JP5608998B2 - 保存安定性に優れた核酸増幅検出試薬キット - Google Patents
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Description
これらの試薬の中には周囲温度、圧力及び湿度条件によっては安定でないものがある。そこで従来は、不安定な試薬については予め別々の容器に入れて−20℃以下で保存しておき、核酸増幅検出反応を行う際に、従事者が保存されている各試薬を取り出して、最適な方法にて慎重に反応液を調製していた。このような反応液の調製は、遺伝子工学や分子生物学が専門の研究者にとっては、とりわけ特別な操作ではなかった。
このような場合、複雑な操作なく取り扱える、自動化装置で分注しやすい等、簡便な取り扱いが可能な試薬形態が望まれる。さらに、一般に検査に用いる試薬の場合、凍結保存されている試薬を解凍して使用するよりも液状で保存されている試薬の方が、解凍の手間や時間が省けるため好まれる。
通常、蛍光色素の劣化は起こりうるものと考え、標準物質などを追加して検出し、得られた蛍光値を基準として補正する方法が用いられている。
Proc.Natl.Acad.Sci.USA Vol.88,pp.7276−7280,August,1991
以下の(1)〜(2)の特徴を有する、PCRによる核酸増幅検出反応に用いる核酸増幅検出試薬の保存安定性を向上させる方法。
(1)該試薬が2以上の液状組成物から構成され、該試薬を使用する際に、当該2以上の液状組成物をすべて混合することにより反応液が調製される。
(2)該試薬には、DNAポリメラーゼと、蛍光標識プローブとが、別な液状組成物中に配合されている。
[項2]
蛍光標識プローブを含む試薬組成物に、マグネシウムイオンを含む、項1に記載の核酸増幅検出試薬の保存安定性を向上させる方法。
[項3]
マグネシウムイオン濃度が2mM〜40mMである、項2に記載の核酸増幅検出試薬の保存安定性を向上させる方法。
[項4]
蛍光標識プローブの蛍光色素が、フルオレセインまたはその誘導体、TAMRA、Cy3、Cy5、Cy5.5、ローダミンまたはその誘導体、ROX、Hex、JOE、BODIPY類、Alexa類、BHQ類からなる群より選ばれるいずれかである、項1〜3のいずれかに記載の核酸増幅検出試薬の保存安定性を向上させる方法。
[項5]
蛍光標識プローブが、標的核酸へのハイブリダイゼーションによって消光する蛍光色素によって標識されている、項1〜4のいずれかに記載の核酸増幅検出試薬の保存安定性を向上させる方法。
[項6]
DNAポリメラーゼが、KOD DNAポリメラーゼ(Thermococcus kodakaraensis KOD1由来)またはその変異体である、項1〜5のいずれかに記載の核酸増幅検出試薬の保存安定性を向上させる方法。
[項7]
蛍光標識プローブを含む試薬組成物に、さらにオリゴヌクレオチドプライマーを含む、項1〜6のいずれかに記載の核酸増幅検出試薬の保存安定性を向上させる方法。
[項8]
以下の(1)〜(2)の特徴を有する、PCRによる核酸増幅検出反応に用いるキット。
(1)該キットが2以上の液状組成物から構成され、該キットを使用する際に、当該2以上の液状組成物をすべて混合することにより反応液が調製される。
(2)該キットには、(a)少なくとも蛍光標識プローブ、マグネシウムイオンおよび緩衝剤を含み、pHが6.5以上8.5未満である試薬組成物、と、(b)少なくともDNAポリメラーゼおよび緩衝剤を含む試薬組成物とが、別な液状組成物中に配合されている。
[項9]
(a)におけるマグネシウムイオン濃度が2mM〜40mMである、項8に記載の核酸増幅検出試薬キット。
[項10]
蛍光標識プローブの蛍光色素が、フルオレセインまたはその誘導体、TAMRA、Cy3、Cy5、Cy5.5、ローダミンまたはその誘導体、ROX、Hex、JOE、BODIPY類、Alexa類、BHQ類からなる群より選ばれるいずれかである、項8または9に記載の核酸増幅検出試薬キット。
[項11]
蛍光標識プローブが、標的核酸へのハイブリダイゼーションによって消光する蛍光色素によって標識されている、項8〜10のいずれかに記載の核酸増幅検出試薬キット。
[項12]
DNAポリメラーゼが、KOD DNAポリメラーゼ(Thermococcus kodakaraensis KOD1由来)またはその変異体である、項8〜11のいずれかに記載の核酸増幅検出試薬キット。
[項13]
試薬組成物(a)に、オリゴヌクレオチドプライマーを含む、項8〜12のいずれかに記載の核酸増幅検出試薬キット。
本発明の実施形態の一つは、以下の(1)〜(2)の特徴を有する、PCRによる核酸増幅検出反応に用いる核酸増幅検出試薬の保存安定性を向上させる方法である。
(1)該試薬が2以上の液状組成物から構成され、該試薬を使用する際に、当該2以上の液状組成物をすべて混合することにより反応液が調製される。
(2)該試薬には、DNAポリメラーゼと、蛍光標識プローブとが、別な液状組成物中に配合されている。
例えば、マグネシウムイオンとDNAポリメラーゼを混合して保存するとDNAポリメラーゼの活性が低下することが一般的に知られている。DNAポリメラーゼと反応開始剤となるオリゴヌクレオチドプライマーを混合して保存しても非特異産物ができることで特異的な反応ができなくなることも知られている。また、二価の金属イオンとオリゴヌクレオチドを混合すると、溶液中に微量に存在するDNaseが活性化されてオリゴヌクレオチドが加水分解されやすくなることも知られている。
DNAポリメラーゼは活性を抑えた状態で保存することが安定化につながる。そのためには、DNAポリメラーゼの活性をおさえるための方法を施せばよく、そのような方法としては特に限定されないが、抗DNAポリメラーゼ抗体を用いる方法、アプタマーを用いる方法、BSAを使用する方法を併用することが好ましい。さらにできるだけ低温で保存する方法やDNAポリメラーゼを凍結乾燥する方法なども組み合わせて使用できる。
オリゴヌクレオチドプライマーは加水分解されることによって顕著な性能低下を引き起こす。特に3‘末端が加水分解によって短くなると二本鎖結合能が大きく変化し、配列特異的な結合ができなくなる可能性がある。この加水分解はDNaseが働ことで生じるため、DNaseの混入を防ぐあるいはDNaseの活性をおさえることがオリゴヌクレオチドプライマーの安定化に必要である。
蛍光量については、例えば保存する緩衝液のpHにも左右される。pHを適した状態に保つことも一つの安定化させうる方策である。蛍光色素の種類によってはEDTAなどの金属キレート剤を保存溶液中に含むことで本来持つ蛍光量から大幅に減少するものも存在する。
プローブの配列に関しては、オリゴヌクレオチドプライマーと同様に加水分解されることによって顕著なハイブリダイゼーション能力の低下を引き起こす。この加水分解はDNaseが働ことで生じるため、DNaseの混入を防ぐあるいはDNaseの活性をおさえることがプローブの安定化に必要である。
蛍光色素は一般にオリゴヌクレオチドに標識して、核酸の測定および検出に用いられるものが使用できるが、蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチド(以下、蛍光標識プローブとも示す。)が標的核酸にハイブリダイゼーションしたときに、オリゴヌクレオチドに標識した当該蛍光色素が検出に有利に働くものが好適に用いられる。例えば、フルオレセイン(fluorescein)またはその誘導体類、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate)(FITC)若しくはその誘導体等、Alexa 類、TAMRA 、Cy3、Cy5、ローダミン(rhodamine)6G(R6G)又はその誘導体(例えば、テトラメチルローダミン(teramethylrhodamine)(TMR)、テキサスレッド(TEXAS red)、ボデピー(BODIPY)類(商標名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)、ROX、Hex、JOE、BHQ類からなる群より選ぶことができる。好適なものとしてフルオロセイン、FITC、TAMRA、Cy3、Cy5、テキサスレッドが挙げられる。
DNAポリメラーゼは一般的に核酸増幅反応に使用できるものであればよく、現在知られているDNAポリメラーゼ(単独あるいは組みあわせ)としてのTaq DNAポリメラーゼや,EX−Taq,LA−Taq,Expandシリーズ,Plutinumシリーズ,Tbr,Tfl,Tru,Tth,T1i,Tac,Tne,Tma,Tih、Tfi(以上はPolI型酵素),Pfu,Pfutubo,Pyrobest(登録商標),Pwo,KOD,Bst,Sac,Sso,Poc,Pab,Mth,Pho,ES4,VENT,DEEPVENT(以上はα型酵素)などが挙げられる。
天然型のDNAポリメラーゼのアミノ酸配列を公知の手段により、1もしくは数個が欠失、置換若しくは付加させたもの(変異体)であっても良い。あるいは、上記の酵素(天然型、もしくは変異体)に化学修飾などの手段によりさらに改変を加えたものであっても良い。あるいは、上記の酵素(天然型、もしくは変異体)に化学修飾などの手段によりさらに改変を加えたものであっても良い。
例えば、最も一般的であるTaq DNAポリメラーゼやKOD DNAポリメラーゼを用いることができる。KOD DNAポリメラーゼは、東洋紡績製のもの(製品コードKOD−101など)を容易に入手することができる。
dNTPsは、dATP、dTTP、dCTP、dGTPの混合物であり、核酸増幅反応の基質物質である。4つの化合物をそれぞれ等量ずつ混合することが好ましい。凍結保存しない環境下では、dNTPsはDNAポリメラーゼを含む溶液中に含むことが好ましい。dNTPsの濃度は特に限定されるものではないが、50mM以上500mM以下が好ましい。これらは種々市販されている。
マグネシウムイオンは、通常塩の状態の化合物を利用する。核酸増幅反応に適したマグネシウム塩が好ましい。
本発明において、マグネシウム塩は水性溶媒中にマグネシウムイオンが放出されるような形態でマグネシウムを含有するあらゆる物質を表すものとする。マグネシウム塩には、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムおよび硫酸マグネシウム等が例示されるが、これらに限定されるものではない。特に、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムが好ましい。
最終濃度1mMから8mMとは核酸増幅反応に使用する好適なマグネシウム濃度を示しており、試薬の保存に際しては、最終的に他の試薬混合液と混合するためさらに高い濃度で保存されている。例えば全量50μLの核酸増幅反応系であって、12.5μLのDNAポリメラーゼ含有混合物と12.5μLのマグネシウム含有混合物を加える場合は、最終液量が4倍となるため保存中のマグネシウムイオン濃度は4mMから32mMが好ましい。濃縮倍率は2試薬を混合する場合、2倍から10倍が適した範囲であり、好ましくは2倍から8倍、更に好ましくは3倍から5倍で保存することが好ましい。このような濃縮倍率を考慮した時のマグネシウムイオン濃度は特に限定はしないが2mMから40mMが好ましい。より好ましくは、3mMから40mMである。2mM未満の場合、例えば5倍濃縮では0.4mM未満のマグネシウムイオン濃度となってしまうため、DNAポリメラーゼが活性化されずにPCR増幅が起こらない可能性がある。また、40mMを超えると溶解するマグネシウム塩の濃度が高すぎるため調製が難しい。
緩衝液としては特に限定されるものではないが、トリスやヘペスなどのグッドバッファーおよび、リン酸緩衝液などが用いられるが、具体的には、10〜200mMの各種バッファー(pH7.5〜9(25℃))が例示できる。好ましくはトリス緩衝液である。好ましい緩衝pH範囲は7〜9である。
アミノ酸又はタンパク質としては、グルタミン酸ソーダ、アルブミン、スキムミルク等、糖としてはシュクロース、マルトース等、還元剤としてはグルタチオン、メルカプトエタノール等、多価アルコールとしてはグリセロール、ソルビトールなどが含まれていても良い。
また、界面活性剤などが含まれていても良い。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤がよく、好ましくTritonX−100、Tween20、Nonidet P40などが例示される。界面活性剤は、反応段階、すなわち、ポリメラーゼ反応時に、0.0001〜1%になるように含まれていてもよく、好ましくは0.001〜0.1%がよい。
本発明の実施形態の一つは、以下の(1)〜(2)の特徴を有する、PCRによる核酸増幅検出反応に用いるキットである。
(1)該キットが2以上の液状組成物から構成され、該キットを使用する際に、当該2以上の液状組成物をすべて混合することにより反応液が調製される。
(2)該キットには、(a)少なくとも蛍光標識プローブ、マグネシウムイオンおよび緩衝剤を含み、pHが6.5以上8.5未満である試薬組成物、と、(b)少なくともDNAポリメラーゼおよび緩衝剤を含む試薬組成物とが、別な液状組成物中に配合されている。
胃生検材料より遺伝子をQIAamp(登録商標) DNA micro Kit(Qiagen社製)を用いて抽出した。抽出されたDNAは−20℃で保存した。
1μLの抽出されたDNA溶液を鋳型として用い、PCRを実施した。ここで使用したプライマーペアは、ピロリ菌23SrRNA遺伝子を全長増幅できるプライマーを使用した。いずれもピロリ菌の23SrRNA遺伝子(GenBank accession number U27270)の公知の配列から設計した。
検出に使用するプライマー及び蛍光標識プローブは核酸合成受託会社に合成を委託して入手した。
標識プローブは配列番号1に示す16塩基の配列、プライマーFは配列番号2の25塩基に示す配列、プライマーRは配列番号3の26塩基に示す配列である。
表1には、全量10μLで各試薬を要時調製により調製した反応組成を示す。核酸増幅には、東洋紡績製のKOD−plus−を利用したPCR法を用いた。検出には蛍光標識されたプローブが標的核酸とハイブリダイゼーションした時に消光するQProbe法(Fluorescent quenching−based quantitative detection of specific DNA/RNA using a BODIPY FL−labeled probe or primer, Nucleic Acids Research, 2001, Vol. 29, No.6, e34)を利用した。表1の組成をもとにした反応組成の最適化は同業者であれば容易に行える。プラスミドDNA量は全量10μLの系で約1000コピー含まれるように調製した。PCR増幅時の反応条件および検出条件は表2の通りである。増幅及び蛍光の測定には、ロシュ・ダイアグノスティック製ライトサイクラー(登録商標)を使用した。測定モードは530nmを利用した。以下、特に記載がない場合は全てライトサイクラー(登録商標)での測定とする。融解曲線解析においては標識プローブが標的核酸から解離する時の蛍光量の増加を検出している。
WT(野生型)を含む試料とNC(ネガティブコントロール:水をテンプレートに使用)とを、それぞれ上記条件で増幅・検出し、ライトサイクラーソフトウェアによる解析により、図1と図2の解析結果が得られた。図1の縦軸は蛍光強度を、横軸は温度(℃)を示している。図2の縦軸は蛍光強度の一次導関数の逆符号の値(−dF/dt)で蛍光の変化量を、横軸は温度(℃)を示している。
図1では融解曲線解析における標識プローブの蛍光変化が示されている。WTでは温度を上げていくと標識プローブが標的核酸から解離し、75℃の時の蛍光値は標識プローブが標的核酸から完全に解離した時の蛍光値である。解離蛍光値はNC(水をテンプレートに使用したとき)の40℃における蛍光値を示し、蛍光標識プローブの蛍光量の基準とすることができる。
(試薬の保存)
増幅検出試薬の試薬組成を表1に示す成分量に固定した。増幅検出試薬の主要成分をDNAポリメラーゼ、dNTPs、マグネシウムイオン、プライマーセット、蛍光標識プローブの5つに分類し、各成分を2つの試薬混合液に分けて保存した。表3に示されるように各成分を組み合わせて3通りの試薬混合液セットを調製した。プローブおよびプライマーは実施例1に記載の標識プローブ、プライマーFおよびプライマーRを使用した。各試薬混合液は、1.5mLのスクリュー付チューブに入れて、遮光ラックに整理した。保存方法は、35℃保存の場合は三洋電機製INCUBATOR MIR−153に保存し、設定温度を35℃に設定した。8℃保存の場合は三洋電機製INCUBATOR MIR−553に保存し、設定温度を8℃に設定した。使用時には2つの試薬混合液を混ぜてから使用した。
DNAポリメラーゼ混合溶液2.5μL、プライマー混合溶液2.5μL、プラスミドDNA溶液5μLを混合した反応液10μLを調製した。テンプレート量は5μL中に約1000コピー含まれるように調製し、その他は実施例1の方法に従って実施した。35℃保存の試薬には1週間毎に測定し、10週間まで測定を行った。
ライトサイクラー(商標登録)付属の解析ソフトを利用して図1から解離蛍光値、図2に示される検出ピークの高さから測定値を算出して増幅検出試薬の保存安定性の解析に用いた。解離蛍光値は融解曲線解析の40℃における蛍光値をそのまま用い、蛍光標識プローブの基本となる蛍光値を示しており、解離蛍光値で蛍光標識プローブの劣化が確認できる。増幅検出試薬性能の確認方法は測定値の高さで比較できる。測定値は融解曲線解析の蛍光値を微分したグラフで見られる検出ピークの高さの絶対値の10倍の値を用いている。
35℃保存試薬の保存安定性の解析結果を図3から図6に示す。図3から図6に示されるように試薬成分の組み合わせをAからDにすると13週間目の測定結果でも解離蛍光値が検出できていた。これらの組み合わせによる増幅検出試薬の保存では蛍光標識プローブが13週間目でも蛍光を示していたことから安定性の優れた保存方法であるといえる。AからDに共通した組成は、酵素であるKOD DNAポリメラーゼと蛍光標識プローブを別々の混合液として保存していることである。また、蛍光標識プローブの保存液性がpH7.4であることも蛍光標識プローブを安定して保存できる一つの要因である。
試薬の保存、試薬の測定、データの解析は実施例2に従って実施した。表4に示されるように、5つに分類された増幅検出試薬の主要成分のうち、酵素と蛍光標識プローブを混合して保存している試薬混合液セット4種類を調製した。実施例2と同様に35℃で保存した。
図7から図10に35℃保存の結果を示す。EからHまでの4種類の試薬混合液セットでは、13週間目の解離蛍光値がライトサイクラーの検出感度を下回り、蛍光値は0を示した。また、F、G、Hは解離蛍光値よりも酵素活性の低下が早く、増幅検出試薬としての増幅検出性能が消失している。これに対し、Eでは酵素活性は維持されているが蛍光標識プローブの劣化によりライトサイクラーの検出感度以下の蛍光値となったため、13週間目では増幅検出性能を消失した。この結果から、KODと蛍光標識プローブを混合して保存すると蛍光標識プローブの蛍光の劣化が促進されることがわかった。
試薬の保存、試薬の測定、データの解析は実施例2に従って実施した。表2のCの試薬混合セットおよびHの試薬混合セットを使用した。8℃保存の試薬は1ヶ月ごとに、16ヶ月まで測定を行った。
8℃保存試薬の保存安定性の解析結果を図11または図12に示す。図11から試薬成分の組み合わせをCにすると、16ヶ月目の測定結果でも解離蛍光値は1.2を超えていた。また図12から試薬成分の組み合わせをHにすると16ヶ月目の測定結果で解離蛍光値は1.2以下となっていた。Hの組み合わせでは、増幅検出試薬の性能のうち蛍光標識プローブの蛍光が低下していることを示している。35℃保存の結果と同様にCの組み合わせにより保存した増幅検出試薬は冷蔵で16ヶ月間保存しても、大幅な蛍光値の低下はないことがわかった。さらにCで16ヶ月間保存しても増幅検出試薬の性能の指標となる測定値も維持されていることがわかった。
35℃保存した時の、pH変化における蛍光標識プローブの経時的な変化について検討した。蛍光標識プローブの保存用溶液(10mM Tris−H2SO4 pH6.5〜9.5)を調製した。さらに、各保存用溶液に配列番号1に示される蛍光標識プローブ1μMとなるように加えて蛍光標識プローブ溶液とした。各蛍光標識プローブ溶液は1.5mLのスクリュー付チューブに500μLを入れて、遮光ラック内に静置した。保存方法は、三洋電機製INCUBATOR MIR−153に保存し、設定温度を35℃に設定した。
各蛍光標識プローブ溶液を1×KOD−plus−PCR bufferで5倍希釈した溶液を調製した。20μLをライトサイクラー(商標登録)専用ガラスキャピラリーに充填し、ライトサイクラー(商標登録)のInstrumentのReal Time Fluorimeterモードにて測定温度を30℃に設定して530nmの蛍光の測定を実施した。35℃保存の各蛍光標識プローブ溶液は1週間毎に、6週間まで測定を行った。
ライトサイクラー(商標登録)における蛍光測定結果をpH毎にまとめてグラフを作成した。結果を図13から図19に示す。0週間目と6週間目の蛍光値の差で比較した時に、pH8.5以上の溶液中で保存した場合2.0以上であり、pH8.5未満で保存した時は2.0未満であった。さらに、pH7.0およびpH7.5では0週間目と6週間目の蛍光値の差が1.5未満となっておりより蛍光色素の劣化が抑えられていることが確認された。
Claims (13)
- 以下の(1)〜(2)の特徴を有する、PCRによる核酸増幅検出反応に用いる核酸増幅検出試薬における蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブの安定化方法。
(1)該試薬が2種類の液状組成物から構成され、該試薬を使用する際に、当該2種類の液状組成物をすべて混合することにより反応液が調製される。
(2)該試薬には、DNAポリメラーゼと、蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブとが、別な液状組成物中に配合されている。 - 蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブを含む試薬組成物に、マグネシウムイオンを含む、請求項1に記載の安定化方法。
- マグネシウムイオン濃度が2mM〜40mMである、請求項2に記載の安定化方法。
- 蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブの蛍光色素が、フルオレセインまたはその誘導体、TAMRA、Cy3、Cy5、Cy5.5、ローダミンまたはその誘導体、ROX、Hex、JOE、BODIPY類、Alexa類、BHQ類からなる群より選ばれるいずれかである、請求項1〜3のいずれかに記載の安定化方法。
- 蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブが、標的核酸へのハイブリダイゼーションによって消光する蛍光色素によって標識されている、請求項1〜4のいずれかに記載の安定化方法。
- DNAポリメラーゼが、KOD DNAポリメラーゼ(Thermococcus kodakaraensis KOD1由来)またはその変異体である、請求項1〜5のいずれかに記載の安定化方法。
- 蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブを含む試薬組成物に、さらにオリゴヌクレオチドプライマーを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の安定化方法。
- 以下の(1)〜(2)の特徴を有する、PCRによる核酸増幅検出反応に用いるキット。
(1)該キットが2種類の液状組成物から構成され、該キットを使用する際に、当該2種類の液状組成物をすべて混合することにより反応液が調製される。
(2)該キットには、(a)少なくとも蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブ、マグネシウムイオンおよび緩衝剤を含み、pHが6.5以上8.5未満である試薬組成物、と、(b)少なくともDNAポリメラーゼおよび緩衝剤を含む試薬組成物とが、別な液状組成物中に配合されている。 - (a)におけるマグネシウムイオン濃度が2mM〜40mMである、請求項8に記載の核酸増幅検出試薬キット。
- 蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブの蛍光色素が、フルオレセインまたはその誘導体、TAMRA、Cy3、Cy5、Cy5.5、ローダミンまたはその誘導体、ROX、Hex、JOE、BODIPY類、Alexa類、BHQ類からなる群より選ばれるいずれかである、請求項8または9に記載の核酸増幅検出試薬キット。
- 蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブが、標的核酸へのハイブリダイゼーションによって消光する蛍光色素によって標識されている、請求項8〜10のいずれかに記載の核酸増幅検出試薬キット。
- DNAポリメラーゼが、KOD DNAポリメラーゼ(Thermococcus kodakaraensis KOD1由来)またはその変異体である、請求項8〜11のいずれかに記載の核酸増幅検出試薬キット。
- 試薬組成物(a)に、オリゴヌクレオチドプライマーを含む、請求項8〜12のいずれかに記載の核酸増幅検出試薬キット。
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