本発明は、1つの分子鎖中に、分子鎖中に下記構造式
で示される化学構造を含むAセグメント0.5〜75重量%と、分子鎖中に下記構造式
(ここで、R1は水素原子、または、メチル基を表し、R2は炭素原子数1〜8個のアルキル基を表す。)
で示される化学構造を含むBセグメント25〜99.5重量%からなる被覆用組成物の製造方法であって、Aセグメントは、α−メチルスチレンダイマー1.0モルに対し、重合開始剤を0.05〜1.0モル使用して、アクリル単量体をラジカル重合して製造し、Aセグメントの存在下でBセグメントに使用する(メタ)アクリル酸アルキルを含むアクリル単量体をラジカル重合して製造する被覆用組成物の製造方法である。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、構造式
で示される化学構造は、Aセグメント中に、好ましくは、0.5〜35重量%、より好ましくは、3〜30重量%、さらに好ましくは、3〜25重量%含まれるのが望ましい。構造式
で示される化学構造が、Aセグメント中0.5〜35重量%であれば、構造式
で示される化学構造に基づく凝集力、水素結合能、強度がいかんなく発揮され、擦り傷や衝撃などによる塗膜の傷付き、皮脂、化粧品、指紋などによる塗膜汚染に対する抵抗性が高く(自己修復性)なる。その結果、塗膜の美麗な初期外観、意匠性を長期に渡って維持することができるため、自己修復性塗料として、タッチパネル、タブレット型PC、電子ペーパー、携帯電話など傷付き、汚染を嫌う製品、部材に、より望ましく適用できる。
本発明の被覆用組成物の製造方法は、好ましくは、Aセグメントが、さらに、分子側鎖に、フルオロアルキル基、および/または、ジメチルシロキサン基を有する。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、下記構造式
で示される化学構造は、好ましくは、メタクリロイル基(CH2=C(CH3)−C(O)O−)を有するアクリル単量体、例えば、メタクリル酸メチルに、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレア(または、2−(2−オキソイミダゾリジン−1−イル)エチルメタクリレート、または、1−(2−メタクリロキシエチル)イミダゾリジン−2−オン、とも言う)を反応させることで製造することができる。本発明の被覆用組成物では、上市されているN−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレアとして、エボニック デグッサ社の「Plex 6844 O」、アルケマ社の「NORSOCRYL 103」などが例示され、いずれを使用してもよい。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、Aセグメントは、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレア以外にも、好ましくは、炭素原子数が2〜24のトリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレートなどのフルオロアルキルメタクリレート、アロンマクロマー「AK−5」、「AK−30」、「AK−32」(以上、東亞合成(株)の製品)などの分子鎖片末端にメタクリロイル基を有するジメチルシロキサンマクロモノマーなどの撥水、撥油性が発揮されるアクリル単量体を使用して製造することが望ましい。本発明の被覆用組成物の製造方法により得られた被覆用組成物では、炭素原子数が2〜24のフルオロアルキルメタクリレート、分子鎖片末端にメタクリロイルキを有するジメチルシロキサンマクロモノマーなどが使用されることにより、被覆用組成物の皮脂、化粧品、指紋などによる塗膜汚染に対する抵抗性が高く(自己修復性)なる傾向が見られ、塗膜の美麗な初期外観、意匠性を長期に渡って維持することができるため、自己修復性塗料として、タッチパネル、タブレット型PC、電子ペーパー、携帯電話など傷付き、汚染を嫌う製品、部材に、より望ましく適用できる傾向が見られる。また同時に、水との接触角が大きくなる傾向が見られ、撥水性塗膜として、下地保護の観点から望ましくなる傾向が見られる。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、Aセグメントに使用されるアクリル単量体は、好ましくは、メタクリロイル基(CH2=C(CH3)−C(O)O−)を有するアクリル単量体だけが使用されるのが望ましい。また、メタクリロイル基(CH2=C(CH3)−C(O)O−)を有するアクリル単量体は、メタクリル酸メチルが好ましい。本発明の被覆用組成物の製造方法では、Aセグメントに使用されるアクリル単量体がメタクリロイル基を有するアクリル単量体だけであれば、Aセグメントの重合反応がスムースに進行し、分子量、分子量分布が制御された、ポリマー末端がラジカル重合活性なAセグメントの製造が容易になるので、好ましい。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、好ましくは、Aセグメント中に、Aセグメントに使用するアクリル単量体合計量を100重量%としたとき、メタクリル酸メチルがラジカル重合した化学構造は、より好ましくは、65〜97重量%、さらに好ましくは、75〜97重量%であるのが望ましい。本発明の被覆用組成物の製造方法では、Aセグメント中に、メタクリル酸メチルがラジカル重合した化学構造が65〜99.5重量%であれば、Aセグメントの機械的強度、耐水性、耐薬品性などがいかんなく発揮され、本発明の被覆用組成物の製造方法により得られた被覆用組成物を使用する塗料、粘着剤、接着剤の優れたパフォーマンスが向上する。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、さらにより好ましくは、Aセグメントが、分子鎖中に、下記構造式
で示される化学構造0.5〜35重量%と、下記構造式
で示される化学構造65〜99.5重量%からなることが望ましい。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、Bセグメントに含まれる化学構造は、下記構造式
で示される。R1は、水素原子、または、メチル基を表し、R2は、炭素原子数1〜8個のアルキル基を表す。R1は、好ましくは、メチル基である。R2は、好ましくは、メチル基、エチル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基であり、より好ましくは、メチル基、n−ブチル基である。R1が、メチル基であり、R2が、メチル基、エチル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基であると、被覆用組成物の硬度、耐傷つき性などの機械的強度が改善され、自己修復性が向上する。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、Bセグメントには、下記構造式
(ここで、R1は、水素原子、または、メチル基を表し、R2は炭素原子数1〜8個のアルキル基を表す。)
で示される化学構造の他に、好ましくは、一例として、多官能アクリル単量体としてビスフェノールAジグリシジルエーテルのメタクリル酸付加物を共重合した、下記化学構造
という構造を有する。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、Bセグメントに、一例として、多官能アクリル単量体としてビスフェノールAジグリシジルエーテルのメタクリル酸付加物を共重合した、下記化学構造
と、一例として、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルが共重合された、下記化学構造
を有することにより、皮脂、化粧品、指紋などによる塗膜汚染に対する抵抗性が高く(自己修復性があり、塗膜の美麗な初期外観、意匠性を長期に渡って維持することができる。このため、自己修復性塗料として、タッチパネル、タブレット型PC、電子ペーパー、携帯電話など傷付き、汚染を嫌う製品、部材に、より望ましく適用できる。また同時に、撥水性塗膜として、下地保護の観点から望ましくなる。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、下記構造式
(ここで、R1は、水素原子、または、メチル基を表し、R2は炭素原子数1〜8個のアルキル基を表す。)
で示される化学構造は、好ましくは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ターシャリーブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ターシャリーブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルを反応させることで製造することができる。本発明の被覆用組成物の製造方法では、これらの(メタ)アクリル酸アルキルは単独で使用しても、2種類上の混合物で使用してもよい。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、(メタ)アクリル酸アルキルのなかでは、好ましくは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ターシャリーブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどのメタクリル酸アルキルエステルが使用される。被覆用組成物の硬度、耐傷つき性などの機械的強度が改善され、自己修復性が向上する傾向が見られる。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、Bセグメントは、(メタ)アクリル酸アルキル以外にも、アクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などのカルボキシル基を有するアクリル単量体、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチルアクリレート、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの水酸基含有アクリル単量体、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレートなどのアルコキシアルキル基含有アクリル単量体、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル単量体、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリロイルオキシプロピル−1,3−ジオキソラン、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリロイルオキシプロピル−1,3−ジオキソランなどのオキソラン基含有アクリル単量体、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートなどのジシクロペンチル基含有メタクリル単量体、テトラメチルピペリジニルアクリレート、ペンタメチルピペリジニルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルピペリジニルメタクリレート、ペンタメチルピペリジニルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライドなどの分子中に窒素原子を有するアクリル単量体、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのメタクリル酸付加物、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジメタクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジメタクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリメタクリレートなどの分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能アクリル単量体、などのアクリル単量体を反応させる。本発明の被覆用組成物の製造方法では、これらのBセグメントの製造に使用される(メタ)アクリル酸アルキル以外のアクリル単量体は単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、Bセグメントは、好ましくは、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチルなどのウレタン架橋可能な水酸基含有アクリル単量体、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのメタクリル酸付加物、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートなどのジシクロペンチル基含有アクリル単量体などの紫外線硬化可能な多官能アクリル単量体が併用されるのが望ましい。本発明の被覆用組成物の製造方法により得られた被覆用組成物では、水酸基含有アクリル単量体と多官能アクリル単量体が併用されることで、塗膜表面構造、形状が制御される傾向が見られ、皮脂、化粧品、指紋などによる塗膜汚染に対する抵抗性が高く(自己修復性)なる傾向が見られ、塗膜の美麗な初期外観、意匠性を長期に渡って維持することができるため、自己修復性塗料として、タッチパネル、タブレット型PC、電子ペーパー、携帯電話など傷付き、汚染を嫌う製品、部材に、より望ましく適用できる。また同時に、水との接触角が大きくなる傾向が見られ、撥水性塗膜として、下地保護の観点から望ましくなる。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、Bセグメントを製造するために使用されるアクリル単量体は、好ましくは、アクリロイル基(CH2=CH−C(O)O−)を有するアクリル単量体だけが使用される。本発明の被覆用組成物の製造方法では、Bセグメントを製造するために使用されるアクリル単量体が、アクリロイル基を有するアクリル単量体だけの場合は、重合制御が期待通りに実施され、分子量、分子量分布などが任意に制御できる。
また、本発明の被覆用組成物の製造方法では、Bセグメントを製造するために使用されるアクリル単量体は、好ましくは、メタクリロイル基(CH2=C(CH3)−C(O)O−)を有するアクリル単量体だけが使用されることも好ましい。本発明の被覆用組成物の製造方法では、Bセグメントを製造するために使用されるアクリル単量体が、メタクリロイル基を有するアクリル単量体だけの場合には、重合制御が期待通りに実施され、分子量、分子量分布などが任意に制御できるようになる。
本発明の被覆用組成物の製造方法は、一つの高分子分子鎖中に含まれるAセグメント0.5〜75重量%と、Bセグメント25〜99.5重量%で構成される。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、Aセグメントの量が0.5重量%未満の場合には、塗膜が十分な耐傷つき性、耐衝撃性、非汚染性を発揮しない。Aセグメントの量が75重量%を超える場合には、被塗物への付着性が悪化する。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、Bセグメントの量が25重量%未満の場合には、被塗物への付着性が悪化する。また、塗膜の架橋が不十分となって、耐薬品性が悪化する。Bセグメントの量が99.5重量%を超える場合には、塗膜が十分な耐傷つき性、耐衝撃性、非汚染性を発揮しない。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、好ましくは、Aセグメント3〜75重量%、Bセグメント25〜97重量%、より好ましくは、Aセグメント5〜50重量%、Bセグメント50〜95重量%、さらに好ましくは、Aセグメント5〜30重量%、Bセグメント70〜95重量%であるのが望ましい。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、Aセグメント3〜75重量%、Bセグメント25〜97重量%であれば、塗膜の自己修復性、耐薬品性、基材への付着性などにバランスがとれ、より一層、良好な性能を発揮する。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、塗膜の水との接触角(25℃)が、好ましくは、90度以上であるのが望ましい。本発明の被覆用組成物の製造方法では、被覆用組成物が、好ましくは、オーバーコート塗料用として使用されるとき、接触角が90度以上であれば、塗膜が水に濡れることがなくなり、耐水性、水蒸気バリア性などが向上し、最外装にオーバーコート塗膜を有する被塗物、プライマー、下地塗料などが水による変質、劣化から保護される。また同時に、皮脂、化粧品、指紋などによる塗膜汚染に対する抵抗性が高く(自己修復性)なり、塗膜の美麗な初期外観、意匠性を長期に渡って維持することができるため、自己修復性塗料として、タッチパネル、タブレット型PC、電子ペーパー、携帯電話など汚染を嫌う製品、部材に、より望ましく適用できる。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、塗膜の水との接触角は、より好ましくは、100度以上、さらに好ましくは、110度以上であるのが望ましい。接触角が100度以上であれば、塗膜表面で水滴が滑落し、塗膜が水に濡れず、塗膜表面に水滴が残りにくくなり、被塗物が保護される。同時に、レンズ効果で塗膜が劣化しなくなる。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、好ましくは、100度以上の接触角を発現するために、好ましくは、Bセグメントに、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの加熱による架橋、ウレタン架橋などが可能な水酸基含有アクリル単量体、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのメタクリル酸付加物、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートなどのジクロペンチル基を有するアクリル単量体などの紫外線硬化可能な多官能アクリル単量体を併用し、塗膜を加熱、ウレタン架橋した後、さらに紫外線照射し、塗膜表面に微細な凹凸構造を形成するのが望ましい。本発明の被覆用組成物の製造方法では、塗膜表面に、微細な制御された凹凸構造が形成されることにより、水との接触角がさらに高くなり、より一層、撥水性が向上し、耐汚染性が改善される。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、接触角は、協和界面科学(社)製の接触角測定装置「CA−DT」を使用して測定した。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、Aセグメントをラジカル重合で製造した後、Aセグメントの存在下でBセグメントに使用するアクリル単量体をラジカル重合して製造する。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、Aセグメントは、α−メチルスチレンダイマー1.0モルに対し、重合開始剤を0.05〜1.0モル使用する。好ましくは、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレアを含むアクリル単量体をラジカル重合して製造するのが望ましい。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、α−メチルスチレンダイマーは、好ましくは、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンであり、ABS樹脂製造時等で使用される無臭の連鎖移動剤(重合度調節剤)としてよく知られている。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、α−メチルスチレンダイマーは、例えば、日油(株)、三井化学(株)、五井化成(株)などで生産、販売されているものが使用できる。本発明の被覆用組成物の製造方法では、製造効率を高め、被覆用組成物の着色を抑制するため、α−メチルスチレンダイマーの純度、すなわち、市販されているα−メチルスチレンダイマー中の2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン含有量が、好ましくは、93.0%以上、より好ましくは、97.0%以上、さらに好ましくは、99.0%以上であるのが望ましい。本発明の被覆用組成物の製造方法では、α−メチルスチレンダイマー中の2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン含有量が高いほど被覆用組成物の着色が少なく、塗料や粘着剤、接着剤の硬化性が向上する傾向が見られる。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、Aセグメントを製造する際に使用する重合開始剤として、好ましくは、有機アゾ系重合開始剤、有機過酸化物が例示される。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、好ましく使用される有機アゾ系重合開始剤として、2,2´−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)社製「V−70」;融点50〜96℃、10時間半減期30℃)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)社製「V−65」;融点45〜70℃、10時間半減期51℃)、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)((和光純薬工業(株)社製「V−60」;融点100〜103℃、10時間半減期65℃)、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(和光純薬工業(株)社製「V−59」;融点48〜52℃、10時間半減期67℃)、ジメチル 2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業(株)社製「V−601」;融点22〜28℃、10時間半減期66℃)などが例示される。本発明の被覆用組成物の製造方法では、これらの有機アゾ系重合開始剤は単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、好ましく使用される有機アゾ系重合開始剤の中では、10時間半減期温度が、好ましくは、30〜80℃、より好ましくは、30〜75℃、さらに好ましくは、30℃〜67℃の有機アゾ系重合開始剤が望ましい。本発明の被覆用組成物の製造方法では、10時間半減期温度が30〜80℃の有機アゾ系重合開始剤が使用されることにより、Aセグメントの製造効率が改善され、製造時間が短縮される傾向が見られる。また、重合温度制御が容易となりAセグメントをより安全に製造できるようになる。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、10時間半減期温度が30〜80℃の有機アゾ系重合開始剤として、好ましくは、2,2´−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)社製「V−70」;融点50〜96℃、10時間半減期30℃)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)社製「V−65」;融点45〜70℃、10時間半減期51℃)、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)((和光純薬工業(株)社製「V−60」;融点100〜103℃、10時間半減期65℃)、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(和光純薬工業(株)社製「V−59」;融点48〜52℃、10時間半減期67℃)、ジメチル 2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業(株)社製「V−601」;融点22〜28℃、10時間半減期66℃)などが例示される。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、好ましく使用される有機過酸化物として、1,1−ビス(t−へキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(日油(株)社製「パーヘキサTMH」など;10時間半減期温度86.7℃)、1,1−ビス(t−へキシルパーオキシ)シクロヘキサン(日油(株)社製「パーヘキサHC」など;10時間半減期温度87.1℃)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(日油(株)社製「パーヘキサ3M−95」など;10時間半減期温度90.0℃)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン(日油(株)社製「パーヘキサCD」など;10時間半減期温度95.0℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド(日油(株)社製「パーオクタH」など;10時間半減期温度152.9℃)、t−へキシルハイドロパーオキサイド(日油(株)社製「パーヘキシルH」など;10時間半減期温度159.5℃)、t−ブチルクミルパーオキサイド(日油(株)社製「パーブチルC」など;10時間半減期温度119.5℃)、ジ−t−ブチルパーオキサイド(日油(株)社製「パーブチルD」など;10時間半減期温度123.7℃)、ラウロイルパーオキサイド(日油(株)社製「パーロイルL」など;10時間半減期温度61.6℃)、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(日油(株)社製「パーロイルTCP」など;10時間半減期温度40.8℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油(株)社製「パーオクタO」など;10時間半減期温度65.3℃)、t−へキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油(株)社製「パーヘキシルO」など;10時間半減期温度69.9℃)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油(株)社製「パーブチルO」など;10時間半減期温度72.1℃)、t−へキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(日油(株)社製「パーヘキシルI」など;10時間半減期温度95.0℃)、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート(日油(株)社製「パーブチル355」など;10時間半減期温度97.1℃)、t−ブチルパーオキシラウレート(日油(株)社製「パーブチルL」など;10時間半減期温度98.3℃)、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(日油(株)社製「パーブチルI」など;10時間半減期温度98.7℃)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルへキシルモノカーボネート(日油(株)社製「パーブチルE」など;10時間半減期温度99.0℃)、t−へキシルパーオキシベンゾエート(日油(株)社製「パーへキシルZ」など;10時間半減期温度99.4℃)、t−ブチルパーオキシベンゾエート(日油(株)社製「パーブチルZ」など;10時間半減期温度104.3℃)などが例示される。本発明の被覆用組成物の製造方法では、これらの有機過酸化物は単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、有機過酸化物のなかでは、Aセグメント製造時の重合温度制御を容易にし、Aセグメントの貯蔵安定性を向上するため、有機過酸化物の10時間半減期温度が、好ましくは、30〜90℃、より好ましくは、50〜80℃の有機過酸化物が望ましい。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、10時間半減期温度が30〜90℃の有機過酸化物として、1,1−ビス(t−へキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(日油(株)社製「パーヘキサTMH」など;10時間半減期温度86.7℃)、1,1−ビス(t−へキシルパーオキシ)シクロヘキサン(日油(株)社製「パーヘキサHC」など;10時間半減期温度87.1℃)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(日油(株)社製「パーヘキサ3M−95」など;10時間半減期温度90.0℃)、ラウロイルパーオキサイド(日油(株)社製「パーロイルL」など;10時間半減期温度61.6℃)、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(日油(株)社製「パーロイルTCP」など;10時間半減期温度40.8℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油(株)社製「パーオクタO」など;10時間半減期温度65.3℃)、t−へキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油(株)社製「パーヘキシルO」など;10時間半減期温度69.9℃)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油(株)社製「パーブチルO」など;10時間半減期温度72.1℃)などが例示される。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、α−メチルスチレンダイマー1.0モルに対し、重合開始剤を0.05〜1.0モル使用し、Aセグメントをラジカル重合で製造することにより、Aセグメントの製造効率が向上し、製造時間を短縮できる。本発明の被覆用組成物の製造方法では、重合率の上昇とともに、Aセグメントの数平均分子量が増加する傾向が見られるため、任意の数平均分子量、重量平均分子量を有するAセグメントの設計が可能となる。本発明の被覆用組成物では、重合温度を50〜100℃の比較的低温域に設定することが可能であり、アクリル酸メチル(沸点80℃)、アクリル酸エチル(沸点99℃)、メタクリル酸メチル(沸点100℃)のような低沸点アクリル単量体の共重合も可能であり、熱エネルギーなどの製造に係わるエネルギー原単位を大きく改善できる傾向が見られる。本発明の被覆用組成物の製造方法では、重合温度制御がきわめて容易であり、製造中の急激で大きい発熱、粘度上昇、暴走反応などが解消される傾向が見られる。したがって、本発明の被覆用組成物の製造方法では、Aセグメント、Bセグメントは、溶液重合、塊状重合、けん濁重合、乳化重合など、いずれの方法でも製造が可能であり、被覆用組成物の用途に沿った最適な製造方法の選択が可能である。
本発明の被覆用組成物の製造方法における、塊状重合による、Aセグメントの製造方法の一例を以下に示す。
撹拌装置、コンデンサー、温度計、窒素ガス吹き込み口、加熱冷却装置がある重合装置にメタクリル酸メチル、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレア、「AMSD−GRU」(五井化成(株)製のα−メチルスチレンダイマー、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン含有量99.0%以上)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)社製「V−65」;融点45〜70℃、10時間半減期51℃)(「AMSD−GRU」1.0モルに対して0.05〜1.0モル)の所定量を仕込み、窒素ガスバブリングを30分間行う。
昇温を開始し50℃まで30分で昇温する。50℃で2時間重合を行う。窒素ガスのバブリングを吹き込みに変え、昇温を開始し72℃まで30分で昇温を行う。72℃で所定の重合率または分子量になるまで、例えば、3〜16時間程度重合を行う。室温まで冷却してAセグメントを製造する。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、Aセグメント、Bセグメントの製造工程は、上記例のように重合温度から見て多段の製造工程に分割し、行うのが望ましい。本発明の被覆用組成物の製造方法では、製造工程を多段に分割することで、製造効率が向上し、製造時間が短縮され、Aセグメント、Bセグメントの分子量制御が容易になる傾向が見られる。本発明の被覆用組成物の製造方法では、Aセグメント、Bセグメント製造における1段目の製造工程を、好ましくは、重合開始剤の10時間半減期温度近辺、より好ましくは、10時間半減期温度±10℃、さらに好ましくは、10時間半減期温度±5℃の温度で、30分から300分程度重合を行うことが推奨される。本発明の被覆用組成物の製造方法では、Aセグメント、Bセグメント製造における2段目の製造工程は、好ましくは、重合開始剤の10時間半減期温度〜重合開始剤の10時間半減期温度+30℃、より好ましくは、重合開始剤の10時間半減期温度+10〜重合開始剤の10時間半減期温度+25℃でAセグメント、Bセグメントの製造を行うことが推奨される。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、被覆用組成物は、Aセグメントの存在下でBセグメントに使用する(メタ)アクリル酸アルキルを含むアクリル単量体をラジカル重合して製造する。本発明の被覆用組成物の製造方法では、Bセグメントに使用する(メタ)アクリル酸アルキルを含むアクリル単量体をラジカル重合する際には、好ましくは、有機アゾ系重合開始剤、有機過酸化物などの重合開始剤は使用しないのが望ましい。本発明の被覆用組成物の製造方法では、Bセグメントに使用する(メタ)アクリル酸アルキルを含むアクリル単量体をラジカル重合する際には、好ましくは、Bセグメント製造時に共存するAセグメントを重合開始剤として使用するのが望ましい。
本発明の被覆用組成物の製造方法では、Bセグメントは、例えば、撹拌装置、窒素ガス吹き込み口、温度計、還流冷却器を備えた重合装置に、あらかじめ製造した所定量のAセグメント、Bセグメントに使用される(メタ)アクリル酸アルキルを含むアクリル単量体を仕込み、所定温度に昇温して、所定重合率になるまで重合を行うことにより、1分子鎖内にAセグメントとBセグメントを含む被覆用組成物が製造できる。
以下、実施例で本発明を詳細に説明する
実施例で本発明の詳細を説明するのに先立ち、試験方法、評価方法を説明する。また、特に断りがない限り使用量は部数(g)を表し、組成は重量%を表す。
1.重合率(%):
アクリル樹脂製造に使用したアクリル単量体が全て重合したとしたときの理想加熱残分(X)、実測の加熱残分(Y)としたとき、重合率(%)=Y/X×100で算出した。なお、加熱残分は、JIS K 5407:1997にしたがって140℃で60分間加熱し測定した。
2.分子量:
重量平均分子量(以下、Mwとも言う)、数平均分子量(以下、Mnとも言う)、分子量分布(以下、dとも言う)=Mw/Mnは、東ソー(株)の「HLC−8220 GPC」システムで測定した。
3.試験用の塗料の製造、使用方法
3.1 塗料の製造 被覆用組成物を使用する試験用の塗料は次の通り製造した。硬化剤を使用しない塗料はそのままでアクリルラッカーとして使用した。ウレタン硬化剤を使用する塗料は、硬化剤のポリイソシアネートとしてメタキシレンジイソシアネートを使用し、イソシアネートのモル数/被覆用組成物の水酸基のモル数が1.2となるようにメタキシレンジイソシアネートをよく混合し、ウレタン硬化型塗料として使用した。紫外線硬化する塗料は、被覆用組成物を、反応性希釈剤のイソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート/トリメチロールプロパントリアクリレート/アクリル酸イソブチル(=10/70/20)混合物で希釈した後、光重合開始剤の「IRGACURE 651」(BASF(株)の光開始剤)を添加して紫外線硬化型塗料とした。反応性希釈剤は被覆用組成物の加熱残分の20%使用し、光重合開始剤は被覆用組成物の加熱残分の2%使用した。また、ウレタン硬化、紫外線硬化を併用する塗料は、まず被覆用組成物を紫外線硬化型塗料にした後、使用前にメタキシレンジイソシアネートを加えて、ウレタン硬化−紫外線硬化型塗料として使用した。
3.2 塗料の使用方法、塗装方法
アクリルラッカー、ウレタン硬化型塗料、紫外線硬化型塗料、ウレタン硬化−紫外線硬化型塗料は、以下の通り使用した。
アクリルラッカーは140℃で1分間乾燥した後、40℃で2日間乾燥して、塗膜の試験を行った。ウレタン硬化型塗料は、140℃で1分間乾燥した後、40℃で2日間熟成反応を行ない、塗膜の試験を行った。紫外線硬化型塗料は、140℃で1分間乾燥した後、照度120W/cmの高圧水銀ランプを使用し、ランプ高さ10cm、コンベアスピード2m/min.の照射条件で、照射量840mJ/cm2で紫外線照射した後、40℃で2日間熟成後、塗膜の試験を行った。ウレタン硬化−紫外線硬化型塗料は、140℃で1分間乾燥した後、照度120W/cmの高圧水銀ランプを使用し、ランプ高さ10cm、コンベアスピード2m/min.の照射条件で、照射量840mJ/cm2で紫外線照射した後、40℃で2日間熟成後、塗膜の試験を行った。
4.接触角
被覆用組成物を使用した塗料をポリエステルフィルム「ルミラー#100」(東レ(株)の製品)に乾燥膜厚が5μmになるよう塗布し、塗膜を乾燥、硬化した。
この塗膜表面の接触角を、協和界面科学(株)社製の接触角計FACE CONTACT−ANGLE METER 「CA−DT」を使用し、23℃で測定した。
4.被覆用組成物を使用した塗料の自己修復性塗料としての耐指紋痕性の評価
ガラス板に、被覆用組成物を使用した塗料を乾燥膜厚5μmになるよう塗布し、塗膜を乾燥、硬化した。
塗膜の上を、室温で、親指で押しつけ指紋の付き具合、指紋痕の消え具合を目視判定し、時間で示した。指紋がまったく付かないもの、指紋痕が30分以内になくなるものは耐指紋痕性が良好であり、合格とした。指紋痕が30分を過ぎても残るものは不合格とした。
5.被覆用組成物を使用した塗料の耐傷つき性の評価
ガラス板に、被覆用組成物を使用した塗料を膜厚5μmになるよう塗布し、塗膜を乾燥、硬化した。
塗膜の上を、室温で、10円玉の円周部で押しつけ、塗膜にへこみ痕を付けた。へこみ痕が消えるまでの時間を目視判定し、時間で示した。へこみ傷が、目視で最初の状態と差異がないと判断される時間が60分以内の場合に自己修復性が良好とし、合格とした。それ以上時間がかかるか、あるいはへこみ傷が消えない場合には不合格とした。
参考例 実施例で使用するAセグメントの製造
Aセグメント、A−1の製造
撹拌機、コンデンサー、窒素ガス吹き込み口、加熱冷却装置、温度計のついた300mLフラスコに、酢酸エチル23.4g、トルエン54.5g、メタクリル酸メチル97.0g、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレア3.0g、α−メチルスチレンダイマー11.9g、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5.0gを仕込んだ。窒素ガスのバブリングを30分間行った後、吹き込みに変えた。72℃まで120分で昇温し、72℃で8時間重合を行い、A−1を製造した。
Aセグメント、A−1は、加熱残分58.2%、重合率99.8%、重量平均分子量5320、数平均分子量3800、分子量分散1.4であった。表1にA−1製造データの詳細を示した。
表1中、1はA−1製造に使用した有機溶剤と使用量を示し、2はAセグメントに使用したアクリル単量体と使用量を示し、3は連鎖移動剤のα−メチルスチレンダイマーと使用量を示し、4は使用した重合開始剤と使用量、α−メチルスチレンダイマー1モルに対する使用量を示し、5はA−1の加熱残分、分子量などの特性値を示した。
Aセグメント、A−2〜A−5の製造
表1にしたがって、A−1と同様にして、Aセグメント、A−2〜A−5を製造した。A−4には、ジメチルシロキサンマクロモノマー、A−5には、フルオロアルキル基が導入されている。なお、ジメチルシロキサンマクロモノマー=メタクリル末端は「アロンマクロマーAK−5」(東亞合成(株)の製品)を表す。
実施例1
撹拌機、コンデンサー、窒素ガス吹き込み口、加熱冷却装置、温度計のついた300mLフラスコに、酢酸エチル43.9g、トルエン102.5g、Aセグメント(A−2)9.0g、メタクリル酸メチル43.7g、メタクリル酸n−ブチル42.8g、メタクリル酸1.0g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル7.6gを仕込み、60分間で75℃に昇温した。75℃で6時間重合を行い、実施例1の被覆用組成物を製造した。
表2に、実施例1の被覆用組成物の製造データの詳細を示した。表2では、1は被覆用組成物製造に使用した有機溶剤と使用量を示し、2はAセグメントの種類と使用量を示し、3はBセグメントに使用したアクリル単量体と使用量を示し、4は加熱残分などの特性値を示した。表2において、「A−2 9.0」とは、参考例で製造したA−2セグメント量を、9.0g(有機溶剤を含む)使用したことを意味する。A−2の加熱残分は58.2%であるので、有機溶剤を含まないA−2セグメントの量は、5.2gである。表2において、「Aセグメント合計 5.0」とは、AセグメントとBセグメントの合計を、100重量%としたときの、Aセグメントの重量%が、5.0重量%であることを示す。
実施例1の被覆用組成物は、加熱残分40.2%、重合率97.2%、重量平均分子量87300、数平均分子量58200、分子量分散1.5であった。実施例1の被覆用組成物は、重合開始剤を使用することなく重合し、数平均分子量2200のAセグメントに比較して、数平均分子量(58200)が明らかに増加している。
実施例2〜5
表2にしたがって、実施例1の被覆用組成物と同様にして実施例2〜5の被覆用組成物を製造した。
実施例6〜9
表3にしたがって、実施例1の被覆用組成物と同様にして実施例6〜9の被覆用組成物を製造した。
実施例10〜14
表4にしたがって、実施例1の被覆用組成物と同様にして実施例10〜14の被覆用組成物を製造した。
表3、表4では、1は被覆用組成物製造に使用した有機溶剤と使用量を示し、2はAセグメントの種類と使用量を示し、3はBセグメントに使用したアクリル単量体と使用量を示し、4は加熱残分などの特性値を示した。表3において、「A−1 43.0」とは、参考例で製造したA−1セグメント量を、43.0g(有機溶剤を含む)使用したことを意味する。表3において、「Aセグメント合計 25.0」とは、AセグメントとBセグメントの合計を、100重量%としたときの、Aセグメントの重量%が、25.0重量%であることを示す。表4においても、同様である。なお、表4において、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのメタクリル酸付加物は「エポキシエステル3002M」(共栄社化学(株)の製品)を表す。
実施例の被覆用組成物を使用したアクリルラッカー、ウレタン硬化型塗料、紫外線硬化型塗料、ウレタン硬化−紫外線硬化型塗料の、接触角、耐指紋痕性、耐傷付き性の試験結果を表5(アクリルラッカー)、表6(ウレタン硬化型塗料)表7(紫外線硬化型塗料)表8(ウレタン硬化−紫外線硬化型塗料)に示した。
表5に見られる通り、実施例の被覆用組成物は、塗膜が架橋しないアクリルラッカーとして使用しても、接触角、耐指紋痕性、耐傷付き性に良好な性能を示した。
表6に見られる通り、実施例の被覆用組成物は、ウレタンで架橋させることにより接触角、耐指紋痕性、耐傷付き性などの自己修復性が改善される。特に、フルオロアルキル基を有するアクリル単量体、ジメチルシロキサンマクロモノマーなどの撥水性官能基が導入された実施例8、実施例9では大きい接触角を示した。
表7に見られるように、実施例10〜14の被覆用組成物は、フルオロアルキル基を有するアクリル単量体を導入したAセグメントを使用し、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのメタクリル酸付加物、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートをBセグメントに共重合し紫外線硬化、架橋が可能とした塗料を紫外線硬化することにより、接触角が一段と大きくなり、耐指紋痕性、耐傷付き性などの自己修復性が改善された。
表8に見られるように、実施例10〜14の被覆用組成物は、ウレタン硬化後、さらに紫外線照射し、塗膜に微細な凹凸を形成することにより、よりいっそう接触角が大きくなり、耐指紋痕性、耐傷付き性などの自己修復性が大きく改善されたる。
比較例1
撹拌機、コンデンサー、窒素ガス吹き込み口、加熱冷却装置、温度計のついた300mLフラスコに、酢酸エチル45.0g、トルエン94.5gを仕込み、82℃に昇温した。
メタクリル酸メチル48.0g、メタクリル酸n−ブチル40.0g、メタクリル酸1.0g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル8.0g、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレア3.0g、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2gの混合物を3時間でフラスコに滴下した。
滴下終了後、2時間がたてば、トルエン10.5g、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.2gの混合物を添加し、さらに1時間重合を続けて、比較例1の被覆用組成物を製造した。
表9に、比較例1の被覆用組成物製造データの詳細を示した。表9において、1は被覆用組成物製造に使用した有機溶剤と使用量を示し、2は被覆用組成物に使用したアクリル単量体と使用量を示し、3は重合開始剤と使用量を示し、4は重合率を高めるために使用した追添加の有機溶剤と重合開始剤と使用量を示し、5は加熱残分などの特性値を示した。
比較例1の被覆用組成物は、加熱残分40.2%、重量平均分子量77400、数平均分子量43000、分子量分散1.8であった。
比較例2〜5
表9にしたがって、比較例1の被覆用組成物と同様にして、比較例2〜5の被覆用組成物を製造した。
表10に、比較例1〜5の被覆用組成物を使用したウレタン硬化型塗料の試験結果を示した。耐指紋痕性、耐傷付き性ともに満足できる値は得られなかった。