以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、これから綴じる複数のシート101の形態を示す模式図である。シート101は、紙、不織布、樹脂フィルム等により形成された矩形の薄片であり、点線の円Aにより囲って示すように、図中左上の角部近傍に切り込み110を有する。切り込み110は、シート101の直近の角から内側に向かって延在し、同じ円A内に位置する折り線120と交差する。
折り線120は、複数を積み重ねて積層シート100を形成するシート101を綴じる場合に折り曲げられる位置を示す。図示の例では、折り線120は、切り込み110が設けられた角部につながる一対の辺のいずれに対しても45°の傾きを有する直線をなすが、シート101が積み重ねられた図示の状態では未だ折り曲げられていない。
折り線120は、印刷等により形成された視覚的な指標であってもよいし、エンボス加工、ミシン目加工、折り筋加工等により曲げ剛性を意図的に低くした領域であってもよい。また、ユーザが、切り込み110の利用方法を既に知っている場合は、明示的な折り線120を省いてもよい。
図2は、シート101の部分拡大図であり、円Aで囲った部分を拡大して示す。シート101において、切り込み110は折り線120と交差する。折り線120に対して、シート101の角に近い側において、切り込み110は、折り線120と略直交する直線状の直線部112をなす。
一方、折り線120に対して、シート101の角から遠い側において、切り込み110は略円弧状の曲線部114をなす。よって、切り込み110の曲線部114に隣接して、シート101には、互いに向かい合う凸部132と凹部134とを形成する。凸部132と凹部134は互いに相補的な形状を有するので、切り込み110は、独立したシート101の破片を生じることなく形成することができる。
なお、切り込み110は、シート101の各々において、互いに同じ位置に設けられる。よって、複数のシート101を積み重ねて揃えた場合は、切り込み110も互いに同じ位置に積み重なる。また、切り込み110は、シート101の各々に予め設けてもよいし、これから綴じる複数のシート101を積み重ねて積層シート100にした状態で、一括して形成してもよい。
図3は、複数のシート101を綴じる過程の次の段階を示す図であり、積層シート100において円Aで囲った部分を斜め上方から見た様子を示す。図示のように、複数のシート101を綴じる場合は、まず、折り線120に沿って積層シート100を折り曲げる。
図中に矢印Fで示すように、積層シート100は、シート101の角を含む三角形の折り返し部144を一括して、シート101のその他の部分をなす本体部142の背面側に折り返す。これにより、シート101には折り山122が形成される。また、切り込み110の直線部112も、折り返し部144と共に積層シート100の背面側に移動する。
図4は、シート101を綴じる過程を示す図であり、図2と同じく、積層シート100を正面から見た様子を示す。図示の状態では、図3に示した段階を経て、折り返し部144が本体部142の背面に接するまで完全に折り曲げられている。
折り線120に沿って折り曲げられた積層シート100の本体部142および折り返し部144が接した状態になると、切り込み110における直線部112および曲線部114も、一部で同じ位置を占める。図示の例では、図中に点線の円Bで囲って示すように、直線部112および曲線部114の両端が互いに同じ位置を占めて交差する。
図5は、積層シート100の、図4に示した直線Sを含む断面を示す模式図である。直線Sは、折り山122に平行であり、且つ、切り込み110の曲線部114によりシート101に形成された凸部132の尖端を含む。図示の断面において、直線部112および曲線部114における切り込み110の位置は互いにずれている。
図6は、図4および図5に示した状態の積層シート100を、図3と同じ視点から示す。ただし、積層シート100の形状を分かりやすくする目的で、凸部132を本体部142から捲り上げた状態を示す。
切り込み110の曲線部114により形成された凸部132は、曲線部114の両端を結ぶ線から先を、本体部142に対して折り曲げることができる。凸部132を本体部142から引き離した場合は、図中に斜線で示すように、折り返し部144の裏面が凸部132の下に現れる。切り込み110の直線部112の一端は、凸部132を形成する曲線部114の一端と同じ位置において、折り山122上で開口する。
図7は、シート101を綴じる過程の次の段階を、図5と同じ断面において示す断面図である。この段階において、積層シート100の凸部132は、切り込み110の直線部112を通じて、折り返し部144に挿通される。これにより、凸部132の尖端は、折り返し部144の表面に突出して、積層シート100を縫い止める。これにより、積層シート100を形成する複数のシート101は、切り込み110の直線部112に差し込まれた凸部132により、少なくとも紙面に沿った方向について相互に位置決めされ、綴じ合わされる。
図8は、図7に示した積層シート100を、図2および図4と同様に、正面から見た様子を示す図である。凸部132は、直線部112に差し込まれたことにより、積層シート100の背面側に隠れる。これにより、凸部132が当初占めていた位置には、折り返し部144の裏面が露出する。
ここで、切り込み110の曲線部114により形成された凸部132の端面の一部は、切り込み110の直線部112における最奥の一端に当接する。よって、凸部132が直線部112に差し込まれた状態においては、直線部112の延在方向、即ち、図7における紙面に交差する方向についても、シート101が相互に位置決めされる。
このように、積層シート100は、それ自体の一部により形成された凸部132により縫い止められて綴じ合わされる。凸部132は、互いに交差する複数の方向に複数のシート101を位置決めするので、いったん綴じ合わされたシート101は分離しにくい。また、シート101自体の一部を用いて綴じるので、処分する場合の分別が不要になる。また、シート101は、破片を生じることなく加工できるので、ゴミの発生も抑制できる。ただし、例えば、凸部132を差し込みやすくする目的で、切り込み110の直線部112の幅が拡がるように、シート101の一部を切り取ってもよい。
なお、上記の例では、折り返し部144を、本体部142の背面側に折り曲げて、凸部132を、本体部142の背面側に向かって差し込んで、折り返し部144の切り込み110に差し込んだ。しかしながら、折り返し部144を、本体部142の表面側に折り曲げて、凸部132が、折り返し部144から積層シート100の表面側に突き出すように差し込んでも、シート101を同様に綴じ合わせることができる。
図9は、ここまでに説明したシート101を綴じる方法の手順をまとめた流れ図である。シート101を綴じる方法は、シート101に切り込み110を形成し(ステップS101)、切り込み110を形成したシート101を、図1に示したように積み重ねる(ステップS102)。次に、積み重ねたシート101を、図4に示したように折り曲げ(ステップS103)、次いで、積層シート100に形成された凸部132を、図7および図8に示したように、切り込み110の一部に差し込む(ステップS104)。
上記のステップのうち、シート101に切り込み110を形成する切り込み段階(ステップS101)と、複数のシート101を積み重ねる積み重ね段階(ステップS102)とは、順序が前後しても差し支えない。また、切り込み110を予め設けたシート101を用意しておくことにより、シート101を綴じる場合に上記のステップS101を省略できる。
図10は、シート102における切り込み110の変形例を示す部分拡大図である。図示のように、シート102における切り込み110の両端に、切り込み110、111に連続して形成された丸穴113を配してもよい。これにより、直線部112に差し込むために凸部132を変形された場合、あるいは、凸部132を差し込む場合に直線部112を拡げた場合に、110の端部において生じる応力集中を緩和し、シート102が切れることを抑制できる。
図11は、積層シート100を形成する他のシート102の形態を示す部分拡大図である。図11は、図2と同じ視点により描かれている。なお、シート102は、切り込み110の配置および形状を除くと、シート101と同じ形状を有する。よって、共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
シート102の切り込み110は、折り線120に対して、シート102の角から遠い側に直線部112を、シート102の角に近い側に曲線部114を有する点において、シート101の切り込み110と異なる形状を有する。直線部112が、折り線120と略直交する点は、シート101の場合と変わらない。
このような切り込み110を有する複数のシート102が積み重ねられて、積層シート100を形成する。これにより、図9に示した手順のうち、ステップS101およびステップS102が完了する。
図12は、シート102を折り線120に沿って折り曲げた状態を、図11と同じ視点から示す部分拡大図である。積層シート100においては、折り返し部144が本体部142の背面に接するまで折り曲げられる。これにより、積層シート100に形成された凸部132は、積層シート100の本体部142の背後に隠される。
こうして、図9に示した手順のうち、ステップS103が完了する。折り曲げられた積層シート100の本体部142および折り返し部144が互いに接した状態になると、図中に点線の円Bで囲って示すように、切り込み110における直線部112および曲線部114のそれぞれの両端が互いに同じ位置を占めて交差する。
図13は、切り込み110における曲線部114により積層シート100の折り返し部144に形成された凸部132を、切り込み110の直線部112を通じて積層シート100の本体部142に挿通した状態を示す。これにより、凸部132の尖端は、本体部142の表面に突出して、積層シート100を縫い止める。こうして、図9に示した手順のステップS104が完了し、シート102が綴じ合わされる。
切り込み110の直線部112に差し込まれた凸部132は、複数のシート102を相互に位置決めする。また、直線部112に差し込まれた凸部132は、シート102の弾性により折り返し部144が本体部142から離れることを防止する。よって、シート102の一部を用いて、複数のシート102が綴じ合わされた状態を長期にわたって安定に維持できる。このように、シート102に形成する切り込み110における直線部112と曲線部114との配置を入れ換えても、シート101の場合と同様に、容易に綴じ合わせることができる。
なお、上記の例では、折り返し部144を、本体部142の背面側に折り曲げて、凸部132を、本体部142の背面側から表面側に差し込んだ。しかしながら、折り返し部144を、本体部142の表面側に折り曲げて、凸部132を、積層シート100の表面側から背面側に向かって差し込んでも、上記の場合と同様に、シート102を綴じ合わせることができる。また、シート102においても、切り込み110の両端に、切り込み110に連続した丸穴113を設けてもよい。
図14は、積層シート100を形成する他のシート103の形態を示す部分拡大図である。図14も、図2と同じ視点により描かれている。シート103は、切り込み110の形状を除くと、シート101、102と同じ形状を有する。よって、共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
シート103に形成された切り込み110は、シート102の切り込み110における曲線部114に換えて、互いに延在方向が異なる複数の直線を結合した折れ曲がり部115を有する点において、シート102と異なる。折れ曲がり部115において、切り込み110は、2箇所で直角に折れ曲がり、角張った形状の凸部132を形成する。この凸部132は、切り込み110の直線部112に直交する一対の辺を有する。よって、シート103において、凸部132の突出方向は、直線部112の延在方向と直交する。
このような切り込み110を有する複数のシート103が積み重ねられて、積層シート100が形成される。これにより、図9に示した手順のうち、ステップS101およびステップS102が完了する。
図15は、シート103を折り線120に沿って折り曲げた状態を、図14と同じ視点から示す部分拡大図である。積層シート100において、折り返し部144が本体部142の背面に接するまで折り曲げられる。これにより、折り返し部144に形成された凸部132は、積層シート100の本体部142の背後に隠される。
こうして、図9に示した手順のうち、ステップS103が完了する。折り曲げられた積層シート100の本体部142および折り返し部144が互いに接した状態になると、切り込み110における折れ曲がり部115の両端は、図中に点線の円Bで囲って示すように、直線部112と互いに同じ位置を占めて交差する。
図16は、シート103により形成された積層シート100の折り返し部144側の凸部132を、本体部142側の切り込み110の直線部112に差し込んだ状態を示す。これにより、折り返し部144の凸部132の尖端は、本体部142の表面に突出して、積層シート100を縫い止める。こうして、図9に示した手順のステップS104が完了し、シート103が綴じ合わされる。
なお、シート103においては、凸部132の側辺が、切り込み110の直線部112と直交して、切り込み110の端部に当接する。これにより、複数のシート103は、互いに位置決めされる。また、切り込み110に差し込まれた凸部132は、シート103の弾性により直線部112に差し込まれた状態が維持される。よって、シート103の一部を用いて、複数のシート103が綴じ合わされた状態を長期にわたって安定に維持できる。
なお、シート103の場合も、折り返し部144を、本体部142の表面側に折り曲げても、凸部132によりシート103を綴じ合わせることができる。このように、切り込み110の一部を、折れ曲がった直線により形成された折れ曲がり部115にしても、折り返し部144を折り曲げた場合に互いに交差するとの条件を守る限り、凸部132を用いてシート103を綴じ合わせることができる。また、シート103においても、切り込み110の両端に、切り込み110に連続した丸穴113を設けてもよい。
図17は、積層シート100を形成する他のシート104の形態を示す部分拡大図である。図17は、図2と同じ視点により描かれている。シート104は、切り込み110の形状を除くと、他のシート101、102、103と同じ形状を有する。よって、共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
シート104に形成された切り込み110は、折り線120と重なる部分の中点対して点対称な形状を有する。シート104の切り込み110は、折り線120に対して、シート104の角に近い側と、シート104の角から遠い側とのそれぞれに、図14に示したシート103の切り込み110における折れ曲がり部115と同じ形状の折れ曲がり部115を反して形成される。ただし、折り線120を境に、切り込み110が形成する凸部132の突出方向は、折り線120と平行であり、且つ、互いに反対向きになる。
このような切り込み110を有する複数のシート104が積み重ねられて、積層シート100が形成される。これにより、図9に示した手順のうち、ステップS101およびステップS102が完了する。
図18は、シート104を折り線120に沿って折り曲げた状態を、図17と同じ視点から示す部分拡大図である。積層シート100において、折り返し部144が本体部142の背面に接するまで折り曲げられる。これにより、折り返し部144に形成された凸部132は、積層シート100の本体部142の背後に隠される。
こうして、図9に示した手順のうち、ステップS103が完了する。折り曲げられた積層シート100の本体部142および折り返し部144が互いに接した状態になると、切り込み110における一対の折れ曲がり部115の両端は、図中に点線の円Bで囲って示すように、互いに同じ位置を占めて交差する。
図19は、シート104により形成された積層シート100の折り返し部144に形成された凸部132を、本体部142側の切り込み110に差し込んだ状態を示す。これにより、折り返し部144の凸部132の尖端は、本体部142の表面に突出して、積層シート100を縫い止める。これにより、図中に斜線で示すように、積層シート100の表面側に、折り返し部144の裏面の一部が現れる。こうして、図9に示した手順のステップS104が完了し、シート104が綴じ合わされる。
なお、シート104において、切り込み110は、本体部142と折り返し部144とで対称な形状を有する。よって、折り返し部144側の凸部132が本体部側の切り込み110に差し込まれた場合は、同時に、本体部142側の凸部132が折り返し部144側の切り込み110に差し込まれる。
切り込み110に差し込まれた凸部132は、複数のシート104を相互に位置決めする。また、切り込み110に差し込まれた凸部132は、シート104の弾性により折り返し部144が本体部142から離れることを防止する。よって、シート104の一部を用いて、複数のシート104が綴じ合わされた状態を長期にわたって安定に維持できる。
なお、シート104の場合も、折り返し部144を、本体部142の表面側に折り曲げても、凸部132によりシート104を綴じ合わせることができる。このように、本体部142と折り返し部144との双方に曲線部114を有する切り込みを設けても、折り返し部144を折り曲げた場合に互いに交差するとの条件を守る限り、凸部132を用いてシート104を綴じ合わせることができる。また、シート104においても、切り込み110の両端に、切り込み110に連続した丸穴113を設けてもよい。
図20は、積層シート100を形成する他のシート105の形態を示す部分拡大図である。図20は、図2と同じ視点により描かれている。シート105は、切り込み110の形状を除くと、他のシート101、102、103、104と同じ形状を有する。よって、共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
シート105に形成された切り込み110は、いわば、図17に示したシート104の切り込み110の変形例である。即ち、切り込み110において折り線120に沿った部分につながる部分は、本体部142側および折り返し部144側のそれぞれにおいて、折り線120に対して直角ではない角度αをなす。更に、切り込みの最端部に形成された直線部分も、折り線120に直交する直線に対して直角ではない角度βをなす。
このような切り込み110を有する複数のシート105が積み重ねられて、積層シート100が形成される。これにより、図9に示した手順のうち、ステップS101およびステップS102が完了する。
図21は、シート105を折り線120に沿って折り曲げた状態を、図20と同じ視点から示す部分拡大図である。積層シート100において、折り返し部144が本体部142の背面に接するまで折り曲げられる。これにより、折り返し部144に形成された凸部132は、積層シート100の本体部142の背後に隠される。
こうして、図9に示した手順のうち、ステップS103が完了する。折り曲げられた積層シート100の本体部142および折り返し部144が互いに接した状態になると、切り込み110における一対の折れ曲がり部115の両端は、図中に点線の円Bで囲って示すように、互いに同じ位置を占めて交差する。
図22は、シート105で形成された積層シート100において、折り返し部144の折れ曲がり部116により形成された凸部132を、本体部142側の折れ曲がり部116に差し込んだ状態を示す。また、シート105において、一対の折れ曲がり部116は互いに対称に配されているので、上記の操作により、本体部142の折れ曲がり部116により形成された凸部132を、折り返し部144側の折れ曲がり部116に差し込んだ状態にもなる。
このように、積層シート100においては、本体部142の凸部132と折り返し部144の凸部132とが互いに交差してシート105を縫い止め合う。また、本体部142の凸部132と折り返し部144の凸部132とは、図22に示すように、切り込み110の端部に回り込むように嵌まり合うので、差し込んだ凸部132が切り込み110から抜け難い。更に、図中に点線Cで示すように、シート104を綴じた場合に比較すると、シート105では、積層シート100の表面側に迫り出す凸部132が小さい。よって、綴じたシート105が開かれた場合も、凸部132が押し開かれることが抑制される。
なお、シート105の場合も、折り返し部144を、本体部142の表面側に折り曲げても、凸部132によりシート105を綴じ合わせることができる。このように、本体部142と折り返し部144との双方において複数の屈曲部を有する折れ曲がり部116を含む切り込み110を設けても、折り返し部144を折り曲げた場合に互いに交差するとの条件に従うことによりシート105を綴じ合わせることができる。また、シート102においても、切り込み110の両端に、切り込み110に連続した丸穴113を設けてもよい。
図23は、積層シート100を形成する他のシート106の形態を示す部分拡大図である。図23は、図2と同じ視点により描かれている。シート106は、切り込み110の形状および配置を除くと、他のシート101、102、103、104と同じ形状を有する。よって、共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
シート106において、切り込み110は、折り線120に対して、シート106の角から遠い側に直線部112を、シート106の角に近い側に折れ曲がり部117を有する。直線部112が、折り線120と略直交する点は、シート101、102と変わらない。一方、折れ曲がり部117は、一部が折り線120に重なる形状を有する。これにより、折れ曲がり部117は、折り線120の直近に凸部132を形成する。
このような切り込み110を有する複数のシート106を積み重ねて、積層シート100が形成される。これにより、図9に示した手順のうち、ステップS101およびステップS102が完了する。
図24は、シート106を折り線120に沿って折り曲げた状態を、図23と同じ視点から示す部分拡大図である。積層シート100においては、折り返し部144が本体部142の背面に接するまで折り曲げられる。これにより、積層シート100に形成された凸部132は、積層シート100の本体部142の背後に隠される。
こうして、図9に示した手順のうち、ステップS103が完了する。折り曲げられた積層シート100の本体部142および折り返し部144が互いに接した状態になると、図中に点線の円Bで囲って示すように、切り込み110における直線部112および折れ曲がり部117のそれぞれの両端が互いに同じ位置を占めて交差する。
図25は、切り込み110における折れ曲がり部117により積層シート100の折り返し部144に形成された凸部132を、切り込み110の直線部112を通じて積層シート100の本体部142に挿通した状態を示す。これにより、凸部132の尖端は、本体部142の表面に突出して、積層シート100を縫い止める。こうして、図9に示した手順のステップS104が完了し、シート106が綴じ合わされる。
切り込み110の直線部112に差し込まれた凸部132は、複数のシート106を相互に位置決めする。また、直線部112に差し込まれた凸部132は、シート106の弾性により折り返し部144が本体部142から離れることを防止する。よって、シート106の一部を用いて、複数のシート106が綴じ合わされた状態を長期にわたって安定に維持できる。
なお、シート106の切り込み110において、直線部112と折れ曲がり部117との配置を入れ換えても、即ち、折り線120に対して、シート106の角に近い側に直線部112を、シート106の角から遠い側に折れ曲がり部117を設けても、図示のものと同様に、シート106を綴じ合わせることができる。また、上記の例では、折り返し部144を、本体部142の背面側に折り曲げて、凸部132を、本体部142の背面側から表面側に差し込んだ。しかしながら、折り返し部144を、本体部142の表面側に折り曲げて、凸部132を、積層シート100の表面側から背面側に向かって差し込んでも、上記の場合と同様に、シート106を綴じ合わせることができる。更に、シート106においても、切り込み110の両端に、切り込み110に連続した丸穴113を設けてもよい。
図26は、積層シート100を形成する他のシート107の形態を示す部分拡大図である。図26は、図2と同じ視点により描かれている。また、シート107は、切り込み110、111の配置および形状以外は、他のシート101、102、103、104、105、106と同じ形状を有する。よって、共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
シート107は、折り線120に沿って、それぞれが折り線120と交差する一対の切り込み110、111を有する。これら切り込み110、111のうちの一方は、図23、23、24に示したシート106の切り込み110と同じ形状を有する。他方の切り込み111は、一方の切り込み110に対して、折り線120と直交する線に対して線対称な形状を有する。
よって、切り込み110、111のそれぞれは、折り線120に対して、シート107の角に近い側に折れ曲がり部117を、シート107の角から遠い側に直線部112をそれぞれ有する。これら一対の切り込み110、111における折れ曲がり部117は、積層シート100にそれぞれ凸部132を形成する。よって、積層シート100には、互いに向きが異なる一対の凸部132が形成される。
このような切り込み110を有する複数のシート107を積み重ねて、積層シート100が形成される。これにより、図9に示した手順のうち、ステップS101およびステップS102が完了する。
図27は、シート107を折り線120に沿って折り曲げた状態を、図26と同じ視点から示す部分拡大図である。積層シート100においては、折り返し部144が本体部142の背面に接するまで折り曲げられる。これにより、積層シート100に形成された凸部132は、積層シート100の本体部142の背後に隠される。
こうして、図9に示した手順のうち、ステップS103が完了する。折り曲げられた積層シート100の本体部142および折り返し部144が互いに接した状態になると、図中に点線の円Bで囲って示すように、切り込み110、111における直線部112および折れ曲がり部117のそれぞれの両端が互いに同じ位置を占めて交差する。
図28は、切り込み110における折れ曲がり部117により積層シート100の折り返し部144に形成された凸部132を、切り込み110、111の直線部112を通じて積層シート100の本体部142に挿通した状態を示す。これにより、凸部132の各々の尖端は、本体部142の表面に突出して、積層シート100を縫い止める。こうして、図9に示した手順のステップS104が完了し、シート107が綴じ合わされる。
切り込み110、111の直線部112に差し込まれた凸部132は、複数のシート107を相互に位置決めする。また、直線部112に差し込まれた凸部132は、シート107の弾性により折り返し部144が本体部142から離れることを防止する。更に、折り山122の延在方向について見た場合、凸部132の差し込み方向は互いに背中合わせになる。よって、いずれかのシート107に対して、凸部132が直線部112から抜ける方向に力が作用した場合も、シート107の綴じ合わせが緩むことが防止される。
なお、シート107の切り込み110において、直線部112と折れ曲がり部117との配置を入れ換えても、即ち、折り線120に対して、シート107の角に近い側に直線部112を、シート107の角から遠い側に折れ曲がり部117を設けても、図示のものと同様に、シート107を綴じ合わせることができる。また、一対の切り込み110、111の一方を図示の方向に、他方を反対の向きに設けてもよい。
更に、上記の例では、折り返し部144を、本体部142の背面側に折り曲げて、凸部132を、本体部142の背面側から表面側に差し込んだ。しかしながら、折り返し部144を、本体部142の表面側に折り曲げて、凸部132を、積層シート100の表面側から背面側に向かって差し込んでも、上記の場合と同様に、シート107を綴じ合わせることができる。
また更に、図26、26、27に示した例では、図23、23、24に示したシート106と同じ形状の切り込み110、111を一対設けたが、他のシート101、102、103、104、105と同じ形状の切り込み110を複数配してもよい。この場合、複数の切り込み110の一部が他の切り込み110と異なる形状を有してもよい。また更に、シート107においても、切り込み110、111の両端に、切り込み110、111に連続した丸穴113を設けてもよい。
図29は、シート107を作成する場合に使用できる工具200の形態を示す斜視図である。工具200は、固定部210および揺動部220を備える。
固定部210は、固定基盤212、シートガイド214、アンビル部216およびエンボスダイ218を有する。固定基盤212は、机等の作業スペースに設置される。固定基盤212の上面には、図中奥から順に、シートガイド214およびアンビル部216が配される。また、アンビル部216を横切ってエンボスダイ218が配される。
シートガイド214は、シート107の角部と相補的な形状を有する。よって、シートガイド214に押し当てることにより、固定基盤212上でシート107または積層シート100を位置決めできる。
アンビル部216は、シートガイド214により位置決めされたシート107または積層シート100の一部を、平坦な表面により下方から支持する。これにより、シート106または積層シート100を刃物により効率よく切断できる。
エンボスダイ218は、アンビル部216を避けつつ配された溝を有する。この溝の上で押すことにより、シート107または積層シート100を、切断することなくエンボス加工または折り筋加工することができる。
揺動部220は、揺動基盤222、押し下げ部224、切断パンチ226およびエンボスパンチ228を有する。揺動基盤222の一端は、ヒンジ部230を介して固定基盤212に結合される。これにより、揺動基盤222は、固定基盤212に対して揺動して、固定基盤212との間隔を拡げまたは狭めることができる。
また、揺動基盤222は、付勢部材240により、固定基盤212に対する間隔が拡がる方向に付勢される。押し下げ部224は、揺動基盤222の図中上面において、ヒンジ部230と反対側の端部近傍に配される。ユーザは、押し下げ部224を押し下げて揺動基盤222を揺動させることにより、揺動基盤222と固定基盤212との間隔を狭めることができる。
切断パンチ226は、揺動基盤222の図中下面に配される。揺動基盤222が揺動して固定基盤212に接近した場合、切断パンチ226は、アンビル部216に押し付けられる。これにより、切断パンチ226は、アンビル部216に支持されたシート107を切断して切り込み110、111を形成できる。切断パンチ226は、シート107の切り込み110、111と相補的な形状を有する。
エンボスパンチ228も、揺動基盤222の図中下面に配される。揺動基盤222が揺動して固定基盤212に接近した場合、エンボスパンチ228は、固定基盤212上に位置決めされたシート107の一部を、エンボスダイ218に押し込む。これにより、シート107を切断することなくエンボス加工または折り筋加工できる。エンボスダイ218は、シート106における折り線120に対応した位置に配される。
上記の工具200は、次のように使用する。まず、切り込み110、111を形成するシート106または積層シート100を、固定基盤212上でシートガイド214により位置決めする。次に、押し下げ部224を押し下げることにより、シート106または積層シート100に、切り込み110、111と折り線120とを形成する。
上記の工具200は、シート107または積層シート100の四隅のいずれにも切り込みを形成できる。よって、切り込み110、111を形成する位置は、シート107または積層シート100の左上の角近傍に限らない。また、工具200において、切断パンチ226を異なる形状のものに交換することにより、他の形状の切り込み110、111を形成する工具200として使用することもできる。
なお、シート107または積層シート100に切り込み110、111を形成する道具は、上記の工具200に限られない。シート101〜107を工業的に製造する場合は、ローレット加工機、プレス加工機等を用いてもよい。また、少数のシートを作成する場合は、汎用の刃物でシート101〜107に切り込み110、111を形成してもよい。更に、切断パンチ226の両端に、丸穴113に対応した形状の部分を設けることにより、切り込み110の形成と同時に、切り込み110の両端に丸穴113を形成できる。
図30は、積層シート100を形成する他のシート108の形態を示す図である。シート108は横長の矩形形状を有し、図中で幅方向に二等分する位置に折り線120を有する。また、シート108は、折り線120に対してそれぞれが交差する複数の切り込み110を有する。個々の切り込み110は、図17から図19までに示したシート104の切り込み110と同じ形状を有する。
上記のような切り込み110を有する複数のシート108を積み重ねて、積層シート100が形成される。これにより、図9に示した手順のうち、ステップS101およびステップS102が完了する。
図31は、シート108を折り線120に沿って折り曲げた状態を、図30と同じ視点から示す図である。シート108も、折り返し部144と本体部142とが互いに等しい大きさを有する。
折り曲げられた積層シート100の本体部142および折り返し部144が互いに接した状態になると、切り込み110の折れ曲がり部115により積層シート100に形成された凸部132は、積層シート100の本体部142の背後に隠される。こうして、図9に示した手順のうち、ステップS103が完了する。
図32は、切り込み110における折れ曲がり部115により形成された凸部132を相互に差し込んだ状態を示す。これにより、凸部132の各々の尖端は、本体部142および折り返し部144の表面に突出して、積層シート100を縫い止める。こうして、図9に示した手順のステップS104が完了し、複数のシート108が互いに綴じ合わされる。これにより、積層シート100は、中綴じの小冊子を形成する。
図19を参照して既に説明したように、折れ曲がり部115により形成された切り込み110の凸部132により綴じ合わせた場合、綴じ合わせ部分は、積層シート100を形成するシート108を相互に位置決めする。また、嵌まり合った凸部132は解け難いので、シート108の積層シート100を綴じ合わせて形成された小冊子は、様々な向きに開かれても綴じ合わせが緩み難い。
なお、上記の実施形態においても、切り込み110の形状および配置を、既に説明した他のシートの切り込み110と組み合わせてもよい。また、切り込み110の間隔、数等を変更することもできる。更に、シート108においても、切り込み110の両端に、切り込み110に連続した丸穴113を設けてもよい。
また更に、図中に示すように、凸部132と切り込み110の端部とが嵌まり合った位置またはその近傍を通過する直線上に、シート108の曲げ強度を意図的に低下させた折り開き線146を設けてもよい。これにより、凸部132による綴じ合わせ部に対する負荷を軽減できる。折り開き線146は、折り筋、エンボス、ミシン目等として形成できる。
図33は、積層シート100を形成する他のシート109の形態を示す図である。シート109は、シート108と同様に横長の矩形形状を有し、図中で幅方向に二等分する位置に折り線120を有する。また、シート109は、折り線120に対してそれぞれが交差する複数の切り込み110を有する。個々の切り込み110は、図20から図22までに示したシート105の切り込み110と同じ形状を有する。
上記のような切り込み110を有する複数のシート109を積み重ねて、積層シート100が形成される。これにより、図9に示した手順のうち、ステップS101およびステップS102が完了する。
図34は、シート109を折り線120に沿って折り曲げた状態を、図33と同じ視点から示す図である。シート109も、折り返し部144と本体部142とが互いに等しい大きさを有する。
折り曲げられた積層シート100の本体部142および折り返し部144が互いに接した状態になると、切り込み110の折れ曲がり部116により積層シート100に形成された凸部132は、積層シート100の本体部142の背後に隠される。こうして、図9に示した手順のうち、ステップS103が完了する。
図35は、切り込み110における折れ曲がり部116により形成された凸部132を相互に差し込んだ状態を示す。これにより、凸部132の各々の尖端は、本体部142および折り返し部144の表面に突出して嵌まり合う。こうして、図9に示した手順のステップS104が完了し、複数のシート109が互いに綴じ合わされる。これにより、積層シート100は、中綴じの小冊子を形成する。
図22を参照して既に説明したように、折れ曲がり部115により形成された切り込み110の凸部132により綴じ合わせた場合、綴じ合わせ部分は積層シート100を形成するシート109を相互に位置決めする。また、嵌まり合った凸部132は解け難いので、シート109の積層シート100を綴じ合わせて形成された小冊子は、様々な向きに開かれても綴じ合わせが緩み難い。
なお、上記の実施形態においても、切り込み110の形状および配置を、既に説明した他のシートの切り込み110と組み合わせてもよい。また、切り込み110、111の間隔、数等を変更することもできる。更に、シート109においても、切り込み110の両端に、切り込み110に連続した丸穴113を設けてもよい。
また更に、図中に示すように、凸部132と切り込み110の端部とが嵌まり合った位置またはその近傍を通過する直線上に、シート109の曲げ強度を意図的に低下させた折り開き線146を設けてもよい。これにより、凸部132による綴じ合わせ部に対する負荷を軽減できる。折り開き線146は、折り筋、エンボス、ミシン目等として形成できる。
図36は、積層シート100を形成する他のシート99の形態を示す図である。シート99は、シート108、109と同様に横長の矩形形状を有し、図中でシート99を幅方向に二等分する位置に折り線120を有する。また、シート99は、折り線120に対してそれぞれが交差する2対の切り込み110、111を有する。個々の切り込み110、111は、図26から図28までに示したシート107の切り込み110、111と同じ形状を有する。
上記のような切り込み110、111を有する複数のシート99を積み重ねて、積層シート100が形成される。これにより、図9に示した手順のうち、ステップS101およびステップS102が完了する。
図37は、シート99を折り線120に沿って折り曲げた状態を、図36と同じ視点から示す図である。シート99においては、折り線120に対して図中左側を折り返し部144と記載するが、折り返し部144と本体部142とは等しい大きさを有する。
折り曲げられた積層シート100の本体部142および折り返し部144が互いに接した状態になると、切り込み110、111の折れ曲がり部117により積層シート100に形成された凸部132は、積層シート100の本体部142の背後に隠される。こうして、図9に示した手順のうち、ステップS103が完了する。
図38は、切り込み110における折れ曲がり部117により積層シート100の折り返し部144に形成された凸部132を、切り込み110、111の直線部112を通じて積層シート100の本体部142に挿通した状態を示す。これにより、凸部132の各々の尖端は、本体部142の表面に突出して、積層シート100を縫い止める。
こうして、図9に示した手順のステップS104が完了し、複数のシート99が互いに綴じ合わされる。これにより、積層シート100は、中綴じの小冊子を形成する。このように、上記実施形態によると、シート99自体の一部を利用して、シート99により形成された中綴じの小冊子を形成できる。
なお、上記の実施形態においても、切り込み110、111の形状および配置を、既に説明した他のシートの切り込み110と組み合わせてもよい。また、切り込み110、111の間隔、数等を変更することもできる。更に、シート99においても、切り込み110、111の両端に、切り込み110、111に連続した丸穴113を設けてもよい。
また更に、図中に示すように、凸部132と切り込み110の端部とが嵌まり合った位置またはその近傍を通過する直線上に、シート99の曲げ強度を意図的に低下させた折り開き線146を設けてもよい。これにより、凸部132による綴じ合わせ部に対する負荷を軽減できる。折り開き線146は、折り筋、エンボス、ミシン目等として形成できる。
図39は、シート301の形態を示す模式図である。シート301は、紙、不織布、樹脂フィルム等により形成された矩形の薄片であり、点線の円Aにより囲って示すように、図中左上の角部近傍に切り込み110を有する。切り込み110は、シート301の直近の角から内側に向かって延在し、同じ円A内に位置する折り線120と交差する。
折り線120は、シート301を重ねて形成された積層シート100を綴じる場合に折り曲げられる位置を示す。図示の例では、折り線120は、切り込み110が設けられた角部につながる一対の辺のいずれに対しても45°の傾きを有する直線をなす。ただし、図示の状態では、折り線120は未だ折り曲げられていない。
図40は、シート301の部分拡大図であり、図39において円Aで囲った部分を拡大して示す。シート301において、切り込み110は、折り線120に対して対称に、折り線120に直角に配された一対の直線部112を含み、全体として1本の直線をなす。
切り込み110は、シート301の各々において、互いに同じ位置に設けられる。よって、複数のシート301を積み重ねて揃えた場合は、切り込み110も互いに同じ位置に積み重なる。また、切り込み110は、シート301の各々に予め設けてもよいし、これから綴じる複数のシート301を積み重ねて積層シート100にした状態で、一括して形成してもよい。
図41は、複数のシート301を綴じる過程の次の段階を示す図であり、積層シート100において円Aで囲った部分を斜め上方から見た様子を示す。図示のように、複数のシート301を綴じる場合は、まず、折り線120に沿って積層シート100を折り曲げる。
図中に矢印Fで示すように、積層シート100は、シート301の角を含む三角形の折り返し部144を一括して、シート301のその他の部分をなす本体部142の背面側に折り返す。これにより、シート301には折り山122が形成される。また、切り込み110における一方の直線部112も、折り返し部144と共に積層シート100の背面側に移動する。
図42は、シート301を綴じる過程を示す図であり、図40と同じく、積層シート100を正面から見た様子を示す。図示の状態では、図41に示した段階を経て、折り返し部144が本体部142の背面に接するまで完全に折り曲げられている。
折り線120に沿って折り曲げられた積層シート100の折り返し部144が本体部142および接した状態になると、積層シート100を正面から見た場合に、本体部142側の直線部112と、折り返し部144側の直線部112とが、互いに同じ位置を占めて重なる。
折り線120に沿って折り曲げられた積層シート100に対しては、山折り線312および谷折り線314が新たに設定される。図中に一点鎖線により示す山折り線312は、折り山122上の一点と、本体部142に見える切り込み110の中点とを結ぶ直線として設定される。図中に二点鎖線で示す谷折り線314は、折り山122上の一点と切り込み110の端部とを結ぶ直線として設定される。
図43は、図42に一点鎖線で示す直線Sを含む面による断面図である。図43は、図42において設定された山折り線312および谷折り線314に沿って積層シート100が折り曲げられた様子を示す。
なお、図中の太い線は、複数のシート301を積層して形成される積層シート100全体を示す。また、図中左側が、図42に示した積層シート100の表側を示す。
積層シート100において、山折り線312は、図中に見える積層シート100の表側が突出するように折り曲げられる。また、谷折り線314は、積層シート100の裏側が突出するように折り曲げられる。これら、山折り線312および谷折り線314において折り曲げられることにより、図42に示した段階で既に形成されていた折り山122が、谷折り線314に接近する。
図44は、図43に示した状態の積層シート100を、図41と同じ視点から示す斜視図である。図示のように、積層シート100の折り山122に連なる領域が谷折り線314の図中上方に覆い被さり、山折り線312は、積層シート100の本体部142の表裏に振り分けられる。
図45は、積層シート100を綴じる過程の次の段階を、図43と同じ視点から見た様子を示す断面図である。図示のように、山折り線312および谷折り線314は、それぞれ完全に折り曲げられ、積層シート100の表側および裏側において、谷折り線314を挟む領域がそれぞれ接している。これにより、積層シート100における折り山122を挟む領域により、積層シート100の本体部142および折り返し部144が挟まれる。
図46は、図45に示した状態積層シート100を、図40および図42と同じ視点から見た様子を示す図である。図示のように、山折り線312および谷折り線314が折り曲げられた状態の積層シート100においては、シート301相互の折り山122と交差する方向の変位は、折り山122により規制される。
また、折り山122の延在方向のシート301相互の変位は、折り山122が切り込み110に当接することにより規制される。よって、シート301は相互に位置決めされて綴じ合わされる。
図47は、ここまでに説明したシート301を綴じる方法の手順をまとめた流れ図である。シート301を綴じる方法は、まず、図39、および図40に示したように、シート301に切り込み110を形成し(ステップS201)、且つ、切り込み110を形成したシート301を積み重ねて積層シート100とする(ステップS202)。
次に、積層シート100を、図41および図42に示したように折り曲げて折り山122を形成する(ステップS203)。次に、図43から図46までに示したように、積層シート100の一部を、山折り線312および谷折り線314に沿って更に折り曲げる(ステップS204)。こうして、ステイプラ等の付加的な部材を用いることなく、複数のシート301を綴じ合わせることができる。
なお、上記のステップのうち、シート301に切り込み110を形成する段階(ステップS201)と、複数のシート301を積み重ねる積み重ね段階(ステップS202)とは、順序が前後しても差し支えない。また、切り込み110を予め設けたシート301を用意しておくことにより、シート301を綴じる場合に上記のステップS101を省略できる。
図48は、積層シート100を形成する他のシート302の形態を示す部分拡大図である。図48は、図40と同じ視点により描かれている。なお、シート302は、切り込み110の形状を除くと、シート301と同じ形状を有する。よって、共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
シート302の切り込み110は、折り線120に対して、直角ではない角度γをなし、折り線120との交点において屈曲する。これにより、シート301の切り込みの端部に比較すると、シート302の切り込み110の端部は、山折り線312および谷折り線314が設定される領域の方へ移動としている。
また、シート302においては、切り込み110の中央と両端に、それぞれ刻み118、119が設けられる。中央の刻み118は、折り線120に沿って形成され、切り込み110が屈曲して突出する側に配される。端部の一対の刻み119は、切り込み110に対して他方の刻み118と反対側に、谷折り線314の延在方向に形成される。
このような切り込み110を有する複数のシート302が積み重ねられて、積層シート100を形成する。これにより、図47に示した手順のうち、ステップS201およびステップS202が完了する。
図49は、シート302を折り線120に沿って折り曲げた状態を、図48と同じ視点から示す部分拡大図である。積層シート100においては、折り返し部144が本体部142の背面に接するまで折り曲げられる。
これにより、折り返し部144は本体部142の背後に隠れ、折り返し部144と共に積層シート100の背面側に移動した切り込み110の一部は、本体部142側に見える切り込み110の一部と重なる。こうして、図47に示した手順のうち、ステップS203が完了する。
図50は、図49に示した状態から、山折り線312および谷折り線314において積層シート100をそれぞれ折り曲げた状態を示す。既に説明した通り、山折り線312は、積層シート100の表側から突出するように、谷折り線314は、積層シート100の背面側が突出するように、それぞれ折り曲げられる。これにより、積層シート100の表裏から、山折り線312が積層シート100自体を挟み込んで複数のシート302が綴じ合わされる。
また、山折り線312および谷折り線314における積層シート100の折り曲げに伴って、折り山122は、内側に挟み込んだ谷折り線314に接近する。シート302においては切り込み110が折り山122に直交する線に対して傾いているので、折り山122が谷折り線314に接近する過程で、切り込み110に面した折り山122の端部と、折り曲げられることなく残る切り込み110の端面とが干渉する。
しかしながら、切り込み110の端面が、折り山122に沿って設けられた刻み118に入り込むので、シート301の積層シート100の場合と同様に、山折り線312および谷折り線314を円滑に折り曲げることができる。
また、山折り線312および谷折り線314が完全に折り曲げられて図45に示した状態になると、折り山122に沿って設けられた刻み118と、切り込み110の端部に設けられた刻み119とが互いに嵌まり合う。これにより、山折り線312および谷折り線314に沿って曲げられた積層シート100が、シート302の弾性により戻ることが規制され、積層シート100が綴じ合わされた状態が維持される。
図51は、図48から図50までに示したシート302の変形例であるシート303を示す部分拡大図である。図示のシート303は、切り込み110の形状を除くと、シート302と同じ形状を有する。
シート303において、切り込み110は、直線部112および刻み118、119に加えて、他の刻み317、318、319を有する。追加された第一の刻み317は、山折り線312の一部に重ねて形成される。また、追加された第二の刻み318は、既存の刻み118を延長する位置に、折り線120の一部に重ねて形成される。更に、追加された第3の刻み319は、既存の刻み119を延長して、谷折り線314の一部に重ねて形成される。
このように、刻み317、318、319を設けることにより曲げ強度が局部的に低下するので、シート303は、折り線120、山折り線312および谷折り線314のそれぞれに沿って折り曲げ易くなる。また、刻み317、318、319が存在することにより、シート303を綴じる場合に折り曲げるべき位置を視覚的に示すこともできる。
図52は、積層シート100を形成する他のシート304の形態を示す部分拡大図である。図52は、図40と同じ視点により描かれている。シート304は、切り込み110の配置を除くと、シート301と同じ形状を有する。よって、共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
シート304は、折り線120と直交する一対の切り込み110を有する。また、シート304において、谷折り線314は、一対の切り込み110の一方の端部から他方の端部を結んで、折り線120と平行に設定される。更に、山折り線312は、折り線120と谷折り線314との中点において、折り線120と平行に設定される。
このような切り込み110を有する複数のシート304が積み重ねられて、積層シート100を形成する。これにより、図47に示した手順のうち、ステップS201およびステップS202が完了する。
図53は、シート304を折り線120に沿って折り曲げた状態を、図52と同じ視点から示す部分拡大図である。折り返し部144は、本体部142の背面に接するまで折り曲げられる。
これにより、折り返し部144は本体部142の背後に隠れ、折り返し部144と共に積層シート100の背面側に移動した切り込み110の半分は、本体部142側に見える切り込み110の半分と重なる。こうして、図47に示した手順のうち、ステップS203が完了する。
図54は、図53に示した状態から、山折り線312および谷折り線314において積層シート100をそれぞれ折り曲げた状態を示す。山折り線312は、積層シート100の表側から突出するように、谷折り線314は、積層シート100の背面側が突出するように、それぞれ折り曲げられる。これにより、積層シート100の表裏から、山折り線312が積層シート100自体を挟み込んで複数のシート304が綴じ合わされる。
上記のような形態では、ステップS204において谷折り線314に接近した折り山122の両端が、それぞれ切り込み110の端面に当接する。よって、折り山122の延在方向について、シート304がより確実に位置決めされる。
図55は、図52から図54までに示したシート304の変形例であるシート305を示す部分拡大図である。図示のシート305は、切り込み110、111の形状を除くと、シート304と同じ形状を有する。
シート305において、切り込み110、111は、直線部112に加えて、刻み317、318、319を有する。追加された第一の刻み317は、山折り線312の一部に重ねて形成される。また、追加された第二の刻み318は、折り線120の一部に重ねて形成される。更に、追加された第3の刻み319は、谷折り線314の一部に重ねて形成される。
このように、刻み317、318、319を設けることにより曲げ強度が局部的に低下するので、シート305は、折り線120、山折り線312および谷折り線314のそれぞれに沿って折り曲げ易くなる。また、刻み317、318、319が存在することにより、シート305を綴じる場合に折り曲げるべき位置を視覚的に示すこともできる。
図56は、積層シート100を形成する他のシート306の形態を示す部分拡大図である。図56は、図40と同じ視点により描かれている。シート306は、切り込み110の形状を除くと、シート304と同じ形状を有する。よって、共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
シート306は、互いに対称な一対の切り込み110、111を有する。一方の切り込み110は、図48に示したシート302の切り込み110と略同じ形状を有する。他方の切り込み111は、折り線120と直交する直線に対して、切り込み110と対称な形状を有する。
また、シート306において、谷折り線314は、一対の切り込み110の一方の端部から他方の端部を結んで、折り線120と平行に設定される。更に、山折り線312は、折り線120と谷折り線314との中点において、折り線120と平行に設定される。
なお、シート306においても、切り込み110、111の両端に配された刻み119は、谷折り線314の延在方向に形成される。よって、刻み119の向きという点において、シート306の切り込み110、111は、シート302の切り込みと異なる。
このような切り込み110を有する複数のシート306が積み重ねられて、積層シート100を形成する。これにより、図47に示した手順のうち、ステップS201およびステップS202が完了する。
図57は、シート306を折り線120に沿って折り曲げた状態を、図56と同じ視点から示す部分拡大図である。折り返し部144は、本体部142の背面に接するまで折り曲げられる。
これにより、折り返し部144は本体部142の背後に隠れ、折り返し部144と共に積層シート100の背面側に移動した切り込み110の半分は、本体部142側に見える切り込み110の半分と重なる。こうして、図47に示した手順のうち、ステップS203が完了する。
図58は、図57に示した状態から、山折り線312および谷折り線314において積層シート100をそれぞれ折り曲げた状態を示す。山折り線312は、積層シート100の表側から突出するように、谷折り線314は、積層シート100の背面側が突出するように、それぞれ折り曲げられる。これにより、積層シート100の表裏から、山折り線312が積層シート100自体を挟み込んで複数のシート306が綴じ合わされる。
更に、ステップS204において谷折り線314に接近した折り山122の両端において、刻み118、119が互いに嵌まり込む。これにより、山折り線312および谷折り線314に沿って曲げられた積層シート100が、シート302の弾性により戻ることが規制され、積層シート100が綴じ合わされた状態が維持される。
図59は、図56から図58までに示したシート306の変形例であるシート307を示す部分拡大図である。図示のシート307は、切り込み110の形状を除くと、シート306と同じ形状を有する。
シート307において、切り込み110、111は、直線部112および刻み118、119に加えて、他の刻み317、318、319を有する。追加された第一の刻み317は、山折り線312の一部に重ねて形成される。また、追加された第二の刻み318は、既存の刻み118を延長して、折り線120の一部に重ねて形成される。更に、追加された第3の刻み319は、既存の刻み119を延長して、谷折り線314の一部に重ねて形成される。
このように、刻み317、318、319を設けることにより曲げ強度が局部的に低下するので、シート303は、折り線120、山折り線312および谷折り線314のそれぞれに沿って折り曲げ易くなる。また、刻み317、318、319が存在することにより、シート303を綴じる場合に折り曲げるべき位置を視覚的に示すこともできる。
図60は、積層シート100を形成する他のシート308の形態を示す図である。シート308は横長の矩形形状を有し、図中でシート308を幅方向に二等分する位置に折り線120を有する。また、シート308は、折り線120に対してそれぞれが交差する2対の切り込み110、111を有する。個々の切り込み110、111は、図56から図58までに示したシート306の切り込み110、111と同じ形状を有する。
上記のような切り込み110、111を有する複数のシート308を積み重ねて、積層シート100が形成される。これにより、図9に示した手順のうち、ステップS201およびステップS202が完了する。
図61は、シート308を折り線120に沿って折り曲げた状態を、図60と同じ視点から示す図である。シート308においては、折り線120に対して図中左側を折り返し部144と記載するが、折り返し部144と本体部142とは等しい大きさを有する。
折り曲げられた積層シート100の本体部142および折り返し部144が互いに接した状態になると、切り込み110、111の折れ曲がり部117により積層シート100に形成された凸部132は、積層シート100の本体部142の背後に隠される。こうして、図47に示した手順のうち、ステップS203が完了する。
図62は、図61に示した状態から、山折り線312および谷折り線314において積層シート100をそれぞれ折り曲げた状態を示す。これにより、積層シート100の表裏から、山折り線312が積層シート100自体を挟み込んで複数のシート306が綴じ合わされる。また、切り込み110、111の刻み118、119が嵌まり合うことにより、綴じ合わされた状態が維持される。
こうして、図47に示した手順のステップS204が完了し、複数のシート308が互いに綴じ合わされる。これにより、積層シート100は、中綴じの小冊子を形成する。このように、上記実施形態によると、シート308自体の一部を利用して、シート308により形成された中綴じの小冊子を形成できる。
なお、上記の実施形態において、切り込み110、111の形状および配置を、既に説明した他のシートの切り込み110と組み合わせてもよい。また、切り込み110、111の間隔、数等を変更することもできる。
更に、図中に示すように、凸部132と切り込み110、111の端部とが嵌まり合った位置またはその近傍を通過する直線上に、シート308の曲げ強度を意図的に低下させた折り開き線146を設けてもよい。これにより、凸部132による綴じ合わせ部に対する負荷を軽減できる。折り開き線146は、折り筋、エンボス、ミシン目等として形成できる。
図63は、他のシート401の形態を示す図である。シート401は、図2等と同様に、矩形のシート401の図中左上部分を拡大して示す。
シート401には、隣接する一対の辺に対してそれぞれ45°をなす折り線120が既に設定されているが、まだ折り曲げられてはいない。よって、シート401には、折り線120を境界として、シート401の角側に位置する第一領域411と、シート401の残る領域を占める第二領域412とが形成されている。
シート401の第一領域411には、折り線120から始まり、第一領域411内で折れ曲がった後、再び折り線120で終わる第一切り込み421が形成されている。第一切り込み421は、第二領域412側から第一領域411内に向かって突出した形状を有する第一突出領域431を、第一領域411内に形成する。
同様に、シート401の第二領域412には、折り線120から始まり、第二領域412内で折れ曲がった後、再び折り線120で終わる第二切り込み422が形成される。第二切り込み422は、第一領域411側から第二領域412内に向かって突出した形状を有する第二突出領域432を、第二領域412内に形成する。
更に、シート401は、曲線部114を含む他の切り込みを第一突出領域431内に有する。曲線部114は、折り線120と平行な方向に突出する凸部132と、凸部132に対して相補的な形状を有する凹部134とを形成する。また、シート401は、折り線120に対して略直角をなす直線部112を含む更に他の切り込みを、第二突出領域432内に有する。シート401における曲線部114および直線部112は、折り線120に対して略対称な位置に配される。
なお、図63は、複数のシート401が既に積層されている積層シート100を示している。よって、図示の状態は、図9に示したフローチャートにおいて、ステップS101およびステップS102が実行された直後の状態に相当する。
ただし、既に説明した通り、ステップS101およびステップS102は、順序が逆であってもよい。即ち、まず、シート401に第一切り込み421および第二切り込み422を形成し(ステップS101)、次いで、第一切り込み421および第二切り込み422が形成された複数のシート401を積み重ねてもよい(ステップS102)。
また、先に複数のシート401を積み重ね(ステップS102)、その後に、積層シート100に対して第一切り込み421および第二切り込み422を一括して形成してもよい(ステップS101)。更に、いずれの順序でシート401を綴じ合わせる場合も、上記ステップS101においては、シート401の第一切り込み421および第二切り込み422の形状に合わせた形状の切断パンチ226を取り付けることにより、図29に示した工具200を好適に使用できる。
図64は、シート401を綴じる過程を示す図であり、図9に示したステップS103の直後の状態に相当する。同図は、図63と同じく、積層シート100を正面から見た様子を示し、図示の状態では、折り線120に沿って積層シート100が折り曲げられている。
シート401を綴じる場合、第一切り込み421および第二切り込み422の始点または終点よりもシート401の辺に近い部分では、折り線120において折り山122が形成される。しかしながら、第一突出領域431は、シート401の第二領域412に対して折り曲げられない。また、第二突出領域432は、シート401の第一領域411に対して折り曲げられない。
このため、折り線120の略中央に位置する、第一突出領域431および第二突出領域432がつながった部分では、折り線120が谷折り線121となり、シート401は、反対向きに折り曲げられる。これにより、第一突出領域431および第二突出領域432は、折り山122から外側に突出した状態で互いに重ね合わされる。
上記のように折り曲げられた積層シート100の第一突出領域431および第二突出領域432においては、図中に点線の円Bで囲って示すように、切り込みの直線部112および曲線部114の両端が互いに同じ位置を占めて交差する。また、円Bにより示される直線部112および曲線部114の交点は、いずれも折り山122およびその延長線から離れた位置にある。
図65は、シート401を綴じた状態を示す図であり、図9に示したステップ104の直後の状態に相当する。同図は、図64と同じく、積層シート100を正面から見た様子を示す。
図示の状態において、曲線部114により形成された凸部132は、直線部112に差し込まれている。これにより、第一突出領域431の切り込みの曲線部114と、第二突出領域432の切り込みの直線部112とが、折り線120から離れた位置で交差し、凸部132の先端は第二突出領域432の図中裏面側から表側に現れる。
ここで、曲線部114により形成された凸部132の側端は、直線部112の両端に当接する。よって、凸部132が直線部112に差し込まれた状態においては、直線部112の延在方向、即ち、折り線120に対して直交する方向について、積層シート100におけるシート401が相互に拘束される。
また、図中の点線の円Dで囲って示す、第一突出領域431および第二突出領域432の外側の付け根は、各シート401において、他のシート401の第一切り込み421または第二切り込み422の内側に当接する。これにより、シート401は、折り山122の延在方向に相互に位置決めされる。
上記のようにして相互に位置決めされたシート401により、積層シート100は綴じ合わされる。綴じ合わされた積層シート100においては、積層シート100に対して折り線120の外側で凸部132および直線部112が係合してシート401を綴じ合わせている。このため、綴じ合わされた積層シート100が開かれた場合も、個々のシート401を開く力が、折り山122の外側に位置する凸部132および直線部112に作用しない。よって、綴じ合わされたシート401が開かれても、綴じ合わせが解け難い。
なお、第一突出領域431および第二突出領域432の上記のような機能に鑑みて、これら突出領域を形成する第一切り込み421および第二切り込み422の形状は、折り線120に接する両端において、折り線120に対して平行または平行に近い法線を有することが好ましい。これにより、折り線120と平行な方向について、シート401相互の位置決めが確実になる。
また、図示の例では、第一突出領域431および第二突出領域432は、それぞれ、概ね平行四辺形の形状を有する。しかしながら、互いに係合する第一突出領域431および第二突出領域432に対して、各シート401の第二領域412側から力が掛かることを考慮すると、第一突出領域431および第二突出領域の形状を、折り線120に近づくほど折り線120と平行な方向の幅が広くなる形状として、第一突出領域431および第二突出領域432の強度をより高くすることが好ましい。
更に、上記の例では、シート401における第一領域411を、第二領域412の図中背面側に折り曲げた。しかしながら、第一領域411を、第二領域412の図中前面側に折り曲げても、凸部132を図中背面側に差し込むことにより、シート401を綴じ合わせることができる。
また更に、上記の例では、第一突出領域431および第二突出領域432が、綴じ合わされたシート401の角部から突出した状態にしているが、凸部132を直線部112に差し込んだ後に、折り山122が谷になるように、第一領域411および第二領域412を改めて折り返し、第一突出領域431および第二突出領域432を、第一領域411および第二領域412の間に挟み込んでもよい。これにより、第一突出領域431および第二突出領域432を、目立たなくすることができる。
また更に、シート401は、予め第一切り込み421および第二切り込み422を形成したものをユーザに提供し、ユーザがステップS103およびステップS104を実行すれば、道具を用いることなく綴じることができる製品としてもよい。この場合、複数のシート401を、仮綴じまたは袋詰めにして流通させてもよい。
図66は、また他のシート402の形態を示す図である。シート402は、図2と同様に、シート402の図中左上隅部を拡大して示す。
矩形のシート402には、隣接する一対の辺に対してそれぞれ45°をなす折り線120が既に設定されているが、まだ折り曲げられていない。シート402には、折り線120を境界として、シート402の角側に位置する第一領域411と、シート402の残りの領域を占める第二領域412とが形成される。
シート402の第一領域411には、折り線120を始点および終点として第一領域411内で屈曲する形状を有する第一切り込み421が形成されている。第一切り込み421は、第二領域412側から第一領域411内に向かって突出する形状を有する第一突出領域431を、第一領域411内に形成する。
同様に、シート402の第二領域412には、折り線120を始点および終点として、第二領域412内で折れ曲がる形状を有する第二切り込み422が配される。第二切り込み422は、第一領域411側から第二領域412内に向かって突出した形状を有する第二突出領域432を、第二領域412内に形成する。
ここで、シート402の第一突出領域431は、図中左端において、折り線120と略平行な法線を有する形状をなす。また、第一突出領域431は、図中右側において、凹部134をなす形状を有する。更に、第一突出領域431および第二突出領域432は、折り線120上の一点について互いに対称な形状を有し、第二突出領域432の凹部134は、第一突出領域431の凹部134に対して折り線120について対称な位置にある。
なお、図66は、複数のシート402が既に積層されている積層シート100を示している。よって、図示の状態は、図9に示したフローチャートにおいて、ステップS101およびステップS102が実行された直後の状態に相当する。
ただし、シート402を綴じる場合も、ステップS101およびステップS102は、順序が逆であってもよい。即ち、まず、シート402に第一切り込み421および第二切り込み422を形成し(ステップS101)、第一切り込み421および第二切り込み422が形成された複数のシート402を積み重ねてもよい(ステップS102)。
また、先に複数のシート402を積み重ね(ステップS102)、その後に、積層シート100に対して第一切り込み421および第二切り込み422を一括して形成してもよい(ステップS101)。更に、いずれの順序でシート402を綴じ合わせる場合も、上記ステップS101においては、シート402の第一切り込み421および第二切り込み422の形状に合わせた形状の切断パンチ226を取り付けることにより、図29に示した工具200を好適に使用できる。
図67は、シート402を綴じる過程を示す図であり、図9に示したステップS103の直後の状態に相当する。同図は、図66と同じく、積層シート100を正面から見た様子を示し、図示の状態では、折り線120に沿って積層シート100が折り曲げられている。
シート402を綴じる場合、第一切り込み421および第二切り込み422の始点または終点よりもシート401の辺に近い部分で、折り線120は折り山122となる。一方、第一突出領域431はシート401の第二領域412に対して、第二突出領域432はシート402の第一領域411に対して、それぞれ折り曲げられない。
このため、折り線120の略中央に位置する、第一突出領域431および第二突出領域432がつながる部分では、折り線120が谷折り線121となり、シート402は、反対向きに折り曲げられる。これにより、第一突出領域431および第二突出領域432は、折り山122から外側に突出した状態で互いに重ね合わされる。
上記のように折り曲げられた積層シート100の第一突出領域431および第二突出領域432においては、図中に点線の円Bで囲って示すように、第一切り込み421および第二切り込み422の一部が同じ位置を占める。また、円Bにより示される第一切り込み421および第二切り込み422における凹部134の端部は、いずれも折り山122およびその延長線から離れた位置にある。
図68は、シート402を綴じる過程を示す図であり、図9に示したステップ104の直後の状態に相当する。同図は、積層シート100を正面から見た様子を示す。
図示の状態において、第一突出領域431の先端部が、第二突出領域432の図中表側に出ている。これにより、第一突出領域431を形成する第一切り込み421と、第二突出領域432を形成する第二切り込み422とが折り線120から離れた位置で交差して、第一突出領域431および第二突出領域432は、その凹部134において相互に係合する。これにより、折り線120に対して直交する方向については、積層シート100におけるシート402が相互に拘束される。
また、図中の点線の円Dで囲って示す、第一突出領域431および第二突出領域432の外側の付け根は、各シート402において、他のシート402の第一切り込み421または第二切り込み422の内側に当接して、積層シート100におけるシート402を相互に位置決めする。
上記のようにして相互に位置決めされたシート402により、積層シート100は綴じ合わされる。綴じ合わされた積層シート100においては、積層シート100に対して折り線120の外側で凹部134が係合しあってシート402が綴じ合わされている。このため、綴じ合わされた積層シート100が開かれた場合も、個々のシート402を開く力が、折り山122の外側に位置する凹部134に作用しない。よって、綴じ合わされたシート402が開かれた場合も、綴じ合わせが解け難い。
なお、第一突出領域431および第二突出領域432の上記のような機能に鑑みて、これら突出領域を形成する第一切り込み421および第二切り込み422の形状は、折り線120に接する位置において、折り線120に対して平行か、平行に近い法線を有することが好ましい。これにより、折り線120と平行な方向について、シート402相互の位置決めが確実になる。また、第一突出領域431および第二突出領域432は、それぞれ、折り線120に近づくほど、折り線120と平行な方向の幅が広くなる形状とすることが好ましい。
更に、上記の例では、シート402における第一領域411を、第二領域412の図中背面側に折り曲げた。しかしながら、第一領域411を、第二領域412の図中前面側に折り曲げても、第一突出領域431および第二突出領域432における凹部134から先の部分をひねって表裏を入れ換えることにより、シート402を綴じ合わせることができる。
また更に、上記の例では、第一突出領域431および第二突出領域432が、綴じ合わされたシート402の角部から突出した状態にしているが、第一突出領域431および第二突出領域432を係合させた後に、折り山122が谷になるように、第一領域411および第二領域412を改めて折り返し、第一突出領域431および第二突出領域432を、第一領域411および第二領域412の間に挟み込んでもよい。これにより、第一突出領域431および第二突出領域432を目立たなくすることができる。
また更に、シート402は、予め第一切り込み421および第二切り込み422を形成したものをユーザに提供し、ユーザがステップS103およびステップS104を実行すれば、道具を用いることなく綴じることができる製品としてもよい。この場合、複数のシート402を、仮綴じまたは袋詰めにして流通させてもよい。
図69は、また他のシート403の形態を示す図である。シート403は横長の矩形形状を有し、図中でシート403を幅方向に二等分する位置に折り線120を有する。これにより、シート403には、互いに等しい面積の第一領域411および第二領域412が形成される。
また、シート403は、折り線120に沿った2箇所の異なる位置に、図66から図68までに示したシート402のものと同じ形状の第一切り込み421および第二切り込み422をそれぞれ有する。
上記のようなシート403を複数積み重ねて、積層シート100が形成される。これにより、図9に示した手順のうち、ステップS101およびステップS102が完了する。
ただし、シート403を綴じる場合も、ステップS101およびステップS102は、順序が逆であってもよい。即ち、まず、シート403に第一切り込み421および第二切り込み422を形成し(ステップS101)、第一切り込み421および第二切り込み422が形成された複数のシート403を積み重ねてもよい(ステップS102)。
また、先に複数のシート403を積み重ね(ステップS102)、その後に、積層シート100に対して第一切り込み421および第二切り込み422を一括して形成してもよい(ステップS101)。更に、いずれの順序でシート403を綴じ合わせる場合も、上記ステップS101においては、シート403の第一切り込み421および第二切り込み422の形状に合わせた形状の切断パンチ226を取り付けることにより、図29に示した工具200を好適に使用できる。
図70は、シート403を折り線120に沿って折り曲げた状態を、図69と同じ視点から示す図である。図示の状態は、図9に示したステップS103の直後の状態に相当する。
シート403を折り曲げる場合も、シート402の場合と同様に、第一突出領域431はシート403の第二領域412に対して、第二突出領域432はシート403の第一領域411に対して、それぞれ折り曲げられない。このため、第一突出領域431および第二突出領域432がつながる部分では、折り線120が谷折り線121となり、シート402は、反対向きに折り曲げられる。
よって、第一突出領域431および第二突出領域432は、折り山122から外側に突出した状態で互いに重ね合わされる。こうして、図9に示した手順のうち、ステップS103が完了する。
図71は、図70に示した状態から、更に、第一突出領域431および第二突出領域432の先端をひねって、それらを係合させた状態を示す。これにより、折り線120に対して直交する方向については、積層シート100におけるシート403が相互に拘束される。
また、図中の点線の円Dで囲って示す、第一突出領域431および第二突出領域432の外側の付け根は、各シート403において、他のシート403の第一切り込み421または第二切り込み422の内側に当接して、積層シート100におけるシート403を相互に位置決めする。
上記のようにして相互に位置決めされたシート403により、積層シート100は、中綴じの小冊子様になる。綴じ合わされた積層シート100においては、積層シート100に対して折り線120の外側で第一突出領域431および第二突出領域432が係合しあってシート403が綴じ合わされる。このため、綴じ合わされた積層シート100が開かれた場合も、個々のシート402を開く力が、折り山122の外側に位置する凹部134に作用しない。よって、綴じ合わされたシート402が開かれた場合も、綴じ合わせが解け難い。
なお、上記の例では、シート403における第一領域411を、第二領域412の図中背面側に折り曲げた。しかしながら、第一領域411を、第二領域412の図中前面側に折り曲げても、シート403を綴じ合わせることができる。
また、上記の例では、第一突出領域431および第二突出領域432が、綴じ合わされたシート403の折り山122から突出する。しかしながら、第一突出領域431および第二突出領域432を係合させた後に、折り山122が谷になるように、第一領域411および第二領域412を改めて折り返してもよい。
これにより、第一突出領域431および第二突出領域432を、第一領域411および第二領域412の間に挟み込んでもよい。これにより、第一突出領域431および第二突出領域432を、目立たなくすることができる。また、シート403により形成された小冊子を定型の封筒等に収容できる。
更に、上記の形態において、シート403に形成する第一突出領域431および第二突出領域432の組の数をより多くしてもよい。また、第一突出領域431および第二突出領域432の間隔、大きさ等も変更してよい。更に、第一突出領域431および第二突出領域432と、他の形状の切り込み110、111とを組み合わせてもよい。
また更に、シート403は、予め第一切り込み421および第二切り込み422を形成したものをユーザに提供し、ユーザがステップS103およびステップS104を実行すれば、道具を用いることなく綴じることができる製品としてもよい。この場合、複数のシート402を、仮綴じまたは袋詰めにして流通させてもよい。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。