安価で、軽量かつ小形の放射線測定器を実現することが望まれている。そのような観点からシンチレータ部材と半導体センサとを組み合わせて検出部(複合検出部)を構成することが望まれる。そのような構成によれば、検出部の出力信号として、間接検出方式による間接検出パルスと直接検出方式による直接検出パルスの両者が得られる。しかしながら、従来においては、2つの検出方式を活用したワイドレンジ測定までは実現されていない。特に、線量レベルの大小に応じた検出方式の切り替えについては実現されていない。
本発明の目的は、低線量から高線量までにわたって精度良く放射線を検出できる放射線測定器を提供することにある。あるいは、本発明の目的は、複合検出部を備えた放射線測定装置において、複数の検出方式それぞれの利点が効果的に発揮されるように信号処理を行なうことにある。
(1)本発明に係る放射線測定器は、シンチレータ部材と前記シンチレータ部材に隣接して設けられた半導体センサとを有し、前記シンチレータ部材への放射線の入射により間接検出パルスを出力し、前記半導体センサへの放射線の入射により直接検出パルスを出力する複合検出部と、前記複合検出部から出力された検出パルスの弁別処理により、前記間接検出パルス及び前記直接検出パルスを弁別する弁別部と、前記間接検出パルス及び前記直接検出パルスの内の少なくとも一方から求められる参照線量情報に基づいて線量演算方法を選択する選択部を有し、当該選択部によって選択された線量演算方法に従って前記間接検出パルス及び前記直接検出パルスの内の一方又は両方に基づいて出力線量情報を演算する線量演算部と、を含むことを特徴とするものである。
上記構成によれば、複合検出部はシンチレータ部材と半導体センサとを含むものであり、間接検出方式及び直接検出方式の両方式に対応した検出部である。シンチレータ部材へ放射線が入射すると、そこで光が発生し、その光が半導体センサで検出される。これにより半導体センサから間接検出パルスが出力される。一方、半導体センサへ放射線が直接的に入射すると、そこで電荷が生じて、半導体センサから直接検出パルスが出力される。すなわち、検出パルス(検出信号)として、複合検出部から間接検出パルス及び直接検出パルスが両者混ざった状態で出力される。半導体センサは、光及び放射線を検出する検出器であり、フォトダイオード等により構成される。弁別部は、間接検出パルスと直接検出パルスとをそれらの性質の違いに基づいて弁別するものである。その場合、波高値の違い、周波数特性の違い、等が利用される。線量演算部は選択部を有し、その選択部は参照線量情報に基づいてその時点での線量状況に相応しい線量演算方法を選択する。例えば、低線量の場合には、相対的に感度が高い間接検出方式に対応する線量演算方法が選択されるようにし、高線量の場合には、数え落としの問題が少ない直接検出方式に対応する線量演算方法が選択されるようにする。そのように選択された線量演算方法に従って、線量演算部が間接検出パルス及び直接検出パルスの内の一方又は両方に基づいて出力線量情報を演算する。よって、低線量から高線量までを高精度に測定できる。
参照線量情報は、線量演算方法を選択する際に参照される情報であり、出力演算情報と同一の情報又はそれとは異なる情報である。線量状況を的確に判断する観点から、数え落としの問題が少ない直接検出パルスに基づいて演算される線量情報を参照線量情報とするのが望ましい。その場合、平滑化用の時定数がユーザーによって又は自動的に切り替えられると、それに応じて参照線量情報の演算条件が変動してしまうので、時定数を一定とする条件の下で参照線量情報を演算するのが望ましい。参照線量情報が間接検出パルスの計数によって求められた計数値(又は線量率)及び直接検出パルスの計数によって求められた計数値(又は線量率)の両方に基づいて演算されてもよい。
選択された線量演算方法に対応する弁別回路、計数回路及び演算モジュールだけを動作させて、選択されなかった線量演算方法に対応する弁別回路、計数回路及び演算モジュールを休止状態とするようにしてもよい。あるいは、選択された線量演算方法によらずに複数の弁別回路、複数の計数回路及び複数の演算モジュールを並列的に動作させ、それによって得られた複数の線量情報の中から実際に出力する線量情報(出力演算情報)を選択するようにしてもよい。なお、演算された複数の線量情報を並列的に出力する構成を採用することも可能である。線量演算方法の選択は、参照線量情報に基づいて自動的に実行されるが、マニュアルで選択できるように構成してもよい。
望ましくは、前記選択部は、前記参照線量情報が第1線量より低い低線量を示した場合に前記線量演算方法として前記間接検出パルスに基づく低線量用演算方法を選択する。間接検出方式は直接検出方式よりも高感度であるため、低線量状況においては間接検出方式に対応する演算方法が選択される。
望ましくは、前記選択部は、前記参照線量情報が第2線量よりも高い高線量を示した場合に前記線量演算方法として前記直接検出パルスに基づく高線量用演算方法を選択する。直接検出方式は間接検出方式よりも数え落としの問題が生じにくいので、つまり高線量の場合でも検出可能であるので、高線量状況においては直接検出方式に対応する演算方法が選択される。第2線量は第1線量と同一かそれよりも高い線量である。
望ましくは、前記選択部は、前記参照線量情報が前記第1線量と前記第2線量との間の中間線量を示した場合に前記線量演算方法として前記間接検出パルス及び前記直接検出パルスの両方に基づく中間線量用演算方法を選択する。所定の線量を境として2つの検出方式を直ちに切り替えると、出力線量情報の不連続等の問題が生じる。そこで、2つの検出方式を併用するものである。
望ましくは、前記中間線量用演算方法は、前記間接検出パルスに基づく第1線量情報及び前記直接検出パルスに基づく第2線量情報の重み付け加算処理により前記出力線量情報を演算する方法である。測定レンジの全体にわたって重み付け加算処理を行うことも可能であり、中間線量から高線量までにわたって重み付け加算処理を行うことも可能である。平滑化用の時定数については2つの演算方法において共通としておくのが望ましい。但し、例外的に演算方法ごとに個別的に時定数を設定できるように構成してもよい。
望ましくは、前記参照線量情報は、前記直接検出パルスに基づいて演算される線量情報である。直接検出方式では低線量の場合に精度良く測定を行えないが、それに基づいて求められる線量情報から、低線量状況それ自体を判断することは可能であり、しかも数え落とし問題が生じにくいから、直接検出パルスに基づいて演算される線量情報を参照線量情報とするのが望ましい。もちろん、間接検出パルスに基づいて演算される線量情報を併せて参照するようにしてもよい。あるいは、低線量状況が明らかな場合には間接検出パルスに基づいて演算される線量情報だけを参照するようにしてもよい。
望ましくは、前記参照線量情報は、前記出力線量情報とは別に演算される線量情報であり、平滑化用時定数を一定値とする条件に従って前記直接検出パルスに基づいて演算される線量情報である。時定数は平滑化の時間幅を定めるものであり、それを切り替えると、指示値(出力線量情報)の応答性が変化する。時定数が切り替えられると線量情報の内容が変化してしまうため、そのような切り替えの影響を受けないように、参照線量情報を演算する場合における時定数を一定値としておくのが望ましい。もちろん、その一定値を必要に応じて切り替え可能に構成してもよい。
望ましくは、前記弁別部は、前記検出パルスの波高値に基づいて前記間接検出パルス及び前記直接検出パルスを弁別する。望ましくは、前記弁別部は、前記検出パルスの周波数特性に基づいて前記間接検出パルス及び前記直接検出パルスを弁別する。望ましくは、前記選択部は、自動選択モードにおいて前記参照線量情報に基づいて線量演算方法を自動的に選択し、手動選択モードにおいてユーザーによって指定された線量演算方法を選択する。
(2)後述する実施形態に係る放射線測定器は、シンチレータ部材と前記シンチレータ部材に隣接して設けられた半導体センサとを有し、前記シンチレータ部材への放射線の入射により間接検出パルスを出力し、前記半導体センサへの放射線の入射により直接検出パルスを出力する複合検出部と、前記間接検出パルス及び前記直接検出パルスに基づいて線量情報を演算する演算部と、複合検出部を収容した先端部分とそれに連なる本体部分とを有するハウジングと、を含み、前記先端部分は当該先端部分が向く方向である主方向を有し、前記先端部分内において前記主方向に対して直交する方向に前記シンチレータ部材と前記半導体センサとが並んで配置された、ことを特徴とするものである。
上記構成によれば、ハウジングにおける先端部分内に複合検出部が配置されており、その複合検出部によって放射線が検出される。複合検出部はシンチレータ部材と半導体センタとからなる。それらは先端部分内において、主方向に直交する方向に並んで配置される。直交方向は、例えば、左右方向又は厚み方向である。主方向から見て、シンチレータ部材及び半導体センサが横並びの関係にあり、一方が他方の裏側に隠れることを防止できるから、不必要な感度低下を回避できる。主方向は先端部分が向く方向であり、それは望ましくは先端部分の伸長方向である。一般に、主方向はユーザーにおいて意識されるものであり、ユーザーによって測定したい方向へ主方向が自然に合わせられる。もっとも、複合検出器の感度特性が全方位にわたっておよそ均一であってもよい。そのような場合でも、主方向が測定したい方向へ自然に合わせられるから、シンチレータ部材の後側に半導体センサが隠れてしまって直接検出方式で感度が低下してしまうという問題が生じる可能性を低減できる。単一のシンチレータ部材に対して複数の半導体センサを設けるようにしてもよい。また複数のシンチレータ部材を利用することも可能である。以上のように、上記構成によれば、特にユーザーによって操作される可搬型放射線測定器において、間接検出方式及び直接検出方式をそれぞれ有効に機能させて測定精度を高められる。
望ましくは、前記先端部分は、前記主方向と、前記主方向に直交する左右方向と、前記主方向及び前記左右方向に直交する厚み方向と、を有し、前記シンチレータ部材と前記半導体センサは前記厚み方向に並んで配置される。厚み方向の積層であれば左右方向において特性を均一化できる。厚み方向において特性が非均一となっても、その厚み方向は上下方向であるから、それによる問題はあまり生じない。
望ましくは、前記先端部分は前記主方向及び前記左右方向に広がった形態を有し、前記シンチレータ部材は前記主方向及び前記左右方向に広がった形態を有する。この構成によれば、先端部分内の有限なスペースを効率的に利用してシンチレータ部材を配置でき、つまりシンチレータ部材の検出感度を高められる。
望ましくは、前記本体部分は当該本体部分が伸長する方向である中心軸方向を有し、前記本体部分の前面側には前記線量情報が表示される表示器が設けられ、前記先端部分の前記主方向は前記中心軸方向に対して前記本体部分の後面側へ傾斜し、前記半導体センサは前記シンチレータの下側に設けられる。
特定の測定対象物が決まっている場合、通常、その測定対象物に対して主方向が向くように放射線測定器の姿勢及び位置が定められる。その場合、測定対象物の形態にもよるが、主方向の上側よりも主方向の下側において測定対象物が及んでいるようなケースが多い(例えば床面や地面を測定する場合)。そのような場合、シンチレータ部材の上側に半導体センサを配置すると、半導体センサがシンチレータ部材の影に入りやすくなる。これに対して、シンチレータ部材の下側に半導体センサを設ければ、半導体センサがシンチレータ部材の後に隠れてしまう問題を回避できる。なお、本体部分の前面側に表示器が設けられているので、通常、表示器の表示面が上側を向くように放射線測定器がユーザーによって把持される。表示器の表示面を観察しながら対象物に対する放射線測定が実施される。
望ましくは、前記シンチレータ部材の外表面には光通過領域を除いて遮光膜が設けられ、前記光通過領域に対して前記半導体センサの受光面が接着される。遮光膜に加えて、先端部の内部を完全に暗室とするための構成を採用してもよい。
本発明によれば、低線量から高線量までにわたって精度良く放射線を検出できる放射線測定器を提供できる。あるいは、本発明によれば、複合検出部を備えた放射線測定装置において、複数の検出方式のそれぞれの利点が効果的に発揮され得る。
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明に係る放射線測定器の好適な実施形態が示されており、図1はその上面図である。この放射線測定器は、対象物からの放射線又は環境中に存在する放射線を測定する装置である。対象物としては、構造物、土壌、自然物、人体等をあげることができる。本実施形態においてはγ線が測定されている。例えば、それはCs-137から出るγ線である。
図1において、放射線測定器はバッテリを内蔵し、可搬型の装置として構成されている。本実施形態においては、放射線測定器を片手で把持して、その操作を行うことが可能である。放射線測定器は、先端側から後端側にかけて3つの区間を有し、具体的には先端部10、中間部12及びグリップ部14を有する。中間部12は、その上面に表示部18を有している。表示部18は液晶表示器等により構成されている。中間部12は、前後方向であるX方向及び左右方向であるY方向に広がった平べったい形態を有しており、すなわち平板型の形状を有している。その厚みは例えば17.5mmである。例えば、その厚さを10〜25mmの範囲内から選択することもできる。
放射線測定器はケースとしての中空のハウジングを有しており、上記の先端部10、中間部12及びグリップ部14に対応して、そのハウジングは、先端部分、中間部分及びグリップ部分からなる。中間部分とグリップ部分は本体部分を構成する。
中間部12の前側には屈曲部11を介して先端部10が一体的に連結されている。先端部10は後に説明するように中間部12の下面側へ傾斜した傾斜部を構成している。先端部10は図示されるように左右方向に伸長した形態を有し、また後に説明する主方向と左右方向(Y方向)の両方向にわたって広がった平べったい形態を有している。先端部10の厚さ、すなわち左右方向と主測定方向の両方向に直交する方向の厚さは、例えば20mmである。その厚さを例えば15〜30mmの範囲内において選択することも可能である。
先端部10の内部(より具体的にはハウジングにおける先端部分の内部)には複合検出部16が設けられている。本実施形態においては、複合検出部16は、後に説明するように、シンチレータ部材及び半導体センサを有している。先端部10の先端面10Aは検出面であり、それは主方向に対してほぼ直交した面を構成している。先端部10は図1に示されるように上方から見て若干ながら先細の形状を有している。
グリップ部14はユーザーの手によって把持される部分であり、それは上方から見てくびれ形状を有している。グリップ部14は中間部12と同様にX方向及びY方向に広がった平べったい形態を有し、つまりそれは平板状の形態を有している。グリップ部14の前縁におけるY方向の幅W3が最も大きく、そこから後端方向にその幅を観察すると、中間部分において一旦その幅がW1となり、そこからまた広がって後縁においてその幅はW2となっている。すなわち上述したようにグリップ部14は上方から見てくびれた形状を有している。これによりグリップ部14が掴み易くなっており、またグリップ部14を掴んだ状態において表示部18が手によって隠蔽されてしまう問題が解消又は軽減されている。
グリップ部14の上面、より具体的には表示部18の後側には操作部20が設けられている。本実施形態において操作部20は3つのプッシュボタンによって構成されている。グリップ部14の握り方について説明すると、例えば、右手でそれを把持する場合、グリップ部14の右側面に手のひらが当てられ、親指がグリップ部14の上面に当てられ、残りの4つの指がグリップ部14の左側面に引っ掛けられる。このような状態で親指によって操作部20が操作される。もちろん、対象物の位置や対象物の傾きあるいはユーザーの好み等によって様々な持ち方を採用することが可能である。
ちなみに放射線測定器の全体を包み込む弾性部材で構成されたジャケットを設けるようにするのが望ましい。このようなジャケットによれば、放射線測定器を誤って落下させてしまったような場合においても放射線測定器の筐体及びその内部の電子部品を保護することが可能となる。そのようなジャケットは着脱自在なものとして構成するのが望ましい。ちなみに、図1にはX方向及びY方向が示されているが、それに直交する方向としてZ方向が定義される。Z方向は中間部12及びグリップ部14についての厚み方向である。
図2には、図1に示した放射線測定器の斜視図が示されている。上述したように、放射線測定器は、先端から後端にかけて、先端部10、中間部12及びグリップ部14を有している。先端部10の先端面は検出面10Aを構成し、それは主方向に対して交差した面である。ここで、主方向は先端部10が向いている方向であり、それは先端部10の伸長方向である。また、本実施形態において、主方向は、校正が行われた方向であり、あるいは最も感度が高い方向である。符号22はUSBポートを示している。符号24はバッテリケースのカバーを示している。本実施形態においては、USBポートを介してバッテリの充電を行うことが可能である。
図3には、放射線測定器の右側面図が示されている。符号26は中間部及びグリップ部の中心を通過する中心軸を示している。x方向は先端部10の中心軸方向であり、つまり主方向である。x方向に直交する左右方向がy方向であり、それはY方向に一致している。x軸とy軸とに直交する方向として先端部10の厚み方向であるz方向が定義される。
先端部10は、x方向及びy方向に広がった形態を有している。上記のように、先端部10は、放射線測定器の本体の後面側へ傾斜している。中心軸26に対する主方向xの傾斜角度(交差角度)がθで表されている。角度θは望ましくは10〜60度の範囲内に設定され、特に望ましくは15〜45度の範囲内に設定され、本実施形態においては30度に設定されている。上述したように、中間部及びグリップ部のZ方向の厚さは例えば17.5mmであり、先端部における中心軸102に直交する方向の厚さは例えば20mmである。もちろん本明細書に挙げられている各数値は一例に過ぎない。いずれにおいても片手で容易に把持でき、また片手だけで操作が可能な放射線測定装置を構成するのが望ましい。
図3において、先端部10内には複合検出部16が設けられている。具体的には、先端部10内の底面上に基板28が配置されている。基板28はx方向及びy方向に広がった平板状の形態を有し、x方向に伸長している。基板28の先端部における上面には半導体センサ30が搭載されている。半導体センサ30の上にはブロック状のシンチレータ部材32が配置されている。シンチレータ部材32の材料は例えばCsIである。シンチレータ部材32の下面には光通過領域がある。シンチレータ部材32の表面には、光通過領域を除いて、遮光膜が設けられている。それは外部からの光の進入を阻止し、内部からの光を反射するものである。シンチレータ部材32の光通過領域には半導体センサ30の受光面が密着している。両面間には導光部材としての光学グリスが設けられている。シンチレータ部材32は、例えば、y方向に40mm、x方向に10mm、z方向に5mmの大きさを有し、それは先端部10の内部空間と同様に平板状の形態を有している。シンチレータ部材32の上側には天井面との間に図示されていない弾性部材又はスペーサ部材が設けられている。
基板28には、電子回路が搭載されており、そこには例えばアンプ等のアナログ回路が設けられる。基板28は、フレキシブル基板を介して、液晶表示器やマイコンを搭載したメイン基板に接続される。
対象物34側から、主方向つまりx方向に沿って先端部10を観察した場合、シンチレータ部材32と半導体センサ30とが横に並んでいる。つまり、シンチレータ部材32と半導体センサ30は主方向に直交する厚み方向つまりz方向に並んでおり、より詳しくはシンチレータ部材32の下側に半導体センサ30が設けられている。対象物34からの放射線(例えば放射性セシウムからのγ線)の内で、主方向に平行な進行方向をもった放射線36がシンチレータ部材32に対して直接的に入射する。また、主方向に平行な進行方向をもった放射線38が半導体センサ30に対して直接的に入射する。対象物34は、通常、主方向の上側よりも下側により多く存在しており、主方向の下側から飛来する放射線40A,40Bは、薄い基板28を通過するものの、シンチレータ部材32を通過せずに、直接的に半導体センサ30に到達する。床面、地面、壁面等を測定する場合にも同様のことが生じ得る。シンチレータ部材32の上側に半導体センサを配置することも可能であるが、そのような場合には下側からの放射線40A,40Bから見て半導体センサがシンチレータ部材32の影になってしまい、検出感度が低下してしまうおそれがある。そこで、図3に示す構成のように、シンチレータ部材32の下面側に半導体センサ30を設けるのが望ましい。
放射線がシンチレータ部材に入射すると(例えば符号36参照)、その蛍光作用によって光が生じ、その光が半導体センサ30で検出される。これにより半導体センサ30から検出パルス(間接検出パルス)が出力される。放射線が半導体センサ30の空乏層に入射すると(例えば符号38参照)、その電離作用によって電荷が生じ、これにより半導体センサ30から検出パルス(直接検出パルス)が出力される。直接検出パルスは、間接検出パルスに比べて例えば10倍の波高値を有する。本実施形態において、間接検出方式によれば、直接検出方式と比べて、例えば100倍の感度を得られる。ちなみに、半導体センサ30を突き抜けてシンチレータ部材32に入射した放射線により発光が生じることもあり、それとは逆にシンチレータ部材32を突き抜けて半導体センサ30に入射した放射線により検出パルスが生じることもある。間接検出方式及び直接検出方式でのエネルギー感度等を調整するためにフィルタ部材を設けるようにしてもよい。
本実施形態によれば、先端部がひらべったい形態を有していることを前提として、その内部空間を有効活用して複合検出部16を配置でき、特に、シンチレータ部材32としてできるだけ大きなものを配置できるからシンチレータ部材32の検出効率を高められ、また半導体センサ30の感度を高められる。また、2つの検出方式を併用したので、しかも半導体センサを2つの検出方式で共用したので、安価ながら2桁以上のワイドレンジ測定を実現できる。なお、表示される測定値は、線量率(例えば空間線量率)、線量当量率等である。但し、積算線量、積算線量当量等が表示されてもよい。
図1乃至図3に示した放射線測定器の形態はテレビやオーディオ機器などに付属しているリモートコントローラの形態に類似している。しかし、そのようなリモートコントローラはフロア面に向けたり壁面上方へ向けたりするようなものではなく、概ね水平方向に向けられるものである。その一方、本実施形態の放射線測定器は、例えば床面の放射線汚染や壁面上部の放射線汚染等を測定するものであり、そのような測定を容易に行えるように、上述のような屈曲形態を有している。すなわち、例えば床面へ検出面を向けたような場合に表示部の表示面が自然にユーザー側を向く。それがユーザー側に正対しないとしても表示面と視線との成す角度を比較的に大きくできるので、表示面の視認性を向上することが可能である。しかも、グリップ部をもった状態において表示面が露出されており、しかも先端部及び対象部を同じ視線の中に捉えることも容易であるから、測定をしながら対象部位を確認しつつ、更に表示面を観察できるという利点が得られる。もちろん、特定の対象物に対する測定のみならず空間線量率を測定する場合においても本実施形態の放射線測定器を利用可能である。以上のように、本実施形態に係る放射線測定器はコンパクトであり、また使い勝手が非常に良い。
図4は図3を用いて説明した複合検出部の第1構成例を示す斜視図である。平板状の基板28上には複数の電子部品が搭載されており、その先端部の上面には平板状の半導体センサ30が配置されている。半導体センサ30はフォトダイオードである。他のセンサであってもよい。その上面の一部が光入射部(有感部)であるが、図4においては半導体センサ30の上面全部が有感部のように描かれている。半導体センサ30の上側にはブロック状あるいは平板状のシンチレータ部材32が配置される。その下面における中央部が光透過領域42であり、そこに半導体センサ30の有感部が接着される。シンチレータ部材32の表面において、光透過領域42以外はすべて遮光膜によって覆われている。符号44は主方向(x方向)に沿って入射してくる放射線を表している。
図5は第1実施形態に係る放射線測定器を示すブロック図である。複合検出部16は、上記のように上下方向に積層された半導体センサ30及びシンチレータ部材32からなり、それに対してはそれぞれ放射線が入射する(例えば符号46,48参照)。符号50はシンチレータ部材32への放射線の入射により生じた光を示している。半導体センサ30は、シンチレータ部材32からの光を受光すると、検出パルス(間接検出パルス)を出力する。また、それ自身に放射線が入射して電荷が生じた場合にも、検出パルス(直接検出パルス)を出力する。それらの検出パルス(検出信号)は、同じ信号線を通って伝送され、アンプ52において増幅される。増幅後の検出パルスは、第1波高弁別回路54及び第2波高弁別回路56に並列的に入力される。
第1波高弁別回路54は、後に図6に示す第1閾値(第1カットレベル)以上の波高値をもった検出パルスを弁別する回路である。そのような検出パルスには、間接検出パルス及び直接検出パルスが含まれ、後者の波高値は前者の波高値よりも例えば10倍程度大きい。第1カットレベルはノイズ除去のために設定されるものである。間接検出方式の方が直接検出方式よりも100倍程度感度が高いので、第1カットレベルを超えた検出パルスにおいては間接検出パルスが支配的である。第2波高弁別回路56は第2閾値(第2カットレベル)以上の波高値を有する検出パルスを弁別する回路である。第2カットレベルは、間接検出パルスの波高値よりも高いレベルであって、直接検出パルスを弁別可能なレベルに設定される。そのような2つのカットレベルは閾値設定器58によって設定される。このように第1実施形態ではパルス波高値の違いを利用して間接検出パルスと直接検出パルスとを弁別している。
第1計数回路60は第1波高弁別回路54から出力された検出パルスをカウントする回路であり、そのカウント値は間接検出パルスのカウント値であるとみなせる。もちろん、そこから直接検出パルスのカウント値を減算してもよい。第2計数回路62は第2波高弁別回路56から出力された検出パルスをカウントする回路であり、そのカウント値は直接検出パルスのカウント値である。
線量演算部64は、第1計数回路60による第1計数値に基づいて第1線量率を演算し、第2計数回路62による第2計数値に基づいて第2線量率を演算する。また後述するように必要に応じて第1線量率と第2線量率とを重み付け加算して中間的な線量率を演算する。選択部66は、参照線量情報としての現状の線量率に基づいて、線量演算方法を選択するモジュールである。選択部66は、現状の線量率が低線量率範囲内にあると判断した場合(低線量であると判断した場合)、第1計数値に基づく線量率を選択し、それが出力線量情報として表示器68に表示されるようにする。選択部66は、現状の線量率が高線量率範囲内にあると判断した場合(高線量である場合)、第1計数値に基づく線量率を選択し、それが出力線量情報として表示器68に表示されるようにする。重み付け加算モードが適用される場合においては、選択部66は、 現状の線量率が中間線量率範囲にあると判断した場合(中線量であると判断した場合)、第1計数値に基づく第1線量率及び第2計数値に基づく第2線量率を現状の線量率に応じて重み付け加算し、その加算結果である中間的な線量率が出力線量情報として表示器68に表示されるようにする。
線量演算部64がそれぞれの線量率を演算する場合、ユーザー選択された又は自動的に選択された時定数に従って平滑化度合い(応答特性)が定まる。上記参照線量情報としての線量率は、本実施形態において、直接検出パルスに基づいて、より具体的には第2計数値に基づいて演算されている。但し、その際においては時定数として固定値が与えられている。これにより、出力線量情報を演算する条件が時定数の変更によって変動しても、それによって選択部66の選択条件や演算条件が変動することはない。制御部70は図5に示される各構成の動作制御を行うものであり、それに対しては入力器72が接続されている。制御部70を含む符号74で示されるブロックは例えばマイコンによって構成される。
図6は、Cs-137から出るγ線を複合検出部へ照射した場合における、間接検出パルスのスペクトル76と、直接検出パルスのスペクトル78と、を示すものである。グラフの横軸はアンプから出力されるパルスの波高値を示しており、グラフの縦軸はカウント値つまり計数値を示している。スペクトル76から理解できるように、間接検出パルスの波高値は低いが、計数効率は高く、つまり全体的に高い計数値が得られている。一方、スペクトル78から理解できるように、直接検出パルスの波高値は高いが、計数効率は低くなっている。
このような関係を前提として、ノイズ除去のための第1カットレベル80が設定され、また直接検出パルスを抽出するための第2カットレベル82が設定される。第1カットレベル80以上の波高値を有する検出パルスにおいては間接検出パルスが支配的であり、直接検出パルスを事実上無視しうる。符号80Aは第1波高値弁別回路で検出し得るパルスについての波高値範囲を示しており、符号82Aは第2波高値弁別回路で検出し得るパルスについての波高値範囲を示している。
図7には間接検出方式の検出特性92と直接検出方式の検出特性93とが示されている。グラフの横軸は場の線量を示しており、グラフの縦軸は計数率を示している。検出特性92に着目すると、符号84で示す線量(0.1μSv/h)から符号88で示す境界線量(10μSv/h)までの区間90においては線形性が認められるが、境界線量88から符号86で示す線量(1mSv/h)までの区間91においては数え落としにより線形性が損なわれ、飽和が認められる。符号86で示す線量(1mSv/h)を超えると、検出特性93が検出特性92を上回る逆転現象さえ生じ得る。これに対して、検出特性93に着目すると、区間90を超えて区間91に至っても概ね線形性が維持されている。更に高線量域では、検出特性93について線形性が若干崩れるとしても飽和は直ぐには生じない。よって、現在の線量率が低い場合には感度の良い間接検出方式を利用し、現在の線量率が高い場合には数え落とし問題が生じにくい直接検出方式を利用することが望まれる。つまり両方式の利点に着目して両方式を併用するものである。図5に示した第1実施形態においては以上のような観点から選択部66が検出方式(つまり演算方法)の選択を行っている。これにより簡易な構成でありながらワイドレンジ測定を実現できる。
ところで、ある境界線量率において検出方式を突然に切り替えると、その切り替え時に線量率に段差が生じる等の問題が生じやすい。そのような問題に対処するために本実施形態では既に説明した重み付け加算処理を適用している。これについて図8を用いて説明する。
図8においては、図7に示した通りの検出特性92,93が示されてる。区間98は間接検出方式で演算された線量率が実質的に利用される区間(符号84で示す線量から符号96で示す線量までの区間)を示しており、区間100は直接検出方式で演算された線量率が実質的に利用される区間(符号94で示す線量から符号86で示す線量までの区間)を示している。但し、直接検出方式であれば符号86で示す線量を超えて例えば100mSv/hまでにわたって測定を行うことが可能である。区間98と区間100との間には重複区間102が存在し、そこにおいて重み付け加算処理が適用される。その重複区間102は低線量率区間と高線量率区間との間の中間線量率区間と称することができる。もちろん、重複区間102は一例であり、検出部の特性に応じて適宜定めればよい。
図9には2つの重み付け関数が例示されている。横軸は現在の線量を示しており、縦軸は重み(重み値)を示している。重み付け関数106は、間接検出方式によって演算された線量率S1に対して乗算される重みk1を特定するものであり、重複区間102において線量率の上昇に伴って重みが1.0から0まで変化している。重み付け関数108は、間接検出方式によって演算された線量率S2に対して乗算される重みk2を特定するものであり、重複区間102において線量率の上昇に伴って重みが0から1.0まで変化している。重複区間102の中間点(符号104参照)においてはいずれの関数も重み0.5を示している。重複区間102の下限がC1で示されており、その上限がC2で示されている。なお、本実施形態においては、上記の通り、上記の線量率S1,S2の他、時定数一定の条件の下で、直接検出方式により得られた計数値に基づいて線量率S3が別途演算されている。
本実施形態では、重複区間102内において以下の重み付け加算が実行される。S4は重み付け加算後の線量率である。
S4=k1*S1+k2*S2 …(1)
すなわち、現在の線量率S3に基づいて区間ごとに以下のような線量率が選択される。
低線量区間 :S1
中間線量区間:S4
高線量区間 :S2 …(2)
図10には図5に示した第1実施形態に係る放射線測定器の動作例がフローチャートとして示されている。このフローチャートは特に図5に示した線量演算部の動作を示すものである。S10においては、上述した線量率S1,S2,S3が演算される。S12においては、線量率S3に基づいて、現在の線量率がどの区間に該当するかが判断される。線量率S3が閾値C1以下であれば低線量であると判断され、S14において指示値として線量率S1が選択される。すなわち間接検出方式に基づいて演算された線量率S1がS20において表示される。
一方、S12において、線量率S3が閾値C2よりも高い場合、高線量であると判断され、S16において指示値として線量率S2が選択され、それがS20において表示される。すなわち高線量の場合には直接検出方式に基づく線量率S2が表示されることになる。
他方、S12の判定において、線量率S3が閾値C1よりも高く且つ閾値C2以下である場合には、中間線量であると判断され、S18において指示値として重み付け加算値としての線量率S4が選択される。そしてS20において重み付け加算処理によって得られた線量率S4が表示される。S22においては以上の処理を繰り返すか否かが判断され、繰り返す場合にはS10以降の各工程が繰り返し実行される。
図11には、第2実施形態に係る放射線測定器の構成がブロック図として示されている。なお、図5に示した構成と同様の構成には同一符号を付しその説明を省略する。
図11に示す第2実施形態においては、アンプ52から出力される検出パルスが第1ウインドウ処理回路110及び第2ウインドウ処理回路112に対して並列的に送られている。第1ウインドウ処理回路110は第1ウインドウ内に波高値が属する検出パルスを抽出する回路であり、より詳しくは間接検出パルスを抽出する回路である。第2ウインドウ処理回路112は第2ウインドウ内に波高値が属する検出パルスを抽出する回路であり、より詳しくは直接検出パルスを抽出する回路である。このように、スペクトルに対して設定された2つのウインドウによって個別的に検出パルスが取り出され、それぞれについて第1計数回路60及び第2計数回路62においてカウントが実施される。ウインドウ設定器114は第1ウインドウ及び第2ウインドウを設定するものである。以下に、各ウインドウの具体例について説明する。
図12には図6に示したスペクトル76,78が示されている。符号116は第1ウインドウを示しており、第1ウインドウ116の下限が符号120で示され、その上限が符号122で示されている。第1ウインドウ116はスペクトル76における上側のピークを含むように設定されている。第2ウインドウ118はスペクトル78に対して設定されるものであり、その下限が符号124で示されており、その上限が符号126で示されている。第2ウインドウ118はスペクトル76が実質的に含まれないような高線量区間内に設定されており、第1ウインドウ116よりも高いレベルに設定されている。
このように2つのウインドウ116,118を設定すれば、第1ウインドウ116内に波高値が属するパルスは間接検出パルスであるとみなすことができ、また第2ウインドウ118内に波高値が属するパルスは直接検出パルスであるとみなすことができる。よって、第1実施形態よりもより高精度に各検出パルスの抽出を行えるという利点が得られる。
図13には第3実施形態に係る放射線検出器の構成がブロック図として示されている。図5に示した構成と同様の構成には同一符号を付しその説明を省略する。
アンプ52から出力された検出パルスが第1周波数フィルタ回路128及び第2周波数フィルタ回路130に並列的に送られている。第1周波数フィルタ回路128は、間接検出パルスが有する周波数特性に合致したフィルタ特性を有する回路であり、すなわち間接検出パルスを抽出する周波数フィルタである。第2周波数フィルタ回路130は直接検出パルスが有する周波数特性に合致したフィルタ特性を有する回路であり、この第2周波数フィルタ回路130によって直接検出パルスを抽出することが可能である。第1計数回路60は図5に示した第1実施形態と同様に間接検出パルスの計数を行うものであり、第2計数回路62は直接検出パルスの計数を行うものである。特性設定器132は第1周波数フィルタ回路128及び第2周波数フィルタ回路130の周波数特性を設定するものである。各フィルタ回路128,130としてバンドパスフィルタ、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ等の各種のフィルタを用いることが可能である。
図14には間接検出パルスの波形134と直接検出パルスの波形136とが示されている。横軸は時間軸であり、縦軸は波高値を示している。図示されるように、間接検出パルス134はなだらかな立ち上がりを有し、時間軸方向に広がっている。これに対し、直接検出パルス136は急峻な立ち上がりを有し、そのパルス幅は非常に狭くなっている。ちなみに図14において各波形のレベルは規格化されている。このように2つの検出パルスの周波数特性の違いを利用して2つの検出パルスの弁別を行うのが上述した第3実施形態である。周波数弁別と波高値弁別の両者を組み合わせて利用するようにしてもよい。
図15には複合検出部の第2構成例が斜視図として示されている。基板28上には2つの半導体センサ138,140が左右方向(y方向)に並んで配置されている。それらの半導体センサ138,140の上側に単一のシンチレータブロック32が配置される。符号142,144は光通過領域すなわちセンサ接合領域を示している。符号44は主方向からの放射線の飛来を概念的に示している。
図15に示された複合検出部16Aを用いて2つの検出パルスの抽出を行う場合には例えば図16に示すような回路構成を採用することが可能である。図16において、複合検出部16Aは2つの半導体センサ138,140と単一のシンチレータ部材32とで構成され、符号150,152はそれぞれの半導体センサ138,140に直接的に入射されたγ線を示している。符号146はシンチレータ部材32に対して直接的に入射されたγ線を示している。これにより光148が生じ、それが2つの半導体センサ138,140において検出される。アンプ154を通過して出力された検出信号は同時計数回路158及び加算回路160に並列的に入力されている。同様に、アンプ156を通過して出力された検出パルスも同時計数回路158及び加算回路160に入力されている。同時計数回路158は入力される2つの検出信号間において同時計数処理を実行し、すなわち2つの検出パルスが同時に得られた場合にのみ検出パルスを出力する処理を実行する。これによってシンチレータ部材32においてγ線146が入射した場合における検出パルスすなわち間接検出パルスを取り出すことが可能である。同時計数回路158の後段に更に第1弁別回路162を設け、例えばカットエネルギー以上の検出パルスを取り出すようにしてもよい。
また加算回路160は入力される2つの検出パルスを時間軸上において加算する処理を実行しており、そこから検出された検出パルスが第2弁別回路164に入力されている。第2弁別回路164は直接検出パルスを検出する回路として構成されている。その場合においては波高弁別方式又は周波数弁別方式を採用することが可能である。図16に示した構成によればそれぞれの検出パルスの検出精度あるいは検出感度を高めることが可能である。
図17には複合検出部の第3構成例が示されている。複合検出部16Bは、基板28上に配置された半導体センサ30、その上側に配置されるシンチレータ部材32、及び、その上側に配置される2つ目の半導体センサ166を有している。すなわち複合検出部16Bは、シンチレータ部材32の下側のみならず上側にも半導体センサを設けたものであり、それらの半導体センサ30,166は主方向に直交する方向に並んで配置されている。このような構成によれば直接検出方式において上方の検出感度を高めることが可能である。
図18には複合検出部の第4構成例が示されている。複合検出部16Cは、ブロック状のシンチレータ部材168を有している。なお符号178は先端部分のケーシングを示している。シンチレータ部材168の下面側には半導体センサ170が設けられ、その上面側には半導体センサ172が設けられている。更にシンチレータ部材168の右側面には半導体センサ174が設けられ、左側面には半導体センサ176が設けられている。すなわち主方向に直交する方向に向いた4つの側面にそれぞれ半導体センサ170,172,174,176が設けられている。このような構成によれば特に直接検出方式において周囲全方向にわたって検出感度を高められるという利点が得られる。複数の半導体センサが設けられる場合、上述したように必要に応じて同時計数方式を適用してもよく、また加算方式を適用してもよい。
以上説明した放射線測定器によれば、間接検出方式及び直接検出方式を上手く利用してワイドレンジ測定を実現することが可能である。特に半導体センサが光検出及び放射線検出の2つの機能を有しているため、それらの機能を別々の検出器で構成する場合に比べてコストを低減でき、また小型化を図ることが可能である。本実施形態においては、シンチレータ部材の少なくとも下側に半導体センサが設けられており、屈曲した先端部を対象物に向けた場合において半導体センサがシンチレータ部材の影になってしまう可能性を低減できるから、直接検出方式を高感度で実現できるという利点が得られる。上記実施形態においては、先端部が平べったい形態を有しており、それに合わせてシンチレータ部材が平べったい形態を有しているから、先端部内のスペース効率を高めることができ、また間接検出方式における検出感度を高められる。