合部の温度が飽和する現象は、通電時間の間隔を長くした場合についても同様であり、接合部の温度が飽和する現象となってあらわれている。
また、圧入時の加圧力については、加圧力が高くなれば(他の条件は同一)接合部の温度(ピーク温度)が低下することが確認されている。
このため、ある特定形態(孔部の径、板厚、加圧力、圧入代等)の接合部材の圧入接合品を製造するに際して、予め、通電時の接合部の温度として、上記特定形態の接合部材について上記飽和状態となる範囲の温度を飽和温度として計測しこれを把握しておけばよい。そして、製造工程において上記特定形態の接合部材の圧入接合を行う際、接合部の温度を測定し、これと上記計測把握した飽和温度と比較することで接合品の良否(接合強度)の判断が行えることになる。
また接合部の温度が、上記飽和状態の範囲の温度を超えて異常に高ければ、接合部で異常発熱が起きたおそれがある。この異常発熱現象とは、接合部の溶融、爆飛などによる高温度の発熱であり、これらは通常圧入接合では起こり得ないことから、圧入接合が成立していないことになり接合品は不良と判断する。
図9(b)は、上記各接合素材に関して圧入接合時の時間に対する接合部の温度の変化を示したグラフである。上記各接合素材による圧入接合は、何れも十分な接合強度が得られており接合は良好に行われたものである。
これらの測定結果から、接合部の温度特性また最高温度は接合品の材質、寸法、接合条件等によって異なっている。
このため、上記保持時間は、接合部の温度が上昇して圧入が開始された時から、通電が終了して圧入が完了するまでの時間とすることができる。この保持時間は、その間に接合部において第一の部材と第二の部材との各壁面同士の間がしごかれ、表面の不純物質層が削られて清浄化された組織に固相拡散接合が行われるものであり、圧入が正常に行われるための時間である。この保持時間が短いと、予定された深さまで圧入が進まない等のおそれがあり接合強度も低下する。
図9(b)のグラフの各材料(No1〜5)についてみれば、保持時間は最小のものが50msec〜150mecである。これから、保持時間として0.05秒以上は必要である。
上記保持時間を測定する場合、圧入開始の時点は材料が軟化する温度で判断する。そして、接合部の温度が軟化温度以上(非接触温度計10により測定)となった時点から、通電の停止(制御部で管理)までの時間を保持時間として計測する。
制御装置11は、コンピュータに管理手段(飽和温度、保持時間等の管理)、判断手段、他の装置に対する指示手段等の制御機能を設け、ファイバ型放射温度計10からの温度情報等に基づき製造工程及び製造品の管理を行う。上記制御装置11として、パーソナルコンピューターなどの画面表示器付きの制御装置を用いることができる。
ここでは、作業開始に伴い(S01)、圧入接合用の部材を装置にセットし(S02)、接合及び温度測定等を開始する(S03)。そして、接合部の温度(ピーク温度)が飽和状態の温度(飽和温度)の範囲内であり、且つ保持時間が予定の保持時間以上かの判断を行い(S04)、Yes(範囲内:良好)の場合は、該当接合品を取出し(S05)、次の部材の接合作業を続行する(S02)、No(範囲外:不良)の場合は、圧入接合作業を中止し製造装置18の稼働を停止する(S06)。
作業開始に伴い(S11)、圧入接合用の部材を装置にセットし(S12)、接合及び温度測定等を開始する(S13)。そして、接合部の温度(ピーク温度)が飽和温度の範囲内かの判断を行い(S14)、Yes(範囲内:良好)の場合は、該当接合品を取出し(S15)、次の部材の接合作業を行なう。
このように、接合状況をリアルタイムに計測管理することにより、現場では全製品の品質管理が可能となり信頼性の向上に寄与する。
また、上記製造方法に係る接合品及び接合品質管理方法は、種々の金属製品、鋼製品に適用することができ、またこれらは自動車、オートバイ、産業用機械などの要素部品及びその製造に用いることができ、例えばトランスミッションのコントロールレバーコンポーネント、シフトレバーコンポーネント、スプロケット、ギヤ(シャフト付)等、第一の部材に第二の部材を接合した形態の部品、或いはエンジンの部品及びその製造に好適である。
7 孔部
8 第二の部材
10 温度測定手段(非接触温度計)
11 制御装置
12 接合部
16 挿入部分
Claims (8)
- 孔部が形成された第一の部材と、挿入部分を有する第二の部材との金属材料同士の接合方法であって、上記第一の部材の孔部に対する上記第二の部材の挿入部分に圧入代を設け、上記第一の部材の孔部内に上記第二の部材を所定の加圧力で押圧するとともに、これら両部材間に通電を行って両部材の接合部を加熱し、上記両部材の接合部を軟化させて上記第二の部材を上記第一の部材の孔部に圧入して固相拡散による圧入接合を行うに際し、
上記通電に伴う上記接合部の温度に関し、予め、温度測定手段により上記通電時の上記接合部の温度を測り、この通電の電流を上げるか又は通電時間を長くするにともない上昇する上記接合部の温度が、上記電流を上げた場合又は通電時間を長くした場合であっても上昇しないで飽和状態となる温度を飽和温度として計測し、
上記圧入接合の際、上記接合部の温度が上記飽和温度と一致する場合には上記圧入接合による接合品を良品と判断し、上記温度が上記飽和温度と一致しない場合には、上記圧入接合による接合品を不良品と判断することを特徴とする圧入接合における接合品質管理方法。 - 上記第一部材及び第二部材の材料をともに鋼材としたことを特徴とする請求項1に記載の圧入接合における接合品質管理方法。
- 上記接合部の軟化により圧入が開始された時点から、上記通電が終了するまでの時間を保持時間として確保し、かつこの保持時間を0.05秒以上としたことを特徴とする請求項1又は2記載の圧入接合における接合品質管理方法。
- 上記圧入接合の製造装置に上記温度測定手段を配置し、この温度測定手段を用いて上記通電時における上記接合部の温度を測定するとともに、
制御装置を用い、上記温度測定手段から得た温度情報を上記飽和温度と比較し、この温度が上記飽和温度と一致するか否かにより、上記圧入接合における接合品の良否を判断することを特徴とする請求項1,2又は3記載の圧入接合における接合品質管理方法。 - 上記温度測定手段として、非接触温度計を用いたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の圧入接合における接合品質管理方法。
- 上記非接触温度計としてファイバ型放射温度計、又は赤外線サーモグラフィを用いたことを特徴とする請求項5に記載の圧入接合における接合品質管理方法。
- 上記制御装置において、上記温度測定手段から得た温度が上記飽和温度と一致しないと判断した場合には、上記製造装置にその旨を通知することを特徴とする請求項4乃至6の何れかに記載の圧入接合における接合品質管理方法。
- 上記制御装置において、上記温度測定手段から得た温度が上記飽和温度と一致しないと判断した場合には、上記製造装置にその旨を通知し、上記製造装置は製造ラインから該当する接合品を排除し、装置の稼働を停止することを特徴とする請求項4乃至6の何れかに記載の圧入接合における接合品質管理方法。
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