しかし、上述した特許文献1で開示される従来のミルクメーター(乳量計)は、次のような問題点があった。
第一に、上流側のミルクチューブから送られる乳は、計量容器部の一定レベルまで貯留され、この後、底部の流出口に付設された開閉バルブが開いて当該流出口から下流側のミルクチューブに放出される。また、計量容器部に送られる乳は、空気が混在した状態となるため、計量容器部は、空気と乳を分離する気液分離室を兼ねており、空気は計量容器部のルーフ部に臨ませたバキュームラインから排出された後、計量容器部における前記流出口から放出された乳に再度付加され、乳と空気が混合して下流側のミルクチューブに送り出される。この場合、ミルクチューブの内部には乳を吸引するための負圧が付与されているため、開閉バルブの開時には、放出される乳により送乳路(ミルクチューブ等)が一時的に閉塞状態となり、ミルクチューブの内部圧力が変動する。結局、この圧力変動(圧力衝撃)は、ミルクチューブを介して乳頭に付加され、乳牛に対して無用なストレス要因になるとともに、乳頭に雑菌が入り込みやすくなり、乳房炎等の原因になる。
第二に、ミルクチューブ内を送られる乳の流量は、できるだけ平均的になることが安定した送乳を確保し、気泡の混入しない乳を得る上で望ましいが、計量容器部の流出口から大流量の乳が一時的に放出されることから、放出後の乳に無用な気泡が混入しやすいとともに、安定したバランスのよい送乳を確保しにくい難点がある。
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した乳量計及び乳量測定方法の提供を目的とするものである。
本発明に係る乳量計1は、上述した課題を解決するため、送乳ラインLmの中途に接続し、流入口2iから流入する乳Mを貯留可能な計量容器部2と、この計量容器部2の内部に貯留される乳Mの液面Muを検出する液面検出部3と、計量容器部2の流出口2eを開閉可能な弁機構部4と、少なくとも液面検出部3が液面Muを検出したなら弁機構部4を開閉制御する制御系5を備える乳量計であって、計量容器部2に、上側の気液分離室Rs,下側の気液混合緩衝室Rd,気液分離室Rsと気液混合緩衝室Rd間の計量室Rm,及び計量室Rmと気液混合緩衝室Rd間における流出口2eを設け、かつ計量室Rmの上面部Rmuから上方に起立し、上端口28uを気液分離室Rsの上端に臨ませることにより計量室Rmと気液分離室Rsを連通させる給気筒部28を設けるとともに、給気筒部28の内部に、気液分離室Rsの下面部から所定高さまで貯留される乳Mの液面Muを乳Mの抵抗により検出する離間した三つの検出電極3a…を有する液面検出部3を臨ませ、さらに、気液混合緩衝室Rdを、弁機構部4の開閉により流出口2eから流出した少なくとも一回分の乳量を貯留可能な容積を有するとともに、所定流量(第一流量)Qf以下の流量により乳Mを流出させ、かつ計量容器部2の内部の空気Aに混合して送り出す送出口(第一送出口)6fを有する乳送出口部6を設けて構成したことを特徴とする。
この場合、発明の好適な態様により、計量容器部2は、円筒状に形成した周面部2fの縦方向中間部の少なくとも二個所に括れ部2su,2sdを形成することにより、最下部の括れ部2sdよりも下側を気液混合緩衝室Rd、最下部の括れ部2sdとこの括れ部2sdの上に位置する次段の括れ部2su間を計量室Rm、当該次段の括れ部2suよりも上側を気液分離室Rsに構成し、かつ最下部の括れ部2sdの内周面を流出口2eとし、次段の括れ部2suの内周面を中間口2mとするとともに、中間口2mを開閉可能な第一バルブ4u及び流出口2eを開閉可能な第二バルブ4dを有する弁機構部4を設けることができる。この際、計量室Rmの上面部Rmuを周面部側が下になる傾斜面に形成し、かつ計量室Rmの下面部Rmdを周面部側が上になる傾斜面に形成することが望ましい。一方、弁機構部4は、流出口2e及び中間口2mに挿通し、上端口11uを気液分離室Rsの上端に臨ませ、かつ下端口11dを気液混合緩衝室Rdに臨ませることにより気液分離室Rsと気液混合緩衝室Rdを連通させるパイプシャフト11と、このパイプシャフト11の上端を支持し、かつ当該パイプシャフト11を昇降させる弁駆動部12と、計量室Rm内に位置するパイプシャフト11の外周面11f上側に設けた第一バルブ4u及び外周面11f下側に設けた第二バルブ4dとを備えて構成できる。
さらに、気液混合緩衝室Rdには、底面部Rddから起立し、下端口7dが外部に臨むとともに、上端口7uが内部に臨む緩衝筒7を設け、この緩衝筒7の周面部に、当該気液混合緩衝室Rdに貯留された乳量が所定量以下のときに第一流量Qf以下の流量により乳Mを流出させる第一送出口6fを形成するとともに、この緩衝筒7の上端口7uを、当該気液混合緩衝室Rdに貯留された乳量が所定量を越えたときに第二流量Qr以上の流量により乳Mを流出させる第二送出口6rとすることができる。また、パイプシャフト11の下端を下方に延出し、下端口11dを気液混合緩衝室Rdの底面部Rddに設けた排出口2tの内部に臨ませることにより、当該気液混合緩衝室Rdに臨む部位を緩衝筒7とし、この緩衝筒7の下部の周面部に第一送出口6fを形成するとともに、緩衝筒7の上部の周面部に第二送出口6sを形成することができる。なお、第一送出口6fは、緩衝筒7の周面部に形成した少なくとも一以上のスリット部7s…及び/又は孔部7h…を用いることができるとともに、第二送出口6sは、緩衝筒7の上端7u又は周面部に形成した少なくとも一以上の孔部8h…を用いることができる。さらに、パイプシャフト11の下端には、流出口2eから流出した乳Mが乳送出口部6に直接入らないようにするための傘形カバー11cを設けることができる。
他方、本発明に係る乳量測定方法は、上述した課題を解決するため、送乳ラインLmの中途に接続した乳量計1により、流入口2iから流入する乳Mを計量容器部2に貯留し、この計量容器部2の内部に貯留される乳Mの液面Muを液面検出部3により検出するとともに、少なくとも液面検出部3が液面Muを検出したなら、制御系5により弁機構部4を開閉制御することにより計量容器部2の流出口2eを開閉して乳量の測定を行うに際し、計量容器部2に、上側の気液分離室Rs,下側の気液混合緩衝室Rd,気液分離室Rsと気液混合緩衝室Rd間の計量室Rm,及び計量室Rmと気液混合緩衝室Rd間における流出口2eを設け、かつ計量室Rmの上面部Rmuから上方に起立し、上端口28uを気液分離室Rsの上端に臨ませることにより計量室Rmと気液分離室Rsを連通させる給気筒部28を設けるとともに、給気筒部28の内部に、気液分離室Rsの下面部から所定高さまで貯留される乳Mの液面Muを乳Mの抵抗により検出する離間した三つの検出電極3a…を有する液面検出部3を臨ませることにより、弁機構部4の開閉制御により流出口2eから流出した乳Mを、少なくとも一回分の乳量を貯留可能な容積を有する気液混合緩衝室Rdに貯留し、この後、当該気液混合緩衝室Rdに臨ませた乳送出口部6の送出口(第一送出口)6fから所定流量(第一流量)Qf以下の流量により乳Mを流出させ、かつ計量容器部2の内部の空気Aに混合して送り出すことを特徴とする。
この場合、発明の好適な態様により、気液混合緩衝室Rdに貯留された乳量が所定量以下のときに第一送出口6fから第一流量Qf以下の流量により乳Mを流出させるとともに、貯留された乳量が所定量を越えたときに、第二送出口6sから第二流量Qs以上の流量により乳Mを流出させることができる。
このような本発明に係る乳量計1及び乳量測定方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
(1) 流出口2eの下流側に、弁機構部4の開閉制御により流出口2eから流出した少なくとも一回分の乳量を貯留可能な容積を有する気液混合緩衝室Rdを設けることにより、流出口2eから流出した乳Mを気液混合緩衝室Rdに貯留し、この後、当該気液混合緩衝室Rdに臨ませた乳送出口部6の送出口(第一送出口)6fから所定流量(第一流量)Qf以下の流量により乳Mを流出させ、かつ計量容器部2の内部の空気Aに混合して送り出すようにしたため、弁機構部4の開時に発生する乳Mによる送乳路(ミルクチューブ等)の一時的な閉塞状態が回避される。これにより、送乳ラインLm内の圧力変動(圧力衝撃)が乳頭に付加される不具合を排除できるため、乳牛Cに対する無用なストレス要因の解消、更には乳頭に雑菌が入り込むことによる乳房炎等の発生を解消できる。加えて、乳Mを流出口2eから気液混合緩衝室Rd内に速やかに流出できるため、計量時間の短縮による計量の効率化に寄与できるとともに、気液混合緩衝室Rdに設けた乳送出口部6により、計量容器部2から流出した空気Aに対して所定流量Qf以下の流量により乳Mを少しずつ流出させることができるため、気泡の無用な発生の抑制、更には安定したバランスのよい送乳の確保を実現できる。
(2) 計量容器部2に、上側の気液分離室Rs,下側の気液混合緩衝室Rd,気液分離室Rsと気液混合緩衝室Rd間の計量室Rm,及び計量室Rmと気液混合緩衝室Rd間における流出口2eを設け、かつ計量室Rmの上面部Rmuから上方に起立し、上端口28uを気液分離室Rsの上端に臨ませることにより計量室Rmと気液分離室Rsを連通させる給気筒部28を設けたため、計量室Rmの乳Mを流出口2eからスムースかつ迅速に流出させることができるとともに、この給気筒部28の内部に、気液分離室Rsの下面部から所定高さまで貯留される乳Mの液面Muを乳Mの抵抗により検出する離間した三つの検出電極3a…を有する液面検出部3を臨ませたため、無用な波立ちや泡立ち等の影響を回避した検出を行うことができる。加えて、液面検出部3には、検出電極3a…を用いたため、比較的簡易な構造により低コストに実施できるとともに、乳Mの存在を確実に検出できる。
(3) 好適な態様により、計量容器部2における円筒状に形成した周面部2fの縦方向中間部の少なくとも二個所に括れ部2su,2sdを形成することにより、最下部の括れ部2sdよりも下側を気液混合緩衝室Rd、最下部の括れ部2sdとこの括れ部2sdの上に位置する次段の括れ部2su間を計量室Rm、当該次段の括れ部2suよりも上側を気液分離室Rsに構成し、かつ最下部の括れ部2sdの内周面を流出口2eとし、次段の括れ部2suの内周面を中間口2mとするとともに、中間口2mを開閉可能な第一バルブ4u及び流出口2eを開閉可能な第二バルブ4dを有する弁機構部4を設けて構成すれば、計量室Rmと気液混合緩衝室Rdを連携させた最適な態様により実施可能となり、気液混合緩衝室Rdの有する機能の有効性及び確実性をより高めることができる。
(4) 好適な態様により、計量室Rmにおける上面部Rmuを周面部側が下になる傾斜面に形成し、かつ下面部Rmdを周面部側が上になる傾斜面に形成すれば、計量室Rmの内部は、上下がテーパ面により囲まれる形状となるため、実際の使用環境(設置環境)において、乳量計1が傾斜する場合であっても傾斜により発生する測定誤差を排除でき、精度の高い乳量測定を行うことができる。また、ステーにフックを介して吊下げることにより搾乳中に大きく揺れることも多いティートカップ自動離脱装置などにも付設可能になるなど、使用環境(設置環境)の範囲(用途)を飛躍的に拡大することができ、汎用性及び利便性を高めることができる。しかも、ミルクチューブ等の配管の引き回しを少なくできるとともに、可搬式(移動式)として使用することもできる。
(5) 好適な態様により、弁機構部4を、流出口2e及び中間口2mに挿通し、上端口11uを気液分離室Rsの上端に臨ませ、かつ下端口11dを気液混合緩衝室Rdに臨ませることにより気液分離室Rsと気液混合緩衝室Rdを連通させるパイプシャフト11と、このパイプシャフト11の上端を支持し、かつ当該パイプシャフト11を昇降させる弁駆動部12と、計量室Rm内に位置するパイプシャフト11の外周面11f上側に設けた第一バルブ4u及び外周面11f下側に設けた第二バルブ4dとを設けて構成すれば、パイプシャフト11を、バルブ駆動用シャフトと空気抜き用パイプの双方に兼用できるとともに、さらに、第一バルブ4uと第二バルブ4dのバルブ駆動用シャフトにも兼用できるため、弁機構部4における構成の簡略化,低コスト化及び小型化に寄与できる。
(6) 好適な態様により、乳送出口部6に、気液混合緩衝室Rdに貯留された乳量が所定量以下のときに第一流量Qf以下の流量により乳Mを流出させる第一送出口6f及び貯留された乳量が所定量を越えたときに第二流量Qr以上の流量により乳Mを流出させる第二送出口6rを設ければ、気液混合緩衝室Rdに乳Mが残留しているなどにより、気液混合緩衝室Rdに流入した乳Mの液面Muが、いわば限界レベルを超えた場合であっても、第二送出口6sにより一時的なオーバーフローを速やかに解消できる。
(7) 好適な態様により、気液混合緩衝室Rdに、底面部Rddから起立し、下端口7dが外部に臨むとともに、上端口7uが内部に臨む緩衝筒7を設け、この緩衝筒7の上端口7uを第二送出口6sとし、かつ緩衝筒7の周面部に第一送出口6fを形成すれば、気液混合緩衝室Rd内に緩衝筒7を追加的に設ければ足りるため、容易かつ低コストに実施できる。
(8) 好適な態様により、パイプシャフト11の下端を下方に延出し、下端口11dを気液混合緩衝室Rdの底面部Rddに設けた排出口2tの内部に臨ませることにより、当該気液混合緩衝室Rdに臨む部位を緩衝筒7とし、この緩衝筒7の下部の周面部に第一送出口6fを形成するとともに、緩衝筒7の上部の周面部に第二送出口6sを形成すれば、緩衝筒7とパイプシャフト11と一体形成できるため、容易かつ低コストに実施できるとともに、気液混合緩衝室Rd側の構成(形状)をより簡略化(単純化)できる。
(9) 好適な態様により、第一送出口6fに、緩衝筒7の周面部に形成した少なくとも一以上のスリット部7s…及び/又は孔部7h…を用いたり、第二送出口6sに、緩衝筒7の上端7u又は周面部に形成した少なくとも一以上の孔部8h…を用いれば、スリット部7s…と孔部7h…(8h…)の組合わせ、更にはその数量及び形状の組合わせにより、様々な送出態様(送出特性)を有する乳送出口部6を容易に設けることができるとともに、乳送出口部6の最適化を図ることができる。
(10) 好適な態様により、パイプシャフト11の下端に、流出口2eから流出した乳Mが乳送出口部6に直接入らないようにするための傘形カバー11cを設ければ、流出口2eから流出した乳Mが乳送出口部6に直接入る不具合を回避できるため、流出口2eから流出した全ての乳Mを気液混合緩衝室Rdに一旦貯留し、乳送出口部6から少しずつ流出させる機能を確実に実行できる。
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
まず、本実施形態に係る乳量計1の構成について、図1〜図5及び図9を参照して具体的に説明する。
図1は、乳量計1における乳量計本体1mを示す。2は計量容器部であり、透明又は半透明のプラスチック或いはガラス等の素材より全体を円筒状に形成するとともに、周面部2fにおける縦方向中間部の所定位置に、上下二つの括れ部2su,2sd、即ち、最下部の括れ部2sdと、この括れ部2sdの上に位置する次段の括れ部2suを形成する。これにより、括れ部2suよりも上側が気液分離室Rs、括れ部2suと括れ部2sd間が計量室Rm、括れ部2sdよりも下側が気液混合緩衝室Rdになるとともに、括れ部2suの内周面が気液分離室Rsと計量室Rm間を連通させる中間口2mになり、括れ部2sdの内周面が計量室Rmと気液混合緩衝室Rd間を連通させる流出口2eになる。この場合、計量室Rmの容積は、例えば、200〔ミリリットル〕程度に選定できるとともに、気液混合緩衝室Rdの容積は、流出口2eから流出した少なくとも一回分の乳量を貯留可能な容積、例えば、計量室Rmの容積の1.5〜2倍(300〜400〔ミリリットル〕)程度に選定できる。なお、気液分離室Rsにおける周面部2fには、必要により追加的な一又は二以上の括れ部2suを形成しても良い。これにより、周面部2fにおける内周面の実質面積を拡大できるため、乳Mの流速を下げ、泡Mbの発生をより低減することができる。なお、計量容器部2は、複数の分割体を組合わせた構造に構成すれば、括れ部2su,2sdを設けた場合でも、計量容器部2における製造の容易化を図れるとともに、メンテナンス(洗浄,交換等)を容易かつ確実に行うことができる。
気液分離室Rsは、上端付近の周面部2fの外面から接線方向に突出し、上流側のミルクチューブ66を接続可能な流入口2iを備える。これにより、流入口2iから気液分離室Rsの内部に流入した乳Mは、気液分離室Rsにおける周面部2fの内壁面に沿って螺旋状に流れるため、乳Mが気液分離室Rsの内壁面を流れ落ちる際には、流速が小さくなり、乳量測定の誤差要因となる泡の発生や液面Muの波立ちが大きく低減される。また、結果的に乳量計1の小型コンパクト化にも寄与できる。
計量室Rmは、上面部Rmuを周面部側が下になる傾斜面に形成するとともに、下面部Rmdを周面部側が上になる傾斜面に形成する。これにより、計量室Rmの内部は上下がテーパ面に囲まれる形状となるため、計量室Rmに乳Mが貯留される際に計量容器部2(乳量計本体1m)が傾斜した状態であっても空気Aの層が発生することがないとともに、計量室Rmから乳Mが排出される際に計量容器部2(乳量計本体1m)が傾斜した状態であっても乳Mが残留することがなくなる。したがって、この傾斜面の傾斜角度は、実際の使用環境に対応して任意に選定することができる。通常、乳量計1(乳量計本体1m)の使用環境における傾斜角度は、大きくても15〔゜〕程度となるため、傾斜面の水平面に対する角度は、30〔゜〕程度に選定すれば、実用上は十分となる。
このように、上面部Rmuを周面部側が下になる傾斜面に形成し、かつ下面部Rmdを周面部側が上になる傾斜面に形成した計量室Rmを設ければ、実際の使用環境(設置環境)において、乳量計1が傾斜する場合であっても傾斜により発生する測定誤差を排除でき、精度の高い乳量測定を行うことができる。また、ステーにフックを介して吊下げることにより搾乳中に大きく揺れることも多いティートカップ自動離脱装置などにも付設可能になるなど、使用環境(設置環境)の範囲(用途)を飛躍的に拡大することができ、汎用性及び利便性を高めることができる。しかも、ミルクチューブ等の配管の引き回しを少なくできるとともに、可搬式(移動式)として使用することもできる。
さらに、計量室Rmの周面部における内面には、周方向に90〔゜〕間隔で配した四つの整流片部Rms…を一体形成する。この場合、各整流片部Rms…は、計量室Rmの軸方向に沿い、かつ径方向内方に向けて所定幅だけ突出させる。また、計量室Rmの下部、即ち、下面部Rmdの中央に設けられる流出口2eは、流入口2iから流入する乳Mの単位時間当たりの流量を考慮し、計量室Rm内の乳Mが所定時間Te以内に排出される径を選定する。
他方、計量容器部2(気液分離室Rs及び計量室Rm)の内部には弁機構部4を配設する。弁機構部4は、流出口2e及び中間口2mに挿通し、上端口11uを気液分離室Rsの上端に臨ませ、かつ下端口11dを気液混合緩衝室Rdに臨ませることにより気液分離室Rsと気液混合緩衝室Rdを連通させるパイプシャフト11と、このパイプシャフト11の上端を支持し、かつ当該パイプシャフト11を昇降させる弁駆動部12と、計量室Rm内に位置するパイプシャフト11の外周面11f上側に設けた第一バルブ4u及び外周面11f下側に設けた第二バルブ4dを備える。第一バルブ4u及び第二バルブ4dは、いずれもゴム等の弾性素材により形成する。23は第一バルブ4uと第二バルブ4dをパイプシャフト11の外周面11fに固定するための固定部材である。これにより、第一バルブ4uは計量室Rmと気液分離室Rs間の中間口2mを開閉可能となり、第二バルブ4dは計量室Rmと気液混合緩衝室Rd間の流出口2eを開閉可能となる。このような構成の弁機構部4を設ければ、パイプシャフト11をバルブ駆動用シャフトと空気抜き用パイプの双方に兼用できるとともに、さらに、第一バルブ4uと第二バルブ4dの双方に対するバルブ駆動用シャフトにも兼用できるため、構成の簡略化,低コスト化及び小型化に寄与できる利点がある。
また、弁駆動部12は、パイプシャフト11の上端を支持部材25を介して支持し、かつ気液分離室Rsを閉塞、即ち、計量容器部2の上面部2uに設けた円形の開口部2uhを閉塞して気液分離室Rsの上面部Rsuを形成するダイヤフラム部26と、気液分離室Rsに対して反対側でダイヤフラム部26に臨ませた切換室部Rcを備える。この切換室部Rcは、後述する制御系5(図4)の制御により真空圧又は大気圧に切換えられる。なお、27は切換室部Rcから突出する接続口を示す。さらに、ダイヤフラム部26は、上下に離間した第一ダイヤフラム26uと第二ダイヤフラム26dにより構成し、安定した昇降変位を実現させているとともに、支持部材25は、パイプシャフト11の上端口11uを閉塞しない形態で形成することにより、第二ダイヤフラム26dの中央下面に結合する。このような構成の弁駆動部12を設ければ、搾乳機64(図5)に使用される真空圧(真空ライン)を利用できるため、構成の簡略化による低コスト化及び小型化に寄与できる利点がある。
一方、気液混合緩衝室Rdは、上面部Rduを周面部側が下になる傾斜面に形成するとともに、底面部Rddを周面部側が上になる傾斜面に形成し、基本的な形態は計量室Rmと同じになる。したがって、気液混合緩衝室Rdの内部は上下がテーパ面に囲まれる形状となり、気液混合緩衝室Rdから乳Mが送り出される際には計量容器部2(乳量計本体1m)が傾斜した状態であっても乳Mが残留することがなくなる。
そして、この気液混合緩衝室Rdには、所定流量(第一流量)Qf以下の流量により乳Mを流出させ、かつ計量容器部2の内部の空気Aに混合して送り出す送出口(第一送出口)6fを有する乳送出口部6を設ける。より望ましくは、乳送出口部6に、気液混合緩衝室Rdに貯留された乳量が所定量以下のときに第一流量Qf以下の流量により乳Mを流出させる第一送出口6f及び貯留された乳量が所定量を越えたときにQr以上の流量により乳Mを流出させる第二送出口6sを設け、Qf<Qrの条件を満たすように設定する。計量容器部2の下面部2dは、気液混合緩衝室Rdの底面部Rddとなるため、乳送出口部6は、この底面部Rddの中央から起立する円筒形の緩衝筒7により設けることができる。この緩衝筒7は、上端口7uが内部に臨むとともに、下端口7d側は底面部Rddから下方に突出して外部に臨む。
これにより、図1及び図2に示すように、緩衝筒7の上端口7uを、乳送出口部6の第二送出口6sとして機能させることができるとともに、緩衝筒7の周面部に、上端から軸方向に沿って底面部Rddの位置に至る一つのスリット部7sを形成することにより、乳送出口部6の第一送出口6fとして機能させることができる。したがって、第一送出口6fは、貯留された乳Mの液面Muが緩衝筒7の上端口7uの高さ以下の乳Mが流出、即ち、貯留された乳量が所定量以下のときに第一流量Qf以下の流量により乳Mが流出する。この際、第一流量Qf以下の流量は、スリット部7sの開口面積により設定可能であり、スリット部7sの幅は、流出口2eから流入する任意の流入時における乳Mの全量が次の流入時までに少なくとも全て流出させることができる開口面積を設定する。例示の形態では、スリット部7sの幅を緩衝筒7の直径(内径)の1/N以下、望ましくは1/6以下に選定できる。また、第二送出口6sは、貯留された乳Mの液面Muが緩衝筒7の上端口7uの高さを越えた乳Mが流出、即ち、貯留された乳量が所定量を越えたときにQr以上の流量により乳Mが流出する。この際、Qr以上の流量は、緩衝筒7における円形の上端口7uの開口面積により設定可能である。
このように、乳送出口部6に、気液混合緩衝室Rdに貯留された乳量が所定量以下のときに第一流量Qf以下の流量により乳Mを流出させる第一送出口6f及び貯留された乳量が所定量を越えたときに第二流量Qr以上の流量により乳Mを流出させる第二送出口6rを設ければ、気液混合緩衝室Rdに乳Mが残留しているなどにより、気液混合緩衝室Rdに流入した乳Mの液面Muが、いわば限界レベルを超えた場合であっても、第二送出口6sにより一時的なオーバーフローを速やかに解消できる。また、気液混合緩衝室Rdに、底面部Rddから起立し、下端口7dが外部に臨むとともに、上端口7uが内部に臨む緩衝筒7を設け、この緩衝筒7の上端口7uを第二送出口6sとし、かつ緩衝筒7の周面部に第一送出口6fを形成すれば、気液混合緩衝室Rd内に緩衝筒7を追加的に設ければ足りるため、容易かつ低コストに実施できる利点がある。
一方、気液混合緩衝室Rdの内部に臨ませたパイプシャフト11の下端口11dは、緩衝筒7の上端口7uの真上に位置させるとともに、このパイプシャフト11の下端には、流出口2eから流出した乳Mが乳送出口部6、即ち、第一送出口6f及び第二送出口6sの双方に直接入らないようにするための傘形カバー11cを設ける。傘形カバー11cは、下方が広がるテーパ状に形成し、外側の周面には、90〔゜〕間隔で配した四つの整流片部11s…を一体形成する。各整流片部11s…は、軸方向に沿い、かつ径方向外方に向けて所定幅だけ突出させる。各整流片部11s…の周方向の位置は前述した各整流片部Rms…の位置に一致させることができる。このような構成により、緩衝筒7の上端口7uの上方が傘形カバー11cにより覆われるため、流出口2eから流出した乳Mが乳送出口部6に直接入る不具合を回避でき、流出口2eから流出した全ての乳Mを気液混合緩衝室Rdに一旦貯留し、乳送出口部6から少しずつ流出させる機能を確実に実行できる。
さらに、計量容器部2の下面部2d、即ち、気液混合緩衝室Rdの底面部Rddには、試料(乳M)を分取(サンプリンング)するための分取筒21を設ける。分取筒21は底面部Rddから起立し、下端口21dを外部に臨ませるとともに、上端面21uを内部に臨ませる。この場合、上端面21uは、図1に示すように、流出口2eの近傍に位置させ、かつ中心位置を流出口2eの内周縁部に臨ませるとともに、上述した二つの整流片部11sと11s間の中央に位置するように考慮する。また、上端面21uは、気液混合緩衝室Rdの上面部Rduの傾斜面に沿うように傾斜させ、上端面21uには計量容器部2の径方向に沿ったスリット状の分取口21uiを形成する。なお、21cは、分取口21uiの周りの一部を囲むことにより、流出口2eから流出する乳Mの一部を分取口21uiに導く分取筒21の上端に設けた集流片部である。したがって、このような集流片部21cを設けた場合には、整流片部11s…,Rms…の付設を省略してもよい。一方、下端口21dは、下面部2dから下方に突出させ、サンプリングチューブ100を接続する接続口として形成する。これにより、下端口21dにはサンプリングチューブ100を介して試料容器101の容器口を接続することができる。
他方、計量容器部2には、計量室Rmの上面部Rmuから上方に起立し、上端口28uを気液分離室Rsの上端に臨ませることにより計量室Rmと気液分離室Rsを連通させる給気筒部28を設ける。このような給気筒部28を設けることにより、計量室Rmの乳Mを流出口2eからスムースかつ迅速に流出させることができる。さらに、計量容器部2には、給気筒部28の内部に臨ませた液面検出部3を付設する。液面検出部3には、乳Mの抵抗により乳Mの存在を検出する上下に離間して配した三つの検出電極3a,3b,3c(3cは共通電極)を用いる。検出電極3a,3bは、乳Mが計量室Rmから気液分離室Rsに貯留される際に、乳Mの液面Mu、特に乳Mの泡Mbを除く液面Muが計量室Rmの上方となる所定位置を選定、望ましくは、図1に示すように、気液分離室Rsの下面部から所定高さまで貯留される位置を検出できるように選定する。このように、液面検出部3(検出電極3a,3b)を給気筒部28の内部に臨ませれば、無用な波立ちや泡立ち等の影響を回避した検出を行うことができる。また、液面検出部3に、検出電極3a…を用いれば、比較的な簡易な構造により低コストに実施できるとともに、乳Mの存在を確実に検出できる。
図4は、乳量計本体1mに接続する制御系5を示す。制御系5は、各種制御処理及び演算処理等を行うコンピューティング機能を有するシステムコントローラ31を備える。したがって、システムコントローラ31に内蔵するシステムメモリには、乳量測定に係わる一連のシーケンス制御を実行するための制御プログラム31pを格納するとともに、後述する設定時間Ts等を含む各種設定データ31dが設定される。一方、システムコントローラ31の入力ポートには検出処理部32を接続するとともに、システムコントローラ31の制御出力ポートには電磁三方弁33を接続する。また、検出処理部32の入力部には、所定の接続ケーブル34を介して検出電極3a,3b,3cを接続する。この検出処理部32は、各検出電極3a,3bに所定の電圧を付与し、抵抗値変化を検出することにより、貯留される乳Mの液面Muを検出する機能を有する。
なお、システムコントローラ31は、液面検出信号Sa,Sbの大きさを判別することにより泡Mbの検出をキャンセルする検出キャンセル機能Fcを備える。即ち、検出処理部32からは検出電極3aと3c間の抵抗値に対応する液面検出信号Saと検出電極3bと3c間の抵抗値に対応する液面検出信号Sbが出力し、システムコントローラ31に付与される。この場合、検出電極3aと3b間に乳Mの液体部分が存在すれば、検出電極3aは泡Mbを含む抵抗値を検出し、検出電極3bは乳Mの液体部分のみの抵抗値を検出するが、泡Mbを含む抵抗値と乳Mの液体部分のみの抵抗値は異なるため、システムコントローラ31は、各抵抗値を比較し、抵抗値間の差が所定の大きさ以上のときは、検出電極3aと3b間に液面Muが存在するものと判断し、検出キャンセル機能Fcにより検出を無効にする。
このように構成する制御系5は、少なくとも上述した液面検出部3の検出電極3aが液面Muを検出したなら弁機構部4を制御、即ち、第一バルブ4uを閉じ、かつ第二バルブ4dを開くとともに、所定の復帰条件に従って第一バルブ4uを開き、かつ第二バルブ4dを閉じる機能を備えている。
また、切換室部Rcから突出する接続口27は、真空チューブ35を介して電磁三方弁33のコモンポート33oに接続し、さらに、電磁三方弁33の一方の分岐ポート33aは真空チューブ(真空ポンプ)41に接続するとともに、電磁三方弁33の他方の分岐ポート33bは大気に開放する。これにより、電磁三方弁33を切換制御することにより、上述した切換室部Rcを真空状態又は大気状態に切換えることができる。
一方、第一バルブ4uを閉じ、かつ第二バルブ4dを開いた後、第一バルブ4uを開き、かつ第二バルブ4dを閉じるための所定の復帰条件には、予め設定した設定時間Tsが経過すること,又は流出口2eからの乳Mの排出終了を検出すること,を用いることができる。本実施形態では、予め設定した設定時間Tsが経過することを復帰条件として設定した。この場合、設定時間Tsは、前述した所定時間Teよりも長くなるように設定する。このように、所定の復帰条件として、予め設定した設定時間Tsが経過することにより、第一バルブ4uを開き、かつ第二バルブ4dを閉じる制御を採用すれば、部品点数が少なくなり制御の容易化を図れるため、低コストに実施できる。他方、所定の復帰条件として、流出口2eからの乳Mの排出終了を検出することにより、第一バルブ4uを開き、かつ第二バルブ4dを閉じる制御を行うこともできる。この場合、例えば、流出口2eに前述した検出電極3a…からなる液面検出部3と同様の検出部を付設すればよい。所定の復帰条件として、流出口2eからの乳Mの排出終了を検出することにより、第一バルブ4uを開き、かつ第二バルブ4dを閉じる制御を用いれば、速やかに復帰できるため、計量時間が短くなり効率的な計量を行うことができる。
このように、本実施形態に係る乳量計1は、計量容器部2における円筒状に形成した周面部2fの縦方向中間部の少なくとも二個所に括れ部2su,2sdを形成することにより、最下部の括れ部2sdよりも下側を気液混合緩衝室Rd、最下部の括れ部2sdとこの括れ部2sdの上に位置する次段の括れ部2su間を計量室Rm、当該次段の括れ部2suよりも上側を気液分離室Rsに構成し、かつ最下部の括れ部2sdの内周面を流出口2eとし、次段の括れ部2suの内周面を中間口2mとするとともに、中間口2mを開閉可能な第一バルブ4u及び流出口2eを開閉可能な第二バルブ4dを有する弁機構部4を設けて構成すれば、計量室Rmと気液混合緩衝室Rdを連携させた最適な態様により実施可能となり、気液混合緩衝室Rdの有する機能の有効性及び確実性をより高めることができる。
次に、本実施形態に係る乳量測定方法を含む乳量計1の使用方法及び動作(機能)について、図1〜図8を参照して説明する。
乳量計1における乳量計本体1mは、図3に示すように、ティートカップ自動離脱装置51の背面に取付けることができる。この場合、ティートカップ自動離脱装置51は、前述した制御系5におけるコントローラ31,検出処理部32及び電磁三方弁33を内蔵する。なお、ティートカップ自動離脱装置51は、外部ケーシングを有する装置本体52と、この装置本体52の上面から上方に突出したフック53と、装置本体52の下面から突出したワイヤガイドパイプ54を有し、このワイヤガイドパイプ54の下端から離脱ワイヤ55(図5)が繰り出される。この離脱ワイヤ55の先端は、四つのティートカップ61c…を有するミルククロー61に接続する。したがって、装置本体52の内部には離脱ワイヤ55を巻取る巻上機構を備えている。
他方、図5は、乳量計1を使用する搾乳システムWの一例を示す。この搾乳システムWは、レール62に沿って移動する搬送機63を備えており、この搬送機63に搾乳機64を搭載する。また、搬送機63に有するアームステー65にはフック53を引掛けることによりティートカップ自動離脱装置51を吊下げる。図5は、乳牛Cに対して搾乳機64により搾乳している状態を示し、乳牛Cには四つのティートカップ61c…が装着されている。搾乳システムWでは、搾乳時に、ティートカップ61c…により搾乳された生乳(乳M)がミルククロー61からミルクチューブ66を介して乳量計本体1mの流入口2iに供給される。そして、乳量計本体1mを通過した乳Mは排出口2tからミルクチューブ67を介してミルクパイプ68に送られる。したがって、このミルクチューブ66と67が乳量計1を接続する送乳ラインLmとなる。なお、70は真空パイプ、41は真空パイプ70側とティートカップ自動離脱装置51を接続する真空チューブ(図4)、72はティートカップ自動離脱装置51とティートカップ61c…を接続する真空チューブをそれぞれ示す。また、前述したように、各検出電極3a…は接続ケーブル34(図4)を介してティートカップ自動離脱装置51(検出処理部32)側に接続するとともに、切換室部Rc(接続口27)は、真空チューブ35(図4)を介してティートカップ自動離脱装置51(電磁三方弁33の分岐ポート33a)側に接続する。
以下、搾乳時における乳量計1の動作について、図7を参照しつつ図6に示すフローチャートに従って説明する。
搾乳時(計量時)には、送乳ラインLmにおけるミルクチューブ66に搾乳された乳Mが間欠的に送られるため、乳Mは流入口2iから計量容器部2の内部に流入する(ステップS1)。なお、流入初期では第一バルブ4u及び第二バルブ4dは下降位置にあり、中間口2mは開き、かつ流出口2eは閉じている。そして、流入した乳Mは、図7(a)に実線矢印で示すように、気液分離室Rsにおける周面部2fの内壁面に沿って螺旋状に流れる。これにより、良好な気液分離(遠心分離)が行われるとともに、気液分離室Rsの内壁面を乳Mが流れ落ちる際に、流速が小さくなり、乳量測定の誤差要因となる泡Mbの発生や液面Muの波立ちが大きく低減される。この際、分離された空気Aは点線矢印で示すように、パイプシャフト11の内部を通って気液混合緩衝室Rdの内部に流入するとともに、空気Aの分離された乳Mは、中間口2mを通って計量室Rmに流入し、当該計量室Rmに貯留される(ステップS2)。図7(a)はこの状態を示している。
乳Mの流入が進むに従って貯留される乳Mの液面Muは上昇する。そして、検出電極3bの位置まで上昇すれば、検出電極3bと3c間がON状態となる。ところで、液面Muの上には、通常、少なからず泡Mbが存在するため、図7(b)に示すように、液面Muが検出電極3aと3b間に位置した際には、検出電極3aが泡Mbに浸かる状態も発生する。この場合、検出電極3aと3c間の抵抗値を示す液面検出信号Saは検出電極3bと3c間の抵抗値を示す液面検出信号Sbよりも大きくなるため、検出電極3aと3c間はON状態とは見做されず、検出キャンセル機能Fcにより検出はキャンセルされる。これにより、泡Mbによる誤差要因が排除され、より正確で安定した乳量測定を行うことができる。
これに対して、さらに液面Muが上昇し、図7(c)に示すように、検出電極3aが乳Mに浸かる位置まで液面Muが上昇すれば、検出電極3a及び3bの双方が乳Mに浸かるため、液面検出信号SaとSbの偏差が一定許容範囲内になる。したがって、システムコントローラ31は、液面Muが正式に検出電極3aの高さまで上昇したものと判断し、バルブ切換信号Scを電磁三方弁33に付与する。これにより、電磁三方弁33が切換えられ、切換室部Rcに真空圧(負圧)が付与される(ステップS3,S4)。この結果、図7(c)に示すように、ダイヤフラム部26は上方へ変位し、さらに第一バルブ4u及び第二バルブ4dも上昇位置へ変位するため、中間口2mが閉じ、かつ流出口2eが開く(ステップS5)。
これにより、計量室Rm内の乳Mは流出口2eを通って気液混合緩衝室Rdに流入する(ステップS6)。この際、計量室Rm内の乳Mが所定時間Te以内に流出するように流出口2eの径が選定されるため、計量室Rm内の乳Mは速やかに流出する。なお、この場合、流出口2eから流れ出た乳Mは、傘形カバー11cの機能により気液混合緩衝室Rdの周面側に流れ落ちるため、乳Mが乳送出口部6、即ち、第一送出口6f及び第二送出口6sに直接入る不具合は回避されるとともに、通常の搾乳では、気液混合緩衝室Rdに貯留される乳Mの液面Muが緩衝筒7の上端口7u(第二送出口6s)を超えることがないように設定されるため、流出口2eから流出した乳Mは全て気液混合緩衝室Rdに一旦貯留され、第一送出口6fから流出することになる。そして、気液混合緩衝室Rd内の乳Mは、図7(c)に示すように、スリット7sを通して緩衝筒7の内部に流出し、上端口7uからの空気Aと混合することにより、緩衝筒7の下端口7d(排出口2t)を通して下流側のミルクチューブ67に送り出される(ステップS7,S10)。この場合、スリット7sの開口面積は第一流量Qf以下の流量により乳Mが流出するように設定されるため、小流量により少しずつ送り出される。
したがって、流出口2eの開時に発生する乳Mによる送乳路(ミルクチューブ等)の一時的な閉塞状態が回避される。これにより、送乳ラインLm内の圧力変動(圧力衝撃)が乳頭に付加される不具合を排除できるため、乳牛Cに対する無用なストレス要因の解消、更には乳頭に雑菌が入り込むことによる乳房炎等の発生を解消できる。しかも、計量容器部2から流出した空気Aに対して乳Mを少しずつ流出させることができるため、気泡の無用な発生の抑制、更には安定したバランスのよい送乳の確保を実現できる。
図8は、送乳ラインLm内の実測した圧力変動を示している。なお、実測位置は、乳頭に近いミルククロー61内部を用いた。また、図8(a)は流量1kg/minのとき、図8(b)は流量2kg/minのとき、図8(c)は流量4kg/minのとき、の真空度〔MPa〕をそれぞれ示す。図8(a)〜(c)において、左側の実測データPiが本実施形態に係る乳量計1の場合、即ち、対策後の場合を示すとともに、右側の実測データPrが本実施形態に係る乳量計1の要部構造を除去、即ち、気液混合緩衝室Rd及び緩衝筒7を除去することにより、流出口2eと排出口2tが直接連通する対策前の構造を用いた場合を示している。図8(a)〜(c)から明らかなように、本実施形態に係る乳量計1を用いることにより、送乳ラインLm内の圧力変動を大幅に低減できる。
なお、図7(c)に示すように、流出口2eから流れ出た乳Mの一部は分取筒21の上端面21uに設けた分取口21uiから分取(サンプリング)され、分取筒21及びサンプリングチューブ100を通して試料容器101に供給される。この場合、乳量計1が傾斜しているような場合であっても、整流片部Rms…及び11s…により乳Mの流れが整流(規制)されるため、乳Mの流れが一方に片寄りにくくなり、気液混合緩衝室Rdに対して乳Mをスムースに流入させることができるとともに、分取口21uiに対して一定量以上の乳Mを効率的かつ安定に流入させることができる。
一方、計量室Rmの乳Mが気液混合緩衝室Rdに流入する際に、気液混合緩衝室Rdに乳Mが残留しているなどにより、気液混合緩衝室Rdに流入した乳Mの液面Muが緩衝筒7の上端口7uの高さを一時的に超えてしまった場合には、第二送出口6sからQr以上の流量により乳Mが緩衝筒7の内部に流入する(ステップS7,S8)。この場合、第二送出口6sは、緩衝筒7の上端口7uとなるため、大流量により速やかに流出され、一時的なオーバーフローが解消される。そして、乳Mの液面Muが緩衝筒7の上端口7uの高さ以下になった時点で第二送出口6sからの流出は停止し、第一送出口6fのみから流出する正常な状態に復帰する(ステップS9,S10)。
他方、バルブ切換信号Scが出力した後、予め設定した設定時間Tsが経過すれば、システムコントローラ31は、バルブ復帰信号Srを電磁三方弁33に付与する。これにより、電磁三方弁33が切換えられ、切換室部Rcに付与する真空圧が解除されるため、切換室部Rcは大気圧に復帰する(ステップS11,S12)。この結果、ダイヤフラム部26は下方へ変位し、図7(d)に示すように、第一バルブ4u及び第二バルブ4dも下降位置に復帰する。そして、中間口2mは開き、かつ流出口2eは閉じるため、気液分離室Rs内の乳Mは、中間口2mを通って計量室Rm内に流入する(ステップS13)。この後、搾乳が終了するまで、以上の動作(処理)が繰り返される(ステップS14,S1…)。なお、システムコントローラ31では、計量室Rmにより計量した回数をカウントすることにより全乳量、更には流量(速度)等を演算処理により求める。
次に、本発明に係る乳量計1の変更実施形態について、図9及び図10を参照して説明する。
図9は、乳送出口部6の各種変更例を示す。図9(a)〜(d)はいずれも第一送出口6fを変更したものである。図9(a)は、図2に示す乳送出口部6の態様に加えて、切込状に形成した三つのスリット部7s…を追加したものであり、各スリット部7s…は上端口7uの縁部から軸方向へ所定長さ切込み形成するとともに、周方向へ90〔゜〕間隔で設ける。これにより、緩衝筒7における上部の流量が下部の流量に対して大きくなるため、例えば、気液混合緩衝室Rd内の乳Mが通常よりも多めのときに、多めの分を速めに流出させることができる。図9(b)は、図9(a)における切込状に形成した三つのスリット部7s…を追加する代わりに、図2に示したスリット部7sの上部を上広がりとなるV字形スリット7swに形成したものである。これにより、基本的な機能は図9(a)と同じになるが、気液混合緩衝室Rd内の乳Mが通常よりも多めのときに、多めの分を速めに流出できるとともに、液面Muが高くなるに従って流量をより大きくできる。
図9(c)及び(d)は、図2に示す乳送出口部6の態様に対して全体を異ならせたものであり、緩衝筒7の上端口7uの縁部に四つのスリット部7s…を軸方向へ所定長さ切込み形成するとともに、周方向へ90〔゜〕間隔で設ける。また、緩衝筒7の周面部であって底面部Rddの近傍に四つの孔部7h…を軸方向へ形成するとともに、周方向へ90〔゜〕間隔で設けたものであり、緩衝筒7の軸方向中間部分にはスリット部7s及び孔部7hのいずれも設けない。したがって、図2,図9(a)及び(b)の場合には、液面Muが低下するに従って流量も小さくなるが、図9(c)の場合には、緩衝筒7の軸方向中間部分における流量をほぼ一定にすることができる。図9(d)は、基本的な機能が図9(c)と同じになるが、各スリット部7s…及び各孔部7h…の長さを一部変更したものであり、液面Muの高さに対して流出させる乳Mの流量を設定し、乳送出口部6の最適化を図ることができる。このように、乳送出口部6は、様々な形態(形状,大きさ,位置,数量等)により実施可能である。
図10は、緩衝筒7の変更例を示す。図10は、パイプシャフト11の下端を下方に延出し、下端口11dを気液混合緩衝室Rdの底面部Rddに設けた排出口2tの内部に臨ませることにより、当該気液混合緩衝室Rdに臨む部位を緩衝筒7とし、この緩衝筒7の下部の周面部に第一送出口6fを形成するとともに、緩衝筒7の上部の周面部に第二送出口6sを形成したものである。この場合、第一送出口6fは、図1に示した実施形態と同様に、緩衝筒7の下部の周面部に形成した一つのスリット7sにより構成するとともに、第二送出口6sは、緩衝筒7の上部の周面部に形成した、例えば、四つの孔部8h…により構成し、スリット7s及び孔部8h…の面積や位置(高さ)関係は、図1の実施形態のディメンションに準じて実施できる。
このような変更例に係る緩衝筒7によれば、緩衝筒7とパイプシャフト11と一体形成できるため、容易かつ低コストに実施できるとともに、気液混合緩衝室Rd側の構成(形状)をより簡略化(単純化)できる利点がある。また、図9及び図10に示すように、第一送出口6fに、緩衝筒7の周面部に形成した少なくとも一以上のスリット部7s…及び/又は孔部7h…を用いたり、第二送出口6sに、緩衝筒7の上端7u又は周面部に形成した少なくとも一以上の孔部8h…を用いれば、スリット部7s…と孔部7h…(8h…)の組合わせ、更にはその数量及び形状の組合わせにより、様々な送出態様(送出特性)を有する乳送出口部6を容易に設けることができるとともに、乳送出口部6の最適化を図ることができる。
以上、好適実施形態及び変更実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
例えば、乳送出口部6には、第一送出口6fと第二送出口6sを設けた場合を示したが、気液混合緩衝室Rdの容積に余裕がある場合等においては、必ずしも第二送出口6sを設けることを要しない。また、乳送出口部6を構成するに際し、気液混合緩衝室Rdの底面部Rddに緩衝筒7を設けて構成した場合を示したが、気液混合緩衝室Rdには、少なくとも所定流量(第一流量)Qf以下の流量により乳Mを流出させる第一送出口6fを有する構造であれば、他の構造に置換することもできる。一方、計量室Rmの上面部Rmuにおける周面部側が下になる傾斜面及び計量室Rmの下面部Rmdにおける周面部側が上になる傾斜面は、テーパ状に形成した場合を示したが曲面であってもよい。したがって、正面断面が偏平な楕円形になるように形成してもよく、傾斜面の形態は例示に限定されるものではない。また、弁機構部4は、パイプシャフト11をバルブ駆動用シャフトと空気抜き用パイプの双方に兼用する場合を示したが、バルブ駆動用シャフトを棒材により形成し、別途、空気抜き用パイプを他の位置に設けてもよい。さらに、弁駆動部12は、ダイヤフラム部26と真空圧又は大気圧に切換えられる切換室部Rcにより構成する場合を例示したが、ダイヤフラム部26を電磁ソレノイド又はエアシリンダ等のアクチュエータにより直接変位させてもよい。他方、制御系5は、制御ボックス等により別途構成することにより、乳量計本体1mなどに付設してもよい。なお、例示の乳量計1は、分取筒21を備えるいわばサンプリング機能付乳量計を示したが、勿論、サンプリング機能(分取筒21)を設けない乳量測定機能のみを備える乳量計1であってもよいし、必要により他の機能(構成)が付加された乳量計1であってもよい。