JP6260254B2 - コークス炉におけるコークス押出負荷の推定方法 - Google Patents
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Description
炭化室の炉壁に突起部が存在するとその分だけ炉幅(炉壁間距離)が狭くなる。炉幅が狭くなった狭窄部をコークスケーキが通過する際、炉壁面とコークスケーキ表面との間の相互作用が大きくなり、押出しに必要な力や炉壁に作用する荷重がさらに増加することになる。
炭化室内の石炭は、炭化室両側の炉壁を介して隣接する燃焼室からの燃焼熱の伝熱により、炉壁側から炉幅方向中央に向かって加熱される。燃焼室は、炭化室の炉長方向に沿って30室前後の燃焼小室(フリュー)に細分されており、特定のフリューで燃焼不良が発生すると、その箇所で、炭化室内の炉幅方向への伝熱量が低下し、石炭の昇温が遅れるため、コークス押出し時にコークスケーキ中心部の温度が十分に昇温していない領域が発生する。
この乾留不良域は、正常に乾留されたコークス層に比べて押出し時の圧縮挙動が異なり、乾留不良域を含むコークスケーキを押出す場合は、正常に乾留されたコークスケーキに比べて押出し力が高くなるという課題がある。
そこで、本発明者らは、乾留不良領域を含むコークスケーキが、炉壁に存在する突起部を通過する際に必要な押出し力を求める技術も特許文献3で提案している。
その結果、未乾留域を含むコークスケーキが炉幅狭窄部を通過するのに必要な力(突起乗り越え力とも記す)は、未乾留域の幅と一定の関係があることを見出した。
そして、実コークス炉の燃焼室の温度から炭化室におけるコークスケーキの未乾留域の幅を推算しておくことにより、その幅から未乾留域を含むコークスケーキが炉幅狭窄部を通過するのに必要な力を精度良く推算できることを見出した。
(1) 炭化室の炉壁に相当する側壁に突起部を形成した押出負荷測定装置を用いた試験用コークスケーキの押出し試験によって、試験用コークスケーキが前記突起による炉幅狭窄部を通過するのに必要な突起乗り越え力を測定し、測定された該乗り越え力に基づいて、炭化室の炉壁に突起部を有する実コークス炉のコークス押出負荷を推定する方法であって、
内部に未乾留域を含み、該未乾留域の幅の異なる試験用コークスケーキを作成し、該試験用コークスケーキを用いて、前記突起部の突起高さを変化させて押出し試験を実施し、突起高さとコークスケーキの未乾留域の幅と前記突起乗り越え力との関係を予め求めておき、
実コークス炉の燃焼室の温度から炭化室におけるコークスケーキの未乾留域の幅を求めるとともに、実コークス炉の炭化室の炉壁面の突起部の突起高さを求め、前記予め求めておいた突起高さと未乾留域の幅と突起乗り越え力との関係から、前記求められた未乾留域の幅と突起高さに応じた突起乗り越え力を求め、求められた突起乗り越え力を用いて前記突起部を有する実コークス炉の炭化室からコークスケーキを押出す際のコークス押出負荷を推定することを特徴とするコークス押出負荷の推定方法。
このため、コークス押出負荷を軽減するようにコークス炉の操業条件や装入石炭の性状を管理することで、コークス押し詰まり等のトラブルの発生を防止できる。その結果、コークスの生産性が向上する。また、炉壁に対する負荷が低減するため、コークス炉寿命の延長にもつながる。
炉壁に突起部があるような炭化室から乾留後のコークスケーキを押出す際、押出しに必要な力(押出負荷)は、突起部のある位置の炉壁に接するフリューに燃焼不良がない場合は、前記特許文献1、2に記載された、全体が正常に乾留されたコークスケーキを用いたコークス押出負荷測定試験によって求められた、突起を乗り越えるのに必要な力(突起乗り越え力)を用いて、全体のコークスケーキの押出し力を求めることができる。
なお、未乾留域を含むコークスケーキは、コークスケーキの押出し方向と直交する方向の未乾留域の中心線が、コークスケーキ圧縮方向の両側壁間の中心線と一致するように作成した。
この押出し試験においては、まず、側面パネル2に楔形の突起6(長さ400mm、水平面13の長さ:220mm、突起の厚みh:20mmと30mm、斜面12の角度9.5°)を取付ける。次に、上記の試験用コークスケーキ1を左右の側面パネル2、3及び押し側および受け側の当て板4、5で囲まれる空間に配置する。さらに、想定する炭化室内のコークスケーキの高さ方向の位置に応じて、コークスケーキの上部に所定の質量を有する錘を積載する。
未乾留域を含むコークスケーキ1では、乾留が正常に行われた場合に生じるコークスケーキの炉幅方向中央の間隙や、炉壁(側壁)とコークスケーキ間に生じる間隙14が形成されない。
コークスケーキ1の側面が突起6の斜面12を上り始めると、反力Frは一定を維持するように制御されているので、押出し力と反力の差が次第に増加して行き、コークスケーキ1が突起6の斜面を乗り超え、突起6の水平面13と、それと対向する側面パネル3との間に形成された狭窄部を通過する。その際に、押出し力Fpの値は最大値を示す。この最大値が、コークスケーキが炉幅狭窄部を通過するために必要な力(突起乗り越え力)に相当する。
図3から、コークスケーキに存在する未乾留域の幅と突起乗り越え力の間には、図3中に記載した2次関数で表記される良好な関係があることを見出した。
ここで、未乾留域とは、軟化溶融温度未満の石炭層の領域と定義するが、操業中の実コークス炉において、未乾留域の幅Wを直接測定することは困難であるため、燃焼室フリューの温度から炭中温度分布を推定して、未乾留域の幅を求める。
炉長方向各位置における炭化室の炭中温度分布は、当該フリューの温度実測値から、コークス炉の炉体条件(炉壁煉瓦の厚み、熱伝導率、等)及び石炭装入条件(装入密度、水分、等)等を用いて伝熱計算を行って算出することができる(例えば、富士製鐵技報、17,353頁,1968年発行、参照)。
図4(a)の曲線は、燃焼室に燃焼不良がなく、正常な乾留がなされた場合の温度分布を示し、(b)の曲線は、燃焼室で燃焼不良がある場合の温度分布を示す。(a)の曲線では、炭化室の幅方向中心部まで乾留されてすべてコークス層になっているが、(b)の曲線では、炭化室の幅方向中心部近傍では、乾留されずに石炭のままの層が
存在しており、次いで、軟化溶融層を挟んで炉壁側にコークス層がある。なお、図4では、450〜550℃の温度範囲で軟化溶融層が形成される例を示している。
コークスケーキ全体の押出負荷は、実炉の炉壁に突起が形成されている箇所の突起乗り越え力と、突起が形成されていない健全で平滑な箇所の側圧転化により生じる最大押出し力との合計により求めることができる。
具体的には、次の(i)〜(iv)の手順によって求める。
図6に示すように、複数の領域(p、q)としては、炉長方向にp個、炉高方向にq個に区分するが、炉長方向はフリュー単位で分割することが好ましく、通常は、pは燃焼室のフリューの数とするのが好適である。また、炉高方向のqは、特に限定されないが、推定精度をより良好とするためには、10個以上とすることが好ましい。
コークス炉炭化室の炉壁面の突起の位置やそのサイズについては、例えば、特許第3590509号に記載されているような内壁観察装置で撮像し、撮像された画像中に示されたレーザースポットのプロファイルから、例えば、特許文献(特許第4262281号)に記載された方法に従い、炉壁表面のコンタマップ(等高線表示)を作成することにより、求めることができる。
また、フリュー温度から燃焼不良のあるフリューと炉壁を介して接する炭化室の炭中温度分布を推定して、未乾留域の発生の有無を判断する。
領域Z(p、q)のうち突起がある領域については、その領域が、燃焼不良のあるフリューと炉壁を介して接する領域であるかどうか判定する。
燃焼不良のないフリュー(すなわち健全なフリュー)と炉壁を介して接する炭化室内の領域では、予め求めておいた突起高さ(押出し方向と直角な方向の厚み)と突起乗り越え力との関係から、突起の高さに応じた突起乗り越え力を求める。
燃焼不良のあるフリューと炉壁を介して接する領域では、図3から明らかな様に、突起がある場合は、その高さ(幅方向の厚み)に依らず、平滑面の場合よりも押出しに必要な力が大きくなるケースが極めて多いので、予め求めておいた、突起高さと未乾留域の炉幅方向の幅と突起乗り越え力との関係から、突起の高さと未乾留域の炉幅方向の幅とに応じた突起乗り越え力を求める。
突起のない領域において、側圧転化による最大押し圧力に基づくコークスケーキの押出しに必要な力は、例えば、特許文献(特開2008−266440号公報)や学術文献(Year-Book of the coke oven manager’s association、1979年、213頁)に開示されているような、微小区間における圧力のバランスを計算し、コークスケーキ全体が動き出す直前の押出し圧力分布と炉壁にかかる圧力分布を求める方法によって算出することができる。
以降、同様の計算を繰り返すことにより、炉長方向の所望の位置の領域において、コークスケーキに作用する反力を求めることができる。
また、上記の乾留後のコークスケーキと炉壁との間の間隙については、燃焼不良のないフリュー(すなわち健全なフリュー)と炉壁を介して接する炭化室内の領域では、その配合炭について伝熱計算(例えば、「鉄と鋼」vol.90(2004),No.9, P.728-733を参照)により求める。
また、燃焼不良のあるフリューと炉壁を介して接する炭化室内の領域では、コークスケーキと炉壁との間の間隙がないもの(隙間量0)として計算する。
まず、全ての領域に突起がないものとして、(iii)のような計算を、同じ炉高さの領域において、上記のように、最もCS寄りの領域の力バランスを計算し、順次、PS寄りの隣の領域の力バランスを求めることで、各領域の最大押出し力Fpおよび反力Frが求まり、従って、各領域のコークス押出し力を求める。また、同様の計算を、炉高方向についても行い、すべての領域z(p,q)におけるコークス押出し力を求める。
そして、突起のある領域については、突起のない領域として求めた押出し力を上記(ii)で求めた押出し力に置き換え、全ての領域(p×q個)の押出し力を合計することで、コークスケーキ全体の押出負荷を推定することができる。
コークス押出し力の実測値は、押出し機モーターに取り付けられたトルクメーターの指示値から算出した。
また、コークス押出し力の推定値は、従来法として、特許4528364号に記載されている方法により、未乾留域の存在を考慮しないで、突起部の存在を考慮して推算したのに対し、本発明法では、本発明に基づき未乾留域の存在と突起部の存在の両方を考慮して推算した。
また、側圧転化率の推定値の算出に当たっては、コークスケーキと炉壁との隙間量は、操業時の炉温と配合炭のコークス収縮率の関係から、特許文献2に記載された方法により計算で求めた。
同図に〇印で示すように、本発明法により推定した押出し力と実コークス炉で実測した押出し力の間には良好な対応関係があることが確認できた。一方、従来法(◆)では、未乾留域の発生による押出し力の増大を予測することができなかった。
このことから、未乾留域の発生による押出し力の増大を未乾留域の幅から推算する本発明の有効性が確認された。
2、3 側面パネル
4 押出し側(PS)当て板
5 受け側(CS)当て板
6 突起
7 押出し側(PS)油圧装置
8 受け側(CS)油圧装置
9 ロードセル
10 コークス層
11 未乾留域
12 突起の斜面
13 突起の水平面
14 側壁とコークスケーキ間の間隙
h 突起の高さ
Fp 押出し力
Fr 反力(受け力)
W 未乾留域の幅
Claims (1)
- 炭化室の炉壁に相当する側壁に突起部を形成した押出負荷測定装置を用いた試験用コークスケーキの押出し試験によって、試験用コークスケーキが前記突起による炉幅狭窄部を通過するのに必要な突起乗り越え力を測定し、測定された該乗り越え力に基づいて、炭化室の炉壁に突起部を有する実コークス炉のコークス押出負荷を推定する方法であって、
内部に未乾留域を含み、該未乾留域の幅の異なる試験用コークスケーキを作成し、該試験用コークスケーキを用いて、前記突起部の突起高さを変化させて押出し試験を実施し、突起高さとコークスケーキの未乾留域の幅と前記突起乗り越え力との関係を予め求めておき、
実コークス炉の燃焼室の温度から炭化室におけるコークスケーキの未乾留域の幅を求めるとともに、実コークス炉の炭化室の炉壁面の突起部の突起高さを求め、前記予め求めておいた突起高さと未乾留域の幅と突起乗り越え力との関係から、前記求められた未乾留域の幅と突起高さに応じた突起乗り越え力を求め、求められた突起乗り越え力を用いて前記突起部を有する実コークス炉の炭化室からコークスケーキを押出す際のコークス押出負荷を推定することを特徴とするコークス押出負荷の推定方法。
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