以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明を適用するエンジン1の冷却系(エンジン内水停止冷却系)について図1を参照して説明する。
この例の冷却系は、電動ウォータポンプ(電動WP)2、ラジエータ3、サーモスタット4、ヒータ5、排気熱回収器6、EGRクーラ7、切替弁10、及び、これら機器に冷却水を循環する冷却水通路200などを備えている。
冷却水通路200は、冷却水(例えばLLC:Long Life Coolant)を、エンジン1、ラジエータ3及びサーモスタット4を経由して循環させるエンジン冷却水通路201と、冷却水を、EGRクーラ7、排気熱回収器6、ヒータ5及びサーモスタット4を経由して循環させるヒータ通路202とを備えている。そして、この例では、これらエンジン冷却水通路201とヒータ通路202との冷却水循環に、1台の電動ウォータポンプ2を併用している。
エンジン1は、コンベンショナル車両やハイブリッド車両などに搭載されるガソリンエンジンやディーゼルエンジン等であって、シリンダブロック及びシリンダヘッドにウォータジャケット(図示せず)が設けられている。エンジン1には、冷却水出口(シリンダヘッドのウォータジャケット出口)1bの水温を検出するエンジン水温センサ21が配置されている。また、エンジン1の吸気通路には、吸入空気の温度を検出する吸気温センサ23、及び、エンジン1への吸入空気量を検出するエアフロメータ24が配置されている。これらエンジン水温センサ21、吸気温センサ23、及び、エアフロメータ24の各出力信号は、ECU(Electronic Control Unit)300に入力される。
電動ウォータポンプ2は、電動モータの回転数を制御することにより吐出流量(吐出圧)を可変に設定することが可能なウォータポンプであって、吐出口がエンジン1の冷却水入口(ウォータジャケットの入口)1aに連通するように配設されている。電動ウォータポンプ2の作動はECU300によって制御される。なお、電動ウォータポンプ2は、エンジン1の始動に伴って駆動され、エンジン1の運転状態等に応じて吐出流量が制御される。
サーモスタット4は、例えば感温部のサーモワックスの膨張・収縮によって作動する弁装置であって、冷却水温が比較的低い場合は、ラジエータ3と電動ウォータポンプ2との間の冷却水通路を遮断してラジエータ3(エンジン冷却水通路201)に冷却水を流さないようになっている。一方、エンジン1の暖機完了後、すなわち冷却水温度が比較的高い場合には、その冷却水温に応じてサーモスタット4が作動(開弁)してラジエータ3に冷却水の一部が流れることにより、冷却水が回収した熱がラジエータ3から大気に放出される。なお、この例において、サーモスタット4は、上記感温部の周辺水温(≒ワックス温度)が、後述する切替弁10の開弁温度(例えば70℃)よりも高い水温(例えば82℃以上)になったときに開弁するように設定されている。
ヒータ通路202は、エンジン1をバイパスするバイパス通路である。ヒータ通路202には、冷却水流れの上流側から、EGRクーラ7、排気熱回収器6、及び、ヒータ5が直列に接続されており、電動ウォータポンプ2から吐出した冷却水が、[EGRクーラ7→排気熱回収器6→ヒータ5→サーモスタット4→電動ウォータポンプ2]の順で循環する。ヒータ通路202には、EGRクーラ7と排気熱回収器6との間にヒータ接続通路202aが接続されている。このヒータ接続通路202aは切替弁10を介してエンジン1の冷却水出口(シリンダヘッドのウォータジャケット出口)1bに接続されている。切替弁(制御弁)10はヒータ接続通路202aを開閉する。切替弁10の詳細については後述する。
ヒータ5は、冷却水の熱を利用して車室内を暖房するための熱交換器であって、エアコンディショナの送風ダクトに臨んで配置されている。つまり、車室内の暖房時(ヒータON時)には送風ダクト内を流れる空調風をヒータ5(ヒータコア)に通過させて温風として車室内に供給する一方、それ以外(例えば冷房時)のとき(ヒータOFF時)には空調風がヒータ5をバイパスするようになっている。ヒータ5には、ヒータ入口水温センサ22が配置されている。このヒータ入口水温センサ22の出力信号はECU300に入力される。なお、ヒータ5の入口水温は、ヒータ通路202(バイパス通路)を流れる冷却水の温度と同等であるので、上記ヒータ入口水温センサ22がバイパス水温センサに相当する。
排気熱回収器6は、エンジン1の排気通路に配置され、排気ガスの熱を冷却水によって回収するための熱交換器であって、その回収した熱はエンジン暖機や車室内暖房などに利用される。EGRクーラ7は、エンジン1の排気通路を流れる排気ガスの一部を吸気通路に還流させるEGR通路に配置され、このEGR通路を通過(還流)するEGRガスを冷却するための熱交換器である。
−切替弁−
次に、上記冷却系に用いる切替弁10について図2を参照して説明する。
この例の切替弁10は、ハウジング11、弁体12、圧縮コイルばね13、及び、感温部14などを備えている。
ハウジング11には、図1に示すエンジン1の冷却水出口(シリンダヘッドのウォータジャケット出口)1bに接続される冷却水入口11a、ラジエータ3に接続されるラジエータ接続口11b、及び、ヒータ接続口11cが設けられている。このヒータ接続口11cは、図1に示すヒータ接続通路202aを介してヒータ通路202に接続される。
ハウジング11の内部には、バルブシート(弁座)111とばね座112とが互いに対向する状態で設けられている。これらバブルシート111とばね座112との間の空間(弁体12の上流側の空間)が水導入部11dとなっている。この水導入部11dに上記冷却水入口11aが連通しており、その水導入部11dを介してラジエータ接続口11bが冷却水入11aに連通している。また、弁体12の下流側の空間が水導出部11eとなっており、この水導出部11eに上記ヒータ接続口11cが連通している。
弁体12は、上記ハウジング11の内部で上記バルブシート111とばね座112との間に、そのバルブシート111に対し接離可能に配設されている。この弁体12と後述する感温部14のケース141とは一体化されている。また、弁体12とばね座112との間には圧縮コイルばね13が挟み込まれており、その圧縮コイルばね13の弾性力によって弁体12がバブルシート111に向けて付勢されている。
感温部(感温アクチュエータ)14はケース141及びロッド142を備えている。ロッド142は、弁体12の開閉方向に沿って延びる棒状の部材であって、ケース141に摺動自在に配設されている。ロッド142は弁体12を貫通しており、このロッド142に対し弁体12が開閉方向に摺動可能となっている。また、ロッド142の先端部はハウジング11の壁体11f(冷却水入口11aとは反対側の壁体)を貫通しており、その先端部がロッド保持部材16によって保持されている。
感温部14のケース141内には、感温部14の周辺水温(以下、切替弁周辺水温ともいう)の変化(ワックス温度変化)によって膨張・収縮するサーモワックス143が充填されており、このサーモワックス143の膨張・収縮によりロッド142のケース141に対する突出量が変化するようになっている。なお、サーモワックス143はゴム等からなるシール材144内に収容されている。
そして、以上の構造の切替弁10において、切替弁周辺水温(≒ワックス温度)Tvwが所定値(この例では70℃)よりも低いときには、ケース141からのロッド142の突出量が小さい(ケース141内へのロッド142の没入量が大きい)状態となり、弁体12がバルブシート111に圧縮コイルばね13の弾性力によって着座(閉弁)する(図2(A))。このような閉弁状態から、切替弁周辺水温Tvwが上記所定値以上(70℃以上)になると、感温部14のサーモワックス143が膨張する。このサーモワックス143の膨張により、ケース141からのロッド142の突き出し量が大きくなって、感温部14の全体つまり弁体12が圧縮コイルばね13の弾性力に抗してバブルシート111から離れる向きに移動して弁体12がバブルシート111から離座(開弁)する(図2(B))。
このように、この例の切替弁10は、切替弁周辺水温Tvwが所定値(70℃)よりも低いときには閉弁状態となり、図1に示すエンジン1の冷却水出口1b(エンジン冷却水通路201)とヒータ通路202とが遮断される(エンジン冷却水通路とバイパス通路との冷却水の循環が制限される)。一方、切替弁周辺水温Tvwが所定値以上(70℃以上)であるときには開弁状態となり、図1に示すエンジン1の冷却水出口1b(エンジン冷却水通路201)とヒータ通路202とが連通する。なお、冷却水入口11aとラジエータ接続口11bとは連通しているが、図1に示すサーモスタット4が閉弁状態であるときには、冷却水入口11aに流入した冷却水はラジエータ接続口11bには流れない。
ここで、この例の切替弁10においては、感温部14の内部に電気ヒータ15が埋め込まれており、この電気ヒータ15への通電により発生する熱によってサーモワックス143を溶かすことにより、切替弁10を強制的に開弁状態にすることもできる。なお、切替弁10の電気ヒータ15は切替弁コントローラ(図示せず)によって作動される。切替弁コントローラはECU300からの開弁要求に応じて切替弁10の電気ヒータ15への通電を行う。
−冷却系の動作説明−
図1に示すエンジン1の冷却系の冷却水通路を循環する冷却水の流れについて図3及び図4を参照して説明する。
まず、冷間中は、切替弁10の感温部14の周辺水温Tvwが低い(70℃未満)ので切替弁10が閉弁状態となり、エンジン1内(ウォータジャケット内)の冷却水の流通が停止される(エンジン内水停止)。これによりエンジン1が早期に暖機される。また、切替弁10が閉弁状態のときには、図3(A)に示すように、電動ウォータポンプ2の作動によりヒータ通路202内に冷却水が循環し、冷却水が[電動ウォータポンプ2→EGRクーラ7→排気熱回収器6→ヒータ5→サーモスタット4→電動ウォータポンプ2]の順で流れる。このような早期暖機中に、暖房の要求があるときには、排気熱回収器6にて回収した熱にてヒータ5に必要な熱量を賄うようにすればよい。
次に、エンジン1が半暖機状態になり、切替弁10の感温部14の周辺水温Tvwが所定以上(70℃以上)になると切替弁10が開弁する。切替弁10が開弁すると、図3(B)に示すように、上記ヒータ通路202内の冷却水循環に加えて、冷却水が、[電動ウォータポンプ2→エンジン1の冷却水入口1a→エンジン1内(ウォータジャケット内)→エンジン1の冷却水出口1b→切替弁10→ヒータ接続通路202a]の順で流れてエンジン1が冷却される。また、切替弁10が開弁状態になると、エンジン冷却水通路201内(エンジン1内)の冷却水とヒータ通路(バイパス通路)202内の冷却水とが混合される。
そして、エンジン1が完全暖機状態になると、図4に示すように、サーモスタット4が作動(開弁)してラジエータ3に冷却水の一部が流れるようになり、冷却水が回収した熱がラジエータ3から大気に放出される。
−ECU−
次に、ECU300について説明する。ECU300は、CPU、ROM、RAM及びバックアップRAMなどを備えている。ROMには、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPUは、ROMに記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。また、RAMはCPUでの演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAMはエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
ECU300には、上記エンジン水温センサ21、吸気温センサ23、及び、エアフロメータ24を含むエンジン1の運転状態を検出する各種センサが接続されている。また、ECU300にはヒータ入口水温センサ22及びイグニッションスイッチ(図示せず)等が接続されている。
また、ECU300は、図5に示すように、切替弁水温カウンタ301、サーモ水温カウンタ303、高水温継続カウンタ311、及び、低水温継続カウンタ312を備えている。高水温継続カウンタ311及び低水温継続カウンタ312は、それぞれ、時間を計時するカウンタである。なお、切替弁水温カウンタ301及びサーモ水温カウンタ303については後述する。
そして、ECU300は、エンジン運転状態を検出する各種センサの出力信号に基づいて、エンジン1のスロットルバルブの開度制御、燃料噴射量制御(インジェクタの開閉制御)などを含むエンジン1の各種制御を実行する。また、ECU300は、下記の「切替弁開故障判定処理」を実行する。
−切替弁開故障判定処理−
[判定処理例1]
切替弁10の開故障判定処理の一例について、図6のフローチャートを参照して説明する。この図6の処理ルーチンはECU300において実行される。図6の切替弁開故障判定処理では、切替弁水温カウンタ301、高水温継続カウンタ311、及び、低水温継続カウンタ312を用いる。
図6の処理ルーチンを説明する前に、この例の切替弁開故障判定処理に用いる「切替弁水温カウンタ301」及び「切替弁モニタ水温」と、後述するラジエータサーモ開故障判定処理に用いる「サーモ水温カウンタ303」及び「サーモモニタ水温」について説明する。
<切替弁水温カウンタ>
切替弁水温カウンタ301は、切替弁10としてクライテリアサーモ(閉弁状態となっても微量の漏れ(許容可能な漏れ)がある切替弁)を使用しているときの、エンジン水温センサ21の水温検出値の単位時間当たりの変化量(水温カウンタ変化率)[℃/sec]を積算(切替弁水温カウンタ値=切替弁水温カウンタ値+水温カウンタ変化率[℃/sec])するためのカウンタである。
この切替弁水温カウンタ301に用いる水温カウンタ変化率[℃/sec]は、エンジン始動時の閉弁要求に応じて切替弁10が閉弁している場合(切替弁10が正常である場合)の、エンジン実水温thw1(検出値)の変化率よりも小さい値であり、切替弁10が開故障している場合のエンジン実水温thw1(検出値)よりも大きな値であって、吸入空気量(ga)及びフューエルカット時(F/C時)などのエンジン状態をパラメータとして、ヒータ5が最大加熱時(ヒータmax)であり水温が上昇し難い条件下において正常時はこれよりも低値にはならない、という値(水温変化率)を実験・シミュレーション等によって適合した値をマップ化したマップを用いて算出する。
<切替弁モニタ水温>
切替弁モニタ水温mntthw1(図7参照)は、切替弁10の開故障検出用の水温であって、切替弁10の開弁温度に基づいて設定される。具体的には、例えば[切替弁モニタ水温=開弁温度(70℃)−切替弁製品ばらつき(5℃)−エンジン水温センサ21の誤差(2℃)=63℃]とする。
<サーモ水温カウンタ>
サーモ水温カウンタ303は、サーモスタット4としてクライテリアサーモ(閉弁状態となっても微量の漏れ(許容可能な漏れ)があるサーモスタット)を使用しているときの、エンジン水温センサ21の水温検出値の単位時間当たりの変化量(水温カウンタ変化率)[℃/sec]を積算(サーモ水温カウンタ値=サーモ水温カウンタ値+水温カウンタ変化率[℃/sec])するためのカウンタである。
このサーモ水温カウンタ303に用いる水温カウンタ変化率[℃/sec]は、サーモスタット閉弁時(正常時)の微小漏れにて流れる冷却水がラジエータによって冷却されるという点を考慮して、上記した切替弁水温カウンタ301の水温カウンタ切替率よりも小さい値とする。サーモ水温カウンタ303に用いる水温カウンタ変化率については、エンジン水温と外気温(吸気温最小値)との差、吸入空気量、アイドル運転時、エンジンストップ時、フューエルカット時(F/C時)などのエンジン状態をパラメータとして、実験・シミュレーション等によって適合した値(水温変化率)をマップ化したマップを用いて算出する。
<サーモモニタ水温>
サーモモニタ水温mntthw3(図8参照)は、ラジエータ3用のサーモスタット4(以下、ラジエータサーモ4ともいう)の開故障検出用の水温であって、ラジエータサーモ4の開弁温度に基づいて設定される。具体的には、例えば[サーモモニタ水温=開弁温度(82℃)−サーモスタット製品ばらつき(5℃)−エンジン水温センサ21の誤差(2℃)=75℃]とする。
次に、図6の制御ルーチンについて各処理ブロックごとに説明する。
図6の処理ルーチンはイグニッションスイッチがON操作された時点(IG−ON)で開始される。この処理ルーチンが開始されると、まずは、ステップST101において、エンジン水温センサ21及び吸気温センサ23の各出力信号に基づいて、エンジン始動時のエンジン冷却水温thw1及び吸気温thaを算出する。
次に、ステップST102において、切替弁判定の前提条件が成立しているか否かを判定する。具体的には、上記ステップST101で算出したエンジン始動時のエンジン水温thw1及び吸気温thaが、下記の条件(j1)〜(j3)の全てを満たしている場合は、切替弁判定の前提条件が成立したと判定してステップST103に進む。一方、条件(j1)〜(j3)のいずれか1つの条件を満たしていない場合(ステップST102の判定結果が否定判定(NO)である場合)は処理を終了する。
(j1)エンジン水温thw1が所定範囲内(例えば−10℃≦thw1≦7℃)である。
(J2)吸気温thaが所定範囲内(例えば−10℃≦tha≦7℃)である。
(J3)エンジン始動時のエンジン水温thw1と吸気温thaとの差(thw1−tha)が所定範囲内(例えば−15℃≦thw1−tha≦7℃)である。
上記切替弁判定の前提条件が成立した場合は、ステップST103において、切替弁水温カウンタ301の積算つまり上記thw1カウンタ変化率[℃/sec]の積算[切替弁水温カウンタ値[℃]=切替弁水温カウンタ値+水温カウンタ変化率]を開始する。なお、切替弁水温カウンタ301の初期値は「0」である。
また、上記した条件(j1)〜(j3)の全てを満たしているときに、後述するラジエータサーモ開故障判定処理でのサーモ水温カウンタ303の積算、つまり、上記水温カウンタ変化率[℃/sec]の積算[サーモ水温カウンタ値[℃]=サーモ水温カウンタ値+水温カウンタ変化率]を開始しておく。なお、サーモ水温カウンタ303の初期値は「0」である。
次に、ステップST104において、エンジン水温センサ21にて検出されるエンジン実水温thw1が上記切替弁モニタ水温未満(thw1<切替弁モニタ水温(63℃))であるか否かを判定する。その判定結果が否定判定(NO)である場合(thw1≧切替弁モニタ水温である場合)は、ステップST105において、低水温継続カウンタ312のカウント値を「0」にし、図7(A)に示すように、高水温継続カウンタ311をONにして計時(実thw1が切替弁モニタ水温mntthw1に達した時点からの計時)を開始する。その後にステップST106に進む。ステップST104の判定結果が肯定判定(YES)である場合([thw1<切替弁モニタ水温]である場合)はそのままステップST106に進む。
ステップST106では、切替弁水温カウンタ301の積算値cntthw1[℃]が上記切替弁モニタ水温未満(切替弁水温カウンタ値<切替弁モニタ水温(63℃))であるか否かを判定する。その判定結果が否定判定(NO)である場合([切替弁水温カウンタ値≧切替弁モニタ水温]である場合)は、ステップST107において、高水温継続カウンタ311のカウント値を「0」にし、図7(B)に示すように、低水温継続カウンタ312をONにして計時(切替弁水温カウンタ値cntthw1が切替弁モニタ水温mntthw1に達した時点からの計時)を開始する。その後にステップST109に進む。ステップST106の判定結果が肯定判定(YES)である場合は、ステップST108において低水温継続カウンタ312のカウント値を「0」にした後にステップST109に進む。
ステップST109では、上記高水温継続カウンタ311のカウント値が5sec以上であるか否かを判定し、その判定結果が肯定判定(YES)となった時点、つまり、切替弁水温カウンタ301の積算値cntthw1が切替弁モニタ水温mntthw1未満[切替弁水温カウンタ値<切替弁モニタ水温]であるときに、[エンジン実水温thw1≧切替弁モニタ水温]の状態が5秒以上連続したときには「切替弁正常」であると判定する(ステップST112)。
ステップST109の判定結果が否定判定(NO)である場合(「高水温継続カウンタでの計時継続中(カウント値<5sec)の場合」と、「高水温継続カウンタ=0の場合」とが含まれる)は、ステップST110に進む。
ステップST110では、「サーモ水温カウンタ切替弁モニタ水温到達フラグ」がONであるか否かを判定し、その判定結果が否定判定(NO)である場合はステップST111に進む。ステップST110の判定結果が肯定判定(YES)である場合には判定を行わない(ステップST114:未判定)。なお、この「未判定」及び「サーモ水温カウンタ切替弁モニタ水温到達フラグ」については後述する。
ステップST111では、上記低水温継続カウンタ312のカウント値が5sec以上であるか否かを判定する。その判定結果が否定判定(NO)である場合(「低水温継続カウンタでの計時継続中(カウント値<5sec)の場合」と、「低水温継続カウンタ=0の場合」とが含まれる)は上記ステップST103に戻る。
そして、ステップST111の判定結果が肯定判定(YES)となった時点、つまり、エンジン実水温thw1が切替弁モニタ水温mntthw1未満(thw1<切替弁モニタ水温)であるときに、[切替弁水温カウンタ値≧切替弁モニタ水温]の状態が5秒以上連続したときには「切替弁開故障」であると判定する(ステップST113)。
以上の図6の切替弁開故障判定処理について、図7を参照して具体的に説明する。
まず、エンジン始動時から、切替弁水温カウンタ301の積算(水温カウンタ変化率の積算)が開始され、その切替弁水温カウンタ301の積算値cntthw1[℃]が上昇していく。なお、エンジン始動時から、ラジエータサーモ開故障判定処理のサーモ水温カウンタ303についても積算(水温カウンタ変化率の積算)が開始され、そのサーモ水温カウンタ303の積算値cntthw3[℃]が上昇していく(ただし、cntthw3<cntthw1)。
ここで、エンジン始動時(冷間時など)において、切替弁10の閉弁要求に応じて、切替弁10が実際に閉じている場合(切替弁10が正常である場合)、エンジン水温センサ21にて検出されるエンジン実水温thw1の上昇率が、切替弁水温カウンタ302の積算値cntthw1の上昇率よりも大きくなるので、図7(A)示すように、切替弁水温カウンタ301の積算値cntthw1よりも先に、エンジン実水温thw1が切替弁モニタ水温mntthw1に到達する。
これに対し、切替弁10が開故障している場合、エンジン1内の冷却水が流出し、エンジン1内の冷却水とヒータ通路202内の冷却水とが混合するので、エンジン水温センサ21にて検出されるエンジン実水温thw1の上昇率は、切替弁10が正常である場合と比較して低くなる。つまり、切替弁10が開故障している場合は、図7(B)に示すように、エンジン実水温thw1よりも先に、切替弁水温カウンタ301の積算値cntthw1が切替弁モニタ水温mntthw1に到達する。
このような点に着目して、この例の切替弁開故障判定処理では、上述したように、エンジン始動後において、切替弁水温カウンタ301の積算値cntthw1が切替弁モニタ水温mntthw1未満であるときに、エンジン水温センサ21にて検出されるエンジン実水温thw1が切替弁モニタ水温mntthw1以上(エンジン実水温thw1≧切替弁モニタ水温)である状態(図7(A)の状態)が5秒以上連続した場合(エンジン実水温thw1の上昇率が第1エンジン水温上昇率(cntthw1の上昇率)以上である場合)は「切替弁正常」であると判定する。
一方、エンジン実水温thw1が切替弁モニタ水温mntthw1未満であるときに、エンジン始動後の切替弁水温カウンタ301の積算値cntthw1が切替弁モニタ水温mntthw1以上(切替弁水温カウンタ値≧切替弁モニタ水温)である状態(図7(B)の状態)が5秒以上連続した場合(エンジン実水温thw1の上昇率が第1エンジン水温上昇率(cntthw1の上昇率)よりも低くて第2エンジン水温上昇率(cntthw3の上昇率)よりも高い場合)には「切替弁開故障」であると判定する。
ここで、「[エンジン実水温thw1≧切替弁モニタ水温]の状態が5秒以上連続したとき」という条件、及び、「[切替弁水温カウンタ値≧切替弁モニタ水温]の状態が5秒以上連続したとき」という条件を設定しているのは、エンジン水温センサ21のセンサ値の振れ等による誤判定を防止するためである。
なお、「高水温継続カウンタ値」及び「低水温継続カウンタ値」に対して設定する値は「5sec」以外の任意の値であってもよい。
−ラジエータサーモ開故障判定処理−
次に、ECU300が実行するラジエータサーモの開故障判定処理について説明する。
この例のラジエータサーモ開故障判定処理では、上記サーモ水温カウンタ303の積算値cntthw3[℃]が、エンジン実水温thw1よりも先に、上記切替弁モニタ水温mntthw1(図8参照)に到達しているか否かを判定し、サーモ水温カウンタ303の積算値cntthw3が切替弁モニタ水温mntthw1に先に到達している場合は「サーモ水温カウンタ切替弁モニタ水温到達フラグ」を立てる(フラグON)。このような処理を実施する理由について図8を参照して説明する。
まず、ラジエータサーモ4が開故障している場合、切替弁10が正常であっても、エンジン1内の冷却水がラジエータ3を通って循環するので冷却水の水温が上昇しにくい。そのため、エンジン実水温thw1は、切替弁水温カウンタ301の積算値cntthw1よりも先に、切替弁モニタ水温mntthw1に到達できなくなるので、「切替弁開故障」と誤判定してしまう場合がある。これを防ぐために、上記した図6の切替弁開故障判定処理ルーチンにおいても、サーモスタット水温カウンタ302の積算値cntthw3を監視しておき、その積算値cntthw3の切替弁モニタ水温mntthw1への到達がエンジン実水温thw1よりも早い場合(図8に示す状況となる場合)は、ラジエータサーモ4の開故障の可能性が高いので、切替弁10の正常/開故障の判定は行わないようにする(図6のステップST114:未判定)。
ただし、サーモ水温カウンタ303の積算値cntthw3は、図6の切替弁開故障判定処理ルーチン内で算出するわけでなく、ラジエータサーモ開故障判定処理ルーチンで算出するので、上記サーモ水温カウンタ303の積算値cntthw3が切替弁モニタ水温mntthw1に到達したときに「サーモ水温カウンタ切替弁モニタ水温到達フラグ」を立てて(フラグON:図8参照)、その旨を「切替弁開故障判定処理ルーチン」側に知らせるようにする。
そして、「サーモ水温カウンタ切替弁モニタ水温到達フラグ」がONとなった場合、サーモ水温カウンタ303の積算値cntthw3がサーモモニタ水温mntthw3(図8参照)に到達した後に、ラジエータサーモ4の正常/開故障を判定する。具体的には、エンジン水温センサ21にて検出されるエンジン実水温thw1が、サーモ水温カウンタ303の積算値cntthw3よりも先にサーモモニタ水温mntthw3に到達している場合は「ラジエータサーモ正常」であると判定し、サーモ水温カウンタ303の積算値cntthw3が、エンジン実水温thw1よりも先にサーモモニタ水温mntthw3に到達した場合には「ラジエータサーモ開故障」であると判定する。
以上のように、この例の判定処理によれば、切替弁故障とサーモスタット故障とを区別することができ、切替弁の開故障を正確に判定することができる。
なお、この例では、イグニッションスイッチがON操作された時点(IG−ON)で図6の処理ルーチンを開始するようにしているが、エンジン1が搭載される車両がハイブリッド車両である場合、エンジン始動要求があったときに、図6の処理ルーチンを開始するようにしてもよい。
[判定処理例2]
次に、切替弁10の開故障判定処理の他の例について説明する。まず、この例の切替弁開故障判定処理の技術思想について説明する。
エンジン始動時(冷間時)等の切替弁閉弁要求時に、切替弁10が正常であり、切替弁10が実際に閉じている場合、実際のエンジン水温はエンジン暖機に伴って大きく上昇していくのに対し、実際のヒータ入口水温の温度上昇の度合いは低い(例えば、排気熱回収器6による加熱による温度上昇程度である)ので、これら実際のエンジン水温と実際のヒータ入口水温とは乖離する。つまり、エンジン水温センサ21にて検出されるエンジン水温thw1とヒータ入口水温センサ22にて検出されるヒータ入口水温thw2とは乖離する。これに対し、切替弁10が開故障している場合は、エンジン1内の冷却水とヒータ通路202内の冷却水とが混合して、エンジン1の熱がヒータ通路202内の冷却水に伝わるので、実際のエンジン水温と実際のヒータ入口水温とは略同等な温度になり、エンジン水温センサ21にて検出されるエンジン水温thw1とヒータ入口水温センサ22にて検出されるヒータ入口水温thw2とは同程度の値となる。
このような点に着目して、この例では、エンジン始動後のエンジン水温thw1とヒータ入口水温水温thw2との温度差に基づいて切替弁10の開故障を判定する。その具体的な処理の例について、図9フローチャートを参照して説明する。この図9の処理ルーチンはECU300において実行される。
図9の処理ルーチンはイグニッションスイッチがON操作された時点(IG−ON)で開始される。この処理ルーチンが開始されると、まずは、ステップST201において、エアフロメータ24の出力信号に基づいてエンジン始動時からの吸入空気量の積算値(Σga)を算出し、その吸入空気量積算値(Σga)が所定値[g]よりも大きくなったか否かを判定(エンジン始動がある程度の距離を走行したか否かを判定)する。その判定結果が肯定判定(YES)である場合はステップST202に進む。ステップST201の判定結果が否定判定(NO)である場合は、吸入空気量積算値(Σga)が所定値[g]よりも大きくなるまで処理を待機する。
上記ステップST201の判定に用いる所定値については、エンジン始動後、ある程度の距離を走行しないと、エンジン水温thw1とヒータ入口水温thw2とに温度差がつかないので、エンジン始動直後に切替弁10の正常/開故障判定を行うと誤判定が生じる可能性があるという点を考慮し、正確な判定が可能となる温度差(thw1−thw2)がつくのに必要な吸入空気量積算値(Σga)を実験・シミュレーション等によって取得しておき、その結果を基に適合すればよい。
ステップST202では、エンジン水温センサ21にて検出されるエンジン水温thw1が判定温度(例えば[判定温度=切替弁開弁温度(70℃)−切替弁製品ばらつき(5℃)−エンジン水温センサ21の誤差(2℃)=63℃])よりも小さいか否かを判定する。その判定結果が否定判定(NO)である場合は処理を終了する。ステップST202の判定結果が肯定判定(TES)である場合はステップST203に進む。
このステップST202の判定処理を行う理由は、この例で使用している切替弁10は感温弁であるので、エンジン始動後、実際のエンジン水温が上昇して切替弁10の開弁温度以上(開弁状態)になると、切替弁10の正常/開故障を判定できなくなってしまう、という状況を回避するためである。つまり、切替弁10が開弁しない温度域で切替弁10の判定を行うためにステップST202の処理を行う。
次に、ステップST203において、前回のトリップ(イグニッションONからイグニッションOFFまでの期間)で「ラジエータサーモ開故障判定なし」であるか否かを判定し、その判定結果が否定判定(NO)である場合(前回トリップでラジエータサーモ開故障判定している場合)は処理を終了する。この場合の処理については後述する。ステップST203の判定結果が肯定判定(YES)である場合(前回トリップでラジエータサーモ開故障判定なしの場合)はステップST204に進む。
ステップST204では、エンジン水温センサ21にて検出されるエンジン水温thw1と、ヒータ入口水温センサ22にて検出されるヒータ入口水温thw2との温度差(|thw1−thw2|)を算出し、その温度差が規定値(例えば20℃)未満であるか否かを判定する。その判定結果が否定判定(NO)である場合(|thw1−thw2|≧規定値である場合)は「切替弁正常」であると判定する(ステップST205)。ステップST204の判定結果が肯定判定(YES)である場合(|thw1−thw2|<規定値である場合)は「切替弁開故障」であると判定する(ステップST206)。
次に、図10を参照して、この例の切替弁開故障判定処理について具体的に説明する。
上述したように、切替弁10が正常である場合、図10の破線で示すように、エンジン始動後のエンジン水温thw1(検出値)の上昇速度は、ヒータ入口水温thw2(検出値)の上昇速度よりも大きくなるので、エンジン水温thw1とヒータ入口水温thw2とは大きく乖離する。これに対し、切替弁10が開故障している場合、図10の実線で示すように、エンジン水温thw1とヒータ入口水温thw2とは同程度の値となる。
このような点を利用して、この例では、図10に示すように、吸入空気量積算値(Σga)が所定値[g]よりも大きくなった時点からエンジン水温thw1が上記判定温度(例えば63℃)に到達するまでの間を判定期間とし、その判定期間内において、エンジン水温thw1とヒータ入口水温thw2との温度差(|thw1−thw2|)が規定値(例えば20℃)未満である場合は「切替弁開故障」であると判定し、上記温度差が規定値以上である場合は「切替弁正常」と判定する。
ここで、切替弁10が正常(開故障なし)であっても、ラジエータサーモ4が開故障している場合には、エンジン水温thw1とヒータ入口水温thw2とが同程度の値となる場合があるので、それらエンジン水温thw1とヒータ入口水温thw2との温度差で判定を行うと、誤判定する可能性がある。このような点を考慮し、この例では、前回トリップで[ラジエータサーモ開故障」が判定されている場合(上記図9のステップST203が否定判定である場合)には、切替弁10の正常/開故障の判定は行わないようにする(未判定とする)。
具体的には、例えば、下記の表1に示すように、前々回トリップ(1トリップ目)での判定結果が「ラジエータサーモ正常」及び「切替弁正常」であり、前回トリップ(2トリップ目)で「ラジエータサーモ異常(開故障)」であると判定された場合、切替弁OBD(On Board Diagnosis)において仮異常フラグON(MIL(Malfunction Indicator Lamp)消灯)とし、ラジエータサーモOBDにおいても仮異常フラグON(MIL消灯)とする。そして、今回トリップ(3トリップ目)においても続けて「ラジエータサーモ異常(開故障)」であると判定された場合には、切替弁10の正常/開故障の判定は行わない(マスク:MIL消灯)ことにより、切替弁OBDでの誤MIL点灯を防止する。なお、2回トリップで連続して「切替弁異常(開故障)」及び「ラジエータサーモ(開故障)」を判定した場合はMILを点灯する。
なお、この例において、ラジエータサーモ4の正常/開故障の判定には、例えば、上記した「従来のサーモスタット開故障判定方法(特開2002−174121号公報、特開2001−241327号公報参照)」を適用してもよいし、他の判定方法を採用してもよい。
ここで、この例では、イグニッションスイッチがON操作された時点(IG−ON)で図9の処理ルーチンを開始するようにしているが、エンジン1が搭載される車両がハイブリッド車両である場合、エンジン始動要求があったときに、図9の処理ルーチンを開始するようにしてもよい。
−他の実施形態−
以上の例では、冷却水の循環に電動ウォータポンプを用いているが、本発明はこれに限られることなく、機械式ウォータポンプを冷却水循環に用いてもよい。
以上の例では、熱交換器としてヒータ、排気熱回収器及びEGRクーラが組み込まれた冷却系に本発明を適用した例を示したが、これら排気熱回収器、EGRクーラに加えて、ATF(Automatic Transmission fluid)ウォーマ、ATFクーラなどの熱交換器が組み込まれた冷却系にも本発明を適用できる。