JP5505221B2 - コークス炉におけるコークス押出負荷の推定方法 - Google Patents
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Description
また、建設されて30年以上が経過して炉体の老朽化が進展しているコークス炉も増えており、そのような長期間稼動しているコークス炉の炭化室では、炉壁や炉底で損傷(突起や窪みによる凹凸、煉瓦角欠け、表面肌荒れ、等)が進展している。
操業条件の変化によってコークスケーキと炉壁面との隙間が小さくなったり、炉壁の損傷などにより局所的に炉壁の強度が低下していると、押出しに必要な力が押出し機の能力を上回ったり、押出し中に炉壁煉瓦が破孔するなど、大きなトラブルにつながる可能性が著しく増大する。
このため、炭化室からコークスケーキを押出すのに必要な力や炉壁に作用する荷重(炉壁押し圧)を事前に評価し、押出し機や炭化室の炉壁に過度の荷重が負荷されないようにすることがより重要になっている。
この技術では、炭化室の炉壁面を複数の領域に区分けし、炭化室の炉壁面のプロファイルから、区分けした領域に凹凸がある場合に、コークスの押出し時に、その凹凸によってコークスが受ける局所的な抵抗を、局所抵抗指数として指標化し、導出した局所抵抗指数を集計して炭化室の炉壁面全体における抵抗指数を導出し、予め求められた抵抗指数と押出負荷との関係からコークスケーキの押出負荷を求めるようにしている。
本発明者らは、その原因を明らかにするために、予測値との乖離が生じている炭化室の炉壁プロファイルデータを詳細に解析した。
炉壁表面に肌荒れが存在すると、コークスケーキが移動する際に、コークス塊表面と炉壁面の間の摩擦力が増大し、それがコークスケーキの押出し力をさらに増加させる原因になっており、それによって予測値と乖離が生じることが予想された。
従来、炉壁表面の肌荒れがコークスケーキの押出し力に与える影響を定量的に評価する手法は開示されていない。
耐火煉瓦の肌荒れによる摩擦力の増大が、押出負荷に与える影響が最も大きいのは、炉壁面に存在する突起部によって形成された炉幅方向狭小部をコークス塊が通過するときと考えられる。
そこで、種々の肌荒れ状態を模擬的に再現した突起を作成し、これを前述の押出負荷測定装置の側壁に取り付けて、突起の表面粗さの程度がコークス押出負荷に与える影響について調べた。
その結果、炉壁面に形成される突起部の表面粗さの程度を、表面粗さパラメータの一つである最大高さ粗さRzで表した場合、コークス押出負荷は、突起部の表面における最大高さ粗さRzの値と良好な対応関係にあるという知見を得た。
(1) 炭化室の炉壁に相当する側壁に突起部を形成した押出負荷測定装置を用いた試験用コークスケーキの押出し試験によって、前記突起部に起因するコークス押出負荷を測定し、測定されたコークス押出負荷に基づいて、実コークス炉炭化室の炉壁に存在する突起部に起因するコークス押出負荷を推定する方法であって、
異なる表面粗さを有する突起部を形成した側壁を用いて前記押出し試験を実施して、突起部の表面粗さを表す最大高さ粗さRzとコークス押出負荷との関係を予め求めておき、
実コークス炉炭化室における炉壁のプロファイル情報から、該炉壁に存在する突起部の最大高さ粗さRzを求め、
得られた実コークス炉の突起部の最大高さ粗さRzから、前記予め求めておいた最大高さ粗さRzとコークス押出負荷との関係に基づいて、実コークス炉炭化室における前記突起部の表面粗さに起因するコークス押出負荷を求めることを特徴とするコークス押出負荷の推定方法。
(2) 前記押出し試験において、試験用コークスケーキに作用する押出し力に対抗する反力の値および試験用のコークスケーキに載置する錘の質量を変化させることにより、実コークス炉炭化室の炉壁面内における前記突起部の炉長方向および炉高方向の存在位置と関連して最大高さ粗さRzとコークス押出負荷との関係を予め求めておき、
前記炉壁のプロファイル情報から、さらに前記突起部の炉長方向および炉高方向の存在位置を求め、
前記予め求めておいた突起部の炉長方向および炉高方向の存在位置に関連した最大高さ粗さRzとコークス押出負荷との関係に基づいて、実コークス炉炭化室の炉壁に存在する突起部の表面粗さに起因するコークス押出負荷を推定することを特徴とする上記(1)に記載のコークス押出負荷の推定方法。
(3) 前記炉壁のプロファイル情報から、実コークス炉炭化室におけるコークス押出負荷を求めるにあたり、上記(2)に記載の方法により推定された炉長方向および炉高方向における突起部の表面粗さに起因するコークス押出負荷を、炉壁の凹凸情報に基づいて推定された押出負荷に加算することを特徴とするコークス押出負荷の推定方法。
コークス炉の炭化室からコークスケーキを押出す際には、押出し機ラムによってコークスケーキに負荷された押出方向の力の一部が側圧として炉壁面に作用する(例えば、非特許文献1参照)。炉壁に突起部が存在すると、その分だけ炉幅(炉壁間距離)が狭くなるため、コークスケーキを押出す際の抵抗が増大するが、突起の表面に肌荒れがあると、コークス塊表面との間の摩擦力が増大し、それにともなってコークスケーキの押出し力と炉壁押し圧もさらに増大する。そのため、特許文献3に示されるような突起部の大きさの評価に加え、さらに突起表面の表面粗さの影響を評価することが必要である。
実コークス炉では炭化室のPS(押出し機側)からCS(コークガイド車側)に行くにしたがって、炉幅が徐々に広がるテーパー構造となっている場合があり、PSからCSにかけて炉長方向にコークスケーキ内を伝達する力(または、圧力)が減少する。あるいは、炉幅がテーパー構造となっていない場合でも、押出し力の一部は炉壁方向に分散することにより、コークスケーキ内を伝達する力が同様に減少する。この炉長方向の位置の違いによるコークスケーキに作用する力(または、圧力)の違いを擬似的に再現するために、炉長方向の位置を想定した反力を付加するようにしている。
突起6は、種々の炭化室の調査に基づき、図4に示されるような、側面パネル2上面と連続する斜面7及び該パネル上面と平行な水平面8を有する楔形とする。また、斜面7及び水平面8が種々の肌荒れ状態となるように、突起を種々の材質で形成する。
ここでは、多孔質カーボン、珪石煉瓦、表面をサンドブラスト処理した珪石煉瓦、錆御影敷石、およびビシャン加工した御影石の5種類を用いて突起6としたが、突起表面の肌荒れ状態を再現できるなら、どのような材料でも良いことはいうまでもない。
そこで、表面粗さ指数として、粗さ曲線の最大高さ粗さRzを選択し、JIS法の定義(JIS B0601:2001)に準拠する方法で測定した。すなわち、多孔質カーボンと珪石煉瓦は触針式の測定法を用い、残りは、レーザ距離計を用いた非接触式の測定法を用いて測定した。
また、静止摩擦係数は、各材料の表面に一個のコークス塊を乗せて徐々に傾斜させていき、コークス塊が動き始めた瞬間の傾斜角度を読み取る傾斜法によって算出した。
突起に用いた上記材料の最大高さ粗さRzと静止摩擦係数の値の例を表1に示す。
なお、空隙を設けるのは、実コークス炉では、乾留中に、コークスが炉幅方向に収縮することにより、炉壁面とコークスとの間に隙間が形成されるためである。
押出しの開始後、コークスケーキ1は、押出し力Fpによって移動する。その際に、各ロードセルにより、押出し力Fp及び反力Frと、側面パネル2、3にかかる壁押し力Fw1.Fw2を連続的に測定する。
コークスケーキ1の側面が突起の斜面7を上り始めると、反力Frは一定を維持するように制御されているので、押出し力と反力の差が次第に増加して行き、コークスケーキ1が突起6の斜面7を乗り超え、図4(b)に示すように、突起6の水平面8と、それと対向する側面パネル3との間に形成された狭小部を通過する。その際に、押出し力Fpの値は最大値を示す。
また、コークスケーキ1の上部に積載する錘の質量を変えることにより、実コークス炉におけるコークスケーキ1の炉高方向の想定位置を変えることができ、炉高方向の任意の位置でのコークス押出負荷を評価することができる。ここで、錘の質量は、コークスケーキの嵩密度と実コークス炉で想定しているコークスケーキの高さにより設定することができる。
なお、図1において、横軸の最大高さ粗さRzは、その値が大きいほど、表面が粗いことを意味する。また、図中の符号は、1:多孔質カーボン、2:珪石煉瓦、3:サンドブラスト処理した珪石煉瓦、4:錆御影敷石 、5:ビシャン加工した御影石をそれぞれ示している。
なお、図2に、静止摩擦係数とコークス押出負荷との関係を示すが、最大高さ粗さRzの場合と同様に表面が粗くなると押出負荷が上昇する傾向を示すが、最大高さ粗さRzの方が摩擦係数よりも明瞭な相関が認められる。すなわち、摩擦係数よりも最大高さ粗さRzの方が、押出し抵抗をより的確に標記できる指数であることがわかる。
また、図3(a)、(b)に、表面粗さを評価するための他の指数である、算術平均粗さRa及び粗さ曲線の最大山高さRpとコークス押出負荷との関係を示すが、これらの指標では最大高さ粗さRzのような良い対応関係を示していない。
また、炉壁に存在する突起部は、コークス炉炭化室の炉壁の炉長方向および炉高方向の存在位置によって、押出負荷に与える影響が変化するため、反力と荷重を想定位置に応じたものに変えて同様の測定試験を実施しておけば、突起部の炉壁面内の存在位置(炉壁の炉長方向および炉高方向の位置)と関連させて、突起部の表面粗さと押出負荷との関係を求めることができる。
このようにすれば、側壁に存在する個々の突起の押出負荷への影響を、その大きさや存在位置を考慮して、より正確に推定することができる。また、突起が2箇所以上の場合、それぞれの突起の押出負荷への影響を、その大きさや存在位置を考慮して推定することができる。
すなわち、特許文献5では、図6に示すように、炭化室の炉壁面を炉長さ方向および炉高さ方向の複数の領域Z(p,q)に区分けし、炭化室の炉壁面のプロファイルから区分けした領域ごとの凹凸情報を求め、区分けした領域に凹凸がある場合に、コークスケーキの押出時に、その凹凸によってコークスケーキが受ける局所的な抵抗を、下記の(式1)で表される局所抵抗指数Ki,jとして指標化し、導出した局所抵抗指数を集計して炭化室の炉壁面全体における抵抗指数を導出し、予め求めておいた抵抗指数と押出負荷との関係からコークス押出負荷を求めるようにしている。
K’i,j= Ki,j+c1×Rz ・・・(2)
ここで、c1は、図1の近似線の傾きで決まる係数であり、
Rzは、図1の横軸に示す表面粗さを表す最大高さ粗さである。
図7の実線は、多数の炭化室における抵抗指数と押出負荷の実測値から得られた押出負荷の予測式を示すが、表面粗さに基づく押出負荷の増加分を上記のように評価することにより、抵抗指数と実コークス炉におけるコークスの押出負荷(押し出し機モーターに取り付けられたトルクメーターの指示値から算出した押出し力)の対応関係がより良好になることが示されている。
これに対して、上述したように、本発明法で求められる炉壁の突起部突起部の表面粗さを考慮して押出負荷を推定することにより、コークス押出負荷の予測精度をより一層向上させることができ、前記のような操業上のトラブルが発生する可能性を低下させることができる。また、コークス押出負荷を低減できるので、炉壁に作用する力(圧力)も低減でき、コークス炉の寿命を延長する効果も期待できる。
2、3 側面パネル
4 押出し側当て板
5 受け側当て板
6 突起
7 突起の斜面
8 突起の水平面
Fp 押出し力
Fr 反力(受け力)
Fw1、Fw2 壁押し力
Claims (3)
- 炭化室の炉壁に相当する側壁に突起部を形成した押出負荷測定装置を用いた試験用コークスケーキの押出し試験によって、前記突起部に起因するコークス押出負荷を測定し、測定されたコークス押出負荷に基づいて、実コークス炉炭化室の炉壁に存在する突起部に起因するコークス押出負荷を推定する方法であって、
異なる表面粗さを有する突起部を形成した側壁を用いて前記押出し試験を実施して、突起部の表面粗さを表す最大高さ粗さRzとコークス押出負荷との関係を予め求めておき、
実コークス炉炭化室における炉壁のプロファイル情報から、該炉壁に存在する突起部の最大高さ粗さRzを求め、
得られた実コークス炉の突起部の最大高さ粗さRzから、前記予め求めておいた最大高さ粗さRzとコークス押出負荷との関係に基づいて、実コークス炉炭化室における前記突起部の表面粗さに起因するコークス押出負荷を求めることを特徴とするコークス押出負荷の推定方法。 - 前記押出し試験において、試験用コークスケーキに作用する押出し力に対抗する反力の値および試験用のコークスケーキに載置する錘の質量を変化させることにより、実コークス炉炭化室の炉壁面内における前記突起部の炉長方向および炉高方向の存在位置と関連して最大高さ粗さRzとコークス押出負荷との関係を予め求めておき、
前記炉壁のプロファイル情報から、さらに前記突起部の炉長方向および炉高方向の存在位置を求め、
前記予め求めておいた突起部の炉長方向および炉高方向の存在位置に関連した最大高さ粗さRzとコークス押出負荷との関係に基づいて、実コークス炉炭化室の炉壁に存在する突起部の表面粗さに起因するコークス押出負荷を推定することを特徴とする請求項1に記載のコークス押出負荷の推定方法。 - 前記炉壁のプロファイル情報から、実コークス炉炭化室におけるコークス押出負荷を求めるにあたり、請求項2に記載の方法により推定された炉長方向および炉高方向における突起部の表面粗さに起因するコークス押出負荷を、炉壁の凹凸情報に基づいて推定された押出負荷に加算することを特徴とするコークス押出負荷の推定方法。
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