JP6634923B2 - 水力発電システムにおけるpll制御の位相誤差補正装置と制御方法 - Google Patents

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本発明は、水力発電システムにおけるPLL制御の位相誤差補正装置と制御方法に係わり、特に自立運転から連系運転への自立切換え以降の自立位相と系統位相の位相誤差補正に関するものである。
図3は永久磁石同期発電機を用いた水力可変速の発電システムの単結線図を示したもので、この水力発電システムでは水車発電設備1、コンバータ装置6及び連系変圧器17を介して交流系統19に連系される。水車発電設備1は、ガバナ等からなる流量調節手段5、水車2、フライホイール4及び永久磁石同期発電機3を有し、これら水車2、フライホイール4及び永久磁石同期発電機3は図示省略された軸受けを介して連結されている。
コンバータ装置6は、発電機制御インバータ7、系統連系制御インバータ8および各インバータ7,8間の直流回路に接続された直流コンデンサ13と、制動ユニット9と制動抵抗器10を有している。また、14はフィルタで、リアクトルL,コンデンサC,抵抗Rより構成されている。11は発電機側の開閉器、12は系統側に接続された開閉器、15は系統連系点の電圧を検出する変圧器、16は特定負荷、20は母線側開閉器、21は自立運転中に交流系統の電圧を検出する手段として設けられた同期電圧検出用の変圧器である。
18は上位の制御部(水車コントローラ)で、この水車コントローラ18はコンバータ装置6に対して運転指令情報や母線側開閉器20の開閉情報を出力し、コンバータ装置6からはステータス情報を入力する等の信号の授受を行うと共に、流量調節手段5を介して水車の流量を調節する。
コンバータ装置6は、通常、交流系統との連系運転を行っており、特定負荷16の消費電力>発電能力のときには交流系統19から不足分の電力を補い、特定負荷16の消費電力<発電能力のときには余剰発電量を交流系統に供給している。このとき、発電機制御インバータ7は、永久磁石同期発電機3の速度又はトルクを制御する発電機速度(トルク)制御ASRと交流電流制御ACRを行い、系統連系制御インバータ8は直流電圧(直流コンデンサ13の電圧)制御AVRと交流電流制御ACRを行う。
この連系運転では交流系統19の正常時には水車発電設備1に対して出力最大点追従(MPPT)制御で運転されている。連系運転中に交流系統19に系統故障が発生すると、水車コントローラ18は母線側開閉器20を開とし、コンバータ装置6は系統連系制御インバータ8の運転を停止して故障情報を上位の水車コントローラ18に通知する。また、水車コントローラ18は故障情報を基に水車2を停止させる。水車2が起動停止するまでの発電エネルギーは、制動ユニットに流して消費される。
水車発電設備1とコンバータ装置6の停止状態から自立運転に移行するためには、水車コントローラ18からコンバータ装置6に対しして運転方式切換指令が発しられ、この指令に基づいて自立運転への切換が行われて特定負荷16に対し所定の電力を供給する。自立運転中に系統が正常復帰すると、特定負荷16に対する電力供給の信頼性を確保し向上させるためには交流系統19と同期した連系運転動作を無瞬断で行う必要がある。
なお、電力変換装置の出力電圧位相を交流電源の電圧位相に同期させるものとしては、特許文献1や特許文献2等が公知となっている。
特開2007−288981 特開2011−244537
図4は位相波形図を示したもので、図4(a)の横軸は時間であり、縦軸は位相である。実際の波形は図4(b)で示すように階段上の波形となっており、所定のサンプリング周期△t毎に所定の位相進み角(基準値)△θを加算(積分)し、360゜となったところでゼロに戻し、これを繰り返すことで位相波形を得ている。位相波形は位相進み角△θの大きさによって傾斜が異なり、周期も異なってくる。図5は位相波形の生成フローチャートを示したものである。
水力発電システムの自立運転から連系運転への切換時の同期合わせは、予め設定された所定の位相範囲内に入ったときに行われるが、交流系統19の周波数は一定でなく、基準周波数に対して許容値以内で、例えば50Hz±0.2Hzのように変動している。
図6は、自立運転時におけるコンバータ装置6の自立位相PLL制御で、位相誤差補正量が一定時の動作イメージを示したものである。区間1での自立運転中で系統電圧が復電すると、区間2ではコンバータ装置6の自立位相と系統位相との間で大きな位相差が生じており、その位相差はPLL制御によりコンバータ装置内の位相波形を系統位相に一致させるよう動作し、区間3では縮小されて許容値以内に入り、その区間終端には同期合わせが完了している。
このときの位相角は、基準値の位相進み角△θ+補正量△θc一定となり、図4(a)の波形を生成している。しかし、この波形と系統の位相波形は区間4の初期で一致しているだけで、時間が経過するにつれて自立波形と系統位相との差が拡大し所定の範囲を超えて同期はずれが生じ、区間5では再度PLL制御による位相合わせが行われ、PLL制御が完了するのが区間6となっている。
また、系統周波数は或る周波数変動を伴っているため、固定の位相角で生成した位相波形では系統位相と不一致が生じる虞がある。なお、特許文献1,2には、自立運転から連系運転への切換時に対する位相誤差補正については言及されていない。
したがって、本発明が目的とするところは、自立運転から連系運転への切換以降、連系運転時での系統周波数が変動しても常時系統位相に追従するコンバータ装置の自立位相PLL制御における自立位相と系統位相の位相誤差補正装置と制御方法を提供することにある。
本発明は、水車と連結された永久磁石同期発電機を、発電機制御インバータおよび系統連系制御インバータを有するコンバータ装置に接続し、コンバータ装置及び開閉器を介して交流系統に接続し、コンバータ装置の上位の制御系として制御部を備えてコンバータ装置と制御部間での情報の授受を行い、交流系統の異常時には水力発電システムを自立運転して特定負荷に電力を供給し、交流系統の復電時にはPLL制御をしながら交流系統との連系運転に切換えるよう構成された水力発電システムにおいて、
前記系統連系制御インバータの制御位相θを生成する制御位相生成部と、
同期電圧検出用として検出された三相電圧からq軸(又はd軸)をゼロとするようdq変換し、位相変動時にq軸(又はd軸)の変動成分を位相誤差補正量演算手段で算出し、変動成分と基準値を加算した位相角△θ1から系統位相θ1を生成する系統位相生成部と、
前記系統位相θ1と前記制御位相生成部からの自立運転時の制御位相θ(=自立位相)との差分を位相偏差値とし、この位相偏差値と前記位相角△θ1の差分による絶対値に所定の値を乗算した値と基準値との差分を求めて正の値の誤差補正値△θcとして前記制御位相生成部に出力する位相誤差補正値生成部と、
前記制御位相生成部は、自立運転時のPLL制御時の基準値△θに基づき前記系統連系制御インバータに対し自立位相信号を出力し、自立運転時のPLL制御の完了後は基準値△θに前記位相誤差補正値生成部からの誤差補正値±△θcを加算して制御位相θを生成するものである。
本発明の制御位相生成部は、交流系統の電圧復電時に補正量を基準値△θに加算する系統復電切換部と、
交流系統の電圧復電後でPLL制御による同期合わせが完了するまでの同期補正値を基準値△θに加算する端子と、PLL制御による同期合わせが完了後に前記誤差補正値±△θcを基準値△θに加算する端子を有するPLL制御切換部と、
前記位相誤差補正値生成部で生成された位相偏差が、予め設定された所定の範囲内になったときの系統位相θ1と自立位相との大小関係に基づく正負の極性を切換える位相誤差極性切換部と、
前記PLL制御切換部からの同期補正値と誤差補正値△θcに対して、系統位相θ1と自立位相との大小関係に基づく正又は負の極性信号を乗算する乗算部と、
を備えたものである。
また、本発明は、水車と連結された永久磁石同期発電機を、発電機制御インバータおよび系統連系制御インバータを有するコンバータ装置に接続し、コンバータ装置及び開閉器を介して交流系統に接続し、コンバータ装置の上位の制御系として制御部を備えてコンバータ装置と制御部間での情報の授受を行い、交流系統の異常時には水力発電システムを自立運転して特定負荷に電力を供給し、交流系統の復電時にはPLL制御をしながら交流系統との連系運転に切換える水力発電システムの制御方法において、
検出された交流系統の三相電圧を位相誤差演算手段に入力して周波数変動または位相の変動成分からなる系統位相θ1を生成し、
制御位相生成部により生成される連系運転への切換え時の系統連系制御インバータの制御位相θと前記系統位相θ1との差分が、設定された所定値以内になったときの偏差の絶対値と基準値との差分を誤差補正値±△θcとして前記制御位相生成部の基準値△θに加算して連系運転後の制御位相θとしたものである。
以上のとおり、本発明によれば、自立運転から連系運転への自動切換え以降において交流系統に周波数変動が生じても、特定負荷に対する高精度な電力供給が可能となるものである。
本発明の実施形態を示す自立位相PLL制御装置の部分構成図。 本発明の動作イメージの波形図。 水力発電システムの単結線図。 (a)は位相波形図、(b)は位相波形の拡大図。 位相波形生成のフローチャート。 従来の自立位相PLL制御の動作イメージの波形図。 自立位相が系統位相に対して進んでいる場合の波形図。 自立位相が系統位相に対して遅れている場合の波形図。
図1は本発明の部分図を示したもので、水力発電システムとしては図3と同様に構成され、図3と同一部分に同一符号付してその説明を省略する。
図1において、30は系統位相生成部、40は位相誤差補正値生成部、50は制御位相生成部である。系統位相生成部30は、同期電圧検出用の変圧器21により検出された三相の線間電圧をdq座標変換器を有する位相誤差補正量演算手段31に入力して位相誤差補正量を演算する。位相誤差補正量演算手段31は、安定した周波数ではq軸(又はd軸)をゼロとするようにdq座標変換し、位相の変動または周波数変動が生じるとq軸に変動成分が生成される。位相変動分=−q軸成分量をゼロとするような手段としては、例えば、特許文献1の段落[0008](図1の位相差演算回路31)に記載されているような補正量を生成する手段を用いることで、位相の変動または周波数変動に対する変動成分に対する補正量が生成できる。基準値△θとして系統の公称周波数の位相角とする。
算出された補正量は、加算部32で制御位相信号を生成する基準値△θと加算して位相角△θ1となる。位相角△θ1は位相積分器33に入力されて積分演算され、変動後の系統位相θ1を生成して位相誤差補正値生成部40に入力される。位相誤差補正値生成部40では、減算部41で系統位相θ1から後述の自立位相θを減算することで系統位相に近づけるための位相偏差δ(=θ1−θ)を生成する。図7,8で示すように、自立位相と系統位相に差があるとき位相偏差δは略一周期毎に短時間極性が反転する出力となる。
位相偏差は減算部42において補正後の位相角△θ1を減算する。絶対値回路43は単なる絶対値を出力するだけでなく、偏差の絶対値は連続的にならないので後述のように出力が連続的になるような処理を行う。更に減算部44において基準値△θとの差分が求められて誤差補正値△θcとなり制御位相生成部50に入力される。
制御位相生成部50において、51は系統復電切換部で、水力発電システムが母線側開閉器20の開放により交流系統19と切離されて自立運転している時には、系統復電切換部51は端子N側に切り換えられており、その時の出力は0となっている。したがって、自立運転時における系統連系制御インバータ8は、基準値△θに基づく位相積分器54からの自立位相の制御信号によって交流電圧一定周波数となるようゲート制御されている。交流系統19が復電すると系統復電切換部51は、その端子をY側に切換える。端子N側で運転されている期間は図2に示す区間1である。
52はPLL制御切換部で、交流系統19の復電後の同期合わせが完了するまでは端子N側に切り換えられており、端子Nを通してPLL制御による同期補正値が入力されている。同期補正値は、乗算部55、系統復電切換部51の端子Yを通して基準値△θに加算されて位相角△θ0を生成し、位相積分器54に入力されてPLL制御による自立運転期間となる。この期間は図2に示す区間2,3で、区間3は同期合わせ終了寸前である。図2に示す区間3の終端でPLL制御によるPLL1期間の同期合わせが完了し、PLL2期間の連系運転制御に移行するためPLL制御切換部52は端子Y側に切り換わる。図2に示す区間4の開始であり、本発明によるPLL2期間である。
53は位相誤差極性切換部で、位相誤差補正値生成部40の減算部41で得られる位相偏差が系統位相θ1>自立位相θのときに端子Y側に切換えて乗算部55に+1を出力し、系統位相θ1<自立位相θのときは端子N側に切り換えて−1を乗算部55出力する。系統位相θ1>自立位相θは図8のような場合を示し、系統位相θ1<自立位相θのような場合を示す。
補正量+又は−を乗算することは以下の理由による。
現在の位相角に対して補正量として正の値を加えることは自立位相を進める(周波数を上昇させることも含む)ことであり、図8では、自立位相に補正量を加えることで系統位相と同一波形とすることができる。また、現在の位相角に対して補正量として負の値を加えることは自立位相を遅らせる(周波数を下降させることも含む)ことであり、図7の場合、自立位相に補正量を減らすことで系統位相と同一波形とすることができる。例えば、系統位相と自立位相が安定して一致しているときには位相偏差δはゼロである。
系統位相と自立位相との間に位相偏差が生じたとき、補正量を付加する必要があり補正量を生成するために系統復電切換部51をY端子に切換える。系統位相が安定状態から変動し、例えば自立位相が系統位相に対して進んだ偏差が生じている場合には、系統位相θ1<自立位相θとなっている。位相偏差δは図7に示すように略一周期毎に期間ta〜tbの極性期間に対し、期間tb〜tcの短時間極性が反転して偏差量が大きくなっている。この偏差量の絶対値のままで出力すると、tb〜tc期間に過大な偏差が生じて制御が困難になる。このため、tb〜tc期間の出力値として、反転する前の値を保持して出力する。減算部42では、保持された反転前の値を位相角△θ1から減算して絶対値を得る。
絶対値回路43では、さらに所定の値G1を乗算して絶対値回路43の出力とする。減算部44では、基準値から絶対値回路43からの出力を減算して補正量△θcを生成する。ここで、補正量を正の値とするように所定の値G1を設定する。系統位相の変動があっても補正量は常に正の値で、現在の自立位相に対し+又は−の補正量を加算することで自立位相と系統位相の位相偏差δはゼロになる。
したがって、位相積分器54からは誤差補正値±△θcにより補正された制御位相θに基づいたゲート信号により系統連系制御インバータ8が制御される。
本発明によれば、図2における区間4で自立運転から連系運転への自動切換え以降で交流系統19に周波数変動が生じても、特定負荷16には安定した高精度の電力供給が可能となる。
8… 系統連系制御インバータ
16… 特定負荷
19… 交流系統
30… 系統位相生成部
31… 位相誤差補正量演算手段
40… 位相誤差補正値生成部
50… 制御位相生成部
51… 系統復電切換部
52… PLL制御切換部
53… 位相誤差極性切換部

Claims (3)

  1. 水車と連結された永久磁石同期発電機を、発電機制御インバータおよび系統連系制御インバータを有するコンバータ装置に接続し、コンバータ装置及び開閉器を介して交流系統に接続し、コンバータ装置の上位の制御系として制御部を備えてコンバータ装置と制御部間での情報の授受を行い、交流系統の異常時には水力発電システムを自立運転して特定負荷に電力を供給し、交流系統の復電時にはPLL制御をしながら交流系統との連系運転に切換えるよう構成された水力発電システムにおいて、
    前記系統連系制御インバータの制御位相θを生成する制御位相生成部と、
    同期電圧検出用として検出された三相電圧からq軸(又はd軸)をゼロとするようdq変換し、位相変動時にq軸(又はd軸)の変動成分を位相誤差補正量演算手段で算出し、変動成分と基準値を加算した位相角△θ1から系統位相θ1を生成する系統位相生成部と、
    前記系統位相θ1と前記制御位相生成部からの自立運転時の制御位相θ(=自立位相)との差分を位相偏差値とし、この位相偏差値と前記位相角△θ1の差分による絶対値を所定値を乗算した値と基準値との差分を求めて正の値の誤差補正値△θcとして前記制御位相生成部に出力する位相誤差補正値生成部と、
    前記制御位相生成部は、自立運転時のPLL制御時の基準値△θに基づき前記系統連系制御インバータに対し自立位相信号を出力し、自立運転時のPLL制御の完了後は基準値△θに前記位相誤差補正値生成部からの誤差補正値±△θcを加算して制御位相θを生成することを特徴とした水力発電システムにおけるPLL制御の位相誤差補正装置。
  2. 前記制御位相生成部は、交流系統の電圧復電時に補正量を基準値△θに加算する系統復電切換部と、
    交流系統の電圧復電後でPLL制御による同期合わせが完了するまでの同期補正値を基準値△θに加算する端子と、PLL制御による同期合わせが完了後に前記誤差補正値±△θcを基準値△θに加算する端子を有するPLL制御切換部と、
    前記位相誤差補正値生成部で生成された位相偏差が、予め設定された所定の範囲内になったときの系統位相θ1と自立位相との大小関係に基づく正負の極性を切換える位相誤差極性切換部と、
    前記PLL制御切換部からの同期補正値と誤差補正値△θcに対して、系統位相θ1と自立位相との大小関係に基づく正又は負の極性信号を乗算する乗算部と、
    を備えたことを特徴とした請求項1記載の水力発電システムにおけるPLL制御の位相誤差補正装置。
  3. 水車と連結された永久磁石同期発電機を、発電機制御インバータおよび系統連系制御インバータを有するコンバータ装置に接続し、コンバータ装置及び開閉器を介して交流系統に接続し、コンバータ装置の上位の制御系として制御部を備えてコンバータ装置と制御部間での情報の授受を行い、交流系統の異常時には水力発電システムを自立運転して特定負荷に電力を供給し、交流系統の復電時にはPLL制御をしながら交流系統との連系運転に切換える水力発電システムの制御方法において、
    検出された交流系統の三相電圧を位相誤差演算手段に入力して周波数変動または位相の変動成分からなる系統位相θ1を生成し、
    制御位相生成部により生成される連系運転への切換え時の系統連系制御インバータの制御位相θと前記系統位相θ1との差分が、設定された所定値以内になったときの偏差の絶対値と基準値との差分を誤差補正値±△θcとして前記制御位相生成部の基準値△θに加算して連系運転後の制御位相θとすることを特徴とする水力発電システムにおけるPLL制御の位相誤差補正方法。
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