以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電力系統システム10の構成を示すブロック図である。なお、以降の図における同一部分には、同一符号を付してその詳しい説明を省略し、異なる部分について主に述べる。以降の実施形態も同様にして重複する説明を省略する。
電力系統システム10は、インバータ制御回路1と、遮断器2と、系統インピーダンス3と、交流電源4と、変換器用変圧器5と、インバータ6と、直流電源7と、負荷8,8Tと、遮断器操作指令回路91と、遮断器状態監視回路92と、上位制御系装置93と、切換指令生成回路CKと、パルス発生回路CPと、電流検出器DIと、電圧検出器DVM,DVPと、伝送回路DS1,DS2とを備えた構成である。
交流電源4は、遮断器2及び系統インピーダンス3を介して、交流母線BSと接続されている。インバータ6は、交流側(出力側)が、変換器用変圧器5を介して、交流母線BSと接続されている。インバータ6は、直流側(入力側)に、直流電源7が接続されている。負荷8は、遮断器2を介さずに、交流母線BSと接続されている。負荷8Tは、遮断器2を介して、交流母線BSと接続されている。電流検出器DIは、変換器用変圧器5と交流母線BSとの間の電気経路に設けられている。電圧検出器DVM,DVPは、交流母線BSに設けられている。
インバータ6は、直流電源7から供給された直流電力を交流電力に変換する。インバータ6は、変換した交流電力を交流母線BSに供給する。インバータ6は、インバータ制御回路1により制御される自励式インバータである。なお、直流電源7は、直接的に直流電力を発生させる装置に限らず、交流電力を直流電力に変換するコンバータでもよい。
遮断器2が開放されると、交流電源4及び負荷8Tは、交流母線BSから切り離される。この場合、インバータ6は、交流母線BSに単独で交流電力を負荷8に供給する単独運転が行われる。遮断器2が投入されると、交流電源4及び負荷8Tは、交流母線BSに接続される。この場合、インバータ6は、交流電源4と連系して、交流電力を負荷8,8Tに供給する連系運転が行われる。
電流検出器DIは、インバータ6の出力電流Isを検出する。電流検出器DIは、検出した出力電流Isをインバータ制御回路1に出力する。
電圧検出器DVMは、インバータ6の電圧制御をするための交流母線BSの電圧の大きさVmagを検出する。電圧検出器DVMは、検出した交流母線電圧の大きさVmagをインバータ制御回路1に出力する。
電圧検出器DVPは、インバータ6の単独運転時に用いる位相信号の発振に用いるために、交流母線BSの電圧である交流母線電圧Vpを検出する。電圧検出器DVPは、検出した交流母線電圧Vpをインバータ制御回路1に出力する。
遮断器操作指令回路91は、遮断器2を開放又は投入するための操作指令SSを出力する。遮断器操作指令回路91は、伝送回路DS1を介して、切換指令生成回路CKに操作指令SSを出力する。遮断器操作指令回路91は、遮断器2を開放する場合は、操作指令SSを「1」にして出力する。即ち、操作指令SSが「1」の場合は、操作指令SSは、開放指令となる。遮断器操作指令回路91は、遮断器2を投入する場合は、操作指令SSを「0」にして出力する。即ち、操作指令SSが「0」の場合は、操作指令SSは、投入指令となる。
遮断器状態監視回路92は、遮断器2から受信する信号SJに基づいて、遮断器2の開閉状態を監視する。遮断器状態監視回路92は、遮断器2の状態を状態信号SJKとして、伝送回路DS2を介して、切換指令生成回路CKに出力する。遮断器状態監視回路92は、遮断器2が開放状態の場合は、状態信号SJKを「1」にして出力する。遮断器状態監視回路92は、遮断器2が投入状態の場合は、状態信号SJKを「0」にして出力する。
上位制御系装置93は、インバータ6から出力させる有効電流指令値Idrefo及び無効電流指令値Iqrefoを、インバータ制御回路1に出力する。
切換指令生成回路CKは、インバータ6の制御方式を切換えるための切換指令SK1,SK2を生成する回路である。切換指令生成回路CKは、生成した切換指令SK1,SK2をインバータ制御回路1に出力する。
次に、切換指令生成回路CKの詳細な構成について説明する。
切換指令生成回路CKは、OR回路O11を含む構成である。
OR回路O11には、遮断器操作指令回路91から出力された操作指令SSと遮断器状態監視回路92から出力された状態信号SJKとが入力される。OR回路O11は、操作指令SSと状態信号SJKとの論理和を演算する。
切換指令生成回路CKは、OR回路O11による演算結果を、切換指令SK1として生成する。従って、切換指令SK1が「1」の場合は、遮断器2が開放されようとしている状態であるか、又は遮断器2が開放された状態であることを示している。切換指令SK1が「0」の場合は、遮断器2が投入されている状態であることを示している。
切換指令生成回路CKは、遮断器状態監視回路92から出力された状態信号SJKを、切換指令SK2として生成する。切換指令SK2が「1」の場合は、遮断器2が開放された状態であることを示している。切換指令SK2が「0」の場合は、遮断器2が投入されている状態であることを示している。また、遮断器2に開放指令が出力されているが、遮断器2の開放がまだ完了していない状態の場合も、切換指令SK2は、「0」である。
インバータ制御回路1は、インバータ6を制御するための回路である。インバータ制御回路1は、切換指令生成回路CKにより生成された切換指令SK1,SK2により、連系運転制御、単独運転制御、又は切換時制御のいずれかの制御方式が選択される。インバータ制御回路1は、インバータ出力電圧信号Vc(t)を生成する。インバータ制御回路1は、生成したインバータ出力電圧信号Vc(t)をパルス発生回路CPに出力する。
パルス発生回路CPは、インバータ制御回路1により生成されたインバータ出力電圧信号Vc(t)に基づいて、ON/OFFパルス信号を発生させる。パルス発生回路CPがON/OFFパルス信号をインバータ6に与えることにより、インバータ6は、出力電圧がインバータ出力電圧信号Vc(t)になるように制御される。
図2は、本実施形態に係るインバータ制御回路1の構成を示すブロック図である。
インバータ制御回路1は、dq軸変換回路11と、1次遅れ回路12と、リミッタ回路13と、ゲイン切換回路14と、電流制御回路15と、電圧制御回路16と、単独運転用位相発振回路17と、位相検出回路18と、スイッチ回路SW11,SW12,SW13,SW14,SW15,SW16,SW17と、乗算器M11,M12と、加算器D11,D12,D13と、減算器U11,U12とを備えた構成である。
スイッチ回路SW11,SW12,SW14〜SW17には、切換指令生成回路CKから切換指令SK1が入力される。スイッチ回路SW13には、切換指令生成回路CKから切換指令SK2が入力される。ゲイン切換回路14には、切換指令生成回路CKから切換指令SK2が入力される。
スイッチ回路SW11〜SW17は、入力された切換指令SK1,SK2が「1」の場合は、接点PAが選択される。スイッチ回路SW11〜SW17は、入力された切換指令SK1,SK2が「0」の場合は、接点PBが選択される。スイッチ回路SW11〜SW17は、選択された接点PA,PBに入力された信号を出力する。スイッチ回路SW16とスイッチ回路SW17とは、連動して動作する。従って、スイッチ回路SW16とスイッチ回路SW17は、常に同一の接点PA,PBが選択されている。
まず、インバータ6を連系運転させる連系運転制御を行う場合におけるインバータ制御回路1の構成について説明する。
インバータ制御回路1が連系運転制御を行う場合は、遮断器2が投入されている状態(操作指令SS=0、状態信号SJK=0)である。この場合、切換指令SK1,SK2は、共に「0」である。従って、スイッチ回路SW11,SW12,SW13,SW14,SW15,SW16,SW17は、全て接点PBが選択されている。
位相検出回路18には、電圧検出器DVPにより検出された交流母線電圧Vpが入力される。位相検出回路18は、交流母線電圧Vpに基づいて、電圧位相θ、正弦波信号sinθ、正弦波信号cosθ、d軸成分(有効電力成分)電圧Vd、及びq軸成分(無効電力成分)電圧Vqを算出する。位相検出回路18は、検出した電圧位相θが入力信号である交流母線電圧Vpの位相に完全に追従するように、比例積分回路によるフィードバック制御が行われる。
位相検出回路18は、算出した電圧位相θをスイッチ回路SW14の接点PBに出力する。スイッチ回路SW14は、接点PBに入力された電圧位相θを、dq軸変換回路11に出力する。
位相検出回路18は、算出した正弦波信号sinθをスイッチ回路SW16の接点PBに出力する。スイッチ回路SW16は、接点PBに入力された正弦波信号sinθを、乗算器M12に出力する。
位相検出回路18は、算出した正弦波信号cosθをスイッチ回路SW17の接点PBに出力する。スイッチ回路SW17は、接点PBに入力された正弦波信号cosθを、乗算器M11に出力する。
位相検出回路18は、算出したd軸成分電圧Vdをスイッチ回路SW11の接点PBに出力する。スイッチ回路SW11は、接点PBに入力されたd軸成分電圧Vdを、加算器D11に出力する。
位相検出回路18は、算出したq軸成分電圧Vqをスイッチ回路SW15の接点PBに入力する。スイッチ回路SW15は、接点PBに入力されたq軸成分電圧Vqを、加算器D12に出力する。
dq軸変換回路11には、電流検出器DIにより検出されたインバータ6の出力電流Isが入力される。dq軸変換回路11は、位相検出回路18から入力された電圧位相θに基づいて、出力電流Isをd軸成分(有効電力成分)Idとq軸成分(無効電力成分)Iqに変換する。dq軸変換回路11は、変換したdq軸成分電流Id,Iqを、減算器U12に出力する。
スイッチ回路SW12の接点PBには、上位制御系装置93から有効電流指令値Idrefo及び無効電流指令値Iqrefoが入力される。スイッチ回路SW12は、接点PBに入力された有効電流指令値Idrefo及び無効電流指令値Iqrefoを、スイッチ回路SW13の接点PBに出力する。スイッチ回路SW13は、接点PBに入力された有効電流指令値Idrefo及び無効電流指令値Iqrefoを、リミッタ回路13に出力する。
リミッタ回路13には、上下限リミット値として、例えば定格電力相当の正負の電流値が設定されている。リミッタ回路13は、入力された有効電流指令値Idrefo及び無効電流指令値Iqrefoを上下限リミット値で制限する。リミッタ回路13は、この制限をした値を、有効電流指令値Idref及び無効電流指令値Iqrefとして、減算器U12に出力する。
減算器U12は、dq軸変換回路11から入力されたdq軸成分電流Id,Iqと各電流指令値Idref,Iqrefとのそれぞれのdq軸成分毎に差分を演算する。減算器U12は、演算した各差分を電流制御回路15に出力する。
電流制御回路15は、減算器U12から入力された差分が零になるように制御する。電流制御回路15は、制御するために演算された値を、dq軸成分毎に加算器D11,D12に出力する。
加算器D11は、位相検出回路18からスイッチ回路SW11を介して入力されたd軸成分電圧Vdに、電流制御回路15から入力されたd軸成分の値を加算する。加算器D11は、演算した値をd軸成分電圧Vdcとして乗算器M11に出力する。
加算器D12は、位相検出回路18からスイッチ回路SW15を介して入力されたq軸成分電圧Vqに、電流制御回路15から入力されたq軸成分の値を加算する。加算器D12は、演算した値をq軸成分電圧Vqcとして乗算器M12に出力する。
乗算器M11は、加算器D11から入力されたd軸成分電圧Vdcに、位相検出回路18からスイッチ回路SW17を介して入力された正弦波信号cosθを乗算する。乗算器M11は、演算した値を加算器D13に出力する。
乗算器M12は、加算器D12から入力されたq軸成分電圧Vqcに、位相検出回路18からスイッチ回路SW16を介して入力された正弦波信号sinθを乗算する。乗算器M12は、演算した値を加算器D13に出力する。
加算器D13は、乗算器M11から入力された値と乗算器M12から入力された値を加算する。加算器D13は、演算した値をインバータ出力電圧信号Vc(t)として、パルス発生回路CPに出力する。即ち、Vc(t)=Vdc×cosθ+Vqc×sinθとなる。
パルス発生回路CPは、インバータ出力電圧信号Vc(t)に基づくON/OFFパルス信号を、インバータ6に与える。これにより、インバータ6は、上位制御系装置93からリミッタ回路13を介して得られる有効電流指令値Idref及び無効電流指令値Iqrefに従って、有効電力及び無効電力を出力するように運転される。
このとき、インバータ6は、交流電源4と分担して、負荷8,8Tに電力を供給する。従って、インバータ6の出力電力は、負荷8,8Tの消費電力と必ずしも同じではない。
次に、インバータ6を単独運転させる単独運転制御を行う場合におけるインバータ制御回路1の構成について説明する。
インバータ制御回路1が単独運転制御を行う場合は、遮断器2が開放されている状態(操作指令SS=1、状態信号SJK=1)である。この場合、切換指令SK1,SK2は、共に「1」である。従って、スイッチ回路SW11,SW12,SW13,SW14,SW15,SW16,SW17は、全て接点PAが選択されている。ゲイン切換回路14には、切換指令SK2が「1」として入力される。
減算器U11には、電圧検出器DVMにより検出された交流母線電圧検出値(交流母線電圧の大きさ)Vmagと電圧指令値Vrefとが入力される。減算器U11は、交流母線電圧検出値Vmagと電圧指令値Vrefとの差分を演算する。減算器U11は、演算した差分を電圧制御回路16に出力する。
電圧制御回路16には、減算器U11により演算された差分と電圧指令値Vrefとが入力される。電圧制御回路16は、交流母線電圧検出値Vmagが、電圧指令値Vrefに一致するように、インバータ出力電圧の大きさVcmを調整する。電圧制御回路16は、演算したインバータ出力電圧の大きさVcmを、スイッチ回路SW11の接点PAに出力する。スイッチ回路SW11は、接点PAに入力されたインバータ出力電圧の大きさVcmを、加算器D11に出力する。
単独運転用位相発振回路17には、電圧検出器DVPにより検出された交流母線電圧Vpが入力される。単独運転用位相発振回路17は、交流母線電圧Vpに基づいて、電圧位相θ、正弦波信号sinθ、及び正弦波信号cosθを算出する。
ここで、連系運転制御における位相検出回路18では、交流母線BSの電圧位相に完全に追従した電圧位相(位相信号)θを得るため、比例積分回路によるフィードバック制御を用いている。これに対して、単独運転制御の場合は、交流母線電圧の位相を決めるのがインバータ6の出力電圧であるため、比例積分回路を用いると動作が不安定になる。そのため、1次遅れ回路又は比例回路によるフィードバック制御を行う。交流母線BSの電圧位相と単独運転用位相発振回路17の出力位相にある程度の差をもたせて運転する。
単独運転用位相発振回路17は、算出した電圧位相θをスイッチ回路SW14の接点PAに出力する。スイッチ回路SW14は、接点PAに入力された電圧位相θを、dq軸変換回路11に出力する。
単独運転用位相発振回路17は、算出した正弦波信号sinθをスイッチ回路SW16の接点PAに出力する。スイッチ回路SW16は、接点PAに入力された正弦波信号sinθを、乗算器M12に出力する。
単独運転用位相発振回路17は、算出した正弦波信号cosθをスイッチ回路SW17の接点PAに出力する。スイッチ回路SW17は、接点PAに入力された正弦波信号cosθを、乗算器M11に出力する。
dq軸変換回路11には、電流検出器DIにより検出されたインバータ6の出力電流Isが入力される。dq軸変換回路11は、単独運転用位相発振回路17から入力された電圧位相θに基づいて、出力電流Isをd軸成分(有効電力成分)Idとq軸成分(無効電力成分)Iqに変換する。dq軸変換回路11は、変換したdq軸成分電流Id,Iqを、1次遅れ回路12及び減算器U12に出力する。
1次遅れ回路12は、dq軸変換回路11により演算されたdq軸成分電流Id,Iqに1次遅れの演算をする。即ち、1次遅れ回路12は、dq軸電流指令値Idref,Iqrefを得るための定常的なインバータ出力電流ISのdq軸成分を演算する。1次遅れ回路12は、演算した値をスイッチ回路SW13の接点PAに出力する。スイッチ回路SW13は、接点PAに入力されたdq軸成分電流Id,Iqに1次遅れの演算をした値をリミッタ回路13に出力する。
リミッタ回路13には、連系運転制御の場合と同様に、上下限リミット値が設定されている。リミッタ回路13は、dq軸成分電流Id,Iqに1次遅れの演算をした値を上下限リミット値で制限する。リミッタ回路13は、この制限した値を、有効電流指令値Idref及び無効電流指令値Iqrefとして、減算器U12に出力する。
減算器U12は、dq軸変換回路11から入力されたdq軸成分電流Id,Iqと各電流指令値Idref,Iqrefとのそれぞれのdq軸成分毎に差分を演算する。減算器U12は、演算した各差分を電流制御回路15に出力する。
ゲイン切換回路14は、切換指令SK2が「1」の場合、電流制御回路15のゲインを、連系運転制御の場合と比べて小さくする。ゲイン切換回路14は、切換指令SK2が「0」の場合、電流制御回路15のゲインを、連系運転制御時のゲインにする。ここでは、ゲイン切換回路14には、切換指令SK2が「1」として入力される。よって、ゲイン切換回路14は、電流制御回路15のゲインを小さくする。
電流制御回路15は、ゲイン切換回路14により切換えられたゲインを用いて、減算器U12から入力された差分が零になるように制御する。電流制御回路15は、制御するために演算された値を、dq軸成分毎に加算器D11,D12に出力する。
ここで、ゲイン切換回路14によるゲインの切換えについて説明する。
連系運転制御では、電流制御が主体で運転される。このため、電流指令値Idref,Iqrefに対する高速で高精度の追従性が必要である。よって、電流制御回路15には、比較的ゲインの大きな比例積分回路を用いる。一方、単独運転制御では、基本的に連系運転制御と同等であるが、電圧制御が主体であり、電流制御は、電圧制御出力に対する補正を行うための制御である。よって、連系運転制御に比べて小さなゲインの比例積分回路にする必要がある。このため、単独運転制御では、ゲイン切換回路14により、電流制御回路15のゲインを連系運転制御の場合と比べて小さくする。なお、切換指令SK2により、電流制御回路15を比例積分回路から1次遅れ回路又は比例回路に切換えてもよい。
加算器D11は、電圧制御回路16からスイッチ回路SW11を介して入力されたインバータ出力電圧の大きさVcmに、電流制御回路15から入力されたd軸成分の値を加算する。加算器D11は、演算した値をd軸成分電圧Vdcとして乗算器M11に出力する。
スイッチ回路SW15は、接点PAが選択されているため、接点PAに入力されている予め設定された「0」を加算器D12に出力する。
加算器D12は、電流制御回路15から入力されたq軸成分の値に、スイッチ回路SW15から入力された「0」を加算する。加算器D12は、演算した値をq軸成分電圧Vqcとして乗算器M12に出力する。即ち、加算器D12は、電流制御回路15から入力されたq軸成分の値を、そのままq軸成分電圧Vqcとして出力する。
乗算器M11は、加算器D11から入力されたd軸成分電圧Vdcに、単独運転用位相発振回路17からスイッチ回路SW17を介して入力された正弦波信号cosθを乗算する。乗算器M11は、演算した値を加算器D13に出力する。
乗算器M12は、加算器D12から入力されたq軸成分電圧Vqcに、単独運転用位相発振回路17からスイッチ回路SW16を介して入力された正弦波信号sinθを乗算する。乗算器M12は、演算した値を加算器D13に出力する。
加算器D13は、乗算器M11から入力された値と乗算器M12から入力された値を加算する。加算器D13は、演算した値をインバータ出力電圧信号Vc(t)として、パルス発生回路CPに出力する。即ち、Vc(t)=Vdc×cosθ+Vqc×sinθとなる。
パルス発生回路CPは、インバータ出力電圧信号Vc(t)に基づくON/OFFパルス信号を、インバータ6に与える。
これにより、インバータ6は、交流母線BSの電圧Vmagを電圧指令値Vrefに維持するように運転する。この際、インバータ出力が負荷8の消費電力と釣り合っていないと電圧が低下あるいは上昇する。このため、インバータ制御回路1は、インバータ出力電圧を一定に維持するよう運転することで、自動的に負荷8の消費電力と等しい有効電力および無効電力が出力される。
また、インバータ6は、電流制御による補正がされ、インバータ出力電流の過渡的な電流変動が抑制される。これにより、過電流を防止することができる。単独運転の場合、上位制御系から適切な有効電流指令値、無効電流指令値を得ることは困難である。上述のような制御をすることで、負荷量に応じた電流指令値を用いた電流制御により電圧制御出力の補正を行うことができる。
次に、インバータ6を連系運転から単独運転に移行する切換時の運転をさせる切換時制御を行う場合におけるインバータ制御回路1の構成について説明する。
インバータ制御回路1が切換時制御を行う場合は、遮断器2の開放指令(操作指令SS=1)が出力され、遮断器2がまだ投入されている状態(状態信号SJK=0)である。この場合、切換指令SK1は「1」、切換指令SK2は「0」である。
従って、スイッチ回路SW11,SW12,SW14,SW15,SW16,SW17は、接点PBから接点PAに選択が切り換わる。スイッチ回路SW13は、接点PBが選択されたままである。ゲイン切換回路14には、まだ切換指令SK2が入力されない。
スイッチ回路SW11,SW15が接点PAに切り換わることで、インバータ制御回路1は、単独運転制御用の電圧制御回路16による制御をする。これにより、インバータ出力電圧は、電圧指令値Vrefと電圧検出器DVMにより検出された交流母線電圧検出値Vmagとの差分に応じて、大きさが調整される。
スイッチ回路SW14,SW16,SW17が接点PAに切り換わることで、インバータ制御回路1は、単独運転用位相発振回路17から出力される電圧位相θを制御に使用する。この電圧位相θは、交流母線BSの電圧位相に同期しつつも必ずしも一致した値ではない状態で、インバータ6が運転される。
スイッチ回路SW12の接点PAには、有効電流指令値Idrefd及び無効電流指令値Iqrefdが入力される。電流指令値Idrefd,Iqrefdは、遮断器2の開放後に予想される負荷量(即ち、負荷8)の消費電力と同等の値に設定されている。スイッチ回路SW12が接点PAに切り換わることにより、リミッタ回路13には、スイッチ回路SW13の接点PBを介して、電流指令値Idrefd,Iqrefdが与えられる。リミッタ回路13は、電流指令値Idrefd,Iqrefdを制限した値を、有効電流指令値Idref及び無効電流指令値Iqrefとして、減算器U12に出力する。
一方、スイッチ回路SW13の接点PA,PBの切換えは行われない。また、ゲイン切換回路14による電流制御回路15のゲインの切換も行われない。このため、電流制御回路15による電流制御の構成やゲインは、連系運転制御時と同じである。
次に、インバータ制御回路1による動作について説明する。
制御対象である電力系統の主回路は、開放指令が遮断器2に与えられてから実際に遮断器2の開放が完了するまでの間は、連系運転状態である。これに対して、インバータ制御回路1による制御においては、電圧制御及び位相制御が単独運転用の回路に切換えられ、電流制御のみ負荷量に応じた連系運転用の制御を行う。その後、遮断器2が実際に開放される(切換指令SK2=1)と、インバータ制御回路1は、単独運転制御を行う。
本実施形態によれば、以下の作用効果を得ることができる。
図3は、従来のインバータ制御装置による交流母線BSの電圧のシミュレーション結果を示す波形図である。図4は、従来のインバータ制御装置による交流母線BSの周波数のシミュレーション結果を示す波形図である。図5は、本実施形態に係るインバータ制御回路(インバータ制御装置)1による交流母線BSの電圧のシミュレーション結果を示す波形図である。図6は、本実施形態に係るインバータ制御回路1による交流母線BSの周波数のシミュレーション結果を示す波形図である。
各図において、時刻t1は、制御の切換え時点を示している。時刻t2は、遮断器2の開放時点を示している。なお、本シミュレーションでは、インバータ制御装置を最終的に単独運転制御に切換えるまでの操作は含まれていない。
ここで、従来のインバータ制御装置は、遮断器が開放される前に、連系運転状態で電流指令値を負荷相当の値に切換えて制御をする方式のものとする。
図3及び図4に示すように、従来のインバータ制御装置では、交流母線BSの電圧や周波数は、遮断器2の開放直後に大きく変動している。従って、電力系統の正常な運転を行うことができない。
一方、図5及び図6に示すように、本実施形態に係るインバータ制御回路1では、交流母線BSの電圧や周波数の変動は小さい。このとき、インバータ出力電流も安定している。電圧値や周波数は、遮断器2の開放後、徐々に変化している。但し、遮断器2の開放後700msたった時点でも、電圧母線BSの電圧変動は15%以下、周波数変動は1%以下で、インバータ6は、安定に運転されている。実際には、遮断器2が開放されることにより、インバータ制御回路1は、単独運転制御に切換わる。この切換え時点で、これらの電圧変化や周波数変化は安定する。
上述したように、実際に遮断器2が開放されて主回路が単独運転状態に移行するタイミングを正確に検出することができなくても、インバータ制御回路1は、大きな電圧変動、周波数変動、又はインバータ過電流を発生させずに、インバータ6を連系運転から単独運転に安定した切換えをすることができる。
(第2の実施形態)
図7は、本発明の第2の実施形態に係る電力系統システム10Aの構成を示すブロック図である。
電力系統システム10Aは、図1に示す第1の実施形態に係る電力系統システム10において、遅延回路31を設けている。その他の点は、電力系統システム10と同様である。
遅延回路31は、遮断器操作指令回路91から遮断器2への操作指令SSが送信される経路に挿入されている。遅延回路31は、遮断器操作指令回路91から出力された開放指令の遮断器2への入力を遅延させるための回路である。
本実施形態によれば、第1の実施形態による作用効果に加え、以下の作用効果を得ることができる。
一般に、遮断器2は、開放指令が与えられてから実際に開放が完了されるまでに、ある程度の時間を要する。従って、開放指令がインバータ制御回路1に、遮断器2と同時に与えられれば、インバータ制御回路1の制御方式の切換えは、実際の遮断器2の開放操作に先行して行うことができる。
しかし、電力系統システムによっては、例えば、遮断器2や遮断器操作指令回路91がインバータ6から離れた場所にあることがある。このような電力系統システムにおいては、伝送回路DS11による信号伝送に時間が掛かる。このような場合、インバータ制御回路1の制御方式の切換えよりも前に遮断器2が開放される可能性がある。この場合、インバータ6は、連系運転制御が使用された状態で、主回路が単独運転状態となる。従って、交流母線BSの電圧変動や周波数変動などが生じる可能性がある。
電力系統システム10Aでは、遅延回路31を設けることにより、操作指令SSが遮断器2に与えられる速度を遅らせることができる。これにより、インバータ制御回路1は、遮断器2の開放完了よりも確実に先行して、連系運転制御から単独運転制御への制御方式の切換えをすることができる。
(第3の実施形態)
図8は、本発明の第3の実施形態に係る電力系統システム10Bの構成を示すブロック図である。
電力系統システム10Bは、図1に示す第1の実施形態に係る電力系統システム10において、切換指令生成回路CKを切換指令生成回路CKBに代え、AND(論理積)回路32を設けている。その他の点は、電力系統システム10と同様である。
切換指令生成回路CKBは、第1の実施形態に係る切換指令生成回路CKにおいて、切換指令SK1をAND回路32に送信する機能を追加した構成である。その他の点は、切換指令生成回路CKと同様である。
AND回路32は、遮断器操作指令回路91から遮断器2への操作指令SSが送信される経路に挿入されている。AND回路32は、遮断器操作指令回路91から出力された操作指令SSと切換指令生成回路CKBにより生成された切換指令SK1とが入力される。AND回路32は、操作指令SSと切換指令SK1との論理積を演算する。AND回路32は、演算結果を新たな操作指令SSBとして、遮断器2に出力する。
即ち、操作指令SSが「1」(開放指令)で、かつ切換指令SK1が「1」の場合、遮断器2の開放操作が行なわれる。
本実施形態によれば、第1の実施形態による作用効果に加え、以下の作用効果を得ることができる。
電力系統システム10Bでは、AND回路32を設けることにより、操作指令SSと切換指令SK1とのAND条件で、遮断器2の開放操作をさせている。即ち、AND回路32は、開放指令(操作指令SS=1)を、インバータ制御回路1の受信後に、遮断器2が受信するように、遮断器2に開放指令が入力されるのを遅らせるための回路である。
これにより、インバータ制御回路1は、第2の実施形態に係る電力系統システム10Aよりも確実に、遮断器2の開放完了よりも先行して、制御方式の切換えをすることができる。
(第4の実施形態)
図9は、本発明の第4の実施形態に係る電力系統システム10Cの構成を示すブロック図である。
電力系統システム10Cは、図1に示す第1の実施形態に係る電力系統システム10において、インバータ制御回路1をインバータ制御回路1Cに代え、電流検出器DI1を設けている。その他の点は、電力系統システム10と同様である。
電流検出器DI1は、交流母線BSと負荷8とを接続する電気経路に設けられている。電流検出器DI1は、交流母線BSから負荷8へ流れる負荷電流I1を検出する。電流検出器DI1は、検出した負荷電流I1をインバータ制御回路1Cに出力する。
図10は、本実施形態に係るインバータ制御回路1Cの構成を示すブロック図である。
インバータ制御回路1Cは、図2に示す第1の実施形態に係るインバータ制御回路1において、dq軸変換回路11C及びホールド回路21Cを設けた構成である。その他の点は、インバータ制御回路1と同様である。
dq軸変換回路11Cには、電流検出器DI1により検出された負荷電流I1が入力される。dq軸変換回路11Cには、スイッチ回路SW14から電圧位相θが入力される。dq軸変換回路11Cは、電圧位相θに基づいて、負荷電流I1を有効電流成分と無効電力成分に変換する。dq軸変換回路11Cは、変換した有効電流成分と無効電力成分を、ホールド回路21Cに出力する。
ホールド回路21Cには、切換指令生成回路CKから切換指令SK1が入力される。ホールド回路21Cは、切換指令SK1が「1」になったことを条件にして、dq軸変換回路11Cから入力された負荷電流I1の有効電流成分と無効電力成分の値を保持する。ホールド回路21Cは、保持した値を有効電流指令値Idrefd及び無効電流指令値Iqrefdとして、スイッチ回路SW12の接点PAに出力する。
本実施形態によれば、第1の実施形態による作用効果に加え、以下の作用効果を得ることができる。
連系運転から単独運転への切換え時に、インバータ6から電力供給すべき負荷8の消費電力量がある程度決まっている電力系統システムの場合は、第1の実施形態に係るインバータ制御回路1のように、電流指令値Idrefd,Iqrefdを予め設定された固定値とすることで、簡易な回路で連系運転から単独運転に安定した切換えをすることができる。
これに対して、電力系統システムによっては、負荷8の消費電力量の変動が大きく、連系運転から単独運転での切換え時点での電流指令値Idrefd,Iqrefdの推定が困難な場合がある。
インバータ制御回路1Cでは、実際に負荷8に流れている負荷電流I1に基づいて、電流指令値Idrefd,Iqrefdが演算されるため、適切な電流指令値Idrefd,Iqrefdを切換時制御に用いることができる。従って、連系運転から単独運転での切換え時点での電流指令値Idrefd,Iqrefdの推定が困難な場合であっても、連系運転から単独運転に安定した切換えをすることができる。
(第5の実施形態)
図11は、本発明の第5の実施形態に係る電力系統システム10Dの構成を示すブロック図である。
電力系統システム10Dは、図1に示す第1の実施形態に係る電力系統システム10において、インバータ制御回路1をインバータ制御回路1Dに代え、電流検出器DI2を設けている。その他の点は、電力系統システム10と同様である。
電流検出器DI2は、交流母線BSと遮断器2とを接続する電気経路に設けられている。電流検出器DI2は、遮断器2に流れる電流I2を検出する。電流検出器DI2は、検出した電流I2をインバータ制御回路1Dに出力する。
図12は、本実施形態に係るインバータ制御回路1Dの構成を示すブロック図である。
インバータ制御回路1Dは、図2に示す第1の実施形態に係るインバータ制御回路1において、dq軸変換回路11D、スイッチ回路SWD、比例積分回路22Dを設けた構成である。その他の点は、インバータ制御回路1と同様である。
dq軸変換回路11Dには、電流検出器DI2により検出された遮断器2に流れる電流I2が入力される。dq軸変換回路11Dには、スイッチ回路SW14から電圧位相θが入力される。dq軸変換回路11Dは、電圧位相θに基づいて、遮断器2に流れる電流I2を有効電流成分と無効電力成分に変換する。dq軸変換回路11Dは、変換した有効電流成分と無効電力成分を、スイッチ回路SWDに出力する。
スイッチ回路SWDには、切換指令生成回路CKから切換指令SK1が入力される。スイッチ回路SWDは、入力された切換指令SK1が「1」の場合に、投入される。スイッチ回路SWDは、入力された切換指令SK1が「0」の場合に、開放される。スイッチ回路SWDは、投入されると、dq軸変換回路11Dから入力された遮断器2に流れる電流I2の有効電流成分と無効電力成分を、比例積分回路22Dに出力する。
比例積分回路22Dは、スイッチ回路SWDから遮断器2に流れる電流I2の有効電流成分と無効電力成分が入力される。比例積分回路22Dは、電流I2の有効電流成分と無効電力成分を比例積分制御の演算をする。比例積分回路22Dは、演算結果を有効電流指令値Idrefd及び無効電流指令値Iqrefdとして、スイッチ回路SW12の接点PAに出力する。
スイッチ回路SW12の接点PAが選択されることにより、インバータ制御回路1Dは、比例積分回路22Dからの出力信号である有効電流指令値Idrefd及び無効電流指令値Iqrefdに追従するように、インバータ6の電流制御を行う。
本実施形態によれば、第1の実施形態による作用効果に加え、以下の作用効果を得ることができる。
インバータ制御回路1Dは、切換指令SK1が「1」になることにより、実際に遮断器2を流れる電流I2の有効電力成分及び無効電力成分に基づいて演算された有効電流指令値Idrefd及び無効電流指令値Iqrefdに追従するように、インバータ6の電流制御を行う。この制御により、遮断器2に流れる電流I2が減少する。最終的に、遮断器2に流れる電流I2が零となった時点で、電流指令値Idrefd,Iqrefdは、負荷8に流れる電流と等価な一定の値となる。即ち、負荷8には、インバータ6のみから電力が供給される状態となる。その後、遮断器2が開放される。
このように、インバータ制御回路1Dでは、遮断器2を流れる電流I2が零となるようなインバータ出力電流の大きさが電流指令値Idrefd,Iqrefdとして使用される。これにより、第4の実施形態で説明したような連系運転から単独運転での切換え時点での電流指令値Idrefd,Iqrefdの推定が困難な場合であっても、開放される遮断器2の電流I2が零になるように制御が行われることで、連系運転から単独運転に安定した切換えをすることができる。
(第6の実施形態)
図13は、本発明の第6の実施形態に係る電力系統システム10Eの構成を示すブロック図である。
電力系統システム10Eは、図1に示す第1の実施形態に係る電力系統システム10において、インバータ制御回路1をインバータ制御回路1Eに代えている。その他の点は、電力系統システム10と同様である。
図14は、本実施形態に係るインバータ制御回路1Eの構成を示すブロック図である。
インバータ制御回路1Eは、図2に示す第1の実施形態に係るインバータ制御回路1において、電圧制御回路16を電圧制御回路16Eに代えている。その他の点は、インバータ制御回路1と同様である。
図15は、本実施形態に係る電圧制御回路16Eの構成を示すブロック図である。
電圧制御回路16Eは、比例回路161と加算器D161とを備えている。
比例回路161には、比例制御の演算に用いられるゲインKが予め設定されている。比例回路161には、減算器U11から交流母線電圧検出値Vmagと電圧指令値Vrefとの差分が入力される。比例回路161は、ゲインKを用いて、この差分に対して比例制御の演算をする。比例回路161は、演算結果を加算器D161に出力する。
加算器D161には、電圧指令値Vref及び比例回路161により演算された値が入力される。加算器D161は、電圧指令値Vrefに比例回路161により演算された値を加算する。加算器D161は、加算した値をインバータ出力電圧の大きさVcmとしてスイッチ回路SW11の接点PAに出力する。
次に、インバータ制御回路1Eの動作について説明する。
図16は、本実施形態に係るインバータ制御回路1Eにおける連系運転制御から単独運転制御に移行するまでの制御方式と主回路状態との対応関係の遷移を示す遷移図である。
インバータ制御回路1Eは、主回路の連系運転から単独運転への移行に伴い、連系運転制御、切換時制御、単独運転制御の順に、制御方式を切換える。また、インバータ制御回路1Eが切換時制御をしている場合、主回路は、連系運転している場合(区間KX)と単独運転している場合(区間KY)とがある。
図17は、本実施形態に係るインバータ制御回路1Eの切換時制御時と等価的な構成を示したブロック図である。
主回路が連系運転であり、かつインバータ制御回路1Eが切換時制御をしている場合(区間KX)、電流制御回路15は、連系運転制御用の比較的大きなゲインの比例積分によるフィードバック制御が行われる。このため、インバータ6の出力電流は、ほぼ指令値通りに制御される。
この状態(区間KX)の場合、電圧制御回路16Eは、電圧指令値Vrefと交流電圧検出値Vmagとの差分による比例制御により、インバータ出力電圧を制御している。この制御では、交流電圧検出値Vmagは、必ずしも電圧指令値Vrefと一致しないが、電圧制御回路16Eの出力が発散することはない。このため、電圧誤差は、電流制御回路15の出力により補償される。よって、インバータ6は、平衡した運転点が得られるため、安定した運転ができる。
例えば、連系運転制御では、交流電圧検出値Vp(=交流電圧検出値Vmag)が0.97puの場合、Vd=Vp=0.97puとなり、Vq=0puとなる。インバータ制御回路1Eは、これらのd軸成分電圧Vd及びq軸成分電圧Vqに、電流制御回路15の出力を加算して、インバータ出力電圧信号Vc(t)のd軸成分電圧Vdc及びq軸成分電圧Vqcを得る。
一方、図17に示す切換時制御では、電圧指令値Vref=1.0pu、交流電圧検出値Vmag(=交流電圧検出値Vp)=0.97pu、比例回路161のゲインK=0.2とすると、電圧制御回路16Eの出力は1.0+(1.0−0.97)×0.2=1.006puとなる。この値が、連系運転制御におけるd軸成分電圧Vd=0.97puの代わりに、電流制御回路15の出力に加算される。
ここで、この加算結果で得られるインバータ出力電圧信号Vc(t)のd軸成分電圧Vdc及びq軸成分電圧Vqcは、連系運転制御時と同じになる。即ち、d軸成分電圧Vdと電圧制御回路16Eの出力の差である0.036pu分は、電流制御回路15の出力が変化することにより、補償されている。
インバータ制御回路1Eが切換時制御をしている場合、主回路は、遮断器2の開放により、連系運転(区間KX)から単独運転(区間KY)に切換わる。
この状態(区間KY)の場合、インバータ制御回路1Eは、電圧制御回路16Eによるインバータ6の電圧制御により、インバータ出力電圧の大きさが決まる。即ち、電圧制御回路16Eは、単独運転時の本来の動作を行う。
一方、電流制御回路15に与えられている電流指令値Idrefd,Iqrefdは、予め想定した負荷量である。但し、電流指令値Idrefd,Iqrefdは、実際の負荷量と完全に一致するとは限らない。このため、電流制御回路15の出力は、積分回路の動作により、徐々に増加又は減少する。
しかし、誤差の一部は、電圧制御及び位相制御により補償されるため、電流指令値Idrefd,Iqrefdと負荷の消費電力量に大きな乖離がなければ、電圧変動や周波数変動は急激ではない。また、遮断器2が実際に開放されてから開放状態が検出されるまでの時間は、それほど長くない。このため、電流制御回路15は、積分器が飽和して運転が不安定になる前に、ゲイン切換回路14よるゲインの切換により、ゲインの小さい単独運転制御に移行する。これにより、インバータ6は、安定した運転を継続する。
本実施形態によれば、第1の実施形態による作用効果に加え、以下の作用効果を得ることができる。
インバータ制御回路1Eは、比例回路161を用いた電圧制御回路16Eを用いることにより、連系運転から単独運転に安定した切換えを行うことができる。
(第7の実施形態)
図18は、本発明の第7の実施形態に係る電力系統システム10Fの構成を示すブロック図である。
電力系統システム10Fは、図1に示す第1の実施形態に係る電力系統システム10において、インバータ制御回路1をインバータ制御回路1Fに代え、遮断器状態監視回路92及び伝送回路DS2を取り除いている。その他の点は、電力系統システム10と同様である。
伝送回路DS1は、遮断器操作指令回路91から入力された操作指令SSを、切換指令SK3として、インバータ制御回路1Fに出力する。切換指令SK3は、インバータ6の制御方式を切換えるための信号となる。
図19は、本実施形態に係るインバータ制御回路1Fの構成を示すブロック図である。
インバータ制御回路1Fは、図2に示す第1の実施形態に係るインバータ制御回路1において、スイッチ回路SW12を取り除き、スイッチ回路SW11,SW13,SW14,SW15,SW16,SW17をそれぞれスイッチ回路SW11F,SW13F,SW14F,SW15F,SW16F,SW17Fに代え、ゲイン切換回路14をゲイン切換回路14Fに代えている。その他の点は、インバータ制御回路1と同様である。
スイッチ回路SW11Fには、伝送回路DS1から切換指令SK3が入力される。スイッチ回路SW11Fは、切換指令SK3により接点PA,PBが選択される。その他の点は、第1の実施形態に係るスイッチ回路SW11と同様である。
スイッチ回路SW14F〜SW17Fについても、スイッチ回路SW11Fと同様に、切換指令SK1を切換指令SK3に代えている。その他の点は、第1の実施形態に係るスイッチ回路SW14〜SW17と同様である。
ゲイン切換回路14Fには、伝送回路DS1から切換指令SK3が入力される。ゲイン切換回路14Fは、切換指令SK3に応じて、ゲインを切換える。その他の点は、第1の実施形態に係るゲイン切換回路14と同様である。
スイッチ回路SW13Fの接点PAには、1次遅れ回路12により演算された値が入力される。スイッチ回路SW13Fの接点PBには、上位制御系装置93から出力された有効電流指令値Idrefo及び無効電流指令値Iqrefoが入力される。
スイッチ回路SW13Fには、伝送回路DSから切換指令SK3が入力される。スイッチ回路SW13Fは、切換指令SK3が「1」の場合は、接点PAが選択される。スイッチ回路SW13Fは、切換指令SK3が「0」の場合は、接点PBが選択される。スイッチ回路SW13Fは、選択された接点PA,PBに入力された信号をリミッタ回路13に出力する。
本実施形態によれば、以下の作用効果を得ることができる。
図20は、本実施形態に係るインバータ制御回路1Fにおける連系運転制御から単独運転制御に移行するまでの制御方式と主回路状態との対応関係の遷移を示す遷移図である。図21は、従来のインバータ制御回路における連系運転制御から単独運転制御に移行するまでの制御方式と主回路状態との対応関係の遷移を示す遷移図である。図22は、本実施形態に係るインバータ制御回路1Fによる交流母線BSの電圧のシミュレーション結果を示す波形図である。
図21に示すように、従来方式では遮断器2の状態信号により、インバータ制御の制御方式を切換えるため、主回路が単独運転で、制御方式が連系運転制御となる状態(区間KZ2)が発生する。
この場合、電流指令値を事前に負荷量にあわせて調整していても、遮断器2が開放された直後に大きな電圧変動、周波数変動が発生する。従って、従来のインバータ制御回路では、主回路が単独運転で、インバータ制御回路が連系運転制御となる状態(区間KZ1)をかなり短時間にしないとインバータ6の安定した運転が困難である。
図20に示すように、本実施形態に係るインバータ制御回路1Fでは、遮断器2の操作指令SS(切換指令SK3)より、制御方式の切換えを行う。これにより、実際の遮断器2の開放に先行して、制御方式を切換えるため、主回路が連系運転で、インバータ制御回路1Fが単独運転制御となる状態(区間KZ1)が発生する。
図22に示すシミュレーションは、制御方式を連系運転制御から単独運転制御に切換えた(時刻t1)後、200msで、遮断器が開放された(時刻t2)場合を示したものである。
インバータ制御回路1Fでは、制御方式が単独運転制御に切換えられたことで、電流指令値Idref,Iqrefがインバータ自体の定常的な出力電流に基づくものに切換わる。このため、インバータ6の出力電圧が固定されず、交流母線BSの電圧が徐々に増加する。
しかし、電流指令値Idref,Iqrefには、リミッタ回路13による制限が掛けられているため、インバータ制御回路1Fが単独運転制御となる状態(区間KZ1)が継続しても、過電流状態にはならない。また、大きな電圧変動や周波数変動も発生しない。
遮断器2が開放されて主回路も単独運転状態になると、主回路の運転状態とインバータ制御回路1Fの制御方式が一致するため、インバータ6の出力は、接続された負荷量に応じた値に急速に移行する。
また、電圧も遮断器の開放(時刻t2)直後に、やや変動するが、すぐにほぼ電圧指令値Vref通りの値に落ち着く。よって、連系運転から単独運転に安定に切換えることができる。
インバータ制御回路1Fは、主回路が連系運転で、制御方式が単独運転制御の状態(区間KZ1)では、電流指令値Idref,Iqrefが固定されないフローティング状態となる。このため、インバータ6の出力は、必ずしも負荷量に応じた出力にはならない。しかし、交流母線BSの大きな電圧変動又は周波数変動、或いはインバータ過電流などは発生しない。よって、従来のインバータ制御回路における、主回路が単独運転で、制御方式が連系運転制御の状態(区間KZ2)に比べれば、インバータ6を安定に運転することができる。
例えば、遮断器2が送電線を介して遠方にある場合や、連系運転から単独運転への移行時に複数の遮断器操作が行われる電力系統システムでは、実際に遮断器2が開放されるタイミングがインバータ制御回路側で把握し難い場合がある。このような電力系統システムにおいては、第1の実施形態に係るインバータ制御回路1では、制御方式と主回路の運転状態が一致しないような状態(図16に示す区間KY)が長時間に渡る可能性がある。
このような電力系統システムであっても、インバータ制御回路1Fを適用することにより、連系運転から単独運転により安定した切換えをすることができる。
(第8の実施形態)
図23は、本発明の第8の実施形態に係る電力系統システム10Gの構成を示すブロック図である。
電力系統システム10Gは、図18に示す第7の実施形態に係る電力系統システム10Fにおいて、インバータ制御回路1Fをインバータ制御回路1Gに代えている。その他の点は、電力系統システム10Fと同様である。
図24は、本実施形態に係るインバータ制御回路1Gの構成を示すブロック図である。
インバータ制御回路1Gは、図19に示す第7の実施形態に係るインバータ制御回路1Fにおいて、電圧制御回路16を第6の実施形態に係る電圧制御回路16Eに代え、リミッタ回路13をリミッタ回路13Gに代え、リミット値切換回路22Gを設けている。その他の点は、インバータ制御回路1Fと同様である。
リミッタ回路13Gは、電流指令値Idref、Iqrefに対する制限をする回路である。リミッタ回路13Gは、リミット値切換回路22Gにより、上下限リミット値が切換わる。その他の点は、第7の実施形態に係るリミッタ回路13と同様である。
リミット値切換回路22Gには、伝送回路DS1から切換指令SK3が入力される。リミット値切換回路22Gは、切換指令SK3により、リミッタ回路13Gの上下限リミット値を切換える。
リミット値切換回路22Gは、切換指令SK3が「0」(操作指令SSが「0」)の場合(即ち、連系運転制御の場合)、上下限リミット値として、例えば、有効電流指令値Idrefに対しては有効電力定格相当の正負の値に、無効電流指令値Iqrefに対しては無効電力定格相当の正負の値に設定する。
リミット値切換回路22Gは、切換指令SK3が「1」(操作指令SSが「1」)になった場合(即ち、単独運転制御の場合)、上下限リミット値を、連系運転時より狭い範囲の予め設定された一定の値に切換える。
本実施形態によれば、第7の実施形態による作用効果に加え、以下の作用効果を得ることができる。
まず、第7の実施形態に係るインバータ制御回路1Fにおいては、主回路が連系運転で、制御方式が単独運転制御の状態(図20に示す区間KZ1)の場合、スイッチ回路SW13Fは、端子PAが選択されている。よって、この状態の場合は、インバータ制御回路1Fは、電流指令値Idref,Iqrefとして、インバータ自身の定常的な出力電流値が使用される。この時の電流指令値Idref,Iqrefは、接続される負荷8の大きさとは一致せずフローティング状態となる。このため、インバータ出力は、ゆっくり変化する。この状態が長時間継続すると、インバータ6は、出力電流がリミッタに張り付いた状態で運転される可能性がある。
切換時の条件によっては、事前の運転状態と潮流方向が同じとはならずに、有効電力や無効電力の出力の正負が反転する場合もある。特に、有効電力が反転すると、インバータ6が交流母線BSから直流回路側に電力を供給する運転となる。直流回路に電池などの電源があれば充電動作となる。また、直流回路に、別の変換器が接続されていれば、その変換器を介して別の交流系統に対して電力を供給する運転となる。こうした逆潮流は、例えば負荷8が回生動作をした場合などは許容される。しかし、理由なく大きな逆潮流運転となる場合は、許容できないことが多い。
こうした電力系統システムにおいては、インバータ制御回路1Gを適用し、切換指令SK3が「1」となった場合に選択される予め設定した有効電流指令値Idrefに対する下限リミット値として、「0」を設定することで、有効電流指令値Idrefが逆潮流方向の値になるのを防止することができる。また、有効電流指令値Idref及び無効電流指令値Iqrefのリミット値を、ともに、定格の50%に低減することで、過電流状態になり難くすることができる。
このように、インバータ制御回路1Gであれば、電力系統システム10Gに応じて、主回路が連系運転で、制御方式が単独運転制御の状態(図20に示す区間KZ1)で許容されるインバータ出力範囲の値を設定することで、この運転状態が長く継続した場合でも、より安定した運転をすることができる。
また、電流指令値Idref,Iqrefに対するリミッタの範囲を狭く設定すると、電流指令値Idref,Iqrefがリミッタにはりついた状態になり易くなる。この場合、電流検出値Isと電流指令値Idref,Iqrefとの差が発生して、電流制御回路15の出力値がある程度大きくなる可能性がある。
このような場合であっても、インバータ制御回路1Gでは、第6の実施形態に係る電圧制御回路16Eを用いた構成とすることにより、電流制御回路15の出力が変化しても、電圧制御回路16Eの出力が飽和することがない。従って、インバータ制御回路1Gは、安定に運転を継続することができる。
(第9の実施形態)
図25は、本発明の第9の実施形態に係る電力系統システム10Hの構成を示すブロック図である。
電力系統システム10Hは、図24に示す第8の実施形態に係る電力系統システム10Gにおいて、遮断器状態監視回路92、伝送回路DS2、及び切換指令生成回路CKHを設け、インバータ制御回路1Gをインバータ制御回路1Hに代えている。その他の点は、電力系統システム10Gと同様である。
遮断器状態監視回路92及び伝送回路DS2の構成は、第1の実施形態と同様である。伝送回路DS2は、遮断器状態監視回路92から受信した状態信号SJKを、切換指令生成回路CKHに出力する。
切換指令生成回路CKHは、インバータ6の制御方式を切換えるための切換指令SK3,SK4を生成する回路である。切換指令生成回路CKHは、NOT回路NHと、AND回路AHとを備えている。
切換指令生成回路CKHは、遮断器操作指令回路91から出力された操作指令SSを、そのまま切換指令SK3として、インバータ制御回路1Hに出力する。
NOT回路NHには、伝送回路DS2を介して、遮断器状態監視回路92から出力された状態信号SJKが入力される。NOT回路NHは、状態信号SJKを反転させて(論理否定)、AND回路AHに出力する。
AND回路AHには、遮断器操作指令回路91から出力された操作指令SS及びNOT回路NHにより演算された信号が入力される。AND回路AHは、これらの入力された信号の論理積を演算する。AND回路AHは、演算結果を切換指令SK4として、インバータ制御回路1Hに出力する。
図26は、本実施形態に係るインバータ制御回路1Hの構成を示すブロック図である。
インバータ制御回路1Hは、図24に示す第8の実施形態に係るインバータ制御回路1Gにおいて、リミット値切換回路22Gをリミット値切換回路22Hに代えている。その他の点は、インバータ制御回路1Gと同様である。
リミット値切換回路22Hには、切換指令生成回路CKHからから切換指令SK4が入力される。リミット値切換回路22Hは、切換指令SK4により、リミッタ回路13Gの上下限リミット値を切換える。リミット値切換回路22Hは、第8の実施形態に係るリミット値切換回路22Gにおいて、切換指令SK3の代わりに切換指令SK4を用いている。その他の点は、リミット値切換回路22Gと同様である。
次に、本実施形態に係る電力系統システム10Hの動作について説明する。
遮断器操作指令回路91から開放指令(操作指令SS=1)が与えられると、切換指令SK3は、「1」となる。実際に遮断器2が開放されるまでの間は、遮断器状態監視回路92から出力される状態信号SJKは、「0」である。このため、NOT回路NHの出力は、「1」である。このとき、AND回路AHの入力信号が、両方ともに「1」となるため、切換指令SK4は、「1」となる。
切換指令SK4が「1」となることにより、リミット値切換回路22Hは、リミッタ回路13Gの上下限リミット値を、通常よりも狭い範囲の値に切換える。これにより、電流指令値Idref,Iqrefは、通常よりも狭い範囲の値に制限される。
その後、実際に遮断器2が開放されると、状態信号SJKは、「1」となる。これにより、NOT回路NHの出力が「0」となるため、AND回路AHの出力である切換指令SK4も「0」になる。
切換指令SK4が「0」となることにより、リミット値切換回路22Hは、リミッタ回路13Gの上下限リミット値を、通常の値に再度切換える。
本実施形態によれば、第8の実施形態による作用効果に加え、以下の作用効果を得ることができる。
電流指令値Idref,Iqrefに対するリミッタ回路13Gの上下限リミット値は、主回路が連系状態で制御方式が単独運転制御の状態の間は、通常より狭い範囲の値に切換えられる。その後、主回路も単独運転状態になると、通常のリミット値にする。
主回路が連系状態で制御方式が単独運転制御の状態の間は、電流指令値Idref,Iqrefが、接続されている負荷8と無関係の値になるため、不要な逆潮流の防止などのために、電流指令値Idref,Iqrefを通常より狭い範囲に制限する。これにより、インバータ制御回路1Hは、インバータ6を安定に運転することができる。
主回路も単独運転状態になると電流指令値Idref,Iqrefは負荷8の消費電力量に応じた値となるため、上下限リミット値が狭い範囲に制限されていると、適切な電流が出力できない可能性がある。このため、遮断器2が開放されると、インバータ制御回路1Hは、通常のリミット値に戻す。
従って、インバータ制御回路1Hは、制御方式の切換途中では、不要な逆潮流などを防止することができる。また、インバータ制御回路1Hは、主回路が連系運転から単独運転に切換り、制御方式と一致すると、インバータ6を定格電力内で負荷量に応じた出力に制御することができる。
なお、各実施形態は、以下のように変形させた形態で実施することができる。
各実施形態において、インバータ制御の制御方式の切換えに、遮断器2に対する操作指令SSを使用する構成としている。この操作指令SSは、遮断器2に直接的に操作させる信号に限らない。例えば、連系運転から単独運転へ移行する際に、複数の遮断器の操作が連動して行なわれるようなシステムにおいては、連動操作開始信号、又は連動操作の中で、遮断器2の操作に先行して行なわれる操作の指令信号や状態信号でもよい。即ち、遮断器2の操作が行なわれる直前に受信できる信号であれば、どのような信号であってもよい。このような信号を用いても、各実施形態における作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
各実施形態において、単独運転用位相発振回路17は、交流母線BSの交流母線電圧Vpをもとにインバータ出力電圧の電圧位相θを決める構成としたが、母線電圧BSの電圧検出を行わずに、完全な自走発振を行う構成でもよい。
各実施形態において、第6の実施形態に係る電圧制御回路16Eを電圧制御回路としてもよい。これにより、各実施形態による作用効果に加え、第6の実施形態による作用効果を得ることができる。また、電圧制御回路16Eでは、比例回路161を用いたが、代わりに1次遅れ回路を用いてもよい。1次遅れ回路を用いた電圧制御回路でも、第6の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
第2の実施形態において、電力系統システム10Aに遅延回路31を設けた構成としたが、他の実施形態における電力系統システムにおいても、同様に遅延回路31を設けた構成としてもよい。同様に、第3の実施形態に係る電力系統システム10BのAND回路32も、他の実施形態における電力系統システムに、同様に設けた構成とすることができる。これにより、主回路が単独運転に切り換わるよりも確実に前に、インバータ制御回路の制御方式を切換時制御又は単独運転制御に切換えることができる。また、開放指令を、インバータ制御回路の受信後に、遮断器2が受信するような構成であれば、遅延回路31又はAND回路32に限らず、他の構成でもよい。
第8の実施形態及び第9の実施形態において、リミット値切換回路22G,22Hにより、リミッタ回路13Gの上下限リミット値を切換える構成としたが、これに限らない。例えば、1次遅れ回路12をリミッタ付きの1次遅れ回路とし、その上下限リミット値をリミット値切換回路22G,22Hにより切換える構成としても、同様の作用効果を得ることができる。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。