以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の内部構造の概略を示す図である。画像形成装置1は例えば、コピー、プリンタ、スキャナ及びファクシミリの機能を有するデジタル複合機に適用することができる。
画像形成装置1は装置本体100、装置本体100の上に配置された原稿読取装置200及び装置本体100の上部前面に配置された操作部300を備える。原稿読取装置200は原稿読取部201と原稿読取部201の上に配置された原稿給紙部203により構成される。
原稿給紙部203は自動原稿送り装置(ADF:Automatic Document Feeder)としての機能を有しており、原稿を送る方向の上流側から順に配置された原稿トレイ205、ピックアップローラ207、用紙分離機構209、レジストローラ211、搬送ドラム213、排紙ローラ215及び排紙トレイ217等を備える。原稿トレイ205には読み取りの対象とされる原稿が載置される。
ピックアップローラ207は原稿トレイ205の上方に昇降可能に配置されている。ピックアップローラ207の近傍には用紙分離機構209が設けられている。用紙分離機構209は駆動ローラ209a、従動ローラ209b、無端ベルト209c及び分離ローラ209dを備える。駆動ローラ209aは従動ローラ209bよりも下流側に位置している。駆動ローラ209aと従動ローラ209bには無端ベルト209cが掛け渡されており、これらのローラは給紙ローラとして機能する。駆動ローラ209aと従動ローラ209bの下方には無端ベルト209cを押圧するように分離ローラ209dが配置されている。
ピックアップローラ207及び駆動ローラ209aは原稿トレイ205に載置された原稿を原稿トレイ205から送り出す方向に回転する。これに対して、分離ローラ209dは原稿トレイ205に載置された原稿を原稿トレイ205へ戻す方向に回転する。これらによって、ピックアップローラ207により一枚ずつ取り込まれた原稿が複数枚重ねて搬送されるのを防止している。
用紙分離機構209の近傍にはレジストローラ211が配置されている。レジストローラ211は原稿を挟むように配置された駆動ローラ211aと従動ローラ211bから構成される。用紙分離機構209から搬送されてきた原稿はレジストローラ211により正しい角度に補正されて、搬送ドラム213へ送られる。原稿は搬送ドラム213によって原稿読取スリット233の上を通過させられた後、排紙ローラ215によって排紙トレイ217へ排出される。原稿読取スリット233は後で説明する原稿読取部201に備えられている。
原稿給紙部203はさらに、切換ガイド219、反転ローラ221及び反転搬送路223により構成される原稿反転機構を備える。原稿反転機構は原稿の両面を自動で読み取る際に使用される。両面読み取り時、切換ガイド219は下側に切り替えられおり、原稿読取部201で表面が読み取られた原稿は、排紙ローラ215及び反転ローラ221によって反転搬送路223へ搬送される。その後、切換ガイド219が上側に切り替えられ、反転ローラ221が逆回転することにより原稿が搬送ドラム213へ再び送られる。そして原稿読取部201で原稿の裏面が読み取られ、原稿は排紙ローラ215によって排紙トレイ217に排紙される。
原稿読取部201は原稿の画像を光学的に読み取って画像データを生成する。原稿読取部201はプラテンガラス231、原稿読取スリット233、光源235、第1ミラー237、第2ミラー239、第3ミラー241、第1キャリッジ243、第2キャリッジ245、結像レンズ247及びCCD(Charge Coupled Device)249を備える。
プラテンガラス231及び原稿読取スリット233は原稿読取部201の上面に位置している。プラテンガラス231はフラットベッド読取モードで利用され、プラテンガラス231の上に原稿を載置し、原稿が読み取られる。原稿読取スリット233は搬送ドラム213の下方に位置している。原稿読取スリット233はADF読取モードで利用され、搬送ドラム213によって搬送された原稿は、原稿読取スリット233と搬送ドラム213の間を通過する際に読み取られる。
光源235及び第1ミラー237は第1キャリッジ243によって保持されている。第2ミラー239及び第3ミラー241は第2キャリッジ245によって保持されている。光源235から照射されて原稿で反射された光は、第1ミラー237、第2ミラー239、第3ミラー241及び結像レンズ247により、CCD249に導かれる。
フラットベッド読取モードではプラテンガラス231上に原稿を載置し、キャリッジ(第1キャリッジ243及び第2キャリッジ245)をプラテンガラス231の長手方向(副走査方向Y)に移動させながらCCD249により原稿を読み取る。これに対してADF読取モードでは、キャリッジ(第1キャリッジ243及び第2キャリッジ245)を原稿読取スリット233と対向する位置に移動させて、原稿給紙部203から送られてきた原稿を、原稿読取スリット233を通してCCD249により読み取る。CCD249は読み取った原稿を画像データとして出力する。
装置本体100は用紙貯留部101、画像形成部103及び定着部105を備える。用紙貯留部101は装置本体100の最下部に配置されており、用紙の束を貯留することができる複数の給紙カセット107を備える。給紙カセット107に貯留された用紙の束において、最上位の用紙がピックアップローラ109の駆動により、用紙搬送路111へ向けて繰り出される。用紙は用紙搬送路111を通って、画像形成部103へ搬送される。
画像形成部103は搬送されてきた用紙に画像データを基にしてトナー画像を形成する。画像形成部103は感光体ドラム113、除電部115、帯電部117、露光部119、現像部121Bk,121Y,121M,121C、転写ドラム123及び転写ローラ125を備える。
除電部115は感光体ドラム113の周面から残留電荷を除去する装置である。帯電部117は除電後の感光体ドラム113の周面を帯電させる装置である。露光部119は画像データ(原稿読取部201のCCD249から出力された画像データ、パソコンから送信された画像データ、ファクシミリ受信の画像データ等)に対応する光を生成し、帯電された感光体ドラム113の周面に照射することにより、感光体ドラム113の周面に静電潜像を形成する装置である。
現像部121Bk,121Y,121M,121Cは、静電潜像が形成されている感光体ドラム113の周面に、ブラック(Bk)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色のトナー画像を形成させる装置である。
転写ドラム123の周面で、感光体ドラム113に形成された各色のトナー画像が転写されて重ね合わされる。転写ローラ125は転写ドラム123の周面のトナー画像を、用紙貯留部101から搬送されてきた用紙に転写させるローラである。
トナー画像が転写された用紙は定着部105に送られる。定着部105において、トナー画像と用紙に熱と圧力が加えられて、トナー画像を用紙に定着させる。これにより、用紙への画像の印刷が完了する。用紙はスタックトレイ127又は排紙トレイ129に排紙される。
操作部300は操作キー部301と表示部303を備える。操作キー部301にはハードキーからなる操作キーが設けられている。具体的にはスタートキー、テンキー、ストップキー、リセットキー、コピー、プリンタ、スキャナ及びファクシミリを切り換えるための機能切換キー等が設けられている。表示部303はタッチパネル機能を有し、表示部303の画面には各種の操作及び動作の内容等が表示されると共にソフトキーからなる操作キーが表示される。
図2は図1に示す画像形成装置1の電気的な構成を示すブロック図である。画像形成装置1は装置本体100、原稿読取部201、原稿給紙部203、操作部300、制御部400及び通信部500等がバスによって相互に接続された構成を有する。装置本体100、原稿読取部201、原稿給紙部203及び操作部300に関しては既に説明したので、説明を省略する。
制御部400はCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び画像メモリ等を備える。CPUは画像形成装置1を動作させるために必要な制御を、画像形成装置1を構成する上記ハードウェアに対して実行する。ROMは画像形成装置1の動作の制御に必要なソフトウェアを記憶している。RAMはソフトウェアの実行時に発生するデータの一時的な記憶及びアプリケーションソフトの記憶等に利用される。画像メモリは画像データ(原稿読取部201から出力された画像データ、パソコンから送信された画像データ、ファクシミリ受信の画像データ等)を一時的に記憶する。
制御部400はモード選択部401、モータ制御部403並びにモータの回転検知で用いる記憶部405及び判定部407を備える。
モード選択部401は自動原稿送り装置として機能する原稿給紙部203での原稿の読み取りにおいて、複数枚モードと一枚モードをユーザが操作部300を用いて操作入力することによって選択する。複数枚モードとは原稿給紙部203によって複数枚の原稿を一枚ずつ自動送りするモードであり、一枚モードとは一枚の原稿を自動送りするモードである。一枚モードは一枚の原稿のみを読み取る場合に利用され、図1に示すピックアップローラ207及び分離ローラ209dを共に原稿トレイ205から原稿を送り出す方向に回転させることにより、一枚の原稿に反対方向の力(原稿トレイ205から原稿を送り出す方向の力と原稿トレイ205へ原稿を戻す方向の力)が同時に作用することを防ぎ、これにより原稿が傷まないようにすることができる。
モータ制御部403は原稿給紙部203に備えられるステッピングモータ13を正逆回転可能に制御する。ステッピングモータ13の回転により図1に示すピックアップローラ207及び分離ローラ209dが回転する。モータ制御部403は複数枚モードの場合にステッピングモータ13を正回転させる制御をし、一枚モードの場合にステッピングモータ13を逆回転させる制御をする。この制御については後で詳細に説明する。
記憶部405、判定部407及びセンサ5はモータ回転検知装置3の構成要素である。センサ5はバスを介して制御部400に接続されており、投光部7と受光部9を含む。
記憶部405は投光部7からの光が光通過制御部材に照射されて、受光部9で受光されることにより受光部9から出力され、受光量に応じて異なる大きさの出力信号について、ステッピングモータ13が正回転の状態、ステッピングモータ13が逆回転の状態及びステッピングモータ13が不回転の状態のうち少なくとも二つの状態の場合のデータを予め記憶している。少なくとも二つの状態の場合のデータとしたのは、二つの状態(例えば、ステッピングモータ13が正回転の状態、ステッピングモータ13が逆回転の状態)をそれぞれ判定できれば、その二つの状態に該当しない場合を残りの状態(ステッピングモータ13が不回転の状態)と判定できるからである。データ及び光通過制御部材については後で説明する。
判定部407は受光部9から出力される出力信号を記憶部405に記憶されているデータと比較して、ステッピングモータ13が正回転、逆回転、又は不回転のいずれの状態か判定する。
通信部500はファクシミリ通信部501及びネットワークI/F部503を備える。ファクシミリ通信部501は相手先ファクシミリとの電話回線の接続を制御するNCU(Network Control Unit)及びファクシミリ通信用の信号を変復調する変復調回路を備える。ファクシミリ通信部501は電話回線505に接続される。
ネットワークI/F部503はLAN(Local Area Network)507に接続される。ネットワークI/F部503はLAN507に接続されたパソコン等の端末装置との間で通信を実行するための通信インターフェイス回路である。
本実施形態はステッピングモータ13の回転検知装置を原稿読取装置200に適用したことを一つの特徴とする。これについて説明する。図3はステッピングモータ13により駆動される駆動機構11を示す図である。原稿給紙部203に設けられたピックアップローラ207と分離ローラ209d(正逆回転ローラの一例)は、ステッピングモータ13によって駆動される。
駆動機構11はステッピングモータ13及びワンウェイクラッチ15,17等を備える。ワンウェイクラッチ15,17によって、ピックアップローラ207はステッピングモータ13の正回転、逆回転のいずれにおいても同じ方向(原稿トレイ205から原稿を送り出す方向)に回転して原稿トレイ205から原稿をピックアップする。
ステッピングモータ13の回転軸にはギア19が固定されている。ステッピングモータ13の回転駆動力はギア19を介してワンウェイクラッチ15,17に伝達される。
ワンウェイクラッチ15の外輪にはギア(以下、外輪ギア15a)が固定されており、内輪にはギア(以下、内輪ギア15b)が固定されている。外輪ギア15aはギア19、内輪ギア15bはギア21にそれぞれかみ合わされている。
外輪ギア15aが時計回りR1の方向に回転した場合、内輪ギア15bは追従して時計回りR1の方向に回転するが、外輪ギア15aが反時計回りR2の方向に回転した場合、内輪ギア15bは追従せず回転しない。
ワンウェイクラッチ17の外輪にはギア(以下、外輪ギア17a)が固定されており、内輪にはギア(以下、内輪ギア17b)が固定されている。外輪ギア17aはギア19にかみ合わされている。外輪ギア17aが反時計回りR2の方向に回転した場合、内輪ギア17bは追従して反時計回りR2の方向に回転するが、外輪ギア17aが時計回りR1の方向に回転した場合、内輪ギア17bは追従せず回転しない。
内輪ギア17bとギア21はギア25にかみ合わされている。ギア25はピックアップローラ207の回転軸23に固定されている。
ステッピングモータ13のギア19にはギア27がかみ合わされている。ギア27はギア31にかみ合わされている。ギア31は分離ローラ209dの回転軸29に固定されている。回転軸29にはパルス板33(光通過制御部材の一例)が固定されている。パルス板33はギア31が回転することにより、分離ローラ209dと同じ方向に回転する。
駆動機構11の動作について図4及び図5を用いて説明する。図4はステッピングモータ13が正回転した場合の駆動機構11の動作を示しており、図5はステッピングモータ13が逆回転した場合の駆動機構11の動作を示している。
図4に示すように、ステッピングモータ13が正回転した場合、ギア19は時計回りに回転し、ワンウェイクラッチ15の外輪ギア15a及びワンウェイクラッチ17の外輪ギア17aは反時計回りに回転する。
外輪ギア15aが反時計回りに回転するので、内輪ギア15bは回転しない。これに対して、外輪ギア17aが反時計回りに回転するので、内輪ギア17bも反時計回りに回転し、ギア25が時計回りに回転する。これにより、ピックアップローラ207が時計回り、すなわち図1に示す原稿トレイ205に載置された原稿を原稿トレイ205から送る方向へ回転する。
分離ローラ209d側の動作を説明する。ギア19が時計回りに回転することにより、ギア27が反時計回り、ギア31が時計回りに回転する。これにより、分離ローラ209d及びパルス板33が時計回りに回転する。分離ローラ209dが時計回りに回転するとは、図1に示す原稿トレイ205の一番上の原稿を下の原稿から分離するために下の原稿を原稿トレイ205へ戻す方向に回転することを意味する。
これに対して、ステッピングモータ13が逆回転した場合、図5に示すように、ギア19は反時計回りに回転し、ワンウェイクラッチ15の外輪ギア15a及びワンウェイクラッチ17の外輪ギア17aは時計回りに回転する。
外輪ギア17aが時計回りに回転するので、内輪ギア17bは回転しない。これに対して、外輪ギア15aが時計回りに回転するので、内輪ギア15bも時計回りに回転し、ギア21を介してギア25が時計回りに回転する。これにより、ステッピングモータ13の正回転の場合と同じく、ピックアップローラ207が時計回り、すなわち図1に示す原稿トレイ205に載置された原稿を原稿トレイ205から送る方向へ回転する。
分離ローラ209d側ではギア19が反時計回りに回転することにより、ギア27が時計回り、ギア31が反時計回りに回転する。これにより、ステッピングモータ13の正回転の場合とは逆に、分離ローラ209d及びパルス板33が反時計回りに回転する。分離ローラ209dが反時計回りに回転するとは、図1に示す原稿トレイ205に載置された原稿を原稿トレイ205から送る方向へ回転することを意味する。
以上説明したように、本実施形態において分離ローラ209dは原稿トレイ205へ原稿を戻す方向に回転する場合と原稿トレイ205から原稿を送る方向へ回転する場合とがあり、正逆回転ローラとして機能する。詳しくは、複数枚モードにおいてステッピングモータ13が正回転する場合、分離ローラ209dは原稿トレイ205の一番上の原稿を下の原稿から分離するローラとして機能して、下の原稿を原稿トレイ205へ戻す方向に回転する。これに対して、一枚モードにおいてステッピングモータ13が逆回転する場合、分離ローラ209dは原稿トレイ205から原稿を送り出す方向に回転する。
複数枚モードでは原稿トレイ205に複数枚の原稿が重ねて載置されており、ピックアップローラ207により一枚ずつ取り込まれた原稿が二枚以上重ねて搬送されるのを防止するために、下の原稿を原稿トレイ205へ戻す方向に分離ローラ209dを回転させている。
原稿トレイ205へ原稿を戻す方向の力と原稿トレイ205から原稿を送り出す方向の力とが一枚の原稿に作用すれば、その原稿には反対方向の力が同時に作用することにより、原稿を傷める可能性がある。そこで、一枚モードでは原稿トレイ205に一枚の原稿が載置されており、二枚以上の原稿が重ねて搬送されることはないので、分離ローラ209dを原稿トレイ205から原稿を送り出す方向に回転させている。これにより、一枚モードでは分離ローラ209d、ピックアップローラ207のいずれも原稿トレイ205から原稿を送り出す方向に回転するので、一枚の原稿には原稿トレイ205から原稿を送り出す方向の力しか作用しない。したがって、一枚の原稿に反対方向の力が同時に作用することより、原稿を傷つける可能性をなくすことができる。
しかし、ステッピングモータ13が脱調してステッピングモータ13が意図した方向と逆方向に回転することにより、分離ローラ209d(正逆回転ローラ)が意図した方向と逆方向に回転すれば、複数枚モード、一枚モードのいずれにおいても不具合が生じる。具体的には複数枚モードでは原稿が二枚以上重ねて搬送されるおそれが生じる。一枚モードでは一枚の原稿に反対方向の力が同時に作用することにより原稿を傷めるおそれが生じる。
そこで、本実施形態ではステッピングモータ13が意図した方向に回転しているか否かについてモータ回転検知装置3を利用して判断する。図6はモータ回転検知装置3に備えられるセンサ5とパルス板33の斜視図である。
センサ5は投光部7と受光部9を備える。投光部7は一つの光源を備え、受光部9へ向けて光を照射する。受光部9は投光部7から照射された光を受光する複数の受光素子を備える。図7は受光部9の模式図である。六個の受光素子35a,35b,35c,35d,35e,35fが一列に配置されている。各受光素子を区別しない場合は受光素子35と記載する。受光素子35は例えばフォトダイオードを含み、受光すればHレベル信号(例えば1V電圧)を出力し、受光しなければLレベル信号(例えば0V電圧)を出力する。なお、受光すればLレベル信号を出力し、受光しなければHレベル信号を出力する受光素子35でもよい。加算部37は例えばオペアンプを用いて構成される加算器であり、6個の受光素子35から出力された信号を加算して、受光部9からの出力信号として出力する。
図6に示すパルス板33は光通過制御部材の一例であり、ステッピングモータ13が正回転することにより一方の方向に回転し、かつモータステッピング13が逆回転することにより他方の方向に回転して、投光部7から受光部9へ照射された光が通過する量を経時的に三段階異ならせる。パルス板33にはその外周に沿って複数のパターン部41が、パルス板33の回転方向に沿って繰り返し形成されている。パターン部41はパルス板33の回転方向に沿って三段の階段状に変化しており、第一段部43、第二段部45及び第三段部47からなる三段の階段形状を有する。パルス板33が回転することにより、複数のパターン部41が投光部7と受光部9との間を通過して、投光部7から受光部9へ照射される光がパターン部41に順番に照射される。
パターン部41はパルス板33の回転方向に沿って三段の階段状に変化する形状を有する。これにより、投光部7から受光部9へ照射された光がパターン部41を通過する量を経時的に三段階異ならせる。これについて図8を用いて説明する。
図8はパターン部41と受光部9の位置関係を示す図である。図8の(A)に示すように、パターン部41の第一段部43が受光部9の位置に到達した時、六つの受光素子35の全部がパターン部41によって遮られていない。したがって、六つの受光素子35のそれぞれからHレベル信号(1V電圧)が出力され、加算部37で加算されて6Vの電圧が出力される。
図8の(B)に示すように、パターン部41の第二段部45が受光部9の位置に到達した時、内側の三つの受光素子35a,35b,35cがパターン部41により遮られており、外側の三つの受光素子35d,35e,35fがパターン部41によって遮られていない。したがって、内側の三つの受光素子35a,35b,35cのそれぞれからLレベル信号(0V電圧)が出力され、外側の三つの受光素子35d,35e,35fのそれぞれからHレベル信号(1V電圧)が出力され、加算部37で加算されて3Vの電圧が出力される。
図8の(C)に示すように、パターン部41の第三段部47が受光部9の位置に到達した時、内側の五つの受光素子35a,35b,35c,35d,35eがパターン部41により遮られており、一番外側の受光素子35fがパターン部41によって遮られていない。したがって、内側の五つの受光素子35a,35b,35c,35d,35eのそれぞれからLレベル信号(0V電圧)が出力され、一番外側の受光素子35fからHレベル信号(1V電圧)が出力され、加算部37で加算されて1Vの電圧が出力される。
以上のように複数の受光素子35がパルス板33の中心軸から放射状に延びる線上に一列に並べて配置することにより、パターン部41によって受光が遮られる受光素子35の数が各段部で異なるようにされている。
図9は6個の受光素子35から出力された信号を加算して生成された出力信号(出力電圧)の波形を示す図である。縦軸が出力電圧の値を示し、横軸が時間を示している。図4に示すようにステッピングモータ13が正回転した場合、パルス板33が時計回りの方向に回転して、図9の(A)に示すように、6Vから3Vに、3Vから1Vに、1Vから6Vに変化する波形が繰り返される。
これに対して、図5に示すようにステッピングモータ13が逆回転した場合、パルス板33が反時計回りの方向に回転して、図9の(B)に示すように、1Vから3Vに、3Vから6V、6Vから1Vに変化する波形が繰り返される。
図9から分かるように、投光部7から受光部9へ照射された光がパターン部41を通過する量を経時的に少なくとも三段階異ならせれば、ステッピングモータ13が正回転と逆回転で受光部9からの出力電圧の波形が異なる。したがって、この波形からステッピングモータ13の回転方向を判定することができる。これに対して、投光部7から受光部9へ照射された光がパターン部41を通過する量を経時的に二回異ならせるだけでは、ステッピングモータ13の正回転と逆回転において受光部9からの出力信号に差が生じず、ステッピンブモータ13の回転方向を判定できない。例えば経時的に二回異ならせることにより、出力電圧として1Vと6Vの電圧が出力される場合、ステッピンブモータ13の正回転、逆回転のいずれにおいても、1Vから6V、6Vから1Vの波形が繰り返されるので、ステッピンブモータ13の回転方向を判定することができない。
なお、光がパターン部41を通過する量が経時的に三段階異なっていればよいので、光がパターン部41を通過する量が0の状態を含めてもよい。通過量が0の状態とは、図8の(C)で全ての受光素子35がパターン部41で遮られている状態である。
図示はしていないがパルス板33が回転していない場合、受光部9から出力される出力電圧は一定である。すなわち、パルス板33が図8の(A)で示す状態で停止していれば受光部9からは6Vの一定電圧が出力され、図8の(B)で示す状態で停止していれば受光部9からは3Vの一定電圧が出力され、図8の(C)で示す状態で停止していれば受光部9から1Vの電圧が出力される。
図9の(A)に示す出力電圧が6Vから3V、3Vから1V、1Vから6Vに変化するデータと、図9の(B)に示す出力電圧が1Vから3V、3Vから6V、6Vから1Vに変化するデータが図2に示す記憶部405に予め記憶されている。受光部9から出力される出力電圧を記憶部405に記憶されているデータと比較して、ステッピングモータ13が正回転、逆回転又は不回転のいずれの状態かを判定する。図10はこの判定を説明するフローチャートである。
受光部9から出力電圧が出力される(ステップS1)。その出力電圧は判定部407に送られる。判定部407は、出力電圧の変化(波形の変化)が記憶部405に記憶されているステッピングモータ13が正回転の状態の出力電圧のデータ(図9(A))と一致するか判断する(ステップS3)。判定部407は一致していると判断すれば(ステップS3でYes)、ステッピングモータ13が正回転していると判定する(ステップS5)。
判定部407が一致していないと判断すれば(ステップS3でNo)、ステップS1の出力電圧の変化が記憶部405に記憶されているステッピングモータ13が逆回転の状態の出力電圧のデータ(図9(B))と一致するか判断する(ステップS7)。判定部407が一致していると判断すれば(ステップS7でYes)、ステッピングモータ13が逆回転していると判定する(ステップS9)。これに対して、判定部407が一致していないと判定すれば(ステップS7でNo)、ステッピングモータ13が不回転の状態と判定する(ステップS11)。
以上説明したように本実施形態によれば、ステッピングモータ13の正回転により一方の方向に回転し、ステッピングモータ13の逆回転により他方の方向に回転するパルス板33(光通過制御部材)に形成されたパターン部41によって、投光部7から照射された光がパルス板33を通過する量を経時的に三段階異ならせている。これにより、ステッピングモータ13の正回転、逆回転、不回転に応じて、受光部9から出力される出力電圧を異ならせることができるので、ステッピングモータ13が正回転、逆回転又は不回転のいずれの状態かを判定することができる。
パルス板33は分離ローラ209dの回転軸29に固定されているが、パルス板33の取り付け位置はこれに限定されない。パルス板33はステッピングモータ13が正回転することにより一方の方向に回転し、かつステッピングモータ13が逆回転することにより他方の方向に回転すればよい。したがって、パルス板33はステッピングモータ13の回転軸、ギア27の回転軸に取り付けてもよい。
また、本実施形態によれば、複数のパターン部41がパルス板33の回転方向に沿って繰り返し形成されているので、投光部7から受光部9へ照射される光が通過する量を経時的に三段階異ならせることを連続的に繰り返すことができる。したがって、複数のパターン部41を繰り返し形成しない場合(例えばパターン部41を一つだけ形成した場合)に比べて、ステッピングモータ13が正回転、逆回転、不回転のいずれの状態かを判定する精度を高めることができる。
さらに、本実施形態によれば、図8に示すように三段の階段状に変化するパターン部41によって受光が遮られる受光素子35の数が、各段部で異なるように6個の受光素子35が配置されており、6個の受光素子35から出力された信号を加算して出力信号としている。したがって、図9に示すように、光の通過量の経時的変化に応じて、受光部9からの出力信号の波形を階段状に変化させることができるので、ステッピングモータ13が正回転、逆回転、不回転のいずれの状態かを判定する精度を高めることができる。
なお、本実施形態において受光部9が一つの受光素子35でもよい(第1の変形例)。図11は第1の変形例の受光部9を示す図である。第1の変形例では受光素子35として、受光したか否かに応じてHレベル信号又はLレベル信号を出力する素子ではなく、受光量に応じて異なる大きさの出力信号を出力する素子を用いる必要がある。第1の変形例ではパターン部41の第二段部45が受光部9の位置に到達した時、受光素子35の受光面が半分だけパターン部41により遮られる位置に受光素子35を配置する。このようにすれば、パターン部41の第一段部43が受光部9の位置に到達した時、受光素子35の受光面の全面がパターン部41により遮られず、パターン部41の第三段部47が受光部9の位置に到達した時、受光素子35の受光面の全面がパターン部41に遮られる。したがって、値の異なる3つの電圧が受光部9から経時的に出力される。
また、受光部9が一つの受光素子35の態様によれば、パターン部41の替わりに、図12に示すように、光の透過量がそれぞれ異なる3つの光透過部材51,53,55(例えば光透過部材51の光透過量>光透過部材53の光透過量>光透過部材55の光透過量)をパターン部41の箇所に、パルス板33の回転方向に並べて配置してもよい(第2の変形例)。
本実施形態では回転を検知する対象となるモータとしてステッピングモータ13を例に説明した。ステッピングモータ13は入力するパルスによって正回転、逆回転、不回転の制御がされるので、脱調により意図した制御がされなくなる状態が生じやすい。したがって、ステッピングモータ13に本実施形態に係るモータ回転検知装置3を適用するのは有効である。
次に、モータ回転検知装置3を原稿読取装置200に適用した場合の動作について図13及び図14を用いて説明する。図13は複数枚モードの動作を説明するフローチャートであり、図14は一枚モードの動作を説明するフローチャートである。
図13に示すように、ユーザは図2に示す操作部300を操作して、複数枚モードを指定する操作入力をすることにより、モード選択部401は複数枚モードを選択する(ステップS21)。ユーザは複数枚の原稿を原稿トレイ205に載置して、操作部300のスタートキーを操作する(ステップS23)。これにより原稿給紙部203において複数枚の原稿が一枚ずつ自動送りされて(ステップS25)、原稿読取部201で原稿が一枚ずつ読み取られる。
判定部407は図10に示すフローに従って、ステッピングモータ13が図4に示す正回転している状態か判定する(ステップS27)。判定部407はステッピングモータ13が正回転している状態と判定すれば(ステップS27でYes)、制御部400が最後の原稿の読み取りを終了したか判断する(ステップS29)。制御部400が最後の原稿の読み取りを終了していないと判断すれば(ステップS29でNo)、ステップS27に戻り、最後の原稿の読み取りが終了したと判断すれば(ステップS29でYes)、複数枚モードの原稿読み取りが終了する。
一方、判定部407はステッピングモータ13が正回転していない状態と判定すれば(ステップS27でNo)、モータ制御部403がステッピングモータ13の回転を停止させる制御をする(ステップS31)。そして、モータ制御部403はステッピングモータ13を正回転させる制御をして(ステップS33)、ステップS27に戻る。
次に一枚モードの動作について説明する。図14に示すように、ユーザは操作部300を操作して、一枚モードを指定する操作入力をすることにより、モード選択部401は一枚モードを選択する(ステップS41)。ユーザは一枚の原稿を原稿トレイ205に載置して、操作部300のスタートキーを操作する(ステップS43)。これにより原稿給紙部203において一枚の原稿が自動送りされる(ステップS45)。
判定部407は図10に示すフローに従ってステッピングモータ13が逆回転の状態か判定する(ステップS47)。判定部407はステッピングモータ13が逆回転している状態と判定すれば(ステップS47でYes)、制御部400が一枚の原稿の読み取りを終了したか判断する(ステップS49)。制御部400が一枚の原稿の読み取りを終了していないと判断すれば(ステップS49でNo)、ステップS47に戻り、一枚の原稿の読み取りが終了したと判断すれば(ステップS49でYes)、一枚モードの原稿読み取りが終了する。
一方、判定部407はステッピングモータ13が逆回転の状態でないと判定すれば(ステップS47でNo)、モータ制御部403がステッピングモータ13の回転を停止させる制御をする(ステップS51)。そして、モータ制御部403はステッピングモータ13を逆回転させる制御をして(ステップS53)、ステップS47に戻る。
以上説明したように、本実施形態によれば、ステッピングモータ13が意図した方向に回転していない状態であるとモータ回転検知装置3によって判定されれば、モータ制御部403がステッピングモータ13の回転を一旦停止することにより、不具合の発生(複数枚モードでは原稿が二枚以上重ねて搬送される。一枚モードでは一枚の原稿に反対方向の力が同時に作用することにより原稿を傷める)を防止している。
尚、本実施形態によれば、複数枚モードにおいてステッピングモータ13を正回転させる制御をさせたが、複数枚モードにおいて、原稿トレイ205に載置された原稿が最後の一枚になったことをセンサ等で検知し、最後の一枚になったことが検知されれば、一枚モードの制御を適用してステッピングモータを逆回転させる制御をさせれば、最後の一枚の原稿に反対方向の力(原稿トレイ205から原稿を送り出す方向の力と原稿トレイ205へ原稿を戻す方向の力)が同時に作用することを防ぎ、これにより複数枚モード時の最後の一枚の原稿に対しても原稿が傷まないようにすることができる。