JP5580118B2 - 水性塗液用樹脂組成物、それが分散された水性塗液およびそれを塗布した塗布層付複合フィルム - Google Patents
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Description
その結果、環状構造の中にカルボジイミド基を有する化合物は、ポリエステルの末端に反応してもイソシアネート化合物を遊離しないことを見出し、本発明を完成した。
まず、本発明で使用する上記環状カルボジイミド化合物について、説明する。
本発明において、カルボジイミド化合物は環状構造を有する(以下、本カルボジイミド化合物を環状カルボジイミド化合物と略記することがある。)。環状カルボジイミド化合物は、環状構造を複数有していてもよい。
結合基(Q)は、下記式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される2〜4価の結合基であることが好ましい。
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基(2価)として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として下記式(2)で表される化合物(以下、「環状カルボジイミド化合物(a)」ということがある。)を挙げることができる。
かかる環状カルボジイミド化合物(a)としては、以下の化合物が挙げられる。
さらに、本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として下記式(3)で表される化合物(以下、「環状カルボジイミド化合物(b)」ということがある。)を挙げることができる。
Qbは、下記式(3−1)、(3−2)または(3−3)で表される3価の結合基であることが好ましい。
Yは、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーであることが好ましい。Yは結合部であり、複数の環状構造がYを介して結合し、式(3)で表される構造を形成している。
かかる環状カルボジイミド化合物(b)としては、下記化合物が挙げられる。
本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として下記式(4)で表される化合物(以下、「環状カルボジイミド化合物(c)」ということがある。)を挙げることができる。
脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(4)の化合物において、Qcは4価である。従って、これらの基の内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
Qcは、下記式(4−1)、(4−2)または(4−3)で表される4価の結合基であることが好ましい。
かかる環状カルボジイミド化合物(c)としては、下記化合物を挙げることができる。
本発明の環状カルボジイミド化合物の製造方法は特に限定無く、従来公知の方法により製造することができる。例として、アミン体からイソシアネート体を経由して製造する方法、アミン体からイソチオシアネート体を経由して製造する方法、アミン体からトリフェニルホスフィン体を経由して製造する方法、アミン体から尿素体を経由して製造する方法、アミン体からチオ尿素体を経由して製造する方法、カルボン酸体からイソシアネート体を経由して製造する方法、ラクタム体を誘導して製造する方法などが挙げられる。
Tetrahedron Letters,Vol.34,No.32,515−5158,1993.
Medium−and Large−Membered Rings from Bis(iminophosphoranes):An Efficient Preparation of Cyclic Carbodiimides, Pedro Molina etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.61,No.13,4289−4299,1996.
New Models for the Study of the Racemization Mechanism of Carbodiimides.Synthesis and Structure(X−ray Crystallography and 1H NMR) of Cyclic Carbodiimides, Pedro Molina etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.43,No8,1944−1946,1978.
Macrocyclic Ureas as Masked Isocyanates, Henri Ulrich etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.48,No.10,1694−1700,1983.
Synthesis and Reactions of Cyclic Carbodiimides,
R.Richteretal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.59,No.24,7306−7315,1994.
A New and Efficient Preparation of Cyclic Carbodiimides from Bis(iminophosphoranea)and the System Boc2O/DMAP,Pedro Molina etal.
(上記式中、Ar1およびAr2は各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基で置換されていてもよい芳香族基である。E1およびE2は各々独立に、ハロゲン原子、トルエンスルホニルオキシ基およびメタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−ブロモベンゼンスルホニルオキシ基からなる群から選ばれる基である。Araは、フェニル基である。Xは、下記式(i−1)から(i−3)の結合基である。)
本発明に用いる易接着性樹脂(A)は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂およびアクリル変性ポリエステル樹脂からなる群から選ばれ、カルボキシル基またはカルボキシル塩基を含有する、少なくとも1種の樹脂である。
本発明の水性塗液用樹脂組成物は、上述のバインダー樹脂100重量部に対し、上述の環状カルボジイミド化合物1〜35重量部の範囲で含有させたものである。環状カルボジイミド化合物の含有量が下限未満では、環状カルボジイミド化合物を添加したことによる効果が発現されがたく、他方上限を超えると、ゲル等が発生しやすくなる。好ましい環状カルボジイミド化合物の割合は、3〜20重量部、5〜15重量部の範囲である。
本発明の水性塗液は、前記本発明の水性塗液用樹脂組成物を、水性塗液の重量を基準として、水に1〜30重量%の範囲で含有させ、分散させたものである。水性塗液の固形分濃度は2〜20重量%が好ましく、特に3〜10重量%が好ましい。固形分濃度がこの範囲にあると水性塗液の粘度が塗布に適したものになる。本発明に用いる水性塗液は、水溶液、水分散液、乳化液等任意の形態で用いることができる。また、水性塗液には少量の溶剤が含まれていてもよい。
まず、本発明の水性塗液用樹脂組成物を、20℃で1リットルの水に対する溶解度が20g以上でかつ沸点が100℃以下、また100℃以下で水と共沸する親水性の有機溶媒に溶解する。この有機溶媒としてはジオキサン、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン等を例示することができる。かかる溶液に更に少量の界面活性剤を添加することもできる。
本発明におけるポリエステルフィルムは、それ自体公知のものを採用でき、ジカルボン酸成分とグリコール成分とからなる線状ポリエステルが好ましい。
このジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、4,4´−ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等を挙げることができ、特にテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。
かかるポリエステルは常法によりつくることができる。また、ポリエステルの固有粘度が0.45以上であるとフィルムの剛性が大きい等の機械的特性が良好となるため好ましい。
前記微粒子以外にも酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、蛍光増白剤、架橋剤、紫外線吸収剤等を必要に応じて添加することができる。
本発明の塗布層付複合フィルムは、前述の本発明の水性塗液を延伸可能な前述のポリエステルフィルムに塗布し、乾燥、延伸した後、熱処理して作ることができる。
具体的には、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、前記水性塗液を塗布し、乾燥、延伸した後、熱処理することで製造できる。水性塗液の塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用でき、例えばグラビアコート法、リバースロールコート法、ダイコート法、キスコート法、リバースキスコート法、オフセットグラビアコート法、マイヤーバーコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等を単独または組み合わせて適用することができる。水性塗液のWET塗布量は走行しているフィルム1m2当り1〜40g、特に2〜20gが好ましい。塗布量がこの範囲であると乾燥が容易になり、かつ塗布斑が生じ難いので好ましい。
尚、例中の平均分子量は数平均分子量を意味する。
フィルムの塗膜塗布面に、末端ビスアクリルポリウレタンオリゴマー、光重合開始剤、光増感剤および着色剤を配合したレジストインキを8μm塗布し、紫外線を照射して硬化させインキ被膜をつくった。次いでこの被膜面にセロテープ(登録商標)を貼付してから剥離し、剥離状況から接着性を下記のとおり評価した。
A:セロテープ(登録商標)とインキ被膜の間で剥離した。(接着性良好)
B:インキ被膜が部分的に凝集破壊した状態で剥離した。(接着性やや良好)
C:フィルムとインキ被膜の間で剥離した。(接着性不良)
塗膜を塗設していないポリエステルフィルムの表面(ブランクサンプル)と、塗膜を塗設したフィルムの塗膜塗設面(評価サンプル)を溶剤で湿した綿棒で15秒摩擦し、払拭後塗布面を染色し、着色度を比較観察し、評価サンプルの耐溶剤性を下記のとおり評価した。尚、溶剤にはメチルエチルケトン、トルエン、シクロヘキサノン混合溶剤を用いた。
A:ブランクサンプルとほぼ同等の着色度した。(耐溶剤性良好)
B:ブランクサンプルよりもやや淡色化に着色した。(耐溶剤性やや良好)
C:塗布層が溶解して着色しない。(耐溶剤性不良)
フィルムの塗膜塗布面と塗膜非塗布面とを合わせて、55℃×荷重50kg/cm2の条件下で、13時間保持した後、合わせ面の剥離強度を測定し、下記のとおり評価した。
A: 剥離強度≦7g (耐ブロッキング性良好)
B: 7g<剥離強度≦12g(耐ブロッキング性やや良好)
C:12g<剥離強度 (耐ブロッキング性不良)
水性塗液を塗布し、乾燥・延伸および熱処理を行い、その工程で官能評価により、測定者がイソシアネート臭を感じるかどうかで判定した。イソシアネート臭を感じないとき、作業環境の悪化がないとして、良とした。一方、イソシアネート臭を感じたときは、作業環境が悪化することから否と判断した。
o−ニトロフェノール(0.11mol)と1,2−ジブロモエタン(0.05mol)、炭酸カリウム(0.33mol)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)200mlを攪拌装置及び加熱装置を設置した反応装置にN2雰囲気下仕込み、130℃で12時間反応後、DMFを減圧により除去し、得られた固形物をジクロロメタン200mlに溶かし、水100mlで3回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、ジクロロメタンを減圧により除去し、中間生成物A(ニトロ体)を得た。
o−ニトロフェノール(0.11mol)とペンタエリトリチルテトラブロミド(0.025mol)、炭酸カリウム(0.33mol)、N,N−ジメチルホルムアミド200mlを攪拌装置及び加熱装置を設置した反応装置にN2雰囲気下仕込み、130℃で12時間反応後、DMFを減圧により除去し、得られた固形物をジクロロメタン200mlに溶かし、水100mlで3回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、ジクロロメタンを減圧により除去し、中間生成物D(ニトロ体)を得た。
固有粘度0.64のポリエチレンテレフタレートを溶融し、冷却ドラム上にキャストして未延伸フィルムとし、この未延伸フィルムを91℃に加熱し縦方向に3.5倍延伸して一軸延伸フィルムとした。次いでこの一軸延伸フィルムの片面に、2,6―ナフタレンジカルボン酸ジメチル90モル%、イソフタル酸ジメチル6モル%、5―ナトリウムスルホイソフタル酸4モル%、エチレングリコール85モル%及びビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物30モル%を用いて得られた共重合ポリエステル(平均分子量10,000)38重量部、メタクリル酸メチル成分34モル%、メタクリル酸エチル成分42モル%、アクリル酸エチル成分11モル%、アクリル酸成分1モル%、メタクリル酸グリシジル成分5モル%、アクリル酸2−ヒドロキシエチル成分4モル%及びN−メトキシメチルアクリルアミド成分3モル%の共重合体(平均分子量52,300)41重量部、前記参考例1で得られた環状カルボジイミド系化合物(1)11重量部、並びにエチレンオキシド・プロピレンオキシド・ブロック共重合体(平均分子量:7,330)10重量部からなる組成物の5重量%水性塗液をグラビアコーターで塗布した。次いで102℃で乾燥後、109℃で横方向に3.9倍延伸し、更に232℃で熱処理して総厚さ76μm、塗布層の厚さ0.11μmの塗布層付き複合フィルムをつくった。この塗布層付き複合フィルムの特性および作業環境の結果を表1に示す。
表1に示すように、カルボジイミド化合物の種類、配合量または塗膜の厚さが表1に示すようになるように塗布量を変更した以外は実施例1と同様にして塗布層付き複合フィルムを得た。これらの塗布層付き複合フィルムの特性および作業環境の結果を表1に示す。
カルボジイミド化合物を、表1に示すとおり、線状カルボジイミド化合物(D−1)〜(D−6)に変更した以外は、実施例1と同様にしてこの塗布層付き複合フィルムを得た。この塗布層付き複合フィルムの特性および作業環境の結果を表1に示す。
また、(D−1)〜(D−6)は下記に示した化合物である。
(D−1):CH3 N=C=NCH3 ……(D−1)
(D−2):C6 H5 N=C=NC6 H5 ……(D−2)
(D−3):NaOC2 H4 N=C=NC2 H4 ONa ……(D−3)
(D−4):C5 H11N=C=NC5 H11 ……(D−4)
(D−5):NaO3 SC2 H4 N=C=NC2 H4 SO3 Na…(D−5)
(D−6):NaOCOC2 H4 N=C=NC2 H4 COONa…(D−6)
尚、式(D−2)で−C6 H5 はフェニル基を示す。
Claims (3)
- (A)ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂からなる群より選ばれ、カルボキシル基またはカルボキシル塩基を含有する、少なくとも一種のバインダー樹脂100重量部と(B)カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を有する環状カルボジイミド化合物1〜35重量部とからなる水性塗液用樹脂組成物。
- 請求項1記載の水性塗液用樹脂組成物が、水に分散されたことを特徴とする水性塗液。
- 延伸可能なポリエステルフィルムの少なくとも片面に、請求項2記載の水性塗液を塗布し、乾燥、延伸した後、熱処理して製膜されたことを特徴とする塗布層付複合フィルム。
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