JP5610048B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
すなわち、異常時モータ指令値算出手段で算出した異常時相電流指令値の符号が反転する電気角を跨ぐ加速領域で、意図的にモータの回転を操舵方向へ加速するので、当該加速領域でのブレーキトルクの発生を防止することにより、モータトルクが低下する不安定出力角度領域をモータ慣性力により効率的に飛び越えることができ、操舵フィーリングを向上させることができる。
そこで、本発明は、3相電動モータで1相に異常が発生して残りの2相でモータを駆動する際に、モータトルク低下領域を確実に飛び越えて操舵フィーリングを悪化させることなく、モータ駆動を継続することができる電動パワーステアリング装置を提供することを課題としている。
また、本発明に係る電動パワーステアリング装置の第5の態様は、前記リトライ領域判定手段が、前記電気角及び前記操舵トルクの方向に基づいてリトライ領域を前記操舵方向とは反対側にオフセットさせるように構成されている。
また、本発明に係る電動パワーステアリング装置の第6の態様は、前記リトライ加速手段が、前記リトライ計数部のリトライ回数が閾値を超えたときに、前記加速領域外の前記異常時相電流指令値を当該リトライ回数に応じて高めるように構成されている。
(第1の実施の形態)
(構成)
図1は、本発明の一実施形態を示す全体構成図である。
図中、符号1は、ステアリングホイールであり、このステアリングホイール1に運転者から作用される操舵力がステアリングシャフト2に伝達される。このステアリングシャフト2は、入力軸2aと出力軸2bとを有する。入力軸2aの一端はステアリングホイール1に連結され、他端は操舵トルクセンサ3を介して出力軸2bの一端に連結されている。
操舵トルクセンサ3は、ステアリングホイール1に付与されて入力軸2aに伝達された操舵トルクを検出するもので、例えば、操舵トルクを入力軸2a及び出力軸2b間に介挿した図示しないトーションバーの捩れ角変位に変換し、この捩れ角変位を抵抗変化や磁気変化に変換して検出するように構成されている。
図3は、制御演算装置23の具体的構成を示すブロック図である。
制御演算装置23は、図3に示すように、操舵補助電流指令値演算部31、角度情報演算部32、正常時モータ指令値算出部33及び異常時モータ指令値算出部34で構成される指令値出力部30と、指令値選択部35と、モータ電流制御部36とを備えている。
操舵補助電流指令値演算部31は、操舵トルクセンサ3で検出した操舵トルクTと車速センサ21で検出した車速Vsとを入力し、これらに基づいて操舵補助電流指令値Irefを算出する。
角度情報演算部32は、ロータ回転角検出回路13で検出したロータ回転角θmに基づいて、電気角θeを演算する電気角変換部32aと、この電気角変換部32aから出力される電気角θeを例えば微分してモータ回転速度ωmを算出するモータ回転速度演算部32bとを備えている。
正常時モータ指令値算出部33は、操舵補助電流指令値Iref、電気角θe及び電気角速度ωeに基づいて、3相電流指令値(正常時相電流指令値)Iaref〜Icrefを算出する。
モータ電流制御部36は、指令値選択部35で選択した電流指令値とモータ電流検出回路22で検出したモータ電流検出値Iad、Ibd及びIcdとを用いて、電流フィードバック処理を行う。
操舵補助電流指令値演算部31は、操舵トルクT及び車速Vsをもとに、図4に示す操舵補助電流指令値算出マップを参照して操舵補助電流指令値Irefを算出する。操舵補助電流指令値算出マップは、図4に示すように、横軸に操舵トルクTをとり、縦軸に操舵補助電流指令値Irefをとると共に、車速検出値Vsをパラメータとした放物線状の曲線で表される特性線図で構成される。
角度情報演算部32は、ロータ回転角検出回路13で検出したロータ回転角θmを電気角θeに変換する電気角変換部32aと、この電気角変換部32aから出力される電気角θeを微分してモータ回転速度を表す電気角速度ωeを算出するモータ回転速度演算回路32bとを有する。
このようにd軸電流指令値算出部33aを構成することにより、d軸電流指令値Idrefは、
Idref=−|Iref|・sin(acos(ωb/ωm)) …………(1)
となる。
V=E+R・I+L(di/dt) …………(2)
で表される。ここで、Eは逆起電圧、Rは固定抵抗、Lはインダクタンスである。逆起電圧Eはモータが高速回転になるほど大きくなり、バッテリー電圧などの電源電圧は固定であるから、モータの制御に利用できる電圧範囲が狭くなる。この電圧飽和に達する角速度がベース角速度ωbで、電圧飽和が生じるとPWM制御のデューティ比が100%に達し、それ以上は電流指令値に追従できなくなり、その結果トルクリップルが大きくなる。
Iqref={Kt×Iref×ωe−ed(θe)×Idref(θe)}/eq(θe)
………………(3)
ここで、Ktはモータトルク定数である。
異常時モータ指令値算出部34は、3相ブラシレスモータ12の1相のコイルを含む駆動系統に異常が発生した場合に、残りの2相のコイルを使用して3相ブラシレスモータ12の回転駆動を継続するための相電流指令値を算出するものである。
3相ブラシレスモータ12では、例えば図8(a)に示すようにA相コイルLaに対する駆動系統に断線が発生して、A相コイルLaにモータ電流を供給できない状態となると、モータ電流を供給可能なコイルはB相コイルLb及びC相コイルLcの2つのコイルとなる。これらB相コイルLb及びC相コイルLcに供給する電流の方向は、B相コイルLbからモータ電流を入力してC相コイルLcから出力する場合と、逆にC相コイルLcからモータ電流を入力してB相コイルLbから出力する場合の2通りとなる。
そこで、例えばA相の駆動系統に通電異常が発生したときに、残りのB相及びC相を使用してモータ駆動する場合のモータ誘起電圧を、図9に示すように、電気角θeに対する特性曲線L1及びL2で示される誘起電圧EMFb(θe)及びEMFc(θe)を合成した特性曲線L3で示される合成誘起電圧EMFaとする。そして、この合成誘起電圧EMFaに基づいて相電流指令値Im(θe)を算出し、この相電流指令値Im(θe)に基づいて、上述した2相電流指令値を算出する。
ここで、本実施形態では、現在の電気角θeが後述する所定の加速領域内にあるとき、3相ブラシレスモータ12を操舵方向へ加速するべく、上記相電流指令値Im(θe)を増加又は減少する補正を行うものとする。
異常時モータ指令値算出部34は、図3に示すように、基本電流指令値生成部60と、基本電流指令ゲイン生成部61と、補正電流指令ゲイン生成部62と、リトライ電流指令ゲイン生成部63と、基本電流指令ゲイン生成部61から出力される基本電流ゲインGifと補正電流指令ゲイン生成部62から出力される補正電流指令ゲインGiaとリトライ電流指令ゲイン生成部63から出力されるリトライ電流指令ゲインGirとに基づいて2相電流指令値Iiref及びIjrefを生成する2相制御用各相電流指令値生成部64とを備えている。ここで、補正電流指令ゲイン生成部62、リトライ電流指令ゲイン生成部63及び2相制御用各相電流指令値生成部64で、電流指令値補正手段が構成されている。
ここで、誘起電圧算出部60aは、B−C2相で駆動する場合の図9の特性曲線L3で表される合成誘起電圧EMFaと電気角θeとの関係を示す合成誘起電圧算出用記憶テーブル、A−B2相で駆動する場合の合成誘起電圧EMFaと電気角θeとの関係を表す合成誘起電圧算出テーブル、及びA−C2相で駆動する場合の合成誘起電圧EMFaと電気角θeとの関係を表す合成誘起電圧算出用記憶テーブルの3つの合成誘起電圧算出用記憶テーブルを有する。そして、相異常検出信号ASに基づいて正常である2相に対応する合成誘起電圧算出用記憶テーブルを選択し、電気角θeをもとに選択した合成誘起電圧算出用記憶テーブルを参照して合成誘起電圧EMFa(θe)を算出する。
すなわち、相電流指令値算出部60bは、下記(4)の演算を行って相電流指令値Im(θe)を算出する。
Im(θe)=(Kt2×Iref×ωe)/EMFa(θe) ………(4)
ここで、Kt2は2相通電時のモータトルク定数である。
そして、逆起電圧特性ゲイン算出部67から故障相別シフト後電気角θesに応じた基本電流ゲインGifが2相制御用各相電流指令値生成部64に供給される。
補正電流指令ゲイン生成部62は、切増切戻判定部71と、モータ加速領域判定部72と、トルク低下領域判定部73と、補正電流指令ゲイン生成部74とを備えている。
回転方向判定部71bは、操舵トルク符号判定部71aから入力される符号判定出力Stが論理値“1”であるときには、回転速度ωmに予め設定された回転速度ヒステリシスωhを加算した値の絶対値が回転速度ヒステリシスωh1を超えているか否かを判定する。この判定結果が、|ωm+ωh1|>ωh1である場合には、回転速度ωmが0を含む正値であるときに論理値“1”の回転方向判定出力Srを出力し、回転速度ωmが負値であるときには論理値“0”の回転方向判定出力Srを出力する。また、|ωm+ωh1|≦ωh1であるときには前回出力を維持する。
上記加速領域は、前述した相電流指令値算出部60bで算出する相電流指令値Im(θe)の符号が反転する電気角θeを跨ぐ所定の角度領域に設定する。具体的には、当該加速領域は、相電流指令値Im(θe)が、各相コイルの駆動系統で通電可能な電流値の上限に相当する相電流上限値(モータ駆動回路24で出力可能な最大電流値Imax)に達している角度領域の前後を含む角度領域とする。
トルク低下領域判定部73は、図12に示すように、電流指令値Iiref及びIjrefが最大電流値Imaxに近い値のトルク低下領域判定電流閾値Itd以上であるか否か判定する電流指令値比較部73aと、モータ回転速度ωmがトルク低下領域判定回転速度閾値ωtm以下であるか否かを判定する回転速度比較部73bと、前述した加速領域判定フラグFa、電流指令値比較部73aの比較出力及び回転速度比較部73bの比較出力が入力されてモータトルク低下領域内であるか否かを判定する判定部73cとを備えている。
回転速度比較部73bは、回転速度ωmの絶対値がトルク低下領域判定回転速度閾値ωtm以下であるときには論理値“1”の比較出力Ctvを出力し、それ以外のときには論理値“0”の比較出力Ctvを出力する。
ここで、ゲイン算出部74aは、切戻時に図14に示すゲイン算出マップを参照して切戻補正電流ゲインGirvを算出して補正電流指令ゲイン演算部74bに設定するとともに、切増時に予め設定された切増補正電流ゲインを補正電流指令ゲイン演算部74bに設定し、電流指令値Iiref及びIjrefが安定領域にあるときに予め設定された安定領域補正電流ゲインを補正電流指令ゲイン演算部74bに設定する。
また、Im(θe)TH1≦|Im(θe)|<Im(θe)TH2である場合には、上記相電流指令値Im(θe)の補正量を、操舵補助電流指令値Irefを基準に徐変させて急激な変化を防止する。このように、操舵補助電流指令値Irefに応じて相電流指令値Im(θe)の補正量を徐々に変化させる徐変領域を設ける。
ここで、上記閾値Im(θe)TH1及びIm(θe)TH2は、モータに回転力を与える程度のモータに係る外部負荷が発生する操舵補助電流指令値を基準に設定される。
トルク比較部81dは、操舵トルクTと操舵トルク閾値とを比較して操舵トルクTが操舵トルク閾値以上であるときに論理値“1”の比較出力Ctcをアンド回路81iに出力し、それ以外のときに論理値“0”の比較出力Ctcをアンド回路81iに出力する。
状態変化判定部81bは、第2の切戻フラグFr2が“1”から“0”にすなわち切戻状態から切増状態に状態変化した場合には切戻→切増変化フラグFriを“1”にセットし、それ以外の場合には切戻→切増変化フラグFriを“0”にリセットする。
リトライ電流指令ゲイン算出部82は、図16に示すように、リトライ回数Nrと第2の切戻フラグFr2とが入力されるリトライゲイン出力判定部82aと、このリトライゲイン出力判定部82aの判定結果とリトライ回数Nrとが入力されるリトライ電流指令ゲイン演算部82bとを備えている。
リトライ電流指令ゲイン演算部82bは、リトライゲイン出力判定信号Srgが論理値“1”であるときに、予め設定されたリトライ電流指令基準ゲインGirbにリトライ回数Nrを乗算した値をリトライ電流指令ゲインGir(=Gitb*Nr)として2相制御用各相電流指令値生成部64に出力する。
切換スイッチ91a、91b及び91cの常閉接点には、正常時モータ指令値算出部33の2相/3相変換部33eで算出された各相電流指令値Iaref、Ibref及びIcrefが入力され、他方の常開接点には異常時モータ指令値算出部34から出力される各相電流指令値Iaref、Ibref及びIcrefが入力される。
そして、PI制御部102から出力される指令電圧Va、Vb、VcがFETゲート駆動回路25に供給される。
そして、モータ駆動回路24を構成する各スイッチング素子Qaa,Qab、Qba,Qbb及びQca,QcbのゲートにFETゲート駆動回路25から出力されるPWM(パルス幅変調)信号が供給される。
また、図3の操舵補助電流指令値演算部31が操舵補助電流指令値算出手段に対応し、正常時モータ指令値算出部33が正常時モータ指令値算出手段に対応し、異常時モータ指令値算出部34が異常時モータ指令値算出手段に対応し、指令値選択部35及びモータ電流制御部36がモータ駆動制御手段に対応している。さらに、モータ加速領域判定部72が加速領域判定手段に対応し、リトライ電流指令ゲイン生成部63がリトライ加速手段に対応している。
(動作)
次に、上記実施形態の動作を説明する。
今、モータ駆動回路24を構成する各電界効果トランジスタQaa〜Qcbが正常であると共に、3相ブラシレスモータ12の各相コイルLa〜Lcに断線や地絡が生じていない正常状態であるものとする。この場合には、異常検出回路27で異常状態が検出されることがないため、異常検出回路27は“0”を表す相異常検出信号ASを異常時モータ指令値算出部34及び指令値選択部35に出力する。
このとき、車両が停止しており、運転者がステアリングホイール1を操舵していない状態であるとすると、制御演算装置23の正常時モータ指令値算出部33は、相電流指令値Iaref、Ibref及びIcrefをそれぞれ“0”に算出する。このとき、3相ブラシレスモータ12が停止している場合には、各相コイルLa、Lb及びLcに供給されるモータ電流Ia、Ib及びIcも“0”となり、3相ブラシレスモータ12は停止状態を維持する。
異常時モータ指令値算出部34では、異常検出回路27から入力される相異常検出信号ASが“A1”であるので、誘起電圧算出部60aで、角度情報演算部32から入力される電気角θeをもとに、V相誘起電圧とW相誘起電圧との合成誘起電圧EMFa(θe)を算出する。そして、算出された合成誘起電圧EMFa(θe)が相電流指令値算出部60bに供給され、この相電流指令値算出部60bで前記(4)式の演算を行って基本相電流指令値Im(θe)を算出する。
ここで、モータトルクが一定値から減少している領域がモータトルク低下領域Atdとなり、このモータトルク低下領域Atdとその両側のモータトルクを最大値まで増加可能なモータトルク発生領域Atgとを含めて加速領域Aaが設定される。
このため、補正電流指令ゲイン生成部74では、安定領域補正電流ゲインが補正電流指令ゲインGiaとして2相制御用各相電流指令値生成部64に供給される。
そして、2相制御用各相電流指令値生成部64では、故障相別シフト後電気角θesに基づいて逆誘起電圧特性ゲイン算出部67で基本電流ゲインGifが算出されているのだ、この基本電流ゲインGifに安定領域補正電流ゲインでなる補正電流指令ゲインGiaを乗算してからビット調整を行った値に“0”のリトライ電流指令ゲインGirを加算し、これを電流指令値Im(θe)に乗算するので、安定領域に対応した電流指令値が得られ、これが相電流指令値制限部64fで最大値が制限されるとともに、レイトリミッタ64gで変化率が制限されて電流指令値Imとして各相電流選択演算部64hに供給される。
このとき、電気角θeが0°〜90°であるときには、C相コイルLcからB相コイルLbに向けて電流を流し、電気角θeが90°〜270°であるときにはB相コイルLbからC相コイルLcに向けて電流を流す。さらに、電気角θeが270°〜360°であるときにはC相コイルLcからB相コイルLbに向けて電流を流す。また、A相電流指令値Iarefは“0”に設定される。
すなわち、A相の駆動系統に通電異常が発生している場合には、B相電流指令値とC相電流指令値とが互いに逆符号でその絶対値が等しくなるようにする(正常な2相の電流指令値の和が零となるようにする)。
こうして、回転するステータ合成磁界を発生させてロータを回転させることにより、3相ブラシレスモータ12を2相駆動する。
ここでは切り増し操舵を行っているため、モータトルク方向とモータ回転方向は共に正方向(図11の左→右)であり、モータに係る外部負荷(操舵反力)の方向は負方向(図11の右→左)となる。
電気角θeが加速領域Aaに達していない場合、補正電流指令ゲインGiaが安定領域補正電流ゲイン(<1)に設定されるので、2相制御用各相電流指令値生成部64では、相電流指令値Im(θe)を減少補正した電流指令値Imが生成される。
このように、加速領域Aaに達する前の安定出力角度領域でモータ電流を減少補正することで、この領域ではモータトルクが低減する。これにより、操舵トルクを意図的に上昇させる。
このため、補正電流指令ゲイン生成部74の補正電流指令ゲイン演算部74bで切増補正電流ゲインGii(>1)が選択され、この切増補正電流ゲインGiiが補正電流指令ゲインGiaとして2相制御用各相電流指令値生成部64に出力される。
このとき、リトライ電流指令ゲイン生成部63では、リトライ電流指令ゲインGirが“0”を維持する。
このように、加速領域Aaに達したときにモータ電流を増加補正することで、モータトルクを上昇し3相ブラシレスモータ12を正方向に加速する。この増加補正は電気角θeが加速領域Aa内に存在する間、継続する。
このように、電流上限に到達する前後の安定出力角度領域Atg、すなわちモータトルクを自由に増加減できる角度領域でモータ電流を増加する補正を行う。
このように、3相のうち1相に異常が発生した場合には、残りの2相を使用して3相ブラシレスモータ12を継続駆動することができる。また、このとき、電流制限により一定のモータトルクが得られないモータトルク低下領域Atdを効率良く飛び越えることができる。
このような状態となると、右切り状態であるので、操舵トルクTが正方向に大きくなり、且つ故障相別シフト後電気角θesがリトライ領域電気角θrt(=180°−Δθo)より小さい状態を維持することにより、リトライ領域電気角比較部81fの比較出力Cti(n)が論理値“1”となるとともに、前回の比較出力Cti(n-1)も論理値“1”であるので、一致回路81hから論理値“1”の一致出力がアンド回路81iに供給される。
このとき、トルク低下領域判定部73では、加速領域判定フラグFaが“1”にセットされており、電流指令値Im(θe)が最大値であることから電流指令値比較部73aから出力される比較出力Ctiが論理値“1”となる。また、モータ回転速度ωmが低下して、略零に近づいて、トルク低下領域判定回転速度閾値以下に低下するので、回転速度比較部73bの比較出力Ctvも論理値“1”となる。
このため、補正電流指令ゲイン生成部74では、加速領域フラグFaが“1”にセットされ、第2の切戻フラグFr2が“1”にセットされるので、切戻補正電流ゲインGirvが補正電流指令ゲインGiaとして2相制御用各相電流指令値生成部64に出力される。このときの切戻補正電流ゲインGirvは、図14に示すように、電流指令値Im(θe)が最大値となっているので、“1”より小さく零に近い正値になる。
このため、3相ブラシレスモータ12で発生される操舵補助トルクが略零となるので、操舵トルクTと操舵補助トルクとを合算したトルクに対して外力(操舵反力)の方が大きな値となることにより、外力によって3相ブラシレスモータ12が戻されることにより、電気角θesが図19において矢印Y2で示すように低下する。
このとき、リトライカウント部81では、リトライ領域内電気角継続状態を維持しているので、第2の切戻フラグFr2が切戻状態から切増状態に状態変化したときに、リトライ回数Nrが“0”から“1”にインクリメントされる。
このリトライ加速制御で、モータトルク低下領域Atdを飛び越せれば、その後は、2相制御が継続されることになる。
この加速領域Aaを増加させても、モータトルク低下領域Atdを飛び越せない場合には、最後に安定出力領域で、リトライ電流指令ゲインGirをリトライ回数Nrに応じて増加させ、これを基準電流指令ゲインGifに加算することにより、安定出力領域での電流指令値Imを増加させて、より大きなモータトルクを発生させて、モータトルク低下領域Atdを飛び越す。
なお、上記実施形態においては、切増切戻判定部71の操舵トルク符号判定部71aで符号判定する場合に、操舵トルクセンサ3のセンサ誤差を考慮してヒステリシスを設定するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、電気角が加速領域内にあるとき、予め設定した補正ゲインを乗算することで、電流指令値を減少補正する場合について説明したが、相電流指令値Im(θe)から補正電流指令ゲインやリトライ補正電流指令ゲインに相当する補正量を減算したり、加算したりすることで増加補正または減少補正することもできる。
Claims (6)
- 操舵系に対して操舵補助力を付与する各相コイルをスター結線した3相電動モータと、前記操舵系に伝達される操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、前記各相コイルの通電異常を検出するコイル通電異常検出手段と、該コイル通電異常検出手段で、1相のコイルの通電異常を検出したときに、残りの2相のコイルに対する異常時相電流指令値を算出する異常時モータ指令値算出手段と、前記異常時相電流指令値に基づいて前記3相電動モータを駆動制御するモータ制御手段とを備える電動パワーステアリング装置であって、
前記操舵トルク及び前記3相電動モータで発生する操舵補助トルクの和と外力との釣合い時に、前記異常時相電流指令値を低下させる電流指令値補正手段を備え、
前記電流指令値補正手段は、前記3相電動モータの電気角が、前記異常時モータ指令値算出手段で算出した異常時相電流指令値の符号が反転する最小トルク電気角を跨ぐモータトルク低下領域とその両側のモータトルクを最大値まで増加可能なモータトルク発生領域とで構成される加速領域内にあるか否かを判定する加速領域判定手段と、
前記加速領域判定手段で前記電気角が前記加速領域内にあると判定したときに、前記異常時モータ指令値算出手段で算出した異常時相電流指令値を増加補正することで、前記3相電動モータの回転を操舵方向へ加速するモータ回転加速手段と、
該モータ回転加速手段による前記3相電動モータの回転を操舵方向へ加速したときに、前記電気角が前記最小トルク電気角を跨ぎ前記加速領域の両側で当該最小トルク電気角と隣接する最小トルク電気角間の中間電気角までの範囲に設定されたリトライ領域内にある状態を継続しているか否かを判定するリトライ領域判定手段と、
該リトライ領域判定手段で、前記電気角がリトライ領域内にある状態を継続していると判定した場合に、前記加速領域を増加させて、前記3相電動モータの回転を操舵方向へ再加速するリトライ加速手段とを備えた
ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 前記リトライ加速手段は、前記電気角が加速領域内にあり、操舵トルク及び操舵補助トルクの和と外力との釣合い時に、前記異常時相電流指令値を外力により前記電気角が変化するように低下させ、前記電気角が前記加速領域の境界位置に達したときに、当該異常時相電流指令値を基本電流指令値より増加させて前記3相電動モータの回転を操舵方向へ再加速するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記3相電動モータのモータ回転速度を検出するモータ回転速度検出手段を備え、
前記リトライ加速手段は、前記操舵トルクと前記モータ回転速度とに基づいて操舵方向が切増方向であるか切戻方向であるかを判定して第1の切戻フラグを設定する切増切戻判定部と、前記加速領域判定手段の判定結果、前記異常時相電流指令値、前記切戻フラグ及び前記モータ回転速度に基づいて前記モータトルク低下領域であるか否かを判定し、前記モータトルク低下領域であるときに切戻を指示する第2の切戻フラグを設定するトルク低下領域判定部と、前記加速領域判定手段の判定結果と前記第2の切戻フラグとに基づいて前記異常時相電流指令値を減少させ、外力により前記電気角を変化させる補正電流指令ゲインを生成する補正電流指令ゲイン生成部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。 - 前記リトライ領域判定手段は、前記リトライ加速手段で前記3相電動モータの回転を操舵方向へ再加速した後の前記電気角がリトライ領域内にある状態を継続している場合に、リトライ回数を計数するリトライ計数部を備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記リトライ領域判定手段は、前記電気角及び前記操舵トルクの方向に基づいてリトライ領域を前記操舵方向とは反対側にオフセットさせるように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記リトライ加速手段は、前記リトライ計数部のリトライ回数が閾値を超えたときに、前記加速領域外の前記異常時相電流指令値を当該リトライ回数に応じて高めるように構成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の電動パワーステアリング装置。
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Applications Claiming Priority (1)
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