JP5591675B2 - 検査装置および検査方法 - Google Patents

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Description

本発明は、検査装置および検査方法に関し、より詳しくは、マスクなどの検査対象に形成されたパターンの欠陥検出に用いられる検査装置および検査方法に関する。
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化および大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅は益々狭くなっている。半導体素子は、回路パターンが形成された原画パターン(マスクまたはレチクルを指す。以下では、マスクと総称する。)を用い、いわゆるステッパと呼ばれる縮小投影露光装置でウェハ上にパターンを露光転写して回路形成することにより製造される。こうした微細な回路パターンをウェハに転写するためのマスクの製造には、微細パターンを描画可能な電子ビーム描画装置が用いられる。また、レーザビームを用いて描画するレーザビーム描画装置の開発も試みられている。尚、電子ビーム描画装置は、ウェハに直接回路パターンを描画する場合にも用いられる。
多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。一方、最近の代表的なロジックデバイスでは、数十ナノメートルの線幅のパターン形成が要求される状況になってきている。ここで、歩留まりを低下させる大きな要因としては、マスクのパターン欠陥や、露光転写時におけるプロセス諸条件の変動が挙げられる。これまでは、半導体ウェハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴い、マスクの寸法精度を高めることで、プロセス諸条件の変動マージンを吸収することが行われてきた。このため、マスク検査においては、パターン欠陥として検出しなければならない寸法が微細化しており、極めて小さなパターンの位置誤差を検出することが必要になっている。こうしたことから、LSI製造に使用される転写用マスクの欠陥を検出する検査装置に対しては、高い検査精度が要求されている。
ところで、マスクが微細化、複雑化する要因の1つに超解像度技術の適用が挙げられる。これは、例えば、メインパターンの脇にアシストパターンと称される補助パターンを配置し、これによってメインパターンの形成性を向上させる技術である。転写像では補助パターンは解像しないが、補助パターンがあることによってメインパターンの領域に入射する光エネルギーが確保される。マスク検査装置では、こうしたアシストパターンの欠陥も検出することができる。
欠陥検出をする手法には、ダイ−トゥ−ダイ(Die to Die)検査方式とダイ−トゥ−データベース(Die to Database)検査方式がある。ダイ−トゥ−ダイ検査方式は、同一のマスク内であって、その一部分または全体に同一のパターン構成を有する複数のチップが配置されている場合に、マスクの異なるチップの同一パターン同士を比較する検査方法である。この方式によれば、マスクのパターンを直接比較するので比較的簡単な装置構成で精度の高い検査が行える。しかし、比較するパターンの両方に共通して存在する欠陥は検出することができない。一方、ダイ−トゥ−データベース検査方式は、マスク製造に使用された設計パターンデータから生成される参照データと、マスク上の実際のパターンとを比較する検査方法である。参照画像を生成するための機構が必要になるので装置が大掛かりになるが、設計パターンデータとの厳密な比較が行える。1つのマスクに1つのチップ転写領域しかない場合にはこの方法しか採れない。
ダイ−トゥ−データベース検査では、光源から出射された光が光学系を介して検査対象であるマスクに照射される。マスクはテーブル上に載置されており、テーブルが移動することによって照射された光がマスク上を走査する。マスクを透過または反射した光はレンズを介して画像センサ上に結像し、画像センサで撮像された光学画像は測定データとして比較部へ送られる。比較部では、測定データと参照データとが適当なアルゴリズムにしたがって比較される。そして、これらのデータが一致しない場合には欠陥ありと判定される(例えば、特許文献1参照。)。
従来の検査装置では、画像センサで光学画像を撮像したマスクパターン像の正否を判定している。しかし、最近の微細化が進んだマスクでは、パターンの形状欠陥と潜在的に存在するパターンの形状誤差との差が区別され難くなっている。また、マスクパターンの線幅や、隣接パターンとの空隙距離に対する要求精度が高くなることによって、設計パターンデータを基に生成される参照データと検査装置が撮影したパターン像との比較だけでは、欠陥であるか否かを判別することが困難になっている。
そこで、マスクパターンをウェハに転写した際の形状から欠陥判定する方法が提案されている。例えば、非特許文献1には、高解像度の光学系により被検査マスク像をCCDで採取する方法と並んで、ウェハ空間像を低解像度の光学系で得る方法が示されている(図1参照)。前者の方式では、高解像度の光学系で採取した被検査パターンと参照パターンの各マスク像から、図2の工程を経てウェハ転写像を推定した後、ウェハ転写像同士を比較して欠陥判定をする。一方、後者の方式では、ウェハ転写装置の光学系を模擬した光学系を装備して、直接的にウェハ転写像を採取する。これらの方式はいずれも、ウェハ上に転写される像を予測し、これを基に欠陥判定するものである。尚、後者の方式は、非特許文献2にも記載されている(図3および3頁下段参照)。
マスク上で、あるメインパターンに対応するアシストパターンに複数個所で断裂や細り形状の欠陥を生じている場合、推定されたウェハ転写像におけるメインパターンの形状は、線幅のくびれなどの寸法誤差を生じた状態となっているはずである。つまり、転写像に基づく判定方法によれば、マスクに形状欠陥があることによって転写像が不正になることを予測できる。しかしながら、この場合、メインパターンで線幅をくびれさせている原因が、アシストパターンのどの欠陥箇所にあるのか、すなわち、複数ある断裂箇所のうちのどの箇所であるのか、あるいは、複数の断裂箇所のどの組み合わせによるものであるのかといったことを指摘できないという問題があった。
一方、特許文献2には、所定の領域に配置された多数のポリゴンを含むリソグラフィックデザインをシミュレートする方法が開示されている。具体的には、図4に、ポリゴンデザインデータベースのビットマップイメージを使用して空間イメージを生成し(ボックス126)、これを使用することでレジストモデリングまたはシミュレーション(ボックス128)が実行されることが記載されている。また、図7には、マスク検査装置の画像から、シミュレーションによるウェハパターン空間像を推定する技術が示されている。これらの技術は、ウェハ空間像、または、露光光によるフォトレジストの反応などのウェハ生成プロセスの結果得られるウェハ像での正否を指摘するものである。
また、特許文献3には、1)マスク検査システムでは、リソグラフィ処理工程における特定の条件下での欠陥が下地のフォトレジストに転写されるか否か判断することが重要であること、2)マスク欠陥がプリントされないか、または、リソグラフィ処理に影響を与えないならば、欠陥のあるマスクを使って許容可能なリソグラフィを行えることが記載されている。これにより、欠陥が転写されないマスクを補修したり、交換したりすることによる費用と時間の無駄を避けられる。
特許文献3には、マスクの一部分の画像を含む欠陥区域画像を受け取って模擬画像を生成する検査装置が開示されている。この模擬画像には、ウェハに転写されるシミュレーション画像が含まれる。
このように、従来の検査装置によれば、検査装置で採取されたマスクの欠陥を含む画像からウェハへの転写推定像を生成することができる。
特開2008−112178号公報 特開2009−105430号公報 特表2001−516898号公報
Carl Hessら、(KLA−Tencor Corporation)、「A Novel Approach: High Resolution Inspection with Wafer Plane Defect Detection」、Proc. of SPIE Vol.7028、70281F(2008) Dan Rostら、(MP−Mask Technology Center)、「Qualification of Aerial Image 193nm Inspection Tool for All Masks and All Process Steps」、Proc. of SPIE Vol. 7028、70282Q(2008)
ところで、欠陥検査装置が指摘した結果は、オペレータによって確認される。この工程はレビュー工程と呼ばれる。レビュー工程では、例えば、欠陥検出用に用意された光学系と、レビュー用の光学系とを備えた装置が用いられる。そして、欠陥検査で検出された欠陥の座標にステージを移動させ、レビュー用の光学系によって、欠陥個所を顕微鏡で見るが如く表示させる。このとき、欠陥判定の根拠となった検査装置の採取画像も並べて表示させる。これにより、オペレータは、欠陥検査装置で検出された欠陥が真の欠陥であるか否か、また、その欠陥についての修正の要否を判断し、分類していく。
レビュー画面は、欠陥判定の根拠となった参照画像と、欠陥が含まれる光学画像とをオペレータが見比べられるように表示するウィンドウと、マスク上の検査範囲の欠陥分布を表示するウィンドウなどで構成される。また、参照画像と光学画像の差を表示したり、参照画像や光学画像の各画素の輝度を数値でダンプ表示したり、欠陥を解析する目的で、光学画像を取得するセンサの輝度をX軸とY軸で断面をとって表示するプロファイル画面ウィンドウが追加されたりする場合もある。
最近のマスクパターンは微細化が進み、欠陥検査に使用される光源の波長は紫外光まで短波長化されている。かかるパターンをレビューする場合、可視光ではパターンを視認することができないので、紫外光を用いたカメラによる撮像が必要になる。このため、レビュー用の光学系を搭載しない検査装置を用い、欠陥検査時に記録されている欠陥判定の根拠となった欠陥を含む光学画像と、その参照画像とを表示してレビューすることもよく行われる。かかる場合には、検査装置自身でレビューを行わなくてもよく、別に用意したパソコンなどで、検査装置内に記録されている検査結果を閲覧することが可能である。
レビュー工程は、検査装置で採取されたマスクの欠陥を含む画像から生成した、ウェハへの転写推定像に基づいて行うことも可能である。すなわち、レビュー用光学系を使用してマスク欠陥像を示すとともに、転写推定像を表示してレビューすることができる。この場合、検査装置とは別に用意するレビュー用の操作端末を用いてレビューしてもよい。
検査装置が検出したマスク上の1つの欠陥により、転写推定像の複数個所に欠陥が見出される場合、後者の欠陥の1つ1つを目視で確認し、マスク上の欠陥が転写推定像に及ぼす影響度を把握したうえで、マスク上における欠陥判定を行う必要がある。例えば、マスク上での欠陥寸法が同程度であっても、欠陥の生じているパターン部位によっては、転写推定像での致命度に違いが生じることがある。一例として、LSIのクロック信号伝達に用いられる線幅が細く均質に形成されるべきパターンと、電源に用いられる線幅の比較的太いパターンとを考える。前者のパターンに致命的な線幅変動をもたらす欠陥であっても、その変動が後者のパターンに対しても同程度である場合、後者への欠陥の影響は無視できることがある。
本発明は、こうした点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、マスク上での欠陥と、そのウェハへの波及の程度を推定しながら、効率的に欠陥判定処理を行うことのできる検査置と検査方法を提供することにある。
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
本発明の第1の態様は、パターンが形成された試料に光を照明し、この試料の像を光学系を介して画像センサに結像し、欠陥の有無を判定する検査装置において、
画像センサから試料の光学画像を取得する光学画像取得部と、
光学画像を判定の基準となる基準画像と比較し、差異が第1の閾値を超えた場合に欠陥と判定する第1の比較部と、
試料上の光学画像と基準画像のそれぞれのパターンを転写装置にて転写した場合の転写像を推定する転写像推定部と、
各転写像を比較し、差異が第2の閾値を超えた場合に欠陥と判定する第2の比較部と、
第1の比較部および第2の比較部からの情報をレビューするレビュー装置とを有し、
レビュー装置では、パターンの線幅について算出した誤差比率と、パターンの線間距離について算出した誤差比率の内、値の大きい方が優先してレビューされることを特徴とするものである。
本発明の第2の態様は、パターンが形成された試料に光を照明し、この試料の像を光学系を介して画像センサに結像し、欠陥の有無を判定する検査装置において、
画像センサから試料の光学画像を取得する光学画像取得部と、
光学画像を判定の基準となる基準画像と比較し、差異が第1の閾値を超えた場合に欠陥と判定する第1の比較部と、
試料上の光学画像と基準画像のそれぞれのパターンを転写装置にて転写した場合の転写像を推定する転写像推定部と、
各転写像を比較し、差異が第2の閾値を超えた場合に欠陥と判定する第2の比較部と、
第1の比較部および第2の比較部からの情報をレビューするレビュー装置とを有し、
レビュー装置では、次の(1)〜(3)の順にレビューが行われることを特徴とするものである。
(1)第1の比較部で判定された欠陥の程度が第3の閾値以上であって、第2の比較部で判定されたこの欠陥に対応する欠陥の線幅または線間距離の誤差比率が第4の閾値以上である場合
(2)第1の比較部で判定された欠陥の程度が第3の閾値未満であって、第2の比較部で判定されたこの欠陥に対応する欠陥の線幅または線間距離の誤差比率が第4の閾値以上である場合
(3)第1の比較部で判定された欠陥の程度が第3の閾値以上であって、第2の比較部で判定されたこの欠陥に対応する欠陥の線幅または線間距離の誤差比率が第4の閾値未満である場合
本発明の第3の態様は、パターンが形成された試料に光を照明し、この試料の像を光学系を介して画像センサに結像し、欠陥の有無を判定する検査装置において、
画像センサから試料の光学画像を取得する光学画像取得部と、
光学画像を判定の基準となる基準画像と比較し、差異が第1の閾値を超えた場合に欠陥と判定する第1の比較部と、
試料上の光学画像と基準画像のそれぞれのパターンを転写装置にて転写した場合の転写像を推定する転写像推定部と、
各転写像を比較し、差異が第2の閾値を超えた場合に欠陥と判定する第2の比較部と、
第1の比較部および第2の比較部からの情報をレビューするレビュー装置とを有し、
レビュー装置では、第2の比較部で判定された欠陥の内、第1の比較部で欠陥と判定された位置に対応する転写像の位置から所定の寸法以内にある欠陥がレビューされることを特徴とするものである。
本発明の第4の態様は、パターンが形成された試料に光を照明し、この試料の像を光学系を介して画像センサに結像し、欠陥の有無を判定する検査装置において、
画像センサから試料の光学画像を取得する光学画像取得部と、
光学画像を判定の基準となる基準画像と比較し、差異が第1の閾値を超えた場合に欠陥と判定する第1の比較部と、
試料上の光学画像と基準画像のそれぞれのパターンを転写装置にて転写した場合の転写像を推定する転写像推定部と、
各転写像を比較し、差異が第2の閾値を超えた場合に欠陥と判定する第2の比較部と、
第1の比較部および第2の比較部からの情報をレビューするレビュー装置とを有し、
レビュー装置では、パターンの一方向におけるパターン密度と、この一方向に垂直な方向におけるパターン密度の内、値の大きい方が優先してレビューされることを特徴とするものである。
本発明の第5の態様は、パターンが形成された試料に光を照明し、この試料の像を光学系を介して画像センサに結像し、欠陥の有無を判定する検査方法において、
画像センサから試料の光学画像を取得する工程と、
光学画像を判定の基準となる基準画像と比較し、差異が第1の閾値を超えた場合に欠陥と判定する工程と、
光学画像の転写像と基準画像の転写像をそれぞれ推定する工程と、
光学画像の転写像と基準画像の転写像を比較し、差異が第2の閾値を超えた場合に欠陥と判定する工程と、
各転写像を次の(1)〜(3)の順にレビューする工程とを有することを特徴とするものである。
(1)第1の比較部で判定された欠陥の程度が第3の閾値以上であって、第2の比較部で判定されたこの欠陥に対応する欠陥の線幅または線間距離の誤差比率が第4の閾値以上である場合
(2)第1の比較部で判定された欠陥の程度が第3の閾値未満であって、第2の比較部で判定されたこの欠陥に対応する欠陥の線幅または線間距離の誤差比率が第4の閾値以上である場合
(3)第1の比較部で判定された欠陥の程度が第3の閾値以上であって、第2の比較部で判定されたこの欠陥に対応する欠陥の線幅または線間距離の誤差比率が第4の閾値未満である場合
本発明によれば、マスク上での欠陥と、そのウェハへの波及の程度を推定しながら、効率的に欠陥判定処理を行うことのできる検査置と検査方法が提供される。
本実施の形態における検査装置のシステム構成図である。 本実施の形態におけるデータの流れを示す概念図である。 フィルタ処理を説明する図である。 マスク測定データの取得手順を説明する図である。 (a)はマスクの形状欠陥の一例であり、(b)はこのマスクのウェハ転写像である。 (a)はマスクの参照画像、(b)はこの参照画像から推定したウェハ転写像である。 本実施の形態によるレビュー画面の一例である。 本実施の形態によるレビュー画面の他の例である。 (a)は参照画像から推定したウェハ転写像、(b)はこのウェハ転写像で比較基準となる横幅と縦幅の説明図である。 (a)は形状欠陥のあるマスクのウェハ転写像、(b)はこのウェハ転写像の横幅と縦幅の説明図である。 (a)は、マスクの形状欠陥の他の例であり、(b)はこのマスクのウェハ転写像である。 行列状に配置されたホールパターンの垂直方向と水平方向の各間隔が異なる例である。 致命度から欠陥が分類される優先度を示したものである。
図1は、本実施の形態における検査装置のシステム構成図である。本実施の形態においては、フォトリソグラフィ法などで使用されるマスクを検査対象としている。
図1に示すように、検査装置100は、光学画像取得部Aと制御部Bを有する。
光学画像取得部Aは、光源103と、水平方向(X方向、Y方向)および回転方向(θ方向)に移動可能なXYθテーブル102と、透過照明系を構成する照明光学系170と、拡大光学系104と、フォトダイオードアレイ105と、センサ回路106と、レーザ測長システム122と、オートローダ130とを有する。
制御部Bでは、検査装置100全体の制御を司る制御計算機110が、データ伝送路となるバス120を介して、位置回路107、比較回路108、参照回路112、展開回路111、オートローダ制御部113、テーブル制御回路114、記憶装置の一例となる磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、フレキシブルディスク装置116、CRT117、パターンモニタ118およびプリンタ119に接続されている。XYθテーブル102は、テーブル制御回路114によって制御されたX軸モータ、Y軸モータおよびθ軸モータによって駆動される。これらのモータには、例えば、ステップモータを用いることができる。
データベース方式の基準データとなる設計パターンデータは、磁気ディスク装置109に格納されており、検査の進行に合わせて読み出されて展開回路111に送られる。展開回路111では、設計パターンデータがイメージデータ(ビットパターンデータ)に変換される。その後、このイメージデータは、参照回路112に送られて参照データの生成に用いられる。
尚、図1では、本実施の形態で必要な構成成分を記載しているが、マスクを検査するのに必要な他の公知成分が含まれていてもよい。
図2は、本実施の形態におけるデータの流れを示す概念図である。
図2に示すように、設計者(ユーザ)が作成したCADデータ201は、OASISなどの階層化されたフォーマットの設計中間データ202に変換される。設計中間データ202には、レイヤ(層)毎に作成されて各マスクに形成される設計パターンデータが格納される。ここで、一般に、検査装置は、OASISデータを直接読み込めるようには構成されていない。すなわち、検査装置の製造メーカー毎に、独自のフォーマットデータが用いられている。このため、OASISデータは、レイヤ毎に各検査装置に固有のフォーマットデータ203に変換された後に、例えば図1の検査装置100に入力される。この場合、フォーマットデータ203は、検査装置100に固有のデータとすることができるが、描画装置と互換性のあるデータとすることもできる。
フォーマットデータ203は、図1の磁気ディスク装置109に入力される。すなわち、フォトマスク101のパターン形成時に用いた設計パターンデータは、磁気ディスク装置109に記憶される。
設計パターンに含まれる図形は、長方形や三角形を基本図形としたものである。磁気ディスク装置109には、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報であって、各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納される。
さらに、数十μm程度の範囲に存在する図形の集合を一般にクラスタまたはセルと称するが、これを用いてデータを階層化することが行われている。クラスタまたはセルには、各種図形を単独で配置したり、ある間隔で繰り返し配置したりする場合の配置座標や繰り返し記述も定義される。クラスタまたはセルデータは、さらにフレームまたはストライプと称される、幅が数百μmであって、長さがフォトマスクのX方向またはY方向の全長に対応する100mm程度の短冊状領域に配置される。
入力された設計パターンデータは、磁気ディスク装置109から制御計算機110を通して展開回路111によって読み出される。
展開回路111は、設計パターンを図形毎のデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計画像データを展開する。展開された設計画像データは、センサ画素に相当する領域(マス目)毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算する。そして、各画素内の図形占有率が画素値となる。
上記のようにして2値ないしは多値のイメージデータ(設計画像データ)に変換された設計パターンデータは、次に参照回路112に送られる。参照回路112では、送られてきた図形のイメージデータである設計画像データに対して適切なフィルタ処理が施される。
図3は、フィルタ処理を説明する図である。
後述する、センサ回路106から得られた光学画像としてのマスク測定データ204は、拡大光学系104の解像特性やフォトダイオードアレイ105のアパーチャ効果等によってぼやけを生じた状態、言い換えれば空間的なローパスフィルタが作用した状態にある。したがって、画像強度(濃淡値)がデジタル値となった、設計側のイメージデータである設計画像データにもフィルタ処理を施すことで、マスク測定データ204に合わせることができる。このようにしてマスク測定データ204と比較する参照画像を作成する。
次に、図1および図4を用いてマスク測定データ204の取得方法を説明する。
図1において、光学画像取得部Aによって、フォトマスク101の光学画像、すなわち、マスク測定データ204が取得される。ここで、マスク測定データ204は、設計パターンに含まれる図形データに基づく図形が描画されたマスクの画像である。マスク測定データ204の具体的な取得方法は、例えば、次に示す通りである。
検査対象となるフォトマスク101は、XYθ各軸のモータによって水平方向および回転方向に移動可能に設けられたXYθテーブル102上に載置される。そして、フォトマスク101に形成されたパターンに対し、XYθテーブル102の上方に配置された光源103から光が照射される。より詳しくは、光源103から照射される光束が、照明光学系170を介してフォトマスク101に照射される。フォトマスク101の下方には、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105およびセンサ回路106が配置されている。フォトマスク101を透過した光は、拡大光学系104を介して、フォトダイオードアレイ105に光学像として結像する。ここで、拡大光学系104は、図示しない自動焦点機構によって自動的に焦点調整がなされるように構成されていてもよい。さらに、図示しないが、検査装置100は、フォトマスク101の下方から光を照射し、反射光を拡大光学系を介して第2のフォトダイオードアレイに導き、透過光と反射光を同時に採取するように構成されていてもよい。
図4は、マスク測定データ204の取得手順を説明するための図である。
検査領域は、図4に示すように、Y方向に向かって、スキャン幅Wの短冊状の複数の検査ストライプ20に仮想的に分割され、さらにその分割された各検査ストライプ20が連続的に走査されるようにXYθテーブル102の動作が制御され、X方向に移動しながら光学画像が取得される。フォトダイオードアレイ105には、図4に示されるようなスキャン幅Wの画像が連続的に入力される。第1の検査ストライプ20における画像を取得すると、今度はXYθテーブル102が逆方向に移動しながら、第2の検査ストライプ20について同様にスキャン幅Wの画像が連続的に入力される。第3の検査ストライプ20については、第2の検査ストライプ20における画像を取得する方向とは逆方向、すなわち、第1の検査ストライプ20における画像を取得した方向に移動しながら取得する。このように、連続的に画像を取得していくことで、無駄な処理時間を短縮することができる。
図1のフォトダイオードアレイ105上に結像したパターンの像は、フォトダイオードアレイ105によって光電変換され、さらにセンサ回路106によってA/D(アナログデジタル)変換される。フォトダイオードアレイ105には、センサが配置されている。このセンサの例としては、TDI(Time Delay Integration)センサが挙げられる。XYθテーブル102がX軸方向に連続的に移動しながら、TDIセンサによってフォトマスク101のパターンが撮像される。ここで、光源103、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105およびセンサ回路106により高倍率の検査光学系が構成される。
XYθテーブル102は、制御計算機110の制御の下、テーブル制御回路114によって駆動され、X方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X−Y−θ)モータの様な駆動系によって移動可能となっている。これらの、X軸モータ、Y軸モータ、θ軸モータには、例えばステップモータを用いることができる。そして、XYθテーブル102の移動位置は、レーザ測長システム122により測定されて位置回路107に送られる。また、XYθテーブル102上のフォトマスク101は、オートローダ制御回路113により駆動されるオートローダ130から自動的に搬送され、検査終了後には自動的に排出されるようになっている。
センサ回路106から出力されたマスク測定データ204は、位置回路107から出力されたXYθテーブル102上でのフォトマスク101の位置を示すデータとともに、比較回路108(第1の比較部)に送られる。マスク測定データ204は、例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調を表現している。また、上述した参照画像も比較回路108に送られる。
比較回路108では、センサ回路106から送られたマスク測定データ204と、参照回路112で生成した参照画像とが、適切な比較判定アルゴリズムを用いて比較される。比較は、透過画像のみ、反射画像のみ、または、透過と反射を組み合わせたアルゴリズムで行われる。比較の結果、両者の差異が所定の閾値(第1の閾値)を超えた場合にその箇所を欠陥と判断する。欠陥と判断されると、その座標と、欠陥判定の根拠となったマスク測定データ204および参照画像とが、マスク検査結果205として磁気ディスク装置109に保存される。
ところで、微細なパターンに生じる欠陥としては、パターンエッジの凹凸(エッジラフネス)に代表される形状欠陥だけでなく、パターンの線幅異常やパターンの位置ずれによって隣接パターンとの空隙が適正でないことによる現象が重要になっている。このため、パターン精度に対する要求は極めて高くなってきており、マスク製造における難易度も益々高くなっている。それ故、基準を満たすマスクの歩留まりが低下して、マスクの製造コストの高騰を招いている。こうしたことから、欠陥の判定方法にウェハ転写シミュレータ(リソグラフィ・シミュレータまたはプロセス・シミュレータとも言う。)を用いる方法が提案されている。この方法では、露光装置によってマスクからウェハに転写される露光イメージを推定し、この露光イメージ上でパターンの良否を判断する。尚、ウェハ転写シミュレータは、本発明における転写像推定部である。
磁気ディスク装置109に保存されたマスク検査結果205は、ウェハ転写シミュレータ400に送られる。このとき、マスク検査結果205の内の参照画像に代えて、マスク設計のRETパターン付加前のパターンデータからマスク製造プロセスをシミュレーションして得られた像を用いてもよい。
ウェハ転写シミュレータ400では、シミュレーションによってウェハ転写像の推定が行われる。具体的には、手本となる参照画像からウェハ転写像を推定するとともに、マスク測定データ204からもウェハ転写像を推定する。その後、これらのウェハ転写像は、ウェハ転写シミュレータ400から比較回路301(第2の比較部)に送られる。
比較回路301では、参照画像から推定されたウェハ転写像と、マスク測定データ204から推定されたウェハ転写像とが、適切な比較判定アルゴリズムを用いて比較される。比較の結果、両者の差異が所定の閾値(第2の閾値)を超えた場合にその箇所を欠陥と判断する。欠陥と判定されると、その座標と、欠陥判定の根拠となったウェハ転写像とが、転写像検査結果206として保存される。
マスク検査結果205と転写像検査結果206は、レビュー装置500に送られる。レビューは、オペレータによって、検出された欠陥が問題となるものであるかどうかを判断する動作である。尚、ウェハ転写像で検知された欠陥が軽微である場合には、事前処理によってレビュー対象から除くことができる。
具体的には、マスク検査結果205がレビュー装置500に送られ、オペレータによるレビューによって修正の要否が判断される。オペレータは、欠陥判定の根拠となった参照画像と、欠陥が含まれる光学画像とを見比べてレビューする。このとき、マスクに形成されるパターン形状が比較的単純なものであれば、オペレータは、ウェハ転写シミュレータ400を起動せずにマスクの欠陥箇所からウェハ上での欠陥箇所を予測して、修正の要否を判断することができる。一方、マスクに形成されるパターンが微細であり、ウェハ転写像を推定せずに修正の要否を判断するのが困難な場合には、ウェハ転写像の推定を行う。転写像検査結果206はレビュー装置500に送られ、オペレータによるレビューが行われる。オペレータは、参照画像、光学画像、および、これらから推定した転写像を見比べてレビューする。
レビュー装置500では、欠陥1つ1つの欠陥座標が観察できるように、マスクが載置されたテーブルを移動させながら、検査装置100の観察光学系を使って、マスクの欠陥箇所の画像を表示する。また同時に欠陥判定の判断条件や、判定根拠になった光学画像と参照画像を確認できるよう、画面上にこれらを並べて表示する。画面としては、制御計算機110の画面または別途準備される計算機の画面が利用される。マスク上での欠陥とウェハ転写像への波及状況とを、レビュー工程で並べて表示することで、マスクパターンを修正すべきか否かを判断するのが容易になる。尚、一般に、マスクからウェハへは1/4程度の縮小投影が行われるので、並べて表示する際にはこの縮尺も考慮する。
図7は、ウェハ転写像やレジスト像を基に欠陥判定した結果をオペレータが閲覧するための画面である。上段は、参照画像またはダイ−トゥ−ダイ比較方式の検査の場合の手本側の光学画像である。また、下段は、欠陥を含む検査対象側の光学画像である。それぞれ図の左から順に、(1)検査装置の透過光学系により撮影された画像、(2)検査装置の反射光学系により撮影された画像、(3)これらの画像から推定されたマスク像、(4)マスク像を基に露光条件を模擬して推定したウェハ転写像、(5)レジストの特性を模擬して推定したレジスト像である。
図7に示すレビュー画面によれば、参照画像、光学画像、および、これらから推定した転写像が並べて表示されるので、オペレータはこれらの画像を見比べて、マスクの欠陥を詳細に解析したり、修正すべき欠陥を絞ったりすることができる。
図8に検査装置におけるマスク欠陥をレビューする画面の例を示す。この画面は、欠陥判定の根拠となった参照画像と、欠陥が含まれる光学画像とを、オペレータが見比べられるように表示するウィンドウや、マスク上の検査範囲の欠陥分布を表示するウィンドウなどで構成される。また、光学画像と参照画像の差を表示したり、光学画像や参照画像の各画素の輝度を数値でダンプ表示したり、欠陥を解析する目的でセンサ輝度をX軸とY軸で断面をとって表示するプロファイル画面ウィンドウが追加される場合もある。
上記したように、レビュー工程では、
(1)検査装置で採取された透過光の光学画像
(2)検査装置で採取された反射光の光学画像
(3)上記透過光の画像と反射光の画像とから推定された仮想的なマスク像
(4)露光装置を模擬してウェハに縮小投影される投影面の光強度分布画像
(5)レジストの特性を考慮して推定されるレジスト像
のそれぞれがレビュー画面に表示される。そして、(5)のレジスト像において、光学画像からの転写推定像と、参照画像からの転写推定像とを比較し、パターンの線幅や線間距離に差が認められる場合には、オペレータによってその個所は欠陥と判定される。このとき、パターンの輪郭線が画像にスーパーインポーズされるなどして、オペレータの判断を助ける工夫がなされる。
本実施の形態においては、レビュー工程で、上記(5)のレジスト像に代えて(4)のウェハ投影面での光強度分布画像を用い、これによって転写推定像の欠陥判定を行うことも可能である。この場合は、ウェハ投影面での光強度分布画像の輪郭線がレジスト像の輪郭線と等価になるようにする。すなわち、光強度分布像について、適切な閾値で輪郭線が描かれるように、オフセット値と振幅が調整される。
以上述べたように、検査装置で欠陥ありと判断されると、その判定根拠となったマスク測定データとそれに対応する参照画像とがこれらの座標とともに検査装置内に保存される。マスク1枚について検査が終了すると、検査装置内の観察光学系を利用してオペレータが目視で欠陥箇所のパターンを確認する。そして、修正の必要性や修正の可否を判断して、修正すべき欠陥を弁別した後、修正に必要な情報とともにこのマスクを修正装置に送る。ここで、修正に必要な情報とは、例えば、マスク内の座標、欠陥が凸形か凹型の区別、すなわち遮光膜を削るのか補填するのかの区別、および、修正装置で修正すべき箇所のパターンを認識するための切り出したパターンデータである。パターンデータには、上述のマスク測定データを利用できる。
図1および図2の例では、レビュー工程を経て判別された欠陥情報は、図1の磁気ディスク装置109に保存される。そして、レビュー装置500で1つでも修正すべき欠陥が確認されると、マスクは、欠陥情報リスト207とともに、検査装置100の外部装置である修正装置600に送られる。修正方法は、欠陥のタイプが凸系の欠陥か凹系の欠陥かによって異なるので、欠陥情報リスト207には、凹凸の区別を含む欠陥の種別と欠陥の座標が添付される。
ウェハ投影面での光強度分布像またはレジスト像による欠陥判定は、次の2種類の方法により行うことができる。1つは、参照画像からの転写推定像における輪郭線の位置と、光学画像からの転写推定像における輪郭線の位置との間に、所定の閾値寸法を超える差が認められる場合に欠陥と判定する方法である。他の1つは、参照画像からの転写推定像におけるパターンの線幅と、光学画像からの転写推定像におけるパターンの線幅との比率が所定の閾値を超える場合に欠陥と判定する方法である。この方法では、参照画像からの転写推定像におけるパターン間の距離と、光学画像からの転写推定像におけるパターン間の距離との比率を対象としてもよい。尚、上記閾値は、いずれも本発明における第2の閾値に対応する。
図5(a)は、マスクの形状欠陥の一例である。この例では、領域3にメインパターン1の欠陥がある。尚、アシストパターン2は、メインパターン1のパターニング特性を向上させる目的で補助的にマスクに設けられるパターンであり、それ自体はウェハに転写されない。図5(a)のマスクのウェハ転写像をシミュレーションにより推定すると、図5(b)のようになる。すなわち、ウェハ転写像では、欠陥箇所の線幅が正常部のパターンの線幅に比べて細くなる。この細くなる程度が規定値を超えた場合、領域4は致命的な欠陥箇所と判定され、その原因となった領域3を修正すべきと記録される。尚、細くなる程度は、正常部と欠陥部の推定線幅の差で規定する場合と、正常部に対する欠陥部の推定線幅の比率で規定する場合とがある。
図6(a)は、設計データから作成した参照画像の例であり、図5(a)の光学画像の基準となる画像である。また、図6(b)は、図6(a)の参照画像から作成された転写推定像である。図5(a)の領域3に検出された欠陥が、問題とすべき欠陥であるか否かの判定は、図5(b)と図6(b)の各転写推定像を比較することにより行う。
領域3における欠陥の判定は、線幅または線間距離について、実寸誤差または誤差比率を算出して行う。
線幅の実寸誤差は、式(1)により求められる。また、線間距離の実寸誤差は、式(2)より求められる。但し、転写推定像における欠陥個所の線幅をLerrとし、線間距離をSerrとする。また、参照画像から生成された転写推定像において、比較基準となる線幅をLrefとし、線間距離をSrefとする。
線幅の誤差比率は、式(3)により求められる。また、線間距離の誤差比率は、式(4)により求められる。但し、転写推定像における欠陥個所の線幅をLerrとし、線間距離をSerrとする。また、参照画像から生成された転写推定像において、比較基準となる線幅をLrefとし、線間距離をSrefとする。
例えば、マスクからウェハへ1/4の縮小投影が行われる場合、マスク上で線幅200nm、線間距離180nmのパターンは、ウェハ上では線幅50nm、線間距離45nmとなる。ウェハ転写像で線幅が5mm太くなる欠陥がある場合、線幅の誤差比率は次式で求められる。
また、上記例における線間距離の誤差比率は次式で求められる。
線幅の誤差比率と線間距離の誤差比率を比較すると、線幅の誤差比率の方が大きい。したがって、レビュー工程では、線幅の誤差比率を優先して表示するのが実用的と言える。
本実施の形態では、パターンの線幅について算出した誤差比率と、パターンの線間距離について算出した誤差比率の内、値の大きい方が優先してレビューされることが好ましい。また、パターンの大きさによっては、エッジペアを見つけ難いことがあるので、誤差比率と実寸誤差とを併用して判定することがより好ましい。
図9(a)は、設計データから推定した参照画像を用いて作成された転写推定像である。この例では、形成されるパターンが、ストライプパターンではなく、ホールパターンである場合を示している。一方、図10(a)は、形状欠陥のあるマスクを用いてウェハに転写される推定像である。この例では、領域5に、ホール径が参照画像から推定される転写推定像より小さくなった欠陥がある。
領域5における欠陥の判定は、ホール径の横幅または縦幅についての実寸誤差または誤差比率を算出して行う。
横幅の実寸誤差は、式(5)により求められる。また、縦幅の実寸誤差は、式(6)より求められる。但し、図9(b)に示すように、参照画像から生成された転写推定像において、比較基準となる横幅をHoleHrefとし、縦幅をHoleVrefとする。また、欠陥個所のある転写推定像については、図10(b)に示すように、横幅をHoleHerrとし、縦幅をHoleVerrとする。
横幅の誤差比率は、式(7)により求められる。また、縦幅の誤差比率は、式(8)により求められる。但し、図9(b)に示すように、参照画像から生成された転写推定像において、比較基準となる横幅をHoleHrefとし、縦幅をHoleVrefとする。また、欠陥個所のある転写推定像については、図10(b)に示すように、横幅をHoleHerrとし、縦幅をHoleVerrとする。
図11(a)は、マスク上の欠陥の他の例であり、領域6に、本来のパターンとは異なる透過型の欠陥がある。図11(b)は、図11(a)のマスクを用いてウェハに転写される推定像である。推定像では、領域6における欠陥がそのまま転写されてはいないが、その周囲にある4つのパターン、すなわち、領域7にあるパターンの形状に異常(ホール径の拡大)が見られる。
図11の例のように、マスク上の1つの欠陥を原因として、ウェハ転写推定像の複数個所に、欠陥と判断される線幅の変動やホール径の異常が見られる場合、一番致命的な欠陥の形状をレビューで示してオペレータに判断させるのがよい。本実施の形態では、下記のルールにしたがってレビューする。
次の(1)〜(3)は、欠陥の致命度が高い順に並べたものである。(1)はレビューの優先度が最も高く、(3)はレビューの優先度が最も低い。
(1)マスク上の欠陥と転写推定像の欠陥検出がともに高スコアである場合
(2)マスク上の欠陥検出は軽微であるが、転写推定像の欠陥検出が高スコアである場合
(3)マスク上の欠陥検出は高スコアであるが、転写推定像の欠陥検出が軽微である場合
上記において、「マスク上の欠陥検出が高スコア」とは、マスク検査装置における複数の欠陥判定方法のうちで予め決めてある判定方法の算出反応値が高いことを言う。一般に、透過型マスクの場合には、透過光に基づいて判定された欠陥の方が、反射光に基づいて判定された欠陥より、転写像に影響を与えやすいという傾向がある。また、孤立型の欠陥よりも、パターンエッジ上の欠陥の方が、転写推定像に影響を与えやすいという傾向もある。こうしたことを踏まえて、マスク欠陥のスコアが決定される。
また、「転写推定像の欠陥検出が高スコア」とは、ラインパターンの場合の線幅や線間距離の実寸誤差や誤差比率が大きいこと、あるいは、ホールパターンにおけるホール径の実寸誤差や誤差比率が大きいことを言う。
したがって、上記(1)〜(3)は、それぞれ次のように言い換えることもできる。
(1)第1の比較部で判定された欠陥の程度が第3の閾値以上であって、第2の比較部で判定されたこの欠陥に対応する欠陥の線幅または線間距離の誤差比率が第4の閾値以上である場合
(2)第1の比較部で判定された欠陥の程度が第3の閾値未満であって、第2の比較部で判定されたこの欠陥に対応する欠陥の線幅または線間距離の誤差比率が第4の閾値以上である場合
(3)第1の比較部で判定された欠陥の程度が第3の閾値以上であって、第2の比較部で判定されたこの欠陥に対応する欠陥の線幅または線間距離の誤差比率が第4の閾値未満である場合
ここで、「欠陥の程度」とは、第1の比較部で判定された欠陥に対して決められる上記のスコアを言う。また、第3の閾値と第4の閾値は、前述した第1の閾値および第2の閾値とは異なる基準値である。本実施の形態において、第1、第2、第3および第4の閾値には、それぞれ個別に適当な値が決められる。第1の閾値は、第1の比較部である比較回路108で、欠陥判定の基準となる値である。第2の閾値は、第2の比較部である比較回路301で、欠陥判定の基準となる値である。第3の閾値と第4の閾値を用いてのレビュー順序の決定は、比較回路301で行うことができる。また、レビューを行う際に、レビュー装置500で行うことも可能である。
また、欠陥の程度を、複数の閾値を用いて複数のスコアに分けることも可能である。同様に、欠陥の線幅または線間距離の誤差比率を、複数の閾値によってランク付けすることも可能である。そして、これらのスコアやランクに基づいて、レビューの優先度を決めることができる。
本実施の形態では、欠陥が上記(1)〜(3)のいずれかに分類される。(2)は、例えば、マスク上における欠陥の大きさは小さいが、欠陥の近くにパターンがあるために、転写推定像におけるパターンのホール径が大きくなってしまう場合が挙げられる。また、マスク上に半透明の付着物がある場合、透過光や反射光を用いた検査工程でこの欠陥を検出することは難しい。しかし、転写推定像では、付着物のある個所の線幅が変化するために、明確な欠陥となって検出される。この場合も(2)に分類される。一方、例えば、パターンが密集していないところにある欠陥は、大きいものであっても、他のパターンに影響を及ぼさないので、リペア不要とすることができる。かかる欠陥は、(3)に分類される。
従来法では、(1)〜(3)を区別しておらず、全ての欠陥を(1)としていた。これに対して、本実施の形態では、(2)を考えることで、より精度の高いマスクを出荷することができる。また、(3)についても考えることで、リペアを不要とすることができる。尚、(2)および(3)については、転写推定像が必要となるので、図2のウェハ転写シミュレータ400によるシミュレーションが必須である。
検査装置でマスク上に欠陥が検出された場合であって、このマスクのウェハへの転写像を推定すると、かかる欠陥から相当距離離れた個所に欠陥が検出される場合がある。転写推定像におけるこのような欠陥については、下記の理由によりレビュー工程を省略する。
1つのマスク欠陥が及ぼすウェハ転写推定像での影響範囲は、そのデバイスのテクノロジーノードやパターンの種類によって異なるが、高々10μm〜20μm程度と考えられる。このため、ウェハ推定像において、これより離れたパターンに欠陥が生じる場合には、この欠陥個所に対応するマスクに別の欠陥が生じていると推測できる。したがって、所定のトレランス(探索範囲)寸法を設定し、この寸法より離れた位置にあるウェハ転写推定像上の欠陥のレビューを省略することで、オペレータが判断すべき欠陥数を低減することができる。
また、検査対象がホールパターンである場合には、転写推定像について、縦と横のそれぞれのホール径を求めて実寸誤差や誤差比率を算出する。具体的には、問題としている欠陥の周辺パターンについて、縦方向と横方向の図形密度や隣接するパターン間の距離を考慮し、いずれの方向での致命度が高いかを判断する。次いで、重要と判断された方向におけるホール径についての実寸誤差または誤差比率を優先して指摘し、この優先度にしたがってレビューできるようにする。
図12の例では、行列状に配置されたホールパターンの垂直方向の間隔Vpitchは、水平方向の間隔Hpitchより広い。したがって、この場合には、領域8における欠陥が周辺のホールパターンに及ぼす影響は、垂直方向の寸法変動より水平方向の寸法変動の方が大きい。したがって、レビュー工程では、水平方向の実寸誤差または誤差比率が所定の閾値(第4の閾値)を超えるか否かで、レビューの優先順位を決めることが好ましい。
このように、本実施の形態では、パターンの一方向におけるパターン密度と、この一方向に垂直な方向におけるパターン密度の内、値の大きい方が優先してレビューされることが好ましい。
図13は、欠陥の致命度を考慮し、その欠陥がどの優先度に分類されるかを示したものである。
図13に示すように、まず、検査装置によりマスクの欠陥が検出される(S101)。次に、転写シミュレータを起動し、ウェハの転写推定像を生成する(S102)。また、S101で検出された欠陥の誤差比率および寸法誤差の少なくとも一方を算出し、欠陥の程度が第3の閾値を超えるか否かによって、上記した欠陥のスコアを求める(S103)。次に、転写推定像について、水平方向と垂直方向の各パターンピッチを算出する(S104)。
S104で算出されたパターンピッチから、水平方向と垂直方向の内で致命度が高い方向を決め、その方向を優先してレビューする方向とする。次いで、優先する方向における誤差比率が第4の閾値以上であるか否かを判断し(S105)、第4の閾値以上である場合には、その欠陥がS103で決めたスコアに照らして大欠陥であるか否かを判断する(S106)。すなわち、S101で検出された欠陥の程度が第3の閾値以上である場合には大欠陥と判断され、その欠陥は優先度1に分類される(S107)。優先度1の欠陥に対しては、必ずレビューと修正が行われる。
S106で、S101で検出された欠陥の程度が第3の閾値未満であり、大欠陥でないと判断された欠陥は、優先度2に分類される(S109)。優先度2の欠陥に対しては、レビューは必ず行われるが、修正の要否についてはレビュー結果から判断される。
S105において、誤差比率が第4の閾値以上でないと判断された場合には、次いで、優先する方向ではない方向における誤差比率が第4の閾値以上であるか否かを判断し(S108)、第4の閾値以上である場合には、欠陥のスコアに関係なく優先度2に分類される(S109)。
S108において、誤差比率が第4の閾値以上でないと判断された場合には、次いで、水平方向と垂直方向における寸法誤差について判断する(S110)。ここでは、判断の基準値として、第1、第2、第3および第4のいずれの閾値とも異なる、第5の閾値を用いることができる。S110において、第5の閾値以上であると判断された場合には、欠陥のスコアに関係なく優先度2に分類される(S109)。
S110において、第5の閾値以上でないと判断された場合には、その欠陥がS103で決めたスコアに照らして大欠陥であるか否かを判断する(S111)。すなわち、S101で検出された欠陥の程度が第3の閾値以上である場合には大欠陥と判断され、大欠陥である場合には、その欠陥は優先度3に分類される(S112)。優先度3の欠陥に対しては、レビューは必ず行われるが、修正の要否についてはレビュー結果から判断される。一方、S111で、S101で検出された欠陥の程度が第3の閾値未満であり、大欠陥でないと判断された場合には、その欠陥に対してのレビューを省略することができる(S113)。
以上述べたように、ウェハへの転写像を推定して行う欠陥判定には、
(1)光学画像から生成されるレジスト像と、参照画像から生成されるレジスト像とを比較する判定と、
(2)露光装置を模擬してウェハに投影される投影面の光強度分布画像を用いた判定とがある。
上記(1)や(2)の方法によれば、マスク上の欠陥がウェハに転写されるか否かを推定して欠陥を判定する。推定の結果、ウェハへ転写されないものであれば、マスク上の欠陥は軽微であり、この欠陥に対する修正は不要と判断できる。一方、ウェハへ転写され、問題となる異常を引き起こす欠陥であれば、修正を行うなどしてマスク製造の歩留まりを向上させることができる。
また、欠陥判定方法としては、検査装置の透過光学系により撮影された画像と、検査装置の反射光学系により撮影された画像とから推定されたマスク像を用いる方法もある。この方法は、マスク自体の品質を保証する点で有効である。
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
例えば、上記実施の形態では、主として、マスク製造に使用された設計パターンデータから生成される参照データと、マスク上の実際のパターンとを比較する、ダイ−トゥ−データベース検査方式について述べた。しかしながら、本実施の形態は、同一のマスク内であって、その一部分または全体に同一のパターン構成を有する複数のチップが配置されている場合に、マスクの異なるチップの同一パターン同士を比較する、ダイ−トゥ−ダイ検査方式にも適用可能である。ダイ−トゥ−ダイ検査方式によれば、実際のマスクをSEM顕微鏡で撮影したのと同様の画像(模擬画像)が生成できる。
また、上記実施の形態では、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要としない部分についての記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができることは言うまでもない。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更し得る全てのパターン検査装置またはパターン検査方法は、本発明の範囲に包含される。
1 メインパターン
2 アシストパターン
20 検査ストライプ
100 検査装置
101 フォトマスク
102 XYθテーブル
103 光源
104 拡大光学系
105 フォトダイオードアレイ
106 センサ回路
107 位置回路
108、301 比較回路
109 磁気ディスク装置
110 制御計算機
111 展開回路
112 参照回路
113 オートローダ制御回路
114 テーブル制御回路
115 磁気テープ装置
116 フレキシブルディスク装置
117 CRT
118 パターンモニタ
119 プリンタ
120 バス
122 レーザ測長システム
130 オートローダ
170 照明光学系
201 CADデータ
202 設計中間データ
203 フォーマットデータ
204 マスク測定データ
205 マスク検査結果
206 転写像検査結果
207 欠陥情報リスト
400 ウェハ転写シミュレータ
500 レビュー装置
600 修正装置

Claims (2)

  1. パターンが形成された試料に光を照明し、該試料の像を光学系を介して画像センサに結像し、欠陥の有無を判定する検査装置において、
    前記画像センサから前記試料の光学画像を取得する光学画像取得部と、
    前記光学画像を前記判定の基準となる基準画像と比較し、差異が第1の閾値を超えた場合に欠陥と判定する第1の比較部と、
    前記試料上の光学画像と前記基準画像のそれぞれのパターンを転写装置にて転写した場合の転写像を推定する転写像推定部と、
    前記各転写像を比較し、差異が第2の閾値を超えた場合に欠陥と判定する第2の比較部と、
    前記第1の比較部および前記第2の比較部からの情報をレビューするレビュー装置とを有し、
    前記レビュー装置では、次の(1)〜(3)の順にレビューが行われることを特徴とする検査装置。
    (1)前記第1の比較部で判定された欠陥の程度が第3の閾値以上であって、前記第2の比較部で判定された該欠陥に対応する欠陥の線幅または線間距離の誤差比率が第4の閾値以上である場合
    (2)前記第1の比較部で判定された欠陥の程度が第3の閾値未満であって、前記第2の比較部で判定された該欠陥に対応する欠陥の線幅または線間距離の誤差比率が第4の閾値以上である場合
    (3)前記第1の比較部で判定された欠陥の程度が第3の閾値以上であって、前記第2の比較部で判定された該欠陥に対応する欠陥の線幅または線間距離の誤差比率が第4の閾値未満である場合
  2. パターンが形成された試料に光を照明し、該試料の像を光学系を介して画像センサに結像し、欠陥の有無を判定する検査方法において、
    前記画像センサから前記試料の光学画像を取得する工程と、
    前記光学画像を前記判定の基準となる基準画像と比較し、差異が第1の閾値を超えた場合に欠陥と判定する工程と、
    前記光学画像の転写像と前記基準画像の転写像をそれぞれ推定する工程と、
    前記光学画像の転写像と前記基準画像の転写像を比較し、差異が第2の閾値を超えた場合に欠陥と判定する工程と、
    前記各転写像を次の(1)〜(3)の順にレビューする工程とを有することを特徴とする検査方法。
    (1)前記第1の比較部で判定された欠陥の程度が第3の閾値以上であって、前記第2の比較部で判定された該欠陥に対応する欠陥の線幅または線間距離の誤差比率が第4の閾値以上である場合
    (2)前記第1の比較部で判定された欠陥の程度が第3の閾値未満であって、前記第2の比較部で判定された該欠陥に対応する欠陥の線幅または線間距離の誤差比率が第4の閾値以上である場合
    (3)前記第1の比較部で判定された欠陥の程度が第3の閾値以上であって、前記第2の比較部で判定された該欠陥に対応する欠陥の線幅または線間距離の誤差比率が第4の閾値未満である場合
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