以下、図面を参照して、本発明を適用した保持具の実施の形態について説明する。
(構成)
図1に示すように、本実施形態の保持具10は、被研磨物を保持するための保持面Pを有するシート材としての円形のポリウレタンシート2と、被研磨物の移動範囲を枠内に規制するための枠材としての円環状の枠材5とを備えている。枠材5は被研磨物を挿入可能な1つの貫通穴6が形成されている。ポリウレタンシート2および枠材5は外径が同じであり、枠材5はポリウレタンシート2側の面(接着面)がポリウレタンシート2の保持面Pの外縁部に円環シート状の接着剤7を介して貼着されている。
ポリウレタンシート2は、湿式成膜法により作製されており、100%モジュラス(2倍長に引っ張るときの張力)が20MPa以下のポリウレタン樹脂で形成されている。ポリウレタンシート2は、厚みを均一化するために、湿式成膜時に形成されたスキン層側の表面にバフ処理が施されている。このバフ処理によりスキン層が除去されている。バフ処理された面が保持面Pを形成する。ポリウレタンシート2は、ポリウレタンシート2の内部には、厚み方向に沿って丸みを帯びた断面三角状の発泡3が略均等に分散した状態で形成されている。発泡3は、保持面P側の孔径が裏面側の孔径より小さく形成されている。すなわち、発泡3は保持面P側で縮径されている。保持面Pでは、バフ処理でスキン層が除去されたため、発泡3の開口4が形成されている。発泡3の間のポリウレタン樹脂中には、発泡3より小さい孔径の図示を省略した微多孔が形成されている。発泡3および図示を省略した微多孔は、不図示の連通孔で網目状につながっている。すなわち、ポリウレタンシート2は連続発泡構造を有している。
枠材5は、第1の樹脂としての発泡樹脂部5aで構成されている。発泡樹脂部5aには、弾性を有する樹脂、すなわち、軟質プラスチックや半硬質プラスチックを用いることができ、具体的には、ポリウレタン樹脂、シリコーンゴム、フッ素ゴム等を用いることができる。本例では、ショアA硬度が80°の架橋硬化されたポリウレタン樹脂が用いられている。発泡樹脂部5aは、予めポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物を反応させて得られたイソシアネート基含有化合物と、予めポリオール化合物に水を分散希釈させ、ウレタン化反応の反応触媒および整泡剤を含む混合分散液(以下、単に、分散液という。)と、ポリアミン化合物と、を混合した混合液を型枠に注型し硬化させたポリウレタン発泡体をスライスし、円環状に裁断することで形成されている。すなわち、枠材5を構成する発泡樹脂部5aは、乾式成型法により形成されている。
図2に示すように、発泡樹脂部5aは、乾式成型時に分散液中の水により、断面が円形状ないし楕円形状の気泡53が、内部に略均等に分散して形成されている。発泡樹脂部5aの内部で近接して形成された気泡53は、分散液中の水と整泡剤との作用により連通しており、連通した気泡53の間には連通孔(不図示)が形成されている。すなわち、発泡樹脂部5aは、気泡53が連続状に形成された発泡構造を有している。気泡53の平均孔径は、発泡剤の役割を果たす水の含有量や混合液調製時の攪拌条件で調整可能であり、本例では、30〜2000μmの範囲に調整されている。発泡樹脂部5aはポリウレタン発泡体をスライスし円環状に裁断することで形成される。このため、発泡樹脂部5aでは、気泡53の一部が貫通穴6側の面S(以下、面Sと略記する。)を含む表面で開口しており、気泡53の開口が形成された面の単位面積あたりにおける気泡53の平均開口径は30〜2000μmの範囲となる。また、気泡53の開口が形成された面の単位面積あたりにおける開口面積の割合は、平均開口径や開口の数に依存するが、本例では、30〜80%の範囲に設定されている。発泡樹脂部5aの厚さはポリウレタン発泡体のスライス時に調整することができ、発泡樹脂部5aの幅および形状は、被研磨物の大きさや形状によって、ポリウレタン発泡体の裁断時に調整することができる。
枠材5では、発泡樹脂部5aの面Sの全体を被覆するように、第2の樹脂としての硬質樹脂部5bが配されている。硬質樹脂部5bには、発泡樹脂部5aで使用した軟質プラスチックや半硬質プラスチックより硬度の高い樹脂、例えば、硬質プラスチックを用いることができる。このような樹脂としては、例えば、エンジニアリングプラスチックが挙げられるが、具体的には、ポリイミド、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルサルフォン(PES)等がある。本例では、ロックウェル硬度がM102のポリイミドが用いられている。
硬質樹脂部5bは、ポリアミック酸溶液を発泡樹脂部5aの面Sの全体に塗布後、加熱脱水しイミド化させることで形成される。硬質樹脂部5bの被覆厚さはポリアミック酸溶液の塗布厚さで調整することができ、本例では150〜2500μmの範囲に調整されている。硬質樹脂部5bの被覆厚さをこの範囲に調整することで、硬質のポリイミドを材質とする硬質樹脂部5bが可撓性を有することとなる。ポリアミック酸溶液は、ポリアミック酸をN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する。)に溶解させることで形成することができる。発泡樹脂部5aでは、気泡53の一部が面Sで開口しており、気泡53が連通孔で連通された発泡構造を有しているため、発泡樹脂部5aにポリアミック酸溶液を塗布した際に、発泡樹脂部5aの面Sで開口した気泡53や、連通孔で連通された内部の気泡53内にも浸透させることができる。このため、硬質樹脂部5bは、発泡樹脂部5aの面Sで開口した気泡53や、発泡樹脂部5aの内部に形成された気泡53内にも存在している。本例では、硬質樹脂部5bは、発泡樹脂部5aの面Sから内部にかけて5mm以内の範囲に形成された気泡53内に存在している。
接着剤7には、円環シート状に形成された感圧型接着剤およびホットメルト型接着剤が用いられている。感圧型接着剤としては、アクリル系、ニトリル系、ニトリルゴム系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエステル系等の各種の接着剤を挙げることができる。また、ホットメルト型接着剤としては、熱可塑性ウレタン、ウレタン樹脂を主成分とした反応性ホットメルト型接着剤を挙げることができる。本例では、ウレタン樹脂製のホットメルト型接着剤が用いられている。枠材5の接着面に接着剤7の一面側が貼り合わされ、他面側がポリウレタンシート2の保持面Pと貼り合わされている。
また、ポリウレタンシート2の裏面側には、保持具10を研磨装置の保持用定盤に装着するために、両面テープ8が貼り合わされている。両面テープ8は、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する。)製フィルム等の基材を有しており、基材の両面にアクリル系粘着材やゴム系粘着材等の粘着剤層が形成されている。両面テープ8は、基材の一面側の粘着剤層でポリウレタンシート2の裏面側と貼り合わされており、他面側の粘着剤層が剥離紙9で覆われている。
(製造)
図3に示すように、保持具10は、ポリウレタンシート2および枠材5をそれぞれ作製し、枠材5、接着剤7、ポリウレタンシート2および両面テープ8を貼り合わせることで製造される。ポリウレタンシート2は、湿式成膜工程、バフ処理工程を経て製造される。すなわち、湿式成膜工程では、ポリウレタン樹脂溶液を調整する準備ステップ、ポリウレタン樹脂溶液を成膜基材に連続的に塗布し、水系凝固液中でポリウレタン樹脂をシート状に凝固再生させる凝固再生ステップ、凝固再生したポリウレタン樹脂を洗浄・乾燥させる洗浄・乾燥ステップを経てシート状のポリウレタン樹脂が形成される。バフ処理工程で厚みを均一化させることでポリウレタンシート2が作製される。
一方、枠材5は、乾式成型工程、塗布・乾燥工程を経て製造される。すなわち、乾式成型工程では、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、予めポリオール化合物に水と整泡剤とを分散希釈させた分散液と、ポリアミン化合物とをそれぞれ準備する準備ステップ、予めポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物を反応させてイソシアネート基含有化合物を生成し、得られたイソシアネート基含有化合物、分散液、ポリアミン化合物の各成分を混合して混合液を調製する混合ステップ、混合液を型枠に注型し型枠内で発泡、硬化させてポリウレタン発泡体を形成する硬化成型ステップ、ポリウレタン発泡体をスライスし、環状に裁断するスライス・裁断ステップを経て複数枚の発泡樹脂部5aが形成される。塗布・乾燥工程では、発泡樹脂部5aにポリアミック酸溶液を塗布後、加熱脱水させ硬質樹脂部5を形成することで枠材5が作製される。以下、保持具10の製造について、ポリウレタンシート2の作製、枠材5の作製、貼り合わせの順に説明する。
〈ポリウレタンシートの作製〉
湿式成膜工程の準備ステップでは、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂を溶解可能な水混和性の有機溶媒のDMFおよび添加剤を混合してポリウレタン樹脂を溶解させる。ポリウレタン樹脂には、100%モジュラスが20MPa以下のポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系等の樹脂から選択して用い、例えば、ポリウレタン樹脂が30%となるようにDMFに溶解させる。添加剤としては、発泡3の大きさや量(個数)を制御するカーボンブラック等の顔料、発泡形成を促進させる親水性活性剤およびポリウレタン樹脂の凝固再生を安定化させる疎水性活性剤等を用いることができる。得られた溶液を減圧下で脱泡しポリウレタン樹脂溶液を調製する。
凝固再生ステップでは、準備ステップで調製したポリウレタン樹脂溶液を成膜基材に連続的に塗布し、水系凝固液中でポリウレタン樹脂をシート状に凝固再生させる。ポリウレタン樹脂溶液を、ナイフコータ等の塗布装置により常温下で帯状の成膜基材に略均一に塗布する。このとき、用いた塗布装置で、ポリウレタン樹脂溶液の塗布厚み(塗布量)を調整する。成膜基材には、可撓性フィルム、不織布、織布等を用いることができるが、本例ではPET製フィルムとして説明する。
成膜基材に塗布されたポリウレタン樹脂溶液を、ポリウレタン樹脂に対して貧溶媒である水を主成分とする凝固液中に案内する。凝固液中では、まず、塗布されたポリウレタン樹脂溶液の表面側にスキン層4が厚み数μm程度に亘って形成される。その後、ポリウレタン樹脂溶液中のDMFと凝固液との置換の進行によりポリウレタン樹脂がシート状に凝固再生する。DMFがポリウレタン樹脂溶液から脱溶媒し、DMFと凝固液とが置換することにより、スキン層4より内側のポリウレタン樹脂中に発泡3および図示を省略した微多孔が形成され、発泡3および図示を省略した微多孔を網目状に連通する不図示の連通孔が形成される。このとき、成膜基材のPET製フィルムが水を浸透させないため、ポリウレタン樹脂溶液の表面側(スキン層4側)で脱溶媒が生じて成膜基材側が表面側より大きい発泡3が形成される。
洗浄・乾燥ステップでは、凝固再生した帯状(長尺状)のポリウレタン樹脂(以下、成膜樹脂という。)を洗浄した後乾燥させる。すなわち、成膜樹脂を、成膜基材から剥離した後、水等の洗浄液中で洗浄して成膜樹脂中に残留するDMFを除去する。洗浄後、成膜樹脂を、例えば、内部に熱源を有するシリンダを備えたシリンダ乾燥機等で乾燥させる。乾燥後の成膜樹脂をロール状に巻き取る。
バフ処理工程では、洗浄・乾燥工程で乾燥させた成膜樹脂のスキン層側の面にバフ処理を施す。成膜基材に形成された成膜樹脂では、湿式成膜時に厚みバラツキが生じやすい。このため、成膜基材を剥離した後、スキン層の反対側の面に、表面が平坦な圧接治具を圧接することで、スキン層側の面に凹凸が出現する。この凹凸をバフ処理で除去する。本例では、連続的に製造された成膜樹脂が帯状のため、スキン層の反対側の面に圧接ローラを圧接しながら、スキン層側の面に連続的にバフ処理を施した後、枠材5の外径と同じ直径の円形状に裁断し、ポリウレタンシート2を得る。得られたポリウレタンシート2では、厚みバラツキが低減し厚みが均一化され、保持面Pに開口4が形成される。
〈枠材の作製〉
まず、乾式成型工程の準備ステップでは、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、分散液と、ポリアミン化合物とをそれぞれ準備する。準備するポリイソシアネート化合物としては、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有していれば特に制限されるものではない。例えば、分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物としては、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソチオシアネート、キシリレン−1,4−ジイソチオシアネート、エチリジンジイソチオシアネート等を挙げることができる。これらのジイソシアネート化合物の2種以上を併用してもよく、分子内に3つ以上、例えば、3つのイソシアネート基を有するトリイソシアネート化合物を用いてもよい。
一方、ポリオール化合物としては、ジオール化合物、トリオール化合物等の化合物であればよく、例えば、エチレングリコール、ブチレングリコール等の低分子量のポリオール化合物、および、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)等のポリエーテルポリオール化合物、ポリエステルポリオール化合物、ポリカーボネートポリオール化合物、ポリカプロラクトンポリオール化合物等の高分子量のポリオール化合物のいずれも使用することができる。また、これらのポリオール化合物の2種以上を併用してもよい。
また、分散液の調製に用いられるポリオール化合物は、イソシアネート基含有化合物のイソシアネート基と反応することで、研磨加工時の溶出、ひいては、研磨性能に対する悪影響を抑制することができる。分散液としておくことで、次工程の混合工程で水、整泡剤の混合斑を低減する役割を果たす。ポリオール化合物としては、ジオール化合物、トリオール化合物等の化合物であればよく、例えば、エチレングリコール、ブチレングリコール等の低分子量のポリオール化合物、PTMG、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)等の高分子量のポリオール化合物のいずれも使用することができる。イソシアネート基含有化合物やポリアミン化合物の溶液の粘度と同程度にすることで混合工程において水、整泡剤の分散が均一化しやすくなるため、数平均分子量500〜3000のポリオール化合物を用いることが好ましい。本例では、数平均分子量約1000のPTMGを使用する。分散液の調製時には、一般的な攪拌装置を使用して攪拌混合すればよく、水および整泡剤が略均等に分散希釈されていればよい。
分散液に分散させる水としては、特に制限はないが、不純物等の混入を回避するため、蒸留水を使用することが好ましい。また、分散液に対する水の配合割合は、上述した気泡53の平均孔径や開口面積の割合を考慮し、3.00〜3.75重量%の範囲に調整する。
一方、分散液に分散させる整泡剤は、得られるポリウレタン発泡体に形成される連通孔の割合を調整する役割を果たす。すなわち、整泡剤は、その種類によって、分散力、ポリオール化合物への相溶性、発泡の安定化力が異なるため、整泡剤の種類や添加量をコントロールすることで、連通孔の形成割合を調整することが可能である。連通孔の形成に好適な整泡剤としては、シリコン系界面活性剤を挙げることができるが、とりわけ、シリコン系ノニオン界面活性剤であって、活性水素基を有していないものを使用することが好ましい。シリコン系ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーン、すなわち、ポリオキシアルキレン・ジメチルポリシロキサン・コポリマを挙げることができる。ポリエーテル変性シリコーンを構成するポリエーテルとしては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、これらの共重合体等を例示することができる。
分散液における整泡剤の添加量は、発泡剤として配合される水の1重量部に対して上述した整泡剤を0.5重量部以下とすることが好ましい。水に対する整泡剤の添加量が0.5重量部を超えるとポリウレタン発泡体に形成される連通孔が減少する。
準備ステップで準備するポリアミン化合物は、イソシアネート基含有化合物のイソシアネート基と反応し、鎖伸長剤および架橋剤として機能する。ポリアミン化合物としては、脂肪族や芳香族のポリアミン化合物を使用することができるが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(以下、MOCAと略記する。)、MOCAと同様の構造を有するポリアミン化合物等を挙げることができる。また、ポリアミン化合物が水酸基を有していてもよく、このようなアミン系化合物として、例えば、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等を挙げることができる。これらの化合物の2種以上を併用してもよい。ポリアミン化合物として、本例では、MOCAが約120℃に加熱し溶融させた状態で用いられる。
混合ステップでは、準備ステップで準備したポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物とを反応させることでイソシアネート基含有化合物、すなわち、イソシアネート末端ウレタンプレポリマ(以下、単に、プレポリマと略記する。)を生成する。得られたプレポリマと、準備ステップで準備した分散液およびポリアミン化合物とを攪拌翼を備えた混合機で混合し、混合液を調製する。
プレポリマを生成するときは、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基のモル量をポリオール化合物の水酸基のモル量より大きくする。また、使用するプレポリマは、粘度が高すぎると、流動性が悪くなり混合時に略均一に混合することが難しくなる。温度を上昇させて粘度を低くするとポットライフが短くなり、却って混合斑が生じて得られるポリウレタン発泡体に形成される気泡53の大きさにバラツキが生じる。反対に粘度が低すぎると混合液中で気泡が移動してしまい、ポリウレタン発泡体に略均等に分散した気泡53を形成することが難しくなる。このため、プレポリマは、温度30〜80℃における粘度を2000〜20000mPa・sの範囲に設定することが好ましい。例えば、プレポリマの分子量(重合度)を変えることで粘度を設定することができる。プレポリマは、30〜80℃程度に加熱され流動可能な状態とされる。
また、混合液を調整するときは、攪拌翼の回転による剪断速度、剪断回数を調整することで、各成分が略均等に混合されると共に、気泡53の平均孔径も調整することができる。剪断速度が小さすぎると、得られるポリウレタン発泡体に形成される気泡53の平均孔径が大きくなりすぎる。反対に剪断速度が大きすぎると、攪拌翼および混合液間の摩擦による発熱で温度が上昇し粘度が低下するため、混合液中で生じた気泡が(成型中に)移動してしまい、得られるポリウレタン発泡体に形成される気泡53の分散状態にバラツキが生じやすくなる。一方、剪断回数が少なすぎると気泡53の孔径にムラ(バラツキ)が生じやすく、反対に多すぎると温度上昇で粘度が低下し、気泡53が略均等に形成されなくなる。
硬化成型ステップでは、混合ステップで調製された混合液を連続して型枠に注型し、型枠内で発泡、架橋硬化させてポリウレタン発泡体を成型する。ポリウレタン発泡体を架橋硬化させる度合い(発泡樹脂部5aのショアA硬度)は、プレポリマ、分散液およびポリアミン化合物の混合割合を変えることで調整することができる。型枠に混合液を注液するときは、混合液を、型枠に略均等に注液する。注液された混合液を型枠内で反応硬化させブロック状のポリウレタン発泡体を形成させる。このとき、プレポリマとポリオール化合物、ポリアミン化合物との反応によりプレポリマが架橋硬化する。この架橋硬化の進行と同時に、プレポリマのイソシアネート基と分散液に分散希釈された水とが反応することで、二酸化炭素が発生する。架橋硬化が進行しているため、発生した二酸化炭素が外部に抜け出すことなく、気泡53が形成される。
整泡剤に用いたシリコン系界面活性剤の主骨格であるポリジメチルシロキサンは、比較的低い表面張力を示す。ポリウレタン発泡系における整泡剤の役割は、このポリジメチルシロキサンの特性がベースとなっている。シリコン系界面活性剤は、ポリウレタン発泡系において、非シリコン系界面活性剤より優れた表面活性効果を示す。整泡剤のポリウレタン発泡系に対する寄与は、低粘度域での撹拌力の補助と、反応が進行した際の高粘度域での泡の安定化とに大別される。撹拌力の補助は、原料成分を混合・乳化すること、および、巻き込みガスを分散させることを意味している。一方、泡の安定化は、泡の合一を抑制すること、および、膜を安定化させることを意味している。泡の合一抑制では表面張力の調整により、膜の安定化では動的表面張力・表面弾性・表面粘性の調整により効果を与える。従って、攪拌力の補助効果が大きくなり、生じた泡の安定化が少なくなる条件を選定することで、連通孔の形成割合を増加させることができる。この条件は、発泡剤として配合した水の添加量、整泡剤の種類や添加量にあわせて選定される。
スライス・裁断ステップでは、硬化成型ステップで得られたポリウレタン発泡体をシート状にスライスし、円環状に裁断して複数枚の発泡樹脂部5aを形成する。スライスには、一般的なスライス機を使用することができる。スライス時にはポリウレタン発泡体の下層部分を保持し、上層部から順に所定厚さにスライスする。スライスする厚さは、本例では、0.5〜1.5mmの範囲に設定されている。裁断時には、円環状の型で打ち抜いてもよく、裁断機で裁断してもよい。硬化成型ステップで内部に気泡53が形成されたポリウレタン発泡体が得られるため、スライス・裁断ステップで得られる発泡樹脂部5aは、面Sを含む表面で気泡53の開口が形成されている。
塗布・乾燥工程では、スライス・裁断ステップで得られた発泡樹脂部5aの面Sの全体にポリアミック酸溶液を塗布する。ポリアミック酸溶液は、テトラカルボン酸無水物とジアミンを重合させることで形成したポリアミック酸をDMFに溶解させることで形成される。発泡樹脂部5aにポリアミック酸溶液を塗布し低温乾燥させる作業を繰り返し行い、加熱脱水させる。ポリアミック酸溶液を加熱脱水させると、ポリアミック酸のイミド化反応が進行し、ポリイミドが形成される。すなわち、発泡樹脂部5aの面Sの全体に硬質樹脂部2bが形成された枠材5が得られる。硬質樹脂部2bの被覆厚さは、ポリアミック酸溶液の塗布厚さにより調整することができ、本例では、150〜2500μmの範囲に設定されている。
〈貼り合わせ〉
貼り合わせでは、ポリウレタンシート2、枠材5および両面テープ8を貼り合わせる。まず、ポリウレタンシート2の保持面Pの反対側の面に、両面テープ8の一面側の粘着剤層を貼り合わせる。両面テープ8の他面側には剥離紙9が残されている。ポリウレタンシート2に両面テープ8が貼り合わされた保持パッドが得られる。次に、枠材5をポリウレタンシート2の保持面Pの外縁部に接着剤7を介して貼着する。そして、表面にキズや汚れ、異物等の付着が無いことを確認する等の検査を行い、保持具10を完成させる。
図2に示すように、保持具10を用いて被研磨物の研磨加工を行うときは、片面研磨機の保持用定盤に装着した保持具10で保持用定盤に被研磨物30を保持させる。保持用定盤と対向するように配置された研磨用定盤には被研磨物30を研磨加工するための研磨パッドを装着する。保持用定盤に保持具10を装着するときは、剥離紙8を取り除いて粘着剤層を露出させた後、露出した粘着剤層を保持用定盤に接触させ押圧する。保持面Pに適量の水を含ませて、枠材5の貫通穴6に被研磨物30を挿入する。被研磨物をポリウレタンシート2側に押し付けることで、保持面Pと被研磨物30との間に浸入した水の表面張力およびポリウレタンシート2のポリウレタン樹脂の弾性により被研磨物30を保持具10を介して保持用定盤に保持させる。研磨加工時には、被研磨物30および研磨パッド間に研磨粒子を含む研磨液(スラリ)を循環供給すると共に、被研磨物30に圧力をかけながら研磨用定盤ないし保持用定盤を回転させることで、被研磨物30を研磨加工する。
(作用等)
次に、本実施形態の保持具10の作用等について、発泡樹脂部5aの面Sに硬質樹脂部5bが配された枠材5の作用を中心に説明する。
従来保持具では、枠材が繊維強化樹脂や金属等の剛性を有する材質で構成されていることから、研磨加工時に被研磨物が枠材に接触して被研磨物が破損することがある。また、被研磨物の破損により生じる破片により被研磨物に更にキズを与えてしまうおそれがある。被研磨物および枠材が接触したときの衝撃を和らげるために、枠材の貫通穴側の面に樹脂部材を配置する技術がある。ところが、樹脂部材が軟質樹脂の場合、研磨加工中に経時的に樹脂部材が塑性変形するため、枠材と被研磨物との隙間が大きくなり、研磨加工中に被研磨物が脱落しやすくなる。また、樹脂部材が硬質樹脂の場合、樹脂部材の配置されていない枠材を使用したときより、被研磨物の破損を抑えることができるものの、樹脂部材に軟質樹脂を用いた場合ほどの効果は得られず、結果的に被研磨物および樹脂部材のいずれも破損してしまう。更に、使用される樹脂部材は疎水性のものが多く、金属との凝着力を殆ど有しておらず、研磨加工中に樹脂部材が枠材から剥離しやすい問題もある。本実施形態はこれらを解決することができる保持具である。
本実施形態の保持具10では、枠材5を構成する発泡樹脂部5aが弾性を有するためクッション性を有している。また、発泡樹脂部5aの貫通穴側の面を被覆するように配された硬質樹脂部5bが発泡樹脂部5aより硬度が高いので剛性を維持でき、硬質樹脂部5bが可撓性を有するので発泡樹脂部5aのクッション性が発揮される。このため、研磨加工時に被研磨物が枠材の硬質樹脂部5bに繰り返し接触しても、発泡樹脂部5aのクッション性により衝撃が吸収され被研磨物ないし枠材の破損を抑制することができる。また、硬質樹脂部5bにより枠材全体の塑性変形も抑制され、被研磨物が枠材から脱落しにくく安定した研磨加工を行うことができる。
また、本実施形態では、発泡樹脂部5aの内部に形成された気泡53が連通し、気泡53のうち発泡樹脂部5aの貫通穴6側に形成された気泡53が面Sで開口している。また、硬質樹脂部5bがポリアミック酸溶液を発泡樹脂部5aに塗布することで形成される。これにより、ポリアミック酸溶液を、面Sで開口した気泡53や、内部に形成された気泡53内に浸入させることで、硬質樹脂部5bを面Sで開口した気泡53や、内部に形成された気泡53内にも形成することができる。このため、発泡樹脂部5aと硬質樹脂部5bとの間には、ポリウレタン樹脂とポリイミドとの凝着力に加えて、硬質樹脂部5bの一部が発泡樹脂部5aの気泡53に入り込み、いわゆるアンカリング効果が生じる。これにより、ポリウレタンと研磨加工中に硬質樹脂部5bが発泡樹脂部5aから剥離しにくくなり、安定した研磨加工を行うことができる。
更に、本実施形態では、硬質樹脂部5bの被覆厚さが150〜2500μmの範囲に調整されている。このため、研磨加工中に被研磨物が枠材5に接触しても、硬質樹脂部5bが可撓性を有するため、発泡樹脂部5aのクッション性を発揮することができる。硬質樹脂部5bの被覆厚さが150μm未満の場合、硬質樹脂部5bが薄く剛性が不十分となるため、研磨加工中に被研磨物が枠材5に繰り返し接触することで硬質樹脂部5bが破損しやすくなる。反対に、硬質樹脂部5bの被覆厚さが2500μmを超える場合、硬質樹脂部5bの可撓性が失われてしまうため、枠材5を発泡樹脂部5aで構成しても、発泡樹脂部5aのクッション性を発揮することができず、研磨加工中に被研磨物が枠材5に接触したときに、被研磨物が破損してしまう。
また更に、本実施形態では、気泡53の開口が形成された面の単位面積あたりにおける、気泡53の平均開口径が30〜2000μmの範囲に調整されている。このため、ポリアミック酸溶液の粘度にもよるが、硬質樹脂5bのポリイミドを形成する際にポリアミック酸溶液を容易に気泡53内へ浸透させることができる。気泡53の平均開口径が10μm未満の場合、ポリアミック酸溶液を発泡樹脂部5aに塗布しても平均開口径が小さいため、ポリアミック酸溶液を気泡53内に浸透させにくくなり、開口した気泡53内に硬質樹脂部5bが形成されないことがある。反対に、気泡53の平均開口径が2000μmを超える場合、枠材5の剛性が不十分となる。
更にまた、本実施形態では、気泡53の開口が形成された面の単位面積あたりにおける気泡53の開口面積の割合が30〜80%の範囲に調整されている。このため、上述した気泡53の平均開口径にもよるが、気泡53の開口が形成された面の単位面積あたりにおける気泡53の開口の数が適度に調整される。従って、硬質樹脂部5bが気泡53の開口に入り込むことで発泡樹脂部5aに確実に固定されるので、研磨加工中に硬質樹脂部5bが発泡樹脂部5aから剥離しにくくなる。気泡53の開口面積の割合が10%未満の場合、気泡53の開口の数も少なくなるため、硬質樹脂部5bが発泡樹脂部5aに確実に固定されず、研磨加工中に剥離してしまう。気泡53の開口面積の割合が80%を超える場合、枠材5の剛性が不十分となる。
なお、本実施形態では、硬質樹脂部5bが発泡樹脂部5aの面Sを被覆するように配されている例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図4に示すように、硬質樹脂部5bが、更に、発泡樹脂部5aの外側面(以下、面Uという。)、および、ポリウレタンシート2が貼着された面の反対側の面(以下、面Tという。)を被覆するように配されていてもよい。この場合、硬質樹脂部5bが、面Uおよび面Tの何れか一方を被覆するように配されていてもよい。発泡樹脂部5aの面Uおよび面Tに配する硬質樹脂部2bの被覆厚さは、面Sの被覆厚さと同じ範囲にすることで、可撓性を持たせることが好ましい。硬質樹脂部5bが面Uないし面Tに配されることで、枠材5がより高い剛性を維持することができる。
また、本実施形態では、硬質樹脂部5bが発泡樹脂部5aの面Sの全体を被覆するように配されている例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、面Sの面積の40%以上を被覆するように配されていればよい。硬質樹脂部5bが配された面積が、面Sの面積の40%未満の場合、発泡樹脂部5aが弾性を有することから、被研磨物および枠材5に摩擦抵抗が生じるため、被研磨物の挿入および取り外し作業に影響を及ぼすこととなる。結果として、被研磨物の平坦性の悪化、被研磨物の破損を誘発することとなる。
更に、本実施形態では、硬質樹脂部5bに用いたポリイミドを、ポリアミック酸溶液を発泡樹脂部5aに塗布することで形成したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、金型または外枠内に発泡樹脂部5aを載置しポリアミック酸溶液を隙間に流し込み、ポリアミック酸溶液を発泡樹脂部5aに含浸させることで形成してもよい。ポリアミック酸溶液には、ポリイミド化の反応温度を下げる目的で、トリエチルアミン、ピリジンのような3級アミン等の反応触媒、無水酢酸や無水絡酸のような酸無水物等の脱水縮合剤等を混合してもよい。また、硬質樹脂部5bとして、いずれの溶媒に対しても不溶な樹脂や発泡樹脂部5a(例えば、ポリウレタン樹脂)を溶解する溶媒にしか溶けない樹脂を使用する場合、硬質樹脂部5bを高温下で射出成型することで形成してもよい。射出成型の場合、金型または外枠の中に発泡樹脂部5aを入れ、高温下で液体状となった硬質樹脂部5bを隙間に流し込むことで、硬質樹脂部5bを形成することができる。
また更に、本実施形態では、発泡樹脂部5aにポリウレタン樹脂を用い、乾式成型法により形成する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、発泡樹脂部5aを湿式成膜法により形成してもよい。この場合、ポリウレタン樹脂溶液に架橋剤を加えておき、湿式凝固させた後、加熱処理を施し架橋硬化させればよい。また、発泡樹脂部5aに使用したポリウレタン樹脂の原材料、すなわち、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、分散液、およびポリアミン化合物等をミキサーで攪拌し、分散液による水の気泡を、ガスを吹き込むことで粉砕し微細化させる方法(メカニカルフロス法)により形成してもよい。
更にまた、本実施形態では、発泡樹脂部5aとして、耐熱性および耐溶剤性の両方を有する熱硬化性樹脂、すなわち、架橋硬化されたポリウレタン樹脂を用いる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、発泡樹脂部5aにおいて、耐熱性および耐溶剤性の少なくとも一方を有していれば、熱硬化性樹脂以外の樹脂を使用してもよい。例えば、硬質樹脂部5bに使用する樹脂の溶液を塗布または含浸させて硬質樹脂部5bを形成する場合、発泡樹脂部5aが硬質樹脂部5bの形成に使用する溶液に溶解しないように、発泡樹脂部5aには耐溶剤性を有する樹脂を用いることが好ましい。また、硬質樹脂部5bを高温下で射出成形して形成する場合、発泡樹脂部5aが熱溶融しないように、発泡樹脂部5aには耐熱性を有する樹脂を用いることが好ましい。
また、本実施形態では、発泡樹脂部5aとしてショアA硬度が80°のポリウレタン樹脂を用いる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、軟質プラスチックまたは半硬質プラスチックで弾性を有していれば、シリコーンゴムやフッ素ゴム等のエラストマを使用してもよい。また、発泡樹脂部5aのショアA硬度は、用いる材質の種類の他に、発泡樹脂部5aを作製時に架橋硬化させる度合いにも依存する。このため、発泡樹脂部5aのショアA硬度は、被研磨物の脆性に応じて、材質の種類を選択して用いたり、架橋硬化させる度合いを調整することで、調整することができる。また、本実施形態では、硬質樹脂部5bを構成する材料として硬質プラスチックであるポリイミドを用いたが、発泡樹脂部5aより硬度の高い樹脂であれば、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上述したPPSやPES等のエンジニアリングプラスチックを使用してもよい。ここで付言すれば、日本工業規格(JIS K 6900「プラスチック−用語」)の定義では、指定条件のものでの引張試験における弾性率が70MPaより大きくないものを軟質プラスチック、70〜700MPaのものを半硬質プラススチック、700MPaを超えるものを硬質プラスチックと定めている。
更に、本実施形態では、発泡樹脂部5aは、貫通穴6側に形成された気泡53が面Sで開口している例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、気泡53が面Sで開口していなくてもよい。また、本実施形態では、発泡樹脂部5aにおいて、気泡53が連通している例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発泡樹脂部5aの気泡53が連通せず独立して形成された発泡構造であってもよい。この場合、発泡樹脂部5aをポリウレタン樹脂で乾式成型法により製造する際に、乾式成型工程の準備ステップで準備する分散液において、整泡剤を添加しないことで実現することができる。気泡53を連通させ、面Sで開口させると、硬質樹脂部5bを開口した気泡53や内部の開口していない気泡53内にまで存在させることができ、研磨加工中に硬質樹脂部5bを発泡樹脂部5aから剥離しにくくすることができる。
また更に、本実施形態では、気泡53の開口が形成された面の単位面積あたりにおける気泡53の平均開口径が30〜2000μmの範囲に調整されている例を示したが、ポリアミック酸溶液を気泡53内に浸透させると共に、枠材5の剛性を維持することを考慮すれば、気泡53の平均開口径を100〜500μmの範囲に調整することがより好ましい。また、本実施形態では、気泡53の開口が形成された面の単位面積あたりにおける気泡53の開口面積の割合が30〜80%の範囲に調整されている例を示したが、硬質樹脂部5bを発泡樹脂部5aに確実に固定すると共に、枠材5の剛性を維持することを考慮すれば、気泡53の開口面積の割合を50〜70%の範囲に調整することがより好ましい。
更にまた、硬質樹脂部5bが発泡樹脂部5aの面Sで開口した気泡53や、発泡樹脂部5aの面Sから内部にかけて5mm以内の範囲に形成された気泡53内にも存在している例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。発泡樹脂部5aのクッション性を確保することや、コスト高を招く硬質樹脂部5bの使用量を低減し低コスト化を図ることを考慮すれば、硬質樹脂部5bは、発泡樹脂部5aの面Sから内部にかけて3mm以内の範囲に形成された気泡53内に存在していることがより好ましい。
また、本実施形態では、枠材5の作製の乾式成型工程において、硬化成型ステップで形成したポリウレタン発泡体をスライスし円環状に裁断することで複数枚の発泡樹脂部5aを形成する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ポリウレタン発泡体の厚さを微調整し厚さ精度を向上させることを目的として、スライス後にバフィングを施してもよい。また、硬化成型ステップで1枚の薄いポリウレタン発泡体を作製し、これをスライスせずにそのまま円環状に裁断することで、発泡樹脂部5aを形成してもよい。この場合、発泡樹脂部5aの気泡53のうち貫通穴6側に形成された気泡53が面Sで開口し、面Tおよび面U側に形成された気泡53が面Tおよび面Uで開口していない発泡樹脂部5aが形成されることとなる。本例では、ポリウレタン発泡体をスライスし、円環状に裁断することで発泡樹脂部5aを形成するため、発泡樹脂部5aは気泡53の一部が面S、面Tおよび面Uで開口している。
更に、本実施形態では、円環状の枠材5を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、被研磨物の形状に合わせて矩形状や楕円形状としてもよい。また、本実施形態では、枠材5に1つの貫通穴6が形成されている例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、枠材5に2つ以上の貫通穴6が形成されていてもよい。このようにすれば、複数の被研磨物を同時に保持させ、研磨加工することが可能となる。
また更に、本実施形態では、シート材として湿式成膜法により形成されたポリウレタン樹脂を使用する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ポリエステル樹脂等の他の樹脂を使用してもよい。ポリウレタン樹脂を用いるようにすれば、湿式成膜法により連続状の発泡構造を容易に形成することができる。更に、本実施形態では、ポリウレタンシート2のスキン層が形成された面側にバフ処理を施す例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、バフ処理に代えてスライス処理を施すようにしてもよく、スキン層の反対側の面にバフ処理やスライス処理を施してスキン層を残してもよい。スキン層を残した場合、スキン層に水等の液体を含ませておくことで液体の表面張力等により、被研磨物をより密着して保持することができる。もちろん、湿式成膜時に略均一な厚みでポリウレタンシート2を形成することができれば、バフ処理やスライス処理を施さなくてもよい。
更にまた、本実施形態では、枠材5に接着剤7を介してポリウレタンシート2を貼り合わせる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、PET製フィルム等の基材の両面に接着剤が塗工された両面テープを使用することも可能である。更に、本実施形態では、接着剤7としてポリウレタン樹脂製のホットメルト型接着剤を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本実施形態では、ポリウレタンシート2の保持面Pの反対側の面に基材を有する両面テープ8を貼り合わせる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ポリウレタンシート2と両面テープ8との間にPET、不織布、織布等の支持材を貼り合わせるようにしてもよく、両面テープ8が基材を有することなく粘着剤のみで構成されてもよい。