以下、本発明の実施形態に係るシート処理装置及び画像形成装置について、図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係る画像形成装置は、複写装置、プリンタ、ファクシミリ及びこれら複合機器等、その内部にシートを折り畳んで冊子状のシート束(折りシート束)を形成するシート処理装置としてのフィニッシャ500を備える画像形成装置である。以下の実施形態においては、画像形成装置として複写装置1000を用いて説明する。
まず、本発明の実施形態に係る複写装置1000の全体構造について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る複写装置1000の全体構造を模式的に示す断面図である。図2は、本実施形態に係る複写装置1000の制御部1100を示すブロック図である。
図1及び図2に示すように、複写装置1000は、原稿給送部100と、イメージリーダ部200と、画像形成部としてのプリンタ部300と、を備える。また、複写装置1000は、折り処理部400と、インサータ600と、フィニッシャ500と、制御部1100と、操作部(図1においては図示せず)と、を備える。
原稿給送部100は、イメージリーダ部200の画像読取位置(図示せず)に向けて原稿Dを一枚ずつ順次給送する。イメージリーダ部200は、原稿Dの画像を読み取る。プリンタ部300は、イメージリーダ部200で読み取った原稿Dの画像情報、又は送られてきた画像情報に基づいてシートPに画像を形成する。折り処理部400は、フィニッシャ500に搬送する前に、予めシートPにZ折り等の折り処理等を行う。
インサータ600は、ユーザによりインサートトレイ601,602にセットされたシートを、フィニッシャ500を介してスタックトレイ701,700或いは後述の中綴じ製本部800に向けて給送する。インサートトレイ601,602上に積載されたシートの束は、1枚ずつ順次分離され、所望のタイミングでフィニッシャ500に合流する。
フィニッシャ500は、プリンタ部300で画像が形成され、折り処理部400を介して搬送されたシートP又はインサータ600から搬送されたシートPを取り込み、取り込んだ複数枚のシートPを整合して1つのシート束として束ねる。その後、フィニッシャ500は、必要に応じて、シート束の後端側をステイプルする綴じ処理、後端側に穿孔を施す穿孔処理(穴あけ処理)、ソート処理、ノンソート処理、及び中綴じ製本処理(折り処理、変形処理等)等を選択的に行う。
図2に示すように、制御部1100は、CPU回路部150と、原稿給送制御部101と、イメージリーダ制御部201と、画像信号制御部202と、プリンタ制御部301と、折り処理制御部401と、を備える。また、制御部1100は、フィニッシャ制御部590と、クランプ制御部402と、を備える。
CPU回路部150は、CPU(不図示)と、制御プログラムを格納するROM151と、制御データを一時的に保持するための領域や制御に伴う演算の作業領域として用いられるRAM152と、を備える。CPUは、ROM151に格納された制御プログラム及び操作部(図示せず)の設定に従い、以下の各部を制御する。すなわち、CPU回路部150は、原稿給送制御部101、イメージリーダ制御部201、画像信号制御部202、プリンタ制御部301、折り処理制御部401及びフィニッシャ制御部590を制御する。
原稿給送制御部101は、原稿給送部100を制御する。イメージリーダ制御部201は、イメージリーダ部200を制御する。プリンタ制御部301は、プリンタ部300を制御する。折り処理制御部401は、折り処理部400を制御する。フィニッシャ制御部590は、フィニッシャ500(中綴じ製本部800等)及びインサータ600を制御する。クランプ制御部402は、後述する中綴じ製本部800のクランプユニット900を制御する。例えば、クランプ制御部402は、上死点センサ及び下死点センサによる検知結果に基づき、クランプモータMの回転を制御する。
外部I/F203は、複写装置1000と外部のコンピュータとのインタフェースであり、外部コンピュータからのプリントデータをビットマップ画像に展開し、画像データとして画像信号制御部202へ出力する。また、イメージリーダ制御部201から画像信号制御部202へは、イメージセンサ(図示せず)で読み取った原稿の画像が出力される。プリンタ制御部301は、画像信号制御部202からの画像データを露光制御部(図示せず)へ出力する。
操作部は、画像形成に関する各種機能を設定するための複数のキー、設定状態を表示するための表示部等を備える。操作部は、ユーザによる各キーの操作に対応するキー信号をCPU回路部150に出力すると共に、CPU回路部150からの信号に基づき対応する情報を表示部(図示せず)に表示する。
次に、フィニッシャ500について、図3及び図4を参照しながら、シートの動きに沿って具体的に説明する。図3は、本実施形態に係る複写装置1000のフィニッシャ500を模式的に示す断面図である。図4(a)及び図4(b)は、本実施形態に係る中綴じ製本部800の部分拡大断面図である。
図3に示すように、フィニッシャ500は、折り処理部400を介して搬送されたシートをその内部に取り込むための搬送パス520を備える。搬送パス520には、入口ローラ対501から順番に搬送ローラ対502,503,504,505,506,507,508が設けられている。搬送ローラ対502と搬送ローラ対503の間には、パンチユニット530が設けられている。パンチユニット530は、必要に応じて穿孔動作を行い、搬送されるシートの後端部に穴あけ(穿孔)処理を行う。
搬送パス520の終端は、二股に分かれている。二股に分かれた一方側は、上排出パス521に接続されており、他方側は下排出パス522に接続されている。搬送パス520の二股に分かれた分岐には、切替部材513が設けられている。切替部材513は、シートの搬送経路を上排出パス521と下排出パス522とに切り替える。上排出パス521は、上排出ローラ対509を備え、上排出ローラ対509によりスタックトレイ701へのシートの排出を行う。下排出パス522は、搬送ローラ対510,511,512を備え、処理トレイ550又はサドル排出パス523へのシートの排出を行う。
搬送パス520の他方側に接続される下排出パス522の終端は、二股に分かれている。二股に分かれた一方側は、処理トレイ550に接続されており、他方側は、サドル排出パス523に接続されている。下排出パス522の二股に分かれた分岐には、切替部材514が設けられている。切替部材514は、シートの搬送経路を処理トレイ550側と中綴じ製本部800側とに切り替える。
下排出パス522から処理トレイ550に排出されるシートは、順次、整合処理されながら束状に収容され、操作部からの設定に応じて、仕分け処理や綴じ処理が行われる。なお、綴じ処理は、ステイプラ560により行われる。ステイプラ560は、シートの搬送方向と直交するシートの幅方向に移動可能となっており、シート束の任意の位置に綴じ処理を行う。
その後、束状に収容されたシートは、束排出ローラ対551によりスタックトレイ700又はスタックトレイ701に選択的に排出される。スタックトレイ700,701は、上下方向に移動可能に構成されている。上側のスタックトレイ701は、上排出パス521と処理トレイ550からのシートを受け取ることができる。下側のスタックトレイ700は、処理トレイ550からのシートを受け取ることができる。このようにして、スタックトレイ700,701には、大量のシート又はシート束を積載することができる。また、積載されたシート又はシート束は、その後端を上下方向に伸びる後端ガイド710に規制されて整列される。
下排出パス522からサドル排出パス523に排出されるシートは、サドル排出パス523を介して中綴じ製本部800に搬送される。中綴じ製本部800は、複数枚のシートからなるシート束に対して、選択的に綴じ処理を行い、その後、折り処理を行い、折りシート束をつくる。
ここで、中綴じ製本部800について、更に具体的に説明する。中綴じ製本部800側に切り替えられたシートは、切替部材514によりサドル排出パス523から中綴じ製本部800へ搬送される。中綴じ製本部800は、サドル入口ローラ対801と、切替部材802と、収納ガイド803と、滑りローラ804と、シート位置決め部材805と、モータM1と、ステイプラ820と、モータM2と、を備える。
中綴じ製本部800へ搬送されたシートは、まず、サドル入口ローラ対801に受け渡され、サイズに応じてソレノイドにより動作する切替部材802により搬入口を選択されて、収納ガイド803内に搬入される。搬入されたシートは、滑りローラ804により先端が可動式のシート位置決め部材805に接するまで搬送される。モータM1は、サドル入口ローラ対801及び滑りローラ804を駆動する。搬入された各シートは、ここでシート束となる。
収納ガイド803の途中位置には、収納ガイド803を挟んでステイプラ820が対向配置されている。ステイプラ820は、針を突き出すドライバー820aと、突き出された針を折り曲げるアンビル820bと、を備える。なお、シート位置決め部材805は、シート搬入時において、シート搬送方向の中央部が、ステイプラ820の綴じ位置になるようにシート(シート束)を停止させる。シート位置決め部材805は、モータM2の駆動を受けて移動可能に配設されており、シートのサイズ等に応じて位置を変える。
また、中綴じ製本部800は、折りローラ対810a,810bと、突き出し部材830と、モータM3と、モータM4と、整合板対815と、モータM5と、を備える。折りローラ対810a,810bは、ステイプラ820の下流側に設けられている。突き出し部材830は、折りローラ対810a,810bの対向位置に設けられている。突き出し部材830は、収納ガイド803から退避した位置をホームポジションとしている。突き出し部材830は、モータM3の駆動により収納されたシート束に向けて突き出すことにより、シート束を、モータM4により駆動される折りローラ対810a,810bのニップに押し込む。
シート束は、突き出し部材830によって折りローラ対810a,810bのニップに押し込まれることにより折り畳まれ、搬送方向先端に折り頂部(以下、「折り目」ともいう)が形成された折りシート束(以下、「冊子T」ともいう)となる。つまり、シート束は、折りローラ対810a,810bにより折り処理が行われる。その後、突き出し部材830は、再びホームポジションに戻る。なお、折りローラ対810aと折りローラ対810bとは、シート束を折り曲げるに充分な圧力を生じさせるように配設されている。この圧力は、本実施形態においては、不図示のバネにより生じるように構成されている。
ステイプラ820で綴じ処理が行われたシート束の折り処理は、綴じ処理終了後に、シート束のステイプル位置が折りローラ対810のニップ位置となるように、シート位置決め部材805を綴じ処理時の位置から所定距離降下させた後に実行される。こうして綴じ処理を施した位置でシート束を折り畳むことができる。
整合板対815は、収納ガイド803に収納されたシートを整合し、折りローラ対810a,810bの外周面を挟んで収納ガイド803に突出した面を持つ。整合板対815は、モータM5の駆動を受けて、シートに対し挟み込み方向に移動することで、シートの幅方向の位置決めを行う。
さらに、中綴じ製本部800は、搬送ガイド813と、搬送部としての第1折搬送ローラ対811a,811bと、第2折搬送ローラ対812a,812bと、クランプユニット900と、端部処理部としてのプレスユニット860と、を備える。
図4(a)及び図4(b)に示すように、搬送ガイド813は、折りローラ対810a,810bと第1折搬送ローラ対811a,811bの間をつなぐための搬送ガイドである。折りローラ対810a,810bと第1折搬送ローラ対811a,811bのニップ接線は、互いに異なったニップ角度を有している。そのため、折りローラ対810a,810bから搬送された冊子(折り畳まれた冊子状のシート束)Tは、搬送ガイド813によって進行方向を変えられ、第1折搬送ローラ対811a,811bへと搬送される。
搬送手段としての第1折搬送ローラ対811a,811bは、折りローラ対810a,810bから搬送される冊子Tを第2折搬送ローラ対812a,812bに搬送する。第2折搬送ローラ対812a,812bは、第1折搬送ローラ対811a,811bにより搬送される冊子Tをプレスユニット860に搬送する。第1折搬送ローラ対811a,811b及び第2折搬送ローラ対812a,812bは、折り畳まれたシート束である冊子Tを搬送するのに充分な圧力を生じさせるように配設されている。
クランプユニット900は、第1折搬送ローラ対811a,811bと第2折搬送ローラ対の間に配置されている。図4(a)に示すように、クランプユニット900は、第1折搬送ローラ対811a,811bより送られた冊子Tを、第2折搬送ローラ対812a,812bへと受け渡す搬送ガイドの役割を果たす。第1折搬送ローラ対811a,811bと第2折搬送ローラ対812a,812bのニップ接線は、互いに異なったニップ角度を有する。そのため、冊子Tは、クランプユニット900によって進行方向を変えられ、第1折搬送ローラ対811a,811bから第2折搬送ローラ対812a,812bへと搬送される。
さらに、クランプユニット900は、図4(b)に示すように、第2折搬送ローラ対812a,812bによってシート処理位置に送られて停止した冊子Tを保持する役割も果たす。なお、折りローラ対810a,810b、第1折搬送ローラ対811a,811b、第2折搬送ローラ対812a,812bは、モータM4(図3参照)により等速回転する。
プレスユニット860は、第2折搬送ローラ対812a,812bの下流に設けられている。プレスユニット860は、第2圧接部としてのプレスローラ対861と、第1圧接部としての圧接ローラ863と、プレスローラ対861及び圧接ローラ863を支持するプレスホルダー862と、を備える。プレスユニット860は、プレスローラ対861が冊子Tの両表面を挟持し、且つ、圧接ローラ863が冊子Tの折り端部を開放端部に向かって押圧(圧接)する。この状態で、プレスホルダー862を折り目に沿って移動させることにより、折り端部が四角く角付けされる。冊子Tは、プレスユニット860によるこの変形処理により折り目が強化される。
このとき、クランプユニット900は、冊子Tを保持した状態にあることで圧接ローラ863による押圧力に対抗し、冊子Tのズレを防止する。そして、プレスホルダー862(圧接ローラ863)の移動が終了して冊子Tの折り端部に対する押圧力が無くなったところで、クランプユニット900は、保持を解除する。
折り目が強化された冊子Tは、第1折搬送ローラ対811a,811b、クランプユニット900及び第2折搬送ローラ対812a,812bを介して、排紙トレイ870に排出される。
次に、クランプユニット900について、図4(a)及び図4(b)に加え、図5から図11を参照しながら更に具体的に説明する。まず、クランプユニット900の全体構造について説明する。図5は、本実施形態に係るクランプユニット900の斜視図である。図6(a)は、可動クランプ950の第2クランプ板915がシート案内位置に位置する状態を示す正面図である。図6(b)は、可動クランプ950の第2クランプ板915が下降する状態を示す正面図である。図6(c)は、可動クランプ950の第2クランプ板915がシート保持位置に位置する状態を示す正面図である。図7(a)は、可動クランプ950が固定板バネ919に固定された状態を模式的に示す部分拡大図である。図7(b)は、可動クランプ950が下降する状態を模式的に示す部分拡大図である。図7(c)は、可動クランプ950の第2クランプ板915が下クランプ板916と当接した状態を模式的に示す部分拡大図である。図7(d)は、可動クランプ950の第2クランプ板915が下クランプ板916を押圧する状態を模式的に示す部分拡大図である。
図8は、シート案内位置において固定板バネ919によって固定される可動クランプ950を示すクランプユニット900の斜視図である。図9は、シート案内位置において固定板バネ919によって固定される可動クランプ950を示すクランプユニット900の断面図である。図10(a)は、第2スライド軸913とスライドブッシュ912を示す部分拡大図である。図10(b)は、可動クランプ950が傾動した状態を示す斜視図である。図11は、厚さの異なる冊子Tの表面に倣うように可動クランプ950が傾動した状態を示す正面図である。
図5に示すように、クランプユニット900は、下クランプ板916と、ガイド部材としての可動クランプ950と、可動クランプ950を移動させる移動機構960と、固定部材としての固定板バネ919と、を備える。
下クランプ板916は、第1折搬送ローラ対811a,811bと第2折搬送ローラ対812a,812bとの間に配置されている(図4(a)及び図4(b)参照)。下クランプ板916は、プレスユニット860による変形処理が行われる際に冊子Tを保持する位置に固定されている。下クランプ板916は、図5に示すシートの搬送方向と直交するX方向(以下、「第1方向X」ともいう)に伸びる保持面916aを備えており、可動クランプ950とともにプレスユニット860によるシート処理位置に冊子Tを保持する(図4(b)参照)。また、下クランプ板916は、第1折搬送ローラ対811a,811bから搬送される冊子Tの一方側の面(本実施形態においては下面)側を規制して、冊子Tを第2折搬送ローラ対812a,812bに案内する(図4(a)参照)。
可動クランプ950は、第1折搬送ローラ対811から搬送されるシートを第2折搬送ローラ対812に案内するシート案内位置と、案内されたシートを保持するシート保持位置とに移動可能に構成されている(図4(a)及び図4(b)参照)。なお、シート案内位置とは、第1折搬送ローラ対811a,811bから搬送される冊子Tの他方側の面(本実施形態においては上面)側を規制して、冊子Tを第2折搬送ローラ対812a,812bに案内する位置をいう(図4(a)参照)。また、シート保持位置とは、下クランプ板916と共にプレスユニット860によるシート処理位置に停止した冊子Tを保持する位置をいう(図4(b)参照)。
可動クランプ950は、保持板としての第2クランプ板915と、支持部としての第1スライド軸913,913と、スプリングとしての圧縮バネ914,914と、固定具918,918と、を備える。第2クランプ板915は、シートの搬送方向と直交する第1方向Xに伸び、シート案内位置において、第1折搬送ローラ対811a,811bから搬送される冊子Tの上面側を規制して、冊子Tを第2折搬送ローラ対812a,812bに案内する。また、第2クランプ板915は、下クランプ板916の保持面916a又は保持面916a上に位置する冊子Tの表面を押圧可能な保持面915aを備える。第2クランプ板915は、下クランプ板916と共にシート保持位置で冊子Tを保持する。
第1スライド軸913,913は、第2クランプ板915の両端側にそれぞれ配設されており、起端部が第2クランプ板915の保持面915aと反対側の面に連結されている。また、第1スライド軸913の先端部には固定具918が取り付けられている。圧縮バネ914は、第1スライド軸913を中央に貫通させた状態で第2クランプ板915と固定具918との間に配設されている(例えば、図7(a)参照)。
移動機構960は、可動クランプ950をシート案内位置とシート保持位置とに移動させる。移動機構960は、駆動源としてのクランプモータMを有する移動機構本体961と、移動部材としての第1クランプ板910と、を備える。移動機構本体961は、クランプモータMと、第1プーリ901と、ベルト902と、第2プーリ903と、第1クランプ軸904と、第1ギア905と、第2ギア906と、第2クランプ軸907と、第1アーム対908と、第2アーム対909と、を備える。
クランプモータMは、不図示のクランプフレームに取り付けられており、クランプモータMのモータ軸上には第1プーリ901が取り付けられている。第1プーリ901は、ベルト902を介して第2プーリ903に接続されており、第2プーリ903にクランプモータMの回転を伝える。第2プーリ903には、第1クランプ軸904が連結されており、第1クランプ軸904の先端には第1ギア905が取り付けられている。第1ギア905は、第2ギア906と噛合しており、第2ギア906は、第2クランプ軸907に取り付けられている。第2ギア906は、第1ギア905よりも大径に形成されており、第1ギア905を介して伝達される回転速さは、第2ギア906に伝達されることにより減速される。
第2クランプ軸907の両端には、第1アーム対908が連結されており、第1アーム対908には、第2アーム対909が回動自在に連結されている。第2アーム対909には、第1クランプ板910が回動自在に連結されている。第2ギア906により減速された回転は、第2クランプ軸907の両端に設けられる第1アーム対908を回転させ、第2アーム対909を介して第1クランプ板910を上下方向(図5に示すY方向をいい、以下、「第2方向Y」ともいう)に移動させる。
また、移動機構本体961は、スライドブッシュ912,912を備える。スライドブッシュ912,912は、不図示のクランプフレームに取り付けられており、第2アーム対909と第1スライド軸913との間に位置するように配置されている。スライドブッシュ912,912は、第1クランプ板910の移動方向である第2方向Yに貫通した貫通孔912aを備える。貫通孔912aは、第2方向Yと直交する第1方向Xに長い長丸孔状(第1方向Xを長径とする略楕円形状)に形成されている。
第1クランプ板910は、第1方向Xに延びる板状部910aと、断面略コの字状に形成されたスライド支持部910b,910bと、第2スライド軸911,911と、を備える。板状部910aには、第2アーム対909が回動自在に連結されている。スライド支持部910b,910bは、板状部910aの両端に設けられており、第1スライド軸913,913を支持する。具体的には、スライド支持部910bの上面(第2方向Yにおける上面)910cには、第1スライド軸913を貫通可能な貫通孔が形成されている。一方、スライド支持部910bの下面(第2方向Yにおける下面)には、第1スライド軸913及び圧縮バネ914を貫通可能な貫通孔が形成されている。スライド支持部910b,910bは、上面910cが第1スライド軸913を貫通させた状態で固定具918と圧縮バネ914の間に位置し、下面が第1スライド軸913及び圧縮バネ914を貫通させた状態で支持される。言い換えると、第1スライド軸913に連結される第2クランプ板915は、圧縮バネ914を介して第1クランプ板910に対して浮動自在に支持されている。
第2スライド軸911,911は、円柱状に形成されており、スライドブッシュ912,912の貫通孔912aを貫通した状態で、第1クランプ板910に連結されている。ここで、スライドブッシュ912,912の貫通孔912aは長丸孔状に形成されている。そのため、第2スライド軸911,911は、スライドブッシュ912,912に対して第1方向Xに傾動自在になる(後述の図10(a)及び図10(b)参照)。
固定板バネ919は、不図示のクランプフレームに取り付けられており、弾性変形可能に形成されている。固定板バネ919は、移動機構960により可動クランプ950がシート保持位置からシート案内位置に移動した場合に、第1スライド軸913の先端に固定された固定具918に押圧されることにより弾性変形し、その反力で可動クランプ950を固定する。
また、クランプユニット900は、上死点センサ(図示せず)と、下死点センサ(図示せず)と、を備える。上死点センサは、第1アーム対908の上死点を検知する。下死点センサは、第1アーム対908の下死点を検知する。
次に、クランプユニット900の動作について、図6(a)から図11を参照しながら、説明する。まず、可動クランプ950がシート案内位置からシート保持位置へ移動する下降動作について説明する。図6(a)に示すように、シート案内位置においては、第1アーム対908における第2アーム対909との連結部は、上死点に位置する。そのため、第2アーム対909に連結される第1クランプ板910も上死点に位置することになる。これにより、第1クランプ板910のスライド支持部910bに支持される可動クランプ950も上死点に位置する。
具体的には、図7(a)に示すように、スライド支持部910bの上面910cが、第1スライド軸913の先端に取り付けられた固定具918と係合し、可動クランプ950を第2方向Yに押し上げる。可動クランプ950が上死点に位置すると、固定具918が固定板バネ919を押圧することにより固定板バネ919が撓み(弾性変形し)、その反力で可動クランプ950を固定する。これがシート案内位置になる(図8及び図9参照)。なお、シート案内位置においては、上死点センサにより、第1アーム対908が上死点にあることが検知される。
冊子Tの保持動作の開始に伴い、クランプモータMが正回転すると、第1プーリ等を介してクランプモータMに接続される第1アーム対908が正回転を開始する。第1アーム対908が正回転すると、第1アーム対908に回動自在に連結される第2アーム対909が正回動し、第1クランプ板910を下死点に向かって第2方向Yに下降させる。
第1クランプ板910が第2方向Yに下降すると、第1クランプ板910のスライド支持部910bに支持される可動クランプ950も第2方向Yに下降する。可動クランプ950が第2方向Yに下降すると、図7(b)に示すように、固定具918が固定板バネ919と離間し、固定板バネ919による可動クランプ950の固定が解除される。
ここで、第2方向Yへの下降(シート案内位置からシート保持位置への移動)は、第1クランプ板910の両端に設けられる第2スライド軸911が、スライドブッシュ912に案内されることによって行なわれる。スライドブッシュ912は、不図示のクランプフレームに取り付けられている。また、第2スライド軸911が貫通するスライドブッシュ912の貫通孔912aは、第1方向Xに長い長丸孔状に形成さえている。そのため、スライドブッシュ912に案内される際、第2スライド軸911は第1方向Xに傾斜可能となり、第1クランプ板910は第2方向Yに傾動可能となる(図10(a)及び図10(b)参照)。第1クランプ板910が第2方向Yに傾動可能となると、第1スライド軸913,913を介して第1クランプ板910に支持される第2クランプ板915も第2方向Yに傾動可能となる。
図6(b)及び図7(c)に示すように、第1クランプ板910が第2方向Yに更に下降し、第2クランプ板915の保持面915aが冊子Tの表面又は下クランプ板916の保持面916aに当接すると、第2クランプ板915の下降が止まる。このとき、第2クランプ板915も第2方向Yに傾動自在となっている。そのため、例えば、図11に示すように、冊子Tの厚さが異なる(例えば、第1方向の一方側に向かって厚さが厚くなる)場合においても、冊子Tの表面に倣うように傾動して冊子Tの表面に当接可能となる。
第2クランプ板915の保持面915aが下クランプ板916の保持面916aに当接した後、クランプモータMの回転により、第1クランプ板910は更に下降する。第1クランプ板910が下降すると、図6(c)及び図7(d)に示すように、スライド支持部910bの上面910cが圧縮バネ914を押圧する。スライド支持部910bの上面910cが圧縮バネ914を押圧すると、圧縮バネ914が第2クランプ板915を押圧し、冊子Tに対する保持力が発生する。これにより、冊子Tは保持される。不図示の下死点センサが第1アーム対908の下死点を検知すると、第1クランプ板910は下降を停止し、可動クランプ950のシート保持位置への移動が終了する。
次に、可動クランプ950がシート保持位置からシート案内位置へ移動する上昇動作について説明する。クランプユニット900が冊子Tの保持動作を終了し、シート案内位置に移動(上昇)する際は、上記動作を図6(c)〜(a)及び図7(d)〜(a)へと逆に行っていく。以下、具体的に説明する。
冊子Tの保持動作の終了(プレスユニット860による変形処理の終了)に伴い、クランプモータMが逆回転すると、第1プーリ等を介してクランプモータMに接続される第1アーム対908が逆回転を開始する。第1アーム対908が逆回転すると、第1アーム対908に回動自在に連結される第2アーム対909が逆回動し、第1クランプ板910を上死点に向かって第2方向Yに上昇させる。
第1クランプ板910が第2方向Yへの上昇を開始すると、スライド支持部910bの上面910cが圧縮バネ914を押圧して発生する保持力が減少する。つまり、冊子Tの表面又は下クランプ板916の保持面916aを押圧する保持力が減少する(図7(d)参照)。第1クランプ板910が第2方向Yに更に上昇すると、スライド支持部910bの上面910cが第1スライド軸913の固定具918と係合し(図7(b)及び図7(c)参照)、可動クランプ950を第2方向Yに上昇させる。第2クランプ板915の保持面915aが冊子Tの表面又は下クランプ板916の保持面916aから離間した後、可動クランプ950が上死点に達すると、固定具918が固定板バネ919を押圧する。そして、その反力で可動クランプ950が固定され、保持面915aが搬送されてくるシート束を案内する位置に規制される(図6(a)及び図7(a)参照)。上死点センサが上死点を検知すると、クランプモータMは、回転を停止して上昇動作が終了する。
次に、クランプ制御部402によるクランプユニット900の制御動作について、図12を参照しながら説明する。図12は、クランプ制御部402によるクランプユニット900の制御動作を示すフローチャートである。
冊子Tの保持動作が開始されると、クランプ制御部402は、第2クランプ板915をシート案内位置からシート保持位置に移動させるべく、クランプモータMを正回転させる(ステップS1)。クランプモータMが正回転すると、上死点にあった第1アーム対908が下死点に向かって回転する。下死点センサが第1アーム対908の下死点を検知する(ステップS2)と、クランプ制御部402は、クランプモータMの回転を停止させる(ステップS3)。これにより、冊子Tの保持が完了する(ステップS4)。
次に、クランプ制御部402は、プレスユニット860を駆動させ、変形処理を行う(ステップS5)。プレスユニット860による変形処理が終了した後、クランプ制御部402は、冊子Tの開放動作、すなわち、第2クランプ板915をシート保持位置からシート案内位置への移動動作を開始する(ステップS6)。クランプ制御部402は、クランプモータMを逆回転させ(ステップS7)、上死点センサが第1アーム対908の上死点を検知する(ステップS8)と、クランプモータMの逆回転を停止させる(ステップS9)。これにより、冊子の開放動作が終了し、冊子Tを案内可能な状態となる。
以上のような構成を有する本実施形態に係る複写装置1000によれば、以下のような効果を奏する。
本実施形態に係る複写装置1000は、スライドブッシュ912,912の貫通孔912aが長丸孔状に形成されている。そのため、第2スライド軸911,911は、スライドブッシュ912,912に対して第1方向Xに傾動自在になる(例えば、図10(a)参照)。言い換えると、第1クランプ板910が移動機構本体961に対して第2方向Yに傾動自在になる。これにより、第1クランプ板910を介して第2クランプ板915が第2方向Yに傾動自在となる。その結果、例えば、部品精度等によって第2クランプ板915と下クランプ板916との平行性が失われている場合においても、第2クランプ板915を下クランプ板916に倣って傾動させて保持を行うことができる。
また、電子写真のように画像によって冊子Tの厚みが変わる場合においても、例えば、図11に示すように画像が無くて薄い左側から画像が載って厚い右側に右肩上がりに第2クランプ板915が傾斜することで冊子Tに倣うことが可能になる。そのため、冊子Tを好適に保持することができる。これにより、シート束の保持力を向上させることができる。
第2クランプ板915が冊子Tの保持を解除し搬送ガイドとして機能する場合には、例えば、図10(a)に示すように、固定具918に固定板バネ919が当接する。そのため、可動クランプ950は、固定板バネ919による付勢を受けることで固定され、第2クランプ板915が固定される。これにより、第1折搬送ローラ対811a,811bから搬送された冊子Tが第2クランプ板915に当接した場合にも、第2クランプ板915が動くことはない。その結果、前述のように第1折搬送ローラ対811a,811bと第2折搬送ローラ対812a,812bとが互いに異なるニップ角度を持つ場合においても、冊子Tの搬送経路を安定させることができ、冊子Tが斜行等を引き起こすことを抑制できる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されない。