実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。同一の部品および相当部品には同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
[綴じ装置100]
図1は、綴じ装置100における正面側および上面側の構成を示している斜視図である。図2は、綴じ装置100における背面側および上面側の構成を示している斜視図である。図3は、綴じ装置100における正面側および底面側の構成を示している斜視図である。図4は、綴じ装置100における正面側の構成を示している斜視図である。
図5は、図1中のV−V線に沿った断面斜視図であり、図6は、図5に対応する断面図である。図7は、図1中のVII−VII線に沿った断面斜視図であり、図8は、図7に対応する断面図である。図9〜図11は、それぞれ、綴じ装置100の分解した状態を示す第1〜第3斜視図である。
図1〜図8に示すように、綴じ装置100は、下台10、昇降機構20、折曲手段30、抜き刃40、アンビル50、スライダー62,63、付勢ばね65などを備える。以下これらの構成の特徴について順に説明する。
[下台10]
図9を主として参照して、下台10は、全体として平板状に形成され、長手方向(図中Y方向)に沿って延在している。下台10は、ガイド壁11P,11Q,11R,11S、凹溝12A,12D,13A,13D、立壁12B,13B、受け面12C,13C、および貫通孔11A,11B,12H,13Hを含んでいる。
ガイド壁11P,11Q,11R,11Sは、上方(Z方向)に向かって突出する形状を有し、下台10の長手方向(Y方向)に沿って平行に延在している。ガイド壁11P,11Sは、下台10の短手方向(X方向)における両端に位置し、ガイド壁11Q,11Rは、ガイド壁11P,11Sの間に位置する。
ガイド壁11P,11Qの間に凹溝12A,12Dが形成され、ガイド壁11R,11Sの間に凹溝13A,13Dが形成される。詳細は後述するが、折曲手段30を構成するプッシャー32,33は、それぞれ、凹溝12A,13Aの内側で下台10の長手方向に沿って移動する(図1、図2)。スライダー62,63は、それぞれ、凹溝12D,13Dの内側で下台10の長手方向に沿って移動する(図1)。
図9に示すように、立壁12Bは、ガイド壁11Pの略中央に位置し、ガイド壁11Pから上方(Z方向)に向かって突出している。立壁13Bは、ガイド壁11Sの略中央に位置し、ガイド壁11Sから上方に向かって突出している。立壁12B,13Bの側面は受け面12C,13Cをそれぞれ形成している。
貫通孔11Aは、ガイド壁11Q,11Rの間の位置に形成される。詳細は後述するが昇降機構20に含まれるカム板22は、貫通孔11Aの中を出入りするようにして、上下方向に移動する(図5,図6)。具体的な構成は図示していないが、昇降機構20(上台21やカム板22)が上下方向に移動したとしても、昇降機構20(上台21やカム板22)と下台10との長手方向(Y方向)における相対位置は変わらない。
貫通孔11Bは、下台10の長手方向(Y方向)における略中央の位置に形成される。貫通孔11Bは、幅広部11Cおよび幅狭部11Dを含む。幅広部11Cおよび幅狭部11Dは、下台10の短手方向(X方向)に沿って延びる形状を有する。
詳細は後述するが、折曲手段30に含まれる折りナイフ31は、昇降機構20に支持されており、昇降機構20が上下方向に移動することに伴って、幅広部11Cの中を出入りするようにして上下方向(Z方向)に移動する。抜き刃40も、昇降機構20に支持されており、昇降機構20が上下方向に移動することに伴って、幅狭部11Dの中を出入りするようにして上下方向(Z方向)に移動する(図5〜図8)。
昇降機構20(上台21やカム板22)と下台10との長手方向における相対位置は変わらないため、折りナイフ31や抜き刃40が上下方向に移動したとしても、折りナイフ31および抜き刃40が下台10に接触することはない。
貫通孔12Hは、ガイド壁11P,11Qの間の位置に形成され、下台10のうちの凹溝12Dの下方に位置する部分を貫通している(図3)。貫通孔13Hは、ガイド壁11R,11Sの間の位置に形成されており、下台10のうちの凹溝13Dの下方に位置する部分を貫通している。詳細は後述するが、スライダー62,63に形成されている垂下部62B,63Bは、それぞれ、貫通孔12H,13Hの内側で長手方向(Y方向)に沿って移動する(図7,図8)。
[昇降機構20]
図10を主として参照して、昇降機構20は、上台21、カム板22、カム溝22H、固定部24を含む。上台21は、板状の形状を有し、カム板22および固定部24は、上台21の下面に設けられる。上台21は、図示しない支持機構によって支持され、外部からの駆動力を受けた際に上下方向(Z方向)に沿って略直線状に移動する。昇降機構20が上下方向に移動した際、上台21と下台10との間の距離は変化する(増減する)が、昇降機構20(上台21)と下台10との長手方向(Y方向)における相対位置は変わらない。
ピン34は、カム溝22Hの中に挿通される(図10の矢印AR22、図5〜図8)。カム板22およびカム溝22Hは、ピン34と協働してカム機構を構成する。昇降機構20が下台10に接近する方向に移動した場合(図14(B)の白色矢印)、ピン34は、カム溝22Hの内周面に沿って貫通孔11Bに接近する方向に移動する(図14(B)の黒色矢印)。ピン34に連結されているプッシャー32,33も同方向に移動する。
これとは逆に、昇降機構20が下台10から離れる方向に移動した場合(図19(B)の白色矢印)、ピン34は、カム溝22Hの内周面に沿って貫通孔11Bから離れる方向に移動する(図19(B)の黒色矢印)。ピン34に連結されているプッシャー32,33も同方向に移動する。
図10に示すように、固定部24は、直方体状の形状を有する。図11を参照して詳細は後述するが、折りナイフ31は、図示しないビスを用いて固定部24(図10)の側面に固定される。好適な実施態様として、折りナイフ31と抜き刃40との間には、押圧部材35(図11)が配置される。押圧部材35には、開口部35H(図11)が設けられており、開口部35Hの内側には付勢ばね36が配置される。押圧部材35は、付勢ばね36を介して上台21の固定部24の下面に取り付けられる。詳細は後述するが、綴じ処理が行なわれる際、押圧部材35がシート束の角部を抑えることにより、シート束の角部に位置ずれが発生することは抑制される。
図9に示すように、抜き刃40も固定部24に固定される。抜き刃40(第2刃部42および第3刃部43)には、貫通孔42H,43H(図11)が設けられる。貫通孔42H,43Hにボルト26(図5,図9)を挿通し、固定部24に形成されたネジ穴にボルト26を螺合させることで、抜き刃40は固定部24に固定される。
[折曲手段30]
図9〜図11を主として参照して、折曲手段30は、折りナイフ31(押圧部)、プッシャー32,33(折返部)を含む。
(折りナイフ31(押圧部))
折りナイフ31は、折曲手段30の「押圧部」として機能する。折りナイフ31(図9,図11)は、板状部31A、第1突出部31B、第2突出部31Cを有する。折りナイフ31は、下台10の短手方向(X方向)に対して平行となるように配置される。第1突出部31Bは、板状部31Aの先端(下端)から一方の側方(X方向)に向かって突出するように設けられる。第2突出部31Cは、板状部31Aの先端(下端)から他方の側方(X方向の反対向き)に向かって突出するように設けられる。
折りナイフ31は、昇降機構20の固定部24(図10)に固定される。折りナイフ31は、上下方向(Z方向)において貫通孔11B(幅広部11C)の上方に配置される(図9中の矢印AR30)。上台21が外部からの駆動力を受けた際、上台21は折りナイフ31とともに上下方向(Z方向)に沿って略直線状に移動し、折りナイフ31は、貫通孔11B(幅広部11C)の中を出入りする(図5〜図8参照)。
(プッシャー32,33)
プッシャー32,33は、折曲手段30の「折返部」として機能する。図9,図11に示すように、プッシャー32は、平板部32A(第1折返片)および起立部32Bを含み、平板部32Aの長手方向の端部は押し面32Tを形成している。プッシャー33(第2折返片)は、平板部33Aおよび起立部33Bを含み、平板部33Aの長手方向の端部は押し面33Tを形成している。プッシャー32の平板部32Aおよびプッシャー33の平板部33Aは、起立部32B,33Bおよびピン34を介して連結される。
プッシャー32,33は、それぞれ、下台10に形成された凹溝12A,13Aの内側に配置される(図9に示す矢印AR32,AR33)。昇降機構20が下台10に接近する方向に移動した場合(図14(B)の白色矢印)、ピン34は、カム溝22Hの内周面に沿って貫通孔11Bに接近する方向に移動する(図14(B)の黒色矢印)。ピン34に連結されているプッシャー32,33も同方向に移動する。昇降機構20が下台10から離れる方向に移動した場合(図19(B)の白色矢印)、ピン34は、カム溝22Hの内周面に沿って貫通孔11Bから離れる方向に移動する(図19(B)の黒色矢印)。ピン34に連結されているプッシャー32,33も同方向に移動する。
[抜き刃40]
抜き刃40(図9〜図11)は、第1刃部41、第2刃部42、第3刃部43、保持穴44を有する。第1刃部41、第2刃部42、第3刃部43は、いずれも平板状の形状を有する。
第1刃部41は、下台10の短手方向(X方向)に対して平行となるように配置される。第2刃部42は、第1刃部41の一方の側部から略直角に屈曲するように形成され、第3刃部43は、第1刃部41の他方の側部から略直角に屈曲するように形成される。第2刃部42と第3刃部43とは、相互に対向している。抜き刃40を平面視した場合(図13等)、抜き刃40は「コ」字形状(略C字形状)を呈する。保持穴44は、第1刃部41を貫通するように形成され、正面視で略矩形状の開口形状を有している(図4参照)。
抜き刃40は、昇降機構20の固定部24(図10)に固定される。抜き刃40は、上下方向(Z方向)において、貫通孔11B(幅狭部11D)の上方に配置される(図9中の矢印AR30)。上台21が外部からの駆動力を受けた際、上台21は抜き刃40とともに上下方向(Z方向)に沿って略直線状に移動し、抜き刃40は、貫通孔11B(幅狭部11D)の中を出入りする(図5〜図8)。
[アンビル50(載置部)]
アンビル50(図9〜図11)は、板状部51、切り欠き51C、支持端面52,53、ガイド片54,55、垂下片56,57を有する。板状部51は、平坦な表面形状を有し、シート束が載置される「載置部」として機能する。
板状部51は、下台10のガイド壁11P,11Sに跨るように配置される(図9の矢印AR50)。板状部51のY方向(下台10の長手方向)の先端に位置する一対の端面は、支持端面52,53をそれぞれ形成する。支持端面52,53は、X方向(下台10の短手方向)において間隔を空けて離れており、切り欠き51Cは、支持端面52,53の間の位置に形成される。
後述する付勢ばね65(図12(B),図12(C))の付勢力は、連結ピン64およびスライダー62,63を介してアンビル50に伝達される。付勢ばね65が自然長を有している時(あるいは付勢ばね65が配置されている位置で付勢ばね65が最長の長さを形成している時)、アンビル50の支持端面52,53のY方向における位置は、貫通孔11Bの幅広部11Cと幅狭部11Dとの間の境界部分のY方向における位置に略一致する(図12(B))。
この状態で、板状部51の切り欠き51Cの内周縁の形状を平面視した場合、当該形状は、貫通孔11Bの幅狭部11Dの形状に略一致する(図12(A))。抜き刃40が上下方向(Z方向)に沿って略直線状に移動したとすると、抜き刃40は、切り欠き51Cの内側を通過するとともに、貫通孔11B(幅狭部11D)の中を出入りする。抜き刃40がアンビル50の板状部51に接触することはない。
図10,図11を再び参照して、アンビル50のガイド片54,55は、板状部51のX方向(下台10の短手方向)における両端から垂れ下がるように設けられている。ガイド片54,55は、下台10のガイド壁11P,11Sの外側面に沿って下台10の長手方向にそれぞれ移動する。ガイド片54,55のガイド機能によって、アンビル50は全体として、アンビル50の向きを変えることなく下台10の長手方向に沿って安定して移動することができる。アンビル50の垂下片56,57は、板状部51のY方向(下台10の長手方向)の後端に位置し、当該後端から垂れ下がるように設けられる。
アンビル50の垂下片56は、スライダー62(平板部62A)に形成された開口部62Cの中に、付勢ばね62Sとともに配置される(図10中の矢印AR56)。付勢ばね62Sとスライダー62のうちの開口部62Cを形成している内壁面との間に、アンビル50の垂下片56が配置される。
アンビル50の垂下片57は、スライダー63(平板部63A)に形成された開口部63Cの中に、付勢ばね63Sとともに配置される(図10中の矢印AR57)。付勢ばね63Sとスライダー63のうちの開口部63Cを形成している内壁面との間に、アンビル50の垂下片57が配置される。
[スライダー62,63、付勢ばね65]
図9〜図11に示すように、スライダー62は、平板部62A、垂下部62B、開口部62C、付勢ばね62S、対向面62Tを有する。平板部62Aの長手方向の端部は、対向面62Tを形成する。同様に、スライダー63は、平板部63A、垂下部63B、開口部63C、付勢ばね63S、対向面63Tを有する。平板部63Aの長手方向の端部は、対向面63Tを形成する。
スライダー62,63は、下台10に形成された凹溝12D,13Dの内側にそれぞれ配置される(図9に示す矢印AR62,AR63)。スライダー62の垂下部62Bは、下台10の貫通孔12Hの内側に配置され、貫通孔12Hの内側で長手方向(Y方向)に沿って移動する(図7,図8)。同様に、スライダー63の垂下部63Bは、下台10の貫通孔13Hの内側に配置され、貫通孔13Hの内側で長手方向(Y方向)に沿って移動する。スライダー62の平板部62Aおよびスライダー63の平板部63Aは、垂下部62B,63Bおよび連結ピン64を介して連結される。
下台10の下面には、凸部10T(図3,図5,図6)が設けられる。付勢ばね65は、凸部10Tと連結ピン64との間に配置される。付勢ばね65の付勢力は、連結ピン64を介してスライダー62,63に伝達される。付勢ばね65の付勢力は、連結ピン64およびスライダー62,63(付勢ばね62S,63S)を介して、アンビル50にも伝達される。
(綴じ方法)
以下、図12(A)〜図19(B)を参照して、綴じ装置100による綴じ方法について説明する。複数枚のシートが束ねられることで、シート束70(図13)が形成される。
概括すると、折りナイフ31(押圧部)がシート束70の角部70Cを押圧することによってシート束70の角部70Cを曲げ変形させ、折りナイフ31によって曲げ変形されたシート束70の角部70Cをプッシャー32,33(折返部)が押圧することによって、シート束70の角部70Cをシート束70の中央側に向かって折り返すようにさらに曲げ変形させることができる(折曲工程)。
一方、抜き刃40は、シート束70の第1面71の側から第2面72の側に向かってシート束70を貫通することによりシート束70にスリットS(図15)を形成し、折曲手段30により折り返されたシート束70の角部70Cの先端(最端部70T)を抜き刃40の保持穴44に保持させて第2面72の側から第1面71の側に引き抜くことによって、角部70Cの先端(最端部70T)をスリットSに挿通させることができる。以下、より具体的に説明する。
(第1段階(初期段階))
図12(A)は、綴じ装置100によってシート束70が綴じられる動作の第1段階を示す平面図(断面図)である。図12(B)は、図12(A)中のXII(B)−XII(B)線に沿った矢視断面図である。図12(C)は、図12(A)中のXII(C)−XII(C)線に沿った矢視断面図である。図示上の便宜のため、図12(A)においては、アンビル50が点線を使用して図示されており、シート束70が二点鎖線を使用して図示されている。後述する図14(A)などにおいても同様である。
図12(A)〜図12(C)に示すように、綴じ装置100によってシート束70が綴じられる動作の第1段階(初期段階)においては、昇降機構20の上台21は、下台10から十分に離れており、ピン34はカム溝22Hの端部に位置している。付勢ばね65は自然長を有しており(あるいは付勢ばね65が連結ピン64と凸部10Tとの間の位置で最長の長さを形成している時)、スライダー62,63の対向面62T,63TのY方向における位置は、貫通孔11Bの幅広部11Cと幅狭部11Dとの間の境界部分のY方向における位置に略一致している。Y方向(下台10の長手方向)において、スライダー62,63の対向面62T,63Tとプッシャー32,33の押し面32T,33Tとは、間隔を空けて対向している。
スライダー62,63の内側に配置されている付勢ばね62S,63Sも自然長を有しており(あるいは開口部62C,63Cの内側で最長の長さを形成しており)、アンビル50の支持端面52,53のY方向における位置も、貫通孔11Bの幅広部11Cと幅狭部11Dとの間の境界部分のY方向における位置に略一致している(図12(B))。
シート束70は、第1面71および第2面72を有する。第1段階(初期段階)においては、アンビル50の板状部51と昇降機構20の上台21とは十分な開口高さ(間口)を空けて互いに離れている。第1面71が抜き刃40および折りナイフ31に対向し、第2面72がアンビル50(板状部51)に接触するように、アンビル50の板状部51の上にシート束70が載置される。
図13を参照して、シート束70は、第1端縁70Eおよび第2端縁70Fを有する。第1端縁70Eおよび第2端縁70Fは、互いに直交する関係を有し、第1端縁70Eと第2端縁70Fとの間に、シート束70の角部70Cが形成される。第1端縁70Eと第2端縁70Fとが交差している位置には、最端部70Tが形成される。
角部70Cを規定している第1端縁70Eおよび第2端縁70Fが延在している方向を、それぞれ「第1方向」および「第2方向」と定義したとする。一方で、折曲手段30(折りナイフ31、プッシャー32,33)によって角部70Cに曲げ変形が行なわれる時に配置されるシート束70の位置を「特定の位置P」とする。
図13に示すシート束70は、第1端縁70Eが受け面12Cに沿うように配置され、第2端縁70Fが受け面13Cに沿うように配置されている。第1端縁70Eと受け面12Cとは、接触しているか、または若干の隙間を空けて相互に対向している。第2端縁70Fと受け面13Cとは、接触しているか、または若干の隙間を空けて相互に対向している。シート束70の最端部70Tは、折りナイフ31および抜き刃40の位置から見て、ピン34に近い側に位置している。このような状態を形成しているシート束70の位置を、特定の位置Pと定義することができる。
シート束70は、上記の第1方向(第1端縁70Eの延在方向)および/または第2方向(第2端縁70Fの延在方向)に沿って直線状に移動されて、特定の位置Pに配置されることが可能である。図1,図2に示すように、第1段階(初期段階)においては、昇降機構20の上台21とアンビル50の板状部51との間に十分な開口(間口)が設けられており、上台21とアンビル50のガイド片54,55との間や、上台21と立壁12B,13B(受け面12C,13C)との間にも、特段の部材は配置されていない。
図13を再び参照して、第1段階(初期段階)においては、下台10のガイド壁11Pと上台21(図示せず)との間に間口R1(空間)が確保されており、下台10のガイド壁11Sと上台21(図示せず)との間に間口R2(空間)が確保されている。シート束70は、第1方向(たとえば矢印DR1方向)および/または第2方向(たとえば矢印DR3方向)に沿って直線状に移動され、特定の位置Pに配置されることが可能である。
綴じ処理が完了した後は、シート束70は、第1方向(矢印DR1)に沿って直線状に移動され、間口R2を通過して特定の位置Pから離れることが可能である。シート束70は、上記の第1方向の反対方向(矢印DR2)に沿って直線状に移動され、間口R1,R2を通過しないで特定の位置Pから離れることも可能である。あるいは、シート束70は、上記の第2方向(矢印DR3)に沿って直線状に移動され、間口R1を通過して特定の位置Pから離れることも可能である。シート束70は、上記の第2方向の反対方向(矢印DR4)に沿って直線状に移動され、間口R1,R2を通過しないで特定の位置Pから離れることも可能である。矢印DR1,DR2,DR3,DR4のいずれか一つの方向を、たとえば画像形成装置におけるシート搬送方向と一致させるようにしてもよい。当該構成によれば、シートやシート束を搬入するためのハンドリングによる手間が軽減される、あるいはなくなるため、後処理装置としての設計自由度や付加価値を向上させることが可能となる。
(第2段階)
図14(A)は、綴じ装置100によってシート束70が綴じられる動作の第2段階を示す平面図(断面図)である。図14(B)は、図14(A)中のXIV(B)−XIV(B)線に沿った矢視断面図である。図14(C)は、図14(A)中のXIV(C)−XIV(C)線に沿った矢視断面図である。図14(D)は、図14(C)中のXIV(D)−XIV(D)線に沿った矢視断面図である。
図14(A)〜図14(D)に示すように、昇降機構20の上台21は、駆動力を受けることによって下台10に接近する方向に移動する(白色矢印)。折りナイフ31および抜き刃40も同方向に移動する(白色矢印)。ピン34は、カム溝22Hの内周面に沿って貫通孔11Bに接近する方向に移動する(黒色矢印)。ピン34に連結されているプッシャー32,33も同方向に移動する(黒色矢印)。この時点(第2段階)では、プッシャー32,33はスライダー62,63から離れており、スライダー62,63は未だ外力を受けていないため移動せず、アンビル50の位置も変わらない。
折りナイフ31(押圧部)は、シート束70の角部70Cを押圧することにより、シート束70の角部70Cを曲げ変形させる(図15)。シート束70の角部70Cは、アンビル50の支持端面52,53(図14(A))に支持されている部分を変形の起点として、約90°折り曲げられる。折りナイフ31の先端(下端)は、プッシャー32,33(押し面32T,33T)とスライダー62,63(対向面62T,63T)との間の空間を通過し、貫通孔11Bの幅広部11Cの中に入り込む。
図14(D)を参照して、折りナイフ31は、第1突出部31Bの外側端と第2突出部31Cの外側端との間の幅W1が、シート束70の折曲稜線70R(図15)の幅W2よりも大きくなるように構成される。折曲稜線70Rとは、シート束70の角部70Cが折り曲げられることによって、シート束70の第1面71上に現れる折り目(稜線)のことである。このような折りナイフ31は、シート束70の角部70Cのうちの曲げ変形される部分(曲げ変形が予定されている部分)の全幅に押圧力を付与することができ、シート束70の角部70Cを確実に折り曲げることができる。
折りナイフ31は、板状部31Aの幅W3が、第1突出部31Bの外側端と第2突出部31Cの外側端との間の幅W1よりも小さくなるように構成される。折りナイフ31は、全体として略T字形状を呈している。第1突出部31Bの上方であって板状部31Aの一方の端部31A1の側方の位置には空間SP1が形成され、第2突出部31Cの上方であって板状部31Aの他方の端部31A2の側方の位置には空間SP2が形成される。
折りナイフ31の外形形状は、折りナイフ31の第1突出部31Bおよび第2突出部31Cが幅広部11Cの内側に配置された際に、プッシャー32の平板部32Aが、空間SP1を通過可能であって、且つ、プッシャー33の平板部33Aが、空間SP2を通過可能なように構成される。折りナイフ31の第1突出部31Bおよび第2突出部31Cの全体が貫通孔11Bの幅広部11Cの中に含まれるように配置された時、プッシャー32の平板部32Aは、空間SP1を通してスライダー62の対向面62Tに接近したり離反したりすることが可能であり、プッシャー33の平板部33Aは、空間SP2を通してスライダー63の対向面63Tに接近したり離反したりすることができる。その効果については後述する。
抜き刃40は、シート束70の第1面71の側から第2面72の側に向かってシート束70を貫通することにより、シート束70にコ字形状(略C字形状)のスリットS(図14(C),図15)を形成する。抜き刃40は、アンビル50の切り欠き51Cの内側空間を通り、抜き刃40の先端(下端)は、貫通孔11Bの幅狭部11Dの中に入り込む。
折りナイフ31および抜き刃40は上台21によって支持されており、これらは下台10に接近する方向に一体的に移動する(白色矢印)。折りナイフ31(押圧部)によってシート束70の角部70Cが曲げ変形させられる動作と、抜き刃40によってシート束70にスリットSが形成される動作とは、略同時に行なわれる。曲げ変形の動作に伴って、シート束70には面方向の力が発生するが、曲げ変形の動作とスリットSの形成動作とが略同時に行なわれることで、抜き刃40はシート束70の位置を固定し、シート束70(複数枚のシート同士)に位置ずれが発生することは防止される。
ここで、特開2015−037884号公報(特許文献3)に開示された方法では、シート束の角部を折り返すという動作と、シート束の角部の近傍にスリットを形成する動作と、スリットに片(貼着シール)を挿通させるという動作とが別々に行なわれることで、シート束が綴じられる。当該方法においては、片が使用されており、しかもこれらの動作が別々の動作(互いに独立した工程)として行なわれている。
本実施の形態の綴じ装置100によれば、曲げ変形の動作とスリットSの形成動作とを一つの工程として略同時に行なうことができる。これらの動作は、綴じ動作の簡素化という点では一つの工程として略同時に行なわれることが好ましいが、必須ではない。たとえば、昇降機構20において、折りナイフ31の支持部分と抜き刃40の支持部分とが互いに独立して構成され、曲げ変形の動作とスリットSの形成動作とが、別々の動作(互いに独立した工程)として行なわれるように構成することも可能である。
上述のとおり、折りナイフ31と抜き刃40との間に、押圧部材35が配置される。押圧部材35は、上台21によって弾性的に支持され、折りナイフ31および抜き刃40と一体的に、下台10に接近する方向に移動する(白色矢印)。シート束70の角部70Cが折りナイフ31により曲げ変形させられる際、押圧部材35は、シート束70の角部70Cを弾性的に押さえる(アンビル50に押し付ける)。シート束70の角部70Cに位置ずれが発生することは抑制される。
図15に示すように、スリットSは、第1切れ目部S1、第2切れ目部S2、第3切れ目部S3を含む。第1切れ目部S1、第2切れ目部S2、第3切れ目部S3は、それぞれ、第1刃部41、第2刃部42、第3刃部43によって形成される。詳細は後述されるが、スリットSに、シート束70の角部70Cの先端(最端部70T)が挿通される。第1切れ目部S1の長さは、第2切れ目部S2の長さよりも長く、第3切れ目部S3の長さよりも長い。スリットSが当該形状(幅広のコ字形状)を有することによって、挿通の際にスリットSが立体的に開くため、シート束70の角部70CをスリットSに容易に挿通させることができる。
抜き刃40の第1刃部41は、第2切れ目部S2および第3切れ目部S3から見て、シート束70の中央側の位置に第1切れ目部S1を形成する。シート束70のうちのスリットSの内側の位置には、舌片状の部分が形成される。当該舌片状の部分が片持ち梁状に延びる方向と、シート束70の角部70CをスリットSに挿通させる方向とは一致する。挿通の際、スリットSがテーパー状に上下に開くため、シート束70の角部70CをスリットSに容易に挿通させることができる。当該構成に限らず、第2切れ目部S2および第3切れ目部S3から見て、シート束70の中央側とは反対側の位置に第1切れ目部S1を形成するように、抜き刃40を構成することも可能である。
折曲手段30(折りナイフ31)によってシート束70の角部70Cに形成される曲げ変形の折曲稜線70Rと、第1刃部41によって形成される第1切れ目部S1とは、略平行である。当該構成によれば、シート束70の角部70Cのうち、スリットSに挿通される部分の幅方向におけるバランス(たとえば体積バランス)が良くなり、スリットSに挿通される部分が挿通後にふらついてしまうことを抑制可能となる。
(第3段階)
図16(A)は、綴じ装置100によってシート束70が綴じられる動作の第3段階を示す平面図(断面図)である。図16(B)は、図16(A)中のXVI(B)−XVI(B)線に沿った矢視断面図である。図16(C)は、図16(A)中のXVI(C)−XVI(C)線に沿った矢視断面図である。
図16(A)〜図16(C)に示すように、昇降機構20の上台21は、駆動力を受けることによって下台10に接近する方向にさらに移動する(白色矢印)。折りナイフ31および抜き刃40も同方向にさらに移動する(白色矢印)。ピン34は、カム溝22Hの内周面に沿って貫通孔11Bに接近する方向にさらに移動する(黒色矢印)。ピン34に連結されているプッシャー32,33も同方向にさらに移動する(黒色矢印)。
この時点(第3段階)では、プッシャー32,33はスライダー62,63から離れており、スライダー62,63は未だ外力を受けていないため移動せず、アンビル50の位置も変わらない。この状態の後、プッシャー32,33が黒色矢印の方向にさらに移動することによって、プッシャー32の平板部32Aは空間SP1(図14(D))を通過し、プッシャー33の平板部33Aは空間SP2(図14(D))を通過する。
(第4段階)
図17(A)は、綴じ装置100によってシート束70が綴じられる動作の第4段階を示す平面図(断面図)である。図17(B)は、図17(A)中のXVII(B)−XVII(B)線に沿った矢視断面図である。図17(C)は、図17(A)中のXVII(C)−XVII(C)線に沿った矢視断面図である。
図17(A)〜図17(C)に示すように、昇降機構20の上台21は、駆動力を受けることによって下台10に接近する方向にさらに移動する(白色矢印)。折りナイフ31および抜き刃40も同方向にさらに移動する(白色矢印)。ピン34は、カム溝22Hの内周面に沿って貫通孔11Bに接近する方向にさらに移動する(黒色矢印)。ピン34に連結されているプッシャー32,33も同方向にさらに移動する(黒色矢印)。
折りナイフ31(押圧部)がシート束70の角部70Cを押圧することによって角部70Cを曲げ変形させている状態で、プッシャー32,33(折返部)は、折りナイフ31の板状部31Aの側方(すなわち図14(D)中の空間SP1,SP2)を通過してシート束70の角部70Cを押圧し、角部70Cをシート束70の中央側に向かって折り返すようにさらに曲げ変形させる。角部70Cの折曲稜線70R(図15)の近傍部分は、アンビル50の支持端面52,53(図17(A))に支持されている部分を変形の起点として折り返される。
本実施の形態においては、折返部として、計2つのプッシャー32,33が用いられる。折りナイフ31(押圧部)がシート束70の角部70Cを押圧することによって角部70Cを曲げ変形させている状態で、プッシャー32(第1折返片)は折りナイフ31の板状部31Aの一方の側方(図14(D)中の空間SP1)を通過してシート束70の角部70Cを押圧するとともに、プッシャー33(第2折返片)は折りナイフ31の板状部31Aの他方の側方(図14(D)中の空間SP2)を通過してシート束70の角部70Cを押圧する。
プッシャー32は、シート束70の角部70Cをさらに押圧するとともに、やがてスライダー62にも押圧力を付与し始める。同様に、プッシャー33は、シート束70の角部70Cをさらに押圧するとともに、やがてスライダー63にも押圧力を付与し始める。プッシャー32,33からスライダー62,63に押圧力が付与されることで、スライダー62,63も黒色矢印の方向への移動を開始する。
スライダー62,63の移動に伴って、付勢ばね62S,63Sにも黒色矢印に示す方向の押圧力が作用する。付勢ばね62S,63Sの弾性復元力は、アンビル50の垂下片56,57を介して、アンビル50を黒色矢印の方向へ移動させようと付勢する。スライダー62,63がある程度移動するまで、付勢ばね62S,63Sの長さが単に短くなり、アンビル50はほとんど移動しない。
アンビル50は、シート束70や下台10などから摩擦力を受けているため、付勢ばね62S,63Sの弾性復元力がこの摩擦力を上回るまで、アンビル50の位置はほとんど変わらない。シート束70の角部70Cは、シート束70の中央側に向かって折り返すようにさらに曲げ変形され、角部70Cの折曲稜線70Rの近傍部分は、アンビル50の支持端面52,53(図17(A))に支持されている部分を変形の起点として、たとえば135°まで容易に折り返されることができる。
(第5段階)
図18(A)は、綴じ装置100によってシート束70が綴じられる動作の第5段階を示す平面図(断面図)である。図18(B)は、図18(A)中のXVIII(B)−XVIII(B)線に沿った矢視断面図である。図18(C)は、図18(A)中のXVIII(C)−XVIII(C)線に沿った矢視断面図である。
図18(A)〜図18(C)に示すように、昇降機構20の上台21は、駆動力を受けることによって下台10に接近する方向にさらに移動する(白色矢印)。折りナイフ31および抜き刃40も同方向にさらに移動する(白色矢印)。ピン34は、カム溝22Hの内周面に沿って貫通孔11Bに接近する方向にさらに移動する(黒色矢印)。ピン34に連結されているプッシャー32,33も同方向にさらに移動する(黒色矢印)。ピン34がカム溝22Hの端部に接触することで、ピン34やプッシャー32,33の移動が停止する。
移動の際、プッシャー32は、シート束70の角部70Cをさらに押圧するとともに、スライダー62および付勢ばね62Sにも押圧力をさらに付与する。同様に、プッシャー33は、シート束70の角部70Cをさらに押圧するとともに、スライダー63および付勢ばね63Sにも押圧力を付与する。シート束70の角部70Cは、シート束70の中央側に向かって折り返すようにさらに曲げ変形される。この動作により、シート束70の角部70Cは、抜き刃40の保持穴44の内側に入り込む。
上記のような動作が行なわれている最中に、付勢ばね62S,63Sの弾性復元力は、アンビル50に作用している摩擦力をやがて上回る。アンビル50も黒色矢印の方向へ移動し始める。角部70Cの先端(最端部70T)が抜き刃40の保持穴44内に配置される際(たとえば直前)に、アンビル50の板状部51(載置部)は、プッシャー32,33(折返部)から離れる方向(黒色矢印の方向)に移動する。すなわち付勢ばね62S,63Sは「移動機構」として機能することができる。
シート束70の角部70Cの折曲稜線70Rから、アンビル50の板状部51や支持端面52,53が遠ざかる。シート束70の折曲稜線70Rの曲げ変形の内側には、隙間が形成される。角部70Cの折曲稜線70Rの近傍部分は、この隙間を埋めるようにして容易に折り曲げられることが可能となり(たとえば180°)、シート束70の角部70Cを抜き刃40の保持穴44の内側に容易に入り込ませることが可能となる。角部70Cの先端(最端部70T)が抜き刃40の保持穴44内に配置される直前までシート束70はアンビル50によって保持されるため、安定した曲げ変形動作を実現することが可能となる。
(第6段階)
図19(A)は、綴じ装置100によってシート束70が綴じられる動作の第6段階を示す平面図(断面図)である。図19(B)は、図19(A)中のXIX(B)−XIX(B)線に沿った矢視断面図である。
シート束70の角部70Cの先端(最端部70T)が抜き刃40の保持穴44内に配置された後、上台21は、下台10から離れる方向に上昇移動させられる(白色矢印)。これに伴って、折りナイフ31および抜き刃40も同方向に移動する(白色矢印)。抜き刃40は、保持穴44に入り込んでいたシート束70の角部70Cの先端(最端部70T)を保持穴44に保持させて、シート束70の第2面72の側から第1面71の側に引き抜く。角部70Cの先端(最端部70T)は、スリットSに挿通される。
上台21およびカム板22の上昇移動に伴い、ピン34は、カム溝22Hの内周面に沿って貫通孔11Bから離れる方向に移動する(黒色矢印)。ピン34に連結されているプッシャー32,33も同方向に移動する(黒色矢印)。プッシャー32,33は、スライダー62,63(対向面62T,63T)から離れ、プッシャー32,33からスライダー62,63等に付与されていた押圧力も解除される。付勢ばね65の弾性復元力は、連結ピン64を介してスライダー62,63に付与され、スライダー62,63およびアンビル50は、元の位置(第1段階の位置)に戻る。以上の動作により、シート束70に所望の綴じ部70W(図20〜図22)が形成されることとなる。
(綴じ部70W)
図20は、綴じ部70Wが形成されたシート束70の第1面71の側の様子を示す平面図である。図21は、綴じ部70Wが形成されたシート束70の第2面72の側の様子を示す平面図である。図22は、図20中のXXII−XXII線に沿った矢視断面図である。
図20を主として参照して、折曲手段30(折りナイフ31、プッシャー32,33)は、シート束70のうちの折曲手段30によって折り曲げられてスリットSに挿通される角部70Cの部分の幅WAが、第1切れ目部S1の長さWBの100%未満90%以上の値となるように、シート束70の角部70Cを折り曲げている。シート束70のうちの挿通部分の幅WAが、第1切れ目部S1の長さWBと略同等の値になるように構成されることで、十分な挿通量を確保することができ、綴じ強度を高めることができる。
また、折曲手段30(折りナイフ31、プッシャー32,33)は、折曲手段30によってシート束70の角部70Cに形成される曲げ変形の折曲稜線70Rと第1切れ目部S1との間の距離L1が、第2切れ目部S2および第3切れ目部S3のいずれの長さL2,L3よりも長くなるように、シート束70の角部70Cを折り曲げている。折曲稜線70RとスリットSとの間に余白が確保されており、破れを抑制するとともに、綴じ強度を確保することができる。
(作用および効果)
冒頭で述べたように、特開2015−037884号公報(特許文献3)に開示された方法では、綴じ処理のために片(貼着シール)が用いられている。これに対して本実施の形態における綴じ装置100および綴じ方法によれば、片などをあえて使用せずとも、簡素な構成にてシート束70を束ねることが可能である。実施の形態の説明では綴じ装置100が用いられるが、上記により開示した綴じ方法の一部あるいはすべての工程は、人手によって行なうことも可能である。
図23は、比較例1における綴じ装置および綴じ方法によって綴じられたシート束70を示す平面図である。シート束70には、U字形状の切り込みおよびスリットSが形成されており、U字形状の部分70Mを折り返してスリットSに挿通することによりシート束70が綴じられている。しかしながら、U字形状の部分70Mを折り返すことによって、シート束70に、U字形状の部分70Mに相当する大きさを有する孔70Hが空けられている。また、1つの綴じ部70Wによって綴じ処理が行なわれているため、図中の矢印方向に各シートがふらついてしまい、長期にわたって安定したシート束を形成することは難しい。
図24は、比較例2における綴じ装置および綴じ方法によって綴じられたシート束70を示す平面図である。図24に示す態様の場合、2つの綴じ部70Wによって綴じ処理が行なわれているため、図23の場合に比べると、各シートがふらつくことは少なく、安定したシート束を形成することができる。しかしながら、シート束70に、2つの孔70Hが空けられている。綴じ動作も図23の場合に比べると複雑である。
実施の形態における綴じ装置100および綴じ方法によれば、綴じられたシート束70に、U字形状の部分に相当する大きさを有する孔は空けられておらず、見栄えがよく、シートへのダメージも小さい。最も外側のシートによる折り返しによって内側のシートが抱え込まれるため、ふらつきを抑制する効果も得られる。実施の形態の説明の中で既に述べた各種の構成を採用あるいは最適化することによって、綴じ強度を確保すること、あるいは綴じ強度をさらに向上させることが可能である。
[実施の形態の第1変形例]
図25は、実施の形態の第1変形例における綴じ装置および綴じ方法によって綴じられたシート束70を示す平面図である。図25に示すように、抜き刃40は、複数枚のシートにおいて画像が形成されていない部分Ra(いわゆる余白部分)にスリットSを形成するように構成されてもよい。当該構成に限られず、抜き刃40は、複数枚のシートにおいて画像が形成されている部分RbにスリットSを形成するように構成されてもよい。スリットSを形成する位置は、画像の形状や大きさに応じて任意の位置に設定されることが可能である。
[実施の形態の第2変形例]
図26は、実施の形態の第2変形例における綴じ装置および綴じ方法によって綴じられたシート束70を示す平面図である。当該変形例においては、上述の実施の形態の場合に比べて小さな綴じ部70Wが形成される。シートやシート束70の大きさに応じて、綴じ部70Wは任意の大きさに設定されることが可能である。
[実施の形態の第3変形例]
図27は、実施の形態の第3変形例における綴じ装置および綴じ方法によって綴じられたシート束70を示す平面図である。当該変形例においては、上述の実施の形態の場合に比べて大きな綴じ部70Wが形成される。シートやシート束70の大きさに応じて、綴じ部70Wは任意の大きさに設定されることが可能である。
第2変形例および第3変形例に関して、綴じ装置は、折曲手段30がシート束70の角部70Cに形成する曲げ変形の折曲稜線70Rの位置を変更可能なように構成されていてもよい。この構成に代えてあるいはこの構成に加えて、綴じ装置は、抜き刃40がシート束70に形成するスリットSの位置を変更可能なように構成されていてもよい。これらの構成を実現するためには、たとえば、受け面12C,13Cの位置を可動式にするとよい。
これらの構成によれば、折曲稜線70RやスリットSを、たとえばシート角部と紙面中央との間の所望の位置に形成可能となる。シート束70の厚みに応じて、綴じ部70Wの位置を調整することができる。たとえば、綴じ枚数が多い場合、厚紙を綴じる場合、あるいは、画像領域を十分に確保したい場合には、図26のように小さめの綴じ部70Wを形成しても良い。綴じ枚数が少ない場合、あるいは薄紙を綴じる場合には、図27のように大きめの綴じ部70Wを形成してもよい。
[実施の形態の第4変形例]
図28は、実施の形態の第4変形例における綴じ装置および綴じ方法によって綴じられるシート束70を示す平面図である。図29は、実施の形態の第4変形例における綴じ装置および綴じ方法によって綴じられたシート束70の第1面71の側の様子を示す平面図である。図30は、実施の形態の第4変形例における綴じ装置および綴じ方法によって綴じられたシート束70の第2面72の側の様子を示す平面図である。
当該変形例においては、シート束70を形成している複数のシートの角部に、補強用画像Rc(たとえばベタ画像)が形成されている。補強用画像Rcは、複数のシートのすべてに形成されていてもよく、複数のうちの一部のシートにのみ形成されていてもよい。シート束70や各シートの厚み等に応じて、片面にのみ補強用画像Rcを形成してもよいし、両面に補強用画像Rcを形成してもよい。
折曲手段30は、複数枚のシートにおいて補強用画像Rcが形成された部分がスリットSに差し込まれるようにシート束70の角部70Cを折り曲げる。補強用画像Rcは、シート束70の角部70Cの剛性を高めるため、綴じ強度を向上させることが可能となる。スリットSが形成されている位置を含むように補強用画像Rcが形成されることで、綴じ強度をさらに向上させることが可能となる。
[実施の形態の第5変形例]
図31は、実施の形態の第5変形例における綴じ装置100および綴じ方法を説明するための平面図である。図31に示すように、綴じ装置100は、他の移動機構80をさらに備えていてもよい。他の移動機構80は、折曲手段30および抜き刃40などを、シート束70の第1角部70C1の位置と第2角部70C2との位置との間で移動させることができる。他の移動機構80は、たとえばガイドレールなどから構成される。1台の綴じ装置100によって、シート束70の第1角部70C1に綴じ部を形成することも可能であり、シート束70の第2角部70C2に綴じ部を形成することも可能である。
図31には、他の移動機構80(ガイドレール)が円弧状に延在しているが、他の移動機構80は、綴じ装置100の本体部(折曲手段30や抜き刃40)を直線状に往復移動可能(図31の紙面内の上下方向に往復移動可能)なように構成されていてもよい。綴じ装置100の本体部の移動方向に対して直交する方向と、画像形成装置におけるシート搬送方向(矢印DR1および/または矢印DR2)とが、互いに平行となるように構成してもよい。当該構成によれば、シートやシート束を搬入するためのハンドリングによる手間が軽減される、あるいはなくなるため、後処理装置としての設計自由度や付加価値を向上させることが可能となる。
以上、実施の形態および各変形例について説明したが、上記の開示内容はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。