JP5598307B2 - 無機質絶縁被膜付き電磁鋼板 - Google Patents

無機質絶縁被膜付き電磁鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、クロム化合物の含有なしでも耐食性および耐水性の劣化がなく、また耐粉吹き性、耐疵付き性、耐スティッキング性、Tig溶接性および打抜性に優れ、しかも歪取り焼鈍後の被膜外観の均一性にも優れた無機質絶縁被膜付き電磁鋼板に関するものである。
モータや変圧器等に使用される電磁鋼板の絶縁被膜には、層間抵抗だけでなく、加工成形時の利便さおよび保管、使用時の安定性など種々の特性が要求される。電磁鋼板は多様な用途に使用されるため、その用途に応じて種々の絶縁被膜の開発が行われている。電磁鋼板に打抜加工、せん断加工、曲げ加工などを施すと残留歪みにより磁気特性が劣化するが、劣化した磁気特性を回復させるために750〜850℃程度の温度で歪取り焼純を行う場合が多い。この場合には絶縁被膜が歪取り焼鈍に耐え得るものでなければならない。
電磁鋼板の絶縁被膜は、大別して
(1) 溶接性、耐熱性を重視し、歪取り焼鈍に耐える無機被膜、
(2) 打抜性、溶接性の両立を目指し歪取り焼鈍に耐える樹脂含有の無機被膜(半有機被膜ともいう)、
(3) 特殊用途で歪取り焼鈍不可の有機被膜
の3種類に分類される。
上記した3種類の絶縁被膜のうち、(1)のタイプの無機被膜としては、特許文献1に、 クロム酸塩、重クロム酸塩、リン酸塩、縮合リン酸塩、二酸化ケイ素(シリカ)およびケイ酸塩のうち、単独もしくは2種以上の組み合わせから構成される絶縁被膜が提案されている。
かかる無機被膜は、打抜性には若干の問題があるものの、絶縁性、溶接性および耐熱性に優れていることから、特に耐テンションパッド性が求められる用途に好適に用いられている。
上述したとおり、従来の無機被膜は、クロム化合物を含有しているため、その使用時にCrが溶出して環境を害するおそれがある。そのため、昨今の環境意識の高まりに伴って、電磁鋼板の分野においてもクロム化合物を含まない絶縁被膜を有する製品が需要家等から望まれていた。
しかしながら、被膜中のクロム化合物は、被膜の耐食性および耐水性に有効に寄与するため、クロム化合物を削除した場合にはこれらの特性の劣化が懸念される。
特開2002−294464号公報
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、クロム化合物を含有せず、従って環境の劣化を伴わずに、耐食性および耐水性の劣化を防止し、また耐粉吹き性、耐疵付き性、耐スティッキング性、Tig溶接性および打抜性に優れ、さらには歪取り焼鈍後の被膜外観の均一性にも優れた無機質絶縁被膜付き電磁鋼板を提案することを目的とする。
さて、本発明は、上記の目的を達成するために、無機質被膜の成分について綿密な検討を行った。
その結果、Zr化合物と、Si化合物とくに板状シリカを含むSi化合物、さらにはB化合物とを、適正な割合で複合含有させることにより、所期した目的が有利に達成されることの知見を得た。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.表面に、Zr化合物および板状シリカを含むSi化合物を含有する無機被膜をそなえる電磁鋼板であって、
該無機被膜の全固形分質量に対する、Zr化合物の割合がZrO2換算で15〜75質量%、板状シリカを含むSi化合物の割合がSiO2換算で25〜85質量%であることを特徴とする無機質絶縁被膜付き電磁鋼板。
2.表面に、Zr化合物、B化合物および板状シリカを含むSi化合物を含有する無機被膜をそなえる電磁鋼板であって、
該無機被膜の全固形分質量に対する、Zr化合物の割合がZrO2換算で10〜74.9質量%、B化合物の割合がB23換算で0.1〜5質量%、板状シリカを含むSi化合物の割合がSiO2換算で25〜85質量%であることを特徴とする無機質絶縁被膜付き電磁鋼板。
3.前記板状シリカの平均粒子径が10〜600nmであることを特徴とする前記1または2に記載の無機質絶縁被膜付き電磁鋼板。
4.前記板状シリカのアスペクト比(長さ/厚み比)が2〜400であることを特徴とする前記1ないし3のいずれかに記載の無機質絶縁被膜付き電磁鋼板。
5.前記無機被膜中に、さらに硝酸化合物(NO3換算)、シランカップリング剤(固形分換算)およびリン化合物(P25換算)のうちから選んだ一種または二種以上を、乾燥被膜中における比率で30質量%以下で含有することを特徴とする前記1ないし4のいずれかに記載の無機質絶縁被膜付き電磁鋼板。
本発明によれば、耐粉吹き性、耐疵付き性、耐スティッキング性、Tig溶接性および打抜性に優れるのはいうまでもなく、クロム化合物を含有していなくても耐水性や耐食性の劣化がなく、しかも歪取り焼鈍後の被膜外観の均一性にも優れた無機質絶縁被膜付き電磁鋼板を得ることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、被膜の必須成分であるZr化合物および板状シリカを含むSi化合物、さらにはB化合物の配合割合を前記の範囲に限定した理由について説明する。
なお、これらの成分の質量%は、絶縁被膜の全固形分質量に対する割合である。ここに、全固形分質量とは、電磁鋼板表面に形成した被膜の乾燥後の付着量であり、アルカリ剥離による被膜除去後の重量減少から測定することができる。
Zr化合物:ZrO2換算で15〜75質量%
Zr化合物は、酸素との結合力が強く、Fe表面の酸化物、水酸化物などと強固に結合することができる。また、Zr化合物は3つ以上の結合手を持つため、Zr同士、もしくは他の無機化合物とネットワークを形成することでクロムを使用することなく強靭な被膜を形成することができる。しかしながら、乾燥被膜中の全固形分質量に対する割合が、ZrO2換算で15質量%に満たないと密着性が劣化し、耐食性、耐粉吹き性、耐疵付き性、打抜性が劣化するだけでなく、Si化合物に起因した焼鈍後外観の劣化を招く。一方、75質量%を超えると耐食性および耐粉吹き性が劣化し、また歪取り焼鈍板での耐キズ性も劣化する。それ故、Zr化合物はZrO2換算で15〜75質量%の範囲に限定した。
かようなZr化合物としては、例えば、酢酸ジルコニウム、プロピオン酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムカリウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、リン酸ナトリウムジルコニウム、六フッ化ジルコニウムカリウム、テトラノルマルプロポキシジルコニウム、テトラノルマルブトキシジルコニウム、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシステアレート等が挙げられる。これらは、単独添加は勿論のこと、2種以上複合して用いることもできる。
板状シリカを含むSi化合物:SiO2換算で25〜85質量%
本発明の板状シリカは、葉状シリカや鱗片状シリカとも呼ばれるもので、SiO2の薄層が多数積層された層状珪酸構造を有している。そして、かかる板状シリカとしては、非結晶性または微結晶性を有するものが好ましい。かような板状シリカは、一般的なシリカ粒子たとえばコロイダルシリカ等と比較して、層状の形態をとるために腐食物質透過抑制性に優れ、さらに水酸基が多いために密着性に優れ、かつ軟質であることから滑り性に優れる。このため、耐食性や打抜性の向上により効果的である。
板状シリカは、薄層の一次粒子が積層した凝集粒子を作製し、この凝集粒子を粉砕することによって得ることができる。
ここに、板状シリカの平均粒子径は10〜600nm程度とすることが好ましい。より好ましくは100〜450nmの範囲である。また、かかる板状シリカのアスペクト比(長さ/厚み比)は2〜400程度とすることが好ましい。より好ましくは10〜100の範囲である。
上記した板状シリカを含むSi化合物は、Zr化合物を単独で添加した場合の問題の解決に有用である。すなわち、Zr化合物を単独で用いた場合には耐食性や耐粉吹き性が劣化し、歪取り焼鈍板での耐キズ性も著しく劣化する傾向が見られたが、かようなSi化合物を適量配合することによって、耐粉吹き性や耐キズ性を大幅に改善することができる。
ここに、かかるSi化合物の含有量が、乾燥被膜の全固形分質量に対するSiO2換算値で25質量%に満たないと十分な耐食性が得られず、一方85質量%を超えるとSi化合物が軟質なため耐粉吹き性、耐疵付き性、打抜性が劣化し、また歪取り焼鈍板での耐疵付き性も劣化するので、Si化合物は25〜85質量%の範囲に限定した。
板状シリカ以外のSi化合物としては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、アルコキシシランおよびシロキサン等が挙げることができ、これらは耐食性や歪取り焼鈍後の密着性の向上に寄与する。
上記した板状シリカのSi化合物全体における配合割合が50質量%に満たないと、本発明で目指したほど良好な耐食性および打抜性が得られないので、板状シリカの配合割合は50質量%以上とすることが好ましい。勿論、Si化合物が全て板状シリカであってもよい。特に好適な範囲は50〜100質量%の範囲である。
また、本発明では、上記したZr化合物や板状シリカを含むSi化合物の他に、無機成分として、さらにB化合物を含有させることもできる。
B化合物:B23換算で0.1〜5質量%
B化合物は、Zr化合物を単独で添加した場合の問題の解決に顕著な効果を示す。すなわち、Zr化合物を単独で添加した場合には耐食性や耐粉吹き性が劣化し、また歪取り焼鈍板での耐疵付き性が著しく劣化する傾向が見られた。この理由は、Zr化合物単独では、焼付けた際の体積収縮が大きいために被膜割れが生じやすく、部分的に素地が露出する箇所が発生するためと考えられる。
これに対し、B化合物をZr化合物に適量配合することにより、Zr単独の場合に発生していた被膜割れが効果的に緩和され、耐粉吹き性を著しく改善することができる。Zr化合物とSi化合物を併用した場合にも同様なB化合物の効果が認められる。
ここに、B化合物の乾燥被膜中における比率がB23換算で0.1質量%以上であればその添加効果を有し、一方5質量%以下であれば被膜中の未反応物が残存することがなく、歪取り焼鈍後に被膜同士が融着する不具合(スティッキング)が発生しないので、B化合物はB23換算で0.1〜5質量%の範囲とすることが好ましい。
かようなB化合物としては、ホウ酸、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、メタホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム等が挙げられ、これらを単独または複合して使用することができる。しかしながら、これらに限定されるものではなく、例えば、水に溶けてホウ酸イオンを生じさせるような化合物でもよく、またホウ酸イオンは直線型や環状に重合していてもよい。
なお、かようなB化合物を含有させる場合には、Zr化合物に代えて含有させる。従って、B化合物を含有させる場合におけるZr化合物の適正含有量は、10〜74.9質量%となる。
また、本発明では、上記したZr化合物や板状シリカを含むSi化合物、さらにはB化合物の他に、以下に述べる硝酸化合物、シランカップリング剤およびリン化合物のうちから選んだ一種または二種以上を合計で、乾燥被膜中における比率で30質量%以下で含有させることもできる。なお、硝酸化合物、シランカップリング剤およびリン化合物の乾燥被膜中における比率は、それぞれNO3換算(硝酸化合物)、固形分換算(シランカップリング剤)およびP25換算(リン化合物)で示したものである。
かような硝酸化合物、シランカップリング剤およびリン化合物は、耐食性および耐キズ性の改善に有効に寄与するが、乾燥被膜中における比率が30質量%以下であると、未反応物が被膜中に残存することがなく耐水性を低下させないので、含有量は30質量%以下とすることが好ましい。なお、これらの成分の効果を十分に発揮させるには、乾燥被膜中における比率で1質量%以上含有させることが好ましい。
本発明において、硝酸化合物としては、以下に示すような硝酸系および亜硝酸系が有利に適合する。
・硝酸系
硝酸(HNO3)、硝酸カリウム(KNO3)、硝酸ナトリウム(NaNO3)、硝酸アンモニウム(NH4NO3)、硝酸カルシウム(Ca(NO3)2)、硝酸銀(AgNO3)、硝酸鉄(II)(Fe(NO3)2)、硝酸鉄(III)(Fe(NO3)3)、硝酸銅(II)(Cu(NO3)2)、硝酸バリウム(Ba(NO3)2)、硝酸アルミニウム(Al(NO3)3)、硝酸マグネシウム(Mg(NO3)2)、硝酸亜鉛(Zn(NO3)2)、硝酸ニッケル(II)(Ni(NO3)2)、硝酸ジルコニウム(ZrO(NO3)2)。
・亜硝酸系
亜硝酸(HNO2)、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸銀、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸エチル、亜硝酸イソアミル、亜硝酸イソブチル、亜硝酸イソプロピル、亜硝酸−t−ブチル、亜硝酸−n−ブチル、亜硝酸−n−プロピル。
また、シランカップリング剤としては、以下に示すものが有利に適合する。
・ビニル系
ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン。
・エポキシ系
2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン。
・スチリル系
p−スチリルトリメトキシシラン。
・メタクリロキシ系
3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン。
・アクリロキシ系
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン。
・アミノ系
N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミンとその部分加水分解物、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、特殊アミノシラン。
・ウレイド系
3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン。
・クロロプロピル系
3−クロロプロピルトリメトキシシラン。
・メルカプト系
3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン。
・ポリスルフィド系
ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド。
・イソシアネート系
3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン。
さらに、リン化合物としては、以下に示すようなリン酸およびリン酸塩が有利に適合する。
・リン酸
オルトリン酸、無水リン酸、直鎖状ポリリン酸、環状メタリン酸。
・リン酸塩
リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛、リン酸アンモニウム。
なお、本発明では、無機成分中に、不純物としてHfやHfO2、TiO2、Fe23などが混入することがあるが、これらの不純物の総量が乾燥被膜中1質量%以下であれば、特に問題は生じない。
さらに、本発明では、上記した成分の他、通常用いられる添加剤や、その他の無機化合物や有機化合物の含有を妨げるものではない。
ここに、添加剤は、絶縁被膜の性能や均一性を一層向上させるために添加されるもので、界面活性剤や防錆剤、潤滑剤、酸化防止剤等が挙げられる。なお、かかる添加剤の配合量は、十分な被膜特性を維持する観点から、絶縁被膜の全固形分質量に対して10質量%以下とすることが好ましい。
本発明において、素材である電磁鋼板としては、特に制限はなく、従来から公知のものいずれもが適合する。
すなわち、磁束密度の高いいわゆる軟鉄板(電気鉄板)やSPCC等の一般冷間鋼板、また比抵抗を上げるためにSiやAlを含有させた無方向性電磁鋼板などいずれもが有利に適合する。
次に、絶縁被膜の形成方法について説明する。
本発明では、素材である電磁鋼板の前処理については特に規定しない。すなわち、未処理でもよいが、アルカリなどの脱脂処理、塩酸、硫酸、リン酸などの酸洗処理を施すことは有利である。
そして、この電磁鋼板の表面に、Zr化合物および板状シリカを含むSi化合物、そしてB化合物、さらには硝酸化合物、シランカップリング剤およびリン化合物のうちから選んだ一種または二種以上や、必要に応じて添加剤等を、所定の割合で配合した処理液を塗布し、焼き付けることにより絶縁被膜を形成させる。絶縁被膜用処理液の塗布方法は、一般工業的に用いられるロールコーター、フローコーター、スプレー、ナイフコーター等種々の方法が適用可能である。また、焼き付け方法についても、通常実施されるような熱風式、赤外式、誘導加熱式等が可能である。焼付け温度も通常レベルであればよく、到達鋼板温度で150〜350℃程度であればよい。
本発明の絶縁被膜付き電磁鋼板は、歪取り焼鈍を施して、例えば、打抜き加工による歪みを除去することができる。好ましい歪取り焼鈍雰囲気としては、N2雰囲気、DXガス 雰囲気などの鉄が酸化されにくい雰囲気が推奨される。ここで、露点を高く、例えばDp:5〜60℃程度に設定し、表面および切断端面を若干酸化させることで耐食性をさらに向上させることができる。また、好ましい歪取り焼鈍温度としては700〜900℃、より好ましくは700〜850℃である。歪取り焼鈍温度の保持時間は長い方が好ましいが、2時間以上がより好ましい。
無機質絶縁被膜の付着量は特に限定しないが、片面当たり0.05〜5g/m2程度とすることが好ましい。付着量、すなわち本発明の絶縁被膜の全固形分質量は、アルカリ剥離による被膜除去後の重量減少から測定することができる。また、付着量が少ない場合にはアルカリ剥離法によって付着量を測定した、付着量が既知の標準試料を用いて、蛍光X線分析によるBまたはSiの検出強度と付着量の関係を被膜組成毎に求めておき、この検量線に基づきBまたはSiの蛍光X線分析強度を被膜組成に応じた付着量に換算し求めることができる。付着量が0.05g/m2 以上であれば、耐食性と共に絶縁性を満足することができ、一方5g/m2以下であれば 、密着性が向上するだけでなく、塗装焼付時にふくれが発生せず塗装性の低下を招くことがない。より好ましくは0.1〜3.0g/m2である。絶縁被膜は鋼板の両面にあることが好ましいが、目的によっては片面のみでも構わない。また、目的によっては片面のみ施し、他面は他の絶縁被膜としても構わない。
以下、本発明の効果を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
乾燥後の絶縁被膜の全固形分質量に対する割合が表1−1,表1−2に示す割合になるように、Zr化合物および板状シリカを含むSi化合物、さらには硝酸化合物、シランカップリング剤、リン化合物や添加剤を、脱イオン水に添加し、処理液とした。なお、脱イオン水量に対する添加濃度は50g/lとした。
これらの各処理液を、板厚:0.5mmの電磁鋼板「A230(JIS C 2552(2000))」から幅:150mm、長さ:300mmの大きさに切り出した試験片の表面にロールコーターで塗布し、熱風焼付け炉により表1−1,表1−2に示す焼付け温度(到達鋼板温度)で焼付けした後、常温に放冷して、両面に絶縁被膜を形成した。
かくして得られた無機質絶縁被膜付き電磁鋼板の耐食性、耐粉吹き性および打抜性について調べた結果を、表2に示す。
さらに、窒素雰囲気中にて750℃、2時間の歪取り焼鈍を行ったのちの耐疵付き性、耐スティッキング性、Tig溶接性、耐水性および歪取り焼鈍後の外観について調査を行い、得られた結果を表2に併記する。
また、Zr化合物の種類は表3に、Si化合物の種類は表4に、リン化合物および硝酸化合物の種類は表5に、そしてシランカップリング剤の種類は表6に、それぞれ示したとおりである。
なお、各特性の評価方法は次のとおりである。
<耐食性>
供試材に対して湿潤試験(50℃、相対湿度≧98%)を行い、48時間後の赤錆発生率を目視で観察し、面積率で評価した。なお、錆び発生面積率とは、目視による観察全面積に対する、錆び発生面積の合計の百分率である。
(判定基準)
◎:赤錆面積率 20%未満
○:赤錆面積率 20%以上、40%未満
△:赤錆面積率 40%以上、60%未満
×:赤錆面積率 60%以上
<耐粉吹き性>
試験条件:フェルト接触面幅20mm×10mm、荷重:0.4MPa(3.8kg/ cm2)、被膜表面を150回単純往復。試験後の擦り跡を目視観察し、被膜の剥離状態 および粉吹き状態を評価した。
(判定基準)
◎:ほとんど擦り跡が認められない
○:若干の擦り跡および若干の粉吹きが認められる程度
△:被膜の剥離が進行し擦り跡および粉吹きがはっきりわかる程度
×:地鉄が露出するほど剥離し粉塵が甚大
<耐疵付き性>
試験条件:焼鈍未実施サンプルおよびN2雰囲気中に750℃で2時間保持して焼鈍したサンプル表面を鋼板せん断エッジで引っかき、キズ、粉吹きの程度を目視にて判定した。
(判定基準)
◎:キズ、粉吹きの発生がほとんど認められない
○:若干の擦り跡および若干の粉吹きが認められる程度
△:擦り跡および粉吹きがはっきりわかる程度
×:地鉄が露出するほど剥離し粉塵が甚大
<耐スティッキング性>
50mm角の供試材10枚を重ねて荷重:20kPa(200g/cm2)をかけながら窒素雰囲気下で750℃,2時間の条件にて焼鈍を行った。ついで、供試材(鋼板)上に500gの分銅を落下させ、5分割するときの落下高さを調査した。
(判定基準)
◎:10cm以下
○:10cm超、15cm以下
△:15cm超、30cm以下
×:30cm超
<打抜性>
供試材に対して、15mmφスチールダイスを用いて、かえり高さが50μmに達するまで打ち抜きを行い、その打ち抜き数で評価した。
(判定基準)
◎:100万回以上
○:50万回以上、100万回未満
△:10万回以上、50万回未満
×:10万回未満
<Tig溶接性>
供試材を30mmの厚みになるように9.8MPa(100kgf/cm2)の圧力にて積層し、その端部に対して、次の条件でTIG溶接性を実施した。
・溶接電流:120A
・Arガス流量:6リットル/min
・溶接速度:10、20、30、40、50、60、70、80、90、100cm/m in
(判定基準)
ブローホールの数が1ビードにつき5個以下を満足する最大溶接速度で優劣を判定した。
◎:60cm/min以上
○:40cm/min以上、60cm/min未満
△:20cm/min以上、40cm/min未満
×:20cm/min未満
<耐水性>
供試材を、沸騰水蒸気中に30分暴露させ、外観変化を目視観察した。
(判定基準)
◎:変化なし
○:目視で若干の変色が認められる程度
△:目視で変色がはっきり認められる程度
×:被膜溶解
<歪取り焼鈍後の外観>
供試材に対して、N2雰囲気中にて750℃,2時間保持後、常温まで冷却した鋼板の 外観を目視観察した。
(判定基準)
◎:焼鈍後の外観が完全に均一な場合
○:焼鈍後の外観にムラが認められる場合
△:焼鈍後の外観に斑模様が認められる場合
×:焼鈍後の外観に顕著な斑模様が認められる場合
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表2に示したとおり、本発明に従い得られた無機質絶縁被膜付き電磁鋼板はいずれも、耐食性、耐粉吹き性および打抜性に優れるのはいうまでもなく、歪取り焼鈍後の耐疵付き性、耐スティッキング性、Tig溶接性および耐水性に優れ、さらには歪取り焼鈍後の外観にも優れていた。
これに対し、Zr化合物が適正範囲から外れた比較例1,2は、耐食性、耐粉吹き性および焼鈍後耐疵付き性に劣っていた。特に比較例1は、焼鈍後外観にも劣っていた。
また、Si化合物が下限に満たない比較例3は、耐食性に劣り、一方Si化合物が上限を超えた比較例4は、耐粉吹き性、焼鈍後耐疵付き性に劣っていた。
さらに、硝酸化合物やシランカップリング剤、リン化合物を適正範囲を超えて多量に含有させた比較例5〜11はいずれも、歪取り焼鈍後の耐水性に劣っていた。
実施例2
乾燥後の絶縁被膜の成分が表7−1,表7−2に示す割合になるように、Zr化合物、B化合物および板状シリカを含むSi化合物、さらには硝酸化合物、シランカップリング剤、リン化合物や添加剤を、脱イオン水に添加し、処理液とした。なお、脱イオン水量に対する添加濃度は50g/lとした。
これらの各処理液を、板厚:0.5mmの電磁鋼板〔A230(JIS C 2552(2000))〕から幅:150mm、長さ:300mmの大きさに切り出した試験片の表面にロールコーターで塗布し、熱風焼付け炉により表7−1,表7−2に示す焼付け温度(到達鋼板温度)で焼付けした後、常温に放冷して、絶縁被膜を両面に形成した。
かくして得られた無機質絶縁被膜付き電磁鋼板の耐食性、耐粉吹き性および打抜性について調べた結果を、表8に示す。
さらに、窒素雰囲気中にて750℃、2時間の歪取り焼鈍を行ったのちの耐疵付き性、耐スティッキング性、Tig溶接性、耐水性および歪取り焼鈍後の外観について調査を行い、得られた結果を表8に併記する。
なお、B化合物の種類は表9に示したとおりである。
また、各特性の評価方法は、実施例1の場合と同じである。
Figure 0005598307
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表8に示したとおり、本発明に従い得られた無機質絶縁被膜付き電磁鋼板はいずれも、耐食性、耐粉吹き性、耐疵付き性および打抜性に優れるのはいうまでもなく、歪取り焼鈍後の耐疵付き性、耐スティッキング性、Tig溶接性および耐水性に優れ、さらには歪取り焼鈍後の外観にも優れていた。
これに対し、Zr化合物が適正範囲から外れた比較例1,2は、耐食性、耐粉吹き性および焼鈍後耐疵付き性に劣っていた。特に比較例1は、焼鈍後外観にも劣っていた。
また、B化合物が下限に満たない比較例3は、耐食性、耐粉吹き性および焼鈍後耐疵付き性に劣り、一方B化合物が上限を超えた比較例4は、耐スティッキング性に劣っていた。
Si化合物が下限に満たない比較例5は、耐食性に劣り、一方Si化合物が上限を超えた比較例6は、耐粉吹き性、焼鈍後耐疵付き性に劣っていた。
さらに、硝酸化合物やシランカップリング剤、リン化合物を適正範囲を超えて多量に含有させた比較例7〜13はいずれも、歪取り焼鈍後の耐水性に劣っていた。

Claims (5)

  1. 表面に、Zr化合物および板状シリカを含むSi化合物を含有する無機被膜をそなえる電磁鋼板であって、
    該無機被膜の全固形分質量に対する、Zr化合物の割合がZrO2換算で15〜75質量%、板状シリカを含むSi化合物の割合がSiO2換算で25〜85質量%であることを特徴とする無機質絶縁被膜付き電磁鋼板。
  2. 表面に、Zr化合物、B化合物および板状シリカを含むSi化合物を含有する無機被膜をそなえる電磁鋼板であって、
    該無機被膜の全固形分質量に対する、Zr化合物の割合がZrO2換算で10〜74.9質量%、B化合物の割合がB23換算で0.1〜5質量%、板状シリカを含むSi化合物の割合がSiO2換算で25〜85質量%であることを特徴とする無機質絶縁被膜付き電磁鋼板。
  3. 前記板状シリカの平均粒子径が10〜600nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の無機質絶縁被膜付き電磁鋼板。
  4. 前記板状シリカのアスペクト比(長さ/厚み比)が2〜400であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の無機質絶縁被膜付き電磁鋼板。
  5. 前記無機被膜中に、さらに硝酸化合物(NO3換算)、シランカップリング剤(固形分換算)およびリン化合物(P25換算)のうちから選んだ一種または二種以上を、乾燥被膜中における比率で30質量%以下で含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の無機質絶縁被膜付き電磁鋼板。
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