JP5605091B2 - コークス炉におけるコークス押出負荷の推定方法 - Google Patents
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Description
また、建設されて30年以上が経過して炉体の老朽化が進展しているコークス炉も増えており、そのような長期間稼動しているコークス炉の炭化室では、炉壁や炉底で損傷(凹凸、煉瓦角欠け、表面肌荒れ、等)が進展している。
操業条件の変化によってコークスケーキと炉壁面との隙間が小さくなったり、炉壁の損傷などにより局所的に炉壁の強度が低下していると、押出しに必要な力が押出し機の能力を上回ったり、押出し中に炉壁煉瓦が破孔するなど、大きなトラブルにつながる可能性が著しく増大する。
このため、炭化室からコークスケーキを押出すのに必要な力や炉壁に作用する荷重(炉壁押し圧)を事前に評価し、押出し機や炭化室の炉壁に過度の荷重が付加されないようにすることがより重要になっている。
この技術では、炭化室の炉壁面を複数の領域に区分けし、炭化室の炉壁面のプロファイルから、区分けした領域に凹凸がある場合に、コークスの押出し時に、その凹凸によってコークスが受ける局所的な抵抗を、局所抵抗指数として指標化し、導出した局所抵抗指数を集計して炭化室の炉壁面全体における抵抗指数を導出し、予め求められた抵抗指数と押出負荷との関係からコークスケーキの押出負荷を求めるようにしている。
その結果、長期稼働のコークス炉炭化室の炉壁面や炉底面には、凹凸の他にも肌荒れ(微小凹凸)や煉瓦の欠損が数多く認められ、それらがコークスケーキの押出し力や炉壁押し圧を増加させる原因になっていることが予想された。
従来、これらの損傷がコークスケーキの押出し力に与える影響を定量的に評価する手法は開示されていない。
その結果、炉壁面の表面粗さの程度を、表面粗さパラメータの一つである表面波形Pz(断面曲線の最大高さ)で表した場合、コークス押出負荷は、炉壁面における表面波形Pzの値と指数関数的な関係にあるという知見を得た。
そして、前述の炉壁面診断補修装置で得られた炉壁面の表面プロファイルより、炉壁面に存在する微小凹凸領域の表面波形Pzを求め、予め求めておいた表面波形Pzとコークス押出負荷との関係を用いて、炉壁の微小凹凸領域に由来するコークス押出負荷を推定するようにして上記課題を解決した。
(1) 炭化室の炉壁に相当する側壁に、健全な側壁基準面からの高さ又は深さが6mm以下の微小凹凸を形成した押出負荷測定装置を用いた試験用コークスケーキの押出し試験によって、前記微小凹凸に起因するコークス押出負荷を測定し、測定されたコークス押出負荷に基づいて、実コークス炉炭化室の炉壁に存在する、健全な煉瓦基準面からの高さ又は深さが6mm以下の微小凹凸領域に起因するコークス押出負荷を推定する方法であって、
前記側壁に形成された微小凹凸の表面粗さを表す表面波形Pzと前記測定されたコークス押出負荷に基づいて、表面波形Pzとコークス押出負荷との関係を予め求めておき、
実コークス炉炭化室における炉壁のプロファイル情報から、該炉壁に存在する前記微小凹凸領域の表面波形Pzを求め、
得られた実コークス炉の表面波形Pzから、前記予め求めておいた表面波形Pzとコークス押出負荷との関係に基づいて、実コークス炉炭化室における前記微小凹凸領域に起因するコークス押出負荷を求めることを特徴とするコークス押出負荷の推定方法。
(2) 前記押出し試験において、試験用コークスケーキに作用する押出し力に対抗する反力の値および試験用のコークスケーキに載置する錘の重量を変化させることにより、炉壁面内における前記微小凹凸領域の炉長方向および炉高方向の存在位置と関連して表面波形Pzとコークス押出負荷との関係を予め求めておき、
前記炉壁のプロファイル情報から、さらに前記微小凹凸領域の炉長方向および炉高方向の存在位置を求め、
前記予め求めておいた微小凹凸領域の炉長方向および炉高方向の存在位置に関連した表面波形Pzとコークス押出負荷との関係に基づいて、炉長方向および炉高方向における個々の微小凹凸領域に起因するコークス押出負荷を推定することを特徴とする上記(1)に記載のコークス押出負荷の推定方法。
(3) 前記炉壁のプロファイル情報から、実コークス炉炭化室におけるコークス押出負荷を求めるにあたり、上記(2)に記載の方法により推定された炉長方向および炉高方向における個々の微小凹凸領域に起因するコークス押出負荷を、炉壁の凹凸情報に基づいて推定される押出負荷に加算することを特徴とするコークス押出負荷の推定方法。
コークス炉の炭化室からコークスケーキを押出す際には、押出し機ラムによってコークスケーキに付加された押出方向の力の一部が側圧として炉壁面に作用する(例えば、非特許文献1参照)。炉壁に微小凹凸が存在すると、コークス表面と炉壁面の間の摩擦力が増大し、それにともなってコークスケーキの押出し力と炉壁押し圧も増大する。そのため、微小凹凸による影響を評価することが必要である。
実コークス炉では炭化室のPS(押出し機側)からCS(コークガイド車側)に行くにしたがって、炉幅が徐々に広がるテーパー構造となっている場合があり、PSからCSにかけて炉長方向にコークスケーキ内を伝達する力(または、圧力)が減少する。あるいは、炉幅がテーパー構造となっていない場合でも、押出し力の一部は炉壁方向に分散することにより、コークスケーキ内を伝達する力が同様に減少する。この炉長方向の位置の違いによるコークスケーキに作用する力(または、圧力)の違いを擬似的に再現するために、炉長方向の位置を想定した反力を付加するようにしている。
本試験では、側壁材としては、多孔質カーボン、珪石煉瓦、サンドブラスト処理した珪石煉瓦、錆御影敷石 、およびビシャン加工した御影石の5種類を用いたが、コークス炉炭化室の表面状態を再現できるなら、どのような材料でも良いことは言うまでもない。
また、静止摩擦係数は、各材料の表面に一個のコークス塊を乗せて徐々に傾斜させていき、コークス塊が動き始めた瞬間の傾斜角度を読み取る傾斜法によって算出した。
上記側壁材の表面波形Pzと静止摩擦係数の値の例を表1に示す。
その際、コークスケーキ1を構成するコークス塊と側壁材6、7の間の空隙量を、実コークス炉の実態に合わせて所定の値に調整しておく。
押出しの開始後、コークスケーキ1は、(押出し力−反力)の力によって移動する。その際に、各ロードセルにより、側面パネル5、5にかかる壁押し力Fw、押出し力Fp、及び、反力Frのそれぞれを連続的に測定する。
また、コークスケーキ1の上部に積載する錘の重量を変えることにより、実コークス炉におけるコークスケーキ1の炉高方向の想定位置を変えることができ、炉高方向の任意の位置でのコークス押出負荷を評価することができる。
なお、図1において、横軸の表面波形Pzは、その値が大きいほど、表面が粗いことを意味する。また、図中の符号は、1:多孔質カーボン、2:珪石煉瓦、3:サンドブラスト処理した珪石煉瓦、4:錆御影敷石 、5:ビシャン加工した御影石をそれぞれ示している。
なお、図2(a)(b)に、静止摩擦係数とコークス押出負荷との関係を示すが、表面波形Pzの場合と同様に表面が粗くなると押出負荷が上昇する傾向を示すが、表面波形Pzの方が摩擦係数よりも明瞭な相関が認められる。摩擦係数よりも表面波形Pzの方が、押出し抵抗をより的確に標記できる指数であることがわかる。
得られた測定値を基に、所定面積あたりの微小凹凸領域について、その表面波形Pzと押出負荷との関係を、その微小凹凸領域の炉壁面内の存在位置(炉壁の炉長さ方向および炉高方向の位置)と関連させて求めておく。
その際に、さらに、以上のようにして求めた炉長方向および炉高方向の複数の領域における微小凹凸による押出負荷を、炉壁凹凸と同様に指数化して、微小凹凸がある領域の局所抵抗指数に加算すればよい。
これに対して、上述したように、本発明法で求められる炉壁の局所領域の微小凹凸による押出負荷の影響を加算すれば、コークス押出負荷の予測精度をより一層向上させることができ、前記のような操業上のトラブルが発生する可能性を低下させることができる。
2、3 側面パネル
4 押出し側当て板
5 受け側当て板
6、7 側壁材
Fp 押出し力
Fr 反力(受け力)
Fw 壁押し力
Claims (3)
- 炭化室の炉壁に相当する側壁に、健全な側壁基準面からの高さ又は深さが6mm以下の微小凹凸を形成した押出負荷測定装置を用いた試験用コークスケーキの押出し試験によって、前記微小凹凸に起因するコークス押出負荷を測定し、測定されたコークス押出負荷に基づいて、実コークス炉炭化室の炉壁に存在する、健全な煉瓦基準面からの高さ又は深さが6mm以下の微小凹凸領域に起因するコークス押出負荷を推定する方法であって、
前記側壁に形成された微小凹凸の表面粗さを表す表面波形Pzと前記測定されたコークス押出負荷に基づいて、表面波形Pzとコークス押出負荷との関係を予め求めておき、
実コークス炉炭化室における炉壁のプロファイル情報から、該炉壁に存在する前記微小凹凸領域の表面波形Pzを求め、
得られた実コークス炉の表面波形Pzから、前記予め求めておいた表面波形Pzとコークス押出負荷との関係に基づいて、実コークス炉炭化室における前記微小凹凸領域に起因
するコークス押出負荷を求めることを特徴とするコークス押出負荷の推定方法。 - 前記押出し試験において、試験用コークスケーキに作用する押出し力に対抗する反力の値および試験用のコークスケーキに載置する錘の重量を変化させることにより、実コークス炉炭化室の炉壁面内における前記微小凹凸領域の炉長方向および炉高方向の存在位置と関連して表面波形Pzとコークス押出負荷との関係を予め求めておき、
前記炉壁のプロファイル情報から、さらに前記微小凹凸領域の炉長方向および炉高方向の存在位置を求め、
前記予め求めておいた微小凹凸領域の炉長方向および炉高方向の存在位置に関連した表面波形Pzとコークス押出負荷との関係に基づいて、実コークス炉炭化室の炉壁に存在する個々の微小凹凸領域に起因するコークス押出負荷を推定することを特徴とする請求項1に記載のコークス押出負荷の推定方法。 - 前記炉壁のプロファイル情報から、実コークス炉炭化室におけるコークス押出負荷を求めるにあたり、請求項2に記載の方法により推定された炉長方向および炉高方向における個々の微小凹凸領域に起因するコークス押出負荷を、炉壁の凹凸情報に基づいて推定された押出負荷に加算することを特徴とするコークス押出負荷の推定方法。
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