JP5602625B2 - 結合物質のディスプレイ - Google Patents

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Description

本発明は、ターゲット及びスカフォールドリガンドと結合するモジュラー抗体ドメインのオリゴマーをディスプレイする遺伝的パッケージを製造する方法及びその方法により製造される二価の遺伝的パッケージのベクター及びライブラリーに関する。さらに本発明は、このようなオリゴマーディスプレイにおいて使用するための適したリンカー配列を選択する方法に関する。
モノクローナル抗体は、結合物質のためのスカフォールドとして広範囲に使用されている。ここで基本的な抗体構造は、例えば無傷のIgG1免疫グロブリンを用いて説明することができる。
2個の同一の重鎖(H)及び2個の同一の軽鎖(L)は、組み合わさってY字状の抗体分子を形成する。重鎖はそれぞれ4個のドメインを有している。アミノ末端可変ドメイン(VH)は、Yの先端である。これらに3個の定常ドメイン:CH1、CH2が続き、かつ、カルボキシ末端CH3はY字状軸の基部である。短い伸長のスイッチは、重鎖可変領域及び定常領域と結合する。ヒンジは、CH2及びCH3(Fcフラグメント)を、当該抗体の残りの部分(Fabフラグメント)と結合する。1個のFc及び2個の同一のFabフラグメントは、無傷の抗体分子中のヒンジのタンパク質分解によって製造することができる。軽鎖は、スイッチにより分離された2個のドメインである可変ドメイン(VL)及び定常ドメイン(CL)から構成される。
ヒンジ領域中のジスルフィド結合は、2個の重鎖を連結する。軽鎖は付加的なジスルフィド結合により重鎖と結合する。Asn−結合炭水化物部分は、免疫グロブリンのクラスに依存して、定常ドメイン中の種々の位置で結合する。IgG1に関して、ヒンジ領域中でCys235とCys238対との間での2個のジスルフィド結合は、2個の重鎖を一緒にする。軽鎖は、CH1ドメイン中のCys229sとCLドメイン中のCys214sとの間での2個の付加的なジスルフィド結合によって重鎖と結合する。炭水化物部分は、Yの軸中において顕著な隆起を生じさせる各CH2のAsn306と結合する。
これらの特徴は、顕著に機能的な結果を有することである。重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の双方の可変領域はYの「先端」に存在し、ここで、これらは抗原と反応するように配置されている。分子のこの先端は、アミノ酸配列のN末端が位置する側である。Yの軸は、エフェクター機能を効果的に媒介する方法で、例えば補体の活性化及びFcレセプターとの相互作用、又はADCC及びADCPを実施する。そのCH2及びCH3ドメインの隆起は、エフェクタータンパク質との相互作用をを容易にする。アミノ酸配列のC末端は先端の反対側に位置し、この場合、これは、Yの「底部」基部と呼称することができる。
ラムダ(λ)及びカッパ(κ)と呼称される軽鎖の2種の型が、抗体中で見出される。免疫グロブリンはκ鎖又はλ鎖の双方を有し、いずれか一方ではない。λ軽鎖又はκ軽鎖を有する抗体間において、機能的な相違は見出されない。
抗体分子中の各ドメインは、圧縮された非パラレルのβ−バレル中で、それぞれ互いに緊密にパックされた2個のβ−シートから成る類似構造を有する。この保存構造は、免疫グロブリンフォールドと呼称される。定常ドメインの免疫グロブリンフォールドは、4−ストランドのシートに対してパックされた3−ストランドのシートを含む。このフォールドは、それぞれのシートのβ−ストランド間の水素結合によって、内部における反対側のシートの残基間の疎水結合によって、及びシート間のジスルフィド結合によって安定化される。3−ストランドのシートは、ストランドC、F及びGを含有し、かつ4−ストランドのシートはストランドA、B、E及びDを含有する。英字A〜Gは、免疫グロブリンフォールドのアミノ酸配列に沿ってのβ−ストランドの配列位置を示す。
可変ドメインのフォールドは、4及び5個のストランドの2個のシート中に配置された9個のβ−ストランドを有する。5−ストランドのシートは、定常ドメインの3−ストランドのシートと構造的に相同であるが、しかしながら特別なストランドC’及びC"を含有する。残りのストランド(A、B、C、D、E、F、G)は、定常ドメイン免疫グロブリンフォールド中のその対となる部分と同じトポロジー及び類似構造を有する。ジスルフィド結合は、ストランドB及びFを、定常ドメイン中とは反対側のシートで結合する。
軽及び重免疫グロブリン鎖の双方の可変領域は、3個の超可変ループ又は相補性決定領域(CDRs)を含有する。Vドメイン(CDR1、CDR2、CDR3)の3個のCDRsは、β−バレルの一方の末端において群になる。CDRsは、免疫グロブリンのβ−ストランドB−C、C−C’’及びF−Gと結合するループである。CDRs中の残基は、隣の免疫グロブリンのものとは異なっており、互いの抗体に対して特異的な抗原を与える。
抗体分子の先端におけるVL及びVHドメインは、6個のCDRs(それぞれのドメイン上で3個)が、抗原特異的結合のための表面(又はキャビティー)の構造において協力する程度に緊密にパックされる。したがって、抗体の天然の抗原結合部位は、軽鎖可変ドメインのストランドB−C、C’−C"及びF−G及び重鎖可変領域のストランドB−C、C’−C"及びF−Gと結合するループから成る。
そのままの免疫グロブリン中でCDR−ループではないループ、あるいは、CDRループにより定められる抗原結合ポケットの一部ではないループ及び場合によりCDRループ領域の範囲内において隣接するループは、特には抗原結合又はエピトープ結合を有しないが、しかしながら、完全な免疫グロブリン分子及び/又はそのエフェクター又は他の機能の正確なフォールディングに寄与し、したがって、本発明の目的のための構造的ループと呼称される。
従来技術文献は、免疫グロブリン様のスカフォールドが、存在する抗原結合部位の処理目的の限りにおいて使用され、これにより新規結合特性が導入されることを示す。多くの場合において、CDR領域は抗原結合のために設計され、いいかえれば、免疫グロブリンフォールドの場合には、天然の抗原結合部位のみがその結合アフィニティー又は特異性を変更させる目的で改質化されている。文献の多くは、このようにして操作された免疫グロブチンの異なるフォーマットを記載し、しばしば、単鎖Fvフラグメント(scFv)又はFabフラグメント中で表され、この場合、これらは、ファージ粒子の表面上にディスプレイされるか、あるいは、種々の原核又は真核発現系中で可溶的に発現する。
WO06072620A1には、新規抗原結合部位を得るための構造的ループ領域中での改質化を含む免疫グロブリンの設計方法を記載している。この方法は、免疫グロブリンに対して広範囲に適用可能であり、かつ種々の抗原を標的とする一連の免疫グロブリンを製造するために使用することができる。CH3ライブラリは、抗原に対する特異的な結合物質を選択するために有用であることが示された。
遺伝子パッケージ上のタンパク質の多価のディスプレイが記載されているけれども(例えば、直接的なファージクローニング及びディスプレイ、細菌ディスプレイ、酵母ディスプレイ)、従来技術は、一般に、結合ドメインのモノマーの一価のディスプレイに関する。WO9209690は、粒子表面上の融合タンパク質のシングルコピーをディスプレイするファージミド粒子を記載する。ここでは、ファージミド粒子、バクテリオファージとも呼称されるもののライブラリから高いアフィニティーの結合物質を得ることが記載されている。結合ポリペプチド及びファージ被覆タンパク質をコードする遺伝子を含む複製可能な発現ベクターは、融合タンパク質をコードする遺伝子融合を形成するように提供され、この場合、この融合タンパク質は、ファージミド粒子のキメラタンパク質、ファージコートタンパク質及び結合ポリペプチドである。
US5223409は、一般に、線維状ファージM13の遺伝子IIIコートタンパク質のN−末端ドメインに対して、重要なタンパク質をコードする遺伝子を融合する方法を記載している。この遺伝子融合は突然変異して、ファージミド粒子の表面上で少ない量で発現する、構造的に関連する融合タンパク質のライブラリを形成する。生物学的選択及びスクリーニングは、薬剤候補として有用な新規リガンドを同定するために使用される。
しかしながら、このような「融合ファージ」又は一価のファージディスプレイ及び各単一融合タンパク質の使用に関しては、いくつかの制限が存在する。多くの生物学的物質は、天然にはオリゴマーの形で生じる。本発明の目的のために、オリゴマーは、二量体、三量体又はそれ以上、24モノマーまでのポリマーの形を意味する。
従来技術による融合タンパク質は、モノマー融合タンパク質のディスプレイについて記載するが、それというのも、主として、最も高いアフィニティーの結合物質は、単一融合タンパク質がファージミド粒子によってディスプレイされる場合に、専らライブラリから選択されると信じされていたためである。しかしながら天然のタンパク質はしばしば二量体として又はさらにオリゴマー化のより高いレベルでアセンブリされる。単一の融合タンパク質を有する二量体ディスプレイを得るために、コートタンパク質と結合ポリペプチドとの間に位置する制御終止コドンを含むいくつかの技術が開発された(Dall'Acqua et al The Journal of Immunology, 2002, 169:5171-5180)。ここでは、ポリペプチドの可溶性モノマーが、ファージと融合されたものに加えて発現され、したがって二量体の形成を可能にする。しかしながら、このような終止コドンは、アミノ酸中の終止コドンを翻訳することができる特異的な抑制ホスト細胞中での伸長を必要とし、可溶性結合ポリペプチドに加えて適切な量の融合タンパク質を提供する。WO 03/029456は、酵母細胞の表面上での免疫グロブリンFabフラグメントの選択のための、多重鎖真核ディスプレイ細胞の使用を記載している。
従来技術の融合タンパク質は、いくつかの場合において、より大きい結合ポリペプチドをディスプレイするリンカー配列を含む。24個までのアミノ酸のリンカー配列は、通常、抗体の可変ドメインをディスプレイする標準的な目的のために使用される。例えば、ディスプレイベクターpCOMB3x(Hybrid. Hybridomics. 2003 Apr; 22 (2 ): 97-108. Development of functional human monoclonal single-chain variable fragment antibody against HIV-I from human cervical B cells. Berry JD, Rutherford J, Silverman GJ, Kaul R, Elia M, Gobuty S, Fuller R, Plummer FA, Barbas CF.)参照。
本発明の課題は、モジュラー抗体ドメインのオリゴマーを製造するための効率的な方法を提供し、かつ、複製可能な遺伝子パッケージ表面上にディスプレイされたこのようなオリゴマーを製造することである。
発明の簡単な説明
本発明の課題は、本発明の対象により解決される。
本発明によれば、
−遺伝子パッケージを提供し、かつ、
−少なくとも2個の抗体モジュラードメインを前記パッケージの外表面に融合によりディスプレイすることを含む、標的及びスカフォールドリガンドと結合するモジュラー抗体ドメインのオリゴマーをディスプレイする遺伝子パッケージを製造する方法を対象に含む。
この遺伝子パッケージは、可動系または細胞系中でディスプレイすることができ、その際、本発明によれば、可動系は、ウイルス、ファージ、ファージミド、インヴィトロ(in-vitro)ディスプレイ系、mRNA系及びリボソームディスプレイ系から選択することができる。二者択一的に、細胞系は、酵母、哺乳類細胞、細菌細胞、細菌胞子又は昆虫細胞を用いて選択することができる。
オリゴマーは、前記物質に付随するモチーフ、例えばロイシンジッパー、ジスルフィド結合、静電又は疎水性モチーフのオリゴマー化によって形成することが考えられる。
本発明の一つの実施態様によれば、オリゴマーは二量体、三量体又は四量体であってもよく、この場合、これは同じ型のモノマー(ホモマー)又は異なる型のモノマー(ヘテロマー)を含む。本発明による好ましい方法は、遺伝子パッケージ、例えばファージミド粒子又はファージ又は酵母上にホモマー、特にオリゴヌクレオチドのホモダイマーを提供するのに特に有用である。
本発明による方法は、オリゴマーに対して適用することができ、この場合、このオリゴマーは、遺伝子パッケージの表面に向けられ、かつ前記表面に近い標的結合部位を含むポリペプチドであり、この場合、これは生物学的物質、例えばポリペプチドである。
二者択一的に、このようなポリペプチドの適切なデザインは、遺伝子パッケージの周囲環境よりも遺伝子パッケージの表面に近い結合部位で使用される。これは、ポリペプチドのN−末端よりもC−末端に近い潜在的結合部位を有する結合ポチペプチドに関して、特に結合部位がC−末端ループ位において設計される場合において、有利であってもよい。潜在的結合部位が、遺伝子パッケージ粒子が結合される部位に隣接する位置において、例えば細胞又はウイルスの表面構造に対して工学的に作成される場合には、前記結合物質の結合対の定められたアクセシビリティーを含み、安定したコンストラクトを選択することが有利である。C−末端ループ位は、例えば、これらが線維状ファージのタンパク質3のN−末端と融合する場合には、N−末端ループ位よりも低いアクセシビリティーであり、それというのもこれらは暴露され、かつ遺伝子パッケージに立体的に近接するためである。
しかしながら、本発明の好ましい実施態様によれば、定められた構造、例えば真のオリゴマー又は二量体融合タンパク質が提供され、N−末端ループ位における潜在結合部位の効率的な設計することを可能にする。本発明の一つの実施態様は、少なくとも2個の標的結合部位を有するポリペプチド、この場合、モノマー又はオリゴマーの標的結合物質で工学的に作成されたものであることが考えられる。いくつかの場合において、モノマー構造間の相互作用は、構造の付加的な変異及びそれによる付加的な潜在結合部位を可能にする。
本発明の好ましい実施態様によれば、モジュラー抗体は、抗体、Fcフラグメント、CDR領域を有する抗体フラグメント及びその組合せ物であり、さらに構造的ループ位置での結合部位を有するフラグメントを含むことが考えられる。
これはさらにCDR領域を有する抗体フラグメント、例えばFab、dAb、scFv、diabody、unibody、SMIPs、TANDABS、Fc機能的タンパク質及びこれらの組合せ物であってもよい。
遺伝子パッケージが線維状バクテリオファージである場合には、バクテリオファージと一緒に使用される好ましい融合構造は、外表面タンパク質の少なくとも一部、例えば、p3、p6又はp8を含むが、しかしながらp9又はpl0もまた本発明の目的のために使用することができる。
遺伝子パッケージが酵母である場合には、オリゴマーは、α凝集素、a凝集素、Agalp、Aga2p又はFLOlから成る群から選択された酵母細胞表面レセプターのタンパク質の1種を含む融合タンパク質である。
適切な遺伝子パッケージは、好ましくは特別な形で提供され、かつ、前記融合タンパク質の少なくとも1種をコードするベクターを含有する。本発明によれば、これは例えば、遺伝子パッケージに対して操作的に結合した1種以上の融合タンパク質をコードする配列を含むカセットベクターを提供する。したがって、キメラ融合タンパク質の少なくとも2種は、ベクター粒子表面において結合する。ベクターは例えばファージミドであってもよい。
本発明による方法にしたがって製造された遺伝子パッケージの表面で結合するモジュラー抗体ドメインのオリゴマーを発現するための発現系もまた、本発明の対象であり、その際、オリゴマーは単一遺伝子によりコードされ、かつ融合タンパク質は、遺伝子パッケージ表面において少なくとも2個のコピーでディスプレイされる。
本発明による方法及び手段により、モジュラー抗体のオリゴマーを、オリゴマー化パートナーの1個の可溶性の形の制御された発現を必要とすることなく、ディスプレイすることが可能である。この技術は、分子、例えば抗体フラグメントに対して、この場合、これは2個以上の免疫グロブリンドメイン、例えば少なくとも4個の免疫グロブリンドメインを含有するものであっても使用することができる。これにより終止コドン、例えばアンバー終止コドンを含有する種々のコンストラクトを回避することができる。これは、二量体ディスプレイのために融合タンパク質と可溶性モノマーとの混合物を得るためには必要でなくともよい。したがって、多様な結合物質の混合物を管理する好ましい技術は、モノマーの不十分な適合のリスクを減少させると同時に容易に使用することができる。さらに、ホスト細胞として抑制菌株を回避することも可能である。非抑制機能を有する通常のホスト細胞は、標準的な方法で、オリゴマー融合タンパク質を成長させるための役立つものであってもよい。
本発明による他の実施態様において、結合対と遺伝子パッケージの表面タンパク質との間の融合は、その間に条件付き(conditional)終止コドン(すなわちアンバー、オーカー、オパール又は他の類似する条件付き終止コドン)がその間に存在しないようにする。このような状況において、ヘルパーファージでの感染時に、結合対は融合タンパク質としてのみ存在し、かつ可溶な形では存在しない。二量体(三量体又はそれ以上)を、遺伝子パッケージ表面上に形成するために、遺伝子パッケージに対して結合パートナーを接続するリンカーは、その十分な長さ及び十分なフレキシビリティーを必要とする。この要求を充たすリンカーは、前記方法を用いて選択することができる。
本発明による他の実施態様において、ヘルパーファージは、遺伝子パッケージ表面上の融合タンパク質の1個以上のコピーのディスプレイに有利な特異的性質を有するものを使用することができる。このようなヘルパーファージに関する例は、いわゆるハイパーファージ(Rondot S, Koch J, Breitling F, Dubel S. A helper phage to improve single-chain antibody presentation in phage displayNat Biotechnol 2001 Jan; 19 ( 1)75-78 )であり、この場合、それ自体はp3を欠き、したがって感染可能にするためには、ファージミドにより提供されたp3融合タンパク質に完全に依存する。このようなヘルパーファージを使用して、好ましくは、その表面上の融合タンパク質の1個以上のコピーを有するファージ粒子を導き、したがって、遺伝子パッケージ表面上に結合タンパク質の二量体を形成することが有利である。
本発明の好ましい実施態様によれば、各融合タンパク質モノマーは、オリゴマーに関連して製造され、その結果、可溶性の結合物質の割合は20%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは1%未満である。
本発明による方法によれば、遺伝子パッケージは好ましくは、少なくとも2個の融合タンパク質をディスプレイするように製造することができる。特別な実施態様において、本発明によるオリゴマーの各モノマーは、遺伝子パッケージの外表面と結合する。さらに本発明は、オリゴマーからの2個の融合タンパク質をディスプレイする二価のファージを提供し、この場合、これはそれぞれ発現時に二量化するオリゴマーを含有するものである。
遺伝子パッケージのライブラリはさらに、少なくとも10個の変異遺伝子パッケージを例示的に含有していてもよいものを請求し、その際、前記変異遺伝子パッケージは、モジュラー抗体ドメインのヘテロマーを示すことができる。ヘテロマーは、標的結合部位を含有するスカフォールドをベースとするものであってもよい。本発明の特別な実施態様によれば、標的結合部位及びスカフォールド結合部位は類似かまたは同一であってもよい。本発明によるスカフォールドリガンドは、さらにCDR標的であってもよい。例えば、スカフォールドは、親Fabであってもよく、かつ少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%の親Fab変異体が、前記親FabのCDR標的と結合している。
さらに本発明によるライブラリは、アミノ酸配列において異なる本発明により製造されたオリゴマーの変異体を含有していてもよい。これは、少なくとも1種の外来アミノ酸を導入するための少なくとも1個の挿入又は置換、並びに欠失によって該アミノ酸配列を改質化することにより提供することができる。外来アミノ酸は、ランダム化技術によって導入することができる。さらに外来アミノ酸は、ランダムな位置で特定のアミノ酸に富むライブラリを得るために、アミノ酸の特別な群から選択することができる。外来アミノ酸をアミノ酸の特別な群、例えば特異的な極性、疎水性を有するアミノ酸の特別な群から選択する場合には、ランダムな位置でアミノ酸の特別な群に富むライブラリを、本発明によって得ることができる。このようなライブラリはさらに「フォーカスト(focused)」ライブラリと呼称される。
さらに本発明によれば、ポリペプチドを、遺伝子パッケージの外表面に結合するためのリンカーを選択する方法を提供し、この場合、この方法は、
a.第1ポリペプチドと遺伝子パッケージとを結合する種々のリンカーを含む遺伝子パッケージのライブラリを提供し、
b.前記第1ポリペプチドの機能との顕著に相互作用しないリンカーを含むライブラリの要素を決定し、
c.第2ポリペプチドと前記遺伝子パッケージとを結合するために前記リンカーを選択することを含む。
これにより、同型の融合タンパク質に使用すべき適したリンカーを得ることができる。これらの融合タンパク質の同型とは、遺伝子パッケージ及び結合物質の同構成を互いに結合することを意味する。
本発明によるこのような方法はさらに、少なくとも1個の選択基準、例えばフレキシビリティー及び結合対に対する結合部位の立体的アクセシビリティーを充足するリンカー変異体の予め選択された群を含む濃縮ライブラリを製造するために使用することができる。これは、種々のリンカー配列の存在下で、公知結合物質の結合特性を測定することにより決定することができる。このようにして濃縮ライブラリは、さらに他の基準、例えば細菌性プロテアーゼを含有する培地中での安定性に重要なプロテアーゼ耐性等に関して選択することができる。
その後に選択された特異的リンカー配列は、同構成の融合タンパク質のライブラリを製造するために使用することができるが、しかしながらこのようにして、結合物質の変異体を用いて、予定された試験系において最良の結合特性を有するこれら結合物質の同定、選択及び製造が可能である。
本発明による好ましい実施態様によれば、このようなリンカーは、少なくとも20個のアミノ酸残基、好ましくは少なくとも25個のアミノ酸残基、より好ましくは少なくとも30個のアミノ酸残基、50個までのアミノ酸残基までの長さである。特に、アミノ酸、例えばリンカーのフレキシビリティーに関して重要なGly、Ser又はAlaを含む場合には、このようなリンカーは有利には、潜在的結合部位のディスプレイのために使用され、この場合、これは遺伝子パッケージ表面と近接しており、かつ潜在的結合部位は、立体的理由のためその対と結合することができないものであってもよい。
ディスプレイされるべきタンパク質と遺伝子パッケージのアンカータンパク質との間のリンカー(線維状ファージの場合には、例えばp3、p8、pX、pIX、pVII)は、ディスプレイされた分子の潜在的結合部位が、ファージ粒子の空間的近位である場合には特に重要である。可変ドメイン及びCDR−ループにより形成される抗原結合部位を使用する抗体ライブラリ及びp3に対するアミノ末端融合としてのライブラリ要素のディスプレイにおいて、潜在的結合部位はファージ粒子とは別に向けられている。したがって、ライブラリ要素とファージコートタンパク質との間のリンカー構造は、重要ではない。しかしながら、免疫グロブリンドメインの底部ループの工学的作成及びファージディスプレイの実施は、不十分な方法であり、かつ、抗原結合クローンの収量は減少するか、或いはそれどころか生じない。ライブラリ要素のタンパク質と表面上のその融合対との間のリンカーの変更は、この問題を解決するか、あるいは、少なくとも減少させることができる。
最適なリンカー配列を選択するために(長さ及びフレキシビリティー並びに安定性の点において)、リンカーのライブラリは、遺伝的に複製可能なパッケージの表面でアンカータンパク質を、立体的理由から選択することが困難であると知られている公知の結合タンパク質と融合させることにより、製造することができる。
この配列のライブラリは、長さ及びアミノ酸含量において多様であってもよい。
最適なリンカーのためのリンカーライブラリの選択方法は適用に依存するが、しかしながら原則的には、一定の方法論において有することが望ましいすべての性質を選択すべきである。選択が困難な抗体に対する濃縮は、ライブラリ要素の抗原に対する良好なアクセスを可能にするリンカー配列を得ることができる。プロテアーゼ溶液中であるか、あるいは、他の苛酷な条件下又はタンパク質溶解条件によるホスト細胞の頻繁な導通下での恒温保持(例えば古い微生物培養法)は、安定したディスプレイリンカーのための適切な選択であってもよい。
リンカーのライブラリは、任意の公知ライブラリ技術によって製造することができる。合成リンカー配列の長さは、10〜500アミノ酸の間で可変であってもよい。二者択一的に、リンカーは、フレキシブルな性質であることが知られた完全なタンパク質であってもよい。
さらに本発明は、標的に対して結合するモジュラー抗体ドメインのオリゴマーを製造するための方法を提供し、この場合、この方法は、以下の工程を含む:
−前記のようにして本発明による方法によって製造されたモジュラー抗体ドメインのオリゴマーのライブラリを提供し、
−前記ライブラリを前記標的と、スカフォールドリガンドの存在下に接触させ、
−スカフォールドリガンドの存在下に、前記標的に対して結合するライブラリ要素を選択し、かつ、
−機能性オリゴマーを製造する。
スカフォールドリガンドは、エフェクター分子、FcRn、血清アルブミン、プロテインA、プロテインG、プロテインL又はCDR標的からなる群から選択することができる。例えば、エフェクター分子は、CD64、CD16、CD32、Fcレセプターから成る群から選択することができる。
オリゴマーは、VH/VL、CH1/CL、CH2/CH2、CH3/CH3C、Fc及びFab、又はこれらの単鎖から成る群から選択された二量体であってもよい。
本発明による方法は、モジュラー抗体ドメイン又はこれらの変異体の機能的オリゴマーを発現する少なくとも10個の独立したクローンを含有するライブラリを提供することができる。その後に、ライブラリ要素は、要求された結合アフィニティーにより選択することができ、この場合、これは好ましくはKd<10−8Mの標的結合アフィニティーを有する。本発明によれば、さらに予め選択した独立クローンのプールを提供し、これは、例えばアフィニティー変異され、このプールは好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも100個、より好ましくは少なくとも1000個、さらに好ましくは少なくとも10000個、さらに好ましくは100000個以上の独立クローンを含有する。予め選択されたプールを含有するこれらのライブラリは、本発明による高いアフィニティーのモジュラー抗体を選択するための好ましい源である。
好ましくは、ライブラリは酵母ライブラリであり、かつ酵母ホスト細胞は、細胞表面上で生物学的活性を有するオリゴマーを表す。酵母ホスト細胞は、好ましくはSaccharomyces属、Pichia属、Hansenula属、Schizisaccharomyces属、Kluyveromyces属、Yarrowia属及びCandida属から選択される。最も好ましくは、ホスト細胞はSaccharomyces cerevisiaeである。
本発明の特別な実施態様によれば、標的はerbBクラスのレセプターである。この場合において、本発明の方法を用いてerbBクラスのレセプターと結合する免疫グロブリンを得ることができる。
さらに本発明は、モジュラー抗体ドメイン又はその変異体の機能的二量体の少なくとも10個の独立クローンを含有するか、あるいは、最適化または予め選択されたクローンのプール、例えばアフィニティー変異クローンを含有し、この場合、このプールは、標的及びスカフォールドリガンドに対して結合する少なくとも10個の独立クローンを含有する。標的は、アミノ酸変異させた親分子に対して結合するリガンドであってもよい。親分子は、機能性Fc又は機能性Fab、あるいはこれらの一部分であってもよい。
本発明の特別な実施態様によれば、親分子は、ランダム突然変異又は部位特異的突然変異によって変更することができる。
ライブラリは、標的及びスカフォールドリガンドに対して結合するモジュラー抗体ドメインの機能的二量体を含有していてもよく、かつ少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%の機能的二量体が、CD64に対して結合する。これは特に好ましくは、CH2領域、例えばFcスカフォールドを含有するモジュラー抗体である。
二者択一的に、ライブラリは、標的及びスカフォールドリガンドと結合するモジュラー抗体ドメインの機能的二量体を含有していてもよく、かつ少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%の機能的二量体がプロテインAと結合している。これは特に好ましくは、CH2及びCH3ドメイン、例えばFcスカフォールドを含有するモジュラー抗体である。
二者択一的に、ライブラリは、標的及びスカフォールドリガンドに対して結合するモジュラー抗体ドメインの機能的二量体を含有していてもよく、かつ少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%の機能的二量体が、CDR標的に対して結合する。これは特に好ましくは可変領域、例えば単鎖(single)CDR標的に対して特異性を有するFabスカフォールドを含有するモジュラー抗体である。
図面
図1:
ライブラリFcab01のアセンブリ用フラグメントの製造に使用されたPCRsの模式図である。PCRプライマーは、矢印によりそのそれぞれの5’−3’方向が示され、かつ縦線は、突然変異された遺伝子のアセンブリのために使用された導入された制限部位の適切な位置を示す。制限部位は、PCRフラグメントのライゲーションのためのプライマー上に含まれる。
図2:
CH3ドメインのアミノ酸配列及び二次構造(IMGT番号付け)。ランダム化の図式は、ライブラリFcab01〜Fcab06に関して提供される。
AB及びEFループ中のランダム化位置は、サークルで示す。Xは、20個の全アミノ酸(NNBによりコードされる)を示し、zはAla、Asp、Ser、Tyrのみを示す(KMTによりコードされる;フォーカストライブラリ)。
発明の詳細な説明
本発明によるモジュラー抗体領域のオリゴマーは、独立型分子として、同様に融合タンパク質又は誘導体として使用することが可能であり、最も一般的には改質化前又は改質化後に、より大きい構造、例えば完全な抗体分子の一部分であるか、あるいは、前記のものの一部分であるように融合される。このようにして本発明により製造された免疫グロブリン又は融合タンパク質は、Fcフラグメント、Fabフラグメント、Fvフラグメント、単一ドメイン抗体、単鎖抗体、特に単鎖Fvフラグメント、二特異性又は多特性scFv、diabody、unibody、multibody、免疫グロブリン領域の多価又多量体等である。一特異性、二特異性、三特異性及びそれ以上の特異性を有していてもよい分子を製造するために工学的に作成されたタンパク質を使用することができる。本発明によれば、このような分子の計画的使用の要求にしたがって、結合価の制御及び予めの選択が同時に可能である。
本願明細書中を通して使用される特別な用語は、以下の意味を有する。
本発明によって使用される用語「免疫グロブリン」は、一特異的、二特異的又は多重特異的であるか、あるいは、一価、二価又は多価の結合特性を示し、好ましくはエピトープ、例えば抗原、エフェクター分子あるいは病原体由来又はヒト構造のタンパク質のエピトープ、たとえば細胞随伴又は血清タンパク質を含む自己抗原に対して、少なくとも2個、より好ましくは少なくとも3個の特異的結合部位を示すことができるポリペプチド又はタンパク質として定義される。さらに本発明によって使用される用語免疫グロブリンは、抗体の機能的フラグメント、例えばFc、Fab、scFv、CH1/CL領域の単鎖二量体、Fv、二量体、たとえばVH/VL、CH1/CL、CH2/CH2、CH3/CH3、又は免疫グロブリンの他の誘導体又は組合せ物、例えば免疫グロブリンドメインの対の単鎖を含む。この定義はさらに可変領域(例えばdAb, Fd, Vl, Vk, Vh, VHH)及び定常領域の重鎖及び軽鎖又は無傷の抗体の個々のドメイン1、例えばCH1、CH2、CH3、CH4、Cl及びCk並びに構造的ループにより結合された免疫グロブリンの少なくとも2個のβ−ストランドから成るミニドメインを含む。
本発明にしたがって使用された「モジュラー抗体」は、抗原結合分子として定義され、例えばヒト抗体であり、この場合、これは少なくとも1個のポリペプチドモジュール又はタンパク質ドメインから、好ましくは天然の形で構成される。用語「モジュラー抗体」は、免疫グロブリン、免疫グロブリン様タンパク質であるか、あるいは、モジュラー構成及び免疫グロブリン又は抗体と類似する抗原結合特性を示す他のタンパク質である抗原結合分子を含み、この場合、これは抗原結合スカフォールドとして、好ましくはヒトタンパク質に基づいて使用することができる。
本発明によって使用された用語「免疫グロブリン様分子」は、任意の抗原結合タンパク質、特にヒトタンパク質に関し、この場合、これは、モジュラーのようにして構築することができるドメイン構造を有する。好ましくは本発明のために使用された免疫グロブリン様分子は、T細胞レセプター(TCR)、フィブロネクチン、トランスフェリン、CTLA−4、一本鎖抗原レセプター、例えば、T細胞レセプター及び抗体に関するもの、抗体ミメティクス、アドネクチン、アンチカリン、フィロマー、反復タンパク質、例えばアンキリン反復配列、アビマー、VersabodiesTM、サソリ毒ベースの分子、及び抗原結合特性を有する他の非抗体タンパク質スカフォールドである。
アンキリン反復配列(AR)、アルマジロ反復配列(ARM)、ロイシンリッチ反復配列(LRR)及びテトラトリコペプチド反復配列(TPR)タンパク質は、反復タンパク質のタンパク質クラスの最も顕著な要素である。反復タンパク質は、伸長されたドメインを形成するために積み重ねる相同構造単位(反復単位)から構成される。結合相互作用は、通常、いくつかの隣接する反復単位により介在され、この場合、これは大きい標的相互作用表面を導く。
アビマーは、いくつかの細胞表面レセプター中の一連の多重ドメインとしてA−ドメインを含有する。このファミリーのドメインは、天然には100個を上回る異なる公知の標的と結合し、この場合、これは小さい分子、タンパク質及びウイルスを含む。トランケーション分析は、標的が一般に、多重A−ドメインにより、特有のエピトープに対して独立して結合しているそれぞれのドメインと接触することを示した。多重結合ドメインの組合せにより生じたアビジティーは、アフィニティー及び特異性を増加させるための効果の高いアプローチであり、この場合、これらのレセプターはその過程において見出された。
アンチカリンは、ヒト化抗体に典型的な特定の結合特性を有するリポカリンスカフォールド由来の工学的に作成されたヒトタンパク質である。リポカリンは160〜180アミノ酸を含有し、かつ4個のループにより包囲されたリガンド結合ポケットを有する円錐状のβ−バレルタンパク質を形成する。小さい疎水性化合物は、リポカリンの天然のリガンドであり、かつ新規化合物特異性を有する異なるリポカリン変異体(アンチカリンとも呼称される)は、この結合ポケット中で残基のランダム化後に単離することができる。
単鎖又は単一ドメイン抗体レセプターは、単一の可変領域を含み、かつラクダ科の単一ドメイン抗体よりも20%小さい。
フィロマーは、生物多様性の天然のタンパク質フラグメント由来のペプチドである。
用語「モジュラー抗体」「免疫グロブリン」「免疫グロブリン様タンパク質」には、同様に誘導体を含むものと理解される。誘導体は、本発明の1個又はそれ以上のモジュラー抗体の任意の組合せ物であるか、あるいは、融合タンパク質であり、その際、本発明のモジュラー抗体の任意のドメイン又はミニドメインが他のタンパク質の1種又はそれ以上の任意の位置で融合されていてもよい(例えば、他のモジュラー抗体、免疫グロブリン、リガンド、スカフォールドタンパク質、酵素、トキシン等)。さらに本発明のモジュラー抗体の誘導体は、他の物質に対する関連(association)又は結合によって、種々の化学技術、たとえば共有結合、静電干渉、ジスルフィド結合等によって得られてもよい。免疫グロブチンと結合する他の物質は、脂質、炭水化物、核酸、有機又は無機分子であるか、あるいは、これら任意の組合せ物であってもよい(例えばPEG、プロドラッグ又はドラッグ)。さらに誘導体は、同一のアミノ酸配列を有するが、しかしながら完全に又は部分的に非天然又は化学的に改質化されたアミノ酸から製造された抗体を含有していてもよい。
本発明による「構造的ループ」又は「非CDRループ」は、以下の方法で理解される:モジュラー抗体、免疫グロブリン又は免疫グロブリン様物質を、いわゆる免疫グロブリンフォールドを有するドメインから製造する。本質的に、逆平行β−シートのストランドを、ループにより連結し、圧縮された逆平行β−バレルを形成する。可変領域においてドメインのいくつかのループは、本質的に抗体の特異性、すなわち、抗体の天然の結合部位による抗体との結合に寄与する。これらのループがいわゆるCDRループである。CDRループは、CDRループ領域の範囲内に位置し、この場合、これはいくつかの場合において、さらに可変のフレーム領域を含み(「VFR」と呼称される)、この領域は、CDRループに隣接する。VFRsが、抗体の抗原結合ポケットに寄与してもよいことは知られており、この場合、これは一般的に、CDRループにより主に決定される。このようにして、前記VFRsは、CDRループ領域の一部分であると考えられ、かつ新規抗原結合部位を工学的に作成するために適切に使用することはできない。CDRループ領域の範囲内又はCDRループ近くに存在する前記VFRsとは対照的に、可変ドメインの他のVFRsは、本発明による使用に特に適したものであってもよい。これらは、CDRループ領域とは反対に位置するか、あるいは、可変の免疫グロブリンドメインのC−末端側に存在するVFRsの構造的ループである。
本発明によって使用された用語「抗原」又は「標的」は、特にすべての抗原及びモジュラー抗体の結合部位によって認識することが可能な標的分子を含む。本発明によるレセプター分子によって標的化される特別に好ましい抗原は、前記抗原又は分子であり、この場合、これはすでに免疫学的又は治療的関連性が証明されたかまたは可能であり、特に、これに関して臨床的効果が試験されているものである。
ここで使用された用語「標的」又は「抗原」は、アレルゲン、腫瘍随伴抗原、自己抗原、この場合、これは細胞表面レセプター、酵素、Fcレセプター、FcRn、HSA、IgG、インターロイキン又はサイトキナーゼを含み、補体系のタンパク質、運搬タンパク質、血清分子、細菌抗原、カビ抗原、原虫抗原及びウイルス抗原、さらには伝達性海綿状脳症(TSE)に関して重要な分子、たとえばプリオン、感染又は非感染の、及び炎症状態に関連するマーカー又は分子、例えば前炎症性因子、多発性硬化症又はアルツハイマー病、又は他にハプテンから成る群から選択された分子を含むものであってもよい。
用語「細胞表面抗原」とは、細胞表面上の抗体構造により認識することが可能なすべての抗原およびこのような分子のフラグメントを含む。好ましい細胞表面抗原はこれらの抗原であり、この場合、これはすでに、免疫学的または治療的に関連性が証明されているかまたは可能であり、特に前臨床的又は臨床的効果が試験されたものである。これらの細胞表面分子は、本発明の目的のために特に適切であり、この場合、これは殺細胞活性を介在する。本発明による免疫グロブリンが、好ましくは少なくとも2個のこれらの細胞表面分子と結合する際に、免疫系は、細胞溶解又は細胞死を生じさせ、このようにしてヒト細胞を攻撃するための有効な手段が提供されてもよい。
抗原は、標的分子全体又はこのような分子のフラグメント、特に標的の下部構造(substructure)、一般にはエピトープと呼称されるものと認識される。
抗原の下部構造は、一般には「エピトープ」と呼称され(例えばB−細胞エピトープ、T−細胞エピトープ)、これは免疫学的に関連する限りにおいて、すなわち、さらに天然又の抗体又はモノクロナール抗体によって認識可能である。本発明にしたがって本願明細書中で使用される用語「エピトープ」は、本発明のモジュラー抗体又は免疫グロブリンの結合部位に対する特異的な結合対を完全に製造することができるか、特異的な結合対の一部分であってもよい分子構造を意味するものであってもよい。さらに用語「エピトープ」は、ハプテンとも呼称されてもよい。化学的には、エピトープは炭水化物、ペプチド、脂肪酸、有機物質、生物化学的物質又は無機物質から構成されてもよいか、あるいは、これらの誘導体及びこれらの任意の組合せ物から構成されてもよい。エピトープがポリペプチドである場合には、通常は少なくとも3個のアミノ酸、好ましくは8〜50個のアミノ酸及びより好ましくは約10〜20個のアミノ酸をペプチド中に含むものであってもよい。ペプチドの長さに関する厳密な上限は存在せず、この場合、これは、タンパク質のポリペプチド配列の全長をほぼ含有するものであってもよい。エピトープは、線状又は立体配座的(conformational)エピトープであってもよい。線状エピトープは、ポリペプチド鎖の一次配列の単一セグメントから構成される。線状エピトープは連続又は重複であってもよい。立体配座的エピトープは、ポリペプチドのフォールディングにより一緒なって三次構造を形成するアミノ酸から構成され、かつアミノ酸は線状配列中で互いに隣接する必要はない。特に、エピトープは診断的に関連する分子の少なくとも一部分であり、すなわち、試料中のエピトープの存在又は不在は、定量的又は定性的に疾病又は患者の健康状態又は製造におけるプロセスの状態、環境状況および食料状況と相関する。さらにエピトープは、治療的に関連する分子、すなわち、疾病の過程を変化させる特異的結合ドメインによって標的化することができる分子の少なくとも一部分であってもよい。
本願明細書中で使用されているように、用語「特異的結合」又は「特異的に結合する」は、結合反応に関し、この場合、この反応は、分子の異種集団(heterogenous population)中で重要な同源リガンドを決定するものである。このようにして設定された状態下で(例えばイムノアッセイ条件)、モジュラー抗体はその特定の標的と結合し、かつ試料中に存在する他の分子に対して著量で結合することはない。特異的結合は、結合が、選択されるべき標的同一性、高、中又は低の結合アフィニティー又はアビジティーの点において選択的であることを意味する。選択的結合は、結合定数又は結合動態が少なくとも10倍異なり、好ましくはこの相違が少なくとも100倍であり、かつより好ましくは少なくとも1000倍である場合に、通常達成される。
用語「発現系」は、操作可能な連鎖において好ましいコーディング配列及びコントロール配列を含有する核酸分子に関し、したがって、これらの配列で形質転換されたか又はトランスフェクトされたホストは、コードされたタンパク質を製造する能力を有する。形質転換を実施するために発現系はベクター上に含まれてもよいが;しかしながら相当するDNAはさらにホスト染色体中に組み込まれてもよい。
二者択一的に、発現系はin vitro転写/翻訳中のために使用することができる。発現系は、好ましくはホスト細胞を使用し、この場合、この細胞は原核又は真核のホスト細胞であってもよく、好ましくは哺乳類又は酵母ホスト細胞並びに細菌ホスト細胞であってもよい。
融合タンパク質のための好ましい発現系は、非抑制ホスト細胞であり、この場合、これは終止コドン、例えばアンバー終止コドンに対して敏感であってもよく、それによりその後に翻訳を停止することができる。このような終止コドンの不含下で、例えば非抑制ホスト細胞、好ましくはE.Coliは、好ましくは使用される。このような終止コドンの存在下では、抑制ホスト細胞を使用することができる。
免疫グロブリンのアミノ酸配列のすべての番号付けは、IMGT番号体系による (IMGT、the international ImMunoGeneTics, Lefranc et al .1999, Nucleic Acids Res. 27: 209-212)。
本発明の目的のために、用語「結合物質」又は「リガンド」は結合対の要素に関し、特に、結合対のための結合ドメインとして役立つポテンシャルを有する結合ポリペプチドに関する。結合対の例は、機能的相互作用を有する結合物質の対を含み、例えばリガンドに結合するレセプター、抗原又はレセプターに結合する抗体、標的に結合する薬剤及び基質に結合する酵素を含む。
本発明の目的のために使用される用語「融合タンパク質」又は「キメラ融合タンパク質」は、遺伝子パッケージ、外表面構造の少なくとも一部分、例えばコートタンパク質又はその一部分、場合によってはリンカー配列及び結合物質構成される分子を意味するものであってもよい。融合タンパク質は、結合物質の遺伝子及び情報を有するベクターによってコードされ、遺伝子パッケージ表面上で結合物質のコピーをディスプレイする。
本発明の目的のために使用される用語「細胞毒性活性」は、細胞毒性T細胞の活性化を生じるエフェクター細胞上の活性であるか、あるいは、抗体依存性細胞毒性(ADCC)、補体依存性細胞毒性(CDC)及び/又は抗体依存性細胞性食作用(ADCP)を介在する細胞上の活性を意味するものであってもよい。このようにして、本発明によるモジュラー抗体は、抗体被覆された標的細胞を殺し、これは場合により、そのFcレセプターと結合する。
「スカフォールド」とは、ポリペプチドの変異体又はレパートリの構造において、ポリペプチドの分子構造を支持するために、天然又は人工的に使用される一時的なフレームワークを意味するものであってもよい。これは通常、ポリペプチドドメインのモジュラー系であり、この場合、これは、親分子の三次構造又は機能を維持する。例示的なスカフォールドは、モジュラー抗体であり、この場合、これは、前記スカフォールドの範囲内の変異体を製造し、ライブラリを得るために突然変異されていてもよい。
本発明の目的のために使用される用語「スカフォールドリガンド」は、モジュラー抗体のスカフォールド又は骨格と結合するリガンドを意味し、これにより、分子構造又は一次作用及び前記モジュラー抗体の特異性を決定する。好ましい場合には、スカフォールドリガンドは機能的リガンドであり、結合時の生物学的作用を介在する、たとえばエフェクターリガンドである。二者択一的な実施態様において、スカフォールドリガンドは機能的リガンドであり、この場合、これは、CDR領域、非構造的ループ領域又は構造的ループ領域によって結合された特異的標的である。同一のスカフォールドリガンドは、その標的特異性にかかわらず、モジュラー抗体の多くの変異体と結合することができる。一般に、スカフォールドリガンド結合部位の存在は、変異体が発現し、かつ正確にフォールドすることを示す。したがって、その結合部位に対するスカフォールドリガンドの結合は、ポリペプチドのレパートリからの機能的ポリペプチドの前選択のための方法を提供する。スカフォールドに対する結合特性を維持するモジュラー抗体の変異体を設計することは、例えば突然変異導入の結果として生じる非機能的な、フォールディング変異体又は発現変異体を回避し、この場合、これらの変異体は、本質的に任意の標的又はエフェクターリガンドと結合することができない。このような非機能的突然変異体は、時々、通常のランダム化及びポリペプチドレパートリーの構築において使用される種々の方法によって製造される。スカフォールドリガンドと結合する機能的突然変異体の提供は、当業者が、機能的で、良好にフォールドされ、かつ高発現性のライブラリ要素に富むモジュラー抗体のライブラリを製造することを可能にする。
本発明の目的のために使用される用語「エフェクターリガンド」は、エフェクター機能を介在するリガンド、例えばエフェクター分子を意味する。例示的なエフェクターリガンドは、Fcレセプター又は免疫グロブリンと相互に作用するFcレセプター様分子である。Fcレセプターは、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、ニュートロフィル及びマスト細胞を含む、免疫系の保護機能に寄与する特定の細胞表面上で見出される。この呼び名は、Fc(フラグメント−結晶化可能な)領域として知られた抗体の一部分に対して特異的なその結合に由来する。Fcレセプターは、感染した細胞又は侵入した病原体に結合する抗体と結合する。これらの活性は、食細胞又は細胞毒性細胞を刺激して、病原菌又は感染細胞を、抗体介在性細胞性食作用(ADCP)又は抗体依存性細胞介在性細胞毒性(ADCC)によって破壊する。Fcレセプターのいくつかの異なる型が存在し、この場合、これは、認識する抗体の型に基づいて分類され;抗体の最も一般的なクラス、IgGと結合するものは、Fc−γレセプター(FcyR)と呼称され、IgAと結合するものは、Fc−αレセプター(FcαR)と呼称され、かつ、IgEと結合するものは、Fc−εレセプター(FcεR)と呼称される。エフェクターリガンドと等価物及びこれにより定義に含まれるものは、モジュラー抗体の範囲内で同一又は類似の結合部位を認識する代用のリガンド、例えばプロテインAである。
すべてのFcγRsは、免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、かつオプソニンを作用された(コートされた)病原菌の食作用を誘導するための最も重要なFcレセプターである。このファミリーは、その異なる分子構造に依存してその抗体アフィニティーにおいて異なるいくつかの要素を含む:FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32a)、FcγRIIB(CD32b)、FcγRIIIA (CD16a)、FcγRIIIB(CDl16)。例えばFcγRIは、FcγRII及びFcγRIIIよりもIgGとより強力に結合し、かつ3個の免疫グロブリン(Ig)様のドメイン、これはFcγRII及びFcγRIIIよりも一つ多いドメインである、から成る細胞外タンパク質を有する。これらの特性は、単独のIgG分子(又はモノマー)によるFcγRIの活性を可能にし、それと同時に後者の2個のFcγレセプターは、活性すべき免疫複合体の範囲内で、多重のIgG分子と結合しなければならない。
もう1個のFcRは、多重の細胞型上で発現し、かつ構造においてMHCクラスIと類似する。さらにこのレセプターはIgGと結合し、かつこの抗体の保存において必要とされ、in vivoにおけるその生物学的半減期を増加させる。しかしながらこのFcレセプターは、さらに母親から胎盤を介して彼女の胎児に、あるいは母乳中で彼女の乳児に移行するIgGにおいて必要とされ、これは、新生児Fcレセプター(FcRn)と呼称される。近年このレセプターは、IgG血清レベルの恒常性維持において必要であることが意味される。
抗体依存性細胞介在性細胞毒性(ADCC)は、細胞介在型免疫の機序であり、それによって免疫系のエフェクター細胞は、特異的抗体によって結合された標的細胞を活性的に溶解する。体液性免疫応答の一部として抗体を介する機序の一つは、感染の制限に作用することができ、かつこれを含んでもよい。古典的ADCCは、ナチュラルキラー(NK)細胞によって介在され;さらに単球及び好酸球もADCCを介在することができる。例えば好酸球は、蠕虫として知られる特定の寄生虫を、ADCCを介して殺すことができる。ADCCは従来の抗体応答の依存性に基づいて適応性免疫応答の一部分である。
アミノ酸の内容における用語「外来(foreign)」は、新たに導入された天然由来のアミノ酸を意味するが、改質化部位に対して異なるもの、あるいは、天然由来のアミノ酸の置換物を意味するものではない。抗体結合部位に関する「外来」とは、抗原結合部位が、物質の特異的結合領域によって天然に形成されるものではなく、かつ外来結合対であるが、物質の天然の結合対ではないものを、新規に工学的に作成した結合部位によって結合することを意味する。
用語「可変結合領域」は、本願明細書中で使用しているようにしばしば「CDR領域」として呼称されるものであって、抗原との結合相互作用が可能な種々の構造を有する分子に関する。これらの分子は、それ自体を使用することができるか、あるいは、より大きいタンパク質の範囲内に組み込まれてもよく、これによって結合機能を有するこのようなタンパク質の特異的領域を形成する。可変構造は、結合タンパク質の天然のレパートリ、例えば免疫グロブリン又はフィロマーから誘導することができるか、あるいは、反復タンパク質、アビマー及びアンチカリンを含む、多様の合成物から誘導することができる。可変構造は、同様にランダム化技術によって製造することができ、特にこれらは本願明細書中に記載されている。これらは、突然変異されたCDR又は非CDR領域、免疫グロブリン可変ドメイン又は定常ドメインのループ領域を含む。
特定部位での種々の改質化による改質化された結合物質は、「変異体(Variants)」として呼称される。スカフォールドの変異体は、好ましくはグループ化され結合物質のライブラリを形成し、この場合、これは、予め定められた機能を有するライブラリ要素の選択に使用することができる。これに関して、結合部位に対して潜在的に寄与する1個又はそれ以上のループの範囲内で位置を含有する結合物質のループ領域は、好ましくは突然変異されるかあるいは改質化されて、好ましくはランダム突然変異法、セミランダム突然変異法又は特には部位指定ランダム突然変異法によってライブラリを製造し、特に、ランダムに製造されたインサートを欠失、交換又はループ中に、好ましくは構造的ループ中に導入する。二者択一的に好ましくは、組合わされたアプローチを使用する。任意の公知の突然変異方法を使用することができ、この場合、これは特にカセット突然変異法である。これらの方法は、本発明の免疫グロブリンの好ましい位置においてアミノ酸改質化を生じさせるために使用することができる。いくつかの場合において、位置はランダムに選択することができ、この場合、これは、例えば任意の考えられるアミノ酸または好ましいアミノ酸の選択によりループ配列をランダム化するか、あるいは、アミノ酸変更を単純な規定を用いて製造する。例えば、すべての残基は、好ましくは特定のアミノ酸、例えばアラニンに対して突然変異させることができ、この場合、これはアミノ酸スキャニング又はアラニンスキャニングと呼称される。このような方法は、高いレベルの配列多様性をスクリーニングする選択方法を使用するより精巧な工学的アプローチと一緒されてもよい。
本発明による好ましい細胞毒性モジュラー抗体は、60kDを下回るかまたは60kDまでの分子量を有するものであって、完全長の抗体と比較して小さい大きさを有する。より好ましい大きさは55kDまでである。モジュラー抗体単一ドメインは、10〜15kDの分子量サイズを有し、したがって、4個のモジュラー抗体ドメインをベースとする分子は40〜60kDの分子量の大きさを有していてもよく、この場合、これは、グリコシル化又は製薬学的に活性の物質、例えばトキシン又はペプチドの任意の付加的な結合に依存する。
好ましい構成は、モジュラー抗体ドメイン、好ましくは4個までのドメイン、より好ましくは3個のドメイン及びさらに好ましくは2個までのドメインから構成されるオリゴマーである。5個のモジュラー抗体ドメイン又はそれ以上の組合せをベースとする構成は、通常、小さいサイズの抗体フラグメントの特別な利点、例えば、種々の発現系における発現および組織浸透に容易性を発揮しないと考えられる。
単一ドメインの抗体として、本発明の好ましいモジュラー抗体を提供することは可能である。しかしながら、抗体ドメインは発現時に二量化する傾向があり、この場合、ホモダイマーとしては、例えばFc、又はヘテロダイマーとしては、例えばFabである。したがって二量体構造は、好ましい安定な分子のためのベースであると考えられる。免疫グロブリンドメインの好ましい二量体は、単一ドメイン二量体、例えばVH/VL、CH1/CL(κ又はλ)、CH2/CH2及びCH3/CH3から成る群から選択される。モジュラー抗体ドメインの二量体又はオリゴマーは、さらに一本鎖又は二本鎖の分子として提供することができ、特に、これらは、一方のドメインのC−末端がもう一方のN−末端と結合している。
結合パートナーは、互いに特異的に結合する物質であり、通常は非共有相互作用を介して結合する。結合パートナーの例は、機能的相互作用を有する結合物質のパートナーを含み、この場合、これは、例えばリガンドに対して結合するレセプター、抗原に対して結合する抗体、標的に対して結合する薬剤及び基質に対して結合する酵素を含む。結合パートナーは、多くの治療的、診断的、分析的及び工業的適用における使用が見出されている。最も著名な結合パートナー、結合対とも呼称されるものは、抗体又は免疫グロブリン、フラグメント又はこれらの誘導体である。多くの場合においてこのような結合物質の結合は、生物学的効果又は機能を介在するため、「機能的相互作用」に必要とされる。
本発明の特別な実施態様によれば、結合物質はヒト又はマウス由来の免疫グロブリンであり、かつ種々の目的のために、特に製薬学的組成物中で使用することができる。勿論、改質化された免疫グロブリンもまた、ヒト化免疫グロブリンまたはキメラ免疫グロブリンであってもよい。
ヒト免疫グロブリンである結合物質は、好ましくはIgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4及びIgMから成る群から選択又は誘導されている。マウス免疫グロブリン結合物質は、好ましくはIgA、IgD、IgE、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG2C、IgG3及びIgMから成る群から選択又は誘導されている。
このような結合物質は、好ましくは重鎖及び/又は軽鎖又はこれらの部分を含有する。本発明による改質化された免疫グロブリンは、重鎖及び/又は軽鎖、少なくとも1種の可変及び/又は定常ドメイン、又はミニドメインを含むこれらの一部分を含有するものであってもよい。
定常ドメインは、免疫グロブリン分子の定常部分の免疫グロブリンフォールド単位であり、定常領域のドメインとも呼称される(例えばCH1、CH2、CH3、CH4、Ck、Cl)。
可変ドメインは、免疫グロブリンの可変部分の免疫グロブリンフォールド単位であり、可変領域のドメインと呼称される(例えばVh、Vk、Vl、Vd)。
本発明によって例示されたモジュラー抗体は、CH1、CH2、CH3、CH4、Igk−C、IgI−C、これらの組合せ物、誘導体又はミニドメインを含むこれらの一部分から成る群から選択された定常ドメインから成り、その際、少なくとも1個のループ領域を含み、かつこの少なくとも1個のループ領域は、少なくとも1個の改質化されたループ領域を形成する少なくとも1個のアミノ酸改質化を含むことを特徴とし、その際、この少なくとも1個の改質化されたループ領域は、抗原の少なくとも1個のエピトープと特異的に結合する。
本発明によるもう1種のモジュラー抗体は、重鎖又は軽鎖の可変ドメイン、これらの組合せ、誘導体又はミニドメインを含むこれらの一部分から構成されていてもよく、その際、少なくとも1個のループ領域を含み、かつ、この少なくとも1種のループ領域は、少なくとも1個の改質化されたループ領域を形成する少なくとも1個のアミノ酸改質化を含むことを特徴とし、その際、この少なくとも1個の改質化されたループ領域は、抗原の少なくとも1個のエピトープと特異的に結合する。
本発明によるモジュラー抗体は、1個又はそれ以上のドメイン(例えば少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、10個のドメイン)を含んでいてもよい。モジュラー抗体中に1個以上のドメインが存在する場合には、これらのドメインは、同型または異なる型であってもよい(例えばCH1-CH1-CH2、CH3-CH3、(CH2)2-(CH3)2、その際、ヒンジ領域を含むかまたは含まない)。勿論、さらに単一ドメインは任意の種であってもよい(例えばCH1-CH3-CH2、CH4-CH1-CH3-CH2)。
本発明は、好ましくは抗体の一部分に関するものであってもよく、例えばIgG、IgA、IgM、IgD、IgE等であってもよい。さらに本発明のモジュラー抗体は、機能的抗体フラグメント、例えばFab、Fab、scFv、Fv、Fc、FcabTM、抗原結合Fcまたはこれらの一部分であるか、あるいは、免疫グロブリンの他の誘導体又は組合せ物、例えばminibody、可変領域の重鎖及び軽鎖のドメイン(例えばdAb、Fd(1個以上の単一領域から形成される結合部位)、VL、この場合、これはVλ(Vl)及びVκ(Vk)、VH、VHHを含む)並びに、少なくとも2個の構造的ループにより結合された免疫グロブリンドメインの2個のβ−ストランドから成るミニドメイン、これは単離されたドメインとして、または天然に付随する分子に関連してであってもよい。本発明の好ましい実施態様は、抗体分子のFcフラグメントに関し、この場合、これは抗原結合Fcフラグメント(FcabTM)としてアミノ酸配列の改質化によってか、あるいは、レセプター、ペプチド又は他の抗原結合分子、例えばscFvに対する結合体又は融合体として存在する。
モジュラー抗体は、単離されたポリペプチドとしたか、あるいは、例えば組み換え技術、融合技術又は結合技術を介して、他のペプチド又はポリペプチドとの組合せ分子として使用することができる。ペプチドは、好ましくは免疫グロブリンドメイン配列と相同であり、かつ好ましくは少なくとも5個のアミノ酸の長さ、より好ましくは少なくとも10個のアミノ酸の長さ、それどころか少なくとも50又は100個のアミノ酸の長さであり、かつ、免疫グロブリンドメインのループ領域を少なくとも部分的に構成する。好ましい結合特性は、予め定められたエピトープ結合、アフィニティー及びアビジティーに関する。
本発明によるモジュラー抗体は、1個又はそれ以上の改質化されたモジュラー抗体または改質化されていないモジュラー抗体、又はこれらの一部分とのさらに組合せることができ、これにより組合せのモジュラー抗体を得る。組合せは好ましくは、組み換え技術によって得られるが、しかしながらさらに吸着、静電干渉等によるか、あるいは、リンカーを用いるかまたは用いないで結合(cohugation)又は化学的結合(chemical binding)による結合によって得られる。好ましいリンカー配列は、天然のリンカー配列又は機能的に適した人工の配列であってもよい。
一般に、本発明によるモジュラー抗体は、他のモジュラー抗体又は生物学的に活性の物質又は分子と分子的に組み合わせるための構成単位(buiding block)として使用されてもよい。特異的パートナーに対して結合する少なくとも1個の抗体を、可変又は非可変入れる、たとえば構造的ループを介して、少なくとも1個の他の結合分子と分子的に組合せることは好ましく、この場合、他の結合分子は抗体、抗体フラグメント、可溶性レセプター、リガンド又は他の抗体ドメイン又はこれらの結合部分(binding moiety)であってもよい。他の組合せは、タンパク質様分子、核酸、脂質、有機分子及び炭水化物に関する。
本発明による工学的に作成された分子は、独立型のタンパク質並びに融合タンパク質又は誘導体として使用することができ、最も典型的には、より大きい抗体構造の一部分又は完全な抗体分子、またはこれらの一部分又はフラグメント、例えばFabフラグメント、Fcフラグメント、Fvフラグメント等であるように融合されていてもよい。工学的に作成されたタンパク質を使用して、一特異的、二特異的、三特異的であり、かつさらにより多くの特異性を同時に有していてもよい分子を製造することが可能であり、かつ、同時に、このような分子の予定された用途の要求に応じて、同時に結合価を制御及び予め選択することが可能である。
本発明によればモジュラー抗体は、場合によっては、抗原に対して1個又はそれ以上の結合領域が作用し、この場合、これは細胞表面標的に対して特異的に結合する結合部位及びエフェクター機能を介在する結合部位を含む。1個又はそれ以上の抗原に対する抗原結合部位は、CDR領域又は他の任意の天然のレセプター結合構造によってもたらされるか、あるいは、抗体領域の構造的ループ領域中に導入されていてもよく、この場合、これは可変又は定常ドメイン構造のどちらでもよい。結合部位の結合特性を試験するために使用される抗原は、天然由来分子であるか、あるいは、化学的に合成された分子であるか、あるいは、組み換え分子であってもよく、この場合、これらは溶液又は懸濁液中で、粒子上又は粒子中、例えば固相、細胞上又は細胞中、又はウイルス表面上に配置される、のいずれでもよい。抗原に対する免疫グロブリンの結合は、抗原が自然な状態で依然として分子及び構造に付着又は結合している場合に測定することが好ましい。これにより、診断又は治療的使用の目的に最も適した、これらの改質化された免疫グロブリンを同定し、かつ得ることが可能である。
モジュラー抗体又は免疫グロブリンドメインは、本発明によって改質化されていてもよく(以下、免疫グロブリン及び抗体の用語は、置き換え可能に使用する)、この場合、この改質化は好ましくは、免疫グロブリンドメイン中又はループを含有するこれら一部分で実施され、このループはCDRループまたは非CDR−ループのいずれであってもよく、その際、構造的ループは、改質化又は突然変異の好ましい部位である。いくつかの場合において、定義された改質化された構造的ループ又は構造ループ領域またはこれらの一部分を、結合又は組合せ目的のために単離された分子として使用することは好ましい。
本発明によるモジュラー抗体が、前記細胞表面標的に対して、構造的ループ及び/又はCDRループの少なくとも一部分を介して結合していることは、特に好ましい。
二者択一的な実施態様において、本発明によるモジュラー抗体は、前記エフェクターリガンド又はこのようなエフェクターリガンドのための代替リガンド、例えばプロテインAに対して、構造的ループ及び/又はCDRループの少なくとも一部分を介して結合していることが好ましく、これにより、エフェクター機能を介在する。
好ましい実施態様において、結合物質は、その天然の又は改質化された結合構造又は新規に形成された結合部位と結合しており、特に、同一又は互いに異なる少なくとも2個のこのようなエピトープに対して結合しており、その際、同じ抗原又は異なる抗原のいずれであってもよい。
結合物質の好ましいドメイン構造において、少なくとも1個のループ領域を改質化して、1個又はそれ以上のヌクレオチド又はアミノ酸の置換、欠失及び/又は導入を生じさせることは好ましく、好ましくは点突然変異、さらには全ループの交換、より好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個であり、30個までのアミノ酸の変更である。これにより、改質化された配列はアミノ酸を含むが、ループの保存領域中に含むことなく、その際、新規に導入されたアミノ酸は天然由来であるが改質化位置が固有のものではないか、あるいは、天然由来のアミノ酸の置換物である。
しかしながら、結合物質のループ領域中に挿入されたアミノ酸の最大数は、好ましくは30個の数を上回ることはなく、好ましくは25個、より好ましくは最大20個のアミノ酸であってもよい。アミノ酸の置換及び挿入は、すべての考えられるアミノ酸を使用してか、あるいは、ランダム化目的のための好ましいアミノ酸の選択によりランダムにまたは半ランダムに技術水準から公知であり、かつ本願において開示された方法によって生じる。
改質化の位置は、特異的な単一ループ又はループ領域であってもよく、特に構造的ループ又は構造的ループ領域であってもよい。ループ領域は、通常は、少なくとも1個の、好ましくは少なくとも2個の、好ましくは少なくとも3個又は少なくとも4個のループから構成され、この場合、これらはドメインの先端又は底部に存在し、互いに近接又は隣り合っており、かつ、抗原結合部位又は抗原結合ポケットの形成を介して抗原の結合に寄与するものであってもよい。改質化の1個又はそれ以上の位置が、10個のアミノ酸の範囲内、より好ましくは20、30、40、50、60、70、80、90個のアミノ酸の範囲、100個アミノ酸の範囲内までに位置し、特に構造的ループの範囲内に位置し、抗原がループ領域に空間的にアクセスすることができる表面又はポケットを形成することが好ましい。
これに関連して、好ましい改質化はCH1、CH2、CH3及びCH4のループの範囲内で、特にアミノ酸7〜21、アミノ酸25〜39、アミノ酸41〜81、アミノ酸83〜85、アミノ酸89〜103及びアミノ酸106〜117の範囲内で工学的に作成する。
もうひとつの好ましい実施態様において、アミノ酸92〜98を含有する構造的ループ領域中の改質化は、アミノ酸8〜20を含有する構造的ループ領域中の改質化と組み合わされる。
それぞれの免疫グロブリンの前記の同定されたアミノ酸領域は、改質化すべきループ領域を含有する。好ましくは、アミノ酸92〜98を含有する構造的ループ領域中の改質化を、他の構造的ループの1個又はそれ以上における改質化と組み合わせる。
好ましい実施態様において、アミノ酸92〜98を含有する構造的ループ領域中の改質化は、アミノ酸41〜45.2を含有する構造的ループ領域中の改質化と組み合わせる。
最も好ましくは、アミノ酸92〜98、アミノ酸41〜45.2及びアミノ酸8〜20を含有する構造的ループのそれぞれは、少なくとも1個のアミノ酸改質化を含む。
他の好ましい実施態様において、アミノ酸92〜98、アミノ酸41〜45.2、及びアミノ酸8〜20を含有するそれぞれの構造的ループは、少なくとも1個のアミノ酸改質化を含有する。
他の好ましい実施態様によれば、位置15〜17、29〜34、41〜45.2、84〜85、92〜100及び/又は108〜115のCH3の範囲におけるアミノ酸残基を改質化する。
ヒト由来のIgk−C及びIgl−Cの好ましい改質化は、アミノ酸8〜20、アミノ酸26〜36、アミノ酸41〜82、アミノ酸83〜88、アミノ酸92〜100、アミノ酸107〜124及びアミノ酸123〜126の範囲におけるループ領域中で、工学的に作成する。
マウス由来のIgk−C及びIgl−Cのループ領域の好ましい改質化は、アミノ酸8〜20、アミノ酸26〜36、アミノ酸43〜79、アミノ酸83〜85、アミノ酸90〜101、アミノ酸108〜116及びアミノ酸122〜126の範囲における部位で工学的に作成する。
好ましくは本発明により治療的に使用されるもう1個の好ましい免疫グロブリンは、重鎖又は軽鎖の可変ドメインまたはこれらのミニドメインを含む一部分から、少なくとも1個のループ領域、好ましくは構造的ループ領域と一緒に構成され、かつ、前記少なくとも1個のループ領域は、少なくとも1個の改質化されたループ領域を形成する少なくとも1個のアミノ改質化を含有し、その際、前記の少なくとも1個尾の改質化ループ領域は、前記に示したように相当する結合部位を形成する。
特別な実施態様によれば、本発明によって使用された好ましい免疫グロブリンは、可変ドメインの範囲内での改質化を含有してもよく、この場合、これはVH、Vκ、Vλ、VHH及びこれらの組合せの群から選択される。より特別には、これらは、アミノ酸7〜22、アミノ酸39〜55、アミノ酸66〜79、アミノ酸77〜89又はアミノ酸89〜104の範囲内で少なくとも1種の改質化を含有し、その際、ドメインのアミノ酸位置の番号付けはIMGTのものである。
特別な実施態様において、本発明により好ましくは使用される免疫グロブリンは、ヒト由来のVH又はVκ又はVλのループ領域が、アミノ酸7〜22、アミノ酸43〜51、アミノ酸67〜77、アミノ酸77〜88及びアミノ酸89〜104、より好ましくはアミノ酸位置12〜17、アミノ酸位置45〜50、アミノ酸位置68〜77、アミノ酸79〜88及びアミノ酸位置92〜99の範囲内で、少なくとも1個の改質化を含有することを特徴とする。
改質化目的のために可能な限り選択された、ヒト由来の免疫グロブリンの可変領域の構造的ループ領域は、好ましくは、アミノ酸8〜20、アミノ酸44〜50、アミノ酸67〜76、アミノ酸78〜87及びアミノ酸89〜101の範囲内に位置する。
好ましい実施態様によれば、改質化目的のために可能な限り選択されたマウス由来の免疫グロブリンの可変領域の構造的ループは、好ましくは、アミノ酸6〜20、アミノ酸43〜52、アミノ酸67〜79、アミノ酸79〜87、及びアミノ酸91〜100の範囲内に位置する。
さらに本発明にしたがって、好ましくは治療的に使用された免疫グロブリンは、ラクダ科由来であってもよい。したがってラクダ抗体(Camel antibodies)は、1種のみの重鎖を含有し、かつ軽鎖及び重鎖からなる通常の抗体と同様の抗原アフィニティーを有する結果、ラクダ抗体は、例えばヒト抗体よりも極めて小さく、この場合、これは、より大きいタンパク質では不可能な、密な組織を浸透して抗原に達することを可能にする。さらに、比較可能な簡便性、高いアフィニティー及び特異性並びに到達性及び活性部位との相互作用に関するポテンシャル、ラクダ科の重鎖抗体は、通常の抗体よりも臨床的に重要な化合物のデザイン、製造及び適用において利点を示す。
本発明の他の好ましい実施態様によれば、モジュラー抗体及びラクダ科由来の免疫グロブリンの構造的ループ領域は改質化され、例えばVHHの範囲内で、アミノ酸7〜19、アミノ酸43〜55、アミノ酸68〜76、アミノ酸80〜87及びアミノ酸91〜101の領域中で改質化する。
本発明によるモジュラー抗体を製造するための好ましい方法は、少なくとも1個の第1エピトープに対して特異的に結合し、かつ少なくとも2個の構造的ループ領域のそれぞれにおける改質化を有するモジュラー抗体を工学的に作成し、かつ前記少なくとも2個のループ領域と少なくとも1個の第2エピトープとの特異的結合を決定し、その際、改質化されていない構造的ループ領域(非CDR領域)は、前記の少なくとも1個の第2エピトープと特異的に結合するものではない。したがって、第1抗原に対する特異的な抗体又は抗原結合構造は、第2抗原に対する他の結合価又は特異性を付加することにより改良することができ、この場合、この特異性は同一であってもよく、異なるエピトープ又は同一のエピトープのいずれを標的化してもよく、これにより結合価を増加させるか、あるいは、二特異性、オリゴ特性又は多重特異性分子を得る。
他方で、エフェクター分子又は免疫細胞と相互に作用する天然の構造を含むこれらのモジュラー抗体の使用は好ましい。これらの天然の構造は、変更しないままであるか、あるいは、増加したエフェクター機能に関して調整されている。例えばFcレセプターのための結合部位は、CH2及び/又はCH3ドメイン領域中に配置されるべきことが記載されており、かつ公知技術によって突然変異されていてもよい。
ADCC、抗体依存性細胞介在性細胞毒性は、結合した抗体の定常領域を認識する、Fcレセプターを含む細胞によって、抗体被覆された標的細胞を殺す。多くのADCCは、その表面上でFcレセプターFcγRIII又はCD16を有するNK細胞によって介在される。典型的なアッセイは、新鮮に単離されたエフェクター細胞の添加前に、連続的に希釈された抗体と一緒に恒温保持された標的細胞、たとえばラモス細胞(Ramos cell)を使用する。その後にADCCアッセイは、数時間に亘ってさらに恒温保持され、かつ細胞毒性%を検出する。通常、標的:エフェクター比は約1:16であるが、しかしながら1:1から1:50までであってもよい。
補体依存性細胞毒性(CDC)はキラー細胞の機序であり、その際、標的細胞表面に対して結合した抗体は補体を固定し、これにより、標的細胞膜中に穴を開ける膜攻撃複合体のアンセブリが引き続いての細胞溶解を生じさせる。通常使用されるCDCアッセイは、ADCC測定と同様の方法でおこなうが、しかしながら、エフェクター細胞の代わりに補体を含有する血清を用いる。
ADCCアッセイ及びCDCアッセイにより測定された細胞毒性活性は、コントロールと比較して細胞溶解の%が顕著に増加する場合には、本発明によるモジュラー抗体について証明される。絶対的な%の増加は、好ましくは5%よりも高く、より好ましくは10%よりも高く、さらに好ましくは20%よりも高い。
抗体依存性細胞食作用、ADCPは、しばしばADPCと呼称され、通常は、培養されたヒト細胞の細胞溶解と並んで試験される。食細胞、通常、ヒト単球又は単球誘導されたマクロファージによる食作用は、抗体により介在と同様に、以下のようにして測定することができる。精製された単球はサイトカインと一緒に恒温保持されてもよく、これにより、FcγRsの発現を増強させるか、あるいは、マクロファージへの分化を誘導する。ADCP及びADCCアッセイはその後に、標的細胞を用いて実施する。食作用は、フローサイトメトリーにより測定されたポジティブ細胞の%として測定される。ポジティブADCP活性は、食作用による抗体抗原複合体の顕著な取り込みによって証明される。好ましい絶対的な%は、5%よりも高く、より好ましくは10%よりも高く、さらに好ましくは20%よりも高い。
典型的なアッセイにおいて、PBMC又は単球又は単球由来マクロファージは、RF2培地(RPMI 1640、2%FCSを補ったもの)中、96ウェルプレート中で、100ml/ウェル中1×10の生存細胞濃度で再懸濁した。標的抗原、例えばHer2/neu抗原を発現する、適した標的細胞及びSKBR3細胞は、PKH2緑色蛍光染料を用いて染色する。引き続いて1×10個のPKH2標識された標的細胞及びHer2特異的(IgG1)抗体(又はモジュラー抗体)又はマウスIgGIアイソタイプコントロール(又はモジュラー抗体コントロール)を、異なる濃度(例えば1〜100μg/ml)でPBMCのウェルに添加し、かつ、200mlの最終容積中で、37℃で24時間に亘って恒温保持した。恒温保持の後に、PBMCs又は単球又は単球由来マクロファージ及び標的細胞をEDTA−PBSでハーベストし、かつ96ウェル−V底プレートに移した。プレートを遠心し、かつ上清を吸引濾過した。細胞をRPE結合抗CD11b、抗CD14及びヒトIgGの100ml混合物を用いて対比染色し、混合し、かつ氷上で60分に亘って恒温保持した。細胞を洗浄し、かつ2%のホルムアルデヒド−PBSを用いて固定した。2色のフローサイトメトリー分析を、例えば、最適化されたゲーティング下でFACS Caliburを用いて実施する。PKH2標識された標的細胞(緑色)を、FL−1チャネル(発光波長530nm)中で検出し、かつRPE標識されたPBMC又は単球又は単球由来マクロファージ(赤色)を、FL−2チャネル中で検出する(発光波長575nm)。残りの標的細胞、すなわち、PKH2/RPE二重染色細胞(PKH2/RPE)が、PBMC又は単球又は単球由来マクロファージによる標的の食作用を示すと考えられる細胞として定義された。標的細胞の食作用は、以下の式により算定される:食作用の%=100×[(ダブルポジティブの%)/(ダブルポジティブの%+残りの標的の%)]。すべての試験は、通常、二重又は三重に実施され、かつこの結果を平均値6SDとして示す。
本発明によるモジュラー抗体のエフェクター機能は、任意の合成細胞毒性活性、例えば免疫グロブリン構造と結合してもよいトキシンによるもの、とは通常異なる。トキシンは、通常、エフェクター分子及び生物学的防御機序を活性化するものではない。したがって、本発明によるモジュラー抗体の好ましい細胞毒性活性は、生物学的細胞毒性活性であり、この場合、これは通常、効果的な細胞溶解を導く免疫刺激である。
本発明によるモジュラー抗体は、結合分子又は構造の任意の種類、特に抗原、タンパク質様分子、タンパク質、ペプチド、ポイリペプチド、核酸、グリカン、炭水化物、脂質、有機分子、特に小さい有機分子、無機分子又はこれらの組合せ物又は融合体、この場合、これはPEG、プロドラッグ又はドラッグを含む、と特異的に結合してもよい。本発明による好ましいモジュラー抗体は、ループ又はループ領域のそれぞれが異なる分子又はエピトープと特異的に結合していてもよい少なくとも2個のループ又はループ領域を含有していてもよい。
好ましくは、標的抗原は、細胞表面抗原から選択され、この場合、これはレセプター、特にerbBレセプターチロシンキナーゼ(例えばEGFR、HER2、HER3及びHER4、特にこれらのレセプターの細胞外ドメインのこれらのエピトープ、例えば4D5エピトープ)、TNFレセプタースーパーファミリーの分子、例えばApo−1レセプター、TNFR1、TNFR2、神経発育因子レセプター、NGFR、CD40、T細胞表面分子、T細胞レセプター、T細胞抗原OX40、TACI−レセプター、BCMA、Apo−3、DR4、DR5、DR6、デコイレセプター、例えばDcR1、DcR2、CAR1、HVEM、GITR、ZTNFR−5、NTR1、TNFL1を含むが、しかしながらこれら分子に限定されるものではなく、B細胞表面分子、例えばCD10、CD19、CD20、CD21、CD22、固体腫瘍又は血液癌細胞の抗原又はマーカー、リンパ腫細胞又は白血病細胞、血小板を含む他の血液細胞を含むが、しかしながらこれら分子に限定されるものではない。
他の好ましい実施態様によれば、標的抗原は、細胞、例えば上皮細胞、固体腫瘍細胞、感染細胞、血液細胞、抗原提示細胞及び単核細胞によってもたらされるこれらの抗原から選択される。細胞によって発現又は過剰発現されるこれらの標的抗原は、好ましくは標的化されており、この場合、これは腫瘍随伴抗原、特にEpCAM、腫瘍随伴糖蛋白質−72(TAG72)、腫瘍随伴抗原CA125、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、高分子量メラノーマ随伴抗原(HMW−MAA)、ルイスY関連炭水化物を発現する腫瘍随伴抗原、癌胎児性抗原(CEA)、CEACAM5、HMFGPEM、ムチンMUC1、MUC18及びサイトケラチン腫瘍随伴抗原、細菌抗原、ウイルス抗原、アレルゲン、アレルギー関連分子IgE、cKIT、Fc−ε−レセプターI、IRp60、IL−5レセプター、CCR3、赤血球細胞レセプター(CR1)、ヒト血清アルブミン、マウス血清アルブミン、ラット血清アルブミン、Fcレセプター、例えば新生児Fc−γ−レセプターFcRn、Fc−γ−レセプターFcγRI、Fc−γ−RII、Fc−γ−RIII、Fc−α−レセプター、Fc−ε−レセプター、フルオレセリン、リソチーム、トル様レセプター9、エリスロポイエチン、CD2、CD3、CD3E、CD4、CD11、CD11a、CD14、CD16、CD18、CD19、CD20、CD22、CD23、CD25、CD28、CD29、CD30、CD32、CD33(p67タンパク質)、CD38、CD40、CD40L、CD52、CD54、CD56、CD64、CD80、CD147、GD3、IL−1、IL−1R、IL−2、IL−2R、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−12、IL−15、IL−17、IL−18、IL−23、LIF、OSM、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ;TNF−α、TNFβ2、TNFα、TNFαβ、TNF−R1、TNF−RII、FasL、CD27L、CD30L、4−1BBL、TRAIL、RANKL、TWEAK、APRIL、BAFF、LIGHT、VEG1、OX40L、TRALレセプター1、A1アデノシンレセプター、リンホトキシンβレセプター、TACI、BAFF−R、EPO;LFA−3、ICAM−1、ICAM−3、インテグリンβ1、インテグリンβ2、インテグリンα4/β7、インテグリンα2、インテグリンα3、インテグリンα4、インテグリンα5、インテグリンα6、インテグリンαv、αVβ3インテグリン、FGFR−3、ケラチノサイト成長因子、GM−CSF、M−CSF、RANKL、VLA−1、VLA−4、L−セレクチン、抗Id、E−セレクチン、HLA、HLA−DR、CTLA−4、T細胞レセプター、B7−1、B7−2、VNRインテグリン、TGFβ1、TGFβ2、エオタキシン1、BLys(Bリンパ球刺激物質)、補体C5、IgE、IgA、IgD、IgM、IgG、第VII因子、CBL、NCA90、EGFR(ErbB−1)、Her2/neu(ErbB−2)、Her3(ErbB−3)、Her4(ErbB−4)、組織因子、VEGF、VEGFR、エンドセリンレセプター、VLA−4、炭水化物、例えば血液群抗原及び関連炭水化物、 Galili-糖鎖形成(Galili-Glycosylation)、ガストリン、ガストリンレセプター、腫瘍随伴炭水化物、ハプテンNP−cap又はNIP−cap、T細胞レセプターα/β、Eセレクチン、P−糖蛋白質、MRP3、MRP5、グルタチオンスタンフェラーゼpi(多剤耐性タンパク質)、α顆粒膜タンパク質(GMP)140、ジゴキシン、胎盤性アルカリホスファターゼ(PLAP)及び睾丸性PLAP様アルカリホスファターゼ、トランスフェリンレセプター、ヘパラナーゼI、ヒト心ミオシン、糖蛋白質IIb/IIIa(GPIIb/IIIa)、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)gH外皮糖タンパク、HIVgp20、HCMV、RSウイルスRSV F、RSVF Fgp、VNRインテグリン、HepBgp20、CMV、gpIIbIIIa、HIV IIIB gp120 V3ループ、RSウイルス(RSV)Fgp、単純ヘルペスウイルス(HSV)gD糖タンパク質、HSV gB糖タンパク質、HCMV gB 外皮糖タンパク, ウェルシュ菌トキシン及びこれらのフラグメントから成る群から選択される。
本発明による好ましいモジュラー抗体は、前記標的抗原と高いアフィニティーで、特に高い及び/又は低い解離速度(off rate)で、あるいは、結合の高いアビジティーで結合する。通常、結合物質は、Kd<10−9を有する高いアフィニティー結合物質が考えられる。10−6未満10−9までのKdを有する程度なアフィニティー結合物質は、同様に、好ましくはアフィニティー突然変異法と一緒に、本発明によって提供することができる。
アフィニティー突然変異は、抗原に対する増加したアフィニティーを有する抗体を製造することによる方法である。アミノ酸突然変異を含む抗体の構造的変異あるいは免疫グロブリン遺伝子セグメント中の体細胞突然変異によって、抗原に対する結合部位の変異体を製造し、かつより大きいアフィニティーについて選択する。アフィニティー成熟モジュラー抗体は、親抗体によりも数log倍大きいアフィニティーを示すものであってもよい。単一の親抗体について、アフィニティー成熟をおこなってもよい。標的抗原に対して類似の結合アフィニティーを有するモジュラー抗体の代替的プールは、アフィニティー成熟単一抗体又はこのような抗体のアフィニティー成熟プールを得るために変更された親構造として考えられてもよい。
本発明によるモジュラー抗体の好ましいアフィニティー成熟変異体は、結合アフィニティーの少なくとも10倍の増加を示し、好ましくは少なくとも100倍の増加を示す。アフィニティー突然変異は、親分子のそれぞれのライブラリを使用する選択操作の過程において使用することができ、これは、適度な結合アフィニティーを有するモジュラー抗体を用いてKd<10−8Mの特異的標的結合特性及び/又はIC50<10−8Mのポテンシーを有する本発明のモジュラー抗体が得られる。代替的に、結合ポテンシー又はアフィニティーは、本発明によるモジュラー抗体のアフィニティー突然変異によりさらに増加させることができ、これにより、10−9M未満のKd又はIC50に相当する高い値、好ましくは10−10M又はさらには10−11M、最も好ましくはpMの範囲における値が得られる。
IC50、いわゆる50%飽和濃度は、モジュラー抗体の結合ポテンシーの尺度である。これは、平衡又は飽和下において最大考えられる結合の50%を生じさせる、結合物質のモル濃度である。アンタグニストのポテンシーは、通常、そのIC50値によって定められる。これはアゴニストの最大の結合の半分の飽和を惹起するのに必要なアゴニストの濃度を測定することによって、与えられたアンタゴニストに関して算定することができる。IC50値の惹起は、抗体又は類似の効果を有する抗体変異体のポテンシーの比較のために有用であるが:しかしながら、双方の薬剤アンタゴニストにより生じる用量反応曲線は類似するものでなければならない。IC50を下回れば下回るほど、アンタゴニストのポテンシーは大きくなり、かつ最大の生物学的応答、例えばエフェクター機能又は細胞毒性活性を抑制するのに必要な薬剤の濃度は低くなる。さらに薬剤のより低い濃度は、副作用をほとんど随伴しないものであってもよい。
通常、抗体のアフィニティーはIC50と良好に相関する。その結合部位に対するアンタゴニストのアフィニティー(K)は、レセプターと結合するその能力であると理解され、この場合、これは、結合持続時間及びそれぞれのアゴニスト活性を定める。さらにアフィニティー成熟によるアフィニティーの増加に関する尺度は、通常、結合のポテンシーを増加させ、Kd値と同様の範囲でそれぞれのIC50値減少を生じさせる。
IC50及びKd値は、従来技術においてよく知られた飽和結合アッセイを用いて測定されてもよい。
本発明によるモジュラー抗体は、好ましくは、標識又はレセプター分子と結合し、この場合、これは、有機分子、酵素標識、放射性標識、着色標識、蛍光標識、比色標識、発光標識、ハプテン、ジゴキシゲニン、ビオチン、金属錯体、金属、コロイド状の金及びこれらの混合物から成る群から選択される。標識又はレセプター分子に対して結合された改質化免疫グロブリンを、例えばアッセイ系又は診断方法において使用することができる。
本発明によるモジュラー抗体は、例えば結合アッセイ(例えばELISA)及び結合試験中で、前記結合体の簡単な検出を可能にする他の分子と結合されてもよい。
好ましい実施態様において、抗体変異体は、1種又はそれ以上の細胞をベースとするアッセイ又はin vivoアッセイを用いてスクリーニングされる。このようなアッセイのために、精製されたか又は精製されていない改質化免疫グロブリンを、典型的には、細胞が個々の免疫グロブリン又はライブラリに属する免疫グロブリンのプールに暴露される程度に外的に添加する。これらのアッセイは一般に、しかしながら通常ではなく、免疫グロブリンの機能に基づき;すなわち、その標的と結合する抗体の能力であり、かつ、いくつかの生物学的現象、例えばエフェクター機能、リガンド/レセプター結合阻害、アポトーシス等を介在する。このようなアッセイはしばしば、抗体に対する細胞の応答、例えば細胞の生存率、細胞死、細胞形態の変化又は転写活性、例えば天然遺伝子又はレセプター遺伝子の細胞発現のモニタリングを含む。例えば、このようなアッセイは、ADCC、ADCP又はCDCを惹起する抗体変異体の能力を測定することができる。いつくかのアッセイに関して、標的細胞の他に付加的な細胞又は成分、例えば血清補体、エフェクター細胞、例えば末梢血単球(PBMCs)、NK細胞、マクロファージ等の添加が必要とされてもよい。このような付加的な細胞は任意の生物、好ましくはヒト、マウス、ラット、ウサギ及びサル由来のものであってもよい。モジュラー抗体は、標的を発現する特定の細胞系のアポトーシスを生じさせるか、あるいは、アッセイに添加された免疫細胞によって、標的細胞上の攻撃を介在することができる。細胞死又は生存率のモニタリングの方法は従来技術から公知であり、かつ染料、免疫化学的試薬、細胞化学的試薬及び放射性試薬の使用を含む。例えば、カスパーゼ染色アッセイは、アポトーシスの測定を可能にし、かつ放射性物質又は蛍光染料、例えばアラマブルーの取り込み又は放出は、細胞増殖又は活性化のモニタリングを可能にする。
好ましい実施態様において、DELFIART EuTDA−ベース細胞毒性アッセイ(Perkin Elmer, MA)を使用することができる。
二者択一的に、死滅したまたは損傷した標的細胞を、1種又はそれ以上の天然の細胞間成分、例えば乳酸デヒドロゲナーゼの放出を測定することによってモニタリングすることができる。
さらに転写活性は、細胞ベースのアッセイにおいて機能をアッセイするための方法として役立ってもよい。この場合において、応答は、天然の遺伝子又はアップレギュレーションされていてもよい免疫グロブリンをアッセイすることによってモニタリングされてもよく、例えば特定のインターロイキンの放出を測定してもよいか、あるいは二者択一的にレセプターコンストラクトを介して読み出し(readout)をおこなってもよい。さらに細胞ベースのアッセイは、モジュラー抗体の存在に対する応答として、細胞の形態学的変更の尺度を含むものであってもよい。このようなアッセイのための細胞型は、原核又は真核であってもよく、かつ従来技術において公知の種々の細胞系を使用することができる。二者択一的に、細胞ベースのスクリーニングは、変異体をコードする核酸を用いて形質転換するか、あるいはトランスフェクトされた細胞を用いて実施する。すなわち、抗体変異体は、細胞に対して外的に付加されない。例えば、一つの実施態様において、細胞ベースのスクリーニングは、細胞表面ディスプレイを利用する。細胞表面上において改質化された免疫グロブリンのディスプレイを可能にする融合パートナーを使用することもできる(Wittrup, 2001, Curr Opin Biotechnol, 12:395-399)。
好ましい実施態様において、モジュラー抗体の免疫抗原性は、試験的に1種又はそれ以上の細胞ベースのアッセイを用いて測定することができる。好ましい実施態様において、ex vivoT細胞活性アッセイは、免疫抗原性の試験的定量のために使用される。この方法において、抗原提示細胞及び適合ドナー由来のナイーブT細胞を、数回に亘って対象ペプチド又は全体の抗体で働きかける。その後にT細胞活性は、多くの方法、例えばサイトキナーゼの製造をモニタリングするか、あるいは、トリチウムチミジンの取り込みを測定することによって検出することができる。最も好ましい実施態様において、インターフェロンγ産生は、エリスポット(Elispot)アッセイを用いてモニタリングする。
本発明によるモジュラー抗体の生物学的特性は、細胞、組織及び全体の生物体におけるex vivo試験で特徴付けられてもよい。従来技術から知られているように、薬剤はしばしば動物においてin vivoで試験され、この場合、この動物はこれに限定されることはないがマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、豚及びサルを含み、これによって、疾患又は疾患モデルに対する治療のための薬剤効率を測定するか、あるいは、薬剤の薬物動態、薬力、毒性及び他の特性を測定する。動物は、疾患モデルに関するものであってもよい。治療薬はしばしばマウスにおいて試験され、この場合、マウスはこれに限定されることはないが、ヌードマウス、SCIDマウス、異種移植マウス及びトランスジェニックマイス(この場合、これはノックイン及びノックアウトを含む)を含む。このような試験は、適切な半減期、エフェクター機能、アポトーシス活性、細胞毒性活性又は細胞溶解活性を有し、治療薬として使用すべき抗体のポテンシャルを測定するための有意なデータを提供することができる。任意の生物体、好ましくは哺乳類を、試験のために使用することができる。例えば、遺伝的にヒトと類似することから、霊長類、サルが治療学的モデルとして適しており、これにより、本発明によるモジュラー抗体の効率、毒性、薬物動態、薬力、半減期又は他の性質を試験するために使用することができる。ヒトにおける物質の試験は、最終的には薬剤としての承認のために要求され、したがって、勿論これらの試験は検討される。したがって、本発明のモジュラー抗体は、その治療効率、毒性、免疫抗原性、薬物動態及び/又は他の臨床的性質を測定するためにヒトにおいて試験されてもよい。特に、本発明によるこれらのモジュラー抗体は、この場合、単一細胞又は細胞複合体と少なくとも2個の結合モチーフを介して結合し、好ましくは少なくとも3個の構造の結合で、標的細胞に架橋し、細胞標的化および架橋時においてエフェクター活性又は前アポトーシス又はアポトーシス活性において有効であると考えられる。
多価結合は、結合パートナーのかなり大きい結合(association)を提供し、これは架橋とも呼称され、アポトーシス及び細胞死の前提条件である。
本発明のモジュラー抗体は、広範囲の抗体製品における使用を見出すことができる。一つの実施態様において、本発明のモジュラー抗体は、治療又は予防的に、例えば能動又は受動免疫として、準備(preparative)、工業的使用又は分析的使用のために、診断的薬として、工業用化合物又は研究用試薬として使用され、好ましくは治療薬に使用される。モジュラー抗体は、モノクローナル又はポリクローナルである抗体組成物中での使用を見出すことができる。好ましい実施態様において、本発明のモジュラー抗体は、標的抗原を有する標的細胞、例えば癌細胞を捕捉又は殺傷するために使用される。代替的な実施態様において、本発明のモジュラー抗体は、例えばサイトカイン又はサイトカインレセプターの拮抗作用による標的抗原の遮断、拮抗又は作動のために使用される。
二者択一的に好ましい実施態様において、本発明のモジュラー抗体は、成長因子又は成長因子レセプターの遮断、拮抗又は作動に使用され、かつそれによって標的抗原を有するか又はこれを必要とする標的細胞の殺傷を介在する。
二者択一的に好ましい実施態様において、本発明のモジュラー抗体は、酵素及び酵素基質の遮断、拮抗又は作動のために使用する。
好ましい実施態様において、モジュラー抗体を特定疾患の治療のために患者に投与する。本発明の目的のための「患者」とは、ヒト及び他の動物、例えば哺乳類を含み、かつ最も好ましくはヒトを含む。本願明細書中において「特定疾患」とは、医薬組成物の投与によって回復されうる疾患を意味し、この場合、この組成物は、本発明の改質化された免疫グロブリンを含有するものである。
一つの実施態様において、本発明によるモジュラー抗体は、患者に対して投与される唯一の治療的活性薬剤である。二者択一的に、本発明によるモジュラー抗体は、1種又はそれ以上の他の治療薬と一緒に投与され、この場合、これに制限されるものではないが、細胞毒性薬剤、化学療法的薬剤、サイトカイン、成長抑制剤、抗ホルモン剤、キナーゼインヒビター、抗血管形成剤、心臓保護剤又は他の治療的薬剤を含む。モジュラー抗体は、1種又はそれ以上の他の治療的処方を伴って投与されてもよい。例えば、本発明のモジュラー抗体は、化学療法、放射線治療又は化学療法及び放射線治療の双方に沿って、患者に投与することができる。一つの実施態様において、本発明のモジュラー抗体は、本発明のモジュラー抗体を含むかまたは含まなくてもよい1種又はそれ以上の抗体と一緒に投与することができる。本発明のもう一つの実施態様によれば、本発明のモジュラー抗体及び1種又はそれ以上の抗癌剤は、ex vivoで癌を治療するために使用する。このようなex vivo治療が、骨髄移植及び特に自己骨髄移植において有用であってもよいことが検討されている。本発明の抗体が、他の治療技術、例えば手術と組合せて使用できることについても勿論検討されている。
種々の他の治療剤について、本発明のモジュラー抗体と一緒に投与するための使用が見出されてもよい。一つの実施態様において、モジュラー抗体は、抗血管形成薬と一緒に投与され、この場合、これは、血管発生遮断するか、ある程度干渉する化合物である。抗血管形成因子は、例えば、小分子(small molecule)又はタンパク質、例えば抗体、Fc融合分子又はサイトカインであってもよく、この場合、これは血管形成の促進を伴う成長因子又は成長因子レセプターと結合するものである。これに関して好ましい抗血管形成因子は、血管内皮増殖因子(VEGF)に結合する抗体である。二者択一的な実施態様において、モジュラー抗体は、適応免疫応答を誘発又は増加させる治療薬と一緒に投与され、この場合、これは例えばCTLA−4を標的化する抗体である。二者択一的な実施態様において、改質化された免疫グロブリンは、チロシンキナーゼインヒビターと一緒に投与され、この場合、これは、ある程度、チロシンキナーゼのチロシンキナーゼ活性を抑制する分子である。二者択一的な実施態様において、本発明のモジュラー抗体は、サイトカインと一緒に投与される。本願明細書中において使用される「サイトカイン」とは、他の細胞上において、ケモキンを含む細胞間介在物質として作用する一つの細胞集団によって放出されるタンパク質に関する一般的用語を意味する。
製薬学的組成物が検討され、その際、本発明のモジュラー抗体及び1種又はそれ以上の治療的活性剤が処方される。本発明のモジュラー抗体の安定な配合物は、好ましい純度を有する前記免疫グロブリンを、場合により製薬学的許容性の担体、賦形剤又は安定化剤と一緒に混合することによって、凍結乾燥された配合物又は水性溶液の形で貯蔵するために調製される。in vivo投与のために使用されるべき配合物は、好ましくは滅菌済みである。これは、滅菌フィルター膜を介してかまたは他の方法を介して濾過することによって、簡単に実施される。本願明細書中において開示されたモジュラー抗体及び他の治療学的活性の薬剤は、イムノリポソームとして処方されるか、及び/又はマイクロカプセル中に封入される。
本発明のモジュラー抗体を含有する製薬学的組成物の投与は、好ましくは滅菌済み水性溶液の形であり、これに限定されることはないが、経口的に、皮下的に、静脈内で、鼻腔内で、耳腔内に、経皮的に、粘膜内で、局所的に(ゲル、軟膏剤、ローション、クリーム等)、腹腔内に、筋肉内に、肺内(例えばAERxTM吸入技術、商業的には Aradigmから入手可能、あるいは、InhanceTM肺性運搬系、商業的にはInhale Therapeuticsから入手可能)、膣内、非経口的、直腸内に、又は眼球内を含む種々の方法で実施することができる。
本発明による好ましい方法は、免疫グロブリン、免疫グロブリンドメイン又はこれらの一部分をコードするランダムに改質化された核酸分子に関し、この場合、これは配列5’−NNS−3’、5’−NNB−3’、又は5’−NNK−3’を有する構造ループコーディング領域の範囲内で少なくとも1個のヌクレオチド反復単位を含有する。いくつかの実施態様において、改質化された核酸は、TMT、WMT、BMT、RMC、RMG、MRT、SRC、KMT、RST、YMT、MKC、RSA、RRC、NNK、NNN、NNS又はこれら任意の組合せ物から成る群から選択されたヌクレオチドコドンを含有する(コード付けはIUPACによる)。
核酸分子の改質化は、合成オリゴヌクレオチドを核酸のより大きいセグメント中に導入するか、あるいは、完全核酸分子のデノボ合成によって実施することができる。核酸の合成は、トリヌクレオチド構成単位を用いて実施することができ、この場合、この単位は、アミノ酸のサブセットがコードされるべき場合には、ナンセンス配列の組合せ物の数を減少させることができる(例えば、Yanez et al. Nucleic Acids Res.(2004) 32:el58; Virnekas et al, Nucleic Acids Res. (1994) 22:5600-5607)。
ランダムに改質化された核酸分子は、前記に同定された反復単位を含むものであってもよく、この場合、これは、すべての公知の天然由来のアミノ酸又はこれらのサブユニットをコードする。改質化された配列を含むこれらのライブラリは、その際、アミノ酸の特定のサブユニットが、改質化目的のために使用されたものであって、いわゆる「フォーカスト(focused)」ライブラリと呼称される。このようなライブラリ要素は、このようなサブユニットのアミノ酸の改質化された位置における増加したプロパビリティ(probability)を有し、この場合、これは、通常のものよりも少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍又はさらには少なくとも4倍大きい。さらにこのようなライブラリは、制限されかまたは少ない数のライブラリ要素を有し、その結果、実際のライブラリ要素の数は、理論的ライブラリメンバーの数に達する。いくつかの場合において、フォーカストライブラリのライブラリ要素の数が、理論的数の10倍を下回ることなく、好ましくは10倍を下回ることなく、最も好ましくは10倍を下回ることがない。
本発明による通常のライブラリは、少なくとも10個の融合タンパク質又は潜在的結合物質又はスカフォールドタンパク質の変異体を含有し、好ましくは少なくとも100個、より好ましくは少なくとも1000個、より好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも1010個、より好ましくは少なくとも1011個、1012個までを含有し、in vitroディスプレイ法の場合、例えばリボゾームディスプレイの場合には、さらにより大きい数が好ましい。
種々の代替物が、ランダム化されたライブラリをコードする遺伝子の製造のために使用可能である。完全に合成的なアプローチによってDNAを製造することが可能であり、その際、この配列は、引き続いて合成オリゴヌクオチドとして調製されるオーバーラップフラグメント中に分配される。これらのオリゴヌクレオチドは一緒に混合され、かつ互いに最初に約100℃への加熱によってアニーリングし、その後にゆっくりと周囲温度にまで冷却する。このアニーリング工程後に、合成的にアセンブリされた遺伝子は、直接的にクローニングされるか、あるいは、クローニング前にPCRによって増幅することができる。
二者択一的に、部位指定突然変異のための他の方法を、ライブラリインサートの製造のために使用することができ、たとえばKunkel法(kunkel TA. Rapid and efficient site-specific mutagenesis without phenotypic selection. Proc Natl Acad Sci USA. 1985 Jan;82(2):488-92)又はDpnl法(Weiner MP, Costa GL, Schoettlin W, Cline J, Mathur E, Bauer JC.Site-directed mutagenesis of double-stranded DNA by the polymerase chain reaction. Gene. 1994 Dec 30; 151 (1-2 ): 119-23.)である。
種々の目的のために、サイレント変異を、ライブラリインサートをコードする配列中に導入することは有利であってもよい。例えば、制限部位を導入することができ、この場合、これは、配列の一部分のクローニング又はモジュラー交換を容易にする。サイレント突然変異の導入のためのもうひとつの例は、ライブラリを「マークする」能力であり、これは、選択された位置において特異的なコドンを与えることを意味し、これらを(又はこれから誘導された選択されたクローン)、例えば、後続の工程中で認識することが可能になり、その際、例えば、異なる特徴を有する異なるライブラリを一緒に混合することができ、かつ選択方法又はパンニング方法において混合物として使用することができる。
さらに本発明は、標的に対して結合するモジュラー抗体領域のオリゴマーを製造するための方法を提供し、この場合、この方法は、以下の工程を含む:
−前記のようにして本発明による方法によって製造されたモジュラー抗体領域のオリゴマーのライブラリを提供し、
−前記ライブラリと前記標的とを、スカフォールドリガンドの存在下に接触させ、
−スカフォールドリガンドの存在下で、前記標的に結合するライブラリ要素を選択し、かつ、
−機能性オリゴマーを製造する。
スカフォールドリガンドは、エフェクター分子、FcRn、プロテインA及びCDR標的から成る群から選択することができる。例として、エフェクター分子は、CD64、CD32、CD16、Fcレセプターから成る群から選択することができる。
オリゴマーは、VH/VL、CH1/CL、CH2/CH2、CH3/CH3、Fc及びFab、又はこれらの単鎖から成る群から選択された二量体であってもよい。
本発明による方法は、モジュラー抗体ドメイン又はこれらの変異体の機能的オリゴマーを発現する、少なくとも10個の独立したクローンを含有するライブラリを提供することができる。
本発明によって使用されるライブラリは、好ましくは少なくとも10個のライブラリ要素、より好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも10個のライブラリ要素、より好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも1010個、より好ましくは少なくとも1011個、1012個までのライブラリ要素を含有し、好ましくはこれは親分子から誘導され、この場合、これは、少なくとも1個の特異的機能部分又は結合部分を含有するスカフォールドとしての機能的モジュラー抗体であるか、あるいは、前記親部分の本来の機能的結合領域とは別個の新規結合部位を工学的に作成するこれらの誘導体である。
通常、本発明によるライブラリは、さらにモジュラー抗体の変異体を含有し、この場合、これは突然変異技術又はランダム技術により製造される。これらの変異体は、不活性又は非機能的抗体を含有する。したがって、任意のこのようなライブラリは、機能的効果を測定するために適切なアッセイを用いてスクリーニングすることが好ましい。本発明による好ましいライブラリは、このようなモジュラー抗体の少なくとも10個の変異体、より好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも1010個、より好ましくは少なくとも1011個であり、1012個までの変異体又はそれ以上含有し、これにより、最も適した結合物質の選択のための抗体の高く多様なレパートリを提供する。任意のこのような合成ライブラリは、本願明細書中で開示された突然変異方法を用いて製造することができる。
好ましくは、ライブラリは酵母ライブラリであり、かつ酵母ホスト細胞は、細胞表面上において、生物学的活性を有するオリゴマー又はオリゴマーを形成するモノマーを示す。酵母ホスト細胞は、好ましくはSaccharomyces属、Pichia属、Hansenula属、Schizisaccharomyces属、Kluyveromyces属、Yarrowia属及びCandida属から選択される。より好ましくは、ホスト細胞はSaccharomyces cerevisiaeである。
さらに本発明は、モジュラー抗体ドメインの機能的二量体又は標的及びスカフォールドリガンドと結合するこれらの変異体の、少なくとも10個の独立したクローンを含有する高品質のライブラリを提供する。標的は、親分子に結合するリガンドであってもよく、この場合、これはアミノ酸変異を生じさせる。親分子は、機能的オリゴマー、特に機能性Fc又は機能性Fab、あるいはこれらの一部分であってもよい。
技術的によく知られているように、特定の結合特性およびアフィニティーを有するタンパク質の同定及び単離のために使用されてもよい種々のディスプレイおよび選択技術が存在し、この場合、これは、例えばディスプレイ技術、例えば細胞性及び非細胞性の、特に可動ディスプレイ系を含む。細胞系の中でもファージディスプレイ、ウイルスディスプレイ、酵母又は他の真核細胞ディスプレイ、例えば哺乳類又は昆虫細胞ディスプレイを使用することができる。可動化系は、可溶性の形でのディスプレイ系に関し、例えばin vitroディスプレイ系、特にリボソームディスプレイ、mPNAディスプレイ又は核酸ディスプレイに関する。
抗体変異体を製造及びスクリーニングするための方法は、技術水準でよく知られている。抗体分子生物学のための一般的な方法、発現、精製及びスクリーニングについては、Antibody Engineering, edited by Duebel & Kontermann, Springer-Verlag, Heidelberg, 2001;及びHayhurst & Georgiou, 2001, Curr Opin Chem Biol 5:683-689; Maynard & Georgiou, 2000, Annu Rev Biomed Eng 2:339-76に記載されている。
本発明によるライブラリは、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の特異的構成を含むか、あるいは、主として特異的抗体構成から成るものである専用のライブラリとしてデザインされてもよい。このような好ましいライブラリは、主に、類似構造の特徴を有するライブラリ要素の同一種を含有する。特異的抗体構成が好ましく、本発明による好ましいライブラリはVHライブラリ、VHHライブラリ、Vκライブラリ、Vλライブラリ、Fabライブラリ、CH1/CLライブラリ、Fcライブラリ及びCH3ライブラリからなる群から選択される。1種以上の抗体ドメイン、例えばIgGライブラリ又はFcライブラリを含有する複合分子の内容によって特徴付けられるライブラリが特に好ましい。他の好ましいライブラリは、これらのT細胞レセプターを含有し、T細胞レセプターライブラリを形成するものである。さらに好ましいライブラリはエピトープ又はペプチドライブラリであり、その際、融合タンパク質は、種々のエピトープを有する分子を含有し、さらに類似の結合機能であるが異なる機能性(functionality)を有する競合的分子の選択を可能にする。例は、TNFαライブラリであり、その際、TNFα融合タンパク質の三量体は、単一の遺伝子パッケージによってディスプレイされる。
本発明のもうひとつの重要な観点は、それぞれの潜在的に結合するドメインが、それをコードする特定のDNA又はRNA分子に物理的に付随したままであり、かつさらには、融合タンパク質が遺伝子パッケージ表面においてオリゴマー化し、天然及び機能的オリゴマー構造中で結合ポリペプチドが存在することである。良好に結合するドメインが同定すると同時に、発現、組み換え又は他の工学的目的のための遺伝子を簡単に得ることができる。これに関連する形は「複製可能な遺伝子パッケージ」であり、例えば、結合ドメインコーディング遺伝子を複製及び発現し、かつ結合ドメインをその外表面に運搬するウイルス、細胞又は胞子である。もうひとつの形は、in-vitro複製可能な遺伝子パッケージ、例えばコーディングRNAと翻訳されたタンパク質とを結合するリボソームである。リボソームディスプレイにおいて、遺伝子材料は、ポリメラーゼによる酵素的増幅により複製される。
これらの細胞又はウイルス又は標的分子を認識する結合物質を有する核酸は単離され、かつ必要に応じて増幅される。遺伝子パッケージは、好ましくはM13ファージであり、かつタンパク質はM13遺伝子IIIタンパク質の外表面運搬シグナルを含む。
本発明の方法において好ましくは、遺伝子パッケージのベクター又はプラスミドを、転写調節エレメントの緊縮制御(tight control)下及び培養条件下で、粒子表面上の融合タンパク質の2個未満のコピーをディスプレイするベクター又はファージミドの量又は数が、約20%未満である程度に調整する。より好ましくは、融合タンパク質の2未満のコピーをディスプレイするベクター又はファージミドの量が、1個以上の融合タンパク質のコピーをディスプレイするベクター又はファージミドの量の10%未満である。最も好ましくは、この量は1%未満である。
本発明にしたがって好ましくは使用された発現ベクターは、結合ポリペプチドの発現が可能であり、かつ以下のようにして製造することができる:最初に、結合ポリペプチド遺伝子ライブラリを、異なる結合配列をコードする複数個のポリヌクレオチドを導入することによって合成する。複数個のポリヌクレオチドは、操作可能な組合せにおいてベクター中に結合するのに適した量で合成することができ、この場合、これは、前記結合ポリペプチドの融合タンパク質を発現するために増殖させることができる。二者択一的に、複数個もポリヌクレオチドは、さらにポリメラーゼ連鎖反応によって増幅することができ、これによって発現のために十分な材料を得る。しかしながら、これらは、結合ポリペプチドが大きいポリペプチド配列、例えば200塩基対を上回るかまたはしばしば300塩基対を上回る配列によってコードすることが出来る場合には、有利であってもよい。したがって、多様な合成ライブラリを好ましくは形成し、前記多様なライブラリから、好ましい予め選択された機能及び結合特性、例えば特異性を有する結合ポリペプチドを製造することできる、少なくとも1種の発現ベクターを直ぐに選択することができる。
前述の記載は、以下の例を用いて十分に理解されうるものである。しかしながらこのような例は、本発明の1種又はそれ以上を実施する方法の単に典型例に過ぎず、本発明の範囲を制限すべきものではない。
ライブラリFcab01のアセンブリ用フラグメントの製造に使用されたPCRsの模式図 CH3ドメインのアミノ酸配列及び二次構造を示す図(IMGT番号付け)

例1:ノン−フォーカスト(non-focussed)Fcabライブラリ(Fcab01)の構築及びファージ表面ディスプレイ
IgG Fcフラグメントの結晶構造、この場合、これはBrookhavenデータベース中に10Q0.pdb入力で掲載されており、Fcabライブラリのデザインを助けるために利用される。
Fcabライブラリの構築のためのベースとして使用される配列は、配列番号1として示されている。この配列において、最初のアミノ酸は、ヒトIgG1のGlu216(EU番号付け:IMGTデータベース(http //imgt cines . fr/textes/IMGTrepertoire/Proteins/protein/h uman/IGH/IGHC/Hu_IGHCallgenes.html; lookup 2007 06 25)により、これはヒトIgG1ヒンジ領域の最初の残基であり、ヒトIgG1の重鎖定常ヒンジ領域のヒンジ領域の(E) PKSCDKTHTCPPCP)として示されるものである)に相当する。配列番号1の最後から2番目の残基は、ヒトIgG1のGly446(EU番号付け;IMGT:ヒトIgG1のCH3ドメインの残基番号129)に相当する。
loqo.pdbの構造の詳細な分析後及びβストランドと結合するループを形成する残基の視覚的検査によって、βストランドと結合するループの一部分である残基144、145及び146並びに配列番号1のβストランドE−Fと結合するループの一部分である残基
198、199、200、203及び204をランダム化することを決定した。突然変異された残基の他に、5個の残基を、配列番号1の残基番号198に挿入した。配列番号2において、ライブラリFcab01のライブラリインサートの配列が示され、この場合、すべてのランダム化された残基位置並びに5個の挿入された残基が、文字Xで示されている。
工学的に作成された遺伝子は、一連のPCR反応により変性プライマーを用いて製造し、かつ得られるPCR産物をその後にライゲートした。ライゲーションを容易にするために、配列番号1をコードするヌクレオチド配列のいくつかのコドンを改質化して、アミノ酸配列を変更することなく制限部位を生じさせる(サイレント変異)。クローニングベクタpHEN1(Nucleic Acids Res 1991 Aug 11 19 ( 15)4133-7 :Multi-subunit proteins on the surface of filamentous phage:methodologies for displaing antibody (Fab) heavy and light chains. Hoogenboom HR, Griffiths AD, Johnson KS, Chiswell DJ, Hudson P, Winter G.)中への挿入のために、pelB分泌シグナルを含むフレーム中で、pelB分泌シグナルに近いNcoI制限部位を使用した。ランダム化された残基のために、コドンNNS(IUPACコード、ここでSはヌクレオチドC及びGを意味する)を選択し、この場合、これはすべての20種の天然由来のアミノ酸をコードするが、しかしながら3個の終止コドンのうち2個のコドンを省く。さらに他のコドン、例えばNNB(BはヌクレオチドT、C及びGを意味するものである)を使用することができる。工学的に作成された配列は、配列番号3中のヌクレオチド配列として示される。この配列はさらに、ファージミドディスプレイベクターpHEN1中にクローニングするために使用された制限部位、すなわち、5’末端においてNcoI部位及び3’末端においてNotI部位を含む。
突然変異されたCH3ドメインのアセンブリに使用されるPCRプライマーの配列は、配列番号4〜配列番号9に示される。
Figure 0005602625
図1は、突然変異遺伝子のアセンブリのために製造されたPCRフラグメント及びそのために使用されるプライマーの模式図を示す。
ヒトモノクローナル抗体3D6の重鎖のcDNA(Felgenhauer M, Kohl J, Ruker F. Nucleotide sequences of the cDNAs encoding the V-regions of Hand L-chains of a human mono-clonal antibody specific to HIV-l-gp411999, Nucleic Acids Res.1990 Aug 25; 18 ( 16) :4927. )は、PCR反応のためのテンプレートとして使用される。3個のPCR産物は、それぞれSacI及び/又はHindIIIで消化され、かつ一緒にライゲートされた。ライゲーション産物を、さらにNcoI及びNotIで消化し、かつ表面ディスプレイファージミドベクターpHEN1中にライゲートし、この場合、このベクターは、予めNcoI及びNotIで消化されている。その後にライゲーション産物を、エレクトロポレーションによってE.Coli中に形質転換した。選択されたクローンの数は、制限分析及びDNAシークエンシングによって制御され、かつ予定通りのインサートを含むことが確認され、この場合、これは正確に挿入されたランダム化配列を含むものであった。引き続いてのファージ産生工程に関しては、標準的なプロトコールをおこなった。要するに、ライゲーション混合物を、エレクトロポレーションによりE.Coli TG1細胞中に形質転換した。引き続いて、ファージ粒子をE.Coli TG1細胞からヘルパーファージM13−KO7と一緒に取り出した。ファージ粒子はその後に培養上清からPEF/NaClを用いて2工程で沈澱させ、水中に溶解し、かつパンニングによって選択のために使用されるか、あるいは代替的に、−80℃で貯蔵される。
例2:フォーカストFcabライブラリ(Fcab02)の構築及びファージ表面ディスプレイ
例1に記載したようにFcabライブラリを製造し、その際、ランダム化されたライブラリ位置を完全にランダム化し、すなわち、これらはコドン、例えばNNS、NNB、NNK、NNN等を使用してコードされる。
明りょう性に関して、アルファベット記号、例えばN、B、S又はKの意味は、IUPACヌクレオチド不確定(ambiguity)コードによって定義され、この場合、これは以下の表に示す:
Figure 0005602625
上記に示したこれらのコドンは、すべての20個のアミノ酸がこれらによってコードされるようデザインされる。考えられるアミノ酸以外のサブセットを選択することも好ましくあってよい。例えば、文献(Fellouse FA, Li B, Compaan DM, Peden AA, Hymowitz SG, Sidhu SS)中で見出すことができる。Molecular recognition by a binary codeJ MoI Biol2005 Aug 20; 348 ( 5) :1153-62. Epub 2005 Apr 1. ; Fellouse FA, Wiesmann C, Sidhu SS.4個のアミノ酸コードからの合成抗体:a dominant role for tyrosine in antigen recognitionProc Natl Acad Sci U S A. 2004 Aug 24;101 (34) :12467-72. Epub 2004 Aug 11)。例えば4個のみの異なるアミノ酸型に関して可能なフォーカストライブラリは、例えばコドンKMTにより構築することができ、この場合、これはアミノ酸Ser、Tyr、Ala及びAspをコードする。
Fcab02と呼称されるフォーカストFcabライブラリは、例1に記載された方法で構築されるが、但し、NNSコドンをKMTコドンにより置換している。
したがって、配列番号2中のアルファベット"X"は、ここでは"S、Y、A及びD"(Ser、Tyr、Ala及びAsp)を意味し、これによりフォーカストライブラリFcab02を表す。
例3:ライブラリインサート(結合パートナー)とp3との間に付加的なアミノ酸を有するファージ表面ディスプレイライブラリの構築
ディスプレイされたタンパク質の潜在的な結合部位のアクセシビリティーを試験するため結合アッセイを実施する:ファージ懸濁液を、抗−myc mAb 9E10−被覆マイクロプレート(又はイムノチューブ)と反応させる。洗浄後に、結合したファージを、抗M13−酵素結合体を用いて検出する。コントロールとして、タンパク質融合及びmyc−tagをディスプレイしないヘルパーファージを、プレートと反応させる。他のコントロールは、非被覆プレートとのファージの反応及びファージのp3−融合パートナーを認識する抗血清とのファージの反応である。
典型的に、p3−融合タンパク質をディスプレイするファージの抗myc反応性は、抗−myc−mAbに対するヘルパーファージの反応が、前記バックグランドではない(非被覆プレート)のにかかわらず、極めて明りょうなELISA読み出しを生じうる。アンカーとしてのタンパク質IIIに対する結合を介して、M13ファージの表面においてディスプレイされたCH3二量体の構造は、それぞれCH3が、種々のリンカー長及び組成を用いてタンパク質IIIに対して固定されている。従って、CH3二量体は、好ましくは2個のアンカーによってディスプレイされる。
リンカーの最適化:
ディスプレイされるべきタンパク質と遺伝子パッケージとの間のリンカー(線維状ファージの場合には、例えばp3、p8、pX、pIX、PVII)は、特に、ディスプレイされた分子の潜在的結合部位が、ファージ粒子の空間的近位である場合には、特に重要である。可変ドメイン及びCDR−ループにより形成された抗原結合部位及びp3に対するアミノ末端融合としてのライブラリ要素のディスプレイを使用する抗体ライブラリにおいて、潜在的抗体結合部位は、ファージ粒子に向けられていない。したがって、ライブラリ要素とファージ被覆タンパク質との間のリンカー構造は、あまり重要ではない。免疫グロブリン領域の底部ループの工学的作成及びファージディスプレイの実施は、しかしながら非効率的な方法であってもよく、かつ抗原結合クローンの収量を減少させるか、それどころか得られない。ライブラリ要素タンパク質と表面上のその融合パートナーとの間のリンカーを変更することでこの問題を解決するか、あるいは、少なくとも減少させることができる。
最適なリンカー配列(長さ及びフレキシビリティー並びに安定性の点において)を選択するために、リンカーのライブラリを製造することができ、この場合、これは、遺伝的に複製可能なパッケージの表面におけるアンカータンパク質が、立体的理由から選択することが困難であると知られた公知の結合タンパク質と融合させる。
この配列のライブラリは、長さ及びアミノ酸含量において多様であってもよい。
最適化されたリンカーのためのリンカーライブラリの選択方法は、適用に依存するが、しかしながら原則的には特定の方法論において有することが望まされるすべての性質を選択すべきである。選択困難な抗原に対する濃縮(enrichment)は、ライブラリ要素について抗原に対する良好なアクセス可能を可能にするリンカー配列を得ることができる。プロテアーゼ溶液中又は他の緊縮条件下での恒温保持であるか、あるいは、タンパク質溶解条件下でのホスト細胞の頻繁な通過(例えば古い微生物培養物)は、安定したディスプレイリンカーのための適切な選択であってもよい。
リンカーのライブラリは、任意の公知ライブラリ技術によって製造することができる。合成リンカー配列の長さは、10〜500アミノ酸で可変であってもよい。二者択一的に、リンカーは、フレキシブルな性質であることが公知の完全なタンパク質であってもよい。
リンカー最適化Fcab01
例として、ライブラリFcab01(例1に記載したもの)を使用することができる。元々、このライブラリをファージミドディスプレイベクターpHEN1中に、NcoI及びNotI制限部位を用いてクローニングする。この方法でクローニングする場合には、18個のアミノ酸残基は、Fcab01ライブラリインサートのC−末端アミノ酸残基と、ファージM13p3のN−末端アミノ酸残基との間に存在する。この接合領域の配列は配列番号10 SPGKAAAEQKLISEEDLNGAATVESに示し−かつ、以下のようにして説明される:最初の4残基であるSPGKは、Fcab01ライブラリインサートの4個のC−末端残基であり、その後にアミノ酸配列AAAが続き、この場合、これは、NotI制限部位によってコードされたアミノ酸配列であり、引き続いて配列EQKLISEEDLが続き、この場合、これはmycエピトープであり、引き続いてNGAAであり、この後に、アンバー終止コドンが存在し、この場合、これは、E.Coliのアンマー抑制菌株、例えばTG1中でグルタミン(Q)に翻訳される。配列番号10のC−末端4残基であるTVESは、ベクターpHEN1中にファージM13p3のN−末端4残基として存在する。
Fcab(結合パートナー)とファージ体(遺伝的パッケージ)との間に増加した距離でのFcabインサートをディスプレイするファージの構築する目的で、5個の付加的な残基を、FcabインサートFcabRGD4のC−末端において挿入し、これはNotIクローニング部位の直ぐ上流であり、結果としてクローンFcabRGD4Lを生じた。FcabRGD4は、CH3ドメインのEFループ中に挿入されたインテグリン結合RGDモチーフを有し、かつELISA中でαvβ−インテグリンと結合するFcabである。増加した長さのリンカー配列として、ファージM13p3配列中に8回生じるアミノ酸配列EGGGSを使用した。pHEN1中へのクローニングの後に発現するようにして得られるFcabRGD4Lのアミノ酸配列は、配列番号11に示される。配列番号11において、アミノ酸残基198〜204はRGDモチーフを示し、アミノ酸残基237はFcabインサートのC末端残基であり、残基238〜242は、挿入されたリンカー配列(非改質化pHEN1とは異なる)を示し、これは引き続いてmyc-tag、アンバー終止コドン及びp3配列と続く。
コンストラクトのクローニングのために、FcabRGD4配列は、PCRプライマーEPKSNCO(配列番号4)及びCH3rリンク
Figure 0005602625
を使用して、pHENFcabRGD4(配列番号14)から増幅させ、かつNcoI及びNotI制限部位を介してベクターpHEN1中にクローニングした。得られたベクターであるpHENFcabRGD4L(配列番号14)は、ヌクレオチド位置3057−3071で付加的なリンカー配列を有する。
2個のファージミドベクター、pHENFcabRGD4及びpHENFcabRGD4Lは、E.Coli TG1中に形質転換した。引き続いて、ファージ粒子をE.Coli TG1細胞からヘルパーファージM13−KO7と一緒に取り出した。ファージ粒子はその後に、2工程中でPEG/NaClを有する培養上清から沈澱され、水中に溶解し、かつELISAのために使用した。
ファージELISAを以下のようにして実施した:
ファージ懸濁液を、αvβ−インテグリン被覆マイクロプレート(又はイムノチューブ)と反応させた。洗浄後に、結合したファージを、抗M13−酵素結合体を用いて検出する。コントロールとして、タンパク質融合をディスプレイしないヘルパーファージ及びmyc−tagを、プレート並びにその表面上にwtFcabを有するファージ粒子と反応させる。他のコントロールは、非被覆プレートとファージとの反応及びファージのFcab−融合パートナーを認識する抗血清とファージとの反応である。pHENFcabRGD4LcabRGD4Lから生じる、増加した長さのリンカーを有するファージ粒子は、より簡単に、pHENFcabRGD4中に含まれるような元々のリンカーを有するファージ粒子よりも、αvβ−インテグリンと反応し、これによって、ELISA中でより強いシグナルを生じる。
ファージ選択は、wtFcabを有するファージ粒子を、FcabRGD4又はFcabRGD4Lを有するファージ粒子の少量と混合することにより実施することができる。数回に亘ってのパンニング後に(典型的には3〜5回)、好ましくは、FcabRGD4Lをディスプレイするファージを選択する。
例4:Fcabライブラリーデザイン
("Fcab"は、f-star Biotechnologische Forschungs-und Entwicklungsges .m.b.H.の登録商標である)
Fcabライブラリのデザイン(図2に例証されている):抗体のCH3定常ドメインの非CDRループ中のアミノ酸位置はランダム化に関して考慮される。特に、ループA−B、C−D及びE−Fは、これらがドメインの片側において存在すると考えられる。特定の位置におけるランダム化のためのいくつかのデザイン基準は、本願明細書中に記載する。
抗原抗体相互作用中にしばしば必要とされるアミノ酸は、本願明細書中でフォーカストライブラリ中に含まれるべきことが記載されている。ここで、アミノ酸Ala、Asp、Ser及びTryは、フォーカストライブラリをデザインするように使用される。
制限されたアミノ酸利用度を有するライブラリは、ほぼ任意の抗原に対する結合物質を生じさせるのに十分であるように示される(Sidhu & Fellhouse, NATURE CHEMICAL BIOLOGY VOLUME 2 page 682ff; Koide et al PNAS, volume 104 p66326637)。このような制限された(又はフォーカスされた)ライブラリの利点は、これらが最近の技術によって完全にカバーすることができる点である。典型的にはアミノ酸利用度は、リガンドレセプター結合の天然のアミノ酸利用度に反映される。しかしながら、2個のみのアミノ酸(チロシン及びセリン)を利用するライブラリであってさえも、良好な選択結果を得ることが報告されている(異なる結合物質に対する結合物質の頻度の点及びアフィニティーの点において)。
ループフレキシビリティー
特定のループ構造は、スカフォールドタンパク質によって要求されてもよく、これによって全体の天然構造を維持する。ループ中の多くのアミノ酸位置のランダム化及びループの伸長であってさえも、ランダム化位置の片側又は両側における特定の配列の構築によって容易にすることができる。これらの配列はフレキシブルな配列であってもよく、これによって、このような位置で特定のライブラリ配列で、任意の伸長(tension)を補完することが可能である。
Figure 0005602625
Fcab01ライブラリは、上記実施例において記載されている。フォーカストライブラリデザインFcab02、Fcab04及びFcab06の配列スペースは、約10e9の実際の細菌ライブラリサイズによってカバーされる。対照的に、完全にランダム化されたライブラリFcab01、Fcab03及びFcab05は、実際には全く不十分である。
例5:相同組み換えによる酵母ディスプレイライブラリのクローニング
ベクター
pYD1(Invitrogen)は、基本ベクターとして使用される。このベクターは、以下のようにしてXhoI位置を除去するために改質化する:pYD1はXhoIで消化され、DNAポリメラーゼのクレノウフラグメントで処理され、かつ再度ライゲーションされる。得られる配列は、pYD1dX(配列番号15)に示す。
pYD1dXは、位置921/925で、特有のBamHI制限部位及び位置963/967で、NotI制限部位を含む。これは、これら2個の制限酵素を用いて開環される。
ヒトIgG1からのCH1−ヒンジ−CH2−CH3をコードするインサートは、ヒトIgG1モノクローナル抗体の重鎖をコードするcDNAからPCRによって製造される。このインサートにおいて、点突然変異を、標準的な方法を用いて導入し、CH1ドメインのC末端システイン残基をセリンに突然変異させる。インサートは、それぞれ双方の末端に対してBamHI及びNotI制限部位と結合するPCRプライマーを用いて増幅した。これらの制限部位を、その後に、インサートをpYD1dX中にクローニングするために使用して、ディスプレイベクターpYD1dXFc(配列番号16)を得る。CH1ドメインのC末端で突然変異されたコドン(CysからSer)は、pYD1dXFc配列中で位置1233〜1235である。インサートの終止コドンは、位置1917/1919である。
このベクターは、酵母表面上のヒトCH1−ヒンジ−CH2−CH3のディスプレイのためのポジティブコントロール及びベクターpYD1CH12の構築のための出発点として使用する(以下、参照)。
ライブラリのクローニング
突然変異体はCH3ドメインの構造的ループ中に導入されたライブラリのクローニングは、相同組み換えによって酵母中で実施される(ギャップ修復gap repair)。この目的のために、レシピエントベクターはCH3ドメインを欠くものを製造する:pYD1dXFCは、XhoI(位置1603/1607)及びNotI(位置1921/1925)で切断し、より大きいフラグメントを、調製されたゲル電気泳動法により製造し、DNAポリメラーゼのクレノウフラグメントで処理し、かつ再度ライゲートした。この方法は、特有のXhoI部位(位置1603/1607)を再構築し、かつ、ベクターpYD1CH12を得た。その後にpYD1CH12をXhoIで切断し、かつ酵母中でのギャプ修復のためのレシピエントベクターとして使用する。
インサート源として、FcabライブラリFcab01(配列番号18)、Fcab02(配列番号19)、Fcab03(配列番号20)、Fcab04(配列番号21)、Fcab05(配列番号22)、Fcab06(配列番号23)を使用した。これらのライブラリは、標準的なDNA合成によって製造され、かつランダム化された残基及びインサートされた残基を、ヒトIgG1のCH3ドメインのABループ(残基359と361との間(EU番号付け))並びにEFループ(残基413と419との間(EU番号付け))を含む。この合成DNAから、酵母中のギャップ修復のためのインサートをPCRにより、以下のPCRプライマー対を用いて増幅する。
Figure 0005602625
100μgのXhoI切断ベクターpYD1CH12及び100μgのインサートを混合し、かつ、以下のプロトコールに従って、酢酸リチウム法を用いて、サッカロミセス菌株EBY100(Invitrogen)中に形質転換し、この場合、これは、細胞及びDNAの必要量を形質転換するために、100倍アップスケールする。要するに、1μgのベクターDNA及び1μgのインサートDNAの単一の形質転換に関して、10mlのYPD(2%ペプトン、2%デクストロース(D−グルコース))は、酵母コロニーで接種され、かつ一晩に亘って30℃で振とうする。一晩の培養物のOD600を測定し、この培養物を50mlのYPD中でOD600が0.4になるまで希釈し、かつ付加的に6時間に亘って増殖させた。細胞を2500rpmでペレット化し、かつ40mlの蒸留水中に再懸濁した。細胞を2500rpmで再度ペレット化し、かつ100mMのLiAc中に再懸濁し、引き続いて30℃で30分に亘って恒温保持した。1μgのベクターDNA、1μgのインサート及び50μlの変性剪断サケ精子DNA(2mg/ml)を、300μlの酵母懸濁液中で一緒に混合した。200mMの酢酸リチウム及び40%のPEG−3350の溶液700μlを添加し、かつ酵母/DNA懸濁液と一緒に混合し、引き続いて30℃で30分に亘って恒温保持した。88μlのDMSOを添加し、混合し、かつ混合物を42℃で40分に亘って恒温保持し、引き続いてマイクロ遠心機中で10秒に亘って遠心分離した。その後に上清を除去し、細胞ペレットを1mlの蒸留水中に再懸濁した。その後にペレットを、50〜100μlのTE中に再懸濁し、かつロイシンを含む最小デキストロース培地(10g/lの酵母窒素ベース、20g/lのデキストロース、0.1g/lのロイシン、15g/lのアガー)をプレーティングした。このプレートを30℃で2〜4日間に亘って恒温保持した後に、単一コロニーが生じ、これを引き続いてハーベスト(harvest)した。
培養法−誘導法
ハーベストされた酵母ライブラリ(yFcabライブラリ)を、10mlのSD−CAA培地(10g/lの酵母窒素ベース、10g/lのカザミノ酸、及び20g/lのデキストロース、0.1g/lのロイシン、9.67g/lのNaHPO4・2HO及び10.19g/lのNaHPO・7HO)中に接種し、かつシェーカー中で250rpmで、28℃で6〜8時間に亘って増殖させた。培養物のOD600を測定し、かつ培養物を、0.2のOD600になるまで希釈し、かつ同様の条件下でOD600が1〜2に達するまで増殖させた。細胞を、遠心分離(300rpm/5分/4℃)によりハーベストし、かつ誘導培地SG/R−CAA(10g/lの酵母窒素ベース、10g/lのカザミノ酸及び20g/lのガラクトース、10g/lのラフィノース、0.1g/lのロイシン、9.67g/lのNaHPO・2HO及び10.19g/lのNaHPO・7HO)中に再懸濁する。培養物を、2日間に亘ってシェーカー上で250rpmで、20℃での恒温保持により誘導し、かつ引き続いて分析及び分類した。
yFcabライブラリの定性的制御
yFabライブラリを、SDCAA培地での誘発の2日後における、その発現レベル及び発現されたyFabの質について試験した。この発現レベルは、ポリクローナル抗ヒトIgG−Fc抗血清(Sigma)を用いて試験した。この目的に関して、0.5×10e6個のライブラリ細胞を、1mlの出発バッファー(SB)中で希釈し、この場合、これは、2%BSAを含むPBSを含有する。細胞をペレット化し、かつ1/2000希釈された抗血清IgG−Fc−PE抗血清(Sigma)を含有する100μlのSBで30分に亘って氷上で染色し、2回に亘ってSBで洗浄し、かつ引き続いてFACS中で分析した。一般に、それぞれのライブラリ中の70〜80%のすべての細胞は、その細胞表面上でFcabsを発現する。Fcabsの正確なホールディングを試験するために、プロテインAを用いての染色を実施した。再度0.5×10e6個のライブラリ細胞を、1mlの染色バッファーSB中で希釈し、細胞をペレット化し、かつ1μg/mlのProt−A−FITC(Fluka)を含む100μlのSBを用いて、30分に亘って氷上で染色し、かつSBを用いて2回に亘って洗浄し、かつ引き続いてFACS中で分析した。一般に、上記に示すyFcabライブラリは、≧40%のProtAポジティブ細胞を示す。Fcabが、細胞表面上の二量体として発現するかどうかを試験するために、ヒトCD64での染色を実施した。CD64のアフィニティーは効率的なモノマー結合に関して極めて低く、したがって二量体を含むCD64複合体を使用する。この目的のために、例えば1μgの組み換えCD64(HIS−tagを含む(R&D System))を1μgの抗Penta HIS−Alexafluor488(Qiagen)と一緒に1mlのSB(全量)中で混合した。yFcabライブラリを、5×10e5細胞を100μlの複合帯混合物と一緒に氷上で30分に亘って恒温保持することにより、CD64との結合に関して試験し、この場合、コントロールとして、細胞を、等価の抗HIS−Alexafluor488単独で(SB中1/200の希釈)と一緒に恒温保持した。細胞の恒温保持の後に、細胞を2回に亘って氷冷SB中で洗浄し、かつFACS中で分析した。一般に、それぞれのライブラリ中の>50%のすべての細胞は、その細胞表面上で二量体Fcabsを発現する。
抗原(Her2)のビオチン化
組み換え抗原、例えばHer2(Bendermedsystems)を、製造元指示書にしたがって、Pierceのhe EZ Link systemで実施した。要するに、抗原をPBSで透析し、PBS中1mg/mlに希釈し、かつ10mMのスルホ−LC−LCビオチン(EZ link, Pierce)と一緒に混合し、この場合、このビオチンは予め水中に溶解されたものである。抗原とビオチンとの最終比は1:3であり、かつ混合物を室温で30分(30’)に亘って恒温保持した。いいかえれば、混合物をPBSに対してVivaspin MWCO3000 (Sartorius)カラムを用いて「透析」する(5×8’、4000rpm)。最終的に、ビオチン化された抗原(Her2)の濃度はHPLCにより試験され、かつアリコートを−20℃で貯蔵した。
ビオチン化抗原の質については、ELISAにより試験した。最初にプレートを抗−Her2抗体(例えばHerceptin)でPBS中10μg/mlで被覆し、引き続いて100μl/ウェルを4℃で一晩に亘って保持し、その後にこのプレートを3回に亘って洗浄バッファー(WB)(PBS+0.05%のTween20)で洗浄し、かつブロッキングバッファー(BB)(PBS+2%BSA)により室温でブロッキングした。3回に亘ってWBで洗浄した後に、異なる濃度のHer2−ビオチンを100μl/ウェルのBB中に添加して室温で1時間に亘って保持し、引き続いてWBで3回に亘って洗浄した。最終的にこのプレートを、BB中1:25000ストレプトアビジン−HRP(GE healthcare)を用いて室温で1時間に亘って恒温保持し、かつWBで3回に亘って洗浄した。色は、100μl/ウェルの基質TMS(sigma)を添加することにより生じ、〜10分後に、反応を、30%HSOの100μl/ウェルの添加により停止した。結果を、450〜630nmでELISAリーダーを用いて分析した。
例6:抗原特異的(Her2)Fcabsの製造
Fcas第1選択段階を用いての、抗原特異的(Her2)Fcabsの選択:
FACS分類の2日前において、2.5×10e8個の独立したFcabコロニーを含有する酵母ライブラリを、SG/R−CAA培地を用いて誘導し、上記に示すようにその細胞表面上にFcabsを発現させた。2日間後に、ライブラリの例えば10倍(=2.5×10e9)をカバーする細胞量を、500nMのビオチン化抗体(Her2)と一緒に、2mlのSB中で恒温保持した。その後に細胞を、冷SBを用いて1回洗浄し、引き続いて30分に亘って氷上でストレプトアビジン−PE(R&D systems)と一緒に恒温保持し、この場合、これは、SB中1:100で希釈されていた。この細胞を、2回に亘って氷冷SBを用いて洗浄し、かつ1×109細胞/mlの最終濃度に希釈した。100μl中5×10e6細胞/mlでのコントロール染色を、抗原の不含下でストレプトアビジン−PEのみで製造した。完全なライブラリ及びコントロール染色の双方を、BDからの例えばFACS ARIA中で分析した。コントロール細胞分類のためのゲートを調整するために使用した。第1のFSC/SSCゲート(G1)を健康な酵母細胞を同定するために設定し、G1からFSC面積に対するFSC幅をプロットし、かつ非凝集細胞のみを新規ゲート(G2)中で選択した。G2中の細胞を引き続いて、FL−2に対するFSCを用いて(PEチャネル)ストレプトアビジン−PEとの反応性に関して分析した。G3を、0.1%の(偽)ポジティブ細胞を含むように調整した。引き続いて、少なくとも5×10e8染色細胞(ライブラリサイズの2倍又は一般にそれ以上)を、前記設定で分析し、かつG3中の細胞を2〜3mlのSD−CAA培地を含むチューブに分類した。約5×10e5細胞(プール)を選択の第1段階中に収穫し、かつ1〜2日間に亘って増殖させ、その後に細胞は−80℃で貯蔵し、かつアリコートは、上記のようにFcabsの発現を誘導させることができる。さらに2日間後に、次の選択段階を実施することができる。
第2の選択段階
第1段階において選択されたプールを、上記に示すようにその表面上でFcabsを発現させるために誘発した。少なくとも5×10e6細胞(プールの多重コピーを含有する)を、500nMビオチン化抗体(Her2)を用いて1mlSB中で、氷上で30分に亘って恒温保持した。その後に細胞を冷SBを用いて1回洗浄し、引き続いて30分に亘って氷上で、SB中1:100に希釈されたストレプトアビジン−PE(R&D systems)を用いて2μg/mlのプロテインA−FTIC(Fluka)と一緒に恒温保持する。その後に細胞を2回に亘って氷冷SBを用いて洗浄し、かつ〜2×10e6の細胞/mlの最終濃度に希釈した。さらにコントロール染色をおこない、その際、100μlの細胞中の5×10e6細胞/mlのプールを、上記に示すようにして、ProtAとストレプトアビジン−PEの混合物と一緒に恒温保持するが、しかしながら、抗原(Her2)を用いての恒温保持はおこなわなかった。さらに、Fcab wtを発現する100μlの酵母クローン中の5×10e5細胞(非ランダム化Fcフラグメント)を、ストレプトアビジンの不含下で、上記に示すようにしてProt−A FITCで染色した。Fcab−wt発現細胞を、例えばBDからのFACS面積中で分析し、分類のためのゲートを調整した。第1のFSC/SSCゲートG1は、健康な酵母細胞を同定するために調製し、G1からFSC面積に対するFSC幅をプロットし、かつ非凝集細胞のみを新規ゲート(G2)中で選択する。
G2中の細胞を引き続いて、FL−1に対するFSCを用いて、プロテインA発現に関して分析する。G3は強いProtAポジティブ細胞(親ゲートの5060%)をカバーするように調整し、かつG4は弱いProtAポジティブ細胞(親ゲートの20〜30%)をカバーするように調整した。G3+G4は、G2中のすべての細胞の約70〜80%を含むものであってもよい。ここで、ProtA−FITCの存在下で、ストレプトアビジン−PEに関して染色されたプール細胞を、分類ゲートの残りを調整するために使用する。最初に、G1及びG2を、プール細胞を用いてチェックし、かつ必要に応じて調整した。プール細胞はG3中ではあまり存在せず、さらにG4においても同様であり、この場合、これは、プール1中のすべての細胞がFcabsを発現するものではないことを示し、これは、Fcab−wtとしてフォールドされる。コントロール染色されたプール細胞を使用して、新規ゲートをG3及びG4の双方に関して製造した。新規ゲートは、プロットFSC及びFL−2(PE)中で設定した。ゲート(G5)を、G3中の0.1%(偽)ストレプトアビジンポジティブ細胞を含むように準備し、かつ同様に、G4中の細胞についてもおこない、G6を得た。次の工程において、Her2ビオチン+ストレプトアビジン−PE及びProtA−FITCに関して染色された、少なくとも5×10e6細胞を、FACS−ARIAにより分類した。細胞を、2〜3mlの酵母培養培地を含む別個のチューブ中に、G5(プール2.1及びG6(プール2.2))から捕集する。10〜1000クローンが、双方のゲートから予測されてもよい。双方の新規プールを、1又は2日間に亘って増殖させ、かつ−80℃で貯蔵した。2.1及び2.2からの細胞を、第3段階中のさらなる直接的分類のために使用してもよいか、あるいは、これらはFACS中でのさらなる分類前にABループ(アフィニティー突然変異)の付加的なランダム化の段階をおこなってもよい(好ましくは、2個のクローンを再度一緒に混合した後に)。
選択されたクローン/プールに関するアフィニティー突然変異
アフィニティー突然変異のために、多様度(diversity)を選択されたクローン中又は選択されたクローンのプール中にABループ中に導入した。この目的のために、PCRを、変性コドンを位置259、360及び361(EU番号付け)で含む、以下のプライマー;
Figure 0005602625
を用いておこなうか、あるいは、二者択一的に、
変性コドンを位置358、359、360、361及び362(EU番号付け)を含む、以下のプライマー
Figure 0005602625
を用いておこなう。これらのPCRs中で使用された第2プライマーは、双方の場合においてgapfcs3である。酵母中の有効なギャップ修復のためのフランキング配列を生じさせるために、得られたPCR産物をさらに、プライマー対gapch35及びgapfsc3を用いて増幅し、かつ引き続いてSaccharomyces cerevisiae菌株EBY100中に、上記に示すようにXhoI切断されたpYD1CH12と一緒に、酢酸リチウム形質転換によって形質転換した。ABループ中の記載された残基のランダム化のための代替的プライマーとして、例えばAbmut1L
Figure 0005602625
又はAbmutlR
Figure 0005602625
をさらに使用することができる。同様の方法で、EFループ中の残基を、例えば全ランダム化によってか、あるいは、プライマーとしてスパイクト(spiked)オリゴヌクレオチドを用いてのランダム化によって、あるいは、類似の突然変異技術によってランダム化することができる。Abmutプライマーは、それぞれのクローンの8000個の新規変異体(プール2.3)を生じさせ、かつAbmut2LRプライマーは、3×10e6個の新規変異体(プール2.4)を導く。したがって、プール2.3及び2.4の双方は、約10e8の新規ライブラリを独立して生じるが、それというのも、出発材料(プール2.1+2.2)はすでに約10〜1000クローンを含有しているためである。
第3の選択段階
アフィニティー突然変異されたプール2.3及び2.4及び必要に応じて、プール2.1(ProtAポジティブ細胞のみが好ましい)は、上記に示すようにその細胞表面上でFcabsを発現するために誘導され、かつ引き続いて「第2の選択段階」に関して記載されたようにして分類するが、但し、プール2.3及び2.4がより大きく、かつしたがって、プールに関する染色体積量は、「第1の選択段階」中で記載されたライブラリ染色のものと同等である。第3の選択段階において、Her2ポジティブ/ProtAポジティブ細胞のみが分類された。これらの選択から誘導されたプールは、典型的には、>20%のHer2/ProtAポジティブ細胞を含有する。そうでない場合には、ProtA及びHer2を組み合わせる選択の第4及び第5(又はそれ以上)の段階を実施することができる。
クローン分析
Her2/ProtA細胞(>20%が好ましい)を含有するプールからの独立した細胞は、SD−CAA培地を含むアガープレート上へのプールのプレーティングによってか、あるいは、単一細胞(=クローン)をFaCS ARIAから直接的に、プールを製造することなしにプレート上において分類することにより製造する。クローンは増殖させることができ、かつ、液体培養物中に移し、かつ−80℃で貯蔵することができる。クローンのアリコートは、引き続いて上記に示すようにその細胞表面上にFcabsを発現させるために誘導し、かつFACS中でいくつかのパラメータについてスクリーニングした。これらのパラメータは:ProtA−FITCの存在下又は不含下で、選択(Her2)のために使用された抗原の用量応答範囲であってもよく、この場合、CD64染色は上記とおりである。さらに、類似の染色プロトコールを使用して、いくつかの関係のないビオチン化抗原をスクリーニングして、非交差反応Fcabsを同定することができる。
抗原(Her2)+ProtAポジティブ細胞を選択するいくつかの段階の後に、500nM抗体(Her2)で染色した場合には、>25%の抗原(Her2)ポジティブを示し、かつ2μg/mlのProtA−FITCで染色した場合には>70%のProtAポジティブを示す。最も多くの場合において、これらのクローンは、さらに>50%のCD64結合を示すものであってもよい。したがって、非ランダム化Fcフラグメント(Fcab wt)のProtA及びCD64レベルの模擬(mimicking)は、酵母上に発現された。
これにより、前記に示すような特性を有し、前記に示すように選択されたクローンは、可溶性分子として製造することが容易である。これは、FcabDNAの新規ホスト細胞への一時的トランスフェクション又は安定なトランスフェクションによっておこなうことができる。この目的のために、個々の酵母細胞からのDNAは、標準的方法を用いて単離される。完全なCH3ドメイン又はCH3ドメインの一部のみをコードする相当するDNAは、この場合、ライブラリ中でランダム化されており、PCRにより増幅され、かつFcabの欠失部分+適したプロモーター及び多くの選択マーカーの一つ、例えばG418を含有する新規発現ベクター中にトランスフェクトされ、これにより、非トランスフェクト細胞のプールからのトランスフェクトされた細胞の選択を可能にする。新規ベクターは、その後に、例えば、新規ホスト細胞、たとえばHEK293又はCHO中に一時的にトランスフェクトする。ホスト細胞は捕集可能であり、引き続いて数日間に亘って培養する。培養物の上清は、例えばProtAの精製あり又は精製なしで、さらなる試験のために使用することができる可溶性Fcabを含有する。適した細胞系は、さらに標準的方法によって製造することができる。
Figure 0005602625
例7:4D5Fabの酵母ディスプレイ
酵母上のFabフラグメントのディスプレイのために、酵母ディスプレイベクターpYD1(Invitrogen)(配列番号72)は、以下のようにして改質化する:
NheI制限部位は、部位指定突然変異によって位置581/586で導入され、改質化されたベクターpYD1Nhe(配列番号73)が得られる。このベクターをNheI及びPmeIを用いて制限し、3個のフラグメントが得られる。最も長いフラグメントは、残りのベクター骨格であり、その中に、合成オリゴヌクレオチドリンカーが挿入され、ベクターpYD1lnk(配列番号74)が得られた。MaTα転写末端領域を含むカセットは、その後にPCRにより、ベクターpYD1から増幅され、かつBamHI及びPstI制限を介してpYD1lnk中にクローニングし、かつライゲートした。得られるベクターはpYD1mata(配列番号75)である。GAL1プロモーター、Aga2をコードする遺伝子及びNotI及びSfiIクローニング部位を有する合成リンカーを含むカセットを、PCRによりpYD1から増幅し、かつ、EcoRI及びPacI制限を介してpYD1mata中にクローニングして、ベクターpYD1gal(配列番号76)が得られる。
酵母上でディスプレイすべきFabの例として、それぞれ抗体4D5(Herceptin)のVH−CH1及びVL−CLをコードする遺伝子を合成的に製造する(配列4D5H(配列番号77)及び4D5L(配列番号78))。
4D5Hは、SfiI及びNotI制限部位によってフランキングされ、かつベクターpYD1gal中にクローニングし、ベクターpYD4D5hc(配列番号79)が得られる。このベクターにおいて、4D5HのN−末端は、Aga2のC−末端と融合し、かつ4D5HのC−末端で、ヘキサヒスチジンtagと結合し、終止コドンが続く。4D5のVH−CH1のアミノ酸配列は、4D5hp中に示されている(配列番号80)。
4D5Lは、NcoRI及びAscI制限部位によりフランキングされ、かつベクターpYD4D5hc中にクローニングし、ベクターpYD4D5hl(配列番号81)を得た。4D5Lは、Aga2分泌シグナルに先行し、かつCLドメインのC−末端システイン残基後に終止コドンを有する。4D5のVL−CLのアミノ酸配列は、4D5lp中に示す(配列番号82)。
4D5Fabのディスプレイのために、ベクターpYD4D5hlを酵母菌株EBY100(Invitrogen)中に形質転換し、この形質転換体をトリプロファンを含まない最少培地上で選択し、かつ組み換えタンパク質の発現を、標準的プロトコール(Invitrogen)にしたがって、ガラクトース含有培地上で増殖させることにより誘導する。
例8:4D5FabのCLドメインの構造的ループ中のランダム化された残基を有するライブラリの構築
酵母ディスプレイライブラリ構築における最初の工程として、野生型CL(Cκ)ドメインを、ディスプレイベクターpYD4D5hlから、制限酵素BsiWI及びAscIを用いて切り出した。BsiWI及びAscI部位によりフランキングされたヒトCκドメインをコードする合成遺伝子(pYD4D5hlによる内容)が製造され、その際、ランダム突然変異及び挿入のそれぞれを、ABループ及びEFループ中に導入する。この特別な実施例において、3、4又は5個のNNBコドンの挿入は、ヒトCκドメインのアミノ酸位置16及び17との間でおこなわれ、かつ残基位置92、93、94、95、97、98及び99を、NNBコドンにより置換する(IMGT番号付け、図2参照)。NNBコドンは、全4個のヌクレオチドを、位置1及び2で、かつC、G及びTを位置3で含有する。したがってNNBは、20個の天然にコードされるアミノ酸すべてをコードするものである。
ライブラリを製造し、かつ以下の標準的な方法により選択する。
スカフォールドリガンドとして、CDR標的Her2neu及び4D5エピトープを使用する。ライブラリのこれらの要素は、本発明による細胞毒性モジュラー抗体の製造のために選択され、この場合、これは、CLドメイン中に工学的に作成される結合部位を有し、この場合、これはエフェクター分子、例えばFcγレセプター又は半減期延長タンパク質、例えば血清タンパク質と特異的に結合する。生じるFabは、(i)Kd<10−8M及びIC50<10−8Mを有するHer2neu結合、及び(ii)CDC及び/又はADCCアッセイを用いてのエフェクター機能について試験し、かつ、代替的にアルブミン結合を測定する。

Claims (8)

  1. 標的及びスカフォールドリガンドに結合するモジュラー抗体ドメインのオリゴマーを製造する方法において、その際、このスカフォールドリガンドは、モジュラー抗体ドメインのオリゴマーの標的特異性にかかわらず、モジュラー抗体ドメインのオリゴマー骨格と結合するものであり、かつ前記モジュラー抗体ドメインのオリゴマーが抗原結合Fcフラグメントであって:
    (a)モジュラー抗体ドメインのオリゴマーのライブラリを提供し、その際、標的及びスカフォールドリガンドと結合するモジュラー抗体ドメインのオリゴマーをディスプレイする遺伝子パッケージが、
    (i)遺伝子パッケージを提供し、その際、遺伝子パッケージが酵母であり、かつ、
    (ii)少なくとも2種のドメインを前記パッケージの外表面に融合によりディスプレイすることを含む、方法によって製造され、
    (b)前記スカフォールドリガンドの存在下で、前記ライブラリと前記標的とを接触させ、
    (c)前記スカフォールドリガンドの存在下で、前記標的と結合するライブラリ要素を選択し、かつ、
    (d)モジュラー抗体ドメインの機能的オリゴマーを製造する、
    工程を含む、前記方法。
  2. 前記ライブラリが、モジュラー抗体ドメインのオリゴマーを発現する少なくとも10 個の独立したクローンを含有する、請求項1に記載の方法。
  3. カフォールドリガンドがエフェクター分子、FcRn、プロテインA及びプロテインGから成る群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
  4. エフェクター分子が、CD64、CD16、CD32及びFcレセプターから成る群から選択される、請求項3に記載の方法。
  5. 前記モジュラー抗体ドメインの機能的オリゴマーが、Kd<10−8Mの標的抗原結合アフィニティーを有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記標的が、erbBクラスのレセプターである、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
  7. モジュラー抗体のアフィニティーを、アフィニティー突然変異によって増加させる、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
  8. モジュラー抗体のアフィニティー突然変異による変異体が得られ、この変異体が、前記標的との結合アフィニティーの少なくとも10倍の増加を示す、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法
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