以下、実施形態のCVCF電源装置を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明のCVCF電源装置は、交流電力を出力する際に、出力電圧の制御に関わるCVCF制御を実施する。CVCF電源装置の出力側回路には、配線用遮断器と、負荷側回路とが設けられる。実施形態における「負荷側回路」は、配線用遮断器より負荷側の回路のことである。なお、CVCF電源装置の負荷側に発生した短絡を「負荷短絡」という。本明細書でいう「負荷短絡」は、電気的に接触した状態のほか、絶縁性が低下して所定値以上の電流(過電流)を流す状態を含む。本明細書でいう「短絡電流」は、上記の負荷短絡により流れる電流のことである。負荷短絡の発生個所が、配線用遮断器と負荷を接続する電路又は負荷となる装置内である場合、以下の実施形態が適用可能である。なお、電気的に接続されることを、単に「接続される」ということがある。以下の説明に示す座標変換に係る座標系としては、直交座標系を例示するがこれに制限されることはなく、2つの軸の成分を独立に扱うことができる2つの軸を有する座標系が代わりに用いられてもよい。以下、配線用遮断器のことを単に遮断器という。
図1は、実施形態のCVCF電源装置1の概要構成を示すブロック図である。
図1に示すCVCF電源装置1は、一又は複数の負荷40に交流電力を供給する。例えば、CVCF電源装置1は、CVCF電源装置1から負荷40に3相交流電力を供給する。CVCF電源装置1と負荷40との間を繋ぐ電路には、1又は複数の遮断器(ブレーカ)50が設けられている。例えば、遮断器50は、過電流遮断器である。遮断器50は、負荷40が接続される電路に対応付けて設けられ、インバータ部12と負荷40に接続される。遮断器50の遮断特性は、負荷40の特性と負荷40も含めた電路の保護協調とにより規定される。遮断器50は、遮断器50の入力側回路と出力側回路である負荷側回路との間を電気的に接続する接点に、少なくとも所定量を超える電流が流れると自動的に引きはずし動作を行い、その接点を開放する。これによりCVCF電源装置1と負荷短絡の発生箇所との間が電気的に絶縁される。
次に、CVCF電源装置1の構成例について説明する。
CVCF電源装置1は、例えば、昇圧チョッパ部11と、インバータ部12と、電圧センサ13と、電流センサ14と、制御部20とを備える。
昇圧チョッパ部11の入力側回路には、直流電源DCPSから直流電力PDC1(不図示)が供給され、供給された直流電力PDC1を変換して、直流電源DCPSにより印加される入力電圧を昇圧した直流電圧の直流電力PDC2(不図示)を生成する。昇圧チョッパ部11は、生成した直流電力PDC2を、昇圧チョッパ部11の出力側回路の正極P及び負極Nを介してインバータ部12に供給する。昇圧チョッパ部11は、例えば、正極Pと負極N間の電圧(直流出力電圧)を定電圧制御する。昇圧チョッパ部11の具体的な回路の構成、スイッチ部を構成するスイッチング素子の種類などは適宜選択してよい。なお昇圧チョッパ部11は、直流出力電圧を定電圧制御するDCDCコンバータ、整流器であってもよい。
インバータ部12は、ゲートパルスに基づいて直流電力を交流電力に変換する。例えば、インバータ部12は、後述するPWM(Pulse Width Modulation)制御部35からの駆動パルスを受けて、昇圧チョッパ部11から供給される直流電力PDC2を3相交流電力に変換する。インバータ部12は、変換した3相交流電力を、上述した電路を介して一又は複数の負荷40に供給する。例えば、インバータ部12は、複数のスイッチ部を含む複数のレグを有する。図に示すインバータ部12は、1つの相に適用するレグの一例であり、他の相も同様の構成のレグによって構成されていてもよい。インバータ部12の具体的な回路の構成、スイッチ部を構成するスイッチング素子の種類などは適宜選択してよい。
電圧センサ13は、インバータ部12から出力された交流電力の電圧値(交流出力電圧)を検出する。例えば、電圧センサ13は、3相交流の相電圧を夫々計測する。なお、電圧センサ13は、検出した交流出力電圧を変圧器により所定の変圧比で降圧してもよく、図に示されないフィルタによって広域成分を抑圧して出力してもよい。なお、相電圧の計測は全相に限らない。電圧センサ13は、全相の相電圧を計測することに代えて、2相の線間電圧を検出してもよい。この場合、電圧センサ13は、他の1相の線間電圧を上記の2相の線間電圧に基づいた演算によって導出してもよい。
電流センサ14は、インバータ部12から出力された交流の相電流を検出する。電流センサ14は、例えば、変流器を備える。電流センサ14は、例えば、相電流を夫々計測する。なお、相電流の計測は全相に限らない。電流センサ14は、全相の相電流を計測することに代えて、2相の相電流を検出してもよい。この場合、電流センサ14は、他の1相の相電流を上記の2相の相電流に基づいた演算によって導出してもよい。
制御部20は、例えば、基準角度信号生成部21(角度信号生成部)と、直交座標変換器22と、減算器23A、23Bと、選択器24A、24Bと、電圧調整部(AVR(Automatic Voltage Regulator))25A、25Bと、直交座標逆変換器26と、電流指令値生成部27(電流指令値生成部)と、選択部28と、短絡状態判定部29とを備える。
基準角度信号生成部21は、インバータ部12の出力電圧の基準となる基準角度信号θを発生する。例えば、基準角度信号生成部21は、0から2π(ラジアン)までの基準角度信号θを、周期性を有する信号として継続して生成する。その周期から決まる周波数がCVCF制御による出力周波数である。基準角度信号θは、インバータ部12が出力する交流電力の位相の基準となる信号である。基準角度信号生成部21は、基準角度信号θを、直交座標変換器22と、直交座標逆変換器26と、電流指令値生成部27と、基準電圧発生部34とに供給する。
直交座標変換器22は、3相交流電圧入力端子と、基準位相入力端子と、D軸出力端子と、Q軸出力端子とを有する。3相交流電圧入力端子は、電圧センサ13によって変換された各相の相電圧が印加される。基準位相入力端子は、基準角度信号生成部21の出力端子に接続され、基準角度信号θが基準角度信号生成部21から供給される。D軸出力端子は、後述する減算器23Aの第2入力端子に接続されている。直交座標変換器22は、D軸出力端子から、後述するDQ変換によって生成されたD軸電圧成分を減算器23Aの第2入力端子に供給する。Q軸出力端子は、後述する減算器23Bの第2入力端子に接続されている。直交座標変換器22は、Q軸出力端子から、後述するDQ変換によって生成されたQ軸電圧成分を減算器23Bの第2入力端子に供給する。すなわち、直交座標変換器22は、電圧センサ13により検出された3相の交流出力電圧VACと基準角度信号生成部21から供給された基準角度信号θとに基づいてDQ変換を実施して、D軸電圧成分であるD軸電圧Vdと、Q軸電圧成分であるQ軸電圧Vqとを導出し、導出したD軸電圧Vd及びQ軸電圧Vqを減算器23A、23Bに夫々供給する。
ここで、直交座標変換器22のDQ変換について説明する。DQ変換は、直交固定座標系から、交流の位相に伴い回転する直交回転座標系への変換である。まず、クラーク変換により固定座標系の3相信号を固定座標系の2相信号に変換し、更にパーク変換により固定座標系の2相信号から基準角度信号θを基準にした回転座標系の2相信号に変換する。例えば、Q軸を基準角度信号θと同相にすると、D軸が基準角度信号θと直交する。Q軸成分は、基準角度信号θと同相の成分のことである。D軸成分は、基準角度信号θと直交する成分のことである。
次に、CVCF電源装置1における電圧制御に関連する内容について説明する。
減算器23Aの第1入力端子には、D軸電圧指令Vdcomが供給される。例えば、D軸電圧指令Vdcomは、後述するQ軸電圧指令Vqcomとともに、図に示されない指令値制御部などから供給される。減算器23Aの第2入力端子には、直交座標変換器22により得られたD軸電圧Vdが供給される。減算器23Aは、D軸電圧指令Vdcomの電圧値からD軸電圧Vdの電圧値を減算し、差分値ΔVdを導出する。減算器23Aの出力端子は、選択器24Aの第1入力端子に接続されている。減算器23Aは、差分値ΔVdを選択器24Aの第1入力端子に供給する。
選択器24Aの第2入力端子には、所定の固定値Fixdが供給される。固定値Fixdは、例えば0又は微小値である。選択器24Aの制御入力端子には、後述する短絡状態判定部29から短絡検出信号SSDが供給される。選択器24Aは、減算器23Aから供給された差分値ΔVdと所定の固定値Fixdとのうちの一方を短絡検出信号SSDに従い選択し、選択した一方をD軸選択電圧Vdselとして、電圧調整部25Aに対し出力する。
電圧調整部25Aは、選択器24Aから供給されるD軸選択電圧Vdsel(入力値)に基づき、比例積分演算などの所定の演算を経て差分値ΔVdが小さくなるように、すなわちD軸電圧VdがD軸電圧指令Vdcomに追従するようにD軸の電流基準Idrを導出する。電圧調整部25Aは、導出したD軸の電流基準Idrを、電圧調整部25Aの出力端子から直交座標逆変換器26のD軸入力端子に供給する。
次に、CVCF電源装置1のなかでQ軸電圧成分に関連する内容について説明する。
減算器23Bの第1入力端子には、Q軸電圧指令Vqcomが供給される。減算器23Bの第2入力端子には、直交座標変換器22により得られたQ軸電圧Vqが供給される。減算器23Bは、Q軸電圧指令Vqcomの電圧値からQ軸電圧Vqの電圧値を減算し、差分値ΔVqを導出する。減算器23Bは、差分値ΔVqを、減算器23Bの出力端子から選択器24Bの第1入力端子に供給する。
選択器24Bの第2入力端子には、所定の固定値Fixqが供給される。固定値Fixqは、例えば0又は微小値である。選択器24Bの制御入力端子には、短絡状態判定部29から短絡検出信号SSDが供給される。選択器24Bの出力端子は、電圧調整部25Bの入力端子に接続されている。選択器24Bは、減算器23Bから供給された差分値ΔVqと所定の固定値Fixqとのうちの一方を短絡検出信号SSDに従い選択し、選択した一方をQ軸選択電圧Vqselとして出力する。
電圧調整部25Bは、選択器24Bから供給されるQ軸選択電圧Vqsel(入力値)に基づき、比例積分演算などの所定の演算により差分値ΔVqが小さくなるように、すなわちQ軸電圧VqがQ軸電圧指令Vqcomに追従するようにQ軸の電流基準Iqrを導出する。電圧調整部25Bは、導出したQ軸の電流基準Iqrを、電圧調整部25Bの出力端子から直交座標逆変換器26のQ軸入力端子に供給する。
直交座標逆変換器26は、例えば、上述したD軸入力端子とQ軸入力端子とに加え、基準位相入力端子と、3相交流出力端子とを有する。直交座標逆変換器26の基準位相入力端子は、基準角度信号生成部21の出力端子に接続されている。直交座標逆変換器26は、電圧調整部25Aから供給されるD軸の電流基準Idrと、電圧調整部25Bから供給されるQ軸の電流基準Idrと、基準角度信号生成部21から供給された基準角度信号θとに基づいてDQ逆変換を実施して、3相交流電流指令値Icomを導出する。3相交流電流指令値Icomを、3相交流の各相に分けて、Icomu、Icomv、Icomwと記す。なお、3相交流電流指令値Icom及びIcomu、Icomv、Icomwの夫々は、予め規定された電圧にインバータ部12の交流出力電圧が追従するように、インバータ部12の交流出力電流を調整するための第1電流指令の一例である。図1において、Icomu、Icomv、及びIcomwの記載を省略する。直交座標逆変換器26は、導出したIcomu、Icomv、Icomwを選択部28に出力する。
上記の直交座標変換器22と、減算器23A、23Bと、選択器24A、24Bと、電圧調整部25A、25Bと、直交座標逆変換器26は、第1電流指令値生成部の一例である。直交座標変換器22と、減算器23A、23Bと、選択器24A、24Bと、電圧調整部25A、25Bと、直交座標逆変換器26は、予め規定された電圧に、インバータ部12の出力電圧が追従するように、3相交流電流指令値Icomを生成する。例えば、予め規定された電圧とは、CVCF制御の目標電圧であるインバータ部12の定格出力電圧であってよい。
電流指令値生成部27は、予め規定された第2電流指令を生成する。例えば、電流指令値生成部27は、例えば、波形データ記憶部274を含む。波形データ記憶部274は、周期的にインバータ部12が負荷40側に流す交流電流波形を示すデータを格納する。以下、波形データ記憶部274に格納され交流電流の指令値である第2電流指令を生成するためのデータを波形データという。例えば、第2電流指令は、予め規定された大きさの電流を流させるための制御目標値であって、実際に流す電流の上限値として規定されてもよい。換言すれば、第2電流指令は、インバータ部12に接続された遮断器50が引きはずし動作を行うような電流がインバータ部12から流れるように規定されてもよい。
上記の波形データは、インバータ部12が負荷40側に流す交流電流の大きさを示す。例えば、その波形データは、Ieを実効値とし、前述の基準角度信号θを基準に周期的に繰り返される交流電流の波形を示す時系列データである。その波形データを構成するデータ量は、交流の1周期又はその一部に対応するデータ数を含む。時系列データの夫々が電流の大きさを示す離散値で示される。なお、波形データは、電流の実効値又はピーク値に基づいて振幅が規定されてもよい。
このような電流指令値生成部27は、インバータ部12と負荷40に接続された遮断器50が自動的に引きはずし動作を行う電流の値よりも大きい電流値を流すように指令する第2電流指令を出力する。例えば、第2電流指令は、引きはずし動作を行う電流の値よりも大きい電流値を示す波形データとして生成される。
上述したように、電流指令値生成部27には、基準角度信号生成部21から基準角度信号θが供給される。例えば、電流指令値生成部27は、波形データを、交流の1周期を形成するのに必要とされる時系列データとして、基準角度信号θに基づいて周期的に読み出す。電流指令値生成部27は、読み出した時系列データに基づいて電流の波形を規定する短絡電流指令値Iscomを生成する。例えば、短絡電流指令値Iscomの1周期は、基準角度信号θの周期に等しく、又は、基準角度信号θの周期に関連付けられている。各データを読み出す間隔が例えば1周期の1/8より短ければ、1周期の波形の特徴を再現できることがある。例えば、その電流の波形は、正弦波、正弦波の形を模擬したもの、正弦波の形を加工したものなどの正弦波の形状に基づいたものであってよい。例えば、正弦波の形を加工したものには、1周期のなかで少なくとも一部の位相範囲に他の信号を加算又は減算したもの、少なくとも一部の位相範囲を他の信号で置換したもの、正弦波の振幅に所定の歪又はオフセットを付加したもの、時系列データに時間軸方向の変動を付加したものなどがあげられる。
短絡電流指令値Iscomは、3相交流の各相の成分を含む。短絡電流指令値Iscomを、3相交流の各相に分けて、短絡電流指令値Iscomu、Iscomv、Iscomwと呼ぶ。なお、電流指令値生成部27が生成する短絡電流指令値Iscom及びIscomu、Iscomv、Iscomwの夫々は、第2電流指令の一例である。なお、図1において、短絡電流指令値Iscomu、Iscomv、及びIscomwの記載を省略する。
ここで、図2を参照して、実施形態の遮断器の遮断特性について説明する。図2は、実施形態の遮断器50の遮断特性を示す図である。遮断器50の遮断特性は、電流値(横軸)と動作時間(縦軸)を軸に持つ座標平面に描かれる動作特性曲線により規定される。その遮断特性の要素には、定格電流、定格短時間耐電流値、時延引きはずし範囲、瞬時引きはずし範囲、最大全遮断時間などが含まれる。例えば、時延引きはずし範囲と瞬時引きはずし範囲は、これらの範囲を区分する動作特性曲線により規定される。瞬時引きはずし範囲に関わる電流値IS1は、短絡電流など比較的過大な過電流により、瞬時に回路を遮断する電流の下限値のことである。図2における瞬時に回路を遮断する電流の下限値を示す動作特性曲線を、曲線lminで示す。遮断器50の動作特性は、ばらつくことがある。図2における瞬時に回路を遮断する電流の上限値を示す動作特性曲線を、曲線lmaxで示す。電流値IS2は、瞬時に回路を遮断する電流の値がばらつく範囲の上限を示す。図2におけるインバータ部12の許容電流を曲線linvで示す。図2において、曲線Imaxと曲線Iinvで囲まれる範囲を領域R1と呼ぶ。更に、図2において、曲線Iminと曲線Iinvで囲まれる範囲であって、領域R1を除く領域を領域R2と呼ぶ。上記に基づいて遮断器50を選定する際には、横軸の値がIe、縦軸の値がTSCの点が、領域R1内に設定可能なものから選択される。図2内の点Aは、遮断器50の動作点の一例を示す。図2における点Aの位置は、曲線invよりも下で、曲線lmaxよりも上になる。例えば、電流値Ieに対応する曲線inv上の点の縦軸の値をTiIeで示し、曲線lmax上の縦軸の値をTMIeで示す。このように点Aの位置は、電流値Ieと短絡電流を流すことを許容する時間TSCとにより規定される。この場合、時間TSCは、TMIeよりも大きく、TiIeよりも小さな値になる。なお、遮断器50の最大全遮断時間TMAXは、遮断器50の種類により異なる。例えば、最大全遮断時間TMAXは20ms程度である。遮断器50は、電流値IS2を超える電流の場合、電流条件による最大全遮断時間TMAX未満の時間TBで応答する。
例えば、上記の電流値IS2を超え、インバータ部12の許容電流を超えない電流値Ieの電流が時間TB継続して遮断器50に流れると、遮断器50は、遮断器50の入力側回路と出力側回路との間の電気的な接続を開放して、CVCF電源装置1と負荷短絡の発生箇所との間を電気的に遮断する。これにより、遮断器50は、短絡電流を遮断することができる。
なお、一般に遮断器50の種別が互いに異なると、その短絡電流遮断特性も互いに異なるものになる。例えば、CVCF電源装置1において遮断器50の電流値IS2が互いに異なるものが含まれている場合がある。このような場合には、電流値IS2が異なるもののなかで、電流値IS2が最も大きな遮断器50の電流容量に合わせて、電流値Ieを規定するとよい。
図1に戻り説明を続ける。直交座標逆変換器26は、生成したIscomu、Iscomv、及びIscomwを選択部28に出力する。
選択部28は、短絡状態判定部29が負荷短絡なしと判定した場合には第1電流指令を3相交流電流指令値Icomとし、短絡状態判定部29が負荷短絡ありと判定した場合には第2電流指令を短絡電流指令値Iscomとする。選択部28は、3相交流の各相分の電流指令を纏めて選択する。例えば、選択部28は、図示されない選択器がU相、V相、W相に対応付けて独立に設けられており、夫々が互いに連動して切り替わる。例えば、U相の場合、選択部28のU相に対応する第1入力端子は、直交座標逆変換器26のU相に対応する第1の出力端子に接続されている。選択部28のU相に対応する第2入力端子は、電流指令値生成部27のU相に対応する第1の出力端子に接続されている。選択部28の制御信号入力端子には、短絡状態判定部29から短絡検出信号SSDが供給される。選択部28は、制御信号入力端子がLレベルであると第1入力端子を選択し、Hレベルであると第2入力端子を選択する。すなわち、選択部28は、短絡検出信号SSDがLレベルになるとU相に対応する第1入力端子を選択することで、U相に対応する第1入力端子に供給される3相交流電流指令値Icomuを後段の減算器31に出力する。一方で、選択部28は、制御信号入力端子がHレベルになるとU相に対応する第2入力端子を選択することで、U相に対応する第2入力端子に供給される短絡電流指令値Iscomuを後段の減算器31に出力する。V相とW相についてもU相の場合と同様である。なお、上記の短絡状態判定部29が負荷短絡なしと判定する場合には、短絡状態判定部29が一旦負荷短絡ありと判定した後にその負荷短絡が解消した場合が含まれる。この場合、短絡状態判定部29は、一旦負荷短絡ありと判定した後に負荷短絡が解消したと判定した場合には第1電流指令を選択する。
なお、上記の通り、3相交流電流指令値Icomと短絡電流指令値Iscomは、ともに基準角度信号θに同期している。このため、選択部28によって出力する信号を切り替えたとしても、3相交流電流指令値Icomと短絡電流指令値Iscomが基準角度信号θに同期しているため、選択部28から出力される信号の位相の連続性が保たれやすい。
選択部28は、短絡状態判定部29から入力される短絡検出信号SSDにより、上記の3相交流電流指令値Icomと短絡電流指令値Iscomとのうちの一方を択一的に選択して、選択した指令値を出力する。
短絡状態判定部29は、例えば、インバータ部12の出力電流の値に基づいて、インバータ部12の負荷側に生じた負荷短絡の有無を判定する。例えば、短絡状態判定部29は、電流センサ14の検出結果に基づいて、短絡状態の発生を検出して、検出結果を示す短絡検出信号SSDを出力する。また、短絡状態判定部29は、電流センサ14の検出結果に基づいて、短絡状態の解消を検出して短絡検出信号SSDの出力を中断する。例えば、短絡状態判定部29は、3相交流の各相の相電流が閾値ITH1(第1閾電流値)以上になるまでは、短絡状態が発生していないと判定し、Lレベルの短絡検出信号SSDを出力する。短絡状態判定部29は、3相交流の少なくとも何れかの相の相電流が閾値ITH1以上になったことを検出した場合、短絡状態が発生していると判定し、Hレベルの短絡検出信号SSDを出力する。
例えば、制御部20は、図に示されないタイマーを備える。短絡状態判定部29は、上記の判定により一旦負荷短絡状態が発生していると判定すると、短絡検出信号SSDをHレベルにする。短絡状態判定部29は、負荷短絡状態の検出から少なくとも所定の時間TSC以上継続させるように、短絡検出信号SSDのHレベルの出力を開始する。この時間TSCは、遮断器50に短絡電流による過電流を遮断させるために必要とされる時間に基づいて規定される。例えば、遮断器50の動作点(点A)の位置が、図2に示された領域R1内に含まれるように規定される。この点Aによる時間TSCは、遮断器50の最大全遮断時間より長い。なお、実際の動作点は、遮断機50の動作ばらつき時間により図2に示された点Bが含まれる領域R2内の位置になることがある。なお、遮断器50の全遮断時間はリレー時間と機構遅れ時間とアーク時間の和である。リレー時間より長く電流を通電させれば遮断器50は引きはずし動作を開始するので、より詳細には時間TSCは遮断器50の最大リレー時間より長い時間でよい。
また、短絡状態判定部29は、短絡状態が解消すると短絡検出信号SSDのHレベルを中断してLレベルにする。例えば、短絡状態判定部29は、当該相電流が所定量以下(相電流の絶対値が継続的に閾値ITH2(第2閾電流値)以下)になった状態を検出した場合に、その短絡状態が解消したと判定して、短絡検出信号SSDをHレベルからLレベルに切り替える。なお、短絡検出信号SSDは、後述する動作モードに対応付けられている。例えば、短絡状態判定部29は、短絡検出信号SSDがLレベルの場合に通常制御モードを、Hレベルの場合に短絡電流制御モードを指定して各部を機能させる。
なお、短絡状態判定部29は、時間TSCが満了しても、3相交流の少なくとも何れかの相の相電流が所定量(相電流の絶対値が断続的に閾値ITH2)を超えている場合には、遮断器50によって遮断できない短絡電流が流れているものと判定して、インバータ部12の電力変換を中止させる。例えば、短絡状態判定部29は、上記の場合に、後述するPWM制御部35にゲートブロック指令GBCOMを送り、PWM制御部35からインバータ部12に駆動パルスを供給することを中断させる。これにより、短絡状態判定部29は、全ての負荷40に対する電力供給を中断することになるが、インバータ部12の電力変換を中止させることにより、短絡電流が流れ続ける状態を解消させることができる。
更に、制御部20は、例えば、減算器31と、電流調整部(ACR(Automatic Current Regulator))32と、加算器33と、基準電圧発生部34と、PWM制御部35(ゲート制御回路)とを備える。例えば、減算器31と、電流調整部32と、加算器33と、基準電圧発生部34とは、各相に夫々設けられている。
減算器31の第1入力端子は、選択部28の出力端子に接続されている。減算器31の第2入力端子は、電流センサ14に接続されている。減算器31は、3相交流電流指令値Icomuと短絡電流指令値Iscomuとの何れかの各相の電流指令値から電流センサ14によって検出された各相の相電流の電流値を減算することで、各相の相電流の差分値ΔIを導出する。減算器31の出力端子は、電流調整部32の入力端子に接続されている。
電流調整部32は、選択部28から供給される各相の電流値にインバータ部12の出力電流が追従するように、インバータ部12を制御するための補正信号(補正量)を生成する。差分値ΔIに基づいて各相の相電圧を調整するための補正信号は、インバータ部12を制御するための補正信号の一例である。減算器31と電流調整部32は、電流制御回路の一例である。電流調整部32の出力端子は、加算器33の第1入力端子に接続されている。
基準電圧発生部34(Vref)は、基準角度信号θに基づき、インバータ部12の出力電圧の基準になる基準電圧を発生する。例えば、基準電圧発生部34には、基準角度信号θが供給され、基準角度信号θに同期した正弦波の3相交流基準電圧信号(基準電圧信号)を生成する。基準電圧発生部34の出力端子には、加算器33の第2入力端子が接続されている。
加算器33は、電流調整部32から加算器33の第1入力端子に供給される各相の相電圧の調整量と、基準電圧発生部34から加算器33の第2入力端子に供給される3相交流基準電圧信号とを加算して、各相の電圧指令値を生成する。加算器33の出力端子は、後述するPWM制御部35の入力端子に接続されている。
PWM制御部35は、基準電圧発生部34から供給される基準電圧と、電流調整部32により生成された補正信号(補正量)とに基づきインバータ部12に供給するゲートパルスを生成して、インバータ部12に供給する。例えば、PWM制御部35は、加算器33から供給される各相の電圧指令値と、キャリア信号とに基づいて、インバータ部12を制御するための駆動パルスGPを生成する。PWM制御部35の出力端子は、インバータ部12の各相のスイッチ部に接続されている。PWM制御部35は、生成した駆動パルスGPを、PWM制御部35の出力端子からインバータ部12の各相のスイッチ部に供給する。
なお、PWM制御部35は、短絡状態判定部29からゲートブロック指令GBCOMを受けると、PWM制御部35からインバータ部12に供給する駆動パルスの生成を中断する。
なお、図1において、PWM制御部35からインバータ部12への結線の記載を一部省略している。
次に、図3と図4を参照して、実施形態の短絡状態判定部29について説明する。図3は、実施形態の短絡状態判定部29を示す構成図である。
短絡状態判定部29は、例えば、U相判定回路29Uと、V相判定回路29Vと、W相判定回路29Wと、論理演算回路29Sと、オア回路29Oとを備える。
U相判定回路29Uは、入力端子が電流センサ14のU相出力に接続され、U相の負荷短絡状態を検出する。U相判定回路29Uは、例えば、絶対値回路291(ABS)と、比較器292、293と、第1オンディレイ回路295と、アンド回路296と、ラッチ回路297と、第2オンディレイ回路298と、反転回路299とを備える。
絶対値回路291は、入力端子が電流センサ14のU相出力に接続されている。絶対値回路291は、電流センサ14によって検出されたU相の電流値を取得して、U相の電流値の絶対値を導出する。絶対値回路291の出力端子は、比較器292の第1入力端子と、比較器293の第2入力端子に接続されている。
比較器292は、絶対値回路291によって導出された絶対値と第2入力端子に供給される固定値の閾値ITH1とを比較する。比較器292は、絶対値回路291によって導出された絶対値が閾値ITH1以上の場合にHレベルを出力し、或いは上記の絶対値が閾値ITH1に満たない場合にLレベルを出力する。比較器292の出力端子は、ラッチ回路297のセット端子Sに接続されている。
比較器293は、絶対値回路291によって導出された絶対値と第1入力端子に供給される固定値の閾値ITH2とを比較する。なお、上記の閾値ITH2は、閾値ITH1よりも小さく設定されていることにより、閾値ITH1との組み合わせによりヒステリシスを形成される。比較器293は、絶対値回路291によって導出された絶対値が閾値ITH2以下の場合にHレベルを出力し、或いは上記の絶対値が閾値ITH2を超えている場合にLレベルを出力する。比較器293の出力端子は、第1オンディレイ回路295の入力端子に接続されている。
第1オンディレイ回路295は、例えば、遅延時間設定型の遅延回路である。比較器293から入力端子に供給された信号がLレベルからHレベルに遷移する場合には、第1オンディレイ回路295は、予め定められた時間(遅延時間)、出力信号のLレベルを延長させて出力し、出力信号のLレベルからHレベルに遷移を遅らせる。また、第1オンディレイ回路295は、入力端子に供給された信号がHレベルからLレベルに遷移する場合にはHレベルを延長させることなく、出力信号をLレベルに切り替える。第1オンディレイ回路295の出力端子は、アンド回路296の第1入力端子に接続されている。負荷短絡状態が生じている間であっても、U相電流に零点が生じる。例えば、第1オンディレイ回路295の遅延時間は、零点により比較回路293の論理が反転する期間の長さより長くなるように規定される。これにより、この零点の影響を回避することができる。
アンド回路296は、2入力の論理積回路である。アンド回路296の出力端子は、ラッチ回路297のリセット端子Rに接続されている。
ラッチ回路297は、所謂セット・リセット型のラッチ回路である。ラッチ回路297は、比較器292からの信号とアンド回路296からの信号の状態により、ラッチ回路297が保持する論理状態が決まる。例えば、比較器292からの信号がHレベルであり、アンド回路296からの信号がLレベルである場合に、ラッチ回路297は、Hレベルの論理状態を保持して、Hレベルの出力信号を出力する。比較器292からの信号がLレベルであり、アンド回路296からの信号がHレベルである場合に、ラッチ回路297は、Lレベルの論理状態を保持して、Lレベルの出力信号を出力する。比較器292からの信号とアンド回路296からの信号がともにLレベルである場合に、ラッチ回路297は、保持している論理状態を維持して、出力信号の論理状態も維持する。ラッチ回路297は、保持する論理状態を示す出力信号として信号SSD_1を出力する。ラッチ回路297のQ出力端子は、第2オンディレイ回路298の入力端子と、論理演算回路29Sの第1入力端子に接続されている。
第2オンディレイ回路298は、第1オンディレイ回路295と同様の遅延回路である。第2オンディレイ回路298は、負荷短絡状態が検出されてから短絡電流を一定期間流すために、出力信号の状態遷移をこの期間(TSC(図2))に合わせて遅らせた信号GBCOM_1を生成する。第2オンディレイ回路298の出力端子は、反転回路299の入力端子と、オア回路29Oの第1入力端子とに接続されている。
反転回路299は、入力端子に供給された信号GBCOM_1の論理を反転して出力する。反転回路299の出力端子は、アンド回路296の第2入力端子に接続されている。
例えば、アンド回路296は、信号GBCOM_1がLレベルにある場合に、第1オンディレイ回路295からの信号の変化に応じて出力信号を変化させて、その出力信号をラッチ回路297に供給する。アンド回路296は、信号GBCOM_1がHレベルにある場合に、出力をLレベルにして、第1オンディレイ回路295からの信号をマスクする。負荷短絡が検出されても所定時間(TSC)が経過すると電流が遮断されるため、ラッチ回路297に、短絡発生の検出結果を保持させる。
U相判定回路29Uは、U相判定回路29Uの第1出力端子から信号SSD_1を出力し、U相判定回路29Uの第2出力端子から信号GBCOM_1を出力する。
V相判定回路29Vは、入力端子が電流センサ14のV相出力に接続され、V相の負荷短絡状態を検出する。V相判定回路29Vは、例えば、U相判定回路29Uと同様の構成を備える。V相判定回路29Vは、V相判定回路29Vの第1出力端子から信号SSD_2を出力し、V相判定回路29Vの第2出力端子から信号GBCOM_2を出力する。
W相判定回路29Wは、入力端子が電流センサ14のW相出力に接続され、W相の負荷短絡状態を検出する。W相判定回路29Wは、例えば、U相判定回路29Uと同様の構成を備える。W相判定回路29Wは、W相判定回路29Wの第1出力端子から信号SSD_3を出力し、W相判定回路29Wの第2出力端子から信号GBCOM_3を出力する。
なお、上記の信号SSD_2と信号SSD_3は、信号SSD_1と同様の信号であり、夫々がV相とW相に対応する。また、上記の信号GBCOM_2と信号GBCOM_3は、信号GBCOM_1と同様の信号であり、夫々がV相とW相に対応する。
論理演算回路29Sは、3つの入力端子と4つの出力端子を有し、所定の論理演算を実施する。論理演算回路29Sの3つの入力端子には、信号SSD_1と、信号SSD_2と、信号SSD_3とが夫々供給される。論理演算回路29Sは、信号SSD_1と、信号SSD_2と、信号SSD_3に基づいた所定の論理演算により、信号SSD123と、信号SSD12と、信号SSD23と、信号SSD31と、短絡検出信号SSDと、を夫々生成する。論理演算回路29Sは、生成した信号SSD123と、信号SSD12と、信号SSD23と、信号SSD31と、短絡検出信号SSDとを、論理演算回路29Sの第1出力端子から第5出力端子の5つの出力端子から夫々出力する。
例えば、論理演算回路29Sは、以下に示す所定の論理演算を実施する。図4は、実施形態の論理演算回路29Sの論理演算について説明するための真理値表を示した図である。
論理演算回路29Sは、信号SSD_1と、信号SSD_2と、信号SSD_3とが揃ってHレベルである場合に、3相に負荷短絡が発生していると識別する。この場合、論理演算回路29Sは、信号SSD123と、短絡検出信号SSDとをHレベルにして、信号SSD12と、信号SSD23と、信号SSD31とをLレベルにする。なお、上記の場合、3相が揃って地絡している場合が含まれる。
論理演算回路29Sは、信号SSD_1と、信号SSD_2と、信号SSD_3とのなかの1つの信号がHレベルで、更に他の2つの信号がLレベルである場合に、何れかの1相に負荷短絡(地絡)が発生していると識別する。この場合、論理演算回路29Sは、信号SSD123と、信号SSDとをHレベルにして、信号SSD12と、信号SSD23と、信号SSD31とをLレベルにする。
論理演算回路29Sは、信号SSD_1と、信号SSD_2とがともにHレベルであり、更に信号SSD_3がLレベルである場合に、U相とV相の2相の間に負荷短絡が発生していると識別する。この場合、論理演算回路29Sは、信号SSD12と、短絡検出信号SSDとをHレベルにして、信号SSD123と、信号SSD23と、信号SSD31とをLレベルにする。なお、上記の場合、上記の2相が地絡している場合が含まれる。
論理演算回路29Sは、信号SSD_2と、信号SSD_3とがともにHレベルであり、更に信号SSD_1がLレベルである場合に、V相とW相の2相の間に負荷短絡が発生していると識別する。この場合、論理演算回路29Sは、信号SSD23と、短絡検出信号SSDとをHレベルにして、信号SSD123と、信号SSD31と、信号SSD12とをLレベルにする。なお、上記の場合、上記の2相が地絡している場合が含まれる。
論理演算回路29Sは、信号SSD_3と、信号SSD_1とがともにHレベルであり、更に信号SSD_2がLレベルである場合に、W相とU相の2相の間に負荷短絡が発生していると識別する。この場合、論理演算回路29Sは、信号SSD31と、短絡検出信号SSDとをHレベルにして、信号SSD123と、信号SSD12と、信号SSD23とをLレベルにする。なお、上記の場合、上記の2相が地絡している場合が含まれる。
論理演算回路29Sは、信号SSD_1と、信号SSD_2と、信号SSD_3とがともにLレベルである場合に、3相の何れにも負荷短絡及び地絡が発生していないと識別する。この場合、論理演算回路29Sは、信号SSD123と、短絡検出信号SSDと、信号SSD12と、信号SSD23と、信号SSD31とをLレベルにする。
上記のように、論理演算回路29Sは、3相短絡(地絡)、2相短絡(地絡)、及び1相地絡の有無と、事故相とを識別する。
オア回路29Oは、3入力型の論理和演算回路である。オア回路29Oの第1入力端子は、U相判定回路29Uの第2出力端子に接続される。オア回路29Oの第1入力端子には、U相判定回路29Uから信号GBCOM_1が供給される。オア回路29Oの第2入力端子は、V相判定回路29Vの第2出力端子に接続される。オア回路29Oの第2入力端子には、V相判定回路29Vから信号GBCOM_2が供給される。オア回路29Oの第3入力端子は、W相判定回路29Wの第2出力端子に接続される。オア回路29Oの第3入力端子には、W相判定回路29Wから信号GBCOM_3が供給される。
オア回路29Oは、信号GBCOM_1と、信号GBCOM_2と、信号GBCOM_3との論理和をとり、その結果をゲートブロック指令GBCOMとして出力する。オア回路29Oの出力端子は、PWM制御部35に接続されている。
次に、図5と図6を参照して、実施形態の電流指令値生成部27について説明する。図5は、実施形態の電流指令値生成部27を示す構成図である。
電流指令値生成部27は、例えば、U相電流指令値生成部271と、V相電流指令値生成部272と、W相電流指令値生成部273とを備える。
U相電流指令値生成部271は、例えば、切替器2711、2712、2713と、加算器2714とを備える。
切替器2711、2712、2713は、制御入力端子がLレベルになると夫々の第2入力端子側を選択し、Hレベルになると夫々の第1入力端子側を選択する。切替器2711の第2入力端子と、切替器2712の第2入力端子と、切替器2713の第2入力端子の夫々には、零が供給される。
切替器2711の第1入力端子には、U相第1短絡電流指令値が供給される。切替器2711の制御入力端子には、信号SSD123が供給される。切替器2711の出力端子には、加算器2714の第1入力端子が接続される。切替器2712の第1入力端子には、U相第2短絡電流指令値が供給される。切替器2712の制御入力端子には、信号SSD31が供給される。切替器2712の出力端子には、加算器2714の第2入力端子が接続される。切替器2713の第1入力端子には、U相第3短絡電流指令値が供給される。切替器2713の制御入力端子には、信号SSD12が供給される。切替器2713の出力端子には、加算器2714の第3入力端子が接続される。
加算器2714は、切替器2711により選択された信号と、切替器2712により選択された信号と、切替器2713により選択された信号と、を加算して、加算した結果をU相短絡電流指令値Iscomuとして出力する。
なお、U相第1短絡電流指令値と、U相第2短絡電流指令値と、U相第3短絡電流指令値とを、以下に順に示す。θLは、基準角度信号θの位相を基準にした短絡電流の位相を示す。短絡時や地絡時におけるインピーダンスは誘導性が支配的であるので、そのθLの値は、基準角度信号θの位相に対して概ね(-π/2)(ラジアン)になることがある。波形を正弦波とした場合には、最大振幅I0は、実効値Ieのルート2倍になる。
(I0×sin(θ+θL))は、U相第1短絡電流指令値の一例である。
(I0×sin(θ-π/6+θL))は、U相第2短絡電流指令値の一例である。
(-I0×sin(θ-5π/6+θL))は、U相第3短絡電流指令値の一例である。
換言すれば、U相短絡電流指令値Iscomuは、信号SSD123がHレベルで供給されるとU相第1短絡電流指令値を選択し、信号SSD31がHレベルで供給されるとU相第2短絡電流指令値を選択し、信号SSD12がHレベルで供給されるとU相第3短絡電流指令値を選択し、上記の選択結果をU相短絡電流指令値Iscomuとして出力する。すなわち短絡回路の電圧に対して誘導性の電流を流す電流指令値の位相とする。
V相電流指令値生成部272は、例えば、切替器2721、2722、2723と、加算器2724とを備える。V相電流指令値生成部272は、U相電流指令値生成部271の構成と同様に構成されている。
V相電流指令値生成部272は、信号SSD123がHレベルで供給されるとV相第1短絡電流指令値を選択し、信号SSD12がHレベルで供給されるとV相第2短絡電流指令値を選択し、信号SSD23がHレベルで供給されるとV相第3短絡電流指令値を選択し、上記の選択結果をV相短絡電流指令値Iscomvとして出力する。
(I0×sin(θ-2π/3+θL))は、V相第1短絡電流指令値の一例である。
(I0×sin(θ-5π/6+θL))は、V相第2短絡電流指令値の一例である。
(-I0×sin(θ-9π/6+θL))は、V相第3短絡電流指令値の一例である。
W相電流指令値生成部273は、例えば、切替器2731、2732、2733と、加算器2734とを備える。W相電流指令値生成部273は、U相電流指令値生成部271の構成と同様に構成されている。
W相電流指令値生成部273は、信号SSD123がHレベルで供給されるとW相第1短絡電流指令値を選択し、信号SSD23がHレベルで供給されるとW相第2短絡電流指令値を選択し、信号SSD31がHレベルで供給されるとW相第3短絡電流指令値を選択し、上記の選択結果をW相短絡電流指令値Iscomwとして出力する。
(I0×sin(θ-4π/3+θL))は、W相第1短絡電流指令値の一例である。
(I0×sin(θ-9π/6+θL))は、W相第2短絡電流指令値の一例である。
(-I0×sin(θ-π/6+θL))は、W相第3短絡電流指令値の一例である。
図6は、実施形態の電流指令値生成部27の動作を説明するための図である。
図6に示す表は、信号SSD123と、信号SSD12と、信号SSD23と、信号SSD31の各信号の論理値と、U相、V相、W相の各相の短絡電流指令値との関係を一覧にしたものである。例えば、信号SSD123と、信号SSD12と、信号SSD23と、信号SSD31の各信号の論理値が、Hレベル、Lレベル、Lレベル、Lレベルである場合に、U相の短絡電流指令値がU相第1短絡電流指令値に対応する(I0×sin(θ+θL))になる。同様に、V相の短絡電流指令値がV相第1短絡電流指令値に対応する(I0×sin(θ-2π/3+θL))になる。W相の短絡電流指令値がW相第1短絡電流指令値に対応する(I0×sin(θ-4π/3+θL))になる。その他の場合も同様である。
図7を参照して、CVCF電源装置1の動作について説明する。
図7は、実施形態のCVCF電源装置1の動作を説明するための図である。この図7に示すタイミングチャートには、図7(a)にCVCF電源装置1の出力電流の変化が示され、図7(b)に短絡検出信号SSDが示され、図7(c)にゲートブロック指令GBCOMが示され、図7(d)にCVCF電源装置1の動作モードが示されている。
この図7に示す時刻t0以前の初期状態は、負荷短絡が発生していない状況を示す。負荷短絡が発生していない状況であれば、図7(a)に示すようにCVCF電源装置1の出力電流、つまりインバータ部12からの交流電流は、閾値ITH1よりも少ない状態にある。このときCVCF電源装置1は、図7(d)に示すように通常制御モードによる制御によって機能する。なお、上記の通り閾値ITH1は、過電流検出のために規定された閾値である。この初期状態では、図7(b)に示すように短絡検出信号SSDは、負荷短絡が未検出であることを示すLレベルになる。図7(c)に示すようにゲートブロック指令GBCOMは、ゲートブロックを実施しない状態であることを示すLレベルになっている。なお、本図に示す期間のなかでは、ゲートブロック指令GBCOMは、Lレベルのままであり、ゲートブロックが必要な事象は生じない。
時刻t0に負荷短絡が発生したと仮定する。負荷短絡が発生したことにより出力電流が増加する。出力電流の大きさが閾値ITH1以上になるまでは、CVCF電源装置1は負荷短絡の発生を検出しない。時刻t1に至るまでの通常制御モードによる制御では、CVCF電源装置1は、電流指令値を3相交流電流指令Icomにすることにより、出力電圧をCVCF制御による所望のものに調整する、所謂マイナー電流ループ付き定電流制御を実施する。
例えば、時刻t1以前における短絡状態判定部29は、電流センサ14によって検出された相電流が閾値ITH1に満たない場合であれば、インバータ部12の負荷側に負荷短絡が発生していないと判定して、短絡検出信号SSDをHレベルにすることはない。このような場合、短絡状態判定部29は、短絡検出信号SSDのLレベルを維持する。これにより、選択器24Aと24Bは第1入力端子を選択する。つまり、電圧センサ13により検出された交流電圧VACに基づいたCVCF制御が行われる。このCVCF制御では、交流電圧VACから直交座標変換器22によって導出されたD軸電圧VdとQ軸電圧Vqと、制御部20内で予め設定されるD軸電圧指令VdcomとQ軸電圧指令Vqcomとに基づいた3相交流電流指令値Icomが、制御部20の各部によって生成される。制御部20の各部には、減算器23A、23Bと、選択器24A、24Bと、電圧調整部25A、25Bと、直交座標逆変換器26などが含まれる。なお、直交座標逆変換器26は、基準角度信号θに基づいて3相交流電流指令値Icomを生成する。
選択部28は、Lレベルの短絡検出信号SSDに基づいて第1入力端子を選択し、3相交流電流指令値Icomを出力する。3相交流電流指令値Icomは、減算器31と、電流調整部32と、加算器33とを経てPWM制御部35に供給される。
PWM制御部35は、3相交流電流指令値Icomに基づいた駆動パルスをPWM制御部35の出力端子からインバータ部12に供給することで、インバータ部12の交流出力電圧と周波数とがCVCF制御により所望の値になるようにインバータ部12を制御する。
なお、インバータ部12の交流出力の相電流が電流センサ14によって検出される。電流調整部32は、電流センサ14による検出結果が3相交流電流指令値Icomに追従するように、インバータ部12の出力電圧を調整する。
図7(a)に示すように、CVCF電源装置1の出力電流の電流値が上昇して、時刻t1に閾値ITH1以上になる。短絡状態判定部29は、この出力電流の変化を検出して制御モードを短絡電流制御モードに切り替えて、CVCF電源装置1を負荷短絡の発生時のための短絡電流制御モードによる制御によって機能させる。短絡電流制御モードによる制御では、CVCF電源装置1は、3相交流電流指令Icomに代えて、例えば正弦波を模して生成された短絡電流指令Iscomを利用する。
例えば、短絡状態判定部29は、電流センサ14によって検出された相電流が閾値ITH1を超えたことにより負荷短絡が発生していると判定し、短絡検出信号SSDとしてHレベルを出力する。電流指令値生成部27は、基準角度信号θに基づいて短絡電流指令値Iscomを生成する。短絡検出信号SSDがHレベルになったことにより、選択部28は、第2入力端子を選択して、3相交流電流指令値Icomに基づいた電圧制御を含むCVCF制御を中断させる。選択部28は、電流指令値生成部27が生成した短絡電流指令値Iscomを出力する。短絡電流指令値Iscomは、減算器31と、電流調整部32と、加算器33とを経てPWM制御部35に供給される。
PWM制御部35は、短絡電流指令値Iscomに基づいた駆動パルスをPWM制御部35の出力端子からインバータ部12に供給する。インバータ部12は、短絡電流指令値Iscomに基づいた短絡電流を流す。例えば、遮断器50に流す短絡電流は、図2に示す点Aの位置により定まる電流値Ieに追従するよう制御される。上記の場合、電流のピーク値は、電流指令値生成部27がIcomのピーク値I0を、(√2)・Ieにすることにより実現する。
なお、上記の通り短絡検出信号SSDがHレベルになったことにより、選択器24Aと24Bは、第2入力端子を選択する。これによって、電圧調整部25Aには、電圧指令値と交流出力電圧VACに基づいたフィードバック値とに関連する情報が入力される代わりに、固定値が入力される。また、電圧調整部25Bには、電圧指令値と交流出力電圧VACに基づいたフィードバック値とに関連する情報が入力される代わりに、固定値が入力される。
例えば、電圧調整部25Aには、交流電圧VACから直交座標変換器22によって導出されたD軸電圧Vdと、外部から供給されるD軸電圧指令Vdcomに基づいた差分値ΔVdが入力されなくなり、電圧調整部25Aによる差分値ΔVdの積分が中断される。電圧調整部25Bには、交流電圧VACから直交座標変換器22によって導出されたQ軸電圧Vqと、外部から供給されるQ軸電圧指令Vqcomに基づいた差分値ΔVqが入力されなくなり、電圧調整部25Bによる差分値ΔVqの積分が中断される。
例えば、上記の固定値である固定値Fixdと固定値Fixqを0にすることにより、積分値が変化しなくなる。これにより、電圧調整部25Aと電圧調整部25Bの積分を実質的に止めることができる。
例えば、電圧調整部25Aと電圧調整部25Bが比例積分演算により電圧制御を実施する場合、電圧調整部25Aと電圧調整部25Bに供給される信号が0に保持されていれば、比例演算分の出力値が0になり、積分演算分の出力が不変になる。これにより、電圧調整部25Aと電圧調整部25Bの積分を止めることができる。
上記を纏めると、時刻t1において、電流センサ14により閾値ITH1以上の電流が検出されていることを、短絡状態判定部29が識別した場合に、CVCF電源装置1の制御モードは、短絡電流指令Iscomを利用する短絡電流制御モードによる制御に切り替わる。短絡電流制御モードによる制御に切り替わると、CVCF電源装置1の出力電流が短絡電流指令Iscomに追従するよう制御される。
負荷短絡が生じていた系統の遮断器50は、短絡電流指令Iscomに基づいた電流値の短絡電流に応答して回路を開き電流を遮断する。図中に示すTBは、遮断器50が短絡電流に応答するまでの制御期間の時間幅(時間)である。なお、負荷短絡が生じていなかった系統の遮断器50は、短絡電流が流れないため回路を開き電流を遮断することはない。
負荷短絡が生じていた系統の遮断器50が回路を開いたことにより、CVCF電源装置1が負荷側に流す電流に短絡電流が含まれなくなり、CVCF電源装置1が流す電流が減少する。CVCF電源装置1の出力電流が閾値ITH2以下になると、CVCF電源装置1は、下記のように制御モードを切り替えて、CVCF制御による通常制御モードに復帰する。
例えば、短絡状態判定部29は、電流センサ14により検出された電流値が閾値ITH2以下に低下した状態が、所定の時間(第1所定時間)以上継続する場合、短絡電流が流れなくなったことを識別し、負荷短絡状態が解消したと判定する。上記のように、所定の時間(第1所定時間)以上継続することにより、ノイズや交流電流の零クロス点などによる誤判定が生じることを回避させる。短絡状態判定部29は、電流値の判定結果に基づいて短絡電流が流れなくなったことを識別して、制御モードを短絡電流制御モードから通常制御モードに戻し、短絡検出信号SSDをLレベルにする。
選択器24Aと24Bは、短絡検出信号SSDがLレベルになったことにより、第1入力端子を選択して、電圧指令値と交流出力電圧VACに基づいたフィードバック値とに関連する情報を出力する。これによって、電圧調整部25Aと電圧調整部25Bには、固定値に代わり、電圧指令値と交流出力電圧VACに基づいたフィードバック値とに関連する情報が入力される。例えば、電圧調整部25Aは、選択器24Aを介して供給される差分値ΔVdを入力データにした演算を再開する。電圧調整部25Bは、選択器24Bを介して供給される差分値ΔVqを入力データにした演算を再開する。
なお、時刻t2に至るまでの短絡電流制御モードの期間において、上記の通り電圧調整部25Aと電圧調整部25Bの積分が止められていた。時刻t2以降に電圧調整部25Aが演算を再開する段階の積分値は、通常制御モードから短絡電流制御モードに切り替わる段階で保持していた値になる。電圧調整部25Aは、先に保持していた値に、差分値ΔVdを加算してD軸の電流基準Idrの積分値を出力する。電圧調整部25Bについても同様に、先に保持していた値に差分値ΔVqを加算してQ軸の電流基準Iqrの積分値を出力する。したがって時刻t1以前と時刻t2以降で電圧調整部25A及び電圧調整部25Bの出力の急変はなく、連続的に変化する。
直交座標逆変換器26は、電圧調整部25Aから供給されるD軸の電流基準Idrと、電圧調整部25Bから供給されるQ軸の電流基準Idrと、基準角度信号生成部21から供給された基準角度信号θとに基づいたDQ逆変換により3相交流電流指令値Icomを導出して、導出した3相交流電流指令値Icomを選択部28に出力する。
時刻t2以降、選択部28は、Lレベルの短絡検出信号SSDに基づいて第1入力端子を選択し、3相交流電流指令値Icomを出力する。3相交流電流指令値Icomは、減算器31と、電流調整部32と、加算器33とを経てPWM制御部35に供給される。
PWM制御部35は、3相交流電流指令値Icomに基づいた駆動パルスを、PWM制御部35の出力端子からインバータ部12に供給することで、インバータ部12の交流出力電圧と周波数とがCVCF制御により所望の値になるように制御する。
上記の実施形態に示したように、短絡状態判定部29は、遮断器50が短絡電流を遮断できたことを識別すると、短絡検出信号SSDをLレベルに変えて、選択器24Aと24Bと選択部28の設定を通常制御モード時の設定に戻す。この際に、直交座標逆変換器26と電流指令値生成部27は、同じ基準角度信号θを用いて機能している。そのため、直交座標逆変換器26と電流指令値生成部27から出力される各信号の位相は、基準角度信号θの位相に夫々同期したものになる。これにより、短絡電流制御モードから通常制御モードに切り替える際に、制御位相の変化が生じないので、制御モード移行時の過度現象を抑制することができ、インバータ部12の出力電流を、その位相の連続性を保つように制御することができる。
また、短絡電流制御モードにより制御されている間は、電圧調整部25Aと25Bには、負荷短絡時には電圧指令値やフィードバック値による情報が入力されない。そのため、電圧調整部25Aと25BのPI制御の積分値をホールドしておくことが可能になり、負荷短絡が解消した際に、その積分値を0から再び積分し直す必要がない。積分値の応答性が低く、積分誤差に対して比較的緩やかに追従する場合には、0から積分を初めて所望の値に復帰するまでの時間が必要になるが、実施形態のCVCF電源装置1は、上記の積分値を所望の値に復帰させるまでの時間を低減させることができ、制御モードの切替時における交流出力電流の位相の連続性を高めることができる。
平常時に通常制御モードのCVCF制御により制御されている期間であれば、インバータ部12は、一定の交流電圧、一定の周波数を出力する。これを満足するように、制御部20は、交流出力の電流値を調整する。
これに対し、上記のCVCF制御により電圧が制御されている期間に負荷短絡が生じた場合には、制御部20は、CVCF制御による制御を中断し、短絡電流指令Iscomに基づいてインバータ部12の3相交流の各相の出力電流を所望の値になるように調整する。上記の場合、制御部20は、インバータ部12の出力電圧の検出値によらずに、インバータ部12から出力される各相の電流値を、所定の大きさの短絡電流が流れるように調整する。
次に、図8を参照して、短絡発生個所が遮断器50の上流側にあり、遮断器50が短絡電流を遮断することができない場合について説明する。図8は、実施形態のCVCF電源装置1の動作を説明するための図である。この図8に示すタイミングチャートには、図8(a)にCVCF電源装置1の出力電流の変化が示され、図8(b)に短絡検出信号SSDが示され、図8(c)にゲートブロック指令GBCOMが示され、図8(d)にCVCF電源装置1の動作モードが示されている。図8に示す時刻t1までは、前述の図7と同じである。
図8に示す事例では、時刻t1以降に遮断器50が短絡電流を遮断しないため時刻t3に至る。
時刻t1から時間TSC(第2所定時間)経過して時刻t3に至るまで、CVCF電源装置1は短絡電流制御モードによる制御を継続する。例えば、時間TSCは、第2電流指令で規定された電流が遮断器50に流れた場合に遮断器50が自動的に過電流により引きはずし動作を行うのに必要な動作時間(TMIe(図2))より長く、かつ、第2電流指令で規定された電流がインバータ部12から出力された場合にインバータ部12が許容できる時間(TiIe(図2))より短く規定される。上記のように時間TSCを規定することにより、遮断器50が応答するために必要な時間継続して、第2電流指令で規定される所望の電流を流すことができ、インバータ部12を損傷する前にインバータ部12の通電を制限することができる。
例えば、前述の図7に示したように時間TSCが満了するまでに遮断器50が短絡電流を遮断していれば、時間TSCが満了した時点で、少なくとも閾値ITH1を超える相電流が流れないはずである。これに対し、この図8に示す事例の場合、時間TSCが満了するまでに遮断器50が短絡電流を遮断していないため、下記のように各部が作用する。
時刻t3に至るまで短絡電流制御モードを継続していた場合には、CVCF電源装置1は、短絡電流制御モードにより遮断器50を遮断させる制御が正常に終了しなかったことを識別する。
例えば、短絡状態判定部29は、電流センサ14によって検出された相電流に基づいて、電流センサ14によって検出された相電流の絶対値が閾値ITH2を超えた状態が所定の期間(第2所定時間)以上断続的に発生していることを判別する。この場合、短絡状態判定部29は、インバータ部12の負荷側に発生した負荷短絡が解消していないと判定して、ゲートブロック指令GBCOMをPWM制御部35に供給する。PWM制御部35は、短絡状態判定部29からゲートブロック指令GBCOMが供給されると、インバータ部12をゲートブロックする。PWM制御部35からインバータ部12に対する駆動パルスの供給が停止する。換言すれば、短絡状態判定部29は、判定により第2所定時間以上継続する短絡状態を判別した場合には、PWM制御部35によりインバータ部12をゲートブロックする。これにより、インバータ部12からの負荷電流が全て遮断され、負荷短絡も併せて遮断できる。
つまり、短絡状態判定部29は、時間TSCが満了した段階(図8の時刻t3)で、少なくとも閾値ITH2を超える出力電流が流れる場合には、CVCF電源装置1の運転を停止させる。これにより、CVCF電源装置1は、インバータ部12から遮断器50までの間の負荷短絡が生じたこと、負荷短絡に関連する遮断器50の故障などの要因が存在することなどの状況が、CVCF電源装置1が電力を供給する範囲に内在していると判定する。上記のような場合、CVCF電源装置1は、給電を中断する。なお、上記のような場合、短絡電流制御モードのリトライ処理の実施を控える。
実施形態のCVCF電源装置1の制御部20は、インバータ部12の負荷側に負荷短絡が生じていない場合には、インバータ部12の出力電圧が規定される電圧指令値とインバータ部12の出力電圧が規定される交流出力電圧の電圧帰還値との差分に基づいた制御によりインバータ部12を制御する。制御部20は、インバータ部12に負荷短絡が生じた場合には、インバータ部の負荷側に設けられた遮断器50に過電流時の応答を生じさせるほどの電流をインバータ部12から流れるように指令する短絡電流指令値Iscomに基づいてインバータ部12を制御する。これにより、通常の負荷変動に対する出力応答性能を確保したうえで、負荷側回路の短絡が発生しても運転を継続することができる。なお、遮断器50の回路を開かせるほどの大きさの電流値をとる電流とは、例えば、遮断器50の瞬時引はずし範囲の電流値を超える交流電流のことである。
なお、上記の実施形態において、直交座標逆変換器26は、3相交流電流指令値Icomを基準角度信号θに基づいて生成する。電流指令値生成部27は、短絡電流指令Iscomを基準角度信号θに基づいて生成する。基準電圧発生部34は、基準角度信号θに基づいて基準電圧を生成する。これにより、3相交流電流指令値Icom、短絡電流指令Iscom及び基準電圧発生部34が生成する基準電圧は、基準角度信号θの位相に同期する。例えば、制御モード切り替え時における交流出力電流の位相の連続性を高めることができる。例えば、通常制御モード時と短絡電流制御モード時で同じ基準角度信号θを用いることで、何れかの制御モードを選択して相互に切り替える際に、CVCF電源装置1の出力電流の位相の出力電圧に対して生じる位相のずれが少なくなる。これにより、短絡状態が解消して、通常制御モードに復帰させた後の過度応答を安定化することを期待できる。
また、短絡電流指令Iscomは、正弦波の形状に基づいた波形の電流を流すように規定されていてもよい。短絡電流指令Iscomによって、正弦波の形状に基づいた電流波形を短絡電流として流させることにより、負荷が誘導性負荷である場合対おいても、所定の電圧で電流を流すことができる。
また、電流指令値生成部27は、電流の大きさが規定されるデータを格納する波形データ記憶部から読み出された波形データに基づく短絡電流指令Iscomを生成する。選択部28は、3相交流電流指令値Icomと短絡電流指令Iscomとのうちの何れかを、短絡の検出結果により選択してもよい。これによれば、短絡の検出結果により、インバータ部12を、3相交流電流指令値Icomと短絡電流指令Iscomとのうちの何れかに基づいて制御することができる。
また、PWM制御部35は、インバータ部12に供給する駆動パルスを、3相交流電流指令値Icomと短絡電流指令Iscomのうちの何れかに基づいて生成してもよい。これによれば、PWM制御部35は、3相交流電流指令値Icomと短絡電流指令Iscomのうちの何れかに基づいた駆動パルスを、PWM制御部35からインバータ部12に供給することで、負荷短絡が生じた場合に速やかに短絡電流指令Iscomによる短絡電流をインバータ部12から流すことを可能にする。
また、制御部20は、所定の時間TSCに亘って短絡電流制御モードにより制御した後は、元の通常制御モードの動作に戻してもよい。これによれば、制御部20は、短絡が解消してから通常制御モードに移行させるまで速やかに移行させることができる。
また、遮断器50が回路を開く前の基準角度信号θの位相と遮断器50が回路を開いた後の基準角度信号θの位相の連続性が保たれていることにより、短絡電流指令Iscomによる所定時間制御中と、短絡電流指令Iscomにより所定時間制御した後のインバータ部12からの交流出力電流の位相に位相ずれが生じない。これにより、制御部20は、短絡電流制御モードの制御と、通常制御モードの制御とを切り替える際に、インバータ部12からの交流電流の位相を連続させることができる。
なお、制御部20は、3相交流電流指令値Icomに基づいた制御期間中であって、前記第1電流指令に基づいた制御期間から短絡電流指令Iscomによる所定時間制御に入る前に、前記CVCF制御による3相交流電流指令値Icomを保持しておき、保持されていた3相交流電流指令値Icomを、短絡電流指令Iscomによる所定時間制御を終了したときにCVCF制御に利用してよい。これにより、制御部20は、所定時間制御後に、制御モードを切り替える際に、保持していた3相交流電流指令値IcomをCVCF制御の初期値として利用することができるため、制御モード切替時の制御状態の急な状態遷移を制限することができる。
なお、制御部20は、比例積分演算により電圧制御を実施する場合、電圧調整部25Aと電圧調整部25Bへの信号を、短絡電流指令Iscomによる所定時間制御している間は0にしてよい。これにより、電圧調整部25Aと電圧調整部25Bの積分値を所定時間制御中保持することができる、所定時間制御後に、その積分値を利用することが可能になる。
なお、制御部20は、比例積分演算により電圧制御を実施する場合、電圧調整部25Aと電圧調整部25Bにおける積分値を、電圧調整部25Aと電圧調整部25Bに保持させることにより、3相交流電流指令値Icomを保持してよい。
上記の実施形態のCVCF電源装置1は、演算済の波形データを波形データ記憶部274にテーブルとして格納していることにより、短絡電流指令Iscomの生成時の演算処理の負荷を都度演算する場合に比べて低減させることができる。
なお、制御部20は、負荷短絡が生じたことにより短絡電流指令Iscomに基づいてインバータ部12を制御する期間が予め定められた上限時間を超えた場合に、インバータ部12に対する制御をゲートブロックしてもよい。これにより、制御部20は、予め定められた上限時間を超えて短絡電流指令Iscomによる短絡電流が流れ続けている場合を検出して、上記の場合には、ゲートブロックによりインバータ部12を停止させることができる。
少なくとも上記の実施形態によれば、CVCF電源装置1は、インバータ部12と、基準電圧発生部34と、電流調整部32と、PWM制御部35と、短絡状態判定部29と、直交座標逆変換器26と、電流指令値生成部27と、選択部28とを備える。インバータ部12は、ゲートパルスに基づいて直流電力を交流電力に変換する。基準電圧発生部34は、インバータ部12の出力電圧の基準になる基準電圧を発生する。電流調整部32は、インバータ部12の出力電流を電流指令値に追従させるようにインバータ部12を制御するための補正量を出力する。PWM制御部35は、基準電圧と補正量とに基づきゲートパルスを生成する。短絡状態判定部29は、インバータ部12の出力電流の値に基づいてインバータ部12の負荷側に生じた負荷短絡の有無を判定する。直交座標逆変換器26は、予め規定された電圧にインバータ部12の出力電圧が追従するようにインバータ部12の出力電流を調整するための3相交流電流指令値Icomを生成する。電流指令値生成部27は、インバータ部12に接続された遮断器50が引きはずし動作を行うような電流がインバータ部12から流れるように規定された短絡電流指令Iscomを生成する。選択部28は、短絡状態判定部29が負荷短絡なしと判定した場合には3相交流電流指令値Icomを選択する。選択部28は、短絡状態判定部29が負荷短絡ありと判定した場合には短絡電流指令Iscomを選択する。選択部28は、選択した3相交流電流指令値Icomと短絡電流指令Iscomの何れかを前記電流指令値として出力する。これにより、遮断器50の負荷側回路に短絡が発生しても運転を継続することができる。
上記のCVCF電源装置1の制御部20は、その少なくとも一部を、CPUなどのプロセッサがプログラムを実行することにより機能するソフトウェア機能部で実現してもよく、全てをLSI等のハードウェア機能部で実現してもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
例えば、上記の「正弦波」は、「余弦波」に代えることができる。
なお、上記の実施形態では、1相の負荷短絡(地絡)と、2相の負荷短絡と、3相の負荷短絡の全てに適用可能な事例について説明したが、これに制限されることなく、上記の1相から3相の負荷短絡のうちから抽出した相数に適用するように機能を制限してもよい。例えば、短絡状態判定部29が1相の負荷短絡(地絡)を検出し、これに応じて、電流指令値生成部27が、交流出力の各相に所望の短絡電流を流すように短絡電流指令Iscomを発することで、1相の負荷短絡(地絡)に適用可能なものとしてCVCF電源装置1を形成することができる。
例えば、短絡状態判定部29は、負荷短絡が発生した相を判別する。電流指令値生成部27が、負荷短絡が発生したと判別した相に対して第2電流指令を出力する。第2電流指令は、上記の通りインバータ部12と負荷の間に接続された遮断器50が自動的に引きはずし動作を行う電流の値よりも大きい電流値を示すものである。これにより、短絡状態判定部29は、全相一律の電流値の電流を流すように指令することに代えて、相毎に電流値を制限することができる。
更に、短絡状態判定部29は、負荷短絡が発生したと判別した相の状態により、第2電流指令の位相を下記に合わせて調整してもよい。例えば、1相地絡の場合、地絡が生じた相の電流の位相を正常時の当該相の電圧の位相から(π/2)(ラジアン)回転したものになる。2相地絡(短絡)の場合、地絡が生じた2つの相の電流の位相が互いに反転した位相になる。この場合、地絡が生じていない相にはほとんど電流が流れないが、地絡が生じていない相の位相は、地絡が生じた2つの相の電流の位相に対して(π/2)(ラジアン)回転したものになる。全相地絡の場合、各相の電流の位相差は、互いに(2π/3)(ラジアン)回転したものになり、負荷短絡が発生する前の位相差と変わらない。
上記の通り、負荷短絡が発生したと判別した相の状態により、短絡電流の位相が変化する。短絡状態判定部29は、負荷短絡が発生したと判別した相の状態に基づいて、短絡電流指令Iscomにおける各相の電流指令値の位相を調整するとよい。例えば、電流指令値生成部27は、短絡電流指令Iscomによって、インバータ部12の出力電流を基準角度信号θよりも遅れ位相(誘導性位相)にするとよい。これにより、実際に発生する短絡電流の位相に、電流指令値による電流の位相を調整することができ、調整された位相で、所望の電流値の短絡電流を流すことができる。
上記の説明の交流を3相であることを前提に説明したが、これに制限されない。交流は単相であってよい。