JP2021148064A - アキシャルピストン型液圧回転機の斜板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】たとえ摺動面の面圧が高い環境下であっても、摩耗を低減することができるアキシャルピストン型液圧回転機の斜板を提供する。【解決手段】ポンプ50のピストンシュー12に対して摺動する斜板2は、鉄基地23に球状黒鉛24が分散した球状黒鉛鋳鉄からなり、ピストンシュー12との摺動面21には、窒素が拡散した窒素拡散層26が形成されている。摺動面21には、斜板2の周方向に沿って少なくとも1つの凹溝27が形成されており、凹溝27の縁部27aには、鉄基地23により形成された摺動面21から隆起するように、球状黒鉛24の一部が露出している。【選択図】図3
Description
本発明は、アキシャルピストン型液圧回転機の斜板に関する。
従来から油圧ポンプや油圧モータに代表される液圧回転機は、多くの摺動部品から構成されている。摺動部品の摺動面は、高い摺動面圧による潤滑油膜切れ、制御油圧の変動による摺接状態の不安定化などの影響により、摺動面同士の焼き付きや局部的な異常摩耗などの発生リスクを有している。これら摺動部品のほとんどは鉄製の材料で構成され、中でも安価で摺動性能が高い球状黒鉛鋳鉄が利用されている。
液圧回転機を構成する摺動部品には、耐摩耗性と潤滑性の2つの性能が求められるが、摺動部品の構成材質を球状黒鉛鋳鉄とした場合、鋼材に比べて表面硬度が低いことが多い。このような観点から、熱処理により摺動部品を硬化させることにより、摩耗や焼き付き損傷を抑制する方法が知られている。
たとえば、特許文献1には、球状黒鉛鋳鉄の基材の表面に、窒化系熱処理を施した摺動部品が提案されている。得られた摺動部品は、摺動面に鉄窒化物層を形成するとともに、窒化系熱処理による熱処理歪み(ひずみ)によって、摺動面には球状黒鉛が隆起突出している。
しかしながら、建設機械のように大容量(高出力)のアキシャルピストン型液圧回転機の斜板においては、摺動面に対して加わる摺動面圧(摺動相手面の押し付け力)と、それに起因した摺動発熱が非常に大きい。そのため、特許文献1に係る摺動部品を、アキシャルピストン型液圧回転機の斜板に適用した場合、斜板の摺動面上に形成された非常に硬質な鉄窒化物層によって、相手部材であるピストンシューに激しい摩耗損傷が生じてしまう。
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、たとえ摺動面の面圧が高い環境下であっても、摩耗を低減することができるアキシャルピストン型液圧回転機の斜板およびその製造方法を提供することにある。
前記課題を鑑みて、本発明に係るアキシャルピストン型液圧回転機のピストンシューに対して摺動する斜板であって、前記斜板は、鉄基地に球状黒鉛が分散した球状黒鉛鋳鉄からなり、前記ピストンシューとの摺動面には、窒素が拡散した窒素拡散層が形成されており、前記摺動面には、前記斜板の周方向に沿って少なくとも1つの凹溝が形成されており、前記凹溝の縁部には、前記鉄基地により形成された摺動面から隆起するように、球状黒鉛の一部が露出している。
本発明に係るアキシャルピストン型液圧回転機のピストンシューに対して摺動するアキシャルピストン型液圧回転機の斜板の製造方法では、前記斜板の基材として、鉄基地に球状黒鉛が分散した球状黒鉛鋳鉄からなる基材に窒化処理を施す工程と、前記ピストンシューとの摺動面の最表面に前記窒化処理により形成された、鉄窒素化合物層を除去し、窒素が拡散した窒素拡散層を露出させる工程と、前記窒素拡散層を露出させた摺動面に、前記斜板の周方向に沿って少なくとも1つの凹溝をバニシング加工により形成し、前記凹溝の縁部に、前記鉄基地により形成された摺動面から隆起するように、球状黒鉛の一部を露出させる工程と、を含む。
本発明に係る斜板および本発明に係る製造方法で製造された斜板は、鉄基地に球状黒鉛が分散した球状黒鉛鋳鉄からなり、ピストンシューとの摺動面には、窒素が拡散した窒素拡散層が形成されている。この窒素拡散層により、斜板の摺動面を形成する鉄基地の表面硬さが高まるので、斜板の耐摩耗性を向上することができる。
さらに、窒素拡散層が形成された摺動面には、同心円状または螺旋状の凹溝が形成されており、凹溝の縁部には、鉄基地により形成された摺動面から隆起するように、球状黒鉛の一部が露出している。これにより、斜板とピストンシューとが、相対的に回転し、摺動した場合に、これらの間に供給される潤滑油が凹溝に保持されるため、斜板の摺動面に油膜が形成され、斜板とピストンシューとの摺動面間に保持され易い。これとともに、凹溝の縁部には、鉄基地により形成された摺動面から隆起するように、球状黒鉛の一部が露出しているので、摺動時に、斜板の摺動面のうち、ピストンシューに接触する部分には、球状黒鉛が存在することになり、球状黒鉛が固体潤滑剤として作用する。このような結果、摺動面の凹溝による潤滑油の保持効果と、球状黒鉛の固体潤滑剤としての効果とによって、斜板の摺動面の耐焼き付き特性と耐摩耗性とを両立させることができる。
以下、図面を参照して、本発明に係るいくつかの実施形態の作業機械を説明する。本発明の実施形態に係るアキシャルピストン型液圧回転機として、斜板式アキシャルピストンポンプ(以下ポンプという)50を例示して説明する。なお、ポンプ50は、油圧ショベル、ブルドーザ、ホイールローダ、締固め機械、またはトラック等の作業機械の全般で使用されるものである。
まず、図1において、ポンプ50の構成の一例を説明し、図2〜4において、ポンプ50の斜板2を説明する。
1.ポンプ50について
ポンプ50は、有底筒状に形成されたケーシング本体1Aと、このケーシング本体1Aと組合されてケーシング1を構成する円板状のリアケーシング1B内に、回転シャフト5が保持されている。
ポンプ50は、有底筒状に形成されたケーシング本体1Aと、このケーシング本体1Aと組合されてケーシング1を構成する円板状のリアケーシング1B内に、回転シャフト5が保持されている。
回転シャフト5の一端側は、リアケーシング1Bの中央部に形成した窪み内に保持された軸受17で回転可能に保持されている。回転シャフト5の他端側は、ケーシング本体1Aの中央部(の貫通孔)には、軸受16が保持されている。回転シャフト5の他端側の先端部は、図示しないモータまたはエンジン等の駆動手段に接続される。回転シャフト5は、駆動手段の動力により回転する。
回転シャフト5の軸方向中間部には、スプライン8が形成されている。そして、このスプライン8に係止するスプラインが内周面に形成されたシリンダブロック7が、回転シャフト5にスプライン結合で取り付けられている。
軸方向に、シリンダブロック7とリアケーシング1B間に弁板3が配置されており、この弁板3はリアケーシング1Bに保持されている。弁板3には、軸対称に一対、円弧形状の吸排ポート4A、4Bが形成されている。弁板3は、さらにシリンダブロック7と対向する面が凸形状の円錐面に形成されており、凹形状の円錐面であるシリンダブロック7の端面との間で摺動面を形成する。リアケーシング1Bには、吸排ポート4A、4Bに連通する流路4C、4Dが形成されている。
シリンダブロック7では、同一円周上の周方向複数個所、通常4〜9個のシリンダ(シリンダボア)9が等間隔に形成されている。このシリンダ9に、ピストン10が軸方向に往復動可能に収容されている。シリンダ9の先端部には、シリンダブロック7が回転したときに弁板3に形成した吸排ポート4A、4Bに連通するシリンダポート9Aが形成されている。ピストン10は円柱状をしており、軸心部には軸方向に延びる孔10Aが形成されている。この孔10Aは、シリンダポート9A側の径が反対側よりも大きい。
ピストン10の端部のうち、シリンダポート9Aの反対側の端部は、凹んだ球面になっており、この凹面に先端部が凸球面をしたピストンシュー12が挿嵌されている。ピストンシュー12は、銅合金などの軟質金属からなり、ピストンシュー12の表面も銅合金などの軟質金属で構成されている。ピストンシュー12は軸方向にくびれた形状になっており、環状に形成されたリテーナ15に周方向ほぼ等間隔に形成された円形の穴に嵌合している。リテーナ15は、複数のピストンシュー12の周方向の位置決めに用いられている。
ピストンシュー12の軸心部には小径の貫通孔が形成されており、ピストン10に形成した孔10Aを経た潤滑油が、ピストンシュー12の孔を流通可能になっている。ピストンシュー12の斜板2側の端面は、平面となっており、ケーシング本体1Aに軸受保持部材16Aを介して保持された斜板2に当接した摺動面となっている。
斜板2は、ピストンシュー12に当接する平面状の当接面を有しており、この当接面が、本発明でいう斜板2の「摺動面」に相当する。したがって、モータまたはエンジン等の駆動手段によりポンプ50が駆動した際には、ピストンシュー12の摺動面12aが、ピストンシュー12の摺動軌道に沿って、斜板2の摺動面12bを摺動する。
さらに、摺動面と反対側の斜板2の表面は円板を斜めにそぎ落とした形状になっている。この斜めにそぎ落とした面が軸受保持部材16Aの軸方向端面に当接することで、斜板2のピストンシュー12への摺動面を、回転シャフトに対して傾斜した面に保持している。
回転シャフト5の軸心にして、斜板2の摺動面の角度は傾転角θであり、図示を省略した傾転制御ピストンによりその角度を制御される。傾転制御ピストンは、ケーシング本体1Aに保持され、斜板2がピストンシュー12に当接する面とは反対面側に当接する。斜板2の内周側には、回転シャフト5が貫通するための孔25が形成されている。一方、回転シャフト5は、この斜板2を貫通する部分に、軸受16側から徐々に縮径する傾斜部を有している。
このように構成したポンプ50では、図示しない駆動手段により回転シャフト5を回転させると、この回転シャフト5にスプライン結合されたシリンダブロック7が回転する。シリンダブロック7には、複数のピストン10が摺動可能に挿嵌されており、回転シャフト5の回転に伴ってその周方向位置を変える。ピストン10が周方向位置を変えると、ピストン10に摺接するピストンシュー12は、背面側に配置されている斜板2の摺動面に軸方向の移動を規制される。つまり、ピストンシュー12は、斜板2の傾斜している摺動面を滑りながら移動する。ここで、ピストンシュー12のピストン10との摺接部が球面であるので、この移動の際には、ピストンシュー12はピストン10に対しほとんど摩擦を生じることなくその姿勢を変えることができる。
各ピストンシュー12の摺動面12aが、摺動起動に沿って、斜板2の摺動面を摺動するときは、斜板2の傾きによりピストンシュー12の回転方向への移動量(角度)に応じてピストンシュー12の軸方向位置が変化し、それによりピストン10が軸方向、図1では左右方向に移動する。図1で、ピストン10が左方向に移動すれば、シリンダ9内部の潤滑油を吐き出すことになり、ピストン10が右方向に移動すれば、シリンダ9内部へ潤滑油を吸引することになる。したがって、駆動機が回転シャフト5を連続的に回転駆動すると、吸排ポート4A、4Bを通して、潤滑油が加圧されて送液される。
2.斜板2について
以下に図2〜図4を参照しながら、ポンプ50の斜板2について詳細に説明する。
以下に図2〜図4を参照しながら、ポンプ50の斜板2について詳細に説明する。
図2および3に示すように、斜板2は、ピストンシュー12に対して摺動する摺動面21が形成されている。斜板2は、鉄基地23に球状黒鉛24が分散した球状黒鉛鋳鉄(ダクタイル鋳鉄)からなる。
ここで、鉄基地23は、フェライトからなるものであってもよく、球状黒鉛鋳鉄としては、FCD370、FCD400、FCD450、FCD500(JIS規格)等を挙げることができ、鉄基地11により多くの黒鉛粒子を含むことができる。一方、鉄基地23は、パーライトからなるものであってもよく、球状黒鉛鋳鉄としては、FCD600、FCD700、FCD850(JIS規格)等を挙げることができる。
本実施形態では、ピストンシュー12との摺動面21には、窒素が拡散した窒素拡散層26が形成されている。窒素拡散層26は、球状黒鉛鋳鉄の鉄基地23に、ガス窒化処理又はガス軟窒化処理を施すことにより、斜板2の摺動面21(鉄基地23の表面)から窒素原子が浸透し、鉄基地23に固溶・拡散した層である。
窒素拡散層26の表面硬さは、斜板2の耐摩耗性を確保することができるのであれば、特に限定されるものではないが、たとえば、Hv900以上(Hv900〜1200)であることが好ましい。同様に、窒素拡散層26の厚さ(拡散深さ)も、斜板2の耐摩耗性を確保することができるのであれば、特に限定されるものではないが、たとえば、斜板2の摺動面21から0.2〜0.5mmであることが好ましい。窒素拡散層26の厚さを範囲とすることにより、斜板2の摺動面21の耐摩耗性をより確実に確保することができる。
ここで、窒素拡散層26の硬さが、Hv900未満の場合、窒素拡散層26の厚さが、0.2mm未満の場合には、窒素拡散層26による斜板2の摺動面21の耐摩耗性が十分に得られないことがある。一方、窒素拡散層26の厚さが、0.5mmを超えたとしても、窒素拡散層26による斜板2の摺動面21の耐摩耗性がそれ以上得られないことがある。
窒素拡散層26は、摺動面21側の表面領域の窒素の質量濃度をEDSやEPMAで測定する方法、または、その表面領域の断面をSEMで観察する方法等により確認することができる。なお、この窒素拡散層26は、後述するように、アンモニアガスの雰囲気下で斜板2となる基材2Aを加熱し、その表面に形成された鉄窒化物層を除去することにより得ることができる。
さらに、斜板2の摺動面21には、円板状の斜板2の周方向に沿って少なくとも1つの凹溝27が形成されている。凹溝27は、周方向に断続的に形成されていてもよく、後述するように、螺旋状に形成されていてもよい。本実施形態では、図2に示すように、斜板2の摺動面21には、摺動面21の中心から同心円状の複数の凹溝27が形成されている。図3に示すように、凹溝17の深さは、窒素拡散層26の層厚さよりも小さいが、バニシング加工により斜板2の形状を保持しつつ、凹溝17を形成することができるのであれば、その層厚さ以上であってもよい。凹溝27の縁部27aには、鉄基地23により形成された摺動面21から隆起するように、球状黒鉛24の一部が露出している。本実施形態では、半径方向に並ぶ凹溝27、27同士の中心間距離Lが、開口幅Wの2倍以上である。なお、ここでいう、凹溝27の中心とは、凹溝27の開口幅Wにおける中心位置のこといい、開口幅Wは、斜板2の摺動面21における凹溝27の幅のことをいう。
本実施形態では、斜板2とピストンシュー12とが、相対的に回転し、摺動した場合に、これらの間に供給される潤滑油が同心円状の各凹溝27に保持される。このため、斜板2の摺動面21に潤滑油の油膜が形成され、斜板2とピストンシュー12との摺動面間に保持され易い。
これとともに、凹溝27の縁部27aには、鉄基地23により形成された摺動面21から隆起するように、球状黒鉛24の一部が露出しているので、摺動時に、斜板2の摺動面21のうち、ピストンシュー12に接触する部分には、球状黒鉛24が存在することになり、球状黒鉛24が固体潤滑剤して作用する。
このような結果、斜板2の摺動面21の凹溝27による潤滑油の保持効果と、球状黒鉛24の固体潤滑剤としての効果とによって、ピストンシュー12が銅合金などの軟質金属からなる場合であっても、斜板2の摺動面21の耐焼き付き特性と耐摩耗性とを両立させることができる。
本実施形態では、半径方向に並ぶ凹溝27、27同士の中心間距離Lが、開口幅Wの2倍以上であるので、ピストンシュー12との接触面積を確保することができるため、耐摩耗性を確保することができる。
なお、図2では、斜板2の摺動面21に、摺動面21の中心から同心円状の凹溝27が複数形成されていたが、たとえば、図4に示すように、斜板2の摺動面21に、螺旋状の凹溝27が形成されていてもよい。
特に、図2に示すように、斜板2の摺動面21に、摺動面21の中心から同心円状の凹溝27が複数形成されている場合には、実施形態に係る斜板2は、駆動手段としてのエンジンの駆動力により、ピストンシュー12に対して相対的に摺動することが好ましい。
一方、図4に示すように、斜板2の摺動面21に、摺動面21の中心から螺旋状の凹溝27が形成されている場合には、実施形態に係る斜板2は、駆動手段としてのエンジンの動力により、ピストンシュー12に対して相対的に摺動することが好ましい。エンジンの駆動により、ピストンシュー12の回転方向は一方向となるので、螺旋状の凹溝27により斜板2の摺動面21に安定して潤滑油を供給することができる。
3.斜板2の製造方法について
図5〜7を参照しながら、本実施形態に係る斜板2の製造方法を説明する。
図5〜7を参照しながら、本実施形態に係る斜板2の製造方法を説明する。
まず、斜板2の基材2Aとして、鉄基地23に球状黒鉛24が分散した球状黒鉛鋳鉄(ダクタイル鋳鉄)からなる基材を準備する。ここで、鉄基地23は、フェライトからなるものであってもよく、球状黒鉛鋳鉄としては、FCD370、FCD400、FCD450、FCD500(JIS規格)等を挙げることができ、鉄基地11により多くの黒鉛粒子を含むことができる。鉄基地23は、パーライトからなるものであってもよく、球状黒鉛鋳鉄としては、FCD600、FCD700、FCD850(JIS規格)等を挙げることができる。
次に、基材2Aのうち、ピストンシュー12との摺動面21に、窒素が拡散した窒素拡散層26を形成する。この際、まず、基材2Aに対して窒化処理(窒化系熱処理)を施す。窒化処理は、特に限定されず、一般的な方法でよい。例えば、基材2Aを熱処理炉内に投入し、基材2Aを所定の温度に昇温した後に、熱処理炉内にアンモニアガスを単独又は浸窒処理に悪影響を与えないガス(例えば、窒素等)とともに導入することにより、窒素を浸透拡散させ、次に熱処理炉から基材2Aを取り出し、急冷して焼き入れする。
これにより、図5Aに示すように、基材2Aの摺動面21から順に、鉄窒素化合物層26aと窒素拡散層26とが形成される。たとえば、鉄窒素化合物層26aの層厚さは10〜30μmの範囲にあり、鉄窒素化合物層25aの層厚さは0.2〜0.5mmの範囲にある。
ここで、鉄窒素化合物層26aは、Fe4N、Fe2−3N等の鉄窒素化合物で構成される硬質で脆性の高い層である。したがって、鉄窒素化合物は摺動時に粒子または小片として、基材2Aから脱離し易く、脱離した粒子または小片により相手材であるピストンシュー12を摩耗させることがある。
そこで、本実施形態では、ホーニング加工等の研摩手段を用いて、ピストンシュー12との摺動面12の最表面に、窒化処理により形成された鉄窒素化合物層26aを除去し、窒素が拡散した窒素拡散層26を露出させる研摩加工が行われる。斜板2の摺動面21から鉄窒素化合物層26aが除去されることにより、図5Bに示すように、斜板2の摺動面21は、窒素拡散層26と表面に露出した球状黒鉛24とから形成される。なお、斜板2の摺動面21は、平坦な平滑面となる。
次に、図5Cに示すように、斜板2の摺動面21に対して、ローラ状の押圧工具51で、押圧することにより、窒素拡散層26を露出させた摺動面21に、斜板2の周方向に沿って少なくとも1つの凹溝27をバニシング加工により形成する。本実施形態では、摺動面21の中心に対して、同心円状または螺旋状の凹溝(加工痕)27をバニシング加工(転圧圧縮加工)により形成する。この凹溝29の形成の際に、凹溝27の縁部27aに、鉄基地23により形成された摺動面21から隆起するように、球状黒鉛24の一部を露出させる。
ここで、凹溝27の縁部27aが転圧圧縮加工によって形成される際、その周辺組織には塑性変形に伴う体積移動が起こる。このとき、平滑な摺動面21と凹溝(加工痕)27の凹断面形状との境界部である角部付近において体積移動が最も大きく、当該部位においては、摺動面21上に露出していた球状黒鉛24の一部が、摺動面21の表層組織内より押し出され、摺動面21に隆起突出する形となる。
図2および図4に示すように、転圧圧縮加工の加工軌跡を、摺動面21の中心を加工中心とした同心円形状または螺旋状の凹溝27の加工痕とすることで、凹溝27が斜板2の上を回転摺動するピストンシュー21の摺動軌道面上に配置されるため、両部品の摺動面間に十分な潤滑状態を確保することが可能となる。なお、螺旋状の凹溝27とした場合には、押圧工具51により、一筆書きの如く、連続して凹溝27を形成できるため、効率的に凹溝27を形成することができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
2:斜板、12:ピストンシュー、21:摺動面、23:鉄基地、24:球状黒鉛、26:窒素拡散層、27:凹溝、27a:縁部、50:アキシャルピストン型液圧回転機(ポンプ)
Claims (5)
- アキシャルピストン型液圧回転機のピストンシューに対して摺動する斜板であって、
前記斜板は、鉄基地に球状黒鉛が分散した球状黒鉛鋳鉄からなり、前記ピストンシューとの摺動面には、窒素が拡散した窒素拡散層が形成されており、
前記摺動面には、前記斜板の周方向に沿って少なくとも1つの凹溝が形成されており、
前記凹溝の縁部には、前記鉄基地により形成された摺動面から隆起するように、球状黒鉛の一部が露出しているアキシャルピストン型液圧回転機の斜板。 - 前記凹溝は複数あり、前記複数の凹溝は、同心円状に形成されている請求項1に記載のアキシャルピストン型液圧回転機の斜板。
- 前記凹溝は、半径方向に並ぶ凹溝同士の中心間距離が開口幅の2倍以上である請求項2に記載のアキシャルピストン型液圧回転機の斜板。
- 前記凹溝は、螺旋状に形成されている請求項1に記載のアキシャルピストン型液圧回転機の斜板。
- アキシャルピストン型液圧回転機のピストンシューに対して摺動するアキシャルピストン型液圧回転機の斜板の製造方法であって、
前記斜板の基材として、鉄基地に球状黒鉛が分散した球状黒鉛鋳鉄からなる基材に窒化処理を施す工程と、
前記ピストンシューとの摺動面の最表面に前記窒化処理により形成された、鉄窒素化合物層を除去し、窒素が拡散した窒素拡散層を露出させる工程と、
前記窒素拡散層を露出させた摺動面に、前記斜板の周方向に沿って少なくとも1つの凹溝をバニシング加工により形成し、前記凹溝の縁部に、前記鉄基地により形成された摺動面から隆起するように、球状黒鉛の一部を露出させる工程と、を含むアキシャルピストン型液圧回転機の斜板の製造方法。
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