JP5606475B2 - 液圧回転機および液圧回転機の製造方法 - Google Patents

液圧回転機および液圧回転機の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5606475B2
JP5606475B2 JP2012052352A JP2012052352A JP5606475B2 JP 5606475 B2 JP5606475 B2 JP 5606475B2 JP 2012052352 A JP2012052352 A JP 2012052352A JP 2012052352 A JP2012052352 A JP 2012052352A JP 5606475 B2 JP5606475 B2 JP 5606475B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
rotating machine
casing
compound layer
nitrogen compound
hydraulic rotating
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2012052352A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2013185520A (ja
Inventor
修一 小林
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Construction Machinery Co Ltd
Original Assignee
Hitachi Construction Machinery Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Construction Machinery Co Ltd filed Critical Hitachi Construction Machinery Co Ltd
Priority to JP2012052352A priority Critical patent/JP5606475B2/ja
Priority to CN201310062685.8A priority patent/CN103306929B/zh
Publication of JP2013185520A publication Critical patent/JP2013185520A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5606475B2 publication Critical patent/JP5606475B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Reciprocating Pumps (AREA)
  • Details Of Reciprocating Pumps (AREA)
  • Hydraulic Motors (AREA)

Description

本発明は、油圧ポンプや油圧モータなどの液圧回転機とその製造方法に関し、より詳しくは液圧回転機を構成するシリンダブロックにおけるシリンダボアとピストンとの摺動部分に関する液圧回転機とその製造方法に関する。
油圧ポンプや油圧モータに代表される油圧駆動機器は、多くの摺動部品から構成されている。それらの摺動面は、高い摺動面圧による潤滑油膜切れ、制御油圧の変動による摺接状態の不安定化などの影響により、摺動面同士の焼付きや局部的な異常摩耗などの発生リスクを有している。そのため、これら摺動部品のほとんどは鉄鋼材によって作製されている。
特に、油圧ポンプ、油圧モータ等の油圧駆動機器の代表的な構成部品であるシリンダブロックのシリンダボアの摺動面は、摺動相手であるピストンとの片当たりによる摺動によって摩耗や焼付き現象が特に発生しやすく、それらの改善が強く望まれている。
特許文献1では、シリンダボアの摺動面におけるピストンの片当たりにより生じる高面圧摺接部位での摩耗を防止するため、切削加工にて荒加工形成されたシリンダブロックおよびその摺動面であるシリンダボアに対し、その摺動面硬度を上げるために窒化系熱処理を施し、更にピストン部品とのμmオーダーの嵌合精度を実現するために、窒化系熱処理にて形成される窒素化合物層を仕上げ研削工程にて除去して仕上げている。
また、シリンダボアの摺動面上に、摺動性焼結銅合金ライナーを設け、焼付きによる両摺動面の固着を回避する方法(例えば特許文献2参照)や、切削加工やレーザ加工によって溝やディンプルなどの凹形状を形成して油溜りとして作用させることで油膜切れを防止する方法(例えば特許文献3参照)などが知られている。
特開平6−159230号公報 特開平10−196552号公報 特開2010−196612号公報
しかし、特許文献1では、シリンダボアの摺動面が平滑な面のため、ピストンとの高面圧接触点において、シリンダボアとピストンとの間で潤滑油膜がせん断されるため、シリンダボアとピストンが固体接触することによる摩耗や焼付き現象が発生するとの問題がある。
また、特許文献2では、銅合金を焼結するための銅合金成分と焼結工程における冷却温度管理とを厳密に管理する必要があるため、製造工程が複雑になるうえ、銅合金材が高価なため、大幅なコスト高になってしまうという問題がある。
また、特許文献3では、シリンダブロックのシリンダボアのような形状に対して凹形状加工を行うためには、ワークの位置出しと加工工具の加工軌跡が複雑になるため、高価な多軸加工設備が必要となったり、加工時間が長くなったりするという問題がある。さらに、凹形状が摺動によって摩滅してしまった場合、平滑研削面の場合と同様に、油膜切れによる焼付きが発生してしまう。
本発明は、シリンダボアとピストンとの摺動面の耐摩耗性および潤滑性能を更に向上させることができる液圧回転機とその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、第1の発明は、筒状のケーシングと、ケーシングに回転可能に設けられた回転軸と、この回転軸と一体に回転するように前記ケーシング内に設けられ周方向に離間して軸方向に延びる複数のシリンダボアが穿設されたシリンダブロックと、シリンダブロックの各シリンダボアに往復動可能に挿嵌された複数のピストンと、前記シリンダブロックと前記ケーシングとの間に位置して前記ケーシングに設けられ前記各シリンダボアと連通する給排ポートが形成された弁板とを備える液圧回転機であって、前記シリンダボアと前記ピストンが摺動する摺動面のいずれか一方の少なくとも一部表面に、前記シリンダボアと前記ピストンの少なくとも一方の母材側に形成され、その表面側の一部が除去されて前記摺動面側に露出した窒素拡散層と、この窒素拡散層上に形成され、表面側に凹形状を有した窒素化合物層とを有する。
この第1の発明によれば、窒素拡散層上に単純に微小な凹形状を形成した場合に比べて、高面圧摺動環境下においても、凹形状の凹部分に残留している硬質な窒素化合物層の存在により、油溜り効果を発揮する凹形状部が摩滅し辛く、より長時間油膜切れを防止することが可能となる。よって、シリンダボアとピストンとの摺動面において潤滑油膜がせん断されることが従来の液圧回転機に比べて抑制され、耐摩耗性および潤滑性能の更なる向上を図ることができ、液圧回転機の長寿命化を達成することができる。
また、上記目的を達成するために、第2の発明は、筒状のケーシングと、ケーシングに回転可能に設けられた回転軸と、この回転軸と一体に回転するように前記ケーシング内に設けられ周方向に離間して軸方向に延びる複数のシリンダボアが穿設されたシリンダブロックと、シリンダブロックの各シリンダボアに往復動可能に挿嵌された複数のピストンと、前記シリンダブロックと前記ケーシングとの間に位置して前記ケーシングに設けられ前記各シリンダボアと連通する給排ポートが形成された弁板とを備える液圧回転機の製造方法であって、前記シリンダボアと前記ピストンの少なくともいずれか一方の母材の少なくとも一部表面に、圧縮塑性加工によって凹形状を形成する工程と、窒化系表面処理を施すことで、前記凹形状を形成した表面に窒素化合物層を形成する工程と、切削または研削加工によって前記窒素化合物層の一部を除去する工程とを有し、前記圧縮塑性加工工程において形成される前記凹形状の深さを、前記窒化系表面処理によって形成される窒素化合物層の厚さよりも厚い深さとし、前記窒素化合物層の除去深さを、前記凹形状深さを超えない厚さとする。
この第2の発明によれば、油溜り効果を発揮する凹形状が窒素化合物層を有することにより、摩滅し辛くより長時間油膜切れを防止することが可能な摺動面構造を形成することができ、耐摩耗性および潤滑性能の向上を図ることができる。また、凹形状を形成させるための可能手段を圧縮塑性加工としているため、切削加工やレーザ加工の場合に比べて、加工後表面にバリやスパッタリングなどの異常突起がなく、簡素な加工装置と工具によって短時間に凹形状を形成することが可能となる。更に、圧縮塑性加工工程において形成される凹形状の深さが、後工程である窒化系表面処理によって形成される窒素化合物層の厚さを超える深さであり、さらに切削または研削による窒素化合物層の除去深さが、窒素化合物層の厚さを超え、凹形状深さを超えない深さとしているため、シリンダボア内径とピストン外形との嵌合精度を実現しつつ、高い耐摩耗性を有した油溜り形状を形成することができ、潤滑性能の更なる向上が可能となる。
また、第3の発明は、第2の発明において、前記圧縮塑性加工として、前記表面に硬質粒子を高速で衝突させるショットブラストまたはショットピーニングを用いる。
この第3の発明によれば、切削加工やレーザ加工による凹形状形成工程よりも簡素な設備で、短時間で加工することが可能となる。
また、第4の発明は、第2の発明において、前記圧縮塑性加工として、前記表面に凸形状を備える転圧型を押付ける転圧圧縮加工を用いる。
この第4の発明によれば、硬質粒子の高速衝突による加工のように、被加工面であるシリンダボアの摺動面への硬質粒子の静電付着残留、食い込み残留が生じることがなく、後工程の窒化系表面処理を実施した際にも、均質に表面を硬化させることができる。
また、第5の発明は、第4の発明において、前記転圧型に、前記ピストンの往復動方向に対して異方性を有した凸形状を有するものを用いる。
この第5の発明によれば、異方性を有した凹形状を形成することにより、凹形状中にピストンの動く方向に合わせて油の流れを生じさせることができ、同時にスムーズなピストンの往復動が可能となる。
本発明の液圧回転機によれば、液圧回転機におけるシリンダボアとピストンとの摺動面の耐摩耗性および潤滑性能を従来に比べて更に向上させることができるので、液圧回転機の長寿命化を図ることができる。
また、本発明の液圧回転機の製造方法によれば、液圧回転機におけるシリンダボアとピストンとの摺動面の耐摩耗性および潤滑性能を従来に比べて更に向上させることができるので、長寿命化を図った液圧回転機を製造することができる。
本発明の液圧回転機の第1の実施形態の縦断面図である。 図1に示す本発明の液圧回転機の第1の実施形態を構成するシリンダブロックの製造工程を示すもので、図2の(a)はシリンダブロックの一部を断面にて示す縦断面図、図2の(b)は図2(a)のA部を拡大して示す断面図である。 本発明の液圧回転機の第1の実施形態を構成するシリンダブロックの製造工程を示すもので、図3の(a)はシリンダブロックの一部を断面にて示す縦断面図、図3の(b)は図3(a)のA部を拡大して示す断面図である。 本発明の液圧回転機の第1の実施形態を構成するシリンダブロックの製造工程を示すもので、図4の(a)はシリンダブロックの一部を断面にて示す縦断面図、図4の(b)は図4(a)のA部を拡大して示す断面図である。 本発明の液圧回転機の第2の実施形態を構成するシリンダブロックの製造工程を示すもので、図5の(a)はシリンダブロックの一部を断面にて示す縦断面図、図5の(b)は図5(a)のA部を拡大して示す断面図である。 本発明の液圧回転機の第2の実施形態を構成するシリンダブロックの製造工程を示すもので、図6の(a)はシリンダブロックの一部を断面にて示す縦断面図、図6の(b)は図6(a)のA部を拡大して示す断面図である。 本発明の液圧回転機の第2の実施形態を構成するシリンダブロックの製造工程を示すもので、図7の(a)はシリンダブロックの一部を断面にて示す縦断面図、図7の(b)は図7(a)のA部を拡大して示す断面図、図7の(c)は図7(a)のB部を拡大して示す断面図である。 本発明の液圧回転機の第2の実施形態を構成するシリンダブロックの製造工程を示すもので、図8の(a)はシリンダブロックの一部を断面にて示す縦断面図、図8の(b)は図8(a)のA部を拡大して示す断面図である。 本発明の液圧回転機の第3の実施形態を構成するシリンダブロックの製造工程を示すもので、図9の(a)はシリンダブロックの一部を断面にて示す縦断面図、図9の(b)は図9(a)のA部を拡大して示す断面図である。 本発明の液圧回転機の第3の実施形態を構成するシリンダブロックの製造工程を示すもので、図10の(a)はシリンダブロックの一部を断面にて示す縦断面図、図10の(b)は図10(a)のA部を拡大して示す断面図、図10の(c)は図10(a)のB部を拡大して示す断面図である。
以下に本発明の液圧回転機およびその製造方法の実施形態を、図面を用いて説明する。
<第1の実施形態>
本発明の液圧回転機およびその製造方法の第1の実施形態を、図1乃至図4を用いて説明する。なお、図1乃至図4においては、液圧回転機として可変容量型斜板式アキシャルピストンポンプに適用した場合を例に挙げて説明する。
図1において、液圧回転機としての可変容量型斜板式アキシャルピストンポンプ1は、ケーシング2、回転軸3、シリンダブロック4、各ピストン5、スリッパシュー6、斜板7、および弁板8等により概略構成されている。
ケーシング2は、図1に示すように、筒状のケーシング本体9と、ケーシング本体9の両端側をそれぞれ閉塞したフロントケーシング10、リヤケーシング11とから構成されている。そして、リヤケーシング11には、一対の給排通路12A,12Bが設けられている。これらの給排通路12A,12Bは、作動油の吸込側、吐出側の配管(いずれも図示せず)等に接続している。
回転軸3は、フロントケーシング10とリヤケーシング11とに軸受13,14を介してケーシング2内に回転可能に支持されている。そして、回転軸3の一方端3A(図1の右側)は、フロントケーシング10から軸方向に突出し、例えばディーゼルエンジン等の原動機(図示せず)に連結されている。
シリンダブロック4はケーシング2内に回転軸3を介して回転可能に設けられたもので、回転軸3の外周側にスプライン結合され、回転軸3と一体に回転する。そして、シリンダブロック4は、その一方の端面が後述の斜板7に対向して配置され、他方の端面は後述の弁板8に摺接する。
シリンダブロック4には、複数のシリンダボア15がシリンダブロック4に同方向に間隔を持ってシリンダブロック4の軸線方向に穿設されている。各シリンダボア15は、他端側にシリンダポート16が形成されている。これらのシリンダポート16は、後述の弁板8を介してリヤケーシング11の給排通路12A、12Bに対して間欠的に連通、遮断される。
ピストン5は、シリンダブロック4の各シリンダボア15内に摺動可能に挿嵌されている。各ピストン5は、シリンダブロック4の回転に伴ってそれぞれのシリンダボア15内を往復動し、それに伴って、各ピストン5は、後述の弁板8から各シリンダボア15内に油液(作動油)を吸込みつつ、これを高圧の圧油として吐出する。
各ピストン5には、シリンダボア15から突出する突出端側に後述のスリッパシュー6がそれぞれ揺動可能に設けられている。スリッパシュー6は、シュー押え17によって後述する斜板7(平滑板18)の摺動面18Bに摺接するように支持されている。
スリッパシュー6は、各ピストン5の突出端側に揺動可能に設けられている。スリッパシュー6は、後述する斜板7の平滑板18に対しピストン5からの押付力(圧力)でシュー押え17等を介して押付けられた状態に保持される。各スリッパシュー6は、この状態で回転軸3、シリンダブロック4およびピストン5と一緒に回転することにより、リング状の円軌道を描くように後述の平滑板18上を摺動変位する。
斜板支持体19は、ケーシング2のフロントケーシング10に設けられており、斜板支持体19は、図1に示すように、回転軸3の周囲に対して斜板7の裏面側に配置され、ケーシング2のフロントケーシング10に固定されている。そして斜板支持体19には、回転軸3を挟んで左、右(または上、下)に離間した一対の傾転摺動面20が設けられている。傾転摺動面20は、斜板7を傾転可能に支持するために凹湾曲状の円弧面として形成されている。
斜板7は、ケーシング2内に傾転可能に設けられており、斜板7は斜板本体21と斜板本体21の表面側に固定して設けられた平滑板18とにより構成されている。また、斜板7(斜板本体21、平滑板18)の中央部には、回転軸3が隙間をもって挿通される軸挿通穴18Aが穿接されている。そして、斜板本体21は、その裏面(背面)側がフロントケーシング10側に斜板支持体19の傾転摺動面20を介して傾転可能に取付けられている。
また、斜板7の平滑板18は、シリンダブロック4と対向する面が斜めに傾斜した環状の摺動面18Bを備えており、この摺動面18Bを各スリッパシュー6が摺接する。即ち、スリッパシュー6は、斜板7(平滑板18)の摺動面18B上で円軌道を描くように摺動変位し、これによりピストン5がシリンダボア15内を往復動する。
弁板8はケーシング2内に位置してリヤケーシング11とシリンダブロック4との間に設けられている。弁板8はシリンダブロック4の端面に摺接し、シリンダブロック4を回転軸3と一緒に回転可能に支持している。また、弁板8には、円弧状をなす一対の給排ポート22A,22Bが形成されている。これらの給排ポート22A,22Bは、リヤケーシング11の給排通路12A,12Bと連通している。
そして、弁板8の給排ポートは、シリンダブロック4の回転時に各シリンダボア15のシリンダポート16と間欠的に連通し、例えば一方の給排通路12Aから各シリンダボア15に吸込んだ油液(作動油)をピストン5により加圧させると共に、各シリンダボア15内で高圧状態となった圧油を他方の給排通路12Bから吐出させる機能を有している。
傾転アクチュエータ23,24は、斜板7を傾転駆動するように、ケーシング本体9に対して一対設けられている。アクチュエータ23,24は、外部から傾転制御圧が給排されることにより、この圧力に応じて斜板7の傾転角を可変に制御する。そして、シリンダボア15内を摺動変位するピストン5のストローク長はこの斜板7の傾転角に応じて増減される。
次に、図2において、本発明の液圧回転機の第1の実施形態を構成するシリンダブロック4のシリンダボア15とピストン5との摺動面の構造について説明する。
図2は、図1に示す本発明の液圧回転機の一実施形態を構成するシリンダブロックの製造工程を示すもので、図2の(a)はシリンダブロックの一部を断面にて示す縦断面図、図2の(b)は図2(a)のA部を拡大して示す断面図である。
図2(a),(b)に示すように、本発明の液圧回転機の一実施形態に係る液圧回転機1のシリンダブロック4に穿設されたシリンダボア15におけるピストン5との摺動面となる表面側には、まず、シリンダブロック4の鉄鋼材からなる母材34側に図2(b)の2点鎖線で示すように形成された窒素拡散層30と、この窒素拡散層30上に図2の(b)の2点鎖線で示すように形成された窒素化合物層31を形成した後、窒素拡散層30および窒素化合物層31の表面側の一部を除去して、窒素化合物層31が除去されて露出した窒素拡散層30と、凹面内部に窒素化合物層が残留した凹形状の窒素化合物層32とを形成している。
ここで、本発明における窒素化合物層31とは、母材である鉄鋼材に対して窒化系表面処理を行った際に、その最表面に形成される、高硬度の窒素化合物からなる層のことである。また本発明における窒素拡散層30とは、母材である鉄鋼材に対して窒化系表面処理を行った際に、その最表面に形成される窒素化合物層の直下に形成される、窒素が拡散によって鉄鋼材に侵入してなる層のことである。
次に、上述のように構成される本発明の液圧回転機の一実施形態の製造方法を図1〜図4を用いて説明する。
図3は、本発明の液圧回転機の第1の実施形態を構成するシリンダブロックの製造工程を示すもので、図3の(a)はシリンダブロックの一部を断面にて示す縦断面図、図3の(b)は図3(a)のA部を拡大して示す断面図、図4は、本発明の液圧回転機の第1の実施形態を構成するシリンダブロックの製造工程を示すもので、図4の(a)はシリンダブロックの一部を断面にて示す縦断面図、図4の(b)は図4(a)のA部を拡大して示す断面図である。
まず、素材である鉄鋼材を切削加工によって切削してシリンダブロックの外形を形成し、更に形成したシリンダブロックの所定の位置を穿鑿してシリンダボア15を形成する。
その後、形成されたシリンダボア15表面に対してショットピーニングを行い、表面に微小な凹形状33を形成する。
具体的には、図3(a)に示すように、回転自在のノズル60をシリンダボア15内に挿入し、このノズル60を回転させつつ、シリンダボア15の下死点側から上死点側まで繰り返し上下移動させながら噴射口61より硬質粒子62を圧縮空気流によって噴射させて、シリンダボア15表面に衝突させる。これによって、シリンダボア15の表面に図3(b)に示すような微小な凹形状33を形成する(圧縮塑性加工工程)。
次に、ショットピーニング後に、シリンダブロック4を、窒素を含有する雰囲気(例えばアンモニア等)下に置き、加熱する(窒化系熱処理)。これにより、図4(a),(b)に示すように、微小な凹形状33を形成したシリンダボア15表面に窒素拡散層30を形成して母材34の表層域の硬度を上昇させると同時に、表面に硬質な窒素化合物層31を形成する(窒素化合物層形成工程)。この窒化系熱処理の条件は一般的な条件を採用すればよい。
次に、窒素化合物層31が形成されたシリンダボア15の内径を、摺動相手であるピストン5との嵌合公差を満たすように、研削加工にて窒素化合物層31を加工除去する。このとき、図2(a),(b)に示すように、研削加工後のシリンダボア15におけるピストン5との摺動面となる表面上に、窒素化合物層31直下の窒素拡散層30が露出するとともに、凹形状の窒素化合物層32とが存在するような条件で研削加工を行う(窒素化合物層除去工程)。
そのため、前述の圧縮塑性加工による微小な凹形状33の谷部の深さを、後工程である窒化系熱処理によって形成される窒素化合物層31の厚さのよりも深いものとするように、圧縮塑性加工の条件を選択する。
さらに、研削加工による窒素化合物層31の研削除去深さを、窒素化合物層31の厚さを超え、凹形状の窒素化合物層32の谷部深さを超えないように、研削条件を選択する。
本発明の液圧回転機の一実施形態の動作を説明する。
まず、図示しないエンジン等の原動機によって回転軸3を回転駆動すると、ケーシング2内でシリンダブロック4が回転軸3と一体に回転される。これにより、斜板7(平滑板18)の摺動面18Bに沿ってそれぞれのピストン5がシリンダブロック4の各シリンダボア15内で往復動を繰り返すようになる。
このため、シリンダブロック4が1回転する間に、各ピストン5はシリンダボア15内を上死点から下死点に向けて摺動変位する吸入行程と、下死点から上死点に向けて摺動変位する吐出行程とを繰り返す。そして、ピストン5の吸入行程では、例えば給排通路12Aからシリンダボア15内に作動油を吸込み、ピストン5の吐出行程では、ピストン5がシリンダボア15内の油液を高圧の圧油として給排通路12B側から吐出させる。
上述の動作中、斜板7との連結構成上、ピストン5がシリンダボア15の端部と奥側の2点で片当りしながら摺動することがあるが、シリンダボア15の表面に形成された、窒素化合物層31が除去されて露出した窒素拡散層30と、凹形状の窒素化合物層32とを備えていることにより、この凹形状の窒素化合物層32に保持された油によって油膜切れが抑制され、摩耗や焼付きが抑制される。また、凹形状の窒素化合物層32は高硬度であるため、摩耗に非常に強く、摺動面に長く存在させることができ、長時間の使用にも十分に耐えうる、との利点を有する。更に、摺動面の表面には高硬度の窒素拡散層30が存在しており、その耐摩耗性は十分に確保され、この結果、液圧回転機の長寿命化を図ることができる。
また、凹形状形成工程と窒化系表面処理工程と窒素化合物層除去工程によって製造することができ、高価な銅合金を用いる必要も、高価な多軸加工設備も必要なく、安価かつ容易に製造することができる。
また、微小な凹形状を形成するための加工に、ショットピーニングを用いているため、切削加工やレーザ加工によって微小な凹形状を形成する場合に比べ、加工後表面にバリやスパッタリングなどの異常突起を少なくでき、簡素な加工装置と工具によって短時間に微小な凹形状をシリンダボア15の摺動面に形成することが可能となる。
なお、上述した本発明の液圧回転機の一実施形態において、凹形状の窒素化合物層32と、窒素化合物層31が除去されたことによって露出した窒素拡散層30は、シリンダボア15の表面全面に形成されていなくてもよく、少なくともピストン5との摺動面となる一部表面に形成されていればよい。この一部表面は、シリンダブロック4の回転に伴い、ピストン5がシリンダボア15内部において偏荷重を受けて片当たりするシリンダボア15の端部と奥側の2点と、その周辺とすることが望ましい。
また、圧縮塑性加工工程は、ショットピーニングの代わりにショットブラストを行ってもよく、本加工工程後のシリンダボア15表面に微小な凹形状を形成できればよい。
また、窒素化合物層31を形成するための窒素化合物層形成工程での処理は、上述のような窒素含有雰囲気下での熱処理に限られず、例えば、塩浴窒化やプラズマ窒化等、公知の窒化処理(窒化系表面処理)を用いることができる。
また、窒素化合物層除去工程は、研削以外にも、切削を用いることができる。
<第2の実施形態>
本発明の液圧回転機およびその製造方法の第2の実施形態を図5および図6を用いて説明する。なお、図5および図6においても、液圧回転機として可変容量型斜板式アキシャルピストンポンプに適用した場合を例に挙げて説明する。
第2の実施形態における液圧回転機は、シリンダボア45aにおけるピストンとの摺動面構造以外の構成は第1の実施形態の液圧回転機と略同じであり、詳細は省略する。
図5は、本発明の液圧回転機の第2の実施形態を構成するシリンダブロックの製造工程を示すもので、図5の(a)はシリンダブロックの一部を断面にて示す縦断面図、図5の(b)は図5(a)のA部を拡大して示す断面図である。
図5(a),(b)に示すように、本発明の液圧回転機の第2の実施形態に係る液圧回転機のシリンダブロック44aに穿設されたシリンダボア45aにおけるピストンとの摺動面となる表面には、まず、シリンダブロック44aの鉄鋼材からなる母材46側に図5(b)の2点鎖線で示すように形成された窒素拡散層40と、この窒素拡散層40上に図5の(b)の2点鎖線で示すように形成された窒素化合物層41を形成した後、窒素拡散層40および窒素化合物層41の表面側の一部を除去して、窒素化合物層41が除去されて露出した窒素拡散層40と、凹面内部に窒素化合物層が残留した凹形状の窒素化合物層42とを形成している。
このようなシリンダボア45aを有するシリンダブロック44aを備えた液圧回転機の製造方法を、図6を参照して以下説明する。
図6は、本発明の液圧回転機の第2の実施形態を構成するシリンダブロックの製造工程を示すもので、図6の(a)はシリンダブロックの一部を断面にて示す縦断面図、図6の(b)は図6(a)のA部を拡大して示す断面図である。
本実施形態に係る液圧回転機の製造方法は、シリンダボア45aのピストンとの摺動面への微小な凹形状を形成する圧縮塑性加工工程をナーリング加工(ローレット加工)とすることを特徴とし、その他の工程については本発明の液圧回転機の製造方法の第1の実施形態と同様なため、詳細は省略する。
シリンダブロック44aに形成されたシリンダボア45a表面に対してナーリング加工を行う際に、図6(a)に示すように、形成すべき微小な凹形状と同一のピラミッド形状の凸形状を配置した転圧型63をシリンダボア45a内に挿入し、この挿入した転圧型63をシリンダボア45a表面に押付けた状態でシリンダブロック44aを加工対象シリンダボア45aの中心軸で回転させる。これにより、図6(b)に示すように、シリンダボア45a表面に微小な凹形状43aを形成する。
次に、窒化系熱処理によって窒素化合物層41を形成する、その後、窒素化合物層41が形成されたシリンダボア45aの内径を、研削加工後のシリンダボア45aのピストンとの摺動面上に、窒素化合物層41直下の窒素拡散層40が露出するとともに、凹形状の窒素化合物層42とが存在するような深さで窒素化合物層の除去工程を行う。
第2の実施態様の液圧回転機およびその製造方法においても、得られる効果は第1の実施形態の液圧回転機およびその製造方法の場合とほぼ同様である。さらに、本実施形態の液圧回転機の製造方法では、シリンダボア45aのピストンとの摺動表面への圧縮塑性加工手段が、形成したい微小な凹形状と同一の凸形状を配置した転圧型63を押付けるナーリングであることにより、第1の実施形態のようなショットピーニングによる場合に対して、被加工面であるシリンダボアの摺動面への硬質粒子の静電付着残留や食い込み残留といった不具合が生じることがなく、後工程の窒化系表面処理を実施した際にも、均質な表面硬化の効果を得られるとの利点を有している。
また、微小な凹形状43aを形成する位置を自由に選択可能であり、片当たりの激しい位置のみに微小な凹形状43aを形成するなど、使用状況に応じて適宜選択可能となり、様々な仕様の液圧回転機に対応可能である。
また押し込み形状を、転圧型の形状を選択することで自由に選択することができる。
なお、本実施形態においては、圧縮転圧加工は、ナーリング(ローレット加工)の代わりにバニシング(転圧加工)を行ってもよい。
また、シリンダブロックのシリンダボアの圧縮塑性加工工程のナーリング加工の際に、シリンダボアのピストンと片当たりする2点の高面圧摺接部位の摺動範囲にのみ選択的に微小な凹形状を形成するようなことも可能である。以下、この態様を図7を用いて説明する。
図7は、本発明の液圧回転機の第2の実施形態を構成するシリンダブロックの製造工程を示すもので、図7の(a)はシリンダブロックの一部を断面にて示す縦断面図、図7の(b)は図7(a)のA部を拡大して示す断面図、図7の(c)は図7(a)のB部を拡大して示す断面図である。
図7(a)において、シリンダブロック44bに穿設されたシリンダボア45bにおけるピストンとの摺動面には、それぞれの摺動領域の摺動速度、摺動面圧、潤滑状態に合わせて、図7(b)に示すようにシリンダボア45bの上死点側の微小な凹形状43bは凹形状の深さが深く、図7(c)に示すようにシリンダボア45bの下死点側の微小な凹形状43bの深さを微小な凹形状43bに比べて浅い形状となっている。
このような選択的な微小な凹形状43b,43bは、例えば、ナーリング加工の際に、微小な凹形状43bを形成する際の押圧力と微小な凹形状43bを形成する際の押圧力を変えることや、凸形状の異なる転圧型を用いることによって形成する。
このように2箇所以上に選択的に微小な凹形状43b,43bを形成し、その後窒化系表面処理による窒素化合物層形成工程および窒素化合物層除去工程を行って、シリンダブロック44bに穿設されたシリンダボア45bにおけるピストンとの摺動面となる表面に、まず、シリンダブロック44bの鉄鋼材からなる母材46側に形成された窒素拡散層と、この窒素拡散層上に形成された窒素化合物層を形成した後、窒素拡散層および窒素化合物層の表面側の一部を除去して、窒素化合物層が除去されて露出した窒素拡散層と、凹面内部に窒素化合物層が残留した凹形状の窒素化合物層とを形成することにより、使用状態に応じたより高い潤滑効果を有するシリンダボアとピストンとの摺動面を有する液圧回転機を製造することが可能となる。
さらには、図8に示すように、転圧型64に異方性を有した凸形状を用い、窒素化合物層を有した凹形状の窒素化合物層に異方性を持たせることもできる。以下、この態様を図8を用いて説明する。
図8は、本発明の液圧回転機の第2の実施形態を構成するシリンダブロックの製造工程を示すもので、図8の(a)はシリンダブロックの一部を断面にて示す縦断面図、図8の(b)は図8(a)のA部を拡大して示す断面図である。
図8(a)に示すように、形成されたシリンダボア45c表面に対してナーリング加工を行う際に、シリンダボア45cの上死点側から下死点側にかけてその高さが高くなり、形成すべき微小な凹形状と同一の三角錐形状の凸形状を配置した転圧型64をシリンダボア45cに挿入し、この挿入した転圧型64をシリンダボア45c表面に押付けた状態でシリンダブロック44cを加工対象のシリンダボア45cの中心軸で回転させる。これにより、図8(b)に示すようにシリンダボア45c表面に微小な凹形状43cを形成する。
上述のような転圧型64を用いて微小な凹形状43cを形成し、その後窒化系表面処理による窒素化合物層形成工程および窒素化合物層除去工程を行って、シリンダブロック44cに穿設されたシリンダボア45cにおけるピストンとの摺動面となる表面に、まず、シリンダブロック44cの鉄鋼材からなる母材46側に形成された窒素拡散層と、この窒素拡散層上に形成された窒素化合物層を形成した後、窒素拡散層および窒素化合物層の表面側の一部を除去して、窒素化合物層が除去されて露出した窒素拡散層と、凹面内部に窒素化合物層が残留した凹形状の窒素化合物層とを形成することによって、微小な凹形状中に、ピストンの動く方向に合わせて油の流れを生じさせることができる。
例えば、図8(b)に示すように、シリンダボア45cの上死点側に向かって幅が狭くなり、深さが浅くなる形状であれば、シリンダボア45cの下死点側から上死点側に向けた油の流れを生じさせることができる。よって負圧が発生して潤滑膜が切れやすいタイミングである油を引き込む際に、生じさせた油の流れによって潤滑膜が切れることを抑制し、またピストンの上死点側への移動をサポートすることができ、スムーズなピストンの往復動が可能となる。このような異方性を有した凹形状の窒素化合物層を形成することは、特に斜板式のピストンポンプに好適である。
<第3の実施形態>
本発明の液圧回転機およびその製造方法の第3の実施形態を図9および図10を用いて説明する。なお、図9および図10においても、液圧回転機として可変容量型斜板式アキシャルピストンポンプに適用した場合を例に挙げて説明する。
本発明の液圧回転機およびその製造方法の第1の実施形態および第2の実施形態は、シリンダボアにおけるピストンとの摺動面となる表面側に、シリンダボアの母材側に形成された窒素拡散層と、この窒素拡散層上に形成された窒素化合物層を形成した後、窒素拡散層および窒素化合物層の表面側の一部を除去して、窒素化合物層が除去されて露出した窒素拡散層と、凹面内部に窒素化合物層が残留した凹形状の窒素化合物層とを形成しているケースである。これに対し、本発明の液圧回転機およびその製造方法の第3の実施形態は、ピストン57におけるシリンダボア55aとの摺動面や、ピストン57におけるシリンダボア55bとの摺動面及びシリンダボア55bにおけるピストン57との摺動面の両摺動面に、母材側に形成された窒素拡散層と、この窒素拡散層上に形成された窒素化合物層を形成した後、窒素拡散層および窒素化合物層の表面側の一部を除去して、窒素化合物層が除去されて露出した窒素拡散層と、凹面内部に窒素化合物層が残留した凹形状の窒素化合物層とを形成しているケースある。本実施形態の液圧回転機は、ピストンやシリンダボア以外の構成は第1および第2の実施形態の液圧回転機と略同じであり、詳細は省略する。
図9は、本発明の液圧回転機の第3の実施形態を構成するシリンダブロックの製造工程を示すもので、図9の(a)はシリンダブロックの一部を断面にて示す縦断面図、図9の(b)は図9(a)のA部を拡大して示す断面図である。
図9(a),(b)において、本発明の液圧回転機の第3の実施形態を構成するピストン57におけるシリンダボア55aとの摺動面となる表面には、まず、ピストン57の鉄鋼材からなる母材56a側に図9(b)の2点鎖線で示すように形成された窒素拡散層50と、この窒素拡散層50上に図9の(b)の2点鎖線で示すように形成された窒素化合物層51を形成した後、窒素拡散層50および窒素化合物層51の表面側の一部を除去して、窒素化合物層51が除去されて露出した窒素拡散層50と、凹面内部に窒素化合物層が残留した凹形状の窒素化合物層52とを形成している。
次に、上述のように構成される液圧回転機の製造方法を図9を用いて説明する。
まず、素材である鉄鋼材を切削加工によって切削してピストン57の外形を形成する。この切削・穿鑿加工工程を含むこれ以前の工程は、第1の実施形態による液圧回転機1の製造方法と略同じである。そのため、詳細な説明は省略する。
その後、形成されたピストン57の表面に対してショットピーニングやショットブラスト、ナーリング加工等の方法により、表面に微小な凹形状を形成する。
次に、微小な凹形状形成後のピストン57に対して公知の窒化系表面処理を行い、窒素化合物層51を形成する。
次に、窒素化合物層51が形成されたピストン57の表面を、シリンダブロック54aにおける摺動相手であるシリンダボア55aとの嵌合公差を満たすように、研削加工後のピストン57のシリンダボア55aとの摺動面上に、窒素化合物層51直下の窒素拡散層50が露出するとともに、凹形状の窒素化合物層52が存在するような深さで研削加工にて窒素化合物層51を加工除去する。
これ以降の工程は、第1の実施形態による液圧回転機の製造方法と同様であるため、詳細は省略する。
第3の実施態様の液圧回転機およびその製造方法においても、得られる効果は第1の実施形態の液圧回転機およびその製造方法の場合とほぼ同様である。ただし、本実施形態の液圧回転機では、ピストン57におけるシリンダボア55aとの摺動面となる表面に、窒素化合物層51が除去されて露出した窒素拡散層50と、凹面内部に窒素化合物層が残留した凹形状の窒素化合物層52とを形成しているため、シリンダボア側に形成する場合に比べて容易に実施でき、液圧回転機の生産コストの更なる低減が可能である。
また、本実施形態の液圧回転機は、図9に示すようなピストン57の表面側のみに凹形状の窒素化合物層が形成されたものに限られず、図10に示すように、ピストン57の表面側とシリンダボア55bの表面側の両方に、凹形状の窒素化合物層が形成されたものとすることもできる。以下、この態様を図10を用いて説明する。
図10は、本発明の液圧回転機の第3の実施形態を構成するシリンダブロックの製造工程を示すもので、図10の(a)はシリンダブロックの一部を断面にて示す縦断面図、図10の(b)は図10(a)のA部を拡大して示す断面図、図10の(c)は図10(a)のB部を拡大して示す断面図である。
図10(a)において、本発明の液圧回転機の第3の実施形態に係る液圧回転機のピストン57におけるシリンダボア55aとの摺動面となる表面には、まず、ピストン57の鉄鋼材からなる母材56a側に図10(b)の2点鎖線で示すように形成された窒素拡散層50と、この窒素拡散層50上に図10の(b)の2点鎖線で示すように形成された窒素化合物層51を形成した後、窒素拡散層50および窒素化合物層51の表面側の一部を除去して、窒素化合物層51が除去されて露出した窒素拡散層50と、凹面内部に窒素化合物が残留した凹形状の窒素化合物層52とを形成している。
これに加えて、図10(c)に示すように、シリンダボア55aにおけるピストン57との摺動面となる表面には、まず、シリンダボア55aの鉄鋼材からなる母材56b側に図10(c)の2点鎖線で示すように形成された窒素拡散層50と、この窒素拡散層50上に図10の(c)の2点鎖線で示すように形成された窒素化合物層51を形成した後、窒素拡散層50および窒素化合物層51の表面側の一部を除去して、窒素化合物層51が除去されて露出した窒素拡散層50と、凹面内部に窒素化合物層が残留した凹形状の窒素化合物層52とを形成している。
<その他>
なお、上述の各実施形態では、液圧回転機として可変容量型斜板式油圧ポンプを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば可変容量型斜板式の油圧モータに適用することができ、また固定容量型の斜板式油圧ポンプ、油圧モータ等の斜板式の液圧回転機、更には斜軸式の液圧回転機に適用することも可能である。
1…液圧回転機、
2…ケーシング、
3…回転軸、
4,44a,44b,44c,54a,54b…シリンダブロック、
5,57…ピストン、
6…スリッパシュー、
7…斜板、
8…弁板、
9…ケーシング本体、
10…フロントケーシング、
11…リヤケーシング、
12A,12B…給排通路、
13,14…軸受、
15,45a,45b,45c,55a,55b…シリンダボア、
16…シリンダポート、
17…シュー押え、
18…平滑板、
18A…軸挿通孔、
18B…摺動面、
19…斜板支持体、
20…傾転摺動面、
21…斜板本体、
22A,22B…給排ポート、
23,24…傾転アクチュエータ、
30,40,50…窒素拡散層、
31,41,51…窒素化合物層、
32,42,52…凹形状の窒素化合物層、
33,43a,43b,43b,43c…微小な凹形状、
34,46,56a,56b…母材、
60…ノズル、
61…噴射口、
62…硬質粒子、
63,64…転圧型。

Claims (5)

  1. 筒状のケーシングと、ケーシングに回転可能に設けられた回転軸と、この回転軸と一体に回転するように前記ケーシング内に設けられ周方向に離間して軸方向に延びる複数のシリンダボアが穿設されたシリンダブロックと、シリンダブロックの各シリンダボアに往復動可能に挿嵌された複数のピストンと、前記シリンダブロックと前記ケーシングとの間に位置して前記ケーシングに設けられ前記各シリンダボアと連通する給排ポートが形成された弁板とを備える液圧回転機であって、
    前記シリンダボアと前記ピストンが摺動する摺動面のいずれか一方の少なくとも一部表面に、前記シリンダボアと前記ピストンの少なくとも一方の母材側に形成され、その表面側の一部が除去されて前記摺動面側に露出した窒素拡散層と、この窒素拡散層上に形成され、表面側に凹形状を有した窒素化合物層とを有することを特徴とする液圧回転機。
  2. 筒状のケーシングと、ケーシングに回転可能に設けられた回転軸と、この回転軸と一体に回転するように前記ケーシング内に設けられ周方向に離間して軸方向に延びる複数のシリンダボアが穿設されたシリンダブロックと、シリンダブロックの各シリンダボアに往復動可能に挿嵌された複数のピストンと、前記シリンダブロックと前記ケーシングとの間に位置して前記ケーシングに設けられ前記各シリンダボアと連通する給排ポートが形成された弁板とを備える液圧回転機の製造方法であって、
    前記シリンダボアと前記ピストンの少なくともいずれか一方の母材の少なくとも一部表面に、圧縮塑性加工によって凹形状を形成する工程と、
    窒化系表面処理を施すことで、前記凹形状を形成した表面に窒素化合物層を形成する工程と、
    切削または研削加工によって前記窒素化合物層の一部を除去する工程とを有し、
    前記圧縮塑性加工工程において形成される前記凹形状の深さを、前記窒化系表面処理によって形成される窒素化合物層の厚さよりも厚い深さとし、
    前記窒素化合物層の除去深さを、前記凹形状深さを超えない厚さとすることを特徴とする液圧回転機の製造方法。
  3. 請求項2に記載の液圧回転機の製造方法において、
    前記圧縮塑性加工として、前記表面に硬質粒子を高速で衝突させるショットブラストまたはショットピーニングを用いることを特徴とする液圧回転機の製造方法。
  4. 請求項2に記載の液圧回転機の製造方法において、
    前記圧縮塑性加工として、前記表面に凸形状を備える転圧型を押付ける転圧圧縮加工を用いることを特徴とする液圧回転機の製造方法。
  5. 請求項4に記載の液圧回転機の製造方法において、
    前記転圧型に、前記ピストンの往復動方向に対して異方性を有した凸形状を有するものを用いることを特徴とする液圧回転機の製造方法。
JP2012052352A 2012-03-08 2012-03-08 液圧回転機および液圧回転機の製造方法 Expired - Fee Related JP5606475B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012052352A JP5606475B2 (ja) 2012-03-08 2012-03-08 液圧回転機および液圧回転機の製造方法
CN201310062685.8A CN103306929B (zh) 2012-03-08 2013-02-21 液压旋转机械及液压旋转机械的制造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012052352A JP5606475B2 (ja) 2012-03-08 2012-03-08 液圧回転機および液圧回転機の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013185520A JP2013185520A (ja) 2013-09-19
JP5606475B2 true JP5606475B2 (ja) 2014-10-15

Family

ID=49132530

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012052352A Expired - Fee Related JP5606475B2 (ja) 2012-03-08 2012-03-08 液圧回転機および液圧回転機の製造方法

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP5606475B2 (ja)
CN (1) CN103306929B (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6781082B2 (ja) 2017-03-10 2020-11-04 日立建機株式会社 アキシャルピストン式液圧回転機

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3073845B2 (ja) * 1992-11-24 2000-08-07 株式会社ナブコ 斜板型ピストンポンプまたはモータ
DE59510571D1 (de) * 1995-09-19 2003-04-03 Waertsilae Schweiz Ag Winterth Kolbenring für Verbrennungsmotoren
JPH10196552A (ja) * 1997-01-16 1998-07-31 Komatsu Ltd 焼結接合シリンダブロック
JP3924999B2 (ja) * 1999-08-12 2007-06-06 株式会社日立製作所 燃料ポンプ及びそれを用いた筒内噴射エンジン
JP4884135B2 (ja) * 2006-08-28 2012-02-29 日立建機株式会社 液圧回転機
JP2009150344A (ja) * 2007-12-21 2009-07-09 Hitachi Constr Mach Co Ltd 液圧回転機用の斜板
DE102008037871A1 (de) * 2008-08-15 2010-02-25 Amg Coating Technologies Gmbh Gleitelement mit Mehrfachschicht
JP5320108B2 (ja) * 2009-02-26 2013-10-23 ナブテスコ株式会社 油圧モータ
JP5481432B2 (ja) * 2011-06-10 2014-04-23 日立建機株式会社 液圧回転機のシリンダブロック製造方法及び液圧回転機

Also Published As

Publication number Publication date
CN103306929A (zh) 2013-09-18
JP2013185520A (ja) 2013-09-19
CN103306929B (zh) 2017-07-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8087903B2 (en) Hydraulic rotary machine
EP1876352B1 (en) Sliding device
CN103306930B (zh) 斜轴式液压旋转机械及斜轴式液压旋转机械的制造方法
JP5606475B2 (ja) 液圧回転機および液圧回転機の製造方法
KR100769411B1 (ko) 왕복식 압축기 및 그 제조 방법
JP2003145247A (ja) アルミボールの製造方法,圧縮機用シュー製造方法および圧縮機用シュー
JP2009150344A (ja) 液圧回転機用の斜板
JP6190804B2 (ja) ピストンポンプ・モータ
JP2010222979A (ja) 斜板式液圧回転機のスリッパシューの製造方法およびスリッパシューの製造装置
JP6331043B2 (ja) 油圧機器用ピストン及び油圧機器
JP6391682B2 (ja) 両頭斜板式圧縮機およびシリンダブロックの製作方法
JP2011032883A (ja) 斜板式液圧回転機
JP2021148064A (ja) アキシャルピストン型液圧回転機の斜板およびその製造方法
JP5481432B2 (ja) 液圧回転機のシリンダブロック製造方法及び液圧回転機
JP6781082B2 (ja) アキシャルピストン式液圧回転機
JP2014218912A (ja) 摺動部材及びピストンポンプモータ
WO2018088487A1 (ja) シリンダブロックとそれを備えた斜板形液圧回転装置
US20190055931A1 (en) Hydraulic rotary machine
JP6665125B2 (ja) 液圧回転機
JP2012112291A (ja) 斜板式圧縮機及び斜板式圧縮機の斜板の表面処理方法
JP2008101763A (ja) スラストころ軸受用保持器、スラストころ軸受、およびコンプレッサの回転軸支持構造
JP2000249046A (ja) 回転型油圧機器
JP2006132464A (ja) 斜板式ポンプ・モータ
JP2007046473A (ja) ピストン式圧縮機に用いるピストンの加工方法
JPH07103135A (ja) ピストン型液圧装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20140218

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20140218

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20140723

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20140805

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20140826

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5606475

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees