JP2015078283A - 室式コークス炉におけるコークス押出し力の推定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】未乾留域を含み、該未乾留域の幅の異なる試験用コークスケーキを作製し、該コークスケーキの圧縮試験を行ってランキン係数求め、未乾留域の幅と求められたランキン係数から、コークスケーキ内の未乾留域の幅とランキン係数の間の関数関係を予め求めておき、実コークス炉の燃焼室の温度から、その燃焼室に隣接する炭化室内の炭中温度を推定して、炭中温度が配合炭の軟化開始温度を下回る領域を未乾留域として、その炭化室幅方向の幅を求め、前記の未乾留域の幅とランキン係数の関数関係から、未乾留域があるコークスケーキのランキン係数を求め、未乾留域のない領域では通常に乾留された場合のランキン係数を用い、未乾留域を含む領域では前記関数関係から求められたランキン係数を用いて、内部に未乾留域を含むコークスケーキ全体を実コークス炉の炭化室から押出すのに必要な力を推定する。
【選択図】図2
Description
さらに、長期間稼動して炉体の老朽化が進展しているコークス炉も増えており、コークス押出し力が押出し機の能力を上回って押詰りが発生したり、押出し中に炉壁煉瓦が破孔する可能性が増大している。
このため、炭化室からコークスケーキを押出すのに必要な押出し力を、事前に評価(推定)し、押出し機や炭化室の炉壁に過度の力が付加されないように操業することがより重要になっている。
押出し中にコークスが炉壁に作用する力はランキン係数を用いて評価することができる。ランキン係数は、側圧転換率ともいわれるもので、押出し機でコークスケーキを押出す際にコークスケーキに作用する圧力が炉壁を押す圧力(側圧)に転換する割合、すなわち、(炉壁押し圧/押出し圧)と定義される。このランキン係数が小さいほどコークス押出し時の押出し側圧が小さくなり、より小さい押出し力(押出負荷)でコークスケーキの押出しができることを示している。
特許文献1には、コークスケーキの押出し力には、石炭の乾留後にコークスケーキと炉壁間に形成される隙間Xcとランキン係数kが関与するとの知見をもとに、予め実験により前記隙間Xcとランキン係数kとの関係を求めておき、コークスケーキを押出す際に、炭化室の炉長方向(押出し方向)および炉高方向の各位置における側壁に加わる圧力(側圧)を、ランキン係数から求め、この側圧と炭化室の炉底に加わる炉底圧とからコークス押出し力を推定する方法が開示されている。
k=lXc2+mXc+nD2+oD+p (但し、l、m、n、o、pは定数)
そして、これらの関係をもとに炉温からランキン係数を予測して、ランキン係数が設定値以上の場合には、炉温や乾留後の置き時間を調節することにより、コークス押出し力を低下させるコークス炉の操業方法が開示されている。
炭化室内の石炭は、炭化室両側の炉壁を介して隣接する燃焼室からの燃焼熱の伝熱により、炉壁側から炉幅方向中央に向かって加熱される。燃焼室は、炭化室の炉長方向に沿って30室前後の燃焼小室(フリュー)に細分されており、特定のフリューで燃焼不良が発生すると、その箇所で、炭化室内の炉幅方向への伝熱量が低下し、石炭の昇温が遅れるため、コークス押出し時にコークスケーキ中心部の温度(炭中温度)が十分に昇温していない領域が発生する。
この未乾留域は、正常に乾留されたコークス層に比べて押出し時の圧縮挙動が異なり、未乾留域を含むコークスケーキを押出す場合は、正常に乾留されたコークスケーキに比べて押出し力が高くなることが予想される。
そこで、本発明は、室式コークス炉の操業において、一部に未乾留域を含むコークスケーキの押出し力を精度良く推算する方法を提供することを課題とする。
室式コークス炉で製造する高炉用コークスにおいて、乾留後のコークスケーキ中に未乾留域が存在しない正常な乾留では、ランキン係数は炉壁とコークス間の隙間量(Xc)によって支配されるとして扱うことで、精度良く推算することができていた。
しかし、コークスケーキ内部に未乾留域が存在する場合、未乾留域の大きさによってはコークスケーキと炉壁との隙間が変化するなど、押出し力が変化することが予想されるが、従来は、未乾留域が存在する場合にランキン係数がどのような影響を受けるかは考慮されていなかった。
(1)室式コークス炉の炭化室からコークスケーキを押出すのに必要な力を推定するコークス押出し力の推定方法において、
未乾留域を含み、該未乾留域の幅の異なる試験用コークスケーキを作製し、該試験用コークスケーキの圧縮試験を行い、コークス押出し圧と炉壁押し圧を測定してランキン係数求め、
前記未乾留域の幅と求められたランキン係数から、コークスケーキ内の未乾留域の幅とランキン係数の間の関数関係を予め求めておき、
実コークス炉の燃焼室の温度から、その燃焼室に隣接する炭化室内の炭中温度分布を推定して、炭中温度が、配合炭を構成する石炭のうち、軟化開始温度が最も低い石炭の軟化開始温度を下回る領域を未乾留域として、その炭化室幅方向の幅を求め、
前記予め求めた未乾留域の幅とランキン係数の関数関係から、未乾留域を含む領域のコークスケーキのランキン係数を求め、
未乾留域のない領域では通常に乾留された場合のランキン係数を用い、未乾留域を含む領域では前記関数関係から求められたランキン係数を用いて、未乾留域を含むコークスケーキ全体を実コークス炉の炭化室から押出すのに必要な力を推定することを特徴とするコークス押出し力の推定方法。
未乾留域のない領域では通常に乾留された場合のランキン係数を用い、未乾留域を含む領域では、前記関数関係から求められたランキン係数を用いて、それぞれの領域に必要な押し力を求め、
求められたすべての領域の押し力を加算して、実コークス炉の炭化室からコークスケーキを押出すのに必要な力を推定することを特徴とする上記(1)に記載のコークス押出し力の推定方法。
この結果、コークス押出負荷が所定の値を上回ることが予想された場合、押出負荷を軽減するようにコークス炉の操業条件や装入炭の性状を管理することで、押詰まり等の押出しトラブルの発生を防止でき、その結果、コークス生産量の減少(経済的損失)が避けられるだけでなく、炉壁に対する負荷も低減するのでコークス炉の延命にも繋がり、経済的効果が大きい。
室式コークス炉において乾留後のコークスケーキを炭化室から押出す際、押出しに必要な力(押出し力)は、コークスケーキを移動させるときの抵抗によって決定される。そのような抵抗は、(1)炭化室の炉底面の抵抗と(2)炭化室の炉壁面の抵抗に分けることができる。
押出し時にコークスが炉底面から受ける抵抗は、炉底面とコークスの間の摩擦力、すなわち、コークスケーキの重さとコークス−炉底煉瓦間の摩擦係数によって決まる。また、コークスが炉壁面から受ける抵抗は、炉壁面とコークスの摩擦力、すなわち、コークスケーキが炉壁面を押す力とコークス−炉壁煉瓦間の摩擦係数によって決まる。この時の炉壁面に作用する力(押出し側圧)はランキン係数によって評価できる。
したがって、コークス押出し力はコークス−炉体煉瓦間の摩擦係数とランキン係数によって決まってくる。
すなわち、未乾留域が形成された領域では正常に乾留されたコークス層に比べて収縮量が異なるため、コークスケーキと炉壁との間隔がほとんど形成されず、ランキン係数が大きくなり、未乾留域を含むコークスケーキを押出す場合は、正常に乾留されたコークスケーキに比べて押出し負荷が高くなることが判った。
そこで、形成された未乾留域の大きさとランキン係数の関係を実験的に検討した。
試験用コークスケーキとして、正常に乾留したコークスケーキの中央部をくり抜いて、その間に粉状の石炭を充填して、模擬的に未乾留域(石炭充填層)を内部に含む未乾留コークスA〜F(全体のサイズ:長620mm×幅420mm×高400mm)を作成した。また、比較のために、基準となる正常に乾留した通常コークスと石炭充填層のみで形成したものも準備した。
また、未乾留域の圧縮方向(側壁に平行な方向)の長さは、フリューの炉長方向長さ程度(450mm)を目安として、種々変化させた。
ここで、未乾留域の幅とは、コークスケーキ圧縮方向(側壁に平行な方向)に直交する方向の長さであり、未乾留域の長さとは、コークスケーキ圧縮方向の長さである。
この試験装置は、圧縮方向に平行に配置した外部固定壁2、2の間に、側壁3、3を移動できるように配置して、側壁間に試験用コークスケーキ1を配置する空間を形成するようにし、さらに、側壁3、3の一方の端部近傍に、圧縮方向に垂直に固定壁4を配置するとともに、他方の端部近傍に、油圧装置6で駆動される可動壁5を固定壁と対向配置し、固定壁と側壁間にセットされたロードセル7と油圧装置6と可動壁5間にセットされたロードセル8とで構成されている。
図2から、未乾留域の幅の増加とともにランキン係数も増加することがわかる。また、ランキン係数kと未乾留域の幅ΔXの間を下記(1)式で表される二次式で近似したところ、決定係数R2=0.998の良好な対応関係にあることが確認できた。
また、同時に、ランキン係数は、未乾留域の長さや、未乾留域の幅方向位置にほぼ影響されないことが確認された。
ここで、k1〜k3は係数であり、図2の場合では、k1:1.7188、k2:0.0103、k3:0.0457(通常コークスのランキン係数)であった。
なお、通常は、石炭層として配合炭を用いるため、配合炭を構成する石炭のうち、軟化開始温度が最も低い石炭の軟化開始温度を下回る領域を未乾留域とする。
炉長方向各位置における炭化室内の温度分布は、当該燃焼室フリューの温度実測値から、コークス炉の炉体条件(炉壁煉瓦の厚み、熱伝導率、等)及び石炭装入条件(装入密度、水分、等)等を用いて伝熱計算を行って算出することができる(例えば、富士製鐵技報、17,353頁,1968年発行、参照)。
(a)は、燃焼室で燃焼不良がなく、通常の乾留がなされた場合の温度分布(曲線a)を示し、(b)は、燃焼室で燃焼不良がある場合の温度分布(曲線b)を示す。曲線aでは、内部まで乾留されてすべてコークス層になっているが、曲線bでは、中心部は、乾留されずに石炭のままの層となっており、次いで、軟化・溶融層を挟んで炉壁側にコークス層がある。図3では、450〜550℃の温度範囲で軟化・溶融層が形成される例を示している。
コークスケーキの押出しに必要な力F(N)は、例えば特許文献1や学術文献(Year-Book of the coke oven manager’s association、1979年、213頁)に開示されているような、微小区間における圧力のバランスを計算し、コークスケーキ全体が動き出す直前の押出し圧力分布と炉壁にかかる圧力分布を求める方法によって算出することができる。
dP/dx=−(2μ×k/W)×{P+(ρ×g×H/2)}−μ×ρ×g
・・・ (2)
ここで、W:炉幅(m)、H:コークス高さ(m)、ρ:コークス嵩密度(kg/m3)、μ:摩擦係数、g:重力加速度(m/s2)、k:ランキン係数、P:押出し圧力(Pa)である。
(2)式の第1項は、コークスケーキが炉壁に及ぼす荷重による圧力を表すものであり、第2項は、コークスケーキの自重によって炉底に及ぼす荷重による圧力を表すものである。
F1=W×H×{ρ×g×H/2+W×ρ×g/(2k)}×{EXP(2μ×k×L/W)−1 }
・・・(3)
そこで、コークスケーキを1フリュー単位で炉長方向に分割し、分割領域ごとにランキン係数knを設定して、その長さS(m)にわたって(2)式を積分し、分割領域ごとの押出し圧力Pnを次の(4)式によって求める。
Pn={ρ×g×H/2+W×ρ×g/(2kn)}×{EXP(2μ×kn×S/W)−1 } ・・(4)
F2=W×H×Pt ・・・(5)
(i)まず、使用する配合炭ごとに、未乾留域のない通常乾留領域のランキン係数kgを次のようにして求めておく。
図5に示した押出し試験装置を用い、実際に使用する配合炭を用いて内部まで乾留している試験用コークスケーキを作製し、側壁3、3とコークスケーキの間のそれぞれの隙間量Xcを変えて、作製されたコークスケーキの押出し試験を実施して、配合炭ごとにランキン係数を隙間量との関係で予め求めておく。
そして、実際に使用する配合炭の乾留後の隙間量を、操業時の炉温とコークス収縮率の関係から、特許文献2に記載された方法により計算で求め、その隙間量に対応するランキン係数kgを求める。
コークス押出し力の実測値は、押出し機モーターに取り付けられたトルクメーターの指示値から算出した。
また、推定値は、従来法では、未乾留域の存在を考慮しないで求められたランキン係数を用いて推算し、本発明法では、本発明に基づき未乾留域の存在を考慮して求められたランキン係数を用いて推算した。
また、推定値の算出に当たっては、ランキン係数を求めるのに必要なコークスケーキと炉壁との隙間量は、操業時の炉温と配合炭のコークス収縮率の関係から、特許文献2に記載された方法により計算で求めた。
同図に〇印で示すように、本発明法により推定した押出し力と実コークス炉で実測した押出し力の間には良好な対応関係があることが確認できた。一方、従来法では、未乾留域の発生による押出し力の増大を予測することができなかった。
2 外部固定壁
3 側壁
4 固定壁
5 可動壁
6 油圧装置
7、8 ロードセル
9 コークス層
10 石炭層
Claims (2)
- 室式コークス炉の炭化室からコークスケーキを押出すのに必要な力を推定するコークス押出し力の推定方法において、
未乾留域を含み、該未乾留域の幅の異なる試験用コークスケーキを作製し、該試験用コークスケーキの圧縮試験を行い、コークス押し圧と炉壁押し圧を測定してランキン係数求め、
前記未乾留域の幅と求められたランキン係数から、コークスケーキ内の未乾留域の幅とランキン係数の間の関数関係を予め求めておき、
実コークス炉の燃焼室の温度から、その燃焼室に隣接する炭化室内の炭中温度分布を推定して、炭中温度が、配合炭を構成する石炭のうち、軟化開始温度が最も低い石炭の軟化開始温度を下回る領域を未乾留域として、その炭化室幅方向の幅を求め、
前記予め求めた未乾留域の幅とランキン係数の関数関係から、未乾留域を含む領域のコークスケーキのランキン係数を求め、
未乾留域のない領域では通常に乾留された場合のランキン係数を用い、未乾留域を含む領域では前記関数関係から求められたランキン係数を用いて、未乾留域を含むコークスケーキ全体を実コークス炉の炭化室から押出すのに必要な力を推定することを特徴とするコークス押出し力の推定方法。 - 炭化室の押出し方向をフリューに対応する領域で分割して、分割領域ごとに炭中温度分布を推定して、分割領域を、未乾留域のない領域と未乾留域を含む領域に区分けし、
未乾留域のない領域では通常に乾留された場合のランキン係数を用い、未乾留域を含む領域では、前記関数関係から求められたランキン係数を用いて、それぞれの領域に必要な押し力を求め、
求められたすべての領域の押し力を加算して、実コークス炉の炭化室からコークスケーキを押出すのに必要な力を推定することを特徴とする請求項1に記載のコークス押出し力の推定方法。
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JP2014080544A (ja) * | 2012-10-18 | 2014-05-08 | Nippon Steel & Sumitomo Metal | コークス炉におけるコークス押出力の推定方法 |
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- 2013-10-16 JP JP2013215510A patent/JP6197568B2/ja active Active
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