JP5590807B2 - シリンダヘッドの洗浄方法 - Google Patents
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また、ウォータージャケットは、エンジンを冷却するという機能的役割に基づいて、弁の近傍等、エンジンで特に冷却を要する部位を通過する冷却液の流速が大きくなるように設計されており、係る部位は狭小部として形成されることが知られている。
このような鋳造工程、機械加工工程等を経て、シリンダヘッドを組み付ける前には、シリンダヘッドの外面、及びウォータージャケット内を洗浄する洗浄工程が実施される。このとき、内部に残留する金属片・切粉等の異物を十分に除去し、他の部位に流入・混入しないようにする必要がある。
これによれば、ウォータージャケット内に洗浄液と圧縮空気との乱流が生じることにより、内部に残留する異物を効率的に外部へ排出できる。
しかしながら、特許文献1に開示される洗浄方法では、エンジン実働時のウォータージャケット内の流れ方向を考慮していないため、複雑な形状、流路を有するシリンダヘッドのウォータージャケットの狭小部に詰まる異物を除去しきれない場合、エンジン実働時にウォータージャケット内の冷却液の流れに沿って係る異物が流出し、下流側で不具合を引き起こす可能性がある。
例えば、図2に示すように、ウォータージャケット1において、シリンダヘッド2内の要冷却部位(例えば、吸排気バルブ等、エンジン実働時に高温となりやすい部位)の近傍は、流路断面積の小さい狭小部6・6・・・として形成されている。なお、図2においては、説明の便宜上、狭小部6の表示を2箇所としているが、実際には、ウォータージャケット1におけるシリンダヘッド2内の要冷却部位近傍の略全ての部位は、狭小部6として形成されている。
このように、シリンダヘッド2内で高い冷却性能が求められている要冷却部位に対応するウォータージャケット1の部分を、狭小部6として形成することによって、係る狭小部6を通過する際の冷却液の流速を大きくし、冷却性能を向上するように設計している。
シリンダヘッド2をエンジンに組み付けるに際して、その製品としての品質を保証するために、シリンダヘッド製造工程中にシリンダヘッド2の表面に付着する、又はウォータージャケット1内に残留する異物を除去する必要がある。
このため、シリンダヘッド2を水没させて、異物を除去する水没工程、ウォータージャケット1内に洗浄液を流通させて、その内部の異物を除去する洗浄工程S1等が実施される。特に、洗浄工程S1は、機械加工工程にて発生し、ウォータージャケット1に残留する切粉等の異物をウォータージャケット1から排出するために、所定の洗浄液を用いてウォータージャケット1を洗浄する工程である。
第一ノズル11、第二ノズル12は、それぞれ流入口3、流出口4に封止接続可能であり、注入する洗浄液の流量を調整可能に構成されている。例えば、第一ノズル11及び第二ノズル12の吐出部は、それぞれ流入口3及び流出口4の径に応じた形状に形成されるとともに、それらの吐出部周囲には液漏れ防止用の封止部材が配設されている。また、第一ノズル11及び第二ノズル12は図示せぬポンプ・バルブ等の供給手段と接続され、バルブの開閉、ポンプの出力調整等によってその流量を自在に調整可能に構成されている。
第一ノズル11を用いて洗浄するときは、流入口3から注入された洗浄液は流出口4から排出され、流入口3→流出口4の洗浄液の流れが形成される。第二ノズル12を用いて洗浄するときは、流出口4から注入された洗浄液は流入口3から排出され、流出口4→流入口3の洗浄液の流れが形成される。
また、第一ノズル11及び第二ノズル12により注入される洗浄液の流量は、エンジン実働時の冷却液の流量よりも大きくなるように設定されている。この「エンジン実働時の冷却液の流量」とは、エンジン実働時に要求されている冷却性能を担保する流量であり、冷却液を供給するウォーターポンプ(不図示)の吐出量に依存するものである。
補助ノズル15は、連通孔5に封止接続可能であり、注入する洗浄液の流量は調整可能に構成されている。補助ノズル15からの洗浄液の注入は、第一洗浄工程S10及び/又は第二洗浄工程S20における洗浄液の注入が行われる際に、同時に行われる。
このように、補助ノズル15から注入される洗浄液は、第一ノズル11又は第二ノズル12から注入される洗浄液の流れに対して部分的に流量を追加するものである。この補助ノズル15からの流量の追加により、部分的な流速の増加(特に狭小部6に対する流速の増加)が見込める。
図4に示すように、洗浄工程S1は、ウォータージャケット1の流入口3から流出口4に向けて洗浄液を流通させる第一洗浄工程S10と、ウォータージャケット1の流出口4から流入口3に向けて洗浄液を流通させる第二洗浄工程S20とを含み、第一洗浄工程S10と第二洗浄工程S20とを1つの洗浄サイクルS30としている。
図4に示すように、洗浄工程S1では、この洗浄サイクルS30を複数回(本実施形態では3回)繰り返して行うとともに、第一洗浄工程S10を最終工程としている。
なお、本実施形態では、洗浄サイクルS30を3回繰り返しているが、この繰り返し回数は、複数であれば良く、所望の洗浄効果、洗浄結果等を参考に適宜設定可能である。
つまり、第一洗浄工程S10における洗浄液の流れ方向は、エンジン実働時のウォータージャケット1における冷却液の流れ方向と同一方向である。
つまり、第二洗浄工程S20における洗浄液の流れ方向は、エンジン実働時のウォータージャケット1における冷却液の流れ方向と逆方向である。
これによれば、ウォータージャケット1内の任意箇所に詰まっている切粉、金属片等の異物に対して双方向からの力を付与することができるので、当該異物を効果的に除去できる。特に、異物が詰まり易くなっているウォータージャケット1の狭小部6に対して、双方向から大きな洗浄液の流れを付与できるため、異物の詰まり方向に関わらず詰まりを解消し、ウォータージャケット1外に排出できる。
また、洗浄工程S1では、流路特性が最適に設計されたウォータージャケット1の流路構造をそのまま利用して洗浄液を流通させている。このため、ウォータージャケット1内の洗浄に必要最低限の流速を全範囲に発生させることができるとともに、狭小部6等の異物が詰まり易い部位に対する特別な流速コントロールが不要であり、良好なエネルギー効率を実現できる。
また、洗浄工程S1では、ウォータージャケット1の流入口3及び流出口4以外の孔部を埋栓・封止することにより、洗浄液の排出口を流入口3と流出口4との二つに限定しているため、洗浄液が外部に漏れて無駄になることがなく、洗浄液を効率良く使用することができる。
これによれば、狭小部6等に詰まっている異物を除去しきれない場合にも、エンジン実働時の冷却液の流れ方向と同一方向から洗浄液を流して力を加えることによって、前記異物を冷却液の流れ方向に沿って狭小部6等に強固に詰め込むことができる。従って、エンジン実働時にウォータージャケット1内に流れる冷却液に異物が混入する可能性が低くなり、ウォータージャケット1からの異物の流出を抑制できる。ひいては、エンジンに対する高品質保証を実現できる。
これによれば、狭小部6等に詰まっている異物を除去しきれない場合にも、係る異物に洗浄時に付与された洗浄液の流れよりもエンジン実働時に付与される冷却液の流れの方が弱いため、エンジン実働時の冷却液の流れで異物が動く可能性が低くなり、異物の流出を抑制できる。ひいては、エンジンに対する高品質保証を実現できる。
なお、異物除去の観点、及び異物移動防止の観点から、上記洗浄液の流量は、冷却液の流量と比較して十分に大きくなることが好ましく、特に洗浄効果、エネルギー効率等を考慮して冷却液の流量の数倍程度となるようにすることが好ましい。
これによれば、洗浄工程S1における要洗浄部位である狭小部6に対する洗浄液の流量を容易にコントロールできるので、係る狭小部6における流速を所望量だけ大きくすることができる。従って、洗浄液注入に係るエネルギー効率を良好にできるとともに、狭小部6に詰まっている異物を確実に除去できる。
このとき、第一洗浄工程S10及び第二洗浄工程S20(洗浄サイクルS30)を繰り返すに際して、後工程になるにつれて洗浄液の流速を徐々に大きくしても良い。
つまり、洗浄サイクルS30を繰り返す際に、流量を大きくして繰り返すことによって、洗浄能力を徐々に大きくし、異物除去の確実性を向上できる。
また、最終工程となる第一洗浄工程S10では、最大の流量となるので、狭小部6等に詰まっている異物を除去しきれない場合にも、エンジン実働時の冷却液の流れ方向と同一方向から洗浄液を流してより大きな力を加えることができるので、冷却液の流れ方向に沿ってより強固に詰め込むことができる。
これによれば、一つの工程において全ての洗浄液を排出・交換せず、第一ノズル11と第二ノズル12との付け替えの際に残留する洗浄液を再利用できるため、洗浄液の使用効率を向上できる。
つまり、第一ノズル11及び第二ノズル12に洗浄液を供給するポンプを共通化し、それぞれのノズル11・12への供給経路中にバルブを設け、ウォータージャケット1内に所定量の洗浄液を溜めた状態で、前記バルブを切換えることによって、第一洗浄工程S10にて第一ノズル11側から洗浄液を流通させて、流入口3→流出口4の流れを形成する、又は第二洗浄工程S20にて第二ノズル12側から洗浄液を流通させて、流出口4→流入口4の流れを形成する構成としても良い。
これによれば、洗浄液を外部に排出しないため、洗浄液の使用効率を向上できる。
つまり、狭小部6等に詰まっていた異物が再度他の部位に詰まる可能性は低いため、異物の再詰まりを考慮する必要なく、かつ、異物除去を目的として、上記の形態のように、洗浄液を滞留させる、又は循環させることにより、洗浄液を効率的に使用できる。
つまり、洗浄工程S1は、ワークに設けられる複数の孔から一つを選択して、当該選択された孔から洗浄液を注入するものであって、少なくとも設計上の考慮がなされている流れ方向に向けて流す工程を含むものであれば適用可能である。
つまり、ワークの既存の流路構造を用いて洗浄した場合に、洗浄効率、エネルギー効率等が悪くなるときは、これらの効率を考慮して新たに洗浄用の連通孔を設けて洗浄時のみに使用し、実働時に(ワーク組み付け後に)閉塞する構成としても良い。例えば、流路構造が曲線的に形成されているウォータージャケットに適用する場合は、流路が略直線状となるような箇所に洗浄用孔を形成して直線的な洗浄液の流路を実現し、当該流路の断面において略均一な流速分布を実現するようにする等である。
2 シリンダヘッド
3 流入口(孔)
4 流出口(孔)
5 連通孔(孔)
6 狭小部(要冷却部位)
11 第一ノズル
12 第二ノズル
15 補助ノズル
Claims (4)
- エンジンに備えられ、かつ、狭小部が形成されるウォータージャケットを内部に有するシリンダヘッドを洗浄するシリンダヘッドの洗浄方法であって、
前記シリンダヘッドに設けられ前記ウォータージャケットに連通する冷却液の流入経路となる流入口、または冷却液の流出経路となる流出口のうち一つを選択して、当該選択された前記流出口または流入口の一つから前記ウォータージャケット内に洗浄液を注入し、前記選択された前記流出口または流入口と異なる、前記流出口または流入口から前記洗浄液を排出することによって、ウォータージャケットを洗浄する洗浄工程を備え、
前記洗浄工程は、
前記ウォータージャケット内におけるエンジン実働時の冷却液の流れ方向と同一方向に前記洗浄液を流通させる第一洗浄工程と、
前記第一洗浄工程における洗浄液の流れ方向と逆方向に向けて、前記ウォータージャケット内に洗浄液を流通させる第二洗浄工程とを備え、
前記第一洗浄工程と第二洗浄工程とを順に複数回繰り返し行った後に、前記第一洗浄工程を最終工程として行い、
前記第一洗浄工程および第二洗浄工程において前記ウォータージャケット内に流通される洗浄液を循環させる、
シリンダヘッドの洗浄方法。 - 前記洗浄液の流量は、前記エンジン実働時の冷却液の流量より大きく設定される請求項1に記載のシリンダヘッドの洗浄方法。
- 後工程に移行するにつれて、前記洗浄液の流量を増加させる請求項1又は請求項2に記載のシリンダヘッドの洗浄方法。
- 前記洗浄工程にて選択された前記流出口または流入口と異なる孔であって、前記シリンダヘッドの要冷却部位に対応するウォータージャケットの部位の近傍に配置される連通孔を選択し、
当該選択された連通孔から、前記ウォータージャケット内に洗浄液を、前記洗浄工程にて注入される洗浄液に対して追加注入する請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のシリンダヘッドの洗浄方法。
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