以下、本発明を、電子写真方式の画像形成装置であるプリンタに適用した実施形態について説明する。
図1は、本実施形態のプリンタ100の要部の概略断面図である。図1に示すように、プリンタ100は、4つのプロセスユニットとしてのプロセスカートリッジ1、複数の張架ローラに張架されて図1中の矢印A方向に移動する中間転写体としての中間転写ベルト7、露光手段としての露光装置6、及び、定着手段としての定着装置12等を備えている。
各プロセスカートリッジ1は、潜像担持体としてのドラム状の感光体2と、帯電手段としての帯電部材3と、現像剤としてのトナーを用いて感光体2上の潜像を現像する現像装置4と、感光体クリーニング部材5とを一体的に支持してユニット状とした構成となっている。各プロセスカートリッジ1は、それぞれの不図示のストッパーを解除することにより、プリンタ100本体に対して着脱可能となっている。
感光体2は、図中の矢印で示すように、図中の時計周り方向に回転する。帯電部材3は、ローラ状の帯電ローラであり、感光体2の表面に圧接されており、感光体2の回転により従動回転する。作像時には、帯電部材3には図示しない高圧電源により所定のバイアスが印加され、感光体2の表面を帯電する。本実施形態のプロセスカートリッジ1は、帯電手段として、感光体2の表面に接触するローラ状の帯電部材3を用いているが、帯電手段としてはこれに限るものではなく、コロナ帯電などの非接触帯電方式を用いてもよい。
露光装置6は、感光体2の表面に対して画像情報に基づいて露光し、感光体2の表面に静電潜像を形成する。プリンタ100が備える露光装置6は、レーザーダイオードを用いたレーザービームスキャナ方式を用いているが、露光手段としてはLEDアレイを用いるものなど他の構成でも良い。
感光体クリーニング部材5は、中間転写ベルト7と対向する位置を通過した感光体2の表面上に残留する転写残トナーのクリーニングを行なう。
4つのプロセスカートリッジ1は、それぞれイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色ごとのトナー像を感光体2上に形成する。4つのプロセスカートリッジ1は、中間転写ベルト7の表面移動方向に並列に配設され、それぞれの感光体2上に形成されたトナー像を中間転写ベルト7に順に重ね合わせるように転写し、中間転写ベルト7上に可視像を形成する。
図1において、各感光体2に対して中間転写ベルト7を挟んで対向する位置には一次転写手段としての一次転写ローラ8が配置されており、一次転写ローラ8には不図示の高圧電源により一次転写バイアスが印加され、感光体2との間で一次転写電界を形成する。感光体2と一次転写ローラ8との間で一次転写電界が形成されることにより、感光体2の表面上に形成されたトナー像が中間転写ベルト7の表面に転写される。中間転写ベルト7を張架する複数の張架ローラのうちの一つが不図示の駆動モータによって回転することによって中間転写ベルト7が図中の矢印方向に表面移動する。表面移動する中間転写ベルト7の表面上に各色のトナー像が順次重ねて転写されることによって、中間転写ベルト7の表面上にフルカラー画像が形成される。
4つのプロセスカートリッジ1が中間転写ベルト7と対向する位置に対して、中間転写ベルト7の表面移動方向下流側には、張架ローラの一つである二次転写対向ローラ9aに対して中間転写ベルト7を挟んで対向する位置に二次転写ローラ9が配置され、中間転写ベルト7との間で二次転写ニップを形成する。二次転写ローラ9と二次転写対向ローラ9aとの間に所定の電圧を印加して二次転写電界を形成することにより、図1中の矢印B方向に搬送される転写材である転写紙Pが二次転写ニップを通過する際に、中間転写ベルト7の表面上に形成されたフルカラー画像が転写紙Pに転写される。
二次転写ニップに対して転写紙Pの搬送方向下流側に、定着装置12が配置されている。二次転写ニップを通過した転写紙Pは定着装置12に到達し、定着装置12における加熱及び加圧によって転写紙P上に転写されたフルカラー画像が定着され、画像が定着された転写紙Pはプリンタ100の装置外に出力される。
一方、二次転写ニップで転写紙Pに転写されず中間転写ベルト7の表面上に残留したトナーは、転写ベルトクリーニング装置11によって回収される。
次に、図2及び図3を用いて、プロセスカートリッジ1が備える現像装置4について説明する。図2は、4つのプロセスカートリッジ1のうちの一つの拡大断面図である。図3は、現像装置4において、鉛直方向に略直線状に配置された、トナーを搬送するトナー搬送部材106、トナー撹拌部材108及びトナー供給ローラ105の回転軸近傍の断面説明図である。
現像装置4は、現像剤であるトナーを収容するトナー収容室101と、トナー収容室101の下方に設けられたトナー供給室102とから構成され、トナー収容室101とトナー供給室102とを仕切るように仕切り部材110が設けられている。仕切り部材110には、図3に示すように、複数の開口部が設けられている。この仕切り部材110の複数の開口部として、トナー収容室101内のトナーをトナー供給室102へ供給する供給口111と、トナー供給室102内のトナーをトナー収容室101に戻す返送口107とが設けられている。
トナー供給室102の下部には、現像剤担持体であるトナー担持ローラ103が設けられている。また、トナー供給室102には、トナー担持ローラ103の表面にトナーを供給する現像剤供給部材であるトナー供給ローラ105がトナー担持ローラ103の表面に当接して設けられている。さらに、トナー供給室102には、トナー供給ローラ105によってトナー担持ローラ103の表面上に供給され、感光体2とトナー担持ローラ103との対向部に向かうトナーの量(層厚)を規制する現像剤規制部材としてのトナー層規制部材104がトナー担持ローラ103の表面に当接して設けられている。
トナー担持ローラ103は、感光体2に対して非接触で配置されており、図示しない高圧電源から所定のバイアスが印加される。
トナー収容室101内にはトナー収容室101内のトナーを感光体2の回転軸に平行な方向(図2中の紙面に直交する方向)に搬送するトナー搬送部材106が設けられている。
また、トナー収容室101に収容するトナーは、重合法で作成したものを用いている。このトナーは、例えば、平均粒径が6.5[μm]で、円形度が0.98、安息角33[°]、外添剤としてチタン酸ストロンチュームを含有しているトナーである。なお、本実施形態のプリンタ100に用いるトナーとしては、これに限るものではない。
トナー収容室101内に設けられたトナー搬送部材106は、図3に示すように搬送スクリュ形状106aと搬送板形状106bとを組み合わせた回転軸を有した部材である。トナー搬送部材106は、搬送スクリュ形状106aの回転動作によりトナー収容室101内のトナーをトナー搬送部材106の回転軸に平行な略水平方向(図3中の矢印C方向)に搬送できる構成となっている。現像装置4では、トナー搬送部材106の回転軸に平行な方向にトナーを搬送する搬送スクリュ形状106aを備えた構成であるが、現像剤搬送部材としてはこれに限ったものでなく、搬送ベルトやコイル状の回転体等の搬送機能を有するものを用いることができる。さらにこれらの搬送機能を有するものと、羽根のような板部材や針金を曲げて構成したパドルのようなもの等のほぐし機能を有するものを組み合わせたものでも良い。
また、本実施形態の現像装置4では、トナー収容室101からトナー供給ローラ105に向けて、トナーをトナー搬送部材106の回転軸に直交し、且つ、略鉛直下方にトナーを搬送する構成となっている。トナーの搬送方向としては、トナー搬送部材106の回転軸に直交し、且つ、略水平方向に搬送する構成としてもよい。
仕切り部材110の鉛直下方のトナー供給室102内にはトナー撹拌部材108が配置されている。トナー撹拌部材108は、図3に示すように撹拌スクリュ形状108aと撹拌板形状108bとを組み合わせた回転軸を有した部材である。トナー撹拌部材108は、撹拌スクリュ形状108aの回転動作によりトナー供給室102内のトナーをトナー撹拌部材108の回転軸に平行な略水平方向(図3中の矢印DまたはE方向)に搬送できる構成となっている。
図3に示すように、トナー撹拌部材108の撹拌スクリュ形状108aは、軸方向について供給口111を挟んで外側に向かう方向(図3中の矢印D方向)にトナーを搬送するように螺旋状の羽部が設けられている。さらに、トナー撹拌部材108の撹拌スクリュ形状108aは、軸方向について2つの返送口107よりも外側と内側とは螺旋状の羽部が逆巻きになっている。このため、供給口111からトナー供給室102に供給されたトナーはトナー撹拌部材108の撹拌スクリュ形状108aの回転によって軸方向外側(矢印D方向)に搬送され、返送口107よりも外側に到達したトナーは羽部が逆巻きの撹拌スクリュ形状108aによって返送口107に向かって搬送される。返送口107を挟んで軸方向の外側と内側とでは、撹拌スクリュ形状108aによるトナーの搬送方向が逆であり、返送口107に向かうようにトナーに搬送力を付与するため、返送口107の下方ではトナーが軸方向両側から集められ、山状に押し上げられる。これにより、トナー収容室101から供給口111または返送口107を通過してトナー供給室102に供給されたトナーが過剰である場合は、返送口107で山状に押し上げられたトナーがトナー供給室102から返送口107を通ってトナー収容室101に戻される。また、トナー撹拌部材108は、トナー供給室102にあるトナーを攪拌し、さらに下部にあるトナー担持ローラ103、トナー供給ローラ105へトナーを供給する役割を持つ。
トナー供給ローラ105の表面には空孔(セル)を有した構造の発泡材料が被覆されており、トナー供給室102内に供給されたトナーを効率よく付着させて取り込むと共に、トナー担持ローラ103との当接部での圧力集中によるトナーの劣化を防止している。なお、この発泡材料は103〜1014[Ω]の電気抵抗値に設定される。トナー供給ローラ105には、供給バイアスが印加され、トナー担持ローラ103との当接部で予備帯電されたトナーをトナー担持ローラ103に押し付ける作用を補助する。トナー供給ローラ105は図2中の矢印で示すように図2中の反時計回りの方向に回転し、表面に付着させたトナーをトナー担持ローラ103の表面に塗布するように供給する。
トナー供給ローラ105が当接する位置からトナー担持ローラ103の表面移動方向下流側のトナー担持ローラ103の表面に接触するように、現像剤規制部材であるトナー層規制部材104が配置されている。トナー供給ローラ105からトナー担持ローラ103の表面に供給されたトナーは、トナー担持ローラ103の回転によってトナー層規制部材104が接触する位置に搬送される。
トナー層規制部材104としては、SUS304CSPやSUS301CSPまたはリン青銅等の金属板バネ材料を用いることができ、その自由端側をトナー担持ローラ103の表面に10〜100[N/m]の押圧力で当接させたもので、トナー担持ローラ103上のトナーに対してその押圧力下を通過させることで、トナー層を薄層化すると共に、摩擦帯電によってトナーに電荷を付与する。また、トナー層規制部材104には、トナーの摩擦帯電を補助する為に、図示しないバイアス電源によりバイアスが印加される。
感光体2はトナー担持ローラ103と非接触であり、図2中の時計回りの方向に回転している。このため、トナー担持ローラ103と感光体2とが対向する現像領域においては、トナー担持ローラ103の表面移動方向と感光体2の表面移動方向とが同方向となる。
トナー担持ローラ103上の薄層化されたトナー層は、トナー担持ローラ103の回転によって現像領域へ搬送され、トナー担持ローラ103に印加されたバイアスと感光体2上の静電潜像によって形成される潜像電界に応じて、感光体2の表面に移動して感光体2の表面上の静電潜像が現像される。
現像領域で現像に用いられず、トナー担持ローラ103上に残されたトナーが再びトナー供給室102内へと戻る箇所には、現像剤除電部材である下シール部材としての除電シール109がトナー担持ローラ103に当接して設けられ、トナーが現像装置4の外部に漏れ出ないように封止される。除電シール109には、除電能力を補助するため図示しないバイアス電源よりバイアスが印加される。
上記構成のプリンタの現像装置において、トナー担持ローラ103上のトナーを用いた感光体2上の潜像の現像は、次のように行われる。トナー供給位置でトナー担持ローラ103の表面上に供給されたトナーは、後述する理由により、トナー担持ローラ103の表面上でホッピングしながら、トナー担持ローラ103の回転に伴って、トナー供給位置から現像領域に向けて搬送される。現像領域まで搬送されたトナーは、トナー担持ローラ103と感光体2上の静電潜像との間の現像電界によって、感光体2の表面上の静電潜像部分に付着し、これにより現像が行われる。現像に寄与しなかったトナーは、ホッピングしながらトナー担持ローラ103の回転によってさらに搬送され、繰り返し利用される。
次に、図4及び図5を用いて、本実施形態におけるトナー担持ローラ103の具体的構成について説明する。図4は、本実施形態におけるトナー担持ローラ103の電極配置を説明するためにトナー担持ローラ103を回転軸に対して直交する方向から見たときの模式図である。図5は、本実施形態におけるトナー担持ローラ103を、その回転軸に対して直交する面に沿って切断したときの断面を模式的に表した部分断面図である。なお、説明の都合上、図4においては絶縁層35及び表層36を図示していない。
本実施形態のトナー担持ローラ103は、中空状のローラ部材で構成されており、その最内周に位置する最内周電極部材又は内周側電極部材としての内側電極33aと、最外周側に位置していて内側電極33aへ印加される電圧(内側電圧)とは異なる電圧(外側電圧)が印加される最外周電極部材としての櫛歯状の外側電極34aとを備えている。また、内側電極33aと外側電極34aとの間にはこれらの間を絶縁するための絶縁層35が設けられている。また、トナー担持ローラ103には、外側電極34aの外周面側を覆う保護層としての表層36も設けられている。すなわち、本実施形態のトナー担持ローラ103は、内周側から順に、内側電極33a、絶縁層35、外側電極34a、表層36の4層構造となっている。
内側電極33aは、トナー担持ローラ103の基体としても機能しており、SUSやアルミニウム等の導電性材料を円筒状に成型した金属ローラである。このほか、内側電極33aの構成としては、ポリアセタール(POM)やポリカーボネート(PC)等からなる樹脂ローラの表面にアルミニウムや銅などの金属層等からなる導電層を形成したものが挙げられる。この導電層の形成方法としては、金属メッキ、蒸着等により形成する方法や、ローラ表面に金属膜を接着する方法などが考えられる。
内側電極33aの外周面側は絶縁層35に覆われている。本実施形態において、この絶縁層35は、ポリカーボネートやアルキッドメラミン等で形成されている。また、本実施形態において、絶縁層35の層厚は、3[μm]以上50[μm]以下の範囲内が好ましい。3[μm]よりも小さくなると、内側電極33aと外側電極34aとの間の絶縁性十分に保てなくなり、内側電極33aと外側電極34aとの間でリークが発生してしまう可能性が高くなる。一方、50[μm]よりも大きくなると、内側電極33aと外側電極34aとの間で作られる電界が表層36よりも外側に形成されにくくなり、表層36の外側に強いフレア用電界(外部電界)を形成することが困難となる。本実施形態では、メラミン樹脂からなる絶縁層35の層厚を20[μm]としている。絶縁層35はスプレー法やディップ法等によって内側電極33a上に均一な膜厚で形成することができる。
絶縁層35の上には外側電極34aが形成される。本実施形態において、この外側電極34aは、アルミニウム、銅、銀などの金属で形成されている。櫛歯状の外側電極34aの形成方法としては、種々の方法が考えられる。例えば、絶縁層35の上にメッキや蒸着によって金属膜を形成し、フォトレジスト・エッチングによって櫛歯状の電極を形成するという方法が挙げられる。また、インクジェット方式やスクリーン印刷によって導電ペーストを絶縁層35の上に付着させて櫛歯状の電極を形成するという方法も考えられる。
外側電極34a及び絶縁層35の外周面側は、表層36により覆われている。トナーは、表層36上でホッピングを繰り返す際、この表層36との接触摩擦によって帯電する。トナーに正規帯電極性(本実施形態ではマイナス極性)を与えるため、本実施形態では、表層36の材料として、シリコーン、ナイロン(登録商標)、ウレタン、アルキッドメラミン、ポリカーボネート等が使用される。本実施形態ではポリカーボネートを採用している。また、表層36は、外側電極34aを保護する役割も持ち合わせているので、表層36の層厚としては、3[μm]以上40[μm]以下の範囲内が好ましい。3[μm]よりも小さいと、経時使用による膜削れ等で外側電極34aが露出してしまうおそれがある。一方、40[μm]よりも大きいと、内側電極33aと外側電極34aとの間で作られる電界が表層36よりも外側に形成されにくくなり、表層36の外側に強いフレア用電界を形成することが困難となる。本実施形態では、表層の層厚は20[μm]としている。表層36は、絶縁層35と同様にスプレー法やディッピング法等によって形成することができる。
本実施形態では、内側電極33aと外側電極34aとの間で作られる電界、より詳しくは、内側電極33aの外側電極34aとは対向していない部分(外側電極34aの櫛歯間に位置する内側電極33aの部分)と外側電極34aの櫛歯部分との間で作られる電界が、表層36の外側に形成されることで、トナー担持ローラ103上のトナーをホッピングさせ、これによりトナーをクラウド化させる。このとき、トナー担持ローラ103上のトナーは、内側電極33aに絶縁層35を介して対向した表層部分と、これに隣接する外側電極34aに対向した表層部分との間を、飛翔しながら往復移動するように、ホッピングすることになる。
トナーを安定してクラウド化させるためには、相応する大きさのフレア用電界を形成することが重要となるが、このような大きなフレア用電界を形成するためには内側電極33aと外側電極34aとの間に大きな電位差を形成する必要がある。しかし、このような大きな電位差を安定して形成するためには、内側電極33aと外側電極34aとの間を安定かつ有効に絶縁し、リークを防止することが重要である。従来のように、フレア用電界を形成するための2種類の電極をそれぞれ櫛歯状に形成して同心円上に配置し、互いの櫛歯部分が相手の櫛歯間に入り込むように構成した場合、その櫛歯状電極の形成品質が悪いと、2種類の電極間の絶縁性が著しく低下し、リークが起きやすい。具体的には、例えば、エッチングで電極形成する場合には除去すべき金属膜の一部が残存していたり、インクジェット法やスクリーン印刷法で電極形成する場合には電極間に導電ペーストが付着してしまったりする事態が起こり得る。このような事態が生じると、2種類の電極間でリークが起きやすいなり、適正なフレア用電界を形成することができなくなる。また、従来構成においては、ローラの樹脂表面上に櫛歯状電極を高い品質で形成したとしても、2種類の櫛歯状電極を形成した後にその外周面側を絶縁材で覆うことにより電極間に絶縁材を充填して電極間の絶縁性を得るため、電極間にはローラの樹脂表面と絶縁材との界面が形成され、この界面を通じたリークが生じやすく、比較的大きな電圧を印加すると電極間の絶縁性が著しく低下する。
本実施形態のトナー担持ローラ103は、内側電極33aの上に絶縁層35を設け、その絶縁層上に櫛歯状の外側電極34aを形成した構成であるため、これらの電極間にリークの原因となり得るような界面は存在しない。また、トナー担持ローラ103の製造段階において、リークの原因となり得る導電材が電極間に介在する可能性も非常に少なくできる。したがって、本実施形態によれば、内側電極33aと外側電極34aとの間を安定かつ有効に絶縁することができ、比較的大きな電圧を印加する場合でもリークを効果的に防止することができる。
また、本実施形態において、外側電極34aの電極幅(各櫛歯部分の幅)は、10[μm]以上120[μm]以下であるのが好ましい。10[μm]よりも小さいと、細すぎて電極が途中で断線してしまうおそれがある。一方、120[μm]より大きいと、外側電極34aの被給電部34bからの距離が遠い箇所の電圧が低くなり、その箇所でトナーを安定かつ有効にホッピングさせることが困難となる。本実施形態の被給電部34bは、図4に示すように、トナー担持ローラ103の外周面上における軸方向両端に設けられている。よって、本実施形態では、外側電極34aの電極幅が120[μm]より大きいと、トナー担持ローラ103の軸方向中央部におけるフレア用電界が軸方向両端部のフレア用電界よりも相対的に低くなり、軸方向中央部に担持されているトナーを安定かつ有効にホッピングさせることが困難となる。
また、本実施形態では、外側電極34aの電極ピッチ(櫛歯部分間の距離)は、電極幅と同じか広いのが好ましい。電極幅よりも小さいと、内側電極33aからの電気力線の多くが表層36の外側に出る前に外側電極34aへ収束してしまい、表層36の外側に形成されるフレア用電界が弱くなってしまうからである。一方、電極ピッチが大きいと、電極間中央のフレア用電界が弱くなってしまう。本実施形態において、電極ピッチは、電極幅以上であって電極幅の5倍以下の範囲内であるのが好ましい。本実施形態では、電極幅及び電極ピッチをいずれも80[μm]に設定している。
また、本実施形態では、外側電極34aの電極ピッチを、トナー担持ローラ103の周方向にわたって一定となるように設定されている。電極ピッチを一定とすることで、内側電極33aと外側電極34aとの間で作られるフレア用電界がトナー担持ローラ103上の周方向にわたってほぼ均一となる。よって、現像位置で周方向に均一なトナーのホッピングを実現することが可能となり、均一な現像が可能となる。
次に、トナー担持ローラ103の内側電極33a及び外側電極34aに印加する電圧について説明する。
トナー担持ローラ103上の内側電極33a及び外側電極34aには、それぞれ第一パルス電源25A及び第二パルス電源25Bから第一電圧である内側電圧及び第二電圧である外側電圧が印加される。第一パルス電源25A及び第二パルス電源25Bが印加する内側電圧及び外側電圧は、矩形波が最も適している。ただし、これに限らず、例えばサイン波で三角波でもよい。また、本実施形態では、フレア用電極を形成するための電極が内側電極33a及び外側電極34aの2相構成であり、各電極(33a,34a)には互いに位相差πをもった電圧がそれぞれ印加される。
図6は、内側電極33a及び外側電極34aにそれぞれ印加する内側電圧と外側電圧の一例を示すグラフである。本実施形態において、各電圧は矩形波であり、内側電極33aと外側電極34aにそれぞれ印加される内側電圧と外側電圧は、互いに位相がπだけズレた同じ大きさ(ピークトゥピーク電圧Vpp)の電圧である。よって、内側電極33aと外側電極34aとの間には、常にVppだけの電位差が生じる。この電位差によって電極間に電界が発生し、この電界のうち表層36の外側に形成されるフレア用電界によって表層36上をトナーがホッピングする。本実施形態において、Vppは100[V]以上2000[V]以下の範囲内であるのが好ましい。Vppが100[V]より小さいと、十分なフレア用電界を表層36上に形成できず、トナーを安定してホッピングさせるのが困難となる。一方、Vppが2000[V]より大きいと、経時使用により電極間でリークが発生する可能性が高くなる。本実施形態では、Vppを500[V]に設定している。
また、本実施形態において、内側電圧と外側電圧の中心値V0は、画像部電位(静電潜像部分の電位)と非画像部電位(地肌部分の電位)との間に設定され、現像条件によって適宜変動する。また、中心値V0の値は固定して、Dutyを変動させても同様の効果が得られる。
本実施形態において、内側電圧と外側電圧の周波数fは、0.1[kHz]以上10[kHz]以下であるのが好ましい。0.1[kHz]より小さいと、トナーのホッピングが現像速度に追いつかなくなるおそれがある。一方、10[kHz]より大きいと、トナーの移動が電界の切り替わりに追従できなくなり、トナーを安定してホッピングさせるのが困難となる。本実施形態では、周波数fを500[Hz]に設定している。
図4に示すように、本実施形態の現像装置4は、第一パルス電源25Aがトナー担持ローラ103の担持ローラ回転軸33bに電圧を印加する構成である。この担持ローラ回転軸33bは、内側電極33aへの給電部として機能している。また、第二パルス電源25Bは、不図示の導電性ローラに接続されており、この導電性ローラがトナー担持ローラ103の外周面上における軸方向両端に設けられた被給電部34bに接触し、外側電極34aに対して電圧を印加する。
なお、内側電極33aと外側電極34aとの間に形成される電界が強すぎると、外側電極34aと内側電極33aとの間でリークが発生してしまい、電極を破壊してしまったり、トナー層規制部材104と外側電極34aとの間にリークが発生し、トナー担持ローラ103の表層36を傷つけたりするおそれがある。このため、現像装置4では、内側電極33aと外側電極34aとの間に形成される電界が適正な強度となるように、内側電極33aと外側電極34aとの電位差(ピークトゥピーク電圧Vpp)が設定されている。
次に、本実施形態の現像装置4における表層36の静電容量及び電極間の絶縁層35の静電容量の測定について説明する。現像装置4において、トナー担持ローラ103の内側電極33a及び外側電極34aに対して印加する電圧の設定が同じであっても、表層36の層厚が異なると、内側電極33a及び外側電極34aとの間に形成される電界の強度は異なる。そして、表層36の層厚には製造ばらつきがあったり、長期使用による磨耗によって減少したりするため、表層36の層厚は一定ではない。よって、内側電極33a及び外側電極34aに対して印加する電圧の設定が常に一定にした場合、ピークトゥピーク電圧Vppの値は一定になり、表層36の層厚の違いによって電界の強度は異なる。そのため、画像濃度の低下が発生したり、内側電極33aと外側電極34aとの間や外側電極34aとトナー層規制部材104との間でリークが発生したりといった不具合が発生するおそれがある。このような不具合を防止するために、本実施形態の現像装置4では、トナー担持ローラ103最外層である表層36の状態を常に検知して、内側電極33aと外側電極34aに印加するバイアス制御にフィードバックしている。これにより、常にフレア状態を一定にすることができ、画像不良等の不具合の発生を防止することができる。
本実施形態の現像装置4は、図2に示すように、表層静電容量測定装置130と、絶縁層静電容量測定装置140とを備えている。表層静電容量測定装置130は、トナー担持ローラ103の表面に接しているトナー供給ローラ105と外側電極34aとの間の負荷容量を測定する静電容量測定手段として機能する。また、絶縁層静電容量測定装置140は、トナー担持ローラ103の外側電極34aと内側電極33aとの間の負荷容量を測定する静電容量測定手段として機能する。
図7は、本実施形態の現像装置4における表層静電容量測定装置130を含む制御系のブロック図である。図7に示すように、表層静電容量測定装置130は、減衰回路130aと傾き検知回路130bと中央演算処理装置(CPU)130cとを有する波形検知回路で構成されている。また、図7の制御系の例では、内側電極33aに第一電圧(内側電圧)を印加する第一パルス電源25Aが、直流電源250Aと、その直流電源250Aの出力に基づいてパルス状の第一電圧(内側電圧)を発生するA相パルス発生回路251A(後述の図8参照)とを用いて構成されている。また、外側電極34aに第二電圧(外側電圧)を印加する第二パルス電源25Bが、直流電源250Bと、その直流電源250Bの出力に基づいてパルス状の第二電圧(外側電圧)を発生するB相パルス発生回路251Bとを用いて構成されている。ここで、第二パルス電源25Bの直流電源250Bは、クラウドパルス制御回路300により、表層状態検知の結果301に基づいて制御される。また、第一パルス電源25Aの直流電源250Aは、画像濃度制御回路400により、画像濃度検知手段401による画像濃度の検知結果に基づいて制御される。
図7において、表層静電容量測定装置130の減衰回路130aに、外側電極34aに印加するパルス状の印加電圧である第二電圧(外側電圧)が入力されると、所定の減衰率(図示の例では100:1)で減衰された後、傾き検知回路130bの微分回路により、トナー供給ローラ105と外側電極34aとの間の負荷容量に対応する印加電圧の波形の傾きが検出される。ここで、表層36の静電容量が高いときには印加電圧の波形の立ち上がり部又は立ち下がり部の勾配が小さくなり、表層36の静電容量が低いときには印加電圧の波形の立ち上がり部又は立ち下がり部の勾配が大きくなる。従って、印加電圧の波形の勾配に比例した微分電圧が傾き検知回路130bから出力される。中央演算処理装置(CPU)130cは、傾き検知回路130bの出力に基づいて表層36の静電容量を算出する。このように外側電極34aに印加電圧に基づいて表層36の静電容量を測定することができる。この表層36の静電容量の測定結果が、上記表層状態検知301の結果としてクラウドパルス制御回路300に入力される。
なお、図7の制御系の例では、表層36の静電容量の測定に、外側電極34aに印加する第二電圧(外側電圧)を用いているが、外側電極33aに印加する第一電圧(内側電圧)を用いてもよいし、第一電圧(内側電圧)及び第二電圧(外側電圧)の両方を用いてもよい。
また、図7の制御系の例のようにトナー供給ローラ105と外側電極34aとの間の負荷容量を測定する場合、トナ担持ローラ103に当接している他の当接部材については、バイアス電圧の印加をオフにしたりグランドへの接続が解除されてフロートの状態にしたりするように制御される。例えば、除電シール109及びトナー層規制部材104の両方へのバイアス印加がオフにされ、除電シール109及びトナー層規制部材104はそれぞれ電気的にフロートの状態になるように制御される。
図8は、本実施形態の現像装置4における絶縁層静電容量測定装置140を含む制御系のブロック図である。図8に示すように、絶縁層静電容量測定装置140は、減衰回路141aと傾き検知回路141bと中央演算処理装置(CPU)141cとを有する波形検知回路141で構成されている。なお、第一パルス電源25A及び第二パルス電源25Bの構成は、図7と同様であるので、説明を省略する。ここで、第二パルス電源25Bの直流電源250Bは、クラウドパルス制御回路300により、表層状態検知の結果301と環境条件補正値302とに基づいて制御される。また、第一パルス電源25Aの直流電源250Aは、画像濃度制御回路400により、画像濃度検知手段401による画像濃度の検知結果に基づいて制御される。
図8において、絶縁層静電容量測定装置140の減衰回路140aに、外側電極34aに印加するパルス状の印加電圧である第二電圧(外側電圧)が入力されると、所定の減衰率(図示の例では100:1)で減衰された後、傾き検知回路140bの微分回路により、内側電極33aと外側電極34aとの間の負荷容量に対応する印加電圧の波形の傾きが検出される。ここで、絶縁層35の静電容量が高いときには印加電圧の波形の立ち上がり部又は立ち下がり部の勾配が小さくなり、絶縁層35の静電容量が低いときには印加電圧の波形の立ち上がり部又は立ち下がり部の勾配が大きくなる。従って、印加電圧の波形の勾配に比例した微分電圧が傾き検知回路140bから出力される。中央演算処理装置(CPU)140cは、傾き検知回路140bの出力に基づいて絶縁層35の静電容量を算出する。このように外側電極34aに印加電圧に基づいて絶縁層35の静電容量を測定することができる。この絶縁層35の静電容量の測定結果に基づいて環境条件補正値302が算出され、クラウドパルス制御回路300に入力され、外側電極34aと内側電極33aとの間に形成される電界が適正な強度となるように第一パルス電源25A及び第二パルス電源25Bが印加する電圧の設定が調節される。
なお、図8の制御系の例では、絶縁層35の静電容量の測定に、外側電極34aに印加する第二電圧(外側電圧)を用いているが、外側電極33aに印加する第一電圧(内側電圧)を用いてもよいし、第一電圧(内側電圧)及び第二電圧(外側電圧)の両方を用いてもよい。
次に、本実施形態の現像装置4を使用し続けたときに磨耗によってトナ担持ローラ103の表層36の層厚が減少する場合について説明する。トナー担持ローラ103は、トナー層規制部材104、トナー供給ローラ105及び除電シール109等が表面に接触した状態で表面移動するため、表層36は経時で削られる。このため、現像装置4を使用し続けることで、表層36の層厚は初期状態に比べて薄くなっていく。
図9は、電界を制御しない(ピークトゥピーク電圧Vppの値が一定)状態で、トナー供給ローラ105の表層36の層厚が減少したときの、表層36の層厚と電界強度との関係の概略を示すグラフである。図9に示すように、電界を制御しないと、現像装置4の初期状態では表層36の層厚がx1[μm]の場合に電界強度がE1[V/m]だったものが、経時使用によって表層36の層厚がx3[μm]になると、電界強度はE3[V/m]まで上昇してしまう。適正な値がE1[V/m]だった電界強度がE3[V/m]まで上昇すると、トナー層規制部材104と外側電極34aとの間でリークが発生し、表層36を傷つけるおそれがある。
次に、現像装置4において、表層36の層厚と静電容量との関係を確認するために、トナー担持ローラ103の表面に接しているトナー供給ローラ105と外側電極34aとの間に交流電流を印加して、表層36の層厚が異なる条件でそれぞれの静電容量の値を測定した。このときの表層36の層厚と静電容量(以下、「表層静電容量H」という。)との関係の概略を示すグラフを図10に示す。図10に示すように、表層36が薄く層厚txが小さいと表層静電容量Hは高くなり、表層36が厚く層厚txが大きいと表層静電容量Hは低くなり、層厚txの大きさに応じて表層静電容量Hの値が異なることがわかる。
図11は、所望の電界強度Eを得るための、トナー担持ローラ103の表層36の層厚txとピークトゥピーク電圧Vppとの関係の概略を示すグラフである。図11のグラフに示す構成では、表層36の層厚txがx1[μm]のときにはピークトゥピーク電圧Vppがy1[V]となるように調節し、層厚txがx2[μm]のときにはピークトゥピーク電圧Vppがy2[V]となるように調節することで、電界強度Eを所望の値で一定にすることができる。このため、例えば、表層36の初期設定の層厚txがx1[μm]で所望の電界強度Eが得られるピークトゥピーク電圧Vppがy1[V]である場合、経時の磨耗によって表層36の層厚txがx3[μm]に減少した場合であっても、ピークトゥピーク電圧Vppがy3[V]となるように印加電圧を調節することにより、電界強度Eを所望の値で一定に保つことができる。
このときのピークトゥピーク電圧Vpp、電界強度E及び表層36の層厚txの関係は、次の式(1)のように示すことができる。
Vpp=fE(tx)・・・・(1)
このため、経時の磨耗による表層36の層厚txの減少する場合に限らず、製造上のバラツキなどによって表層36の層厚txにバラツキがある場合においても、あらかじめ表層36の層厚txを測定し、その測定値に応じて、上記式(1)に示した関係式から、フレアを形成する電界の電界強度Eが所望の値となるピークトゥピーク電圧Vppを算出することができる。よって、表層36の初期設定の層厚txがx1[μm]に対して製造上のバラツキによって表層36の層厚txがx2[μm]と初期設定よりも厚い場合であっても、ピークトゥピーク電圧Vppがy2[V]となるように印加電圧を調節することにより、電界強度Eを所望の値で一定に保つことができる。
以上のような制御を行うことにより、表層36の層厚txの減少やバラツキに起因して電界の強度が小さすぎる状態となることによって発生する不具合や、電界が強すぎる状態となることによって発生する不具合を防止することができる。なお、電界の強度が小さすぎる状態となることによって発生する不具合としては画像濃度の低下がある。また、電界が強すぎる状態となることによって発生する不具合としては、外側電極34aと内側電極33aとの間のリークによる電極破壊、及び、外側電極34aとトナー層規制部材104と外側電極34aとの間のリークによる表層36の損傷がある。
本実施形態の現像装置4では、初期状態で層厚txがx1[μm]だった表層36が経時の磨耗によってx3[μm]になった場合、上記式(1)に基づいて、ピークトゥピーク電圧Vppをy3[μm]に調整することで、フレアを形成する電界の電界強度Eを所望の一定の値として、トナー層規制部材104と外側電極34aとのリークによって表層36が破壊されることを防止できる。また、製造上のバラツキによって表層36の層厚txがx1よりも大きい場合であっても、上記式(1)に基づいて、ピークトゥピーク電圧Vppがy2[μm]に調整することで、フレアを形成する電界の電界強度Eを所望の一定の値として、トナー飛翔不足による濃度変動も防止することができる。
また、本実施形態の現像装置4の設置環境の条件が変化した場合、絶縁材料の特性値(含有水分量等)変動や、材料温度に変化が起こり、静電容量特性が変化してしまう。
図12は、外側電極34aと内側電極33aとの間に交流電流を印加して、印加する電流は一定で、湿度が変化したときの湿度と静電容量との関係の概略を示すグラフである。外側電極34aと内側電極33aとの間には、絶縁層35が介在しており、図12より、湿度が変化した場合には絶縁材料の静電容量が変化し、低湿時には、高湿時よりも静電容量が低いことがわかる。
絶縁層35は、その外周面側が外側電極34aと表層36とによって覆われているため、他の部材が接触することによる経時の磨耗が生じず、層厚は一定である。よって、経時での層厚の減少に起因する静電容量の変化がないため、絶縁層35の静電容量(以下「絶縁層静電容量J」という。)を測定することで、環境変化による静電容量の変化のみを検出することができる。
上述した表層静電容量Hの変化には、経時の磨耗で層厚が減少することによる静電容量の変化だけではなく、環境変化による静電容量の変化も含まれる。このため、表層静電容量Hの変化を絶縁層静電容量Jの変化で補正することで、正確に表層36の層厚txを算出することが可能となる。
また、温度や湿度等の環境が変化した場合、トナーの帯電量も変化する。例えば、低温低湿環境では、帯電量は高く、高温高湿環境では、帯電量は低くなってしまう。このようなトナーの帯電量の変化は、トナーとトナー担持ローラ103との静電的な付着力を変えてしまう。このため、トナーを飛翔させる電界を低温低湿環境で適正な電界強度Eに設定した場合、高温高湿環境では、トナーが飛翔しすぎてしまい、トナー担持ローラ103にトナーが戻ってこられなくなり、トナー飛散が発生し、装置内を汚してしまうという不具合が発生する。
このため、本実施形態の現像装置4では、絶縁層静電容量Jの測定結果から環境変化の影響を考慮した最適な電界強度Eを割り出し、この最適な電界強度Eと、表層静電容量H及び絶縁層静電容量Jに基づいて算出される表層36の層厚txとに基づいて、外側電極34a及び内側電極33aに印加する電圧を決定する。
図13は、表層36の層厚txはある値の状態で、各環境における適正な電界強度Eとピークトゥピーク電圧Vppとの関係の概略を示すグラフである。図13中では、高温高湿環境は一点鎖線、通常環境は実線、低温低湿環境は破線で適正な電界強度Eを示している。例えば、制御を行う時点での層厚txがx1[μm]と判断した場合のピークトゥピーク電圧Vppは、高温高湿環境下ではyh[V]、通常環境下ではym[V]、低温低湿環境下ではyl[V]となるようににそれぞれ調節する。よって、「Vpp=fE(tx)」で表す上記式(1)の右辺「fE(tx)」は環境条件によって決定される式となる。
図14は、表層36の層厚txの値と環境条件とに基づいて電界強度Eを適正な値に設定する制御の一例を示すフローチャートである。この制御は、例えば、プロセスカートリッジ1において画像形成動作を実行していないタイミングで実行される。
図14に示すフローチャートにおいて、まず、表層静電容量H及び絶縁層静電容量Jを測定し(S1及びS2)、絶縁層静電容量Jの測定結果に基づいて環境係数を決定する(S3)。次に、決定した環境係数に基づいて、そのときの環境条件における適正な電界強度Eを決定する(S4)。また、絶縁層静電容量Jの測定結果と表層静電容量Hの測定結果とに基づいて、表層36の層厚txを算出する(S5)。次に、層厚txと電界強度Eとに基づいて適正な電界強度Eとなるピークトゥピーク電圧Vppを決定する(S6)。そして、上記S1〜S6の制御によって決定したピークトゥピーク電圧Vppの値となるように、内側電極33a及び外側電極34aに印加する電圧を設定し、プリントを行う(S7)。このような制御を行うことにより、環境条件が変化したり、長期使用により表層36の層厚txが減少したりしても、トナー飛翔不足による画像濃度の低下やトナー層規制部材104と外側電極34aとの間でのリークによる表層36の損傷といった不具合の発生を防止することができる。
図15は、他の実施形態に係る現像装置4を有するプロセスカートリッジ1の拡大断面図であり、図16は、同現像装置4における表層静電容量測定装置130を含む制御系のブロック図である。この現像装置4に備える表層静電容量測定装置130は、トナー担持ローラ103の表面に接しているトナー層規制部材104と外側電極34aとの間の負荷容量を測定する。なお、図15のプロセスカートリッジ1において、図2と共通する部分については説明を省略し、図16の制御系において、図7と共通する部分については説明を省略する。
図15において、表層静電容量測定装置130の減衰回路130aに、外側電極34aに印加するパルス状の印加電圧である第二電圧(外側電圧)が入力されると、所定の減衰率(図示の例では100:1)で減衰された後、傾き検知回路130bの微分回路により、トナー層規制部材104と外側電極34aとの間の負荷容量に対応する印加電圧の波形の傾きが検出される。ここで、表層36の静電容量が高いときには印加電圧の波形の立ち上がり部又は立ち下がり部の勾配が小さくなり、表層36の静電容量が低いときには印加電圧の波形の立ち上がり部又は立ち下がり部の勾配が大きくなる。従って、印加電圧の波形の勾配に比例した微分電圧が傾き検知回路130bから出力される。中央演算処理装置(CPU)130cは、傾き検知回路130bの出力に基づいて表層36の静電容量を算出する。このように外側電極34aに印加電圧に基づいて表層36の静電容量を測定することができる。この表層36の静電容量の測定結果が、上記表層状態検知301の結果としてクラウドパルス制御回路300に入力される。
なお、図15及び16の実施形態において、トナー層規制部材104と外側電極34aとの間の負荷容量を測定する場合、トナ担持ローラ103に当接している他の当接部材については、バイアス電圧の印加をオフにしたりグランドへの接続が解除されてフロートの状態にしたりするように制御される。例えば、除電シール109及びトナー供給ローラ105の両方へのバイアス印加がオフにされ、除電シール109及びトナー供給ローラ105はそれぞれ電気的にフロートの状態になるように制御される。
図17は、更に他の実施形態に係る現像装置4を有するプロセスカートリッジ1の拡大断面図であり、図18は、同現像装置4における表層静電容量測定装置130を含む制御系のブロック図である。この現像装置4に備える表層静電容量測定装置130は、トナー担持ローラ103の表面に接している除電シール109と外側電極34aとの間の負荷容量を測定する。なお、図17のプロセスカートリッジ1において、図2と共通する部分については説明を省略し、図18の制御系において、図7と共通する部分については説明を省略する。
図18において、表層静電容量測定装置130の減衰回路130aに、外側電極34aに印加するパルス状の印加電圧である第二電圧(外側電圧)が入力されると、所定の減衰率(図示の例では100:1)で減衰された後、傾き検知回路130bの微分回路により、除電シール109と外側電極34aとの間の負荷容量に対応する印加電圧の波形の傾きが検出される。ここで、表層36の静電容量が高いときには印加電圧の波形の立ち上がり部又は立ち下がり部の勾配が小さくなり、表層36の静電容量が低いときには印加電圧の波形の立ち上がり部又は立ち下がり部の勾配が大きくなる。従って、印加電圧の波形の勾配に比例した微分電圧が傾き検知回路130bから出力される。中央演算処理装置(CPU)130cは、傾き検知回路130bの出力に基づいて表層36の静電容量を算出する。このように外側電極34aに印加電圧に基づいて表層36の静電容量を測定することができる。この表層36の静電容量の測定結果が、上記表層状態検知301の結果としてクラウドパルス制御回路300に入力される。
なお、図17及び18の実施形態において、除電シール109と外側電極34aとの間の負荷容量を測定する場合、トナ担持ローラ103に当接している他の当接部材については、バイアス電圧の印加をオフにしたりグランドへの接続が解除されてフロートの状態にしたりするように制御される。例えば、トナー規制部材104及びトナー供給ローラ105の両方へのバイアス印加がオフにされ、トナー規制部材104及びトナー供給ローラ105はそれぞれ電気的にフロートの状態になるように制御される。
以上、本実施形態の現像装置4は、互いに異なる電圧が印加される複数種類の電極部材である内側電極33a及び外側電極34aを備え、外周面に担持された現像剤であるトナーを現像領域へ搬送するための現像剤担持体であるトナー担持ローラ103と、内側電極33a及び外側電極34aに対して互いに異なる電圧を印加することにより、内側電極33aと外側電極34aとの間に電界を形成し、この電界によってトナー担持ローラ103の外周面上でトナーを飛翔させる電界形成手段を構成する第一パルス電源25A及び第二パルス電源25Bとを備え、現像領域でトナー担持ローラ103の外周面上で飛翔するトナーを用いて感光体2上の静電潜像に現像する。また、表層36により、内側電極33aと外側電極34aとの電気的な絶縁性を確保しつつ、これらの電極が形成されているトナー担持ローラ103の外周面を保護することができる。そして、トナー担持ローラ103の2種類の電極部材である内側電極33a及び外側電極34aの少なくとも一方と、トナー担持ローラ103に当接すると当接部材との間の負荷容量を測定する静電容量測定手段として表層静電容量測定装置130を備える。この表層静電容量測定装置130により、上記電界の形成に影響を及ぼす表層36の静電容量を測定し、現像剤であるトナーを飛翔させる電界の最適値を算出し、トナー担持ローラ103の複数種類の電極33a、34a間に形成される電界を一定にする制御が可能になる。よって、トナー担持ローラ103の表層36の状態が変化する場合でも、リークの発生を防止するとともに、トナー担持ローラ103上に形成するフレアの状態を安定にして画像不良等の不具合を防止することが可能になる。
また、本実施形態の現像装置4が備える表層特性測定手段である表層静電容量測定装置130は、上記負荷容量の測定結果に基づいて表層36の層厚を測定することができる。これにより、経時の磨耗によって減少する表層36の特性である層厚を測定することができる。
また、本実施形態の現像装置4は、トナー担持ローラ103の外周面に接触し、その接触する位置を通過するトナー担持ローラ103の外周面にトナーを供給する現像剤供給部材としてのトナー供給ローラ105を備え、表層静電容量測定装置130は、2種類の電極部材のうちの外側電極34aと当接部材としてのトナー供給ローラ105との間の負荷容量を測定する。これにより、外側電極34aとトナー供給ローラ105との間にある表層36の静電容量を測定することができる。なお、外側電極34aとトナー供給ローラ105との間の負荷容量を測定する代わりに、内側電極33aとトナー供給ローラ105との間の負荷容量を測定してもよいし、これらの両方の負荷容量を測定してもよい。
また、本実施形態の現像装置4は、トナー担持ローラ103が感光体2に対向する現像領域のトナー担持ローラ103によるトナー搬送方向下流側で現像装置4の内外をシールするシール部材(下シール部材)としての除電シール109を備え、表層静電容量測定装置130は、2種類の電極部材のうちの外側電極34aと当接部材としての除電シール109との間の負荷容量を測定する。これにより、外側電極34aと除電シール109との間にある表層36の静電容量を測定することができる。なお、外側電極34aと除電シール109との間の負荷容量を測定する代わりに、内側電極33aと除電シール109との間の負荷容量を測定してもよいし、これらの両方の負荷容量を測定してもよい。
また、本実施形態の現像装置4は、トナー担持ローラ103に担持された現像剤としてのトナーの量(層厚)を規制する現像剤規制部材としてのトナー層規制部材104を備え、表層静電容量測定装置130は、2種類の電極部材のうちの外側電極34aと当接部材としてのトナー層規制部材104との間の負荷容量を測定する。これにより、外側電極34aとトナー層規制部材104との間にある表層36の静電容量を測定することができる。なお、外側電極34aとトナー層規制部材104との間の負荷容量を測定する代わりに、内側電極33aとトナー層規制部材104との間の負荷容量を測定してもよいし、これらの両方の負荷容量を測定してもよい。
また、本実施形態の現像装置4は、表層静電容量測定装置130の検知結果に基づいて、種類の異なる電極部材である内側電極33aと外側電極34aとの間に形成される電界が一定になるように電界形成手段を制御する。これにより、経時で表層36の層厚が減少しても、表層36の表面上に適切な電界を形成することができ、画像濃度の低下や電極部材間でのリークを防止することができる。
また、本実施形態の現像装置4は、表層静電容量測定装置130の検知結果に基づいて、電界形成手段を構成する第一パルス電源25A及び第二パルス電源25Bが内側電極33a及び外側電極34aに対して印加する電圧を制御する。これにより、表層静電容量測定装置130の検知結果に基づいて、電界が一定になるように制御を行うことができる。
また、本実施形態の現像装置4は、種類の異なる電極部材である内側電極33aと外側電極34aとの間の負荷容量を測定する静電容量測定手段としての絶縁層静電容量測定装置140を備え、絶縁層静電容量測定装置140の測定結果に基づいて、電界制御係数である環境係数を決定し、表層静電容量測定装置130の検知結果に基づいた電界形成手段の制御を補正する。これにより、現像装置4の設置環境が変化しても、その環境に対応して適切な電界を内側電極33aと外側電極34aとの間に形成することができ、画像濃度の低下や電極部材間でのリークを防止することができる。
また、本実施形態の現像装置4は、図5に示すように、2種類の電極部材である内側電極33aと外側電極34aとを外周面法線方向で互いに異なる位置に配置し、内側電極33aと外側電極34aとの間に絶縁層35を介在させている。これにより、内側電極33aと外側電極34aとの間を安定かつ有効に絶縁することができ、比較的大きな電圧を印加する場合でもリークを効果的に防止することができる。
また、本実施形態の現像装置4に備えた電極部材間静電容量測定手段としての絶縁層静電容量測定装置140は、内側電極33aと外側電極34aとの間の負荷容量を測定することにより、絶縁層35の静電容量を測定することができる。絶縁層35は、その外周面側が外側電極34aと表層36とによって覆われているため、経時での層厚の減少に起因する静電容量の変化がないため、絶縁層35の静電容量(絶縁層静電容量J)を測定することで、環境変化による静電容量の変化のみを検出することができる。
また、本実施形態の現像装置4を備えたプロセスユニットとしてのプロセスカートリッジ1は、潜像担持体である感光体2上に形成された潜像に対して現像装置4によって現像剤であるトナーを供給することにより静電潜像を現像する。このプロセスカートリッジ1の現像装置4用いることで、画像濃度の低下や電極部材間でのリークを防止することができるため、良好な画像形成を行うことができる。
また、本実施形態の現像装置4を備えたプリンタ100は、潜像担持体である感光体2上に形成された潜像に対して現像装置4によって現像剤であるトナーを供給することにより静電潜像を現像し、その現像で得られた画像を、最終的に記録材である転写紙P上に転移させて、転写紙P上に画像を形成する。そして、プリンタ100は、上述した現像装置4用いることで、画像濃度の低下や電極部材間でのリークを防止することができるため、良好な画像形成を行うことができる。