JP5580749B2 - トリクロロシランの生産方法 - Google Patents

トリクロロシランの生産方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5580749B2
JP5580749B2 JP2010548324A JP2010548324A JP5580749B2 JP 5580749 B2 JP5580749 B2 JP 5580749B2 JP 2010548324 A JP2010548324 A JP 2010548324A JP 2010548324 A JP2010548324 A JP 2010548324A JP 5580749 B2 JP5580749 B2 JP 5580749B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
silicon tetrachloride
trichlorosilane
cooling
product mixture
gas
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2010548324A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2010086996A1 (ja
Inventor
和之 湯舟
裕介 和久田
敏昭 大津
一正 松音
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Denka Co Ltd
Original Assignee
Denki Kagaku Kogyo KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Denki Kagaku Kogyo KK filed Critical Denki Kagaku Kogyo KK
Publication of JPWO2010086996A1 publication Critical patent/JPWO2010086996A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5580749B2 publication Critical patent/JP5580749B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C01INORGANIC CHEMISTRY
    • C01BNON-METALLIC ELEMENTS; COMPOUNDS THEREOF; METALLOIDS OR COMPOUNDS THEREOF NOT COVERED BY SUBCLASS C01C
    • C01B33/00Silicon; Compounds thereof
    • C01B33/08Compounds containing halogen
    • C01B33/107Halogenated silanes
    • C01B33/1071Tetrachloride, trichlorosilane or silicochloroform, dichlorosilane, monochlorosilane or mixtures thereof
    • C01B33/10742Tetrachloride, trichlorosilane or silicochloroform, dichlorosilane, monochlorosilane or mixtures thereof prepared by hydrochlorination of silicon or of a silicon-containing material
    • C01B33/10757Tetrachloride, trichlorosilane or silicochloroform, dichlorosilane, monochlorosilane or mixtures thereof prepared by hydrochlorination of silicon or of a silicon-containing material with the preferential formation of trichlorosilane

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Inorganic Chemistry (AREA)
  • Silicon Compounds (AREA)

Description

本発明は、四塩化珪素および水素からトリクロロシランを生産する方法に関する。
四塩化珪素と水素を原料としたトリクロロシランの生産方法としては、四塩化珪素および水素の合計質量100モル%に対する四塩化珪素の含有量が50モル%以下である四塩化珪素および水素との混合ガスを、1200℃以下の温度で反応させたのち、瞬間的に冷却を行い、トリクロロシランを生産する方法がある(特許文献1)。
また、四塩化珪素と水素を原料としたトリクロロシランの生産方法としては、四塩化珪素および水素の合計質量100モル%に対する四塩化珪素の含有量が33.3モル%〜50モル%の範囲内である四塩化珪素および水素の混合ガスを、1200℃を超え1400℃以下の範囲内で反応させたのち、瞬間的に冷却を行い、トリクロロシランを生産する方法もある(特許文献2)。
これらの方法によれば、次式(1)で示される反応の平衡が十分に右側に傾く温度で反応させ平衡を達成するようにしており、さらにこの平衡状態のガスを直ちに急冷することにより平衡が凍結されるため、かなり効率よくトリクロロシランを得ることができる。
SiCl+H⇔SiHCl+HCl・・・(1)
しかしながら、上記文献記載の従来技術は、以下の点で改善の余地を有していた。
すなわち、本発明者等は、上記の特許文献1および2に記載の技術では、式(1)で四塩化珪素および水素からトリクロロシランが生成する反応は吸熱反応であるため、冷却方法によっては、ガスの温度が低下する平衡が凍結に至る時間が非常に短い場合であっても、その短い時間中に平衡がある程度左側へ移動することがあり、一旦は生成した一部のトリクロロシランから再び四塩化珪素が生成される場合があることを見いだした。そして、本発明者等は、このような平衡の揺り戻しによって、トリクロロシランの収率、すなわち原料である四塩化珪素に対して生成したトリクロロシランの割合が低下する場合があるため、上記の特許文献1および2に記載の技術には、トリクロロシランの収率の面でさらなる改善の余地があることに気づいた。
特許1164093号公報 特開昭60−81010号公報
発明の概要
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、四塩化珪素および水素からさらに効率よくトリクロロシランを生産するための簡便な方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、四塩化珪素および水素を高温で反応させた後、得られた反応ガスを特定の組成に限定した四塩化珪素およびトリクロロシランの混合液体で急冷することにより、簡便な工程で効率良くトリクロロシランを生産できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、四塩化珪素および水素を含有する出発混合物を1200℃を超え1400℃以下の範囲内の温度で反応させてトリクロロシランを含有する生成混合物を生成する工程と、前記生成混合物を、四塩化珪素およびトリクロロシランを含有し該四塩化珪素および該トリクロロシランの合計質量を100モル%とした場合に該四塩化珪素を80モル%以上の含有率で含む冷却液に直接接触させて冷却する工程と、を含むトリクロロシランの生産方法が提供される。
この方法によれば、四塩化珪素および水素を高温で反応させた後、得られた反応ガスを特定の組成に限定した四塩化珪素およびトリクロロシランの混合液体で急冷するため、簡便な工程で効率良くトリクロロシランを生産できる。
本発明によれば、特定の組成に限定した四塩化珪素およびトリクロロシランの混合液体を用いるので、トリクロロシランを簡便な工程で効率良く製造することができる。
比較例1および実施例1〜3に用いる装置の一例について説明するための図である。 実施例4に用いる装置の一例について説明するための図である。 比較例2に用いる装置の一例について説明するための図である。 図1の構成からなる装置における循環液(冷却液)中の四塩化珪素濃度に対して、出発原料中の四塩化珪素のクロロシランへの転換率をプロットして、転換率の極大値を示すためのグラフである。
符号の説明
101 反応炉
102 ヒータ
103 原料供給管
104 反応炉抜出管
105 冷却塔
106 液ガス混合管
107 目皿
108 貯槽
109 ポンプ
110 熱交換器
111 冷却液中段供給管
112 冷却液塔頂供給管
113 冷却塔ガス抜出管
114 凝縮器
115 貯槽
116 調製液供給管
201 反応炉
202 ヒータ
203 原料供給管
204 反応炉抜出管
205 冷却塔
206 液ガス混合管
207 目皿
208 貯槽
209 冷却液中段供給管
210 冷却液塔頂供給管
211 冷却塔ガス抜出管
212 凝縮器
213 貯槽
301 反応炉
302 ヒータ
303 原料供給管
304 反応炉抜出管
305 冷却塔
306 液ガス混合管
307 目皿
308 貯槽
309 ポンプ
310 熱交換器
311 冷却液中段供給管
312 冷却液塔頂供給管
313 冷却塔ガス抜出管
314 凝縮器
315 貯槽
発明を実施するための形態
<用語の説明>
本明細書および請求の範囲において、「最小値〜最大値」という表記は、最小値以上かつ最大値以下の数値範囲を意味するものとする。また、「%」という表記は、特に断りのない限り、モル%を意味するものとする。
(1)塩化珪素
本明細書および請求の範囲において、塩化珪素とは、塩化された珪素を意味し、SiCl、SiHCl、SiHCl、SiHClなどのクロロシラン類の化合物を含む概念である。
なお、塩化珪素の一種である、クロロシランには、以下の4種類が含まれる。
物質名 化学式 沸点
テトラクロロシラン(四塩化珪素) SiCl 57℃
トリクロロシラン SiHCl 32℃
ジクロロシラン SiHCl 8℃
モノクロロシラン SiHCl 30℃
なお、上記のトリクロロシランは、消防法危険物(第三類)に分類されている。
(2)四塩化珪素の還元
本明細書および請求の範囲において、四塩化珪素を還元するとは、四塩化珪素に水素ガスなどのような還元物質を反応させて、より還元度の高い(ハロゲン化度の低い)物質に変換することを意味する。例えば、クロロシラン類の化合物の還元の場合には、下記の順番でハロゲン化ケイ素を還元することを意味する。
SiCl→SiHCl→SiHCl→SiHCl→SiH
(3)水素
本明細書および請求の範囲において、水素とは、水素の単体である水素分子(水素ガス)Hを示すものとする。水素分子は常温では無色無臭の気体で、沸点−252.6°Cであり、軽く、非常に燃えやすい。一般に、アンモニアの製造(ハーバー・ボッシュ法)の他、最も安価でクリーンな還元剤として、トリクロロシラン、ジクロロシラン、モノクロロシランおよびモノシランの製造プロセスをはじめ、塩酸の製造、金属鉱石の還元、油脂の改質、脱硫など、多方面に利用されている。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
<実施形態1>
本実施形態は、四塩化珪素および水素からトリクロロシランを製造する方法に関する。しかしながら、説明の都合上、この製造方法に用いる装置の構成を、まずは説明する。そして、その後に、本実施形態の製造方法について説明する。
(i)装置の構成
図1は、本実施形態に用いる装置の一例を示す説明図である。本実施形態では、ガス化した四塩化珪素と水素との混合物を原料供給管103を通じて反応炉101の底部に供給する。反応炉101は黒鉛製であり、周囲に設けられた最大出力500KWのヒータ102にて加熱することで、反応炉101の内部を1200℃を超え1400℃以下の範囲内の状態に保つことができる。
反応炉101の下部から導入された混合ガスは加熱されながら、反応炉101上方へ移動する。加熱された混合ガスの物質間では複数の反応が起き、ガス内の物質は熱平衡状態に達する。反応炉101の上方に達したガスを、1200℃以上の温度に保った状態で、ガスを反応炉抜出管104を通じて冷却塔105に導入する。
冷却塔105はステンレス製で、内部にはさらに液ガス混合管106が設置されており、反応炉抜出管104は液ガス混合管106内に達している。液ガス混合管106の塔頂部には冷却液中段供給管111が接続されており、底部は全面開放されている。また、冷却塔105内部かつ液ガス混合管106の上方外側には目皿107が設けてある。冷却塔105の塔頂部には、冷却液塔頂供給管112が接続されている。冷却塔105の上部には、凝縮器114が設けてあり、ジャケットにフロンガスを通じて冷却できるようになっている
液ガス混合管106では、供給反応炉101より抜き出された混合ガスが、冷却液中段供給管111を通じて供給される四塩化珪素の濃度が一定に保たれた四塩化珪素とトリクロロシランの混合物からなる冷却液と混合しながら、下方に移動する。混合ガスは液ガス混合管106の下部開放部に達するまでに600℃以下まで冷却され、混合ガス内物質間平衡状態は凍結される。
液ガス混合管106下部開放部より抜き出されたガスは、液ガス混合管106外部かつ冷却塔105内部を上方に移動し、冷却液塔頂供給管112を通じて供給される四塩化珪素の濃度が一定に保たれた四塩化珪素とトリクロロシランの混合物からなる冷却液との接触により50℃以下まで冷却され、冷却塔ガス抜出管113より抜き出され、凝縮器114で冷却され、ガス中のクロロシランの大部分は凝縮され、凝縮液は貯槽115に捕集される。
冷却に用いられた冷却液は、冷却塔105の下部より貯槽108に抜き取られる。さらに貯槽108には、冷却液の四塩化珪素の濃度を一定に保つため、四塩化珪素又は及びトリクロロシランからなる調製液が調製液供給管116を通じて供給される。
貯槽108内の冷却液はポンプ109により抜き取られ、熱交換器110により冷却され、冷却液中段供給管111並びに冷却液塔頂供給管112を通じて再び冷却塔105に供給される。なお、熱交換器110はジャケットに冷却水を通じて冷却できるようになっている。
(ii)四塩化珪素および水素からトリクロロシランを製造する方法
本実施形態では、上記のような構成の装置を用いて、四塩化珪素および水素からトリクロロシランを製造する。このようなトリクロロシランを生産するための原料、すなわち出発混合物としては四塩化珪素と水素との混合ガスを使用する。このとき、混合ガス中の四塩化珪素の含有量は、四塩化珪素と水素との合計質量100モル%に対して25〜60モル%の範囲内であることが好ましく、特に30〜50モル%の範囲内であることがさらに好ましい。この混合ガス中の四塩化珪素の含有量が60モル%または50モル%以下であれば、熱負荷が小さくなるので経済的であり、また、25モル%または30モル%以上であれば、出発混合物中の水素が多くなりすぎてないため、下記の式(1)が右側に傾きすぎて金属シリコンが反応管および取出し管内に析出して装置の閉塞に繋がる現象の発生を抑制できる。
SiCl+H⇔SiHCl+HCl・・・(1)
そして、黒鉛、炭素、炭化珪素等の耐熱性耐食材料から構成された反応容器内で、出発原料の混合ガスを、1200℃を超え1400℃以下の範囲内の温度で反応させると、二塩化珪素その他多数の中間生成物質を経て複雑な経路で形成されている上記の式(1)の四塩化珪素とトリクロロシランの間の平衡は十分右側に傾いた状態となる。上記の式(1)で四塩化珪素からトリクロロシランと塩化水素とが生成する反応は吸熱反応であり、トリクロロシランから水素が生成する反応は逆に発熱反応である。上記の式(1)では、反応温度が1200℃以上だと平衡は十分に右側に傾くため好ましく、1400℃以下であれば金属シリコンが反応管および取出し管内に析出して装置の閉塞に繋がる現象を抑制できるため好ましい。
次いで、本実施形態では、この平衡状態のガス(生成混合物あるいは生成混合ガス)を、取出し管を通じて空間的に連続した冷却塔内に取出す。そして、本実施形態では、この平衡状態のガス(生成混合物あるいは生成混合ガス)を、四塩化珪素とトリクロロシランとの合計質量100モル%に対して四塩化珪素の含有量が好ましくは80〜100モル%、より好ましくは85〜95モル%である四塩化珪素およびトリクロロシランを含む冷却液と直接接触させて、直ちに温度を600℃以下にまで1秒未満、望ましくは0.5秒未満の時間内に冷却する。このように、特定の組成の冷却液によって、この平衡状態のガス(生成混合物あるいは生成混合ガス)を急冷して凝縮することにより、上記の式(1)で十分に右側に移動した状態が保たれたまま平衡が凍結され、得られたガスから高い収率でトリクロロシランを凝縮することができる。
なお、この急冷によって凝縮した平衡状態のガス(生成混合物あるいは生成混合ガス)由来のトリクロロシランおよび四塩化珪素と、特定の組成の冷却液とが混じって得られる混合液体は、経済的観点から冷却塔の塔底から抜出して循環して繰り返し使用することが好ましい。そして、その場合、抜き出した混合液体に、その混合液体に含まれる四塩化珪素の濃度を一定の範囲(四塩化珪素とトリクロロシランとの合計質量100モル%に対して、四塩化珪素の含有量が好ましくは80〜100モル%、より好ましくは85〜95モル%の範囲内)に保つべく、四塩化珪素および/またはトリクロロシランを適宜添加した上、熱交換器そのほかの装置を用いて混合液体の温度を調整するのが好ましい。
ここで、冷却液の組成として、四塩化珪素とトリクロロシランの合計質量100モル%に対して四塩化珪素が好ましくは80〜100モル%、より好ましくは85〜95モル%であることが好ましい理由は、生成混合物(平衡状態のガスまたは生成混合ガス)が600℃まで急激に温度が低下する時間中に、上記の式(1)において四塩化珪素からトリクロロシランと塩化水素とが生成されるのは吸熱反応であるためである。すなわち、上記の式(1)において四塩化珪素からトリクロロシランと塩化水素とが生成されるのは吸熱反応であることから、ル・シャトリエの原理に従い温度が低下してくると逆方向のトリクロロシランから四塩化珪素と水素との生成が進行しうることになる。しかしながら、本実施形態では、冷却液中に含まれる多量の四塩化珪素が添加されることで、順方向の四塩化珪素からトリクロロシランと塩化水素とが生成する反応も拮抗して進行するために、結果として上記の式(1)の平衡状態を十分に右側に移動した状態を保って冷却することができるのである。
そして、生成混合物(平衡状態のガスまたは生成混合ガス)と、四塩化珪素とトリクロロシランとの混合液体である冷却液と、を接触させることによって、温度が600℃に達した時点で、ほぼ熱平衡状態は凍結され、四塩化珪素、水素、トリクロロシラン、塩化水素以外の中間生成物質は、四塩化珪素、水素、トリクロロシラン、塩化水素のいずれかの化学種に変化するため、600℃に冷却した生成混合ガスと、それ以下の温度に冷却した生成混合ガスとは組成において大差がない。
ここで、この急冷によって凝縮した平衡状態のガス(生成混合物あるいは生成混合ガス)由来のトリクロロシランおよび四塩化珪素と、特定の組成の冷却液とが混じって得られる混合液体において、四塩化珪素とトリクロロシランとの合計質量100モル%に対して四塩化珪素の含有量が好ましくは80モル%以上、特に好ましくは88モル%以上かつ90モル%以下であると、混合液体中のトリクロロシランのモル濃度が小さくなるために、四塩化珪素からトリクロロシランへの順方向の生成速度が、生成混合ガス(生成混合物あるいは平衡状態のガス)の温度の冷却によって起こるトリクロロシランから四塩化珪素への逆方向の生成速度に比べて大きくなるため、結果として上記の式(1)の平衡状態はガスが冷却される過程で右側に傾き、トリクロロシランの収率は増大する。
(iii)作用効果
以下、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態のトリクロロシランの生産方法は、四塩化珪素および水素を含有する出発混合物を1200℃を超え1400℃以下の範囲内の温度で反応させてトリクロロシランを含有する生成混合物を生成する工程と、前記生成混合物を、四塩化珪素およびトリクロロシランを含有し該四塩化珪素および該トリクロロシランの合計質量を100モル%とした場合に該四塩化珪素を80モル%以上の含有率で含む冷却液に直接接触させて冷却する工程とを含む。
この方法によれば、四塩化珪素およびトリクロロシランを含有し、四塩化珪素およびトリクロロシランの合計質量を100モル%とした場合に、四塩化珪素を80モル%以上の含有率で含む冷却液を用いるために、ル・シャトリエの原理に従い温度が低下してくるとトリクロロシランから四塩化珪素と水素とを生成する逆方向の反応が進行するが、冷却液中に含まれる多量の四塩化珪素が添加されることで、順方向の四塩化珪素からトリクロロシランと塩化水素とが生成する反応も拮抗して進行するために、結果として下記の式(1)の平衡状態を十分に右側に移動した状態を保って冷却することができる。
SiCl+H⇔SiHCl+HCl・・・(1)
そのため、四塩化珪素からトリクロロシランへの順方向の生成速度が、生成混合物の温度の冷却によって起こるトリクロロシランから四塩化珪素への逆方向の生成速度に比べて大きくなるため、結果として上記の式(1)の平衡状態はガスが冷却される過程で右側に傾き、トリクロロシランの収率は増大する。
また、本実施形態では、冷却液が、四塩化珪素およびトリクロロシランの合計質量を100モル%とした場合に、四塩化珪素を88モル%以上90モル%以下の含有率で含む冷却液であることが好ましい。
本実施形態のトリクロロシランの生産方法では、後述する実施例で示すように、冷却液の組成を何点か変化させて調査した結果、冷却液の組成に対するトリクロロシランの出来高、転換率のプロットには極大値が存在し、四塩化珪素を88モル%以上90モル%以下の含有率で含む範囲内で極大値が得られることがわかっている。そのため、冷却液の組成を上記の範囲内に限定することによって、トリクロロシランの収率を極大化することができることになる。
また、本実施形態では、冷却液が、50℃以下に温度調整されていることが好ましい。
このように、冷却液が、50℃以下に温度調整されていれば、後述する実施例で示すように、非常に短時間で、生成混合物の温度を急冷することができるため、上記の式(1)で十分に右側に移動した状態が保たれたまま平衡が凍結され、得られたガスから高い収率でトリクロロシランを凝縮することができる。
さらに、本実施形態では、上記の生成混合物を冷却する工程が、生成混合物を冷却液に直接接触させて、生成混合物の温度を1秒未満の時間内に600℃以下にまで冷却する工程を含むことが好ましい。
このように、生成混合物を冷却液に直接接触させて、生成混合物の温度を1秒未満の時間内に600℃以下にまで冷却することができれば、上記の式(1)で十分に右側に移動した状態が保たれたまま平衡が凍結され、得られたガスから高い収率でトリクロロシランを凝縮することができる。
また、本実施形態のトリクロロシランの生産方法は、上記の生成混合物を冷却する工程が、生成混合物および1次冷却液を直接接触させて、生成混合物を1次冷却する工程と、1次冷却された生成混合物および2次冷却液を直接接触させて、生成混合物を2次冷却する工程と、を含むことが好ましい。
このように、2段階で冷却を行うことにより、1000℃以上ある生成混合物の温度を600℃以下にまで速やかに冷却することができる。
このように、生成混合物および1次冷却液を直接接触させて、生成混合物を600℃以下にまで1次冷却するため、生成混合物の温度を1秒未満の時間内に600℃以下にまで冷却することが可能であり、温度が600℃に達した時点で、ほぼ熱平衡状態は凍結される。そして、600℃以下にまで1次冷却された生成混合物および2次冷却液を直接接触させて、生成混合物を100℃以下にまで2次冷却すれば、四塩化珪素、水素、トリクロロシラン、塩化水素以外の中間生成物質は、四塩化珪素、水素、トリクロロシラン、塩化水素のいずれかの化学種に変化するため、600℃に1次冷却した状態の生成混合ガスと、それ以下の100℃以下の温度に2次冷却した生成混合ガスとは組成において大差がない。よって、このように2段階で冷却を行うことによって、簡便な工程で効率よくトリクロロシランを生産することが可能になる。
また、本実施形態のトリクロロシランの生産方法では、上記の生成混合物を冷却する工程が、生成混合物および冷却液を冷却器中で直接接触させて、生成混合物を冷却する工程を含むことが好ましい。
さらに、この場合、この冷却器が、生成混合物を供給するための生成ガス供給口と、1次冷却液を供給するために生成ガス供給口の近傍に設けられている1次冷却液供給口と、1次冷却液供給口よりも生成ガス供給口から離れて設けられている2次冷却液供給口と、1次冷却液供給口および該2次冷却液供給口の間に設けられている流体制御器と、を備えることが好ましい。そして、この流体制御器が、目皿を備えることが好ましい。
このように、生成ガス供給口の近傍に設けられている1次冷却液供給口から供給される1次冷却液を、1200℃超の温度の生成混合物に直接接触させて、生成混合物を1秒未満の時間内に600℃以下にまで1次冷却すれば、生成混合物の温度が600℃に達した時点で、ほぼ熱平衡状態は凍結される。そして、1次冷却液供給口よりも生成ガス供給口から離れて設けられている2次冷却液供給口から供給される2次冷却液を、600℃以下にまで1次冷却された生成混合物に直接接触させて、生成混合物を100℃以下にまで2次冷却すれば、四塩化珪素、水素、トリクロロシラン、塩化水素以外の中間生成物質は、四塩化珪素、水素、トリクロロシラン、塩化水素のいずれかの化学種に変化するため、600℃に1次冷却した状態の生成混合ガスと、それ以下の100℃以下の温度に2次冷却した生成混合ガスとは組成において大差がない。よって、このように2段階で冷却を行うことによって、簡便な工程で効率よくトリクロロシランを生産することが可能になる。
なお、1次冷却液供給口および2次冷却液供給口の間に目皿を備える流体制御器を設けることによって生成混合ガスが滞留し、2次冷却液と効率よく接触するという利点が得られる。
<実施形態2>
本実施形態は、上記の実施形態1の変形例に相当する。また、図2は、本実施形態に用いる装置の一例を示す説明図である。なお、すでに実施形態1で説明した内容については説明を繰り返さず省略する。
本実施形態では、ガス化した四塩化珪素と水素の混合物を原料供給管203を通じて反応炉201の底部に供給する。反応炉201は黒鉛製であり、周囲に設けられた最大出力500KWのヒータ202にて加熱することで、内部の温度が1200℃を超え1400℃以下となる範囲内の状態に保つ。
反応炉201の下部から導入された混合ガスは加熱されながら、反応炉201上方へ移動する。加熱された混合ガスの物質間では複数の反応が起き、ガス内の物質は熱平衡状態に達する。反応炉201の上方に達したガスを、1200℃以上の温度に保った状態で、ガスを反応炉抜出管204を通じて冷却塔205に導入する。
冷却塔205はステンレス製で、内部にはさらに液ガス混合管206が設置されており、反応炉抜出管204は液ガス混合管206内に達している。液ガス混合管206の塔頂部には冷却液中段供給管209が接続されており、底部は全面開放されている。また、冷却塔205内部かつ液ガス混合管206の上方外側には目皿207が設けてある。冷却塔205の塔頂部には、冷却液塔頂供給管210が接続されている。冷却塔205の上部には、凝縮器212が設けてあり、ジャケットにフロンガスを通じて冷却できるようになっている
液ガス混合管206では、反応炉201より抜き出された混合ガスが冷却液中段供給管209を通じて供給された、四塩化珪素又はトリクロロシランからなる冷却液と混合しながら、下方に移動する。混合ガスは液ガス混合管206の下部開放部に達するまでに600℃以下まで冷却され、混合ガス内物質間平衡状態は凍結される。
液ガス混合管206下部開放部より抜き出されたガスは、液ガス混合管206外部かつ冷却塔205内部を上方に移動し、冷却液塔頂供給管210を通じて供給される四塩化珪素またはトリクロロシランからなる冷却液との接触により50℃以下まで冷却され、冷却塔ガス抜出管211より抜き出され、凝縮器212で冷却され、ガス中のクロロシランの大部分は凝縮され、凝縮液は貯槽213に捕集される。冷却に用いられた冷却液は、冷却塔205の下部より貯槽208に抜き取られる。
ここで、冷却液中段抜出管209及び冷却液塔頂抜出管210を通じて供給される冷却液は、熱交換機あるいはその他の方法によって、冷却塔塔底より抜き出される冷却液より低い温度に冷却した。
本実施形態では、上述のように、実施形態1で用いた装置とは、若干異なる構成からなる装置を用いているが、本質的には同様の構成からなる装置を用いて、同様の工程によってトリクロロシランを生産している。本実施形態が、実施形態1とは異なる点は、急冷によって凝縮した平衡状態のガス(生成混合物あるいは生成混合ガス)由来のトリクロロシランおよび四塩化珪素と、特定の組成の冷却液とが混じって得られる混合液体は、冷却塔の塔底から抜出して循環して繰り返し使用されない点である。
その代わりに、本実施形態では、四塩化珪素の濃度が一定の範囲(四塩化珪素とトリクロロシランとの合計質量100モル%に対して、四塩化珪素の含有量が好ましくは80〜100モル%、より好ましくは85〜95モル%の範囲内)である四塩化珪素およびトリクロロシランを含む混合液を冷却液として、熱交換器そのほかの装置を用いて冷却液の温度を調整した上で用いている。
しかしながら、本実施形態も、四塩化珪素および水素を含有する出発混合物からトリクロロシランを生産する方法であって、出発混合物を、1200℃を超え1400℃以下の範囲内の温度で反応させて、トリクロロシランを含有する生成混合物を生成する工程と、生成混合物を、四塩化珪素およびトリクロロシランを含有し、四塩化珪素およびトリクロロシランの合計質量を100モル%とした場合に、四塩化珪素を80モル%以上の含有率で含む冷却液に直接接触させて冷却する工程と、を含む点では、実施形態1と本質的には何ら異なることはない。
よって、この方法でも、四塩化珪素およびトリクロロシランを含有し、四塩化珪素およびトリクロロシランの合計質量を100モル%とした場合に、四塩化珪素を80モル%以上の含有率で含む冷却液を用いるために、ル・シャトリエの原理に従い温度が低下してくるとトリクロロシランから四塩化珪素と水素とを生成する逆方向の反応が進行するが、冷却液中に含まれる多量の四塩化珪素が添加されることで、順方向の四塩化珪素からトリクロロシランと塩化水素とが生成する反応も拮抗して進行するために、結果として下記の式(1)の平衡状態を十分に右側に移動した状態を保って冷却することができる。
SiCl+H⇔SiHCl+HCl・・・(1)
そのため、四塩化珪素からトリクロロシランへの順方向の生成速度が、生成混合物の温度の冷却によって起こるトリクロロシランから四塩化珪素への逆方向の生成速度に比べて大きくなるため、結果として上記の式(1)の平衡状態はガスが冷却される過程で右側に傾き、トリクロロシランの収率は増大する。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
例えば、上記の実施形態では、冷却液の組成を、四塩化珪素およびトリクロロシランを含有し、該四塩化珪素および該トリクロロシランの合計質量を100モル%とした場合に、該四塩化珪素を80モル%以上の含有率で含むものとしたが、他の成分の含有を排除する趣旨ではない。この冷却液の組成の限定は、あくまでも四塩化珪素およびトリクロロシランのお互いの相対的な含有率を限定するものであって、他に何らかの添加剤などが含まれていたとしても、これらの四塩化珪素およびトリクロロシランのお互いの相対的な含有率に影響を与えることはない。
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<比較例1および実施例1〜3>
比較例1および実施例1〜3のいずれも、図1に示す装置を用いて実験した。反応炉101は内径50mm、長さ800mmで、ヒータ102により加熱されるようになっており、反応炉101の中心部が温度1300℃となるように加熱した。冷却塔105は、内径140mm、長さ1300mmで、底部が開放された内側に液ガス混合管106を設けてある。貯槽108にトリクロロシランと四塩化珪素の混合物を13モル充填し、あらかじめ600℃に加熱した四塩化珪素と水素の混合ガス27モル/時間の流量で原料供給管103を通じて反応炉101に連続的に供給し、さらに反応炉101を通過したガスは反応炉抜出管104を通じて液ガス混合管106に供給した。但し、原料の四塩化珪素は四塩化珪素と水素の合計に対して50モル%とした。
ここで、貯槽108の四塩化珪素は四塩化珪素とトリクロロシランの合計に対して、比較例1および実施例1〜3のそれぞれについて、下記の表1に記載するモル比とし、調製液供給管116を通じて連続的に四塩化珪素あるいはトリクロロシランを供給することで組成を一定に保った。同時に、熱交換器110を20℃の冷却水でそれぞれ冷却し、ポンプ109を駆動して、貯槽108の冷却液を冷却液中段抜出管111および冷却液塔頂抜出管112を通じてそれぞれ液ガス混合管106内と冷却塔内105に連続的に供給した。冷却塔105の塔底より抜き出される冷却液は貯槽108に回収して、連続的に用いた。
このとき、冷却液の温度は、熱交換器110を通過させることにより30℃に保った。また、冷却塔105の塔頂より抜き出されたガスを−70℃のフロンガスで冷却した凝縮器114を通過して得られる液を、ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、比較例1および実施例1〜3のそれぞれについて、下記の表1に記載する生成量のトリクロロシランが取得された。
Figure 0005580749
<実施例4>
実施例4については、図2に示す装置を用いて実験した。反応炉201は内径50mm、長さ800mmで、ヒータ202により加熱されるようになっており、反応炉の中心部が温度1300℃となるように加熱した。冷却塔205は、内径140mm、長さ1300mmで、底部が開放された内側に液ガス混合管206を設けてある。あらかじめ600℃に加熱した四塩化珪素と水素の混合ガス26モル/時間の流量で原料供給管203を通じて反応炉201に連続的に供給し、さらに反応炉201を通過したガスは反応炉抜出管204を通じて液ガス混合管206に供給した。
ただし、原料の四塩化珪素は四塩化珪素と水素との合計質量100モル%に対して50モル%とし、冷却液として四塩化珪素を冷却液中段抜出管209及び冷却液塔頂抜出管210を通じてそれぞれ液ガス混合管206内と冷却塔内205に連続的に供給した。冷却塔塔底より抜き出される冷却液は貯槽208に回収した。
ここで、冷却液中段抜出管209及び冷却液塔頂抜出管210を通じて供給される冷却液は、冷却塔塔底より抜き出される冷却液より低い温度である30℃に保たれている。
冷却塔205の塔頂より抜き出されたガスを、−70℃のフロンガスで冷却した凝縮器212を通過して得られる液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、表2に記載する生成量のトリクロロシランが取得された。
Figure 0005580749
<比較例2>
(i)装置の構成
図3は、本比較例に用いる装置の一例を示す説明図である。比較例2では、図3に示す装置を用いて実験した。すなわち、この装置では、ガス化した四塩化珪素と水素の混合物を原料供給管303を通じて反応炉301の底部に供給する。反応炉301は黒鉛製であり、周囲に設けられた最大出力500KWのヒータ302にて加熱することで、反応炉301の内部を1200℃を超え1400℃以下の範囲内の温度状態に保つ。
反応炉301の下部から導入された混合ガスは加熱されながら、反応炉301上方へ移動する。加熱された混合ガスの物質間では複数の反応が起き、ガス内の物質は熱平衡状態に達する。反応炉301の上方に達したガスを、1200℃の温度に以上に保った状態で、ガスを反応炉抜出管304を通じて冷却塔305に導入する。
冷却塔305はステンレス製で、内部にはさらに液ガス混合管306が設置されており、反応炉抜出管304は液ガス混合管306内に達している。液ガス混合管306の塔頂部には冷却液中段供給管311が接続されており、底部は全面開放されている。また、冷却塔305内部かつ液ガス混合管306の上方外側には目皿307が設けてある。冷却塔305の塔頂部には、冷却液塔頂供給管312が接続されている。冷却塔305の上部には、凝縮器314が設けてあり、ジャケットにフロンガスを通じて冷却できるようになっている。
液ガス混合管306では、供給反応炉301より抜き出された混合ガスが冷却液中段供給管311を通じて供給される、四塩化珪素とトリクロロシランの混合物からなる冷却液と混合しながら、下方に移動する。混合ガスは液ガス混合管306の下部開放部に達するまでに600℃以下まで冷却され、混合ガス内物質間平衡状態は凍結される。
液ガス混合管306下部開放部より抜き出されたガスは、液ガス混合管306外部かつ冷却塔305内部を上方に移動し、冷却液塔頂供給管312を通じて供給される、四塩化珪素とトリクロロシランとの混合物からなる冷却液との接触により50℃以下まで冷却され、冷却塔ガス抜出管313より抜き出され、凝縮器314で冷却され、ガス中のクロロシランの大部分は凝縮され、凝縮液は貯槽315に捕集される。
冷却に用いられた冷却液は、冷却塔305の下部より貯槽308に抜き取られる。貯槽308内の冷却液はポンプ309により抜き取られ、熱交換器310により冷却され、冷却液中段供給管311並びに冷却液塔頂供給管312を通じて再び冷却塔305に供給される。熱交換器310はジャケットに冷却水を通じて冷却できるようになっている。
(ii)行われた実験
比較例2では、上記のような構成からなる図3に示す装置を用いて実験した。すなわち、反応炉301は内径50mm、長さ800mmで、ヒータ302により加熱されるようになっており、反応炉301の中心部が温度1300℃となるように加熱した。冷却塔305は、内径140mm、長さ1300mmで、底部が開放された内側に液ガス混合管306を設けてある。貯槽308にトリクロロシランと四塩化珪素の混合物を13モル充填し、あらかじめ600℃に加熱した四塩化珪素と水素の混合ガス27モル/時間の流量で原料供給管303を通じて反応炉301に連続的に供給し、さらに反応炉301を通過したガスは反応炉抜出管304を通じて液ガス混合管306に供給した。
ただし、出発原料に含まれる四塩化珪素は、四塩化珪素と水素との合計質量100モル%に対して50モル%とした。同時に、熱交換器310を20℃の冷却水でそれぞれ冷却し、ポンプ309を駆動して、貯槽308の冷却液を冷却液中段抜出管311及び冷却液塔頂抜出管312を通じてそれぞれ液ガス混合管306内と冷却塔内305に連続的に供給した。冷却塔塔底より抜き出される冷却液は貯槽308に回収して、連続的に用いた。
冷却液の温度は、熱交換器310を通過させることにより30℃に保った。冷却塔305の塔頂より抜き出されたガスを−70℃のフロンガスで冷却した凝縮器314を通過して得られる液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、下記の表3に記載する生成量のトリクロロシランが取得された。また、貯槽308の組成をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、下記の表4に記載する結果を得た。
Figure 0005580749
Figure 0005580749
<結果の考察>
上記の実施例1〜4、比較例1〜2の実験結果を見れば、四塩化珪素および水素を高温で反応させた後、四塩化珪素およびトリクロロシランの合計質量100モル%に対して四塩化珪素の含有率が80モル%以上の混合液体からなる冷却液で、得られた反応ガスを急冷する場合には、四塩化珪素およびトリクロロシランの合計質量100モル%に対して四塩化珪素の含有率が80モル%未満の混合液体からなる冷却液で冷却する場合に比べて遙かに効率良くトリクロロシランを生産できることが明らかである。
<実施例5>
しかしながら、上記の実施例1〜4、比較例1〜2の実験結果を見れば、実施例3における冷却液の組成(モル比)が四塩化珪素/トリクロロシランが95/5となり、四塩化珪素の含有率が大きくなりすぎると、かえってトリクロロシランの生成効率が低下する傾向が観察される。そこで、本発明者等は、出発原料中の四塩化珪素のクロロシランへの転換率の極大値が得られる四塩化珪素/トリクロロシランの含有割合の数値範囲を決定するために、この実施例5の実験を行った。なお、この実施例5の実験は、基本的には、図1に示す装置を用いて、循環液(冷却液)の組成を変えながら、多数の条件で実験を行ったものである。その結果を図4にグラフとしてプロットして示す。
図4は、図1の構成からなる装置における循環液(冷却液)中の四塩化珪素濃度に対して、出発原料中の四塩化珪素のクロロシランへの転換率をプロットして、転換率の極大値を示すためのグラフである。上記の実施例1〜4、比較例1〜2の実験結果を見れば、出発原料中の四塩化珪素のクロロシランへの転換率が、循環液(冷却液)中の四塩化珪素の含有率が88モル%以上90モル%以下のときに極大値を示すことが明らかである。
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
たとえば、上記実施例では、生成混合ガスの冷却方式として1次冷却および2次冷却を含む2段階冷却方式を用いたが、他の冷却方式を排除する趣旨ではない。例えば、生成混合ガスを冷却液に直接接触させて、生成混合ガスの温度を1秒未満の時間内に600℃以下にまで冷却することができれば、1段階で冷却する方法であってもよいし、3段階以上で冷却する方法であっても良い。この場合にも、この平衡状態のガス(生成混合物あるいは生成混合ガス)を急冷して凝縮することにより、下記の式(1)で十分に右側に移動した状態が保たれたまま平衡が凍結され、得られたガスから高い収率でトリクロロシランを凝縮することができる。
SiCl+H⇔SiHCl+HCl・・・(1)

Claims (7)

  1. 四塩化珪素および水素を含有する出発混合物を1200℃を超え1400℃以下の範囲内の温度で反応させてトリクロロシランを含有する生成混合物を生成する工程と、
    生成混合物を、四塩化珪素およびトリクロロシランを含有し四塩化珪素およびトリクロロシランの合計質量を100モル%とした場合に四塩化珪素を80モル%以上95モル%以下の含有率で含む冷却液に直接接触させて冷却する工程と、
    を含むトリクロロシランの生産方法。
  2. 冷却液が、四塩化珪素およびトリクロロシランの合計質量を100モル%とした場合に、四塩化珪素を88モル%以上90モル%以下の含有率で含む冷却液である請求項1記載のトリクロロシランの生産方法。
  3. 冷却液が、50℃以下に温度調整されている、請求項1又は2記載のトリクロロシランの生産方法。
  4. 生成混合物を冷却する工程が、生成混合物を冷却液に直接接触させて、生成混合物の温度を1秒未満の時間内に600℃以下にまで冷却する工程を含む、請求項1ないし3のいずれか一項記載のトリクロロシランの生産方法。
  5. 生成混合物を冷却する工程が、
    生成混合物および1次冷却液を直接接触させて、生成混合物を1次冷却する工程と、
    1次冷却された生成混合物および2次冷却液を直接接触させて、生成混合物を2次冷却する工程と、
    を含む、請求項1ないし4のいずれか一項記載のトリクロロシランの生産方法。
  6. 生成混合物を冷却する工程が、生成混合物および冷却液を冷却器中で直接接触させて、生成混合物を冷却する工程を含み、
    冷却器が、
    生成混合物を供給するための生成ガス供給口と、
    1次冷却液を供給するために生成ガス供給口の近傍に設けられている1次冷却液供給口と、
    1次冷却液供給口よりも生成ガス供給口から離れて設けられている2次冷却液供給口と、
    1次冷却液供給口および2次冷却液供給口の間に設けられている流体制御器と、
    を備える、請求項5記載のトリクロロシランの生産方法。
  7. 流体制御器が、目皿を備える、請求項6記載のトリクロロシランの生産方法。
JP2010548324A 2009-01-30 2009-01-30 トリクロロシランの生産方法 Active JP5580749B2 (ja)

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
PCT/JP2009/051584 WO2010086996A1 (ja) 2009-01-30 2009-01-30 トリクロロシランの生産方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2010086996A1 JPWO2010086996A1 (ja) 2012-07-26
JP5580749B2 true JP5580749B2 (ja) 2014-08-27

Family

ID=42395266

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010548324A Active JP5580749B2 (ja) 2009-01-30 2009-01-30 トリクロロシランの生産方法

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP5580749B2 (ja)
WO (1) WO2010086996A1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110779695A (zh) * 2019-09-18 2020-02-11 北京航天试验技术研究所 一种爆破试验系统及爆破试验方法

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS4895396A (ja) * 1972-02-26 1973-12-07
JPS6081010A (ja) * 1983-10-13 1985-05-09 Denki Kagaku Kogyo Kk トリクロルシランの製造法
JPS6163519A (ja) * 1984-09-04 1986-04-01 Denki Kagaku Kogyo Kk モノシラン製造法
JP2008137885A (ja) * 2006-11-07 2008-06-19 Mitsubishi Materials Corp トリクロロシランの製造方法およびトリクロロシラン製造装置

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS4895396A (ja) * 1972-02-26 1973-12-07
JPS6081010A (ja) * 1983-10-13 1985-05-09 Denki Kagaku Kogyo Kk トリクロルシランの製造法
JPS6163519A (ja) * 1984-09-04 1986-04-01 Denki Kagaku Kogyo Kk モノシラン製造法
JP2008137885A (ja) * 2006-11-07 2008-06-19 Mitsubishi Materials Corp トリクロロシランの製造方法およびトリクロロシラン製造装置

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110779695A (zh) * 2019-09-18 2020-02-11 北京航天试验技术研究所 一种爆破试验系统及爆破试验方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPWO2010086996A1 (ja) 2012-07-26
WO2010086996A1 (ja) 2010-08-05

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5601438B2 (ja) トリクロロシランの製造方法およびトリクロロシラン製造装置
US8163261B2 (en) System and method for making Si2H6 and higher silanes
JP2008156209A (ja) トリクロロシランの製造方法およびトリクロロシランの製造装置
JP5205910B2 (ja) トリクロロシラン製造装置
KR20110067093A (ko) 클로로실란의 에너지-독립적 수소화를 위한 유동층 반응기, 그의 용도 및 방법
CN101679045B (zh) 三氯硅烷的制备方法和制备装置以及多晶硅的制备方法
CN101107197A (zh) 通过四氯硅烷的热氢化反应制备三氯硅烷的方法
Ramírez-Márquez et al. Process design and intensification for the production of solar grade silicon
Del Coso et al. Chemical vapor deposition model of polysilicon in a trichlorosilane and hydrogen system
JP5818012B2 (ja) クロロシラン重合物の分解方法
JPS62123011A (ja) トリクロルシランの製造方法およびその装置
JP5580749B2 (ja) トリクロロシランの生産方法
KR101055751B1 (ko) 촉매와 반응열을 이용한 삼염화실란의 제조방법 및 장치
Murray Solar production of aluminum by direct reduction: Preliminary results for two processes
JP2008208006A (ja) 水素製造装置に用いられる再生熱交換方式の分解器
US8168152B2 (en) Method for producing trichlorosilane and method for utilizing trichlorosilane
JP2008208005A (ja) 水素製造装置および水素製造方法
US8528830B2 (en) Methods and system for cooling a reaction effluent gas
JP5374576B2 (ja) トリクロロシラン冷却塔およびそれを用いたトリクロロシラン製造方法
JP2005314191A (ja) 多結晶シリコンの製造方法
KR20140043274A (ko) 염화수소의 제조 방법
CN106241815A (zh) 一种制备四氯化硅的反应器及应用
KR20150130402A (ko) 염소화 방법 및 그와 관련된 시스템에서의 온도 관리
TW201141786A (en) Tetrahalosilane converter
JPWO2010116500A1 (ja) トリクロロシラン冷却塔およびそれを用いたトリクロロシラン製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130924

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20131122

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20140701

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20140711

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5580749

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250