JP5605921B2 - アクリロニトリルの精製方法 - Google Patents
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Description
特許文献1には、アクリロニトリルの精製において、脱青酸脱水塔に酸及びハイドロキノンを添加して、アクリロニトリル及びシアン化水素の重合を抑制する方法が開示されている。
従来、製品であるアクリロニトリルの収量を増加させることについては、当然ながら多くの関心が寄せられ、検討されてきた。一方、収量の増加という直接的な効果を目的とした改良の他にも、製品品質の安定化という間接的な改善によっても技術上及び経済上大きなメリットがあるが、これまで詳細な検討がなされていないのが現状である。
上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、アクリロニトリルの製造プロセスにおいて、製品品質を安定化させる方法を提供することである。
[1]
蒸留塔と、前記蒸留塔に接続された、塔頂ガスの凝縮器と、を有する蒸留装置を用いてアクリロニトリル、シアン化水素及び水を含む溶液を蒸留する工程を含むアクリロニトリルの精製方法であって、
前記蒸留塔のフィード段より上部かつ前記蒸留塔の最上段より下部に位置する温度制御段の温度を一定に維持する工程を含む方法。
[2]
前記凝縮器へ冷媒を供給する管及び/又は前記凝縮器から冷媒を排出する管に調整弁が設けられ、前記温度制御段に温度計が設けられており、
前記温度制御段の目標温度を設定し、
前記温度制御段の温度が前記目標温度より高い場合は前記調整弁の開度を調整して冷媒の供給量を増加させ、
前記温度制御段の温度が前記目標温度より低い場合は前記調整弁の開度を調整して冷媒の供給量を減少させることにより前記温度制御段の温度を一定に維持する、上記[1]記載の方法。
[3]
前記温度制御段の温度の上限値及び下限値を設定し、前記温度制御段の温度が前記下限値以上、前記上限値以下で推移するように、前記冷媒の供給量を前記調整弁によって調整する、上記[2]記載の方法。
[4]
前記蒸留塔にリボイラーから一定の熱量を与えながら前記凝縮器の除熱量を増減し、
各除熱量において、前記蒸留塔のフィード段より上部かつ前記蒸留塔の最上段より下部に位置する各段の温度と、
前記各段におけるアクリロニトリル濃度及びシアン化水素濃度を測定し、
前記蒸留塔のフィード段より上部かつ前記蒸留塔の最上段より下部に位置する段であって、前記アクリロニトリル濃度が前記シアン化水素濃度より低い段のうち、最も下部の段(最下段)を、温度制御段に設定し、
前記各除熱量における各段の温度から、前記蒸留塔の塔頂から留出するアクリロニトリルの濃度が最小になるように、前記温度制御段の目標温度を決定する工程を含む、上記[1]〜[3]のいずれか記載のアクリロニトリルの精製方法。
[5]
前記蒸留塔にリボイラーから一定の熱量を与えながら前記凝縮器の除熱量を増減し、
各除熱量において、前記蒸留塔のフィード段より上部かつ前記蒸留塔の最上段より下部に位置する各段の温度と、
前記各段におけるアクリロニトリル濃度及びシアン化水素濃度を測定し、
前記蒸留塔のフィード段より上部かつ前記蒸留塔の最上段より下部に位置する段であって、前記アクリロニトリル濃度が前記シアン化水素濃度より高い段のうち、最も上部の段(最上段)を、温度制御段に設定し、
前記各除熱量における各段の温度から、前記蒸留塔の塔頂から留出するアクリロニトリルの濃度が最小になるように、前記温度制御段の目標温度を決定する工程を含む、上記[1]〜[3]のいずれか記載のアクリロニトリルの精製方法。
[6]
蒸留塔と、
前記蒸留塔のフィード段より上部かつ前記蒸留塔の最上段より下部に位置する温度制御段に設けられた温度計と、
前記蒸留塔に連結された凝縮器と、
前記凝縮器に連結された冷媒を供給する管及び冷媒を排出する管と、
前記冷媒を供給する管及び/又は冷媒を排出する管に取り付けられた冷媒の供給量を調整するための調整弁と、を有する蒸留装置であって、
前記温度計は温度調節計を介して前記調整弁に接続されており、
前記温度計によって前記温度制御段の温度が前記温度調節計に送信され、
前記温度調節計によって前記温度制御段の温度が目標温度より高い場合には前記調整弁の開度が調整されることにより冷媒の供給量が増やされ、
前記温度制御段の温度が目標温度より低い場合には前記調整弁の開度が調整されることにより冷媒の供給量が減らされ、
アクリロニトリル、シアン化水素及び水の分離精製に用いられる、蒸留装置。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。装置や部材の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
蒸留塔と、前記蒸留塔に接続された、塔頂ガスの凝縮器と、を有する蒸留装置を用いてアクリロニトリル、シアン化水素及び水を含む溶液を蒸留する工程を含むアクリロニトリルの精製方法であって、
前記蒸留塔のフィード段より上部かつ前記蒸留塔の最上段より下部に位置する温度制御段の温度を一定に維持する工程を含む方法である。
急冷塔6上部から取り出されるガスをライン8により吸収塔9に導入する。吸収塔9の塔頂に回収塔12から抜き出した水を吸収水としてライン14から供給し、反応生成ガス中のアクリロニトリル、アセトニトリル及びシアン化水素を水に吸収させる。吸収されなかったプロピレン、プロパン、酸素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素等及び微量の有機物等は、吸収塔の塔頂のライン11より抜き出す。吸収塔9の塔底液はライン10より回収塔12に供給する。
回収塔12の塔頂に抽出水をライン15から導入し、抽出蒸留によりアセトニトリルを抽出分離する。アセトニトリルはライン16よりプロセス系外に抜き出す。また、大部分の水はライン13よりプロセス系外に抜き出す。回収塔の塔頂からライン17によりアクリロニトリル、シアン化水素及び水を留出し、図示していない凝縮器で凝縮した後、図示していないデカンターで有機層と水層の二層に分離する。アクリロニトリル、シアン化水素及び少量の水を含む有機層を脱青酸脱水塔18に供給する。水層は、(ライン10より)回収塔供給液又は(ライン15より)抽出水等として、前工程にリサイクルする。
温度制御段の温度の上限値及び下限値を設定する場合には、温度制御段の温度が下限値以上、上限値以下で推移するように、冷媒の供給量を調整弁によって調整することができる。
まず、リボイラーの加熱量と凝縮器の除熱量を一定にして、キー物質の濃度(質量%)を各段において調べる(濃度プロファイル)。併せて、各段の温度も測定しておく(温度プロファイル)。次いで、リボイラーの加熱量は変更しないで、凝縮器の除熱量のみを変更し、濃度プロファイル及び温度プロファイルを測定する。凝縮器の除熱量が異なる場合のそれぞれの塔内の温度プロファイルを比較した時、仮に、フィード段の温度同士及び最上段の温度同士がそれぞれの場合で同一であっても、フィード段より上部かつ最上段より下部に位置する各段の温度が異なる場合があり、このとき、各ケースの塔頂及び塔底のキー物質濃度には相違が生じる。つまり、フィード段及び/又は最上段の温度のみを監視していても、塔頂及び塔底のキー物質の濃度を制御することはできない。本発明者は、フィード段より上部かつ最上段より下部に位置する段の温度変化が、キー物質濃度に影響することを発見した。
そして、濃度プロファイルにおいて塔頂及び塔底のキー物質の濃度が逆転する段、具体的には、アクリロニトリル濃度がシアン化水素濃度より低い段のうち、最も下部の段(最下段)の温度、及び/又はアクリロニトリル濃度がシアン化水素濃度より高い段のうち、最も上部の段(最上段)は、塔頂及び/又は塔底のキー物質濃度に強い相関を示すことを見出した。
アクリロニトリルは塔底において高濃度であり、シアン化水素は塔頂において高濃度であるため、両者の濃度はある段で逆転することになるが、この逆転する段はフィード段より上部であって、最上段より下部に位置しており、この段の温度が塔頂及び/又は塔底におけるキー物質の濃度に影響する。従って、濃度プロファイルを参照して、キー物質濃度が逆転する段を、温度制御段の位置として決定することが好ましい。そして、好ましい温度プロファイルにおけるその温度制御段の温度から、目標温度を設定することができる。一般的には好ましい温度プロファイルにおいて、温度制御段の温度は急激な変化を示し、温度プロファイルの変曲点が温度制御段に該当する場合が多い。
前記蒸留塔にリボイラーから一定の熱量を与えながら前記凝縮器の除熱量を増減し、
各除熱量において、前記蒸留塔のフィード段より上部かつ前記蒸留塔の最上段より下部に位置する各段の温度と、
前記各段におけるアクリロニトリル濃度及びシアン化水素濃度を測定し、
前記蒸留塔のフィード段より上部かつ前記蒸留塔の最上段より下部に位置する段であって、前記アクリロニトリル濃度が前記シアン化水素濃度より低い段のうち、最も下部の段(最下段)及び/又は前記アクリロニトリル濃度が前記シアン化水素濃度より高い段のうち、最も上部の段(最上段)を、温度制御段に設定し、
前記各除熱量における各段の温度から、前記蒸留塔の塔頂から留出するアクリロニトリルの濃度が最小になるように、前記温度制御段の目標温度を決定する工程を含む。
蒸留塔と、
前記蒸留塔のフィード段より上部かつ前記蒸留塔の最上段より下部に位置する温度制御段に設けられた温度計と、
前記蒸留塔に連結された凝縮器と、
前記凝縮器に連結された冷媒を供給する管及び冷媒を排出する管と、
前記冷媒を供給する管及び/又は冷媒を排出する管に取り付けられた冷媒の供給量を調整するための調整弁と、を有する蒸留装置であって、
前記温度計は温度調節計を介して前記調整弁に接続されており、
前記温度計によって前記温度制御段の温度が前記温度調節計に送信され、
前記温度調節計によって前記温度制御段の温度が目標温度を超えた場合には前記調整弁の開度が調整されることにより冷媒の供給量が増やされ、前記温度制御段の温度が目標温度未満の場合には前記調整弁の開度が調整されることにより冷媒の供給量が減らされる、蒸留装置。
アクリロニトリルの分析は、以下の装置及び条件でガスクロマトグラフィーにより行った。
ガスクロマトグラフィーは、装置として島津GC−17Aを用い、カラムはTC−FFAP 60m×0.32膜厚0.25μmを用いた。検出器はFID、キャリヤーガスにはヘリウムを用いた。
カラム温度条件は、以下の通りであった。
初期温度:50℃
昇温速度:5℃/分
最終温度1:180℃ 15分HOLD
昇温速度:10℃/分
最終温度2:230℃ 10分HOLD
最終温度3:50℃ 5分HOLD
流量計:YKOGAWA製 差圧式流量計(オリフィス型) Differential Pressure Transmitter DP hard EJX
温度計:OKAZAKI製 抵抗温度計 Resistance Thermometer, Temperature Trans
プロピレン、アンモニア及び空気を内径8m、長さ20mの縦型円筒型の流動層反応器1に供給し、プロピレンのアンモ酸化反応を下記の通り行った。流動層反応器1は、その内部に原料ガス分散管や分散板、除熱管及びサイクロンを有していた。脱青酸脱水塔18は、シーブトレイ55段からなり、塔底から数えて37段目にフィード段A、24段目にチムニートレイDを有し、24段にサイドカット流を抜き出すライン23を有し、サイドカットクーラー23b、デカンター23dを経て、23段目にデカンター内の有機層を戻すライン23eを有していた。
流動層触媒は、粒径10〜100μm、平均粒径55μmであるモリブデン−ビスマス−鉄系担持触媒を用い、静止層高2.7mとなるよう充填した。空気分散板から空気を56000Nm3/h供給し、原料ガス分散管からプロピレン6200Nm3/h及びアンモニアを6600Nm3/h供給した。反応温度は440℃となるよう除熱管で制御した。圧力は0.70kg/cm2Gであった。
反応生成ガスを急冷塔6に導入し、水と向流接触させ、未反応のアンモニアを硫酸で中和除去した。急冷塔6から流出したガスをライン8より吸収塔9に導入した。吸収塔9塔頂のライン14より吸収水を導入し、ガスと向流接触させ、ガス中のアクリロニトリル、アセトニトリル及びシアン化水素を水中に吸収させた。吸収水量は、吸収塔塔頂から排出されるガス中のアクリロニトリル濃度が100volppmとなるように調整した。吸収されなかったガスは、吸収塔塔頂ライン11より取り出し、焼却した。
吸収塔塔底液を80℃に予熱し、回収塔12に供給した。回収塔12でアセトニトリル及び大部分の水を分離し、塔頂ライン17からアクリロニトリル、シアン化水素及び水を留出させた。該留出蒸気を凝縮し、図示していない回収塔デカンターで有機層と水層を形成させ、水層は回収塔12の供給ライン10にリサイクルし、有機層は脱青酸脱水塔18に供給した。
脱青酸脱水塔18へのフィード液は、ライン17に設置された図示していない流量計及び温度計により、質量及び温度を測定した。測定値は、それぞれ13595kg/h及び35.0℃であった。
脱青酸脱水塔18の塔頂ライン19から粗シアン化水素ガスを抜き出して凝縮器20に送り、冷却して分縮した。凝縮器20に用いた冷媒20aは、6℃の水であった。凝縮したシアン化水素液を塔頂に還流し、凝縮しなかった不純物の少ないシアン化水素ガスをライン21から系外に抜き出した。
脱青酸脱水塔18の24段から塔内液を抜き出し、サイドカットクーラー23bで冷却した。サイドカットクーラー23bに用いた冷媒23aは、25℃の水であった。サイドカットクーラーの除熱量Q3は、デカンター23dの液温が30℃となるように、冷媒23aの流量で調整した。塔から抜き出したサイド流は、デカンター23dにて有機層と水層の二層に分離し、水層は、ライン23fにより抜き出し、回収塔12の供給液にリサイクルした。有機層はライン23eにより、塔の23段に戻した。
リボイラー24aの熱源には、回収塔12下部から抜き出した110℃のプロセス水を用いた。与えた熱量Q1は200×103kcal/h/t−アクリロニトリルとし、製品塔25にて製品として取得したアクリロニトリルの質量が、時間当たり11.5tであったので、2300×103kcal/hとなるよう、リボイラー24aに通じるプロセス水24bの流量を調整した。
塔底ライン24から粗アクリロニトリルを抜き出し、製品塔25に送った。塔底抜出液は、ライン24に設置された図示していない流量計により質量を測定し、その測定値は、11585kg/hであった。塔底抜出液の温度は、脱青酸脱水塔18の塔底の液温と同一であり86℃であった。
ここで、リボイラー24aの加熱量と凝縮器20の除熱量を一定にして、フィード段より上部の各段におけるアクリロニトリル濃度とシアン化水素濃度を測定した結果、アクリロニトリル濃度がシアン化水素濃度より低い段のうち、最も下部の段は塔底から数えて51段であった。
次に、リボイラー24aの加熱量を一定としたままで、塔頂から留出するシアン化水素中のアクリロニトリル濃度を300ppmとなるように凝縮器の除熱量を調整した結果、当該段の温度は48℃であった。
ここで当該段を温度制御段B、当該段に設置された温度計を温度計22b、当該段の目標温度を48℃として、当該段の温度が48℃となるように凝縮器の除熱量を調整した。
アクリロニトリル生産量を11.5±0.2t/hとした時期約6ヶ月間、上記運転を継続した。この間、温度制御段の温度は、48±0.4℃であった。
脱青酸脱水塔は安定的に運転でき、この間、脱青酸脱水塔塔頂から留出するシアン化水素中のアクリロニトリル濃度は300±20ppmであり、塔底から抜き出されるアクリロニトリル中のシアン化水素濃度は40±10ppmであった。またこの間、アクリロニトリル製品中のシアン化水素濃度は5ppm以下であり、高品質のアクリロニトリル製品を安定的に取得できた。また、粗シアン化水素の純度も安定しており、シアン化水素誘導体の品質にも問題はなかった。
生産計画の変更によりアクリロニトリル生産量を12.7t/hに増量したこと以外は、実施例1と同一の設備及び方法でアクリロニトリルを製造した。
リボイラー熱量は2540×103kcal/hまで増加させた。脱青酸脱水塔18の温度制御段Bの温度が48℃となるよう温度調節計22aを介して、冷媒20aの流量調節弁20bを制御した。脱青酸脱水塔18の塔内の各温度及びデカンター23dの温度は、実施例1とほぼ同一であった。
アクリロニトリル生産量を12.7±0.2t/hとした時期約3ヶ月間、上記運転を継続した。この間、温度制御段の温度は、48±0.4℃であった。脱青酸脱水塔18は安定的に運転でき、この間、脱青酸脱水塔塔頂から留出するシアン化水素中のアクリロニトリル濃度は300±20ppmであり、塔底から抜き出されるアクリロニトリル中のシアン化水素濃度は40±10ppmであった。またこの間、アクリロニトリル製品中のシアン化水素濃度は5ppm以下であり、高品質のアクリロニトリル製品を安定的に取得できた。また、粗シアン化水素の純度も安定しており、シアン化水素誘導体の品質にも問題はなかった。
実施例1と同じ条件でアクリロニトリルの製造を行い、リボイラー24aの加熱量と凝縮器20の除熱量を一定にして、フィード段より上部の各段におけるアクリロニトリル濃度とシアン化水素濃度を測定した結果、アクリロニトリル濃度がシアン化水素濃度より高い段のうち、最も下部の段は塔底から数えて50段であった。
次に、リボイラー24aの加熱量を一定としたままで、塔頂から留出するシアン化水素中のアクリロニトリル濃度を300ppmとなるように凝縮器の除熱量を調整した結果、当該段の温度は51℃であった。
ここで当該段を温度制御段B、当該段に設置された温度計を温度計22b、当該段の目標温度を48℃として、当該段の温度が51℃となるように凝縮器の除熱量を調整した。
アクリロニトリル生産量を11.5±0.2t/hとした時期約6ヶ月間、上記運転を継続した。この間、温度制御段の温度は、51±0.4℃であった。脱青酸脱水塔は安定的に運転でき、この間、脱青酸脱水塔塔頂から留出するシアン化水素中のアクリロニトリル濃度は300±20ppmであり、塔底から抜き出されるアクリロニトリル中のシアン化水素濃度は40±10ppmであった。またこの間、アクリロニトリル製品中のシアン化水素濃度は5ppm以下であり、高品質のアクリルニトリル製品を安定的に取得できた。また、粗シアン化水素の純度も安定しており、シアン化水素誘導体の品質にも問題はなかった。
プロパン、アンモニア及び空気を実施例1と同じ流動層反応器1に供給し、プロパンのアンモ酸化反応を下記の通り行った。
流動層触媒は、粒径10〜100μm、平均粒径55μmであるモリブデン−バナジウム系担持触媒を用い、静止層高2.2mとなるよう充填した。空気分散板から空気を64500Nm3/h供給し、原料ガス分散管からプロパン4300Nm3/h及びアンモニアを4300Nm3/h供給した。反応温度は440℃となるよう除熱管で制御した。圧力は0.75kg/cm2Gであった。
反応生成ガスを急冷塔6に導入し、水と向流接触させた。また、未反応のアンモニアを硫酸で中和除去した。
急冷塔6から取り出したガスをライン8より吸収塔9に導入した。塔頂ライン14より吸収水を導入し、ガスと向流接触させ、ガス中のアクリロニトリル、アセトニトリル及びシアン化水素を水中に吸収させた。未吸収のガスは、吸収塔塔頂ライン11より取り出し、焼却した。吸収塔塔頂から取り出したガス中のアクリロニトリル濃度が100volppmとなるよう、吸収水量を調整した。
吸収塔塔底液を予熱し、回収塔12に供給した。回収塔でアセトニトリル及び大部分の水を分離し、塔頂ライン17からアクリロニトリル、シアン化水素及び水を留出させた。該留出蒸気を凝縮し、有機層と水層を形成させ、水層は回収塔の供給ライン10にリサイクルし、有機層は脱青酸脱水塔18に供給した。
脱青酸脱水塔18へのフィード液は、ライン17に設置された図示していない流量計及び温度計により、質量及び温度を測定した。測定値は、それぞれ6219kg/h及び35.0℃であった。
脱青酸脱水塔18の塔頂ライン19から粗シアン化水素ガスを抜き出して凝縮器20に送り、冷却して分縮した。凝縮器20に用いた冷媒20aは、6℃の水であった。凝縮したシアン化水素液を塔頂に還流し、凝縮しなかった不純物の少ないシアン化水素ガスをライン21から系外に抜き出した。
脱青酸脱水塔18の24段から塔内液を抜き出し、サイドカットクーラー23bで冷却した。サイドカットクーラー23bに用いた冷媒23aは、25℃の水であった。サイドカットクーラーの除熱量Q3は、デカンター23dの液温が30℃となるように、冷媒23aの流量で調整した。塔から抜き出したサイド流は、デカンター23dにて有機層と水層の二層に分離し、水層は、ライン23fにより抜き出し、回収塔12の供給液にリサイクルした。有機層はライン23eにより、塔の23段に戻した。
リボイラー24aの熱源には、回収塔12下部から抜き出した110℃のプロセス水を用いた。与えた熱量Q1は、250×103kcal/h/t−アクリロニトリルとし、製品塔25にて製品として取得したアクリロニトリルの質量が、時間当たり5.22tであったので、1305×103kcal/hとなるよう、リボイラー24aに通じるプロセス水24bの流量を調整した。
塔底ライン24から粗アクリロニトリルを抜き出し、製品塔25に供給した。塔底抜出液は、ライン24に設置された図示していない流量計により、質量を測定し、その測定値は5312kg/hであった。塔底抜出液の温度は、脱青酸脱水塔18の塔底の液温と同一であり86℃であった。
ここで、リボイラー24aの加熱量と凝縮器20の除熱量を一定にして、フィード段より上部の各段におけるアクリロニトリル濃度とシアン化水素濃度を測定した結果、アクリロニトリル濃度がシアン化水素濃度より低い段のうち、最も下部の段は塔底から数えて51段であった。
次に、リボイラー24aの加熱量を一定としたままで、塔頂から留出するシアン化水素中のアクリロニトリル濃度を300ppmとなるように凝縮器の除熱量を調整した結果、当該段の温度は48℃であった。
ここで当該段を温度制御段B、当該段に設置された温度計を温度計22b、当該段の目標温度を48℃として、当該段の温度が48℃となるように凝縮器の除熱量を調整した。
アクリロニトリル生産量を5.22±0.17t/hとした時期約4ヶ月間、上記運転を継続した。この間、温度制御段Bの温度は、48±0.4℃であった。脱青酸脱水塔は安定的に運転でき、この間、脱青酸脱水塔塔頂から留出するシアン化水素中のアクリロニトリル濃度は300±10ppmであり、塔底から抜き出されるアクリロニトリル中のシアン化水素濃度は40±10ppm以下であった。またこの間、アクリロニトリル製品中のシアン化水素濃度は5ppm以下であり、高品質のアクリロニトリル製品を安定的に取得できた。また、粗シアン化水素の純度も安定しており、シアン化水素誘導体の品質にも問題はなかった。
実施例4と同じ条件でアクリロニトリルの製造を行い、リボイラー24aの加熱量と凝縮器20の除熱量を一定にして、フィード段より上部の各段におけるアクリロニトリル濃度とシアン化水素濃度を測定した結果、アクリロニトリル濃度がシアン化水素濃度より高い段のうち、最も下部の段は塔底から数えて50段であった。
次に、リボイラー24aの加熱量を一定としたままで、塔頂から留出するシアン化水素中のアクリロニトリル濃度を300ppmとなるように凝縮器の除熱量を調整した結果、当該段の温度は51℃であった。
ここで当該段を温度制御段B、当該段に設置された温度計を温度計22b、当該段の目標温度を48℃として、当該段の温度が51℃となるように凝縮器の除熱量を調整した。
アクリロニトリル生産量を5.22±0.17t/hとした時期約4ヶ月間、上記運転を継続した。この間、温度制御段Bの温度は、51±0.4℃であった。脱青酸脱水塔は安定的に運転でき、この間、脱青酸脱水塔塔頂から留出するシアン化水素中のアクリロニトリル濃度は300±20ppmであり、塔底から抜き出されるアクリロニトリル中のシアン化水素濃度は40±10ppmであった。またこの間、アクリロニトリル製品中のシアン化水素濃度は5ppm以下であり、高品質のアクリロニトリル製品を安定的に取得できた。また、粗シアン化水素の純度も安定しており、シアン化水素誘導体の品質にも問題はなかった。
脱青酸脱水塔の最上段を温度制御段とし、当該段の温度が30℃となるよう運転したこと以外は、実施例1と同一の設備及び方法でプロピレンのアンモ酸化反応を実施し、3ヶ月間アクリロニトリルを製造した。この間、温度制御段の温度は30℃で変化がなかったが、製造開始から1ヵ月後に、脱青酸脱水塔塔頂から留出するシアン化水素中のアクリロニトリル濃度が1000ppmに上昇した。凝縮器の除熱量Q2が不足していると判断し、凝縮器に通じる冷媒の流量を上げてQ2を増加させところ、脱青酸脱水塔の最上段の温度は30℃で変化がなかったが、塔頂から留出するシアン化水素中のアクリロニトリル濃度は300ppmまで減少した。
製造開始から2ヵ月後に製品として取得したアクリロニトリル中のシアン化水素の濃度が20ppmまで上昇しオフスペック品となった。この時、脱青酸脱水塔の塔底液中のシアン化水素濃度は、120wtppmであった。凝縮器の除熱量Q2が過多と判断し、凝縮器に通じる冷媒の流量を下げてQ2を減少させたところ、製品として取得したアクリロニトリル中のシアン化水素濃度が5ppmまで減少しオンスペック品となった。また、塔頂から留出するシアン化水素中に留出するアクリロニトリルの割合は600ppmまで上昇し、シアン化水素誘導体の品質が落ちていた。この間、脱青酸脱水塔の最上段の温度は30℃で変化がなかった。
脱青酸脱水塔の最上段を温度制御段とし、当該段の温度が30℃となるよう運転したこと以外は、実施例4と同一の設備及び方法でプロパンのアンモ酸化反応を実施し、2ヶ月間アクリロニトリルを製造した。この間、温度制御段の温度は30℃で変化がなかったが、製造開始から2週間後に、脱青酸脱水塔塔頂から留出するシアン化水素中のアクリロニトリル濃度が1000ppmに上昇した。凝縮器の除熱量Q2が不足していると判断し、凝縮器に通じる冷媒の流量を上げてQ2を増加させところ、脱青酸脱水塔の最上段の温度は30℃で変化がなかったが、塔頂から留出するシアン化水素中のアクリロニトリル濃度は300ppmまで減少した。
製造開始から4週間後に製品として取得したアクリロニトリル中のシアン化水素の濃度が20ppmまで上昇しオフスペック品となった。この時、脱青酸脱水塔の塔底液中のシアン化水素濃度は、120wtppmであった。凝縮器の除熱量Q2が過多と判断し、凝縮器に通じる冷媒の流量を下げてQ2を減少させたところ、製品として取得したアクリロニトリル中のシアン化水素濃度が5ppmまで減少しオンスペック品となった。また、塔頂から留出するシアン化水素中に留出するアクリロニトリルの割合は600ppmまで上昇し、シアン化水素誘導体の品質が落ちていた。この間、脱青酸脱水塔の最上段の温度は30℃で変化がなかった。
2 プロピレン及び/又はプロパンの供給管
3 アンモニアの供給管
4 空気(酸素)の供給管
6 急冷塔
5、7、8 ライン
9 吸収塔
10、11 ライン
12 回収塔
13、14、15、16、17 ライン
18 脱青酸脱水塔
19 ライン
20 脱青酸脱水塔凝縮器
20a 脱青酸脱水塔凝縮器に供給する冷媒
20b 脱青酸脱水塔凝縮器に供給する冷媒の流量調節弁
20b’ 凝縮器の冷媒の供給管と排出管とを接続する流量調節弁
21、22 ライン
22a 温度調節計
22b 温度検出器(温度計)
23、23c、23e、23f ライン
23a 脱青酸脱水塔サイドカットクーラーに供給する冷媒
23b 脱青酸脱水塔サイドカットクーラー
23d 脱青酸脱水塔デカンター
24、24c ライン
24a 脱青酸脱水塔リボイラー
24b 脱青酸脱水塔リボイラーに供給する熱媒
25 製品塔
26、27、28、29 ライン
30 製品塔凝縮器
31 ライン
A フィード段
B 温度制御段
C 最上段
D チムニートレイ
Claims (6)
- 蒸留塔と、前記蒸留塔に接続された、塔頂ガスの凝縮器と、を有する蒸留装置を用いてアクリロニトリル、シアン化水素及び水を含む溶液を蒸留する工程を含むアクリロニトリルの精製方法であって、
前記蒸留塔のフィード段より上部かつ前記蒸留塔の最上段より下部に位置する温度制御段の温度を一定に維持する工程を含む方法。 - 前記凝縮器へ冷媒を供給する管及び/又は前記凝縮器から冷媒を排出する管に調整弁が設けられ、前記温度制御段に温度計が設けられており、
前記温度制御段の目標温度を設定し、
前記温度制御段の温度が前記目標温度より高い場合は前記調整弁の開度を調整して冷媒の供給量を増加させ、
前記温度制御段の温度が前記目標温度より低い場合は前記調整弁の開度を調整して冷媒の供給量を減少させることにより前記温度制御段の温度を一定に維持する、請求項1記載の方法。 - 前記温度制御段の温度の上限値及び下限値を設定し、前記温度制御段の温度が前記下限値以上、前記上限値以下で推移するように、前記冷媒の供給量を前記調整弁によって調整する、請求項2記載の方法。
- 前記蒸留塔にリボイラーから一定の熱量を与えながら前記凝縮器の除熱量を増減し、
各除熱量において、前記蒸留塔のフィード段より上部かつ前記蒸留塔の最上段より下部に位置する各段の温度と、
前記各段におけるアクリロニトリル濃度及びシアン化水素濃度を測定し、
前記蒸留塔のフィード段より上部かつ前記蒸留塔の最上段より下部に位置する段であって、前記アクリロニトリル濃度が前記シアン化水素濃度より低い段のうち、最も下部の段(最下段)を、温度制御段に設定し、
前記各除熱量における各段の温度から、前記蒸留塔の塔頂から留出するアクリロニトリルの濃度が最小になるように、前記温度制御段の目標温度を決定する工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載のアクリロニトリルの精製方法。 - 前記蒸留塔にリボイラーから一定の熱量を与えながら前記凝縮器の除熱量を増減し、
各除熱量において、前記蒸留塔のフィード段より上部かつ前記蒸留塔の最上段より下部に位置する各段の温度と、
前記各段におけるアクリロニトリル濃度及びシアン化水素濃度を測定し、
前記蒸留塔のフィード段より上部かつ前記蒸留塔の最上段より下部に位置する段であって、前記アクリロニトリル濃度が前記シアン化水素濃度より高い段のうち、最も上部の段(最上段)を、温度制御段に設定し、
前記各除熱量における各段の温度から、前記蒸留塔の塔頂から留出するアクリロニトリルの濃度が最小になるように、前記温度制御段の目標温度を決定する工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載のアクリロニトリルの精製方法。 - 蒸留塔と、
前記蒸留塔のフィード段より上部かつ前記蒸留塔の最上段より下部に位置する温度制御段に設けられた温度計と、
前記蒸留塔に連結された凝縮器と、
前記凝縮器に連結された冷媒を供給する管及び冷媒を排出する管と、
前記冷媒を供給する管及び/又は冷媒を排出する管に取り付けられた冷媒の供給量を調整するための調整弁と、を有する蒸留装置であって、
前記温度計は温度調節計を介して前記調整弁に接続されており、
前記温度計によって前記温度制御段の温度が前記温度調節計に送信され、
前記温度調節計によって前記温度制御段の温度が目標温度より高い場合には前記調整弁の開度が調整されることにより冷媒の供給量が増やされ、
前記温度制御段の温度が目標温度より低い場合には前記調整弁の開度が調整されることにより冷媒の供給量が減らされ、
アクリロニトリル、シアン化水素及び水の分離精製に用いられる、蒸留装置。
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