JP5603356B2 - ラテックス組成物、該組成物の製造方法及び水系接着剤組成物 - Google Patents
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Description
本発明に係るラテックス組成物は、クロロプレン単量体単独、又は、クロロプレン単量体と他の単量体とをロジン酸金属塩を含む乳化剤の存在下で乳化重合させて得られるクロロプレン系重合体ラテックスAを含有することにより耐水接着強度を向上させることができる。
また、本発明に係るラテックス組成物は、クロロプレン単量体とエチレン性不飽和カルボン酸を非イオン系界面活性剤の存在下に乳化重合して得られるカルボキシ変性クロロプレン系重合体ラテックスBを含有することにより耐熱接着強度を向上させることができる。
そして、混合時の相性が悪く、ブレンドする際やブレンドした後に保管する際等に、凝固物が発生しやすい異種ラテックスのクロロプレン系重合体ラテックスAとカルボキシ変性クロロプレン系重合体ラテックスBとに、特定の界面活性剤Cを加えることで、前記異種ラテックスを凝固させること無く貯蔵安定性に優れたラテックス組成物を得ることができる。
本発明に係るラテックス組成物では、前記クロロプレン系重合体ラテックスAが、前記クロロプレン単量体単独、又は、クロロプレン単量体と他の単量体:100質量部に対し、前記ロジン酸金属塩を0.5〜8質量部配合して重合したものであってもよい。
また、本発明に係るラテックス組成物では、前記カルボキシ変性クロロプレン系重合体ラテックスBは、前記クロロプレン単量体:100質量部に対し、前記エチレン性不飽和カルボン酸を0.5〜10質量部配合して重合したものであってもよい。
前記エチレン性不飽和カルボン酸については、メタクリル酸及び/又はアクリル酸とすることができる。
また、前記カルボキシ変性クロロプレン系重合体ラテックスBを得る際に添加される前記非イオン系界面活性剤については、ポリビニルアルコールとする。
前記クロロプレン系重合体ラテックスAが固形分換算で20〜80質量%であり、前記カルボキシ変性クロロプレン系重合体ラテックスBが固形分換算で80〜20質量%であってよい。
前記水系接着剤組成物では、ラテックス組成物を固形分換算で100質量部含み、粘着付与樹脂を固形分換算で10〜80質量部含んでもよい。
当該水系接着剤組成物は、木工、家具、建築材料、車両、靴、鞄、ベルト、各種ラミネーションを接着するための接着剤等に使用することが出来る。
本発明の第1実施形態に係るラテックス組成物は、クロロプレン単量体単独、又は、クロロプレン単量体と他の単量体を、ロジン酸金属塩の存在下で乳化重合させて得られるクロロプレン系重合体ラテックスAと、クロロプレン単量体とエチレン性不飽和カルボン酸とを非イオン系界面活性剤の存在下で乳化重合して得られるカルボキシ変性クロロプレン系重合体ラテックスBと、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリエチレングリコールモノラウレート、及びラウリルベタインの中から選ばれる1種類以上の界面活性剤Cと、を含有するものである。
「クロロプレン系重合体」とは、重合に用いる2−クロロ−1,3−ブタジエン(以下、「クロロプレン」という。)の単独重合体、又はクロロプレンと該クロロプレンと共重合可能な他の単量体からなり、ロジン酸金属塩の存在下で乳化重合させて得られる共重合体をいう。この前記共重合体には、2種類以上の単量体からなるものも含まれる。ラテックス組成物がこのクロロプレン系重合体ラテックスAを含有することにより、耐水接着強度が向上する。
クロロプレン単量体と共重合可能な単量体の中では、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンが特に好適である。
クロロプレン系重合体ラテックスAは、乳化剤としてロジン酸金属塩を用いる。「ロジン酸」とは、モノカルボン酸系のジテルペン酸であり、分子式C20H30O2で一般的に示される物質である。
カルボキシ変性クロロプレン系重合体ラテックスBは、クロロプレン系単量体とエチレン性不飽和カルボン酸とを非イオン系界面活性剤の存在下で乳化重合して得られる共重合体ラテックスである。ラテックス組成物がこのカルボキシ変性クロロプレン系重合体ラテックスBを含有することにより、耐熱接着強度が向上する。
カルボキシ変性クロロプレン系重合体ラテックスBを構成する非イオン系界面活性剤は、特に限定されるものでは無く、公知のものを使用することが出来る。例えば、ポリビニルアルコール(以後PVAとも記す)、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリルエーテル等のポリオキシアルキレン誘導体類、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウリレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、グリセロールモノステアレート等のグリセロールの脂肪酸エステル類、脂肪族アルカノールアミン類等を挙げることができる。
本実施形態のラテックス組成物は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリエチレングリコールモノラウレート、及びラウリルベタインの中から選ばれる1種類以上の界面活性剤Cを含有することにより、上述したクロロプレン系重合体ラテックスAとカルボキシ変性クロロプレン系重合体ラテックスBとを、凝固させること無く混合させ安定性に優れたラテックス組成物を得ることができる。
(クロロプレン系重合体ラテックスA及びカルボキシ変性クロロプレン系重合体ラテックスBの重合条件)
クロロプレン系重合体ラテックスA及びカルボキシ変性クロロプレン系重合体ラテックスBの混合は、特に限定されるもので無く公知の技術を使用できるが、混合の順序としては、クロロプレン系重合体ラテックスAに界面活性剤Cを添加した後にカルボキシ変性クロロプレン系重合体ラテックスBを混合することが、安定な製造をする上で好ましい。
本発明の第2実施形態に係る水系接着剤組成物は、上述した本発明の第1実施形態に係るラテックス組成物と、粘着付与樹脂とを含むものである。
ラテックス組成物に粘着付与樹脂を加えることで水系接着剤組成物を得ることが出来る。粘着付与樹脂としては、例えば、フェノール系樹脂や、ロジン樹脂や、クマロン樹脂や、石油樹脂等を用いることができる。粘着付与樹脂の形態としては、界面活性剤等を用いて水分散化されたものが好適に使用される。
本実施形態の水系接着剤組成物には、所望の物性に応じて、金属酸化物や充填剤等を添加できる。金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化マグネシウム等を用いることができる。充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、クレー、スメクタイト、シリカ、ハイドロタルサイトやマイカ等を用いることができる。
本実施形態の水系接着剤組成物は、紙、木材、布、皮革、ジャージ、レザー、ゴム、プラスチック、フォーム、陶器、ガラス、モルタル、セメント系材料、セラミック、金属等の同種、あるいは異種の接合・接着用に好適に用いることができる。
[クロロプレン系重合体ラテックスAの製造]
純水120部、ロジン酸のナトリウム塩(商品名「ロンヂス(登録商標)」、荒川化学工業株式会社製)4.0部、水酸化カリウム0.5部の乳化剤水溶液に亜硫酸水素ナトリウム0.5部を添加した。その他の添加剤として、β−ナフタレンスルフォン酸ナトリウム塩(商品名「デモールNL(登録商標)」、花王株式会社製)0.5質量部を仕込んで溶解させた。この溶液を内容積5リットルの反応器を用いて、撹拌しながらクロロプレン単量体85質量部、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン15質量部とn−ドデシルメルカプタン0.1質量部を加えた。更に、過硫酸カリウム0.1質量部を触媒として用いて、窒素ガス雰囲気下40℃で重合させ、最終重合率が85%に達したところでフェノチアジンの乳濁液を加えて重合を停止させた。そして、減圧下で反応溶液中の未反応単量体を除去することによりクロロプレン系重合体ラテックスAを得た。
純水100部、ポリビニルアルコール(商品名「UHR−20H」、けん化度79mol%、重合度380、ユニチカ株式会社製)4.0部の乳化剤水溶液にクロロプレン系単量体98質量部、メタクリル酸2質量部及びオクチルメルカプタン0.3質量部を添加した。これを45℃に保持しながら、加硫酸カリウムと亜硫酸ナトリウムを開始剤として用い重合しカルボキシ変性クロロプレン系重合体ラテックスBを得た。最終重合率は99.5%であった。
クロロプレン重合体ラテックスA80質量部と界面活性剤Cとしてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム1質量部(商品名「ハイテノールNF−13、第一工業製薬株式会社製」)の混合物を、カルボキシ変性クロロプレン重合体ラテックスB20質量部に攪拌しながら加えた。初期の粘度を測定後、40℃で4週間保管した後の粘度を測定した。粘度は、ブルックスフィールド粘度計で、温度20℃、30rpmの条件で測定した。
クロロプレン重合体ラテックスA80質量部、界面活性剤Cとしてポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム1質量部、及び粘着付与樹脂としてテルペンフェノール樹脂エマルジョン(タマノルE−100、第一工業製薬株式会社製)30質量部の混合物をカルボキシ変性クロロプレン重合体ラテックスB20質量部に攪拌しながら加え、水系接着剤組成物を製造した。このようにして得られた、水系接着剤の常態接着剥離強度、耐熱接着剥離強度及び耐水接着剥離強度についてそれぞれ評価を行なった。
帆布(25mm×150mm)2枚それぞれに接着剤組成物を300(固形分換算)g/m2塗布した。そして、80℃で9分間乾燥し、ハンドローラーで5往復させ圧着した。セットタイム7日後の常態強度を200mm/minの引張強度で測定した。
セットタイム7日後の被着体である帆布(キャンバス)を80℃の恒温槽付きの引張試験機で200mm/minの条件で剥離強度を測定した。
セットタイム7日後の被着体を、水中に2日間浸漬し、引張試験機で200mm/minの条件で剥離強度を測定した。
クロロプレン重合体ラテックスAを70質量部に、カルボキシ変性クロロプレン重合体ラテックスBを30質量部に変更し、実施例1同様に評価を行った。
クロロプレン重合体ラテックスAを50質量部に、カルボキシ変性クロロプレン重合体ラテックスBを50質量部に変更し、実施例1同様に評価を行った。
クロロプレン重合体ラテックスAを80質量部に、カルボキシ変性クロロプレン重合体ラテックスBを20質量部に変更し、実施例1同様に評価を行った。
界面活性剤Cをポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム(商品名「ハイテノールNF−17、第一工業製薬株式会社製」)に変更し、実施例3同様に評価を行った。
界面活性剤Cをポリオキシエチレンインデシルエーテル硫酸アンモニウム(商品名「ハイテノールLA−12、第一工業製薬株式会社製」)に変更し、実施例3同様に評価を行った。
界面活性剤Cをポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(商品名「エマールD−4−D、花王株式会社製」)に変更し、実施例3同様に評価を行った。
界面活性剤Cをジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(商品名「ペレックスTA、花王株式会社製」)に変更し、実施例3同様に評価を行った。
界面活性剤Cのポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム6質量部に増量して、実施例3同様に評価を行った。実施例1〜8に比べ、接着剤としての耐熱接着強度及び耐水接着強度は劣るものの、クロロプレン重合体ラテックスA及びカルボキシ変性クロロプレン重合体ラテックスBの混合物は凝固せず、貯蔵安定性は優れていた。
界面活性剤Cを無添加で実施例3同様に評価を行おうとしたところ、クロロプレン重合体ラテックスA及びカルボキシ変性クロロプレン重合体ラテックスBの混合物は凝固してしまった。そのため、評価を行うことができなかった。
Claims (12)
- クロロプレン単量体単独、又は、クロロプレン単量体と他の単量体とを、ロジン酸金属塩の存在下で乳化重合させて得られるクロロプレン系重合体ラテックスAと、
クロロプレン単量体とエチレン性不飽和カルボン酸とを非イオン系界面活性剤であるポリビニルアルコールの存在下で乳化重合して得られるカルボキシ変性クロロプレン系重合体ラテックスBと、
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリエチレングリコールモノラウレート、及びラウリルベタインの中から選ばれる1種類以上の界面活性剤Cと、を含有するラテックス組成物。 - 前記クロロプレン系重合体ラテックスAは、
前記クロロプレン単量体単独、又は、クロロプレン単量体と他の単量体:100質量部に対し、
前記ロジン酸金属塩を0.5〜8質量部配合して重合したものであることを特徴とする請求項1記載のラテックス組成物。 - 前記カルボキシ変性クロロプレン系重合体ラテックスBは、
前記クロロプレン単量体:100質量部に対し、
前記エチレン性不飽和カルボン酸を0.5〜10質量部配合して重合したものであることを特徴とする請求項1又は2記載のラテックス組成物。 - 前記エチレン性不飽和カルボン酸が、メタクリル酸及び/又はアクリル酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のラテックス組成物。
- 前記クロロプレン系重合体ラテックスAが固形分換算で20〜80質量%であり、前記カルボキシ変性クロロプレン系重合体ラテックスBが固形分換算で80〜20質量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のラテックス組成物。
- 前記クロロプレン系重合体ラテックスA及び前記カルボキシ変性クロロプレン系重合体ラテックスBの固形分換算での合計100質量部に対して、前記界面活性剤Cの添加量が0.1〜5質量部であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のラテックス組成物。
- 前記界面活性剤Cが、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩又はポリエチレングリコールモノラウレートであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載のラテックス組成物。
- 前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸カリウム、又はポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウムであることを特徴とする請求項7記載のラテックス組成物。
- 前記ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩は、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸カリウム、又はポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸ナトリウムであることを特徴とする請求項7記載のラテックス組成物。
- 請求項1〜9のいずれか1項記載のラテックス組成物と、粘着付与樹脂とを含むことを特徴とする水系接着剤組成物。
- 前記ラテックス組成物を固形分換算で100質量部含み、粘着付与樹脂を固形分換算で10〜80質量部含むことを特徴とする請求項10記載の水系接着剤組成物。
- クロロプレン単量体単独、又は、クロロプレン単量体と他の単量体とを、ロジン酸金属塩の存在下で乳化重合させて得られるクロロプレン系重合体ラテックスAに、
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリエチレングリコールモノラウレート、及びラウリルベタインの中から選ばれる1種類以上の界面活性剤Cを添加し、
クロロプレン単量体とエチレン性不飽和カルボン酸とを非イオン系界面活性剤であるポリビニルアルコールの存在下で乳化重合して得られるカルボキシ変性クロロプレン系重合体ラテックスBを混合するラテックス組成物の製造方法。
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