以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
先ず、図1には、本発明に従う構造を有する射出成形用金型の一実施形態が、ノズルが組み付けられた状態での縦断面形態において示されている。かかる図1から明らかなように、本実施形態の射出成形用金型10は、互いに対向配置された固定型12と可動型14とを有している。なお、ここでは、断面コ字状を呈する樹脂成形品を射出成形する射出成形用金型10を例示して説明するが、成形されるべき樹脂成形品の形状は、例示の形状に何等限定されるものでないことは、言うまでもないところである。
より具体的には、固定型12は、図示しない固定盤に取り付けられて、位置固定とされている。可動型14は、固定盤に対して接近/離隔移動可能とされた可動盤(図示せず)に取り付けられている。そして、可動盤の移動に伴って、可動型14が、固定型12に対して接近/離隔移動させられるようになっている。
また、固定型12の可動型14との対向面には、キャビティ形成凹部16が、設けられている。このキャビティ形成凹部16の内面の全面が、射出成形されるべき樹脂成形品の一方の面に対応した形状を有する固定型側キャビティ面18とされている。一方、可動型14の固定型12との対向面には、固定型12のキャビティ形成凹部16に突入可能なキャビティ形成凸部20が、一体的に設けられている。このキャビティ形成凸部20の外面の全面が、射出成形されるべき樹脂成形品の他方の面に対応した形状を有する可動型側キャビティ面22とされている。
そして、それら可動型14と固定型12とが型閉めされて、固定型12のキャビティ形成凹部16内に、可動型14のキャビティ形成凸部20が突入することにより、固定型側キャビティ面18と可動型側キャビティ面22との間に、目的とする樹脂成形品の外形形状に対応した形状を有する成形キャビティ24が形成されるようになっている。
また、図1乃至図3に示されるように、固定型12の中央部には、ノズルタッチ部26が形成されている。このノズルタッチ部26は、固定型12のキャビティ形成凹部16の形成側(可動型14との対向側)とは反対側の面において開口する凹所形態を有している。また、そのようなノズルタッチ部26の内周面の深さ方向中間部には、その深さ方向に対して直角な方向に広がる段差面28が設けられている。この段差面28におけるノズルタッチ部26の中心を間に挟んだ両側の箇所には、雌ネジ孔30が、それぞれ一つずつ形成されている。
そして、そのような段付の凹所形態を呈するノズルタッチ部26においては、段差面28よりも開口部側に位置する部分が、円弧状の内周面を有する開口側収容部32とされている一方、段差面28よりも底部35側に位置する部分が、ノズルタッチ部26の底部35に向かって次第に小径化するテーパ状の内周面を有する底部側収容部34とされている。また、底部35には、ノズルタッチ部26の内側空間とキャビティ形成凹部16の内側空間(成形キャビティ24)とを連通するように、固定型12を貫通して延びる円形の透孔36が形成されている。
さらに、ノズルタッチ部26を有する固定型12には、それを貫通する貫通孔からなる冷却流路38が形成されている。この冷却流路38は、固定型12を冷却するための冷却媒体(ここでは、冷却水)を供給する供給機構(図示せず)に接続されて、かかる冷却媒体が、内部を流通するようになっている。そして、ここでは、特に、そのような冷却流路38が、ノズルタッチ部26における底部側収容部34の内周面の近傍に形成されている。これによって、固定型12のうち、特に、ノズルタッチ部26(底部側収容部34)が、集中的に迅速に且つ効率的に冷却されるようになっている。
なお、冷却流路38の固定型12内での具体的な形成位置は、何等限定されるものではないものの、ノズルタッチ部26の内周面との間の最小距離:d(ここでは、冷却流路の内周面と底部側収容部34の内周面との間の距離となる)が、好ましくは3〜10mm程度とされている。何故なら、かかる最小距離:dが3mm未満であると、ノズルタッチ部26の内周面と冷却流路38との間の固定型12部分の肉厚が極めて薄くなって、かかる固定型12部分の強度が、著しく低下する恐れがあるからであり、また、ノズルタッチ部26の内周面と冷却流路38との間の最小距離:dが10mmを超える場合には、ノズルタッチ部26を集中的且つ効率的に冷却することが困難となる可能性があるからである。
ところで、図1に示されるように、本実施形態の射出成形用金型10においては、ノズルタッチ部26に対して、金属製のノズルアダプタ40が組み付けられている。このノズルアダプタ40は、図4乃至図6から明らかなように、介装部41と取付部42とを一体的に有している。
ノズルアダプタ40の介装部41は、薄肉のテーパ筒部44と、このテーパ筒部44の小径側開口部を閉塞する底部46とを更に有し、全体として、片側有底の筒形状を呈している。この介装部41のテーパ筒部44は、図1に示されるように、固定型12に設けられたノズルタッチ部26の、テーパ状内周面を有する底部側収容部34内に収容可能な大きさを有している。そして、かかるテーパ筒部44のテーパ角度が、底部側収容部34のテーパ状内周面のテーパ角度よりも所定量だけ大きくされている。
また、図4乃至図6に示されるように、介装部41の底部46は、テーパ筒部44と略同一の厚さを有している。そして、かかる底部46の中心部には、大径の貫通孔47が設けられ、また、底部46の外面(図4中の下面)には、貫通孔47と連通する内孔を備えた筒状突起48が一体形成されている。この筒状突起48にあっては、その軸方向中間部に段付け部50が形成されており、かかる段付け部50よりも基部側の部分が、大径部52とされている一方、段付け部50よりも先端側部分が、小径部54とされている。また、そのような筒状突起48の大径部52の内周面が、円筒面とされており、小径部54の内周面が、先端側(大径部52側とは反対側)に向かって小径化するテーパ面とされている。
かくして、ここでは、ノズルアダプタ40の内側空間をテーパ筒部44の小径側において外部に連通させる小径の通孔56が、筒状突起48の小径部54側の開口部(先端開口部)にて、形成されている。また、そのような通孔56を有する筒状突起48の小径部54は、その外径が、ノズルタッチ部26の底部35に設けられた前記透孔36の内径よりも僅かに小さな寸法とされている(図7参照)。そして、筒状突起48の先端面が、中心部に通孔56を備え、且つノズルタッチ部26の透孔36の内径よりも僅かに小さな外径を有する円環平面57とされている。
一方、取付部42は、介装部41に対して、テーパ筒部44の大径側端部から径方向外方に延び出すようにして、一体形成されている。この取付部42は、ノズルタッチ部26の開口側収容部32の形状に対応し、且つそれよりも一周り小さな大きさの略厚肉平板形状を呈している。そして、そのような取付部42においては、テーパ筒部44の大径側開口部の中心を間に挟んで両側に位置する二箇所に、ボルト挿通孔58が、それぞれ一つずつ穿設されている。それら各ボルト挿通孔58は、T頭ボルトの頭部を収容可能な大径部と、その脚部を挿通可能な小径部とを備えた段付形状を呈している。
また、取付部42の厚さ方向両側の板面のうち、テーパ筒部44(介装部41)側の板面には、凹溝60が、四つ設けられている。それらの凹溝60は、何れも、比較的に狭い幅と浅い深さとを有し、各ボルト挿通孔58を間に挟んだテーパ筒部44の周方向両側の位置において、取付部42におけるテーパ筒部44の外周面との境界となる内側端縁から外側端縁に向かって、放射状に真っ直ぐに延びるように形成されている。
そして、本実施形態の射出成形用金型10においては、図1に示されるように、上記の如き構造を有するノズルアダプタ40が、固定型12に設けられた、凹所形態を呈するノズルタッチ部26内に収容配置されている。即ち、ノズルアダプタ40の取付部42が、ノズルタッチ部26の段差面28上に載置された状態で、開口側収容部32内に収容されていると共に、介装部41のテーパ筒部44が、ノズルタッチ部26の底部側収容部34内に収容され、更に、介装部41の底部46に設けられた筒状突起48の小径部54が、ノズルタッチ部26の透孔36内に突入した状態で、ノズルアダプタ40が、ノズルタッチ部26内に組み付けられている。そして、そのような組付状態下で、ノズルアダプタ40の取付部42の二つのボルト挿通孔58(図1には一つだけを示す)内にそれぞれ挿通された取付ボルト62が、ノズルタッチ部26の段差面28に形成された二つの雌ネジ孔30(図1には一つだけを示す)にそれぞれ螺入されており、以て、ノズルアダプタ40が、ノズルタッチ部26に固定されている。
また、ノズルアダプタ40のノズルタッチ部26への固定状態下では、図1及び図7に示されるように、ノズルタッチ部26の透孔36の内周面と、ノズルアダプタ40の筒状突起48の外周面との間に、ノズルアダプタ40の通孔56の周方向に延びる筒状のガスベント64が、形成されている。このガスベント64は、空気は通過させるものの、前記成形キャビティ24内に射出される溶融樹脂は通過させない程度の極めて狭い幅を有している。この幅は、特に限定されるものではないものの、例えば、0.01〜0.05mm程度とされる。
さらに、ノズルアダプタ40のノズルタッチ部26への固定状態では、ノズルアダプタ40の筒状突起48の先端面からなる円環平面57が、固定型側キャビティ面18と面一となる位置に配置されている。そうして、ノズルタッチ部26の透孔36の成形キャビティ24内への開口部が、その中心部分(通孔56が位置する部分)と外周部分(ガスベント64が位置する部分)を除いて、かかる筒状突起48の円環平面57にて閉鎖されている。かくして、透孔36の成形キャビティ24への開口部内に、固定型側キャビティ面18と実質的に連続するキャビティ面部分が、筒状突起48の円環平面57にて、形成されている。そして、それと共に、ノズルアダプタ40の底部35(筒状突起48)に設けられた通孔56が、成形キャビティ24内に開口しており、以て、ノズルアダプタ40の内側空間が、かかる通孔56と前記貫通孔47とを通じて、成形キャビティ24内に連通している。このことから明らかなように、本実施形態では、固定型12が、スプルーやサブスプルー等が省略されたスプルーレス構造とされている。そして、成形キャビティ24内に開口する通孔56が、ゲート部57とされている。また、このゲート部57の近傍に、それを取り囲むようにして、ガスベント64が形成されているのである。
そして、ノズルタッチ部26の底部35の内面と、ノズルアダプタ40における筒状突起48の大径部52の外周面及び底部46の外面との間、更にはノズルタッチ部26の底部側収容部34の内周面と、ノズルアダプタ40のテーパ筒部44の外周面との間には、円環板状部分とテーパ筒状部分とを有する環状の空隙66が、形成されている。この空隙66は、前記ガスベント64に連通し、且つガスベント64と同様に、ゲート57(通孔56)の周方向に延びるように形成されている。これにより、ノズルタッチ部26の底部側収容部34及び底部35と、ノズルアダプタ40のテーパ筒部44及び底部46との間の熱伝達を可及的に阻止する空気断熱層68が、環状の空隙66にて形成されている。
また、ここでは、上記の如く、ノズルアダプタ40の取付部42が、ノズルタッチ部26の段差面28上に載置されている。これによって、取付部42の一方の板面(図1及び図7における下面)に設けられた四つの凹溝60,60,60,60と段差面28との間で、それら各凹溝60の内面と段差面28とを内周面とする連通路70が、四つ(図1及び図7には、一つのみを示した)形成されている。
それら各連通路70は、図には明示されてはいないものの、ノズルアダプタ40の取付部42とノズルタッチ部26の段差面28との間で、各凹溝60と同様に、放射状に延びるように配置されている。そして、図1から明らかなように、各連通路70が、取付部42の内周縁部側において、前記環状の空隙66に連通している一方、取付部42の外周縁部側において、ノズルアダプタ40の取付部42とノズルタッチ部26の開口側収容部32との間に形成される隙間72を通じて、大気に開放されている。このことから明らかなように、本実施形態では、連通路70、及び取付部42と開口側収容部32との間の隙間72にて、開放部が構成されている。
そして、このような構造とされた本実施形態の射出成形用金型10においては、図1及び図7に示されるように、射出装置(図示せず)のノズル74が、ノズルタッチ部26にノズルタッチした状態下で、それらノズル74とノズルタッチ部26との間に、ノズルアダプタ40が介装されるようになっている。
より詳細には、ここでは、ノズル74が、中心部を軸方向に貫通して延びるノズル孔76を備えたノズル本体78を有している。このノズル本体78の内部には、コイルヒータ79が、ノズル本体78の先端に達する位置にまで埋設されている。また、ノズル本体78においては、ノズル本体78の先端部側に位置するノズル孔76部分が、それ以外の部分よりも大径化された嵌入孔部80とされており、この嵌合孔部80内に、トーピード82が嵌入されている。
トーピード82は、先端に向かって次第に小径となるテーパ状外周面を有するテーパ状底部84と、かかるテーパ状底部84側が小径化された段付円筒状の筒部85とを備えた有底筒状の全体形状を有している。また、そのようなトーピード82のテーパ状底部84には、それを貫通する細径の連通孔86が、複数形成されており、それら複数の連通孔86を通じて、トーピード82(筒部85)の内孔88が、外部に連通している。そして、このようなトーピード82が、ノズル本体78のノズル孔76に内孔88を連通させると共に、ノズル孔76(嵌入孔部80)からテーパ状底部84を突出させた状態で、ノズル孔76の嵌入孔部80内に収容配置されている。
また、嵌入孔部80内には、トーピード82と共に、固定ブッシュ90が収容されている。この固定ブッシュ90は、軸方向一端部が小径部92とされている一方、軸方向中間部が大径部94とされ、更に、軸方向他端部が、外周面に雄ネジ部が形成された中径部96とされている。
そして、このような固定ブッシュ90が、トーピード82の筒部85の小径部分に外挿された状態で、嵌入孔部80内に挿入されていると共に、嵌入孔部80の内周面に形成された雌ネジに対して、中径部96の雄ネジ部が螺合されて、ノズル本体78の先端部に固定されている。また、そのような固定状態下で、中径部96の端面が、トーピード82の筒部85の小径部分と大径部分とを段付けする段付け面に当接している。更に、固定ブッシュ90の大径部94と小径部92とが、ノズル本体78の嵌入孔部80の先端開口部から突出している。
かくして、トーピード82が、ノズル本体78の先端部に、固定ブッシュ90を介して固定されている。また、それにより、固定ブッシュ90の小径部92側の開口部にて、ノズル孔76の先端開口部98が、構成されている。そして、かかる構造とされたノズル74において、ノズル孔76内を流動する溶融樹脂が、トーピード82の筒部85の内孔88からテーパ状筒部84の複数の連通孔86を通じて、固定ブッシュ90の小径部92側の開口部にまで導かれるようになっている。これによって、図示しない射出装置からノズル孔76内に導入された溶融樹脂が、ノズル本体78に内蔵されたコイルヒータ79にて加熱されつつ、ノズル孔76の先端開口部98を通じて射出されるようになっているのである。
そして、ここでは、かくの如き構造を有するノズル74が、その先端部において、射出成形用金型10の固定型12に設けられた、凹所形態を有するノズルタッチ部26内に突入している。また、かかる突入下で、固定ブッシュ90の小径部92と大径部94との間に位置する段付け面が、ノズルタッチ部26に取り付けられたノズルアダプタ40の底部46の内面に当接しており、また、小径部92と、この小径部92の開口部から突出するトーピード82のテーパ状底部84の先端部分とが、かかる底部46に突設された筒状突起48の内孔内に突入している。
これにより、ノズル孔76の先端開口部98が、ノズルアダプタ40の筒状突起48の内孔内に開口していると共に、成形キャビティ24内に開口する筒状突起48のゲート部57(通孔56)を通じて、成形キャビティ24に連通している。そして、そのような状態下で、ノズル74が、ノズルタッチ部26に対して、直接には何等接触することなくノズルタッチしており、以て、ノズルタッチ部26の底部35及び底部側収容部34とノズル74との間に、ノズルアダプタ40が、その介装部41(底部46とテーパ筒部44)において介装されているのである。また、かかる介装下では、ノズル74が、ノズルアダプタ40の介装部41の底部46と筒状突起48に対して、固定ブッシュ90の大径部94と小径部92とのみにおいて接触しており、それ以外の部分は、ノズルアダプタ40に対して非接触とされている。
ところで、上述の如くして、ノズル74が射出成形用金型10の固定型12のノズルタッチ部26にノズルタッチする射出成形装置を用いて、目的とする樹脂成形品を得る場合には、先ず、図1に示されるように、型締装置(図示せず)により、射出成形用金型10の固定型12と可動型14とを型閉じして、それら固定型12と可動型14との間に成形キャビティ24を形成する。
次いで、図7に示されるように、射出装置(図示せず)からノズル孔76内に導入された溶融樹脂99を、ノズル本体78に内蔵されたコイルヒータ79にて加熱しつつ、ノズル孔76の先端開口部98とゲート部57(ノズルアダプタ40の通孔56)とを通じて、成形キャビティ24内に射出し、充填する。
このとき、図7に矢印で示されるように、成形キャビティ24内の空気が、ノズルアダプタ40の筒状突起48の外周面とノズルタッチ部26の透孔36の内周面との間に形成されたガスベント64を通じて、ノズルアダプタ40のテーパ筒部44及び底部46とノズルタッチ部26の底部側収容部34及び底部35との間に形成された空隙66内に導かれ、更に、かかる空隙66に連通する前記連通路70と隙間72とを通じて大気中に排出される(図1参照)。これによって、成形キャビティ24内への溶融樹脂99の射出、充填が、よりスムーズに実施され得ると共に、溶融樹脂99の射出、充填後における成形キャビティ24内への空気の残存に起因したガス焼けや白化等の種々の成形不良の発生が、未然に防止され得ることとなる。しかも、ここでは、ガスベント64が、ゲート部57の近傍において、その周方向に延びるように形成されている。このため、成形キャビティ24内で、射出時において最大の圧力が掛かり、ガス焼けの発生が最も懸念されるゲート部57付近からのガス抜きが、より確実且つスムーズに行われ得る。その結果として、ガス焼けの発生が、更に一層効果的に防止され得るのである。また、前述したように、射出成形用金型10がスプルーレス構造とされているため、スプルーやサブスプルー内に溶融樹脂99が残存するようなことが解消され、それによって、原料樹脂の節約が図られ得る。
その後、固定型12のノズルタッチ部26の近傍に形成された冷却流路38内や、可動型14内に形成された、図示しない冷却流路内を流通する冷却媒体(ここでは、冷却水)によって、射出成形用金型10を冷却することにより、成形キャビティ24内に射出、充填された溶融樹脂99を効率的に冷却、固化させる。そうして、目的とする樹脂成形品を得るのである。
なお、ここでは、ノズル孔76内の溶融樹脂99に対するコイルヒータ79等の加熱手段による加熱温度が、溶融樹脂99の軟化温度に近似した温度となるように、図示しないコントローラ等の制御機構により制御されている。一方、成形キャビティ24内に溶融樹脂99を射出、充填する射出操作の終了後において、ノズル74の固定ブッシュ90やノズルアダプタ40が放冷されること等により、ゲート部57内では、そこに残存する溶融樹脂99が冷却されて、固化する。これによって、ゲート部57内に、溶融樹脂99の固化物からなるゲートシール部(図示せず)が形成されて、ゲート部57が、かかるゲートシール部にて、一旦、閉鎖される。また、ノズルアダプタ40の筒状突起48の小径部54の内周面上には、層状の固化物からなるスキン層も形成される。
そして、本実施形態の射出成形用金型10においては、特に、ノズルアダプタ40のテーパ筒部44及び底部46とノズルタッチ部26の底部側収容部34及び底部35との間に、環状の空隙66からなる空気断熱層68が形成されて、ノズルタッチ部26の底部側収容部34及び底部35と、ノズルアダプタ40のテーパ筒部44及び底部46との間の熱伝達が可及的に阻止されるようになっている。
それ故、ノズルタッチ部26の温度が、成形キャビティ24内に射出された高温の溶融樹脂99によって急上昇したときに、ノズルアダプタ40を介してノズルタッチ部26にノズルタッチしたノズル74の先端側部分の温度が、ノズルタッチ部26の温度上昇に伴って大きく上昇するようなことが、有利に防止され得る。そして、それにより、成形キャビティ24内への溶融樹脂99の射出操作の終了後に、ゲートシール部が、ゲート部57内に、ノズルタッチ部26の温度上昇による影響を殆ど受けることなく、良好且つ好ましい固化状態において確実に形成され得る。しかも、ノズルアダプタ40の筒状突起48の小径部54の内周面上に形成されるスキン層の厚さも適正な厚さとされ、それによっても、ゲートシール部が安定的に形成される。その結果、射出操作の終了後に、ノズル孔76内に残存する溶融樹脂99が、ゲート部57を通じて、成形キャビティ24内に漏れ出すこと、更には、そのような溶融樹脂99の漏出しにより、次回の射出操作で成形される樹脂成形品に成形不良が生ずることが、未然に阻止され得ることとなる。
また、例えば、前回の成形キャビティ24内への溶融樹脂99の射出操作の終了後から、次回の射出操作の開始までの間に、長い時間が経過して、ノズルタッチ部26が大幅に冷えてしまうようなことがあっても、ノズル74の先端側部分の温度が、ノズルタッチ部26の温度降下に多大な影響を受けて、大幅に低下してしまうことが、空気断熱層68による断熱作用により、効果的に回避され得る。しかも、本実施形態では、射出操作の終了後も、ノズル孔76内の溶融樹脂99が、ノズル74に内蔵されたコイルヒータ79にて継続的に加熱されている。それ故、射出操作の終了後に、ノズルタッチ部26の過剰な冷却により、ゲート部57内に残存する溶融樹脂99の固化状態が過度に進行することが有利に防止され得る。また、かかる溶融樹脂99の固化状態の過度の進行は、ノズルアダプタ40の筒状突起48の小径部54の内周面上に形成されるスキン層の厚さが適正な厚さとされていることによっても、効果的に防がれ得る。かくして、前回の射出操作の終了後に、ゲート部57内に形成されるゲートシール部が、次回の射出操作の開始時に、ノズル孔76内に新たに導入される溶融樹脂99の射出圧によって確実に溶融、除去され得ることとなる。その結果、次回の射出成形操作の実施時において、ゲート部57内でのゲートシール部の残存に起因したショートショットによる成形不良や、ゲートシール部の一部が固化状態のままでの成形キャビティ24内に侵入して惹起される成形不良の発生が、効果的に防止され得ることとなる。
従って、かくの如き本実施形態の射出成形用金型10を用いれば、良好な射出成形操作を繰り返し行うことが出来、以て、複数の樹脂成形品を、成形不良のない安定した品質をもって、連続的に且つ確実に成形することが出来るのである。
また、かかる射出成形用金型10では、ノズル74が、ノズルアダプタ40を介して、ノズルタッチ部26にノズルタッチしているため、かかるノズルタッチ状態下で、ノズル74が、ノズルタッチ部26に対して、直接には何等接触しないようになっている。しかも、ノズル74が、ノズルアダプタ40の底部46と筒状突起48に対してのみ接触して、それ以外の部分とは非接触とされている。これによって、ノズルタッチ部26とノズル74との間のノズルアダプタ40を介しての熱伝導も、効果的に抑制され得る。そして、その結果として、ゲート部57内に、良好な固化状態を有するゲートシール部が確実に形成され、以て、安定した品質の樹脂成形品が、より一層有利に得られるのである。
さらに、本実施形態の射出成形用金型10においては、上記の如く、ノズル74が、ノズルタッチ部26に対して直接に接触することなく、ノズルアダプタ40の底部46に当接した状態で、固定型12に組み付けられている。その上、ノズル74が当接するノズルアダプタ40の底部46も、ノズルタッチ部26に対して非接触とされている。それ故、ノズル74のノズルタッチ部26へのノズルタッチ時に、ノズル74がノズルアダプタ40の底部46に当接したときの衝撃等により、ノズルタッチ部26が損傷することが、有利に回避され得る。従って、たとえ、ノズル74がノズルアダプタ40の底部46に当接したときの衝撃が大きくて、ノズルアダプタ40が損傷する事態が生じたとしても、固定型12を何等交換することなく、ノズルアダプタ40のみを交換するだけで済む。それによって、ランニングコストの大幅なコストダウンが図られ得ることとなるのである。
次に、前記実施形態とは異なって、スプルーを備えた構造を有する別の実施形態について、説明する。なお、以下に説明する実施形態に関しては、前記実施形態と同様な構造とされた部材及び部位について、図1乃至図7と同一の符号を付して、その詳細な説明は省略した。
すなわち、本実施形態の射出成形用金型100は、図8に示されるように、固定型12に対して、スプルー102を有するスプルーブッシュ104と、かかるスプルー102を成形キャビティ24に連通させるサブスプルー106とが設けられている。また、かかる射出成形用金型100においては、固定型12の表面において露出するスプルーブッシュ104の露出面部分にて、凹所形態を呈するノズルタッチ部26が構成されており、このノズルタッチ部26に対して、金属製のノズルアダプタ40が組み付けられている。
ノズルアダプタ40は、ノズルタッチ部26の表面(ノズルタッチ面)に対応した形状を有する介装部41と、介装部41の外周部に一体形成された外フランジ状の取付部42とを有している。介装部41の中心部には、通孔56が穿設されており、また、介装部41の一方の面に対して、広幅の凹溝108が、通孔56の周方向に延びる環状形態をもって形成されている。このようなノズルアダプタ40が、介装部41の通孔56を通じて、ノズル74の先端開口部98とスプルー102とを相互に連通させ、且つ凹溝108の底面をノズルタッチ部26に対向させるように配置させた状態で、取付部42において、固定型12にボルト固定されている。これにより、ノズルタッチ部26と介装部41との間に、凹溝108の内側空間からなる環状の空隙66が、通孔56の周方向に延びるように形成されている。
そして、本実施形態では、コイルヒータ等の加熱手段を何等有しないノズル74が、その先端面において、ノズルアダプタ40の介装部41におけるノズルタッチ部26との対向側とは反対側の面に当接し、且つノズル孔76を、介装部41の通孔56を通じてスプルー102に連通させた状態で、ノズルタッチ部26にノズルタッチしている。これにより、ノズル74が、ノズルタッチ部26と非接触とされていると共に、ノズルアダプタ40の介装部41が、それらノズル74とノズルタッチ部26との間に介装されているのである。
このように本実施形態の射出成形用金型100においては、ノズルアダプタ40の介装部41とノズルタッチ部26との間に環状の空隙66が形成されているところから、この空隙66が、ノズルタッチ部26とノズルアダプタ40の介装部41との間での熱伝達を阻止する空気断熱層68として機能する。また、ノズル74が、ノズルタッチ部26と非接触とされている。
それ故、本実施形態の射出成形用金型100にあっても、前記実施形態と同様に、繰り返し行われる射出成形操作において、前回の射出操作の終了後に、ゲート部57内に、ゲートシール部が、良好な固化状態で有利に形成され得る。また、次回の射出操作の開始時に、溶融樹脂の射出圧等により、かかるゲートシール部が確実に溶融、除去され得る。
従って、かくの如き本実施形態の射出成形金型100を用いることにより、複数の樹脂成形品が、成形不良のない安定した品質をもって、連続的に且つ確実に成形され得ることとなるのである。
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
例えば、ノズル74にコイルヒータ79等の加熱手段を内蔵させる場合には、それらの加熱手段の加熱制御方式が、例示した方式に何等限定されるものではない。即ち、例えば、ノズル74から溶融樹脂99が射出された後、一旦、それらの加熱手段による加熱がOFFされ、また、次回の射出操作の開始に先立って、加熱手段がONされるように、所定の制御機構により加熱制御する方式も、適宜に採用され得る。
また、ノズルアダプタ40の全体形状や材質も、例示のものに、特に限定されるものでない。特に、ノズルアダプタ40の形成材料としては、熱伝達性の低い材料が、好適に用いられ得る。
さらに、前記第一及び第二の実施形態では、ノズルアダプタ40が、固定型12にボルト固定されていたが、例えば、ノズルアダプタ40を、射出成形用型10,100に何等固定することなく、単に、ノズル74とノズルタッチ部26とによる挟持力だけで、射出成形用型10,100に組み付けるようにしても良い。
更にまた、ノズルタッチ部26とノズルアダプタ40との間に形成される環状の空隙66の大きさや形状も、適宜に変更可能であることは勿論である。
また、前記第一及び第二の実施形態では、ノズルアダプタ40の介装部41が、ノズル74の先端面に接触した状態で、ノズル74とノズルタッチ部26との間に介装されていたが、例えば、ノズルアダプタ40の介装部41が、ノズル74の外周面と接触した状態で、ノズル74とノズルタッチ部26との間に介装されるようになっていても、何等差し支えない。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。