JP5610857B2 - 記録装置および記録装置の制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、中間転写体に形成したインク画像を記録媒体に転写することによって画像を記録する記録装置、および、記録装置の制御方法に関するものである。
民生用として広く用いられているインクジェット吐出装置を用いたインクジェット記録方法は、産業用にも利用されてきており、さらにより広く応用されることが期待されている。その一つとして、印刷分野への応用がある。印刷分野に応用した場合には、オフセット印刷などの従来の印刷方式において必要であった版が不要となり、さらにリードタイムが極めて短時間となるため、即時に所望の印刷物を得ることができる。これらの特徴は、時代のニーズである多品種、小ロット、短納期、に対して好適な技術として注目されている。
しかし、インクジェット吐出装置を用いたインクジェット記録方法においては、ある特有の現象によって画像品位が低下するおそれがある。その現象は、ブリーディングと呼ばれる現象と、ビーディングと呼ばれる現象である。ブリーディングは、表面の平滑性が高い記録用紙に、インクジェット吐出装置を用いてインクを直接付与した場合に、インクが用紙に吸収しきれずに用紙の表面上に残るために、互いに隣接するように用紙に付与されたインク同士が混ざり合ってしまう現象である。ビーディングは、先に用紙上に付与されたインクが、後に用紙上に付与されたインクに引き寄せられてしまう現象であり、画像の記録品位の低下や用紙の乾燥不良を引き起こすおそれがある。
このような現象を低減するために、インクジェット吐出装置によって中間転写体上にインク画像を形成し、そのインク画像を所望の記録媒体上に転写する手法(転写型のインクジェット記録方法)が提案されている。さらに、画像品位を低下させることなく、中間転写体上のインク画像を記録媒体上に転写するために、中間転写体にコーティング溶液を塗布する技術が提案されている。このコーティング溶液は、一般的に反応液とも呼ばれ、インク中の色材の流動性を低下させる反応成分を液中に含んでいる。この反応液が中間転写体上においてインクと接触すると、その反応液中の反応成分の働きにより色材の流動性が瞬時に低下し、インク画像の乱れが抑制される。
しかしながら、このような転写型のインクジェット記録方法においては、連続的に画像を記録したときに中間転写体の表面の特性が変化し、反応液の働きが適切に行われなくなって、画像の乱れや画質の低下を惹起する場合がある。そのため、定期的に中間転写体を交換もしくは再生処理する必要があり、その時期は適正に決定されることが望ましい。なぜならば、その時期が遅すぎれば画質の劣った画像形成物が生産される可能性が高まり、逆に、その時期が早すぎれば中間転写体の不必要な交換等を行うことなり、生産性やコストの面で不利となるからである。
特許文献1には、中間転写体の交換等の時期を適正に決定する方法として、転写面保守システム監視方法が提案されている。すなわち、まず、中間転写体上にテストパターンのインク画像を形成し、そのインク画像を画像検知器で捉えて、パターン記録結果(printed pattern response)を取得する。次いで、転写面保守システムを用いて中間転写体を清掃してから、中間転写体上に残る像を画像検知器で捉えて、清掃後の残存画像(cleaned image response)を取得する。次いで、パターン記録結果と清掃後の残存画像とを比較して、清掃失敗度(cleaning efficiency)を計算し、その計算結果と所定の限界とを比較することにより、中間転写体の故障の有無を判別する。中間転写体に故障有りと判別された場合には、補正プロセスが実行される。
特開2007−022082号公報
特許文献1に記載の方法は、中間転写体上に形成したテストパターンと、中間転写体の清掃後の残存画像と、を比較することによって中間転写体の故障の有無を判別し、その情報に基づいて、中間転写体の交換もしくは再生処理の時期を決定する。
しかし、この方法は、テストパターンを形成するときの中間転写体の表面が正常であるということを前提としているため、中間転写体の表面の特性が大きく変化して、テストパターンを正常に形成できないような場合には、適用することが難しい。また、この方法では、生産に供することのできないテストパターンを形成する必要があり、それを形成する間に、本来の記録工程が滞ってしまうというおそれもある。さらに、この方法においては、中間転写体の交換もしくは再生処理の時期を事前に検知することができず、多少なりとも画質の劣った画像形成物が生産されるおそれがあり、これも重大な課題の一つであった。
本発明の目的は、中間転写体の表面特性の変化を早期に検出することにより、中間転写体の再生処理や交換などを最適な時期に実施して、高品位の記録物の高い生産性をもって製造することができる記録装置および記録装置の制御方法を提供することにある。
本発明は、次のような知見に基づいてなされたものである。
インク画像が繰り返し形成される中間転写体の表面特性の変化は、化学的な変化や形状的な変化などを含む複合的な変化に起因しており、それらの原因となる変化を峻別して直接検知・測定することは極めて困難である。しかし実際上は、このような変化の詳細を検知・測定することは必須ではなく、最終的に記録された画像の画質に影響があるか否かが判断できればよい。
本発明者らは、鋭意検討の結果、中間転写体上に付与された反応液中の反応成分量の変化と、最終的に記録される画像の画質への影響と、が極めて鋭敏に連動していることを見出した。反応液が中間転写体上に付与されてから、その反応成分量が測定されるまでの間に、その反応液に生じる溶媒蒸発などの外乱要因が生じた場合、その外乱要因に対して、反応成分量の変動は極めて少ない。そのため、その反応成分量に基づいて、中間転写体の表面特性の変化が記録画像の画質に与える影響を正確に判断することが可能となる。
ここで特筆すべきは、反応成分量の変化を測定・評価することによって、実質的に記録画像の画質が低下するよりも前に、その徴候を検知できるという点である。
すなわち、中間転写体上に反応液を付与してからインク画像を形成し、そのインク画像を記録媒体に転写する記録方法においては、中間転写体の表面特性が変化すると同時に、中間転写体上に付与される反応液の単位面積当たりの反応成分量が変動する。その反応成分量の変動に伴い、記録画像の画質の低下が起こる。しかし、記録画像の画質の低下の度合いは、反応成分量の変動の度合いに比べれば極めて僅かである。そこで、反応成分量を測定し、「反応成分量は変動したが画像の乱れはまだ無視できる」段階において、中間転写体の再生処理または交換を行うことにより、中間転写体の最適な運用が可能となる。
反応成分量の変動は、時間の経過に伴って増加する変動、および時間の経過に伴って減少する変動のいずれも起こり得る。そのため、画像の乱れ等が実際上無視できる段階における反応成分量の上限値および下限値を予め設定しておき、それらの値と反応成分量の測定値とを比較して、中間転写体の再生処理時期または交換時期を決定することが好ましい。また、反応成分量の測定方法としては導電率測定法が極めて好適であり、その測定法によれば、反応成分量を極めて簡便に測定できるために、記録物の生産性への影響を最低限に抑えることができる。
このように本発明者らは、鋭意検討の結果、中間転写体を交換もしくは再生処理する時期を適正に決定するためには、中間転写体上に付与された反応液中の反応成分の量に注目することが極めて有効であることを見出した。
本発明の記録装置は、中間転写体の表面にインク画像を形成する画像形成手段と、前記中間転写体に形成された前記インク画像を記録媒体に転写する転写手段と、を有する記録装置であって、前記中間転写体の表面に、前記インクと反応する反応成分を含む反応液を付与するための付与手段と、前記付与手段により前記中間転写体の表面に付与された前記反応液中の前記反応成分の量を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された前記反応成分の量と、所定のしきい値と、を比較した比較結果に基づいて、前記中間転写体の再生処理及び交換処理の時期のうちの少なくとも一方を通知する通知手段と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、中間転写体の表面特性の変化に関連して変化する反応液の付与量を検出するため、記録画像の大きな変化が現れる前に、中間転写体の表面特性の変化を早期に検出して、中間転写体の再生処理や交換などを最適な時期に実施することができる。この結果、高品位の記録物の高い生産性をもって製造することができる。
しかも、中間転写体の適性寿命内において、それを充分に運用できて、記録物の製造コストの削減に寄与することができる。また、必要最低限の頻度で中間転写体の再生処理あるいは交換などを行うことができ、記録装置のダウンタイムを低減して、記録物の生産性を向上させることができる。さらに、実質的に記録画像が劣化する前に、このような中間転写体の再生処理や交換などを行うことができ、それらの実施時期の見誤りがあった場合の問題、つまり画質の劣った記録物が製造される可能性を大幅に低減することができる。しかも、記録媒体としての紙やインク等の無駄な使用量を抑えることができて、経済的および環境的にも優れている。
本発明の画像記録装置の構成例の要部を説明するための模式図である。 本発明の画像記録装置の他の構成例の要部を説明するための模式図である。 本発明の画像記録装置による記録動作を説明するためのフローチャートである。 記録枚数と、反応成分量と、記録画像の画質と、の関係の一例の説明図である。 記録枚数と、反応成分量と、記録画像の画質と、の関係の他の例の説明図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(記録装置の構成例)
図1は、本発明の記録装置の構成例の要部を説明するための模式図である。
図1において、1はベルト形態の中間転写体(中間転写体ベルト)であり、その表面には、インク画像が形成される表面層2が構成されている。中間転写体ベルト(以下、単に「ベルト」ともいう)1は、ローラ21,22,23の間に掛け渡されて矢印F方向に搬送され、その表面層2上に、反応液が付与されてからインク画像が形成される。
中間転写体としては、本例のようなベルト方式、またはドラム方式等の従前のものを用いることができる。また、中間転写体の材料や構成は特に限定されず、例えば、支持体(「ベルト1の基材」に相当)と、反応液が付与されてからインク画像が形成される表面層(「表面層2」に相当)と、を含む積層体などであってもよい。その表面層としては、金属、樹脂、ゴム、セラミックなどの従前のものを用いることができ、例えば、撥水性の基材を表面処理して親水性を付与したものであってもよい。この場合、表面処理としては、コロナ処理、フレーム処理、活性エネルギー線の照射、プラズマ処理などを挙げることができる。その表面処理の効果を高めるために、酸素などのガスを同時に用いてもよい。撥水性の基材としては、シリコーンゴムやフッ素ゴム等を好適に用いることができる。また、表面層(「表面層2」に相当)は、複数の層が重なったものであってもよい。表面層は、本例のようにベルト1の全周に渡って形成したり、またはドラムの全周に渡って形成してもよく、あるいは、記録媒体に対応したサイズ(例えば、A4サイズ)程度に分割して形成してもよい。後者の場合には、表面層に対して、記録媒体を一枚単位で脱着するための機構を備えることにより、中間転写体の再生処理や交換等に掛かるコストや手間を軽減することができる。
ベルト1の表面層2上には、ベルト1に接するように配置された接触式の塗布装置3によって、反応液4が付与される。本例の場合、反応液4は、貯留部3Aから複数のローラ3Bを経由して塗布ローラ3Cの表面上に供給される。その塗布ローラ3Cが表面層2に接することにより、その表面層2に反応液4が塗布される。3Dは、ベルト1を挟んで塗布ローラ3Cと対向する支持ローラである。
反応液4に含まれる反応成分は、画像の記録に用いるインクの種類に応じて適宜選択することができる。例えば、染料インクを用いる場合には、反応成分として高分子凝集剤を使用することが有効であり、また微粒子が分散されている顔料インクを用いる場合には、反応成分として金属イオンを使用することが有効である。さらに、染料インクを用いる場合には、画像固定成分として、金属イオンと高分子凝集剤とを組み合わせて用いることができる。この場合には、インク中に、染料と同等色の顔料を混合させたり、記録画像の色に影響の少ない白色もしくは透明色の微粒子を混合させることが望ましい。
反応成分として使用できる高分子凝集剤としては、例えば、陽イオン性高分子凝集剤、陰イオン性高分子凝集剤、非イオン性高分子凝集剤、両性高分子凝集剤等が挙げられる。特に、陽あるいは陰イオン性高分子凝集剤、または両性高分子凝集剤を用いた場合には、それらの反応成分導電率から、反応成分量を高精度に測定することができる。また、金属イオンとしては、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+およびZn2+等の二価の金属イオンや、Fe3+およびAl3+等の三価の金属イオンを挙げることができる。これらの金属イオンを含有する反応液を中間転写体に付与する場合には、その反応液を金属塩水溶液として用いることが取扱性において好ましい。金属塩の陰イオンとしては、Cl-、NO3 -、SO4 2-、I-、Br-、ClO3 -、RCOO-(Rはアルキル基)等を挙げることができる。また、使用するインクと逆性を持つ材料も反応成分として用いることができる。例えば、インクがアニオン性もしくはアルカリ性であれば、その逆性であるカチオン性もしくは酸性の材料を反応液として使用することができる。
反応液には、最終的に記録される画像の堅牢性を向上させるために、水溶性樹脂や水溶性架橋剤を添加してもよい。その添加する材料は、反応成分と共存できるものであれば制限は無い。水溶性樹脂としては、PVAやPVP等を添加することが好ましい。水溶性架橋剤としては、反応性の遅いオキサゾリンやカルボジイミドを添加することが反応液の安定性の面で好ましい。
反応液の付与方法は特に限定されないが、図1のような接触式の塗布装置3を採用することは、記録物の連続生産性、およびコストの面において望ましい。なお、ここでいう「接触式」とは、ベルト(中間転写体)1上に、過剰な量の反応液(液体)4を一旦接触させた後、余分な反応液4をベルト1上から除いて、所望の量の反応液4をベルト1上に残す方式である。このような付与方式としては、例えば、ワイヤーバーコート、グラビアオフセットロールコーター、スピンコート等を挙げることができる。また、これらの付与方法を適宜組み合わせてもよい。
このような装置によって、ベルト(中間転写体)1の表面に対する反応液の付与量(付着量)は、後述するように、そのベルト1の表面特性の変化に関連して変化する。すなわち、本実施形態においては、表面層2の表面特性によって、ベルト1に当接した塗布ローラ3Cから供給される反応液の量が増減する。その表面特性の変化とは、表面の撥水性の変化、表面上に対するゴミの付着程度の変化、表面の物理的な荒れの程度の変化などである。ベルト1の使用に伴って、例えば表面処理した表面層が劣化して親水性が減少し、撥水性が増加した場合には、反応液量が減少することになる。また、ベルト1の使用に伴って、撥水性が減少した場合あるいはゴミの付着の程度および表面の荒れの程度が大きくなった場合には、反応液の付与量が増加することになる。したがって、表面層2に付与された反応液の量を検出することによって、ベルト1の表面特性の変化が把握できる。また、反応液中には所定割合で反応成分が含まれているため、反応液の付与量の変化は、反応成分の付与量(反応成分量)の変化に対応する。したがって、ベルト1上における反応成分量を検出することによっても、ベルト1の表面特性の変化を把握することができる。
ベルト1の表面特性が変化して、反応液の付与量が所定範囲を超えて減少あるいは増加したときには、反応液の初期の機能が充分に発揮できなくなって、記録媒体に記録される記録画像が変化して乱れが生じやすくなる。したがって、後述するように、反応液の付与量あるいは反応成分量に基づいてベルト1の表面特性の変化を把握することにより、記録画像の無視できない程度の乱れが生じる前に、その記録画像の状態の変化の兆候を察知することができる。具体的には、反応液の付与量あるいは反応成分量の検出値が所定のしきい値を超えて増加あるいは減少したときに、記録画像の状態に変化の兆候があると判定することができる。
このように反応液4が塗布された表面層2に対して、インクジェット記録部5からインクが吐出されることにより、その表面層2上にインク画像(記録媒体上の記録画像に対してミラー反転の画像)が形成される。記録部5は、異なるインクを吐出可能な複数の記録ヘッド(インクジェット記録ヘッド)5Aを用いて、表面層2上に、カラーのインク画像を形成することができる。記録ヘッド5Aは、電気熱変換素子(ヒータ)やピエゾ素子などの吐出エネルギー発生素子を用いて、インクを吐出することができる。電気熱変換素子を用いた場合には、その発熱によってインクを発泡させ、その発泡エネルギーを利用して吐出口からインクを吐出させることができる。また、インク画像を形成するための手段としては、インクジェット記録ヘッド以外のものを用いることもでき、要は、中間転写体にインクを付与してインク画像が形成できればよい。
表面層2上に形成されたインク画像は、加圧ローラ7によってベルト1に記録媒体6が加圧されることにより、記録媒体6上に転写される。インク画像を記録媒体6に転写した後の表面層2の部分は、再び、塗布装置3の位置まで移動して反応液4が塗布される。なお、インクジェット記録部5と加圧ローラ7との間に、表面層2上の水分の除去を促進するための装置を配備してもよい。その装置としては、送風手段、減圧手段、または表面層2に接触する吸収材料を用いる種々のものを用いることができ、また、中間転写体そのものを加熱する構成であってもよい。また、それらの構成を組み合わせてもよい。また、記録媒体6に転写された画像を定着させて、画像の堅牢性を向上させるための定着装置、および、インク画像を記録媒体6に転写した後の表面層2の部分をクリーニングするためのクリーニング装置を備えてもよい。
塗布装置3とインクジェット記録部5との間に設置された測定装置8は、表面層2上に塗布された反応液4の反応成分量を測定する。この測定装置8は、反応液の回収ユニット9、反応成分量の測定ユニット10、およびコンピュータ11を含む。回収ユニット9は、表面層2上のある測定部分における反応液を回収し、この反応液を測定ユニット10に送り込む。測定ユニット10は、その反応液の量(反応成分量)を測定し、その測定値Aはコンピュータ11に記憶される。コンピュータ11は、後述するように、測定値Aに基づいてベルト(中間転写体)1の再生処理時期または交換時期を決定するための処理を実行する。コンピュータ11は、CPUと、そのCPUが実行するプログラムを格納するROMと、ワークエリアなどとして利用されるRAMなどを含み、記録装置全体を制御することもできる。
反応成分量の測定方法としては、一般的に用いられている種々の方法の利用が可能である。例えば、まず、ベルト1などの中間転写体上の所定の測定部分から、反応液を掻き取るなどして回収し、この回収液を加熱して溶媒等を蒸発除去し、残った反応成分の重量を測定する。その後、その反応成分の重量を、反応液を回収した中間転写体上の面積で除算して、単位面積当たりの反応成分量を算出する方法が挙げることができる。あるいは、上述の回収液を所定濃度に希釈してから、その吸光度を測定し、その測定値を検量線に当てはめることによって、同様に反応成分量を算出する方法も利用することができる。回収液の希釈倍率や検量線は、反応液の成分や濃度に応じて予め設定しておくことにより、それらを記録の際に毎回準備する必要がなくなり、即座に反応成分量を測定することができる。あるいは、化学反応を利用して反応成分を測定する滴定によっても、反応成分量を測定することができる。
このように、一般的な測定方法を利用して反応成分量を測定することができるが、特に、導電率に基づいて反応成分量を測定する方法は簡便であり、記録装置のサイズ、コスト等の面からも好ましい。例えば、上述の回収液と反応成分量との対応表を予め作成しておいて、その対応表に、測定した回収液の導電率を照らし合わせることによって、反応成分量を測定することができる。あるいは、反応液が付与された中間転写体の表面に、極めて短い所定の距離を隔てて位置する2つの電極を直接接触させて、反応液の導電率を測定してもよい。後者の方法は、前者の方法よりも精度がやや劣る場合があるものの、反応液を回収する必要がないため、より簡便に測定することができる。さらに、中間転写体上の数個所を測定点とし、それらの測定点の付与された反応液の反応成分量を測定することにより、中間転写体上における反応成分量の面内分布を求めることもできる。
中間転写体上における反応成分量の測定位置は、反応液が付与される中間転写体上の領域内であればよい。例えば、中間転写体の端部などのインク画像の形成への寄与の程度が少ない領域内に、反応成分量の測定位置を設定することは、記録作業と並行して反応成分量を測定する場合に、最終的な記録画像への影響が少ないため好ましい。
後述するように、コンピュータ11は、測定値Aと予め設定された適正範囲rとを比較する。適正範囲rは、記録画像の乱れ等が実際上無視できるときの反応成分量の下限値B1と上限値B2との間の範囲である。これらの下限値B1および上限値B2は、画像の乱れ等が無視できなくなるときのぎりぎりの値である必要は必ずしも無く、記録物の生産効率を考慮して、そのぎりぎりの値に安全率を乗じた値であってもよい。
測定値Aが適正範囲r内であれば、引き続き、インクジェット記録部5からインクが吐出されて、一連の記録工程が繰り返される。このような一連の記録工程の間、後述するように、所定単位の画像が記録媒体6上に転写される毎に、記録回数nのカウンタがカウントアップされ、そのカウントされた回数nがコンピュータ11に記憶される。後述するように、測定値Aが適正範囲rから外れ、かつ回数nがn<αのときは、再生処理装置12によってベルト1を再生処理する。αは、記録回数nから、ベルト1を再生処理が必要であるか否かを判断するための基準記録回数である。ベルト1の再生処理を行うと、回数nは0にリセットされる。
再生処理は、使用される中間転写体(ベルト11を含む)およびインクの種類などに応じて、適宜選択することができる。例としては、洗浄、研磨、表面コーティング、加熱、UV照射、プラズマ処理、コロナ処理、オゾン処理、フレーム処理などが挙げられる。これら再生処理は、記録装置から中間転写体を取り出してから実行、あるいは、記録装置内で自動的に実行することができる。再生処理によって中間転写体の表面状態を当初の好ましい状態に回復させることにより、再び高品位な画像の記録が可能となる。本発明においては、記録媒体上の記録画像の劣化が発生する前に、再生処理によって良好な記録状態に回復させることができるため、用紙などの記録媒体の無駄な使用を最小限に抑えることができる。
ベルト1を再生処理した後、再び塗布装置3にて反応液4を塗布してから、その反応液の反応成分量を測定装置8にて測定し、その測定値Aが適正範囲r内に回復していれば、引き続き記録工程を繰り返す。ただし、測定値Aが適正範囲r内に回復していないとき、あるいは、測定値Aが適正範囲rから外れ、かつ回数nがn<αではないときには、コンピュータ11がベルト1の交換を促す信号を発して、記録装置を停止させる。
(記録装置の他の構成例)
図2は、記録装置の他の構成例の要部を説明するための模式図である。
反応成分量の測定装置8は、図2のように、加圧ローラ7と塗布装置3との間に配備してもよい。この場合には、後述するように、塗布装置3によって反応液4を塗布した後、インクジェット記録部5によるインク画像の形成、および加圧ローラ7による記録媒体6への転写は行わずに、測定装置8によって反応成分量を測定する。反応成分量の測定方法は、図1の場合と同様である。図2の場合には、反応液の回収ユニット9をベルト1のクリーニングユニットと兼用させることができるため、記録装置のサイズやコストの面において好ましい。
(画像の記録方法)
図3は、本発明の画像の記録方法の一例を説明するためのフローチャートである。
まず、記録装置を起動させ、所望の速度でベルト(中間転写体)1の搬送を開始する(ステップS1)。次に、塗布装置(付与装置)3によって、ベルト1の表面層2に反応液4を塗布(ステップS2)してから、測定装置8によって反応成分量を測定して、その測定値を測定値Aとしてコンピュータ11に記憶する(ステップS3)。コンピュータ11は、測定値Aと、適正範囲rの下限値B1と上限値B2と、を比較する(ステップS4)。
ここで、これらの値A,B1,B2の関係を図4および図5を用いて説明する。図4および図5は、記録媒体の記録枚数と、反応成分量と、記録画像の画質の良否と、の関係の一例を示す。下限値B1と上限値B2との間の領域が適正領域rである。
図4は連続的に画像を記録した際に、反応成分量が徐々に減少する場合の例である。曲線aは、記録枚数の増加に伴って反応成分量が徐々に減っていく様子を示している。例えば、記録枚数の増加に伴って変化する中間転写体の表面特性(「ベルト1の表面層2」に相当)の1つとして、中間転写体の表面の撥水性が増加した場合には、このような挙動を示すことが考えられる。図4のように反応成分量が減少して、それがある値よりも小さくなったときから、中間転写体上のインク画像に無視できない乱れが生じる。例えば、反応成分量の減少によって、中間転写体上における転写前のインク画像にブリーディングが生じた場合には、そのインク画像が記録媒体上に転写されて、結果的に記録画像に乱れが生じる。また、インク画像の転写工程において、記録画像の乱れが生じるおそれもある。
図5は連続的に画像を記録した際に、反応成分量が徐々に増加する場合の例である。曲線bは、記録枚数の増加に伴って反応成分量が徐々に増えていく様子を示している。例えば、中間転写体の表面へのゴミの付着や、中間転写体の表面が物理的に荒れることによって、中間転写体の表面特性が変化した場合に、このような挙動を示すことが考えられる。この場合には、反応成分量が増加して、それがある値よりも大きくなったときから、中間転写体上のインク画像に無視できない乱れが生じる。例えば、中間転写体上の反応成分量が多過ぎるために、転写前のインク画像にビーディングが生じた場合には、そのインク画像が記録媒体上に転写されて、結果的に記録画像に乱れが生じる。
これら図4および図5のいずれの場合においても、注目すべきことは、反応成分量の測定値が変化するポイントと、中間転写体上のインク画像の乱れが無視できないレベルに達するポイントと、がずれることである。つまり、反応成分量の測定値が変化するポイントは、中間転写体上のインク画像の乱れが無視できないレベルに達するポイントよりも常に早く訪れる。したがって、中間転写体上のインク画像の乱れが生じる前に、反応成分量の測定値に基づいて中間転写体の表面の状況を把握して、中間転写体のクリーニングや再生処理、あるいは交換を促すことができる。
図3のステップS4においては、反応成分量の測定値Aと、予め設定された下限値B1および上限値B2と、を比較し、測定値Aが適正領域r内に含まれているか否かを判定する。
測定値Aが適正領域r内であればステップS5に進み、インクジェット記録部5によるインクジェット吐出工程において、反応液が付与された中間転写体上にインクを吐出して、インク画像(記録媒体上の記録画像のミラー反転画像)を形成する。このとき、前述したように、インクは、反応液に含まれる反応成分との接触により瞬時に反応して、色材の流動性が低下することにより、中間転写体上におけるインク画像の乱れが抑制される。
その後、転写工程において、中間転写体上のインク画像を記録媒体上に転写する(ステップS6)。この転写工程においては、一般に、インク画像に記録媒体を重ね合わせて加圧した後、その記録媒体を剥離する。このような転写工程を実現するための機構としては、一般に用いられている機構を用いることができる。特に、図1および図2のように加圧ローラ7を用いて、2つのローラのニップ部にて加圧する機構を採用することは、記録物の生産性、記録画像の安定性などの点において望ましい。
このような転写工程の後、インク画像が記録媒体に転写された中間転写体の部分を反応液の塗布工程の位置へ搬送し、記録媒体の記録部数が所望数に達したか否かを判定し(ステップS8)、それが所望数に達するまで上述した一連のプロセスを繰り返し実行する。これにより、所望の枚数の記録物を製造することができる。転写工程の際に、その転写回数をコンピュータに記録させ、その回数と予め入力しておいた設定回数とを比較することによって、自動的に必要回数だけ転写工程を繰り返すようにしてもよい。転写回数は、所定単位の記録媒体(例えば、記録媒体の所定枚数毎、あるいは所定の記録面積毎)に対する記録回数とすることができる。
なお、前述したように、中間転写体上にインク画像を形成するインク中の水分ないし溶剤成分を蒸発させて除去するために、水分の除去を促進するための装置を備えることができる。この場合、その装置による水分の除去工程は、インク画像の形成工程と転写工程との間にて実施することができる。また、前述したように、記録媒体上に転写された画像の堅牢性を向上させるための定着装置、および中間転写体の表面をクリーニングするためのクリーニング装置を備えることができる。これらの場合には、それらの装置を用いて、定着工程やクリーニング工程を実施することができる。
上述した一連のプロセスを繰り返しているときに、反応成分量の測定値Aが適正範囲rから外れた場合、すなわちA<B1あるいはB2<Aの場合には、再生処理装置12による中間転写体の再生処理、または中間転写体を交換するための交換処理を実行する。再生処理と交換処理のいずれを実行するかは、運用シーケンスにより設定することができる。この運用シーケンスは、使用者により適宜設定することができる。例えば、測定値Aが適正範囲rを逸脱する頻度が低い内は再生処理を実行し、その頻度が高くなってきた場合、すなわち再生処理の効果が出にくくなってきた場合に、交換処理を実行するように、運用シーケンスを設定することができる。
図3の例においては、中間転写体毎の転写工程の実行回数nをカウントし、測定値Aが適正範囲rを逸脱したときの回数nと、所定回数αと、を比較して、再生処理または交換処理のいずれかを決定する。転写工程の実行回数nは、所定単位の記録媒体にインク画像を転写する毎(例えば、所定の記録媒体の記録枚数毎、所定の記録面積毎、あるいは所定の中間転写体の回転数毎)にカウントアップする。すなわち、前回の再生処理または交換処理が行われてからの記録の状況に応じて、中間転写体の再生処理を行うか、交換処理を行うかを決定する。所定回数αは、中間転写体の耐久性と、記録物の生産効率と、の兼ね合いから予め設定しておくしきい値である。測定値Aが適正範囲rを逸脱したときの回数nと回数αとを比較し(ステップS9)、n<αのときには、中間転写体の通常の搬送を停止して再生処理を実行してから(ステップS10,S11)、回数nをリセットする(ステップS12)。
回数αは、記録装置の使用者が任意に設定することができる。また、中間転写体の表面は、再生処理によっても100%元の状態には戻らない場合もある。この場合には、再生処理を繰り返すことによって記録動作は可能となるものの、その再生処理を繰り返す毎に、測定値Aが適正範囲rを逸脱するまでの転写工程の実行回数nが減少する。つまり、再生処理を繰り返す毎に、先の再生処理から次の再生処置までの中間転写体の使用可能回数nが減少する。その回数nが極端に減少した場合には、再生処理を高頻度で実行することになり、記録物の生産性の低下を招いてしまう。そこで本例においては、回数nが回数αを越えたときに、交換を促すための「交換」信号を発する(ステップS12)。この信号を発したときに、記録装置の使用者が中間転写体を交換することにより、記録物の生産性を向上させることができる。
また、回数nが回数αを越えたときに、「交換」信号を記録装置の使用者に知らせて、中間転写体の搬送を停止させるようにしてもよい。この場合、使用者は、カスタマーサービスセンターに自動的にサービスコールを送信する等の対策を講じることが可能である。そして、使用者による中間転写体の交換が行われた場合には、回数nを0にリセットする。
また、反応成分量の測定値Aが適正範囲rから外れた場合、すなわちA<B1あるいはB2<Aの場合には、その比較結果を使用者に通知し、使用者が中間転写体の再生処理または交換処理を実行するか否かを選択するようにしてもよい。また、その比較結果に応じて、中間転写体の再生処理または交換処理を実行する時期を通知する形態とすることもできる。
また、再生処理を実行した直後に再び反応成分量を測定し、その測定値Aが適正範囲r内に回復していない場合に、再生処理を繰り返し行うようにしてもよい。そして、再生処理を所定回数繰り返しても測定値Aが適正範囲r内に回復しない場合に、交換処理に移行するようにシーケンスを組むこともできる。また、中間転写体の単価・性能・運用手法によっては、反応成分量の測定値Aが適正範囲rから外れた場合に、再生処理ではなく、直ちに交換処理を行うようにしてもよい。
また、図3の例においては、記録工程(転写工程)が1回行われる毎に反応成分量の測定を行うが、その反応成分量の測定は、数回の記録工程毎に1回、または数十回の記録工程毎に1回に行ってもよい。また、記録工程の途中に、必要に応じて反応成分量を測定するための測定用シーケンスを組み込むことも可能である。測定用シーケンスの例としては、反応液を中間転写体に塗布した後にインク画像の形成や転写を行わずに、その中間転写体上の反応液を回収装置によって回収するシーケンスを挙げることができる。この場合は、中間転写体上における反応成分量の測定面積をより大きくして、より精度の高い測定が可能となる。また、中間転写体上における反応成分量の測定箇所の数を増やして、それらの測定値の平均をとることによって、より精度の高い測定が可能となる。さらに、中間転写体のクリーニング工程を有する場合は、そのクリーニング工程が反応液の回収工程を兼ねることもでき、このことは、記録装置のサイズやコストの面で好ましい。測定用シーケンスの実行頻度は、記録物の生産性を損なわない範囲で状況に応じて適宜設定することができる。
尚、前述したように、中間転写体の劣化に伴って発生する現象は、中間転写体に用いる材料、その表面処理の方法、および反応液の組成によって様々である。本実施形態では、中間転写体の表面の反応液の量を検出する際のしきい値として、上限値と下限値の両方を設けたが、どちらか一方のみを設ける形態でもよい。例えば、撥水性となるような表面処理を行った場合には、上限値のみを設けて、所定量を超える反応液が検出されたときに再生処理または交換処理を行うようにすればよい。また、親水性となるような表面処理を行った場合には、下限値のみを設けて、所定量以下の反応液が検出されたときに再生処理または交換処理を行えるようにすればよい。
(インクの成分)
使用するインクについては、特に制限はないが、染料や顔料を用いた一般的な水系インクを好適に用いることができる。特に、反応液に金属塩を用いた場合には、水系顔料インクが好適である。
用いる染料は限定を受けず、一般的に用いられている染料であれば問題なく用いることができる。染料としては、例えば、C.I.ダイレクトブルー6、8、22、34、70、71、76、78、86、142、199、C.I.アシッドブルー9、22、40、59、93、102、104、117、120、167、229、C.I.ダイレクトレッド1、4、17、28、83、227、C.I.アシッドレッド1、4、8、13、14、15、18、21、26、35、37、249、257、289、C.I.ダイレクトイエロー12、24、26、86、98、132、142、C.I.アシッドイエロー1、3、4、7、11、12、13、14、19、23、25、34、44、71、C.I.フードブラック1、2、C.I.アシッドブラック2、7、24、26、31、52、112、118等が挙げられる。
用いる顔料も限定を受けず、一般的に用いられている顔料であれば問題なく用いることができる。顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、16、22、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、112、122、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、13、16、83、カーボンブラックNo2300、900、33、40、52、MA7、8、MCF88(三菱化成製)、RAVEN1255(コロンビア製)、REGAL330R、660R、MOGUL(キャボット製)、Color Black FW1、FW18、S170、S150、Printex35(デグッサ製)等が挙げられる。
これらの顔料は、形態としての限定を受けず、例えば、自己分散タイプ、樹脂分散タイプ、マイクロカプセルタイプ等のいずれであってもよい。顔料の分散剤としては、水溶性であって、重量平均分子量が1,000〜15,000程度の分散樹脂を好適に用いることができる。より具体的には、例えば、スチレンおよびその誘導体、ビニルナフタレンおよびその誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル、アクリル酸およびその誘導体、マレイン酸およびその誘導体、イタコン酸およびその誘導体、フマール酸およびその誘導体からなるブロック共重合体あるいはランダム共重合体、また、これらの塩等が挙げられる。
また、最終的に記録媒体上に記録された画像の堅牢性を向上させるために、水溶性樹脂や水溶性架橋剤を添加することもできる。それらの材料としては、インク成分と共存できるものであれば制限は無い。水溶性樹脂には、上記の分散樹脂等をさらに添加することが好ましい。水溶性架橋剤として、反応性の遅いオキサゾリンやカルボジイミドを用いることは、インク安定性の面で好ましい。
インク中には、記録ヘッドからのインクの吐出性、およびインクの乾燥性を制御するために非水溶媒を添加することもできる。特に、中間転写体から記録媒体へのインク画像の転写性は、そのインク画像の乾燥状態の影響を大きく受けるため、それに適した添加溶媒を用いることが重要である。非水溶媒としては、特に、高沸点で蒸気圧の低い水溶性の材料が好ましい。例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン等を挙げることができる。また、インクの粘度や表面張力等を調整して、インクの吐出性を向上させる成分としては、エチルアルコールやイソプロピルアルコール等のアルコール類、および各種界面活性剤を好適に用いることができる。
インクを構成する成分の配合比についても限定を受けることなく、用いるインクジェット吐出装置の性能や構成に応じて、具体的には、インクの吐出力や吐出ノズルの径などに応じて、適宜に調製することができる。インクの組成の一例は、色材0.1〜10%、分散樹脂0.1〜10%、非水溶媒5〜40%、界面活性剤0.1〜5%であり、残りは純水である。
以下に、本発明の実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。もちろん、本発明は下記実施例に限定されない。以下の説明において「部」および「%」は、特に断りのない限り質量基準である。
中間転写体の表面層基材として、0.4mmのPETフィルム表面に、ゴム硬度40°のシリコーンゴム(信越化学製 KE12)を0.2mmの厚さでコーティングした材料を用いた。この表面層基材の表面に、下記の手順にて親液部と撥液部とからなる規則性パターンを形成した。
まず、表面層基材の表面に対して、平行平板型大気圧プラズマ処理装置(積水化学製:APT−203)を用いて表面親液化処理を行ってから、その全面に、3%のPVA水溶液(クラレ製:403)をロールコーターによって全面に塗布して乾燥させた。その後、その表面にエキシマレーザーをスポット照射し、親液部としたい表面の部分からPVA層を除去した。本実施例では、ピッチ8μm、直径4μmの円を規則的にパターニングした。その後、表面層基材の表面に、再び平行平板型プラズマ処理装置を用いて下記条件で表面改質を行った。
(表面改質条件)
使用ガス;流量:air;1000cc/min
;6000cc/min
入力電圧:230V
周波数:10kHz
処理速度:200mm/min
次いで、この表面層基材の表面を界面活性剤(日本ユニカー製 silwet L77)7%水溶液によって洗浄した。この時、水溶性皮膜であるPVA層は溶解除去された。このようにして製造された表面層基材は、洗浄するとエキシマレーザーを当てた部分のみが親液部となり、その表面に、所望の親液部と撥液部のパターンが得られた。
本実施例においては、図1および図2のようなベルト形態の中間転写体を構成するために、ウレタン樹脂を不織布に含浸させたベルトを中間転写体の支持体として用い、その支持体に表面層基材を貼り付けて固定した。表面層基材の表面は、図1および図2におけるベルト(中間転写体)1の表面層2に対応する。
次いで、図1および図2のようなロールコーター(塗布装置)を用いて、中間転写体上に下記の組成の反応液を塗布した。その反応液の反応成分は、塩化カルシウム二水和物CaCl・2HOである。
(反応液の組成)
CaCl2・2H2O:30%
界面活性剤(川研ファインケミカル製 アセチレノールEH):1%
ジエチレングリコール:30%
純水:39%
次に、図1のように、ロールコーター(塗布装置)とインクジェット記録部との間に設けられた測定装置によって、反応液の反応成分量を測定した。本実施例における測定装置は、スキージ、ヒーター付き液回収セル、水晶振動子式重量センサー、コンピュータ、およびヒーター付き液回収セルの内部クリーニング用の水を含ませたスポンジを含む。水晶振動子式重量センサーは、ヒーター付き液回収セルに取り付けられており、そのセルの重量変化をリアルタイムで測定し、この測定値をリアルタイムでコンピュータに転送する。
中間転写体上に塗布された反応液の内、インク画像の形成が可能な中間転写体上の領域(インク画像形成可能部)の端から2cm離れた中間転写体上の2cm×2cmの部分の反応液を、スキージにより掻き取った。そして、その掻き取った反応液をヒーター付き液回収セル内に回収して、それを瞬時に加熱乾燥させてから、その重量を水晶振動子式重量センサーで測定した。その測定値Maはコンピュータに転送する。その測定値Maと、反応液を回収する前のヒーター付き液回収セルの重量Mbと、の差分Ma―Mbを算出し、それを反応成分量の測定値Aとした。本実施例の場合、A=0.2g/m2であった。この測定値Aは、予め設定しておいた適正範囲r(0.1g/m2<r<2g/m2)内であったため、引き続き、インクジェット記録部によるインク画像の形成を行った。
反応液が塗布されている中間転写体上に、インクジェット記録部(ノズル配列密度:1200dpi、インク吐出量:4.8pl)によって、ミラー反転させたインク画像を形成した。ここでは、下記のような処方のインク(色材として各色顔料をそれぞれ含む4色のインク)を用いた。
(インクの処方)
下記の各顔料: 3部
ブラック:カーボンブラック(三菱化学製:MCF88)
シアン: ビグメントブルー15
マゼンタ:ピグメントレッド7
イエロー:ピグメントイエロー74
スチレン−アクリル酸−アクリル酸エチル共重合体: 1部
(酸価240、重量平均分子量5000)
グリセリン: 10部
エチレングリコール: 5部
界面活性剤: 1部
(川研ファインケミカル製:アセチレノールEH)
イオン交換水: 80部
インク画像が中間転写体上に形成された時点において、ビーディングおよびブリーディングは起こらなかった。また、このインクジェット記録部から吐出されたインク滴が中間転写体上に着弾したときに、中間転写体上に形成されるインクドットの径(インク着弾径)は約40μmであった。
そして、中間転写体上に形成されたインク画像の水分を除去して、インクの流動性を低下させた後に、加圧ローラによって、中間転写体に記録媒体(日本製紙製 オーロラコート 連量40.5)を接触させて、インク画像を記録媒体上に転写した。この結果、記録媒体上に高品質な画像が記録できたことが確認された。また、転写後の中間転写体の表面には残存インクが殆ど見られなかった。
このような一連の記録工程を連続的に繰り返し行い、中間転写体の10回転に1回の割合で反応成分量を測定した。そして、測定した反応成分量を測定値Aとして、再度、適正範囲rと比較することにより、中間転写体上の反応成分量の変化をモニターした。なお、反応成分量の10回の測定につき1回は、ヒーター付き液回収セルの内部を水を含ませたスポンジでクリーニングした後、ヒーターを加熱して十分にセル内の水分を飛ばした。これにより、反応成分がセルに固着したり堆積することを抑止して、反応成分の測定時に、セルの重量が重量センサーの測定限界を超えないようにした。
本実施例では、記録媒体の記録部数を1000部とし、反応成分量の測定を100回行って、中間転写体上の反応成分量の変化をモニターした。その結果、測定値Aは全て適正範囲r(0.1g/m2<r<1g/m2)内にあった。また、全ての記録媒体に記録した画像は乱れのない良好なものであった。
本実施例では、記録部数を5000部に増やした以外、他の全ての条件は実施例1と同様とした。
記録部数が1600部当たりを過ぎた時点から、測定値Aが徐々に減少していった。そして、記録部数が2100部の時に、測定値Aが0.13となったが、記録画像の乱れが生じている記録物(画像が記録された記録媒体)の割合は0.5%未満であった。さらに記録を繰り返して、記録部数が2230部の時に、測定値Aが適正範囲rの下限値0.1とほぼ同じになった。この時、画像の一部分にブリーディングによると思われる画像の乱れが生じている記録物の割合は、2%程度であった。そのときに、中間転写体(ベルト)を取り外して、中間転写体の表面に対し、平行平板型プラズマ処理装置を用いて下記の条件で表面改質を行った。
(表面改質の条件)
使用ガス;流量:air;1000cc/min
;6000cc/min
入力電圧:230V
周波数:10kHz
処理速度:200mm/min
その後、このように表面改質した中間転写体ベルトを再び記録装置に装着し、実施例1と同様の条件で記録動作を実行した。記録動作の再開直後において記録画像に乱れは無く、良好な画像が得られた。記録動作の再開後からの記録部数が1200部当たりを過ぎた時点から、測定値Aが減少し始めたが、記録画像の乱れは見られなかった。さらに記録部数が増えて、それが1540部のときに測定値Aが下限値0.1とほぼ同じとなった。このとき、ブリーディングに起因すると考えられる記録画像の乱れが生じている記録物が1.4%程度の割合で生じた。
そのときに、再び、中間転写体(ベルト)を取り外し、先の場合と同様の条件で中間転写体の表面にプラズマを照射して、その表面の改質を行った。表面改質した中間転写体ベルトを再び記録装置に装着して、記録動作を再開した後に記録画像に乱れがなく、良好な画像が得られた。そして、記録動作を続行して、記録動作の再開後からの記録部数が230部となったとき、つまり全記録部数が5000部となったときに、記録を終了した。
本実施例において、反応成分量の測定装置は、前述した実施例1のように重量測定から反応成分量を算出する代わりに、導電率測定から反応成分量を算出する。それ以外の条件は、全て前述した実施例1と同様とした。
反応成分量の測定装置は、スキージ、液回収セル、希釈用イオン交換水セル、導電率計(堀場製作所製、型番DS−52、3562−10D)、およびコンピュータを含む。スキージは、前述した実施例のものと同様である。液回収セルと希釈用イオン交換水セルはチューブによって連結され、同様に、液回収セルと導電率計はチューブによって連結されている。
実施例1と同様に、中間転写体上に塗布された反応液の一部をスキージによって液回収セルに回収し、その中に希釈用イオン交換水セルから4倍量のイオン交換水を注入して、反応液を希釈する。この希釈溶液をチューブを通して導電率計の測定セルに注入して、その導電率を測定し、その導電率と測定温度のデータをコンピュータに転送する。コンピュータは、これらのデータから塩化カルシウム二水和物の量を算出し、それを反応成分量の測定値Aとした。本例の場合、測定温度は常に24.0度であり、測定値Aは0.20g/m2であった。この測定値Aは適正範囲r内であったため、実施例1と同様にして記録動作を行なった。
そして実施例1と同様に、記録部数を1000部とし、100回の反応成分量の測定を行って、中間転写体上の反応成分量の変化をモニターした。その結果、測定値Aは適正範囲r(0.1g/m2<r<1g/m2)内にあって、記録媒体上の記録画像は全て乱れのない良好なものであった。
本実施例においては、図2のように、転写部とロールコーター(塗布装置)との間に反応成分量の測定装置を備えて、その測定装置を中間転写体のクリーニング機構として使用した。それ以外は、前述した実施例3と同様である。
本実施例においては、まず、ロールコーター(塗布装置)を用いて中間転写体上に反応液を塗布し、インク画像の形成や転写を行わずに中間転写体(ベルト)を搬送した。そして、その中間転写体上の反応液の反応成分量を測定装置によって測定し、反応成分量の測定値Aを算出した。本例では、測定値Aが0.21g/m2であって、予め設定しておいた適正範囲r(0.1g/m2<r<2g/m2)内であったため、記録動作を開始した。すなわち、実施例3と同様に、中間転写体に反応液を塗布した後、その反応液が塗布されている中間転写体上に、インクジェット記録部によってミラー反転させたインク画像を形成し、それを記録媒体に転写した。中間転写体の1回転を伴う記録動作を1回として、それを10回繰り返して行う毎に、測定装置によって反応成分量を測定して、測定値Aを算出した。
そして100回目の記録動作における転写を行った後に、中間転写体の表面のクリーニングを行った。そのクリーニングにおいては、反応成分の測定装置におけるスキージを用いて、中間転写体の全面から付着物を掻き取った。さらに、中間転写体上に、測定装置の希釈用イオン交換水を0.1g/m2の量だけ付与(例えば、垂らして付与)してから、それをスキージによって掻き取った。このようにして掻き取った回収液は、廃液として廃液タンクに回収した。このようなクリーニング後の中間転写体上には、インクや反応液の残り、ゴミ、紙粉等の付着が全く見られず、その表面は極めてきれいであった。
その後、再び反応成分量を測定して、測定値Aを算出した。その測定値Aは、0.20g/m2であった。この測定値Aは適正範囲r内であったため、実施例1と同様に記録動作を行なった。記録部数を1000部とし、その記録動作の間に、100回の反応成分量の測定と10回のクリーニングを行って、中間転写体上の反応成分量の変化をモニターした。その結果、測定値Aは全て適正範囲r(0.1g/m2<r<1g/m2)内であり、転写された記録媒体上の画像は全て乱れのない良好なものであった。
(比較例)
比較例として、中間転写体上における反応成分量の測定をせずに、実施例2と同様の条件下にて、約5000部までの記録部数を記録した。記録画像の乱れの有無の判断は、抜き取りによる目視で行った。記録画像の乱れの有無の判定にはある程度の時間が必要なため、このような抜き取り検査は、実施例1のように記録部数の10部につき1回とはせずに、100部につき1回程度とした。
記録部数が2000部のときの検査では、多少のブリーディングが原因と考えられる記録画像の乱れがあったため、記録部数が2050部のときにも検査を行った。しかし、その検査では、記録画像に乱れはなく良好であったため、そのまま記録動作を続けた。記録部数が2500部のときに、再び、ブリーディングが原因と考えられる記録画像の乱れがあったため、記録部数が2550部のときにも検査を行った。そのときにも同様の乱れを確認したため、この時点で記録動作を終了した。このような記録動作の後に、記録部数が2300部以降の記録物を検査したところ、記録画像の乱れがある記録物が7割近くあり、2370部以降の記録物は、そのほとんどに画像の乱れがあるため無駄になった。
そこで、中間転写体(ベルト)を取り外して、実施例2と同様の条件で中間転写体の表面にプラズマを照射して、その表面の改質を行った。
その後、その中間転写体を再び記録装置に装着して、実施例1と同様の条件で記録動作を行なった。その記録動作の再開直後の記録画像には乱れが無く、良好な画像が得られた。記録動作の再開後からの記録部数が1700部のときに多少の画像の乱れがあったため、1750部のときに検査を行った。しかし、そのときには画像に乱れはなく良好であったため、記録動作を続けた。その後、記録部数が2000部のときに画像の乱れがあったため、2050部のときに検査を行った。そのときに、同様の画像の乱れを確認したため、この時点で記録動作を終了した。このような記録動作後に、記録部数が1750部以降の記録物を検査したところ、特に、1850部目以降の記録物の中に、画像の乱れがあるものが5割近くあり、それらが無駄になった。
そこで、再び中間転写体(ベルト)を取り外し、再度、中間転写体の表面にプラズマを照射して、その表面の改質を行った。
その後、その中間転写体を再び記録装置に装着して、実施例1と同様の条件で記録動作を行なった。その記録動作の再開直後の画像には乱れが無く、良好な画像が得られた。記録動作の再開後からの記録部数が2500部となったときに、全記録部数が5000部となったため、記録動作を終了した。それらの5000部の記録物の内、画像の乱れのあるは300部以上もあった。
1 ベルト(中間転写体)
2 表面層
3 塗布装置
4 反応液
5 インクジェット記録部
6 記録媒体
7 加圧ローラ
8 測定装置
9 半応液回収ユニット
10 測定ユニット
11 コンピュータ
12 再生処理装置

Claims (7)

  1. 中間転写体の表面にインク画像を形成する画像形成手段と、
    前記中間転写体に形成された前記インク画像を記録媒体に転写する転写手段と、
    を有する記録装置であって、
    前記中間転写体の表面に、前記インクと反応する反応成分を含む反応液を付与するための付与手段と、
    前記付与手段により前記中間転写体の表面に付与された前記反応液中の前記反応成分の量を検出する検出手段と、
    前記検出手段により検出された前記反応成分の量と、所定のしきい値と、を比較した比較結果に基づいて、前記中間転写体の再生処理及び交換処理の時期のうちの少なくとも一方を通知する通知手段と、
    を備えることを特徴とする記録装置。
  2. 前記付与手段は、前記中間転写体の表面に過剰な量の前記反応液を接触させてから、前記反応液の余分な量を除くことによって前記中間転写体の表面に前記反応液を付与することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
  3. 前記検出手段は、前記反応成分の量を導電率によって検出することを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
  4. 前記通知手段は、前記中間転写体の前回の前記再生処理または交換処理からの前記記録媒体の記録枚数、記録面積、前記中間転写体の回転数の少なくとも1つに基づいて、前記再生処理及び交換処理の時期のうちの少なくとも一方を通知することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の記録装置。
  5. インクを吐出可能なインクジェット記録ヘッドを用いて、前記中間転写体の表面に前記インク画像を形成するためのインクジェット記録部を備えることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の記録装置。
  6. 中間転写体の表面にインク画像を形成する画像形成手段と、前記中間転写体に形成された前記インク画像を記録媒体に転写する転写手段と、を有する記録装置を制御する制御方法であって、
    前記中間転写体の表面に前記インクと反応する反応成分を含む反応液を付与する工程と、
    前記中間転写体の表面に付与された前記反応液中の前記反応成分の量を検出する工程と、
    検出された前記反応成分の量と、所定のしきい値と、を比較した比較結果に基づいて、前記中間転写体の再生処理及び交換処理の時期のうちの少なくとも一方を通知する工程と、
    を含むことを特徴とする記録装置の制御方法。
  7. 前記画像形成手段は、インクを吐出可能なインクジェット記録ヘッドを用いて、前記中間転写体の表面に前記インク画像を形成することを特徴とする請求項に記載の記録装置の制御方法。
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