JP5607956B2 - 摩擦圧接に適した機械構造用鋼材および摩擦圧接部品 - Google Patents
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Description
まず、本発明鋼材の化学成分組成の限定理由について説明する。本発明機械構造用の低炭素鋼材(肌焼き鋼)の化学成分組成は、前記した自動車のエンジン部品などの機械構造部品に要求される強度や靭性特性、これに加えた衝撃特性、曲げ疲労特性、面圧疲労特性などの特性向上のためや、これらの特性向上のための前記本発明組織とするための前提条件となる。
Cは、機械構造用部品としての必要強度を確保するための基本元素である。C含有量が少なすぎると、本発明が対象とする機械構造用部品に要求される強度を確保できない。しかし、Cを過剰に含有させると、延性を劣化させ、また鋼材が脆化し、衝撃特性が劣化する。このため、C含有量は0.08〜0.61%の範囲とし、下限値は好ましくは0.10%、より好ましくは0.13%とする。また、上限値は好ましくは0.58%、より好ましくは0.53%とする。
Siは溶製中の鋼の脱酸作用に寄与する。また、固溶強化により母材強度を高める作用を有する。Si含有量が少なすぎると、脱酸が不十分となり、溶製時にガス欠陥が発生しやすくなる。また、本発明が対象とする機械構造用部品に要求される強度も確保できない。しかし、Siを過剰に含有させると、変形抵抗の増大や変形能の低下を生じさせる。この傾向はSi含有量が0.5%を超えると顕著に見られはじめる。このため、Si含有量は0.08〜0.5%の範囲とし、下限値は好ましくは0.10%、より好ましくは0.15%とする。また、上限値は好ましくは0.5%、より好ましくは0.4%とする。
Mnは、溶製中の鋼の脱酸、脱硫元素として有効であり、また、鋼材への熱間加工時の加工性の劣化を抑制する効果を有する。更に、Sと結合することで鋼材の変形能を向上させることにも有効である。Mn含有量が少なすぎると、これらの効果が得られず、変形能が劣化し、割れが生じやすくなる。一方で、Mnを過剰に含有させると、固溶強化による変形抵抗の増加と変形能の低下をもたらす。また、Pの粒界への偏析を助長し、粒界強度の低下、疲労強度の低下を生じさせる。このため、Mn含有量は0.4〜1.5%の範囲とし、下限値は好ましくは0.45%、より好ましくは0.5%とする。また、上限値は好ましくは1.2%、より好ましくは1.0%とする。
Pは不可避的に混入し、不純物として含有する元素であり、フェライト粒界に偏析し、変形能を劣化させる。また、Pはフェライトを固溶強化させ、変形抵抗を増大させる。したがって、変形能の観点からPは極力低減することが望ましいが、極端な低減は製鋼コストの増加を招く。したがって、P含有量は0.03%以下の低いほど良いが、0%とすることは製造上困難であるので、0.03%以下(但し0%を含まない)と規定する。上限値は好ましくは0.025%、より好ましくは0.02%とする。
Sは被削性の向上効果があり、S含有量が少ないと被削性を劣化させる。ただ、Sは、Feと結合すると、FeSとして粒界上に膜状に析出するため、変形能を劣化させる。このため、Sは全量をMnと結合させ、MnSとして無害に析出させる必要がある。ただし、このMnSの析出量が増えると、やはり変形能が劣化する。したがって、S含有量は、変形能と被削性のバランスを考慮した、0.005〜0.1%の範囲とし、下限値は好ましくは0.007%、より好ましくは0.01%とし、上限値は好ましくは0.08%、より好ましくは0.06%とする。
Crは、鋼材の焼入れ性を高め、浸炭、窒化、浸炭窒化などの表面硬化処理による硬化層深さや、必要な母材硬さを与えることによって、歯車などの機械構造用部品としての静的強度および疲労強度を確保する上で重要な元素である。Cr含有量が少なすぎるとこうした効果を発揮できない一方で、Cr含有量が過剰になっても、旧オーステナイト粒界に炭化物として偏析するため、疲労強度、衝撃強度低下の原因となる。したがって、Cr含有量は0.4〜2%の範囲とし、下限値は好ましくは0.5%、より好ましくは0.6%とし、上限値は好ましくは1.8%、より好ましくは1.5%とする。
Alは溶製中の鋼の脱酸元素として有効である。Al含有量が少なすぎると、溶製中の脱酸が不十分となり、ガス欠陥が生じやすくなるので、割れが生じやすくなる。一方、Al含有量が過剰になっても、酸化アルミ系の酸化物などの非金属介在物が生成し、冷間加工性や被削性を劣化させる。したがって、Al含有量は0.005〜0.1%の範囲とし、下限値は好ましくは0.008%、より好ましくは0.01%とし、上限値は好ましくは0.08%、より好ましくは0.06%とする。
Nは、摩擦圧接中に動的ひずみ時効を生じ、MnSの分解させるために必要な元素である。ただし、固溶状態で存在すると、熱間延性の劣化、動的ひずみ時効による冷間加工性や被削性の低下を招くため、予めAlなどと結合させて、AlNとして析出させておく必要がある。したがって、N含有量は0.02%以下(但し0%を含まない)の範囲とするが、Nが0.006%以下となると、冷間加工性や被削性は改善できるものの、MnSによる接合部、および熱影響部の強度劣化を抑制できなくなる可能性があるので、下限は、好ましくは0.006%以上、より好ましくは0.0065%以上、更に好ましくは0.0070%以上含有させる。上限値は、好ましくは0.018%、より好ましくは0.015%とする(いずれも0%を含まない)。
Tiは、炭化物、窒化物を形成して、特にNを固定し、固溶Nによる変形能の劣化を防止し、オーステナイト粒の微細化、整粒化に寄与する。また、本発明においては、固溶Tiが残存できるだけのTiを含有させる必要がある。この固溶Tiは、前記した通り、摩擦圧接中にTiCを形成する。このTiCはオーステナイト粒を微細化、整粒化させると共に、析出強化に寄与する。そのため、摩擦圧接後の、熱影響部における強度の低下を抑制することができる。
Nb、V、Mo、Cu、Niは、前記特許文献5でも同効元素として記載している通り、いずれも、靱性を損なうことなく、素材としての鋼材や摩擦圧接後の複合鋼材の強度を向上させるのに有効である。
Bは、鋼材の焼入れ性を向上させることに加えて、結晶粒界強化によって衝撃強度を高める作用を有する。B含有量が不足すると、これらの効果が得られず、一方で、B含有量が過剰になると、逆に粒界強度が低下し始めるので、冷間および熱間加工性が劣化する。したがって、B含有量は0.01%以下(但し0%を含まない)の範囲とし、下限値は好ましくは0.0005%、より好ましくは0.008%とし、上限値は好ましくは0.008%、より好ましくは0.005%とする。
Moは、鋼材の焼入れ性を確保して、不完全焼入れ組織の生成を抑制し、強度を向上させるのに有効な元素である。そこで、必要に応じて、Mo:1%以下(但し0%を含まない)を添加する。一方、Moの含有量が過剰になると、母材の硬度が必要以上に硬くなって靭性、衝撃特性が劣化するので、1%以下に限って、好ましくは0.8%以下、より好ましくは0.5%以下添加する。なお、Moによる前記効果を有効に発揮させるためには、0.06%以上の添加が好ましく、より好ましくは0.08%以上添加する。
Cu、Niはいずれも鋼材を固溶強化させ、母材や接合部分の強度を向上させるのに有効である。そこで、必要に応じて、Cu:1%以下(但し0%を含まない)、Ni:1%以下(但し0%を含まない)を添加する。一方、Cu、Niの含有量が過剰になると熱間延性が劣化するので、各々1%以下に限って、好ましくは各々0.8%以下、より好ましくは各々0.6%以下添加する。なお、Cu、Niによる前記効果を有効に発揮させるためには、0.2%以上の添加が好ましく、より好ましくは各々0.3%以上添加する。
Ca、REM、Li、Mgは、共通して、MnS等の硫化化合物系介在物を球状化させ、鋼材の変形能を高めると共に、冷間加工性や被削性向上に寄与する元素である。そこで、必要に応じて、Ca:0.02%以下(但し0%を含まない)、REM:0.02%以下(但し0%を含まない)、Li:0.005%以下(但し0%を含まない)、Mg:0.005%以下(但し0%を含まない)の1種又は2種以上を添加する。
本発明では、摩擦圧接の前後で鋼中のNの存在形態を変化させ、摩擦圧接後の接合強度の向上と、冷間加工性や被削性の向上という、相矛盾する技術課題を解決する。すなわち、摩擦圧接の前に、素材低炭素鋼材の鋼中のNの多くを化合物Nとして存在させるとともに、固溶Nとしての存在量を規制する。これによって、素材としての低炭素鋼材や摩擦圧接されて複合鋼としての低炭素鋼材の冷間加工性や被削性を向上させる。
本発明では、前記した通り、摩擦圧接の前の低炭素鋼材における化合物N(化合物窒素)量を増加させる。素材低炭素鋼材の化合物N量が少なすぎれば、摩擦圧接後の低炭素鋼材における熱影響部の鋼中の化合物Nの分解により生成する、固溶N量も少なくなる。この結果、固溶Nによる動的ひずみ時効によって、前記熱影響部のフェライトあるいはオーステナイト(セメンタイト)を固溶強化し、前記熱影響部の過度の強度低下や、接合部分の過度の強度増加を抑制する効果も弱まる。この結果、摩擦圧接後の接合強度を向上させることができなくなる。
前記化合物N量の測定は、アンモニア蒸留分離インドフェノール青吸光光度法により行う。すなわち、鋼供試材から切り出したサンプル約0.5を、10%AA系電解液に定電流電解を行って溶解させ、生成する不溶解残渣(窒化化合物)を穴サイズが0.1μmのポリカーボネート製のフィルタでろ過する。得られた不溶解残渣を、硫酸、硫酸カリウムおよび純銅製チップ中で加熱して分解し、分解物をろ液に合わせる。この溶液を、水酸化ナトリウムでアルカリ性にした後、水蒸気蒸留を行い、留出したアンモニアを希硫酸に吸収させる。更に、フェノール、次亜塩素酸ナトリウムおよびペンタシアノニトロシル鉄(III )酸ナトリウムを加えて青色錯体を生成させ、吸光光度計を用いて吸光度を測定して、前記化合物量を求める。因みに、前記10%AA系電解液は、10%アセトン、10%塩化テトラメチルアンモニウム、残部メタノールからなる非水溶媒系の電解液であり、鋼表面に不動態皮膜を生成させない溶液である。
前記化合物Nに対して、本発明では、鋼中の固溶N量を十分に低減することで、素材としての低炭素鋼材や摩擦圧接されて複合鋼としての低炭素鋼材の冷間加工性や被削性を向上させる。このため、鋼中の固溶N量は0.0015%以下(但し0%を含む)に規制する。鋼中の固溶N量が0.0015%を超えた場合、低炭素鋼材の冷間加工性や被削性を向上できず、接合強度向上との兼備ができない。
本発明では、低炭素鋼材の被削性の向上のために、一定の大きなサイズの伸長したMnSを存在させる。すなわち、低炭素鋼材の鋼中に、最大長さが2μm以上のMnSを1mm2 当たり100〜4000個存在させ、かつ、これらのMnSの平均アスペクト比を2以上とする。ここで、アスペクト比とは、不定形のMnS粒子における、最大長さ(最も長い軸あるいは最も長い辺の軸長さ)と、最小長さ(最も短い軸あるいは最も短い辺の軸の長さ)との比、最大長さ/最小長さ、である。そして、アスペクト比が大きいほど、MnSは、アスペクト比が1の等軸ではなく、伸張した(偏平あるいは細長い)形状となる。
このように、素材(摩擦圧接前の)低炭素鋼材では伸長した形状のMnSを存在させるが、摩擦圧接部品では、前記熱影響部の強度劣化へ影響(寄与)するMnSを逆に規制することが、また本発明の特徴でもある。
ここで、改めてNやMnSの存在形態と特性との関係を説明する。本発明者らが、各種成分を調整した鋼材を用いて摩擦圧接実験を行った結果、摩擦圧接後の接合部付近(接合部から1mm幅の範囲)の固溶N量が高い鋼材は、接合部および熱影響部の強度(靭性)が十分確保されることが明らかとなった。
本発明鋼材の組織は、摩擦圧接に適した組織とするために、また、摩擦接合部品としての特性を満たすために、フェライト粒とパーライト粒との混相からなるものとする。因みに、摩擦圧接による接合部の組織は、急速加熱と急速冷却によって、一部がベイナイトとなった、マルテンサイト相で構成される。このようなベイナイトは、前記マルテンサイトと比較して硬さが低いため、接合部の強度増加を抑制することができ、また、衝撃特性、疲労特性を向上させることができる。
なお、機械構造用低炭素鋼材自体は、フェライト粒とパーライト粒との混相組織も含めて、通常の前記自動車部品用の機械構造用鋼材の製造工程で製造できる。即ち、鋳造されたインゴット(鋳塊)をビレット(鋼片)に熱間鍛造後、熱間圧延あるいは熱間鍛造によって、線材や棒材(丸棒、角棒)などの鋼材に加工される。
摩擦圧接自体は常法で良く、公知の条件範囲で良いが、前記した通り、素材低炭素鋼材や、複合鋼化する相手鋼材の組成に応じて、摩擦圧接中に化合物Nを分解して、固溶N量を増加させられるような摩擦熱(摩擦熱量)が得られるような条件にすることが好ましい。この点、素材低炭素鋼材の組成に応じて、摩擦圧力(MPa)、アップセット圧力(接合部への丸棒両端部からの加圧力、MPa)、摩擦時間(sec)、アップセット時間(接合部への加圧時間、sec)、回転数(rpm)などの主要な条件の最適値を、公知の条件範囲から選択する。
本発明が対象とする摩擦圧接による複合鋼材は、市販の摩擦圧接機により摩擦圧接が可能であれば、目的とする前記機械構造部品に応じて、本発明の低炭素鋼材に対して、種々の鋼種の相手鋼材が選択できる。また、本発明の低炭素鋼材形状や複合鋼材形状も、目的とする前記機械構造部品に応じて種々の形状が選択できる。例えば、本発明の低炭素鋼材同士を摩擦圧接しても良く、また、相手材をS45CやSCr420Hなどの機械構造用炭素鋼、合金鋼、V添加鋼、B添加鋼などとして、切削性や強度などの種々の特性を基準に選択して組み合わせても良い。また、形状も、摩擦圧接する鋼材同士の形状が異なっていても、同じあるいは類似であっても勿論良く、棒材同士の組み合わせ、頭部(円形材、角形材、傘状材、リング状材など)と軸となる棒材との組み合わせなど、自由に複合材形状が選択できる。
具体的には、本発明の鋼材組織を得るために、以下の製造工程を実施した。
溶解・鋳造:供試鋼150kgを真空誘導炉で溶解し、上面:φ245mm×下面:φ210mm×長さ:480mmのインゴットに鋳造した。
ビレット鍛造:前記インゴットを1200℃に加熱して、ビレット(155mm角)に熱間鍛造し、冷却した。
切断、溶接:この鍛造ビレットの端部を切断し、ダミービレット(155mm角×9〜10m長さ)を溶接した。
熱間圧延:このダミービレット溶接後のビレットを950〜1250℃の範囲で加熱後、750〜1050℃の範囲でΦ80mmの丸棒に熱間圧延し、圧延終了後、0.5〜2.0℃/sの冷却速度範囲で冷却した。
このうち、比較例である1C-5、1C-6、1C-9、1D-5の低炭素鋼材は、ビレット加熱温度、熱間圧延の温度、あるいは圧延終了後の冷却速度を、表5に示す通り、上記各好ましい条件から外して製造した。
熱間鍛造:前記鍛造ビレットを1200℃の範囲で加熱後、900℃でΦ80mmの丸棒に熱間鍛造し、鍛造終了後、1.0℃/sの冷却速度範囲で冷却した。
前記φ80の各丸棒(低炭素鋼材)は、組織観察の結果、発明例と1D-5以外の比較例のいずれも、フェライトとパーライトのみの2相が混在する混相であることを確認した。一方、圧延後の冷却速度が好ましい条件よりも速い1D-5は一部ベイナイトが生成していた。組織観察は、前記各丸棒を長手方向の中心で切断し、切断面(長手方向に対して90°方向の径方向断面)を樹脂に埋め込み、エメリー紙、ダイヤモンドバフで試料表面を鏡面研磨後、表面をナイタールでエッチングした。これを光学顕微鏡を用い、D/4位置を倍率400倍で観察した。
前記φ80の各丸棒サンプルを圧延あるいは鍛造方向中心で切断し、樹脂に埋め込み、エメリー紙、ダイヤモンドバフで試料表面を鏡面研磨した。この研磨試料表面をナイタールでエッチング後、光学顕微鏡を用い、D/4 位置を倍率400 倍で観察し、5箇所写真撮影した。そして、最大長さが2μm 以上のMnS(硫化物系介在物)の個数を数えて5箇所の平均値を求め、このMnSの平均個数とした。また、これら最大長さが2μm 以上のMnSのアスペクト比を各々測定し、その平均値を、その鋼材におけるMnSのアスペクト比とした。なお、前記光学顕微鏡で観察される介在物のMnSか否かの確認、同定はX 線分光装置(EDX) により識別した。
被削性は、前記φ80の各丸棒の旋削試験によって評価した。試験機として、NC旋盤を用い、被削性評価用試験片(φ80×350mmL)を旋盤加工した。この時用いた工具の逃げ面における工具摩耗量(Vb)の経時変化を測定し、以下の条件で3000m 削った後のVbを測定した。切削試験条件は以下のとおりである。
工具:TiAlN コーティングチップ
切削速度:200m/minで、周速一定
切削油:無し(乾式)
切り込み量:1.5mm
送り量:0.25mm/rev
そして、3000m 切削後のVb摩耗量が60μm 以下の鋼材を、被削性に優れるとして合格判定した。
冷鍛性は、前記φ80の各丸棒の端面拘束圧縮試験によって評価した。試験機として、1600トンプレスを用い、冷鍛性評価用試験片(φ10×15mmL )を圧縮加工した。試験片は、圧延材のD/4 位置(D:直径)から切り出した。室温、ひずみ速度10/sで80%の圧縮加工を行った。圧縮後の試験片表面を倍率20倍の実体顕微鏡で観察し、割れの有無を確認した。割れのない鋼材を冷鍛性に優れるとして、合格判定した。
前記φ80の各丸棒の圧延あるいは鍛造方向に沿って、D/4位置からφ20mm×100mmLの棒材(試験片)を切出した。自動摩擦圧接機として日東制機(株)製の製品名FF−4511−Cを用い、ブレーキ法によって摩擦圧接した。即ち、前記切出した棒材同士(供試材同士の摩擦圧接鋼材)、および前記切出した棒材の相手材をS45Cの鋼材として(S45Cとの摩擦圧接鋼材)として、各々長手方向に端部同士を突き合わせた丸棒複合鋼材(鋼部品)として、各々摩擦圧接した。
摩擦圧力:100MPa
アップセット圧力(接合部への丸棒両端部からの加圧力):180MPa、
摩擦時間:10sec、
アップセット時間(接合部への加圧時間):10sec、
回転数:1600rpm、
全寄りしろ:8〜15mm(当初の丸棒長さからの縮み量)
前記摩擦圧接によって形成された接合部から1mm幅の範囲の前記低炭素鋼材側の熱影響部の鋼中における、アスペクト比が2以下で、且つ、最大長さが1μm以下のMnSの個数を測定した。前記1mm幅の範囲内の前記低炭素鋼材側の熱影響部を任意の5箇所切断して、前記低炭素鋼材と同じ条件で処理して、光学顕微鏡を用い、D/4 位置を倍率400 倍で観察し、写真撮影した。そして、アスペクト比が2以下で、且つ、最大長さが1μm以下のMnSの個数を数えて5箇所の平均値を求めた。なお、前記光学顕微鏡で観察される介在物のMnSか否かの確認、同定はX 線分光装置(EDX) により識別した。
Φ20mm×約200mmLの前記供試材同士の摩擦圧接鋼材およびS45Cとの摩擦圧接鋼材(丸棒複合鋼材)の中央位置から、接合部分がノッチ底となるように、1辺が10mmの正方形断面×55mmLのシャルピー試験片を作製した。なお、ノッチ形状は、R10(mm)とした。ノッチ導入面以外の3面にCuめっきを施した(TP加工)。そして、この作製試験片を930℃浸炭−油焼入れ(浸炭処理)した後、170℃で焼戻し処理を施した。
Φ20mm×約200mmLの前記供試材同士の摩擦圧接鋼材およびS45Cとの摩擦圧接鋼材(丸棒複合鋼材)の中央位置から、接合部分がノッチ底となるように、1辺が13mmの正方形断面×100mmLの4点曲げ疲労試験片を作製した。なお、ノッチ形状は、R1.5(mm)とした。ノッチ導入面以外の3面にCuめっきを施した(TP加工)。そして、この作製試験片を930℃浸炭−油焼入れ(浸炭処理)した後、170℃で焼戻し処理を施した。
次いで、4点曲げ疲労試験機にて、前記試験片の疲労特性評価を行った。試験条件は、周波数20Hzで荷重4000N(応力609MPa)〜14000(応力2132MPa)の間で荷重を変化させた11水準で行い、2万回寿命に相当する応力(MPa)を求め、これを疲労強度の指標とした。本実施例では、疲労限応力が1000MPa以上となる試験片(複合鋼材)を合格とした。表9〜表12に記載した2万回寿命は、全て、この疲労限応力(単位:MPa)を示す。
鋼種1C-5はビレット加熱温度が高すぎる。
鋼種1C-6は圧延温度が高すぎる。
鋼種1C-9は圧延温度が低すぎる。
鋼種1D-5は圧延終了後の冷却速度が速すぎる。
鋼種2K、2LはC含有量が上下限を各々外れている。
鋼種2M、2NはSi含有量が上下限を各々外れている。
鋼種2O、2PはMn含有量が上下限を各々外れている。
鋼種2QはP含有量が上限を外れている。
鋼種2R、2SはS含有量が上限を外れている。
鋼種2T、2UはCr含有量が上下限を各々外れている。
鋼種2V、2WはAl含有量が上下限を各々外れている。
鋼種2Xは化合物N含有量が下限を外れている。
鋼種2Yは全N含有量と固溶N量が上限を外れている。
鋼種2ZはP含有量が上限を外れている。
Claims (6)
- 質量%で、C:0.08〜0.61%、Si:0.08〜0.5%、Mn:0.4〜1.5%、P:0.03%以下(但し0%を含まない)、S:0.005〜0.1%、Cr:0.4〜2%、Al:0.005〜0.1%、N:0.02%以下(但し0%を含まない)を各々含み、残部Feおよび不可避的不純物からなるとともに、鋼中の化合物Nの含有量が0.006〜0.02%で、且つ、固溶N量が0.0015%以下(但し0%を含む)であり、最大長さが2μm以上のMnSが鋼中に1mm2 当たり100〜4000個存在し、これらMnSの平均アスペクト比が2以上であることを特徴とする摩擦圧接に適した機械構造用鋼材。
- 前記機械構造用鋼が、更に、質量%で、Ti:0.2%以下(但し0%を含まない)、Nb:0.2%以下(但し0%を含まない)、V:0.2%以下(但し0%を含まない)、B:0.01%以下(但し0%を含まない)、Mo:1%以下(但し0%を含まない)、Cu:1%以下(但し0%を含まない)、Ni:1%以下(但し0%を含まない)の1種又は2種以上を含有する請求項1に記載の摩擦圧接に適した機械構造用鋼材。
- 前記機械構造用鋼が、更に、質量%で、Ca:0.02%以下(但し0%を含まない)、REM:0.02%以下(但し0%を含まない)、Li:0.005%以下(但し0%を含まない)、Mg:0.005%以下(但し0%を含まない)の1種又は2種以上を含有する請求項1または2に記載の摩擦圧接に適した機械構造用鋼材。
- 質量%で、C:0.08〜0.61%、Si:0.08〜0.5%、Mn:0.4〜1.5%、P:0.03%以下(但し0%を含まない)、S:0.005〜0.1%、Cr:0.4〜2%、Al:0.005〜0.1%、N:0.02%以下(但し0%を含まない)を各々含み、残部Feおよび不可避的不純物からなるとともに、鋼中の化合物Nの含有量が0.006〜0.02%で、且つ、固溶N量が0.0015%以下(但し0%を含む)であり、最大長さが2μm以上のMnSが鋼中に1mm2 当たり100〜4000個存在し、これらMnSの平均アスペクト比が2以上である機械構造用鋼材と、他の炭素鋼材あるいは合金鋼材とが、摩擦圧接によって接合されて所望の形状の複合鋼とされ、更に、表面硬化処理および焼戻し処理が施されてなる摩擦圧接部品であって、前記摩擦圧接によって形成された接合部から1mm幅の範囲の前記機械構造用鋼材側の熱影響部の鋼中における、アスペクト比が2以下で、且つ、最大長さが1μm以下のMnSを、1mm2 当たり25個以下(但し0個を含む)に規制したことを特徴とする、衝撃特性、曲げ疲労特性に優れた摩擦圧接部品。
- 前記機械構造用鋼が、更に、質量%で、Ti:0.2%以下(但し0%を含まない)、Nb:0.2%以下(但し0%を含まない)、V:0.2%以下(但し0%を含まない)、B:0.01%以下(但し0%を含まない)、Mo:1%以下(但し0%を含まない)、Cu:1%以下(但し0%を含まない)、Ni:1%以下(但し0%を含まない)の1種又は2種以上を含有する請求項4に記載の衝撃特性、曲げ疲労特性に優れた摩擦圧接部品。
- 前記機械構造用鋼が、更に、質量%で、Ca:0.02%以下(但し0%を含まない)、REM:0.02%以下(但し0%を含まない)、Li:0.005%以下(但し0%を含まない)、Mg:0.005%以下(但し0%を含まない)の1種又は2種以上を含有する請求項4または5に記載の衝撃特性、曲げ疲労特性に優れた摩擦圧接部品。
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