JP5605129B2 - コークス炉におけるコークス押出負荷の推定方法 - Google Patents

コークス炉におけるコークス押出負荷の推定方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば水平室式コークス炉のコークス押出し時において、特に、炭化室の炉底煉瓦表面に肌荒れなどの損傷がある場合に、押出し機によって乾留後のコークスケーキを炭化室から押出す際に必要な負荷(あるいは、押出し力)を推定する方法に関するものである。
近年のコークス炉操業では、コークス品質及び生産性の向上を狙って炭化室内へ装入する石炭の水分を低減させる方法が多く取り入れられている。その結果、石炭の充填密度が上昇する傾向にあり、コークスケーキを押し出す際に、炭化室の炉壁や炉底にかかる荷重が上昇し、これにともないコークス押出負荷(具体的には、押出し機モーターの電流値やトルク値)も増加する傾向にある。
また、建設されて30年以上が経過して炉体の老朽化が進展しているコークス炉も増えており、そのような長期間稼動しているコークス炉の炭化室では、炉壁や炉底で損傷(凹凸、煉瓦角欠け、表面肌荒れ、等)が数多く認められる。
その結果、炭化室からコークスケーキを押出す際に、炉壁面や炉底面とコークスケーキ表面との間の相互作用が大きくなり、押出しに必要な力がさらに増加している。
そのため、操業条件の変化によってコークスケーキと炉壁面との隙間が小さくなったり、炉壁の損傷などにより局所的に炉壁の強度が低下していると、押出しに必要な力が押出し機の能力を上回ったり、押出し中に炉壁煉瓦が破孔するなど、大きなトラブルにつながる可能性が著しく増大している。
したがって、炭化室からコークスケーキを押出すのに必要な力や炉壁に作用する荷重(炉壁押し圧)を事前に評価し、押出し機や炭化室の炉壁に過度の荷重が付加されないようにすることがより重要になっている。
コークス炉の炭化室からコークスケーキを押出す際に必要となる力は、非特許文献1に示されているように、コークスケーキを移動させるときに、炉壁や炉底から受ける抵抗で決まるものであり、その抵抗を決める具体的な要因として、炭化室の炉壁面や炉底面の凹凸、炉壁煉瓦表面や炉底煉瓦表面の粗度(摩擦係数)、炉壁の強度(押出し時の炉壁の変位)などがあるが、このうち、コークスとの接触面積が大きい炉壁表面に形成された凹凸の影響が最も大きいと考えられる。また、コークスケーキの全質量が掛かる炉底の粗度も影響が無視できないと考えられる。
このような状況の中で、特許文献1などに示されるように、炭化室の炉壁や炉底の形状を3次元的に測定して、炉壁面や炉底面のプロファイルを定量的に把握する技術が開発された。この技術を用いることにより、炉壁については炉長方向及び炉高方向、さらには炉幅(煉瓦面の厚み)方向において、また、炉底については、炉長方向及び炉幅方向、さらには炉底面の厚み方向において、それぞれの形状についての具体的なプロファイルデータを得ることが可能になり、炭化室の炉壁や炉底の補修やコークスケーキ押出し力の推定に、そのような炉壁や炉底のプロファイル情報を用いることができるようになってきた。
本発明者らも、特許文献2、3のように、炉壁に形成された凹凸が、コークスケーキ押出し力や炉壁荷重に与える大きさを測定する押出負荷測定装置を開発し、その装置を用いたコークスケーキ押出し試験によって、炉壁に存在する凹凸が押出負荷に与える影響を評価し、さらに、炉壁プロファイル情報から得られた炉壁凹凸の形状や位置のデータから、炉壁に局所的に存在する個々の凹凸が押出し力や炉壁荷重に与える影響を評価する技術や、特許文献4のように、個々の凹凸の影響を炉壁全体に広げて、コークスケーキ全体の押出負荷を推定する技術を開発してきた。
さらに、本発明者らは、このような凹凸の影響について、個々の凹凸の形状や凹凸の存在位置を数値化した「抵抗指数」が押出し力と良好に対応していることを見出し、特許文献5に示される技術を開発している。
この技術では、炭化室の炉壁面を複数の領域に区分けし、炭化室の炉壁面のプロファイルから、区分けした領域に凹凸がある場合に、コークスの押出し時に、その凹凸によってコークスが受ける局所的な抵抗を、局所抵抗指数として指標化し、導出した局所抵抗指数を集計して炭化室の炉壁面全体における抵抗指数を導出し、予め求められた抵抗指数と押出負荷との関係からコークスケーキの押出負荷を求めるようにしている。
以上のような技術によって、炭化室から乾留後のコークスケーキを押出すのに必要な力や炉壁に作用する押し力を評価する精度は向上してきたが、本発明者らは、さらなる精度の向上を目指して、炉底の表面状態の影響を検討するため、炉底のプロファイルデータを詳細に解析した。
その結果、長期稼働のコークス炉炭化室の炉底面には、炉底煉瓦の肌荒れ(微小凹凸)や煉瓦の欠損が数多く認められた。炉底に肌荒れによる微小凹凸が存在すると、コークス塊表面と炉底面の間の摩擦力が増大するため、それがコークスケーキの押出し力を増加させる原因になっていることが予想された。
図4に、特許文献1に記載されているような炉壁面診断補修装置によって得られた、コークス炉炭化室の炉底プロファイルの一例を示すが、炉底面に健全な煉瓦基準面(縦軸の原点)からの高さ又は深さが6mm以下の微小凹凸や欠損の存在が認められる。
従来、炉底の微小凹凸がコークスケーキの押出し力に与える影響を定量的に評価する手法は開示されていない。
WO00−55575号公報 特開2008−208337号公報 特開平2009−209290号公報 特開平2008−303239号公報 特開2008−201993号公報
「Ironmaking Conference Proceedings」 AIME、1998年、1155−1159頁
そこで、本発明では、コークス炉炭化室の炉底面の表面状態が、コークスケーキ押出し時の押出し力にどのような影響を与えるかを評価して、実コークス炉炭化室の炉底形状を測定して得られた炉底プロファイル情報から、炉底煉瓦に肌荒れ(微小凹凸)が存在する場合のコークス押出負荷を精度よく推定することができるようにすることを課題とする。
長期間稼動したコークス炉の炭化室において確認されている炉底煉瓦の肌荒れ(微小凹凸)がコークス押出負荷に与える影響について検討した。炉底煉瓦の微小凹凸がコークス押出負荷に与える影響は、炉底煉瓦表面とコークス塊との摩擦力、すなわち摩擦係数によって評価できると考えられる。
そこで、炉底の耐火煉瓦表面の微小凹凸を模擬的に再現した底部材を作成し、これを前述の押出負荷測定装置に取り付けて、底部材の表面粗さの程度(粗度)がコークス押出し時の摩擦係数に与える影響について調べた。
その結果、炉底面の表面粗さの程度を、表面粗さパラメータの一つである表面波形Pa(断面曲線の算術平均高さ)で表した場合、炉底面の摩擦係数は、炉底面における表面波形Paの値と直線的な関係にあるという知見を得た。
そして、前述の炉底面診断補修装置で得られた炉底面の表面プロファイルより、炉底面に存在する微小凹凸領域の表面波形Paを求め、予め求めておいた表面波形Paと摩擦係数との関係を用いて、炉底の微小凹凸領域の摩擦係数を求め、その摩擦係数から、微小凹凸に由来するコークス押出負荷に対する影響を推定するようにして上記課題を解決した。
そのような本発明の要旨は、次のとおりである。
(1) 炭化室の炉底に相当する底部材に、表面粗さを表す表面波形Paが1000μm以下の微小凹凸が形成された押出負荷測定装置を用いて試験用コークスケーキの押出し試験を行い、前記試験用コークスケーキが前記微小凹凸上を移動するときのコークス押出し力を測定し、測定されたコークス押出し力に基づいて、実コークス炉炭化室の炉底煉瓦表面に存在する、表面粗さを表す表面波形Paが1000μm以下の微小凹凸領域に起因するコークス押出負荷を推定する方法であって、
前記測定されたコークス押出し力に基づいて試験用コークスケーキと底部材との間の摩擦係数を求め、該摩擦係数と前記底部材の微小凹凸の表面粗さを表す表面波形Paとの関係を予め求めておき、
実コークス炉炭化室における炉底のプロファイル情報から、該炉底に存在する前記微小凹凸領域の表面波形Paを求め、
得られた実コークス炉の表面波形Paから、前記予め求めておいた表面波形Paと摩擦係数との関係に基づいて、実コークス炉炭化室における前記炉底の微小凹凸領域に起因するコークス押出負荷を求めることを特徴とするコークス押出負荷の推定方法。
(2) 前記押出し試験において、試験用コークスケーキに作用する押出し力に対抗する反力の値を変化させることにより、実コークス炉炭化室の炉底における前記微小凹凸領域の炉長方向の存在位置と関連して表面波形Paと前記摩擦係数との関係を予め求めておき、
前記炉底のプロファイル情報から、さらに前記微小凹凸領域の炉長方向の存在位置を求め、
前記予め求めておいた微小凹凸領域の炉長方向の存在位置に関連した表面波形Paと摩擦係数との関係に基づいて、実コークス炉炭化室の炉底に存在する微小凹凸領域に起因するコークス押出負荷を推定することを特徴とする上記(1)に記載のコークス押出負荷の推定方法。
(3) 上記(2)に記載の方法により推定された炉底の炉長方向における微小凹凸領域に起因するコークス押出負荷を、炉壁の凹凸情報に基づいて推定された押出負荷に加算することを特徴とするコークス押出負荷の推定方法。
なお、本発明において、微小凹凸は、表面波形Paが1000μm以下のものをいい、微小凹凸領域とは、図5に示すような、炉底面を複数の領域に分画した各領域において、微小凹凸を有する領域をいう。
本発明によれば、炉底のプロファイル情報から得られた炉底の微小凹凸の存在状態を考慮して、コークスケーキ押出し時におけるコークス押出負荷を精度よく推定することができるようになる。
コークス押出負荷測定試験装置によるコークス押出し試験によって得られた、コークス押出負荷(押出し力−反力)と試験装置底部材の炉底表面の表面波形Paとの関係を示す。 コークス押出し負荷測定試験により得られた負荷波形の一例を示す図である。 炉底に微小凹凸が存在する場合を想定したコークス押出し負荷測定試験の概略を説明するための図であり、(a)は側面から見た断面図であり、(b)は上面から見た断面図である。 炉底面診断補修装置によって得られた炉底プロファイルの一例を示す図である。 炉底面の摩擦係数を求める方法を説明するための図である。
以下、添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
コークス炉の炭化室からコークスケーキを押出す際に、炉底煉瓦に肌荒れ(微小凹凸)が存在すると、コークス塊表面と炉底面の間の摩擦力が増大し、それにともなってコークスケーキの押出し力が増大する。そのため、微小凹凸による摩擦力に対する影響を評価することが必要である。
そこで、本発明者らは、小型電気乾留炉を用いて石炭を乾留して試験用コークスケーキを製造し、特許文献2、3に示されるような押出負荷測定装置の底面に、種々の表面粗さを有する底部材を設置して、試験用コークスケーキの押出負荷測定試験を実施し、測定された試験用コークスケーキの押出し力から試験用コークスケーキと底部材との間の摩擦力を評価した。
図3に、押出負荷の測定に用いた測定装置とその装置による測定試験の概略を示す。
この装置では、試験用コークスケーキ1の前後に押出し側と受け側の当て板4、5を配置し、それぞれの当て板を油圧シリンダ(図示せず)に接続して、試験用コークスケーキ1に対し押力Fpと、コークス炉炭化室の炉長方向の想定位置に応じた一定の反力Frを加えながら、試験用コークスケーキ1を押出すようになっており、また、コークスケーキ1の両側面には、コークス炉の炭化室炉壁に相当する左右の側壁部材7、8を油圧シリンダ(図示せず)を介して保持するようになっている。
ここで、押力Fpに対して反力Frを付加するのは次の理由による。
実コークス炉では炭化室のPS(押出し機側)からCS(コークガイド車側)に行くにしたがって、炉幅が徐々に広がるテーパー構造となっている場合があり、PSからCSにかけて炉長方向にコークスケーキ内を伝達する力(または、圧力)が減少する。あるいは、炉幅がテーパー構造となっていない場合でも、押出し力の一部は炉壁方向に分散することにより、コークスケーキ内を伝達する力が同様に減少する。この炉長方向の位置の違いによるコークスケーキに作用する力(または、圧力)の違いを擬似的に再現するために、炉長方向の位置を想定した反力を付加するようにしている。
なお、炉長方向の位置の違いによる反力Frの値は、実コークス炉における押出し力FpsとPS端からの距離xに基き設定することができる。すなわち、コークスケーキのPS端で発生した押出し力FpsはCS端に向かって直線的に減衰し、CS端でゼロになると考えられるため、PS端から任意の距離xにおける反力Fr(x)は、Fr(x)=Fp(1−x/L)で求められる。ただし、Lは炉長方向のコークスケーキ長さである。
当て板4、5と側壁部材7、8にはロードセル(図示せず)を複数個設置し、押力Fpと反力Frを測定するとともに、押出し時にコークスケーキにより側壁部材7、8が受ける壁押し力Fwを測定する。
炭化室の炉底表面の肌荒れを想定したコークス押出し負荷測定試験を実施するには、図3に示すように、煉瓦の肌荒れを想定した表面粗さを有する底部材3を支持台2上に取付け、その上に試験用コークスケーキを配置する。
本試験では、底部材3の素材として、多孔質カーボン、珪石煉瓦、サンドブラスト処理した珪石煉瓦、錆御影敷石 、およびビシャン加工した御影石の5種類を用いたが、コークス炉炭化室の炉底の表面状態を再現できるなら、どのような材料でも良いことは言うまでもない。
底部材3に用いた素材の表面状態を評価するため、表面粗さを測定した。表面粗さを評価するための指数としては、粗さ曲線の算術平均粗さRa、粗さ曲線の最大山高さRpなどもあるが、本発明者らは、検討の結果、断面曲線の算術平均高さで定義される表面波形Paが、摩擦係数との間に良い相関を示すことを見出した。
そこで、表面粗さ指数として、断面曲線の算術平均高さで定義される表面波形Paを選択し、JIS法の定義(JIS B0601:2001)に準拠する方法で測定した。すなわち、多孔質カーボンと珪石煉瓦は触針式の測定法を用い、残りは、レーザ距離計を用いた非接触式の測定法を用いて測定した。
底部材に用いた上記素材の表面波形Paの測定値を表1に示す。
Figure 0005605129
上記のコークスケーキの押出負荷測定装置を用いた押出し試験においては、まず、石炭を小型電気乾留炉で乾留して得られた所定サイズ(例えば、長さ600×高さ370×幅430mm)の試験用コークスケーキ1を、底部材3上の、側壁部材7、8及び押し側および受け側の当て板4、5で囲まれる空間に配置する。
その際、コークスケーキ1を構成するコークス塊と側壁部材7、8の間の空隙量を所定の値に調整しておく。また、底部材に実コークス炉と同様の荷重がかかるように、コークスケーキ1の上部に錘6を載置する。
ここで、空隙を設けるのは、実コークス炉では、乾留中に、コークスが炉幅方向に収縮することにより、炉壁面とコークスとの間に隙間が形成されるためである。この空隙量の値は特に規定するものではないが、実コークス炉でのコークスと片側の炉壁との空隙量の代表的な値が2.5mm程度であることから、コークスのそれぞれの側に、2.5mm程度ずつ、空隙を設定することが例示できる。
また、用いる錘の質量は、コークスケーキの嵩密度と実コークス炉で想定しているコークスの高さにより設定することができる。
次に、図示しない押出し用油圧シリンダ装置を作動させ、当て板4を介してコークスケーキ1に押力Fpを付与するとともに、反力付加用油圧シリンダによって当て板5を介して一定の反力Frを作用させながら押出しを開始する。
押出しの開始後、コークスケーキ1は、押力Fpの力によって移動する。その際に、各ロードセルにより押力Fp、反力Frのそれぞれを連続的に測定する。
なお、押出し用油圧シリンダにより試験用のコークスケーキ1に押力を作用する際には、コークスケーキ1に作用する反力Frが一定の値を維持するように、反力付加用油圧シリンダを制御する。上述したように、この一定とする反力の設定値を変更(この反力の設定値により押出し力も変化する)することにより、実コークス炉におけるコークスケーキ1の炉長方向の想定位置を変えることができ、炉底の微小凹凸部が炉長方向の任意の位置にある場合での、コークス押出し力を評価することができる。
図2に、底部材として錆御影敷石を用いて押出し試験を実施した場合に得られた負荷波形の一例を示す。コークスケーキの押出しが進むと、先ず押力Fpが増加し、次いで反力Frが増加する。この間に、試験用コークスケーキは押出し方向に徐々に圧縮される。反力が設定値(図の例では、1.8tonf)に到達した段階で、試験用のコークスケーキ全体が移動を開始する。この移動開始時に押力Fpが最大となる(図中に矢印で示した位置)。
このような押出し試験を上記の底部材3をそれぞれ用いて実施し、反力Frが一定になった後の押力Fpの最大値を測定し、(押力の最大値−反力)の値をコークス押出し力Ftとして求める。
そして、コークス押出し力Ftを用いて、コークスケーキを押し出すときの静止摩擦係数γを、次の式(1)から求める。
γ=Ft/(gW) ・・・(1)
なお、Wはコークスケーキの質量とコークスケーキの上部に載置した錘の質量の合計質量であり、gは重力加速度である。
以上の試験によって得られた摩擦係数と、試験に用いた底部材の表面波形Paとの関係を図1に示す。
なお、図1において、横軸の表面波形Paは、その値が大きいほど、表面が粗いことを意味する。また、図中の符号は、1:多孔質カーボン、2:珪石煉瓦、3:サンドブラスト処理した珪石煉瓦、4:錆御影敷石 、5:ビシャン加工した御影石をそれぞれ示している。
図1より、コークス塊と底部材表面との静止摩擦係数は、底部材表面の表面粗さの増大につれて、増加する。両者の間には、図1中に実線で示すように強い相関が得られた。図1には、得られた関係式と決定係数Rを付記した。
したがって、実コークス炉で使用する装入炭を用いて小型電気乾留炉で試験用コークスケーキを作成し、上記のような押出負荷測定装置に、上記のような種々の表面波形Paの微小凹凸を有する底部材を取り付けて、底部材ごとに、試験用コークスケーキの押出し負荷測定試験を行う。炉底に存在する微小凹凸は、コークス炉炭化室の炉底の炉長さ方向の存在位置によって、押出負荷に与える影響が変化するため、微小凹凸の存在位置を想定した試験を行うために、コークスケーキに作用させる反力Frを、想定位置に応じた値に変えて押出し負荷測定試験を行い、コークス押出し力Ftを測定する。
得られた測定値を基に、底部材ごとの摩擦係数を求め、所定面積あたりの微小凹凸領域について、その表面波形Paと摩擦係数との関係を、その微小凹凸領域の炉底面内の炉長方向の存在位置と関連させて求めておく。
そして、実コークス炉の炭化室における炉底プロファイルの測定データから微小凹凸領域の存在が認められた場合、個々の微小凹凸領域の表面波形Paおよび該微小凹凸領域が存在する位置から、予め求めておいた表面波形Paと摩擦係数との関係に基づき、コークス押出し時の個々の微小凹凸領域の摩擦係数を求める。
このようにして求めた表面波形Paと摩擦係数との関係を、実コークス炉における押出し負荷の推定に応用する方法について以下に説明する。
例えば図5に示すように、炉底面を複数の領域に分画し、区画ごとに炉底プロファイルの測定データから表面波形Paを算出し、予め求めておいた表面波形Paと静止摩擦係数との関係に基づき、該区画ごとの静止摩擦係数γ(p,q)を求める。次いで、区画ごとに(2)式を用いてコークスケーキ表面と炉底との間に作用する摩擦力fsを計算する。
fs(p,q)=gγ(p,q)W ・・・(2)
なお、Wは各区画において、炉底面に掛かるコークスケーキの質量、gは重力加速度である。
コークスケーキが炭化室の炉底面全体から受ける摩擦力Fsは、次の(3)式で求められる。
Figure 0005605129
従来は、コークスケーキ表面と炉底との間の静止摩擦係数は一定とし、コークス押出負荷の推定には、両者間の摩擦力を炉底面内で一定として評価していた。しかし、上述のように、炉底面を微小領域に分画し、領域ごとに炉底の状況に応じた摩擦力を求めることにより、コークス押出負荷の推定の際に、コークスケーキと炉底間の摩擦力を精度よく推定することができる。
また、以上のようにして求めた、炉底に存在する個々の微小凹凸領域に起因する摩擦力の増加の影響を、実コークス炉の炭化室からコークスケーキ全体を押出す際の押出負荷の推定に利用するには、炉壁の凹凸情報を用いて公知の方法(例えば、特許文献5で開示された抵抗指数を用いて推定する方法)で推定されたコークス押出負荷に、炉底の微小凹凸領域に起因する摩擦力を加算すればよい。
炉底の微小凹凸によるコークス押出負荷への影響を考慮しない場合には、押出負荷の予測値が、実際の押出負荷よりも小さく評価される可能性がある。そのような評価に基づいて、コークス押出条件(炭化室からコークスケーキを押し出すタイミング)を設定した場合、過大なコークス押出負荷が発生し、押し詰まりや炉壁損傷が発生する危険性が生じる。
これに対して、上述したように、本発明法で求められる炉底の微小凹凸による押出負荷の影響を加算すれば、コークス押出負荷の予測精度をより一層向上させることができ、前記のような操業上のトラブルが発生する可能性を低下させることができる。
1 試験用のコークスケーキ
2 支持台
3 底部材
4 押出し側当て板
5 受け側当て板
6 上部錘
7、8 側壁部材
Fp 押力
Fr 反力
Fs コークスケーキが炭化室の炉底面全体から受ける摩擦力
Fw1、Fw2 壁押し力
g 重力加速度
W 試験用コークスケーキの質量と上部に載置した錘の質量の合計質量

Claims (3)

  1. 炭化室の炉底に相当する底部材に、表面粗さを表す表面波形Paが1000μm以下の微小凹凸が形成された押出負荷測定装置を用いて試験用コークスケーキの押出し試験を行い、前記試験用コークスケーキが前記底部材の微小凹凸上を移動するときのコークス押出し力を測定し、測定されたコークス押出し力に基づいて、実コークス炉炭化室の炉底煉瓦表面に存在する、表面粗さを表す表面波形Paが1000μm以下の微小凹凸領域に起因するコークス押出負荷を推定する方法であって、
    前記測定されたコークス押出し力に基づいて試験用コークスケーキと底部材との間の摩擦係数を求め、該摩擦係数と前記底部材の微小凹凸の表面粗さを表す表面波形Paとの関係を予め求めておき、
    実コークス炉炭化室における炉底のプロファイル情報から、該炉底に存在する前記微小凹凸領域の表面波形Paを求め、
    得られた実コークス炉の表面波形Paから、前記予め求めておいた表面波形Paと摩擦係数との関係に基づいて、実コークス炉炭化室における前記炉底の微小凹凸領域に起因するコークス押出負荷を求めることを特徴とするコークス押出負荷の推定方法。
  2. 前記押出し試験において、試験用コークスケーキに作用する押出し力に対抗する反力の値を変化させることにより、実コークス炉炭化室の炉底における前記微小凹凸領域の炉長方向の存在位置と関連して表面波形Paと前記摩擦係数との関係を予め求めておき、
    前記炉底のプロファイル情報から、さらに前記微小凹凸領域の炉長方向の存在位置を求め、
    前記予め求めておいた微小凹凸領域の炉長方向の存在位置に関連した表面波形Paと摩擦係数との関係に基づいて、実コークス炉炭化室の炉底に存在する微小凹凸領域に起因するコークス押出負荷を推定することを特徴とする請求項1に記載のコークス押出負荷の推定方法。
  3. 請求項2に記載の方法により推定された炉底の炉長方向における微小凹凸領域に起因するコークス押出負荷を、炉壁の凹凸情報に基づいて推定された押出負荷に加算することを特徴とするコークス押出負荷の推定方法。
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