以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
なお、以下に説明する実施の形態では、本発明を、車両に搭載される複数のECUを接続する車載通信システムに適用した例を挙げて説明する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における車載通信システムの構成を示す構成図である。車載通信システムは、複数のECU1、ECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2dと、CANバス3と、センサ(スイッチ)4と、アクチュエータ5とを含む。
実施の形態1におけるECU1、ECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2dは夫々、車両の各種機能を実現するために、車両に搭載された各機器に対し、コンピュータプログラムに基づくプロセッサ(マイコン)による制御を実行する制御装置である。ただしECU1、ECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2dは夫々異なる機能を実現する処理を行なうように構成される一方で、同一のCANバス3に接続し、CANプロトコルに基づき相互にデータを送受信して処理を行なう。
ECU1は例えば、車両に搭載されている機器のオン/オフを制御し、車両に搭載されている車載機器からなるシステム全体の電力消費量を制御する電源管理の機能を備える。バッテリセンサ(図示せず)と接続してバッテリの残量を監視し、バッテリ残量に基づき電源管理を行なう機能を備えてもよい。電源管理のためにECU1は、ECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2dに対してマスタとして機能し、スレーブであるECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2dの動作状態を個別に制御する機能を備える。
ECU2a及びECU2bは、車両が停止中、特にイグニッションがオフの場合に動作する装置である。例えばECU2aは、ユーザが携帯する鍵と無線通信を行ない、正規の運転者であればドアロックの施錠/解錠、及びエンジンの始動を許可するなどの処理を行なう。ECU2bは、車両の停車中に、ドアロックの無理な解錠、車体への衝撃、ジャッキアップ等を検知し、警報を発するなどのセキュリティ処理を行なう。一方、ECU2c及びECU2dは、走行中か否かによらず、接続されるセンサ又はCANバス3を介して情報を取得して動作する。例えばECU2cは、接続される車輪速センサ(図示せず)から取得される車輪速に基づき走行速度を算出して出力する。ECU2dは、接続されるヘッドライトのスイッチから情報を取得し、ヘッドライトの制御を行なう。このようにECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2dは同一のCANバス3に接続されているが機能が異なり、動作すべき状況も異なる。
CANバス3は、CANプロトコルに準じたツイストペアケーブルである。ECU1、ECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2dは基本的に、CANバス3を介して差動信号にてCAN通信を行なう。
実施の形態1におけるECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2dには夫々、センサ4及びアクチュエータ5が接続されている。ECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2dは、センサ(又はスイッチ)4から入力される情報に基づきアクチュエータ5の動作を制御する。全てのECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2dにセンサ4及びアクチュエータ5が接続されている必要はなく、いずれか一方のみが接続されているか、又は両方とも接続されていなくともよい。
図2は、実施の形態1におけるECU1,2a,2b,2c,2dの内部構成を示すブロック図である。ECU2aの内部構成と、他のECU2b、ECU2c及びECU2dの内部構成とは同様であるので、以下ECU2aの内部構成について詳細を説明し、ECU2b、ECU2c及びECU2dについては詳細な説明を省略する。
ECU1は、マイクロコンピュータ10、第1通信部11及び第2通信部12を備える。マイクロコンピュータ10は第1通信部11及び第2通信部12の両方と接続されている。第1通信部11はCANバス3にバス接続されており、第1通信部12はCANバス3と第1通信部11との間から分岐接続されている。なおECU1では電源制御回路の図示及び説明を省略するが後述するECU2aと同様に、車載バッテリからの電力供給を受けて動作するようにしてある。
マイクロコンピュータ10はCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を内蔵し(いずれも図示せず)、ROMに予め記憶してあるコンピュータプログラムをCPUが読み出して実行することにより、ECU1としての機能を実現する。マイクロコンピュータ10は、通信用の送受信用端子を備え、第1通信部11及び第2通信部12と接続されている。
第1通信部11は、CANプロトコルに準じた通信を実現する。具体的には、実施の形態1における第1通信部11は、CANトランシーバ及びCANコントローラチップから構成される。第1通信部11は、マイクロコンピュータ10の送信用端子から与えられる情報からCANメッセージを構成し、CANトランシーバによってCANバス3へ差動信号を送出する。また第1通信部11は、CANトランシーバによってCANバス3に発生している差動信号を検知してCANコントローラによりCANメッセージとして受信し、マイクロコンピュータ10の受信用端子へ受信信号として入力する。
第2通信部12は、シリアル通信を実現する。具体的には第2通信部12はUART(UART:Universal Asynchronous Receiver Transmitter)チップである。特に、ECU1の第2通信部12は、マイクロコンピュータ10のシリアル送信用端子から与えられる情報からシリアル通信信号を構成し、CANバス3の一方の線、または両方の線を使用する。また、マイクロコンピュータ10、及び第2通信部12は送信機能のみでも良い。
このように構成されるECU1は、マイクロコンピュータ10のCPUの処理により、ECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2dの内、いずれかを省電力状態から起動させて稼動状態へ移行させるかを判断し、第2通信部12から、動作状態の変更指示を送信する。例えば、車両が走行している状態から走行速度が10km/h以下となった場合には、省電力状態へ移行しているはずのECU2a及びECU2bについても起動すべきとして、マイクロコンピュータ10は稼動状態への移行を指示する変更指示を第2通信部12から送信する。変更指示には、スレーブであるECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2dを夫々区別するノードIDを含み、各ECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2dが自身宛の変更指示であるか否かを判断できるようにしてある。なお、ECU1は、いずれのスレーブECUを省電力状態へ移行させるかを判断して変更指示を送信するようにしてもよい。
ECU1は、第2通信部12から動作状態の変更指示を送信する場合には事前に、第1通信部11によりCAN通信を停止させるべく、所定時間の通信停止指示をECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2dへ送信する。第1通信部11及び第2通信部12は、同一のCANバス3を介した通信を行なうが、異なるプロトコルを用いて相互の信号を無意味な信号として無視し、しかも通信期間をずらすことによって重畳及び分離の機能を有さずとも同一の通信媒体での通信を可能とする。第1通信部11は、CAN即ち差動信号による通信を行なうため、一方の線(例えばCAN_High)の信号レベルがHi/Loであっても、他方の線の信号レベルがHi固定であればCAN信号でないと区別し、無視することが可能である。第2通信部12は、CAN通信中はCANバス3の一方の線の信号レベルがHi、他方の線の信号レベルがLoとなるので区別でき、CANメッセージの信号を無視することができる。また、CANプロトコルでは、5ビット連続で同一値(0又は1)が継続すると異なる値(1又は0)を挟むビットスタッフィングの仕様がある。これを利用して第2通信部12による通信の通信速度をCAN通信の1/5以下としておくことにより、第2通信部12は、1ビット分の長さの波形中に異なる信号レベルの波形が混在する場合はCANの信号であってエラーであると破棄することができる。
ECU2aは、マイクロコンピュータ20a、電源制御回路21a、第1通信部22a、第2通信部23a、電源制御実施部24aを備える。電源制御回路21aは、図示しない車載バッテリ(+B)及びマイクロコンピュータ20aと接続されている。第1通信部22aは、マイクロコンピュータ20a及びCANバス3に接続されている。第2通信部23aは、CANバス3と第1通信部22aとの間から分岐接続されるようにしてあり、更に電源制御実施部24aと接続されている。電源制御実施部24aは、第2通信部23a及び電源制御回路21aに接続されている。
マイクロコンピュータ20aは、CPU、ROM及びRAMを内蔵し、後述する省電力状態での動作に対応している汎用のものである。マイクロコンピュータ20aは、ROMに予め記憶してあるコンピュータプログラムをCPUが読み出して実行することにより、ユーザが携帯する鍵と無線通信を行ない、正規の運転者であればドアロックの施錠/解錠、及びエンジンの始動を許可するなどの処理を実現する。マイクロコンピュータ20aは、電力供給を受けるVcc端子、通信用の送受信用端子、入出力用端子を備える。マイクロコンピュータ20aは、Vcc端子にて電源制御回路21aと接続されており、送受信用端子により第1通信部22aと接続されている。マイクロコンピュータ20aは、出力端子にて電源制御実施部24aと接続されており、後述するCPUによる判断結果を電源制御実施部24aへ出力端子を介して出力する。またマイクロコンピュータ20aは、入力端子にてセンサ4と、出力端子にて制御対象のアクチュエータ5と接続されている。例えば、ECU2aに接続されているセンサ4は無線アンテナであり、アクチュエータ5はドアロックモータであり、マイクロコンピュータ20aはセンサ4から入力端子を介して携帯鍵からの信号の情報を取得し、CPUの演算によって正規の鍵であるか否かを判断し、正規の鍵であると判断した場合に出力端子を介してドアロックモータを解除する信号を出力する。
また、マイクロコンピュータ20aは、通常の稼動状態及び省電力状態を含む複数の動作状態のいずれかにて処理を行なうように構成してある。マイクロコンピュータ20aは、図示しない例えば2つのクロックから夫々出力されるクロック信号に基づき処理を行なう。例えば第1のクロックは4MHz、第2のクロックは32kHzの周波数のクロック信号をマイクロコンピュータ20aへ提供する。マイクロコンピュータ20aは、稼動状態では第2のクロックを停止させて第1のクロックからのクロック信号に基づき処理を行ない、省電力状態の一例としてスリープ状態では、第1のクロックを停止させて第2のクロックからのクロック信号に基づき、入力信号の検知等の処理を行なう。なお省電力状態の一例として停止状態では、第1及び第2のクロックのいずれも停止させて処理は行なわない。
マイクロコンピュータ20aは、入力端子から入力される情報及び第1通信部22aから得られる情報に基づき、自身が省電力状態へ移行するか否かを判断し、移行すると判断した場合には自身の動作状態を移行させると共に、電源制御実施部24aへ判断結果を出力する。例えば、入力端子からイグニッションスイッチがオンとなり、走行速度が20km/h以上となった後は、ユーザの携帯鍵との通信は不要となり、稼動状態でいる必要が無いので省電力状態へ移行すると判断する。また、入力端子及び受信用端子のいずれからも所定時間以上、入力がされない場合には省電力状態へ移行すると判断するようにしてもよい。逆に、イグニッションスイッチがオフとなった後は、再度ユーザの携帯鍵との通信を行なって処理を行なう必要があるので起動し、稼動状態へ移行する。なお、省電力状態から稼動状態への移行は、後述するように第2通信部23aにて動作状態の変更指示を受信して電源制御回路21aから電力が供給された場合に行ない、後述する第1通信部22aにて情報を受信したとしても行なわれない。
電源制御回路21aは、車載バッテリから供給される電力をマイクロコンピュータ20aに適した電圧値及び電流値としてマイクロコンピュータ20aのVcc端子へ入力する。電源制御回路21aは、電源制御実施部24aからの制御信号の入力を受け付けるようにしてあり、制御信号に基づきマイクロコンピュータ20aへの電力供給量を制御する。具体的には、電源制御回路21aは、電源制御実施部24aから電力供給の停止を指示された場合、車載バッテリからマイクロコンピュータ20a並びに第1及び第2のクロックへの電力供給を停止する。逆に、電源制御実施部24aから電力供給の開始を指示された場合、車載バッテリからマイクロコンピュータ20a及び第1のクロックへの電力供給を開始する。更に、電源制御実施部24aから電力供給量の低減を指示された場合、マイクロコンピュータ20aへの電力供給量を低減し、第1のクロックへの電力供給を停止させると共に第2のクロックへの電力供給を開始する。
第1通信部22aは、CANバス3に接続されるようにしてあり、CANプロトコルに準じた通信を実現する。具体的には、実施の形態1における第1通信部22aは、CANトランシーバ及びCANコントローラチップから構成される。第1通信部22aは、マイクロコンピュータ20aの送信用端子から与えられる情報からCANメッセージを構成し、CANトランシーバによってCANバス3へ差動信号を送出する。また第1通信部22aは、CANトランシーバによってCANバス3に発生している差動信号を検知してCANコントローラによりCANメッセージとして受信し、マイクロコンピュータ20aの受信用端子へ受信信号を入力する。
なお第1通信部22aは、マイクロコンピュータ20aが稼動状態である場合のみ、CANバス3に送信された情報を受信してCANメッセージとして解釈し、マイクロコンピュータ20aへ通知する。逆に第1通信部22aは、省電力状態へ移行した場合、CAN通信を停止し、その後CANバス3にCANメッセージが送信されたとしてもマイクロコンピュータ20aの受信用端子へ入力せず、無視する。これにより、マイクロコンピュータ20aが省電力状態であるときにはCANバス3にCANメッセージが送信されていても入力がされないので、マイクロコンピュータ20aは起動しない。
第2通信部23aは、CANバス3上でのシリアル通信を実現する。具体的には、第2通信部23aはECU1の通信部12に対応するUARTチップであり、CANバス3の一方の線、例えばCAN_Highにおける信号レベルを検出し、電源制御実施部24aへ通知する。実施の形態1では第2通信部23aは、与えられる情報からシリアル通信信号を構成し、CANバス3の一方の線、例えばCAN_Lowへ送出する送信機能を有さない。これにより、ECU2aはシリアル通信によりECU1から送信される情報を受信する。
第1通信部22aと第2通信部23aとは、ECU1の第1通信部11と第2通信部12との間の関係と同様に、相互の信号を無視し、且つ送受信のタイミングをずらすことで同一のCANバス3による送受信を実現する。また、上述したように第2通信部23aにおけるシリアル通信の通信速度を第1通信部22aによるCAN通信の通信速度の1/5以下とするようにしておくことにより、相互に信号を区別して他方を無視する制御が可能である。
電源制御実施部24aは、電源制御回路21aによるマイクロコンピュータ20aへの電力供給を制御する。電源制御実施部24aは、マイクロコンピュータ20a、第2通信部23a及び電源制御回路21aと接続されている。電源制御実施部24aは、マイクロコンピュータ20aのCPUから出力された判断結果、及び第2通信部23aから得られた情報に基づき、マイクロコンピュータ20aが省電力状態へ移行する場合には電源制御回路21aへ電力供給を停止するか、又は電力供給量を低減させるかを指示する制御信号を出力する。電源制御実施部24aは、第2通信部23aにより、ECU1から送信された動作状態の変更指示を受信し、受信した変更指示が省電力状態からの起動指示である場合に、電源制御回路21aへ電力供給の開始又は電力供給量の増加を指示する制御信号を出力する。
このように構成されるECU2aは、マイクロコンピュータ20aにより自身が省電力状態へ移行するか否かを判断し、移行する場合には各自、電力供給を停止又は電力供給量を低減させる。そして省電力状態へ移行中は、CANバス3にCANメッセージが送信されても無視して稼動状態とはならない。これにより、車両が走行中であるとき、CANバス3に接続されている他のECU2c及びECU2dが起動しているとしても、ECU2a及びECU2bは省電力状態を維持することができ、車載通信システム全体における消費電力量を低減することができる。なお、ECU2aは、省電力状態にあっても、ECU1からの動作状態の変更指示を受信できるように第2通信部23aにて情報を受信できるようにすると共に、第2通信部23aにて動作状態の変更指示を受信した場合には当該変更指示に基づき起動する。このとき、ECU2aは、第1通信部22aによるCAN通信を、ECU1からの停止指示に従って停止している。他のECU2b、ECU2c及びECU2dも同様である。
図3は、実施の形態1におけるECU1,2a間による省電力モードへの移行処理、及び省電力モードからの起動処理の手順の一例を示すフローチャートである。以下に示す例は、車載通信システムに含まれるスレーブのECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2dがいずれも稼動状態にあるときに行なわれる。また、ECU2aの処理手順と、ECU2b、ECU2c及びECU2dの処理手順とは同様であるので、以下、ECU2aの処理手順のみ説明し、ECU2b、ECU2c及びECU2dの処理手順については詳細な説明を省略する。
電源管理のマスタであるECU1のマイクロコンピュータ10は、ECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2d夫々の動作状態を判定する(ステップS1)。具体的には、マイクロコンピュータ10は、各ECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2dと第1通信部11により通信が可能か否かによって動作状態を判定する。ECU2aは、省電力状態(停止状態又は休止状態)へ移行した場合には第1通信部22aによる送信を行なわないので、通信状態により判定が可能である。
マイクロコンピュータ10は、車両の走行状態(例えば走行速度)を取得し、走行状態に基づき、ECU2aの稼動状態への移行の要否を判断する(ステップS2)。マイクロコンピュータ10は、ECU2aの稼動状態への移行を不要と判断した場合(S2:NO)、処理をステップS1へ戻す。マイクロコンピュータ10は、ECU2aの稼動状態への移行を要と判断した場合(S2:YES)、移行を指示する変更指示を第2通信部12から送信するために、第1通信部11から、第1の通信方式による通信停止指示を送信する(ステップS3)。
次にマイクロコンピュータ10は、ステップS2で移行要と判断したECU2aへ、動作状態を稼動状態へ変更すべく変更指示を第2通信部12から送信する(ステップS4)。その後マイクロコンピュータ10は、ECU2aは変更指示にしたがって稼動状態へ移行済か否かを判断する(ステップS5)。マイクロコンピュータ10は、移行済でないと判断した場合(S5:NO)、処理をステップS4へ戻し、再度変更指示を送信し、稼動状態へ移行するまで繰り返す。このようにマイクロコンピュータ10は、変更指示を複数回送信することにより、稼動状態への移行をより確実にすることができる。なお繰り返す回数には所定の制限を設け、第1の通信の停止期間である所定時間以内で変更を試みるようにする。マイクロコンピュータ10は、ECU2aが稼動状態へ移行済であると判断した場合(S5:YES)、第1の通信停止指示を送信してから所定時間が経過するまでは待機する(ステップS6)。マイクロコンピュータ10は、所定時間経過後は第1通信部11による通信を再開し(ステップS7)、処理をステップS1へ戻し、ステップS1〜S7の処理を繰り返す。
一方ECU2aでは、イグニッションスイッチがオンとなり、車載通信システム全体が起動された後、ECU2aのマイクロコンピュータ20aは、省電力状態への移行の可否を判断する(ステップS101)。マイクロコンピュータ20aは、省電力状態へ移行できないと判断した場合(S101:NO)、受信した情報又は入力端子から入力される情報に基づく演算処理を実行する(ステップS102)。
マイクロコンピュータ20aは、第1通信部22aにより通信停止指示を受信したか否かを判断する(ステップS103)。マイクロコンピュータ20aは、通信停止指示を受信していないと判断した場合(S103:NO)、処理をステップS101へ戻す。マイクロコンピュータ20aは、通信停止指示を受信したと判断した場合(S103:YES)、第1通信部22aによる通信を停止し(ステップS104)、通信停止期間として所定時間が経過したか否かを判断する(ステップS105)。マイクロコンピュータ20aは、所定時間が経過していないと判断した場合(S105:NO)、処理をステップS105へ戻して所定時間が経過するまで待機する。マイクロコンピュータ20aは、所定時間が経過したと判断した場合(S105:YES)、第1通信部22aによる通信を再開し(ステップS106)、処理をステップS101へ戻す。なお、ステップS105にて所定時間が経過したと判断するまでの間、CPUによる演算処理は継続可能である。
マイクロコンピュータ20aは、省電力状態へ移行できると判断した場合(S101:YES)、電源制御実施部24aへ通知する(ステップS107)。電源制御実施部24aは、省電力状態への移行を把握し電力供給量を低減すべく電源制御回路21aへ指示する(ステップS108)。電源制御回路21aは例えばマイクロコンピュータ20aへの電力供給を停止(又は低減)させ、これによりECU2aは省電力状態(停止状態)へ移行する(ステップS109)。このとき、ECU2aのマイクロコンピュータ20aは電力供給を停止されるため、以後、入力端子からの入力、第1通信部22aが接続される受信用端子からの入力についても検知しない。したがって、ECU2aは車載通信システムが稼動していても省電力状態(停止状態)のまま維持できる。マイクロコンピュータ20aは、省電力状態(停止状態)へ移行した後(S109)、入力を検知しないので第1通信部22aによる通信の入力を受けない。
ステップS108にてマイクロコンピュータ20aが省電力状態(スリープ状態)へ移行した場合、第1通信部22aはCANバス3に送出された情報を検知してもマイクロコンピュータ20aへ入力しないので、省電力状態のまま維持できる。
ECU2aが省電力状態にある間、第2通信部23aは動作可能であり、第2通信部23aはCANバス3の一方の線から自身宛の変更指示を受信したか否かを判断する(ステップS110)。第2通信部23aは、変更指示を受信していないと判断した場合(S110:NO)、処理をステップS110へ戻す。第2通信部23aは、変更指示を受信したと判断した場合(S110:YES)、電源制御実施部24aへ通知し、これにより電源制御実施部24aが電源制御部21aへマイクロコンピュータ20aへの電力供給を開始(又は増加)させる(ステップS111)。これによりマイクロコンピュータ20aは起動し(ステップS112)、稼動状態へ移行して処理を終了する。以後、ステップS101からの処理を繰り返す。なおこのとき、第1通信部22aによる通信も開始され、CANバス3へ他のECU2b、ECU2c又はECU2dから送信された情報が送出された場合にはこれを入力する。
このような処理により、ECU2aは、省電力状態へ移行せず稼動状態である間は、通信停止の指示を受信したときに第1通信部22aによる通信を停止して他のECU2b、ECU2c、又はECU2dへの第2の通信を妨げることを回避し、且つ省電力状態へ移行した場合には、第1通信部22aによる通信を行なわないで起動しないようにすることを実現する。そしてECU2aは、省電力状態へ移行して停止したとしても、第2通信部23aにて受信する情報に基づき起動し、稼動状態へ移行することも可能である。
図4は、実施の形態1におけるECU1,2aの処理によるCANバス3上での通信状態を示すタイムチャートである。ECU1及びECU2aが図3のフローチャートに示した処理を行なうことにより、以下に示すように、第1の通信(CAN通信)と第2の通信(シリアル通信)とのタイミングをずらし、ECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2dの個別の起動が可能となる。
図4の横軸は時間軸を示し、第1の通信(CAN通信)による波形と、第2の通信(シリアル通信)による波形とが区別されている。図4に示すように、CANバス3上で第1の通信としてCAN通信が行なわれていたとしても、ECU1から太線の波形で示す通信停止指示が送信された場合には、所定時間である第1の通信の停止期間が設けられ、その間、ECU1、ECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2d間では第1の通信は行なわれない。第1の通信の停止期間の間、ECU1にて、ECU2a及びECU2bの稼動状態への移行が必要と判断した場合、図4に示すようにECU2aを起動させるための移行指示、及びECU2bを起動させるために移行指示が夫々複数回、第2の通信により送信される。第2の通信が行なわれる間は第1の通信が停止されるので、第1の通信を行なう第1通信部11及び第1通信部22aにとって障害とならない。ECU1、ECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2dによって第1の通信が回復した後は、第2通信部12及び第2通信部23aは、CANバス3にて第1の通信が行なわれていることを、2本の線で差動通信を行なうこと、通信速度が異なること、CAN通信とシリアル通信でプロトコルが異なること等で区別でき、無視することができるので相互に障害となることが回避される。
このような処理により、ECU2aのマイクロコンピュータ20aとしては、第1通信部22aからの入力があった場合に起動する既存のものを使用することができると共に、車載通信システムが稼動中であっても個別に省電力状態へ移行できる。そして、マイクロコンピュータ20aは必要な場合には起動して稼動状態へ戻ることも可能である。同一のCANバス3に接続される車載通信システム内で、走行状態に応じて稼動が不要なECU2aについては省電力状態へ移行できるので、車載システム全体としての消費電力を低減することができる。
実施の形態1では、ECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2dは、省電力状態から稼動状態へ起動する場合に、第2の通信により、動作状態の変更指示を受信したか否かを判断する構成とした。しかしながら、本発明はこれに限らず、第1の通信を停止している間、ECU1は稼動状態にあるECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2dへ第2の通信部12により省電力状態への移行を指示する動作状態の変更指示を送信する構成としてもよい。この場合、ECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2dは、第1の通信を停止後(S104)、第2通信部23aから変更指示を受信したか否かを判断し、省電力状態への変更指示を受信した場合には処理をステップS1の省電力状態への移行可否の判断へ戻し、省電力状態への移行可と判断し、以後、図3のフローチャートに示した処理と同様の処理を行なう。
また、実施の形態1では、電源制御実施部24a及び第2通信部23aはECU2aに内蔵される構成であった。しかしながらこれに限らず、電源制御実施部24a及び第2通信部23aからなる制御回路がECU2aとCANバス3との間に接続されて本実施の形態1の構成が実現するとしてもよい。
(実施の形態2)
実施の形態1では、マスタであるECU1、スレーブであるECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2dが夫々、第1の通信の停止指示を受信した後に所定時間の経過を計測して第1の通信を再開させる構成とした。これに対し実施の形態2では、所定時間の経過の計測はマスタのみで行ない、スレーブであるECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2dは所定時間の経過はマスタからの再開指示を受信することで認識して通信を再開する構成とする。
実施の形態2における車載通信システムの構成は、ECU1、ECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2d間での処理手順の詳細以外は、実施の形態1と同一である。したがって、以下、相違する処理手順について説明し、実施の形態1と共通する構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
実施の形態2におけるECU1は、第1の通信を停止させてから所定時間後に第1の通信を再開する際、通信の再開を指示する再開指示を第2通信部12からECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2dへ送信する。
図5は、実施の形態2におけるECU1,2a間による省電力モードへの移行処理、及び省電力モードからの起動処理の手順の一例を示すフローチャートである。ECU2aの処理手順と、ECU2b、ECU2c及びECU2dの処理手順とは同様であるので、以下、ECU2aの処理手順のみ説明し、ECU2b、ECU2c及びECU2dの処理手順については詳細な説明を省略する。また、図5のフローチャートに示す処理手順の内、図3のフローチャートに示した処理手順と共通する処理手順については同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
実施の形態2におけるECU1では、マイクロコンピュータ10は、第1の通信停止指示を送信してから所定時間が経過するまで待機した後(S6)、第1通信部11による通信を再開すべく通信の再開指示を送信し(ステップS8)、処理をステップS1へ戻してステップS1〜S6及びステップS8の処理を繰り返す。
ECU2aでは、マイクロコンピュータ20は、省電力状態へ移行せずに第1の通信の停止指示を受信した後、第1の通信の再開指示を第2通信部23aにより受信したか否かを判断する(ステップS121)。マイクロコンピュータ20aは、再開指示を受信していないと判断した場合(S121:NO)、処理をステップS121へ戻し、再開指示を受信したと判断するまで待機する。この間、演算処理の実行を継続してもよいし、第2通信部23aにより省電力状態への移行指示を受信したか否かを判断する処理を継続してもよい。
マイクロコンピュータ20aは、ステップS121にて再開指示を受信したと判断した場合(S121:YES)、第1通信部22aによる通信を再開し(S106)、処理をステップS101へ戻す。
各ECU1、ECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2dが各自予め定められた所定時間の経過を計測する構成とせずに、このようにマスタであるECU1にて定められている所定時間に基づき、第2の通信による再開指示の送信によって再開する構成とする。これにより、ECU1のみで所定時間を自由に設定して、ECU1、ECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2d全体として第1の通信の停止期間の長さを調整することができ、柔軟的となる。
図6は、実施の形態2におけるECU1,2aの処理によるCANバス3上での通信状態を示すタイムチャートである。ECU1及びECU2aが図5のフローチャートに示した処理を行なうことにより、以下に示すように、第1の通信(CAN通信)と第2の通信(シリアル通信)とのタイミングをずらし、ECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2dの個別の起動が可能となる。なお、図6の内、実施の形態1における図4と相違する点は、ECU1から太線の波形で示す通信再開指示が送信される点である。
図6に示した例でもわかるように、第1の通信と第2の通信との間はタイミングが異なるので、相互に信号を区別し、相互に障害にならないようにすることができる。
(実施の形態3)
実施の形態3では、第1の通信を停止するのではなく、各ECUのマイクロコンピュータとCANバス3との間の接続を物理的に遮断する構成とする。
以下に説明する実施の形態3における車載通信システムの内、実施の形態1と共通する構成部については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図7は、実施の形態3における車載通信システムの構成を示す構成図である。車載通信システムは、複数のECU1、ECU6a、ECU6b、ECU6c及びECU6dと、遮断装置7,7,7,7と、CANバス3と、センサ(スイッチ)4と、アクチュエータ5とを含む。
ECU1、ECU6a、ECU6b、ECU6c及びECU6dは夫々、車両の各種機能を実現するために、車両に搭載された各機器に対し、コンピュータプログラムに基づくプロセッサ(マイコン)による制御を実行する制御装置である。ECU1、ECU6a、ECU6b、ECU6c及びECU6dは夫々異なる機能を実現する処理を行なうように構成される一方で、同一のCANバス3に接続し、CANプロトコルに基づき相互にデータを送受信して処理を行なう。
電源管理のためにECU1は、ECU6a、ECU6b、ECU6c及びECU6dに対してマスタとして機能し、スレーブであるECU6a、ECU6b、ECU6c及びECU6dの動作状態を個別に制御する機能を備える。
ECU6a、ECU6b、ECU6c及びECU6d夫々の機能は、実施の形態1におけるECU2a、ECU2b、ECU2c及びECU2d夫々の機能と同様である。ECU6a、ECU6b、ECU6c及びECU6dは、遮断装置7が夫々に接続されており、遮断装置7を介してCANバス3に接続されている点が実施の形態1における各ECUと異なる。
図8は、実施の形態3におけるECU1,6a,6b,6c,6d及び遮断装置7の内部構成を示すブロック図である。ECU6aの内部構成と、他のECU6b、ECU6c及びECU6dの内部構成とは同様であるので、以下ECU6a及び遮断装置7の内部構成について詳細を説明し、ECU6b、ECU6c及びECU6d並びにそれらに接続される遮断装置7については詳細な説明を省略する。
ECU1のハードウェア的な構成は、実施の形態1における構成と同様である。ただし、実施の形態3におけるECU1は、マイクロコンピュータ10のCPUの処理により、ECU6a、ECU6b、ECU6c及びECU6dの内、いずれかをCANバス3から遮断させるか、接続させるかを判断し、第2通信部12から、遮断指示又は接続指示を送信する。例えば、車両が走行している状態から走行速度が10km/h以下となった場合には、省電力状態へ移行し、CANバス3から遮断されているはずのECU6a及びECU6bについて、再度CANバス3を介して通信すべきとして、マイクロコンピュータ10は接続を指示する接続指示を第2通信部12から送信する。又は、車両の走行速度が20km/h以上となった場合には、ECU6a及びECU6bはCANバス3を介した通信が不要なので、マイクロコンピュータ10は接続を遮断する遮断指示を第2通信部12から送信する。そしてこのとき、ECU1は、第2通信部12から遮断指示又は接続指示を送信する場合には事前に、第1通信部11によりCAN通信を停止させるべく、所定時間の通信停止指示をECU6a、ECU6b、ECU6c及びECU6dへ送信する。このようにして、ECU1、ECU6a、ECU6b、ECU6c及びECU6dは、実施の形態1同様に、第1の通信と第2の通信とが衝突しないように調整する。
ECU6aは、マイクロコンピュータ60a及び通信部61aを備える。マイクロコンピュータ60aは通信部61aと接続されており、通信部61aは、外部のCANバス3と接続されるべく端子を有している。ECU6aは、実施の形態1におけるECU2a同様に電源制御回路を備え(図示しない)、電源制御実施部を備えてもよい。
マイクロコンピュータ60aは、CPU、ROM及びRAMを内蔵し、後述する省電力状態での動作に対応している汎用のものである。マイクロコンピュータ60aは、ROMに予め記憶してあるコンピュータプログラムをCPUが読み出して実行することにより、ユーザが携帯する鍵と無線通信を行ない、正規の運転者であればドアロックの施錠/解錠、及びエンジンの始動を許可するなどの処理を実現する。マイクロコンピュータ60aは、少なくとも、通信用の送受信用端子、入出力用端子を備える。マイクロコンピュータ60aは、送受信用端子により通信部61aと、入出力端子により後述する遮断装置7の遮断切替部70と接続されている。マイクロコンピュータ60aは、入力端子にてセンサ4と、出力端子にて制御対象のアクチュエータ5と接続されている。例えば、ECU6aに接続されているセンサ4は無線アンテナであり、アクチュエータ5はドアロックモータであり、マイクロコンピュータ60aはセンサ4から入力端子を介して携帯鍵からの信号の情報を取得し、CPUの演算によって正規の鍵であるか否かを判断し、正規の鍵であると判断した場合に出力端子を介してドアロックモータを解除する信号を出力する。
また、マイクロコンピュータ60aは、実施の形態1におけるECU2aのマイクロコンピュータ20a同様に、通常の稼動状態及び省電力状態を含む複数の動作状態のいずれかにて処理を行なうように構成してある。
マイクロコンピュータ60aは、入力端子から入力される情報及び通信部61aから得られる情報に基づき、自身が省電力状態へ移行するか否かを判断し、移行すると判断した場合には自身の動作状態を移行させると共に、遮断装置7の遮断切替部70へ判断結果を出力する。例えば、入力端子からイグニッションスイッチがオンとなり、走行速度が20km/h以上となった後は、ユーザの携帯鍵との通信は不要となり、稼動状態でいる必要が無いので省電力状態(スリープ状態)へ移行すると判断する。また、入力端子及び受信用端子のいずれからも所定時間以上、入力がされない場合には省電力状態へ移行すると判断するようにしてもよい。逆に、イグニッションスイッチがオフとなった後は、再度ユーザの携帯鍵との通信を行なって処理を行なう必要があるので起動し、稼動状態へ移行する。
通信部61aは、CANプロトコルに準じた通信を実現する。具体的には、通信部61aは、CANトランシーバ及びCANコントローラチップから構成される。通信部61aは、マイクロコンピュータ60aの送信用端子から与えられる情報からCANメッセージを構成し、CANトランシーバによってCANバス3へ向けて差動信号を送出する。また通信部61aは、CANトランシーバによってCANバス3に発生している差動信号を検知してCANコントローラによりCANメッセージとして受信し、マイクロコンピュータ60aの受信用端子へ受信信号を入力する。
このように構成されるECU6aは、マイクロコンピュータ60aにより自身が省電力状態へ移行するか否かを判断し、移行する。ECU6aの省電力状態は、スリープ状態とし、通信部61aからの入力、又はセンサ4からの入力があった場合には稼動状態へと起動する。
遮断装置7は、遮断切替部70及び通信部71を備え、ECU6aに接続されるように構成されている。遮断切替部70はCANバス3と接続されるようにしてあり、通信部71はCANバス3と遮断切替部70との間から分岐接続されている。遮断切替部70と通信部71とは内部で信号線でも接続されている。遮断切替部70は、遮断装置7がECU6aに接続された場合にはマイクロコンピュータ60aの出力端子と信号線で接続され、通信部61aと通信線で接続されるようにしてある。遮断装置7とECU6aとが接続された場合には、ECU6aの通信部61aは遮断切替部70を介してCANバス3に接続される。
遮断切替部70は、ECU6aのマイクロコンピュータ60aから出力される情報と、通信部71から入力される情報に基づき、ECU6aとCANバス3との間の通信を物理的に遮断又は遮断の解除(接続)する。具体的には、遮断切替部70は、マイクロコンピュータ60aから省電力状態への移行が可能との判断結果が入力された場合には通信を遮断し、起動した場合には接続する。また、遮断切替部70は、通信部71から遮断指示又は接続指示を受信した場合にそれらの指示と、マイクロコンピュータ60aからの入力とを総合的に判断して遮断又は接続する。
通信部71は、CANバス3上でのシリアル通信を実現する。具体的には、通信部71はECU1の通信部12に対応するUARTチップであり、CANバス3の一方の線、または両方の線を使用し、例えば両方の線による同相の信号レベルを検出し、遮断切替部70へ通知する。実施の形態3では通信部71は送信機能を有さない。これにより、ECU6aはシリアル通信によりECU1から送信される情報を受信する。
通信部71とECU6aの通信部61aとは、2本の線で差動通信、または、同相通信を行なうこと、通信速度が異なること、CAN通信とシリアル通信でプロトコルが異なること等により相互に信号を区別して他方を無視する制御が可能である。
遮断装置7が接続されたECU6aでは、マイクロコンピュータ60aにより自身が省電力状態へ移行するか否かを判断し、移行する場合には、遮断装置7にてCANバス3から遮断される。したがって、省電力状態へ移行中は、CANバス3にCANメッセージが送信されても、ECU6aへ入力されないからマイクロコンピュータ60aは稼動状態とはならない。これにより、車両が走行中であるとき、CANバス3に接続されている他のECU6c及びECU6dが起動しているとしても、ECU6a及びECU6bは省電力状態を維持することができ、車載通信システム全体における消費電力量を低減することができる。なお、遮断装置7により、ECU6aが省電力状態にあってCANバス3から遮断されていても、その後CANバス3と接続ができるように通信部71にてECU1からの接続指示を受信できるようにしてある。このとき、CANバス3に接続されている他のECU6b、ECU6c及びECU6dは、通信部をCANバス3から遮断しており、第2の通信を妨げないようにしてある。
図9は、実施の形態3におけるECU1,6a、及び遮断装置7による省電力モードへの移行処理、及び省電力モードからの起動処理の手順の一例を示すフローチャートである。以下に示す例は、車載通信システムに含まれるスレーブのECU6a、ECU6b、ECU6c及びECU6dがいずれも稼動状態にあるときに行なわれる。また、ECU6aの処理手順と、ECU6b、ECU6c及びECU6dの処理手順とは同様であるので、以下、ECU6aと遮断装置7との処理手順のみ説明し、ECU6b、ECU6c及びECU6dとそれらに接続される遮断装置7による処理手順については詳細な説明を省略する。
電源管理のマスタであるECU1のマイクロコンピュータ10は、ECU6a、ECU6b、ECU6c及びECU6d夫々の動作状態を判定する(ステップS31)。具体的には、マイクロコンピュータ10は、各ECU6a、ECU6b、ECU6c及びECU6dと第1通信部11により通信が可能か否かによって動作状態を判定する。ECU6aは、省電力状態(停止状態又は休止状態)へ移行した場合にはCANバス3から遮断されるので、通信状態により判定が可能である。
マイクロコンピュータ10は、車両の走行状態(例えば走行速度)を取得し、走行状態に基づき、ECU6aのCANバス3からの遮断又は接続の要否を判断する(ステップS32)。マイクロコンピュータ10は、ECU6aの遮断又は接続等の状態の変更を不要と判断した場合(S32:NO)、処理をステップS31へ戻す。マイクロコンピュータ10は、ECU6aのCANバス3からの遮断又は接続を要と判断した場合(S32:YES)、遮断指示又は接続指示を第2通信部12から送信するために、第1通信部11から、第1の通信方式による通信停止指示を送信する(ステップS33)。
次にマイクロコンピュータ10は、ステップS32で遮断又は接続要と判断したECU6aへ、遮断又は接続指示を第2通信部12から複数回に分けて送信する(ステップS34)。複数回に分けて送信することにより、確実性を上げることができる。その後マイクロコンピュータ10は、第1の通信停止指示を送信してから所定時間が経過するまでは待機する(ステップS35)。マイクロコンピュータ10は、所定時間経過後は第1通信部11による通信を再開し(ステップS36)、処理をステップS31へ戻し、ステップS31〜S36の処理を繰り返す。
一方ECU6aでは、イグニッションスイッチがオンとなり、車載通信システム全体が起動された後、ECU6aのマイクロコンピュータ60aは、省電力状態への移行の可否を判断する(ステップS41)。マイクロコンピュータ60aは、省電力状態へ移行できないと判断した場合(S41:NO)、受信した情報又は入力端子から入力される情報に基づく演算処理を実行する(ステップS41A)。
マイクロコンピュータ60aは、通信部61aにより第1の通信の停止指示を受信したか否かを判断する(ステップS42)。マイクロコンピュータ60aは、通信停止指示を受信していないと判断した場合(S42:NO)、処理をステップS41へ戻す。マイクロコンピュータ60aは、通信部61aにより通信停止指示を受信したと判断した場合(S42:YES)、遮断装置7の遮断切替部70へ向けて遮断を通知する(ステップS43)。これにより、後述するようにECU6aは遮断装置7によりCANバス3から遮断されCANバス3上での第1の通信(CAN通信)は停止される。
次にマイクロコンピュータ60aは、通信停止期間として所定時間が経過したか否かを判断する(ステップS44)。マイクロコンピュータ60aは、所定時間が経過していないと判断した場合(S44:NO)、処理をステップS44へ戻して所定時間が経過するまで待機する。マイクロコンピュータ60aは、所定時間が経過したと判断した場合(S44:YES)、遮断装置7の遮断切替部70へ向けて接続を通知し(ステップS45)、処理をステップS41へ戻す。これにより、後述するようにECU6aは遮断装置7によりCANバス3と接続されCANバス3上での第1の通信(CAN通信)が開始される。なお、この間ECU6aでは、マイクロコンピュータ60aは、受信した情報又は入力端子から入力される情報に基づく演算処理を実行してよい。
マイクロコンピュータ60aは、省電力状態へ移行できると判断した場合(S41:YES)、遮断装置7の遮断切替部70へ省電力状態への移行を通知し(ステップS46)、省電力状態へ移行する(ステップS47)。これにより、後述するようにECU6aは遮断装置7によりCANバス3から遮断され、CANバス3上で第1の通信が継続したとしても入力されないので、起動せずに省電力状態のまま維持される。
次にマイクロコンピュータ60aが省電力状態となった後は、定期的に、通信部61a又は入力端子からの入力の有無が判断される(ステップS48)。マイクロコンピュータ60aは、入力が無いと判断した場合(S48:NO)、処理をステップS48へ戻し、入力がされるまで省電力状態のまま待機する。マイクロコンピュータ60aは、ステップS48にて入力が有ると判断した場合、即ち入力を検知した場合(S48:YES)、起動して稼動状態への移行を遮断装置7の遮断切替部70へ通知し(ステップS49)、処理を終了する。以後、ステップS41からの処理を繰り返す。なおこのとき、マイクロコンピュータ60aは稼動状態への移行を遮断装置7の遮断切替部70へ通知するので、遮断切替部70により、CANバス3と通信部61aによる通信も接続される。
遮断装置7では、遮断切替部70は、ECU1から通信部71が遮断指示を受信したか、又はマイクロコンピュータ60aから省電力状態への移行を通知されたか否かを判断する(ステップS51)。遮断切替部70は、遮断指示を受信したか、又は省電力状態への移行が通知された場合(S51:YES)、通信部61aとCANバス3との間の通信を遮断し(ステップS52)、処理をステップS51へ戻す。
通知されなかった場合(S51:NO)は、接続指示又は軌道の指示を受信したか否かを判断する(ステップS53)。遮断切替部70は、接続指示を受信したか、又は稼動状態への移行が通知された場合(S53:YES)、通信部61aとCANバス3との間の通信の遮断を解除して接続し(ステップS54)、処理をステップS51へ戻す。受信しない場合(S53:NO)、処理をステップS51へ戻す。
なお、遮断切替部70の遮断/接続の判断は、ECU1からの指示及びマイクロコンピュータ60aからの通知に基づき、総合的に判断する。
このような処理により、ECU6aは、省電力状態へ移行せず稼動状態である間は、通信停止の指示を受信したときに通信部61aによる通信を停止して他のECU6b、ECU6c、又はECU6dへの第2の通信を妨げることを回避し、且つ省電力状態へ移行した場合には、通信部61aからの入力がされないので起動しないようにすることを実現する。そしてECU6aは、省電力状態へ移行して停止したとしても、自身がセンサ4からの入力を受けて起動することが可能であると共に、通信部71にて受信する情報に基づき起動し、稼動状態へ移行することも可能である。また、各ECU6a、ECU6b、ECU6c及びECU6dが省電力状態へ移行したか否かによらず、ECU1からの指示に基づいてCANバス3からの切り離しが可能となり、その間ECU6a、ECU6b、ECU6c及びECU6dではそれぞれ個別に、動作状態を変更することが可能である。
図10は、実施の形態3におけるECU1,6a及び遮断装置7の処理によるCANバス3上での通信状態を示すタイムチャートである。ECU1、ECU6a及び遮断装置7により図9のフローチャートに示した処理が行なわれることにより、以下に示すように、第1の通信(CAN通信)と第2の通信(シリアル通信)とのタイミングをずらし、ECU6a、ECU6b、ECU6c及びECU6dは個別に省電力状態又は稼動状態への移行が可能となる。
図10の横軸は時間軸を示し、第1の通信(CAN通信)による波形と、第2の通信(シリアル通信)による波形とが区別されている。図10に示すように、CANバス3上で第1の通信としてCAN通信が行なわれていたとしても、ECU1から太線の波形で示す通信停止指示が送信された場合には、所定時間である第1の通信の停止期間が設けられ、その間、ECU1、ECU6a、ECU6b、ECU6c及びECU6d間では第1の通信は行なわれない。第1の通信の停止期間の間、ECU1にて、ECU6a及びECU6bの稼動状態への移行が必要と判断した場合、図10に示すようにECU6aをCANバス3から遮断させるための遮断指示、及びECU2bをCANバス3へ接続させるための接続指示が夫々複数回、第2の通信により送信される。第2の通信が行なわれる間は第1の通信が停止され、通信部61aはCANバス3から物理的に遮断されるので第1の通信を行なう第1通信部11にとって障害とならない。ECU1、ECU6a、ECU6b、ECU6c及びECU6dによって第1の通信が回復した後は、第2通信部12及び通信部71は、CANバス3にて第1の通信が行なわれていることを、2本の線で差動通信、または、同相通信を行なうこと、通信速度が異なること、CAN通信とシリアル通信でプロトコルが異なること等により区別でき、無視することができるので相互に障害となることが回避される。
このように遮断装置7を設ける構成により、ECU6aのマイクロコンピュータ60aとしては、通信部61aからの入力があった場合に起動する既存のものを使用することができると共に、車載通信システムが稼動中であっても、ECU6a、ECU6b、ECU6c及びECU6dを夫々個別に省電力状態へ移行させることができる。そして、マイクロコンピュータ60aは必要な場合にはCANバス3へ接続して第1の通信に復帰させることも可能である。同一のCANバス3に接続される車載通信システム内で、走行状態に応じて稼動が不要なECU6aについては省電力状態へ移行できるので、車載システム全体としての消費電力を低減することができる。
実施の形態3では、遮断装置7は各ECU6a、ECU6b、ECU6c及びECU6dに夫々接続される構成とした。しかしながらこれに限らず、遮断装置7はECU6a、ECU6b、ECU6c及びECU6dに夫々内蔵される構成としてもよい。
なお、開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。