JP5573590B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電動パワーステアリング装置に関する。
従来、電動パワーステアリング装置(EPS)には、モータを駆動源としてステアリングシャフトを回転駆動することにより、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与するものがある。こうしたEPSとして、モータにより回転されるウォーム軸及びステアリングシャフトに連結されるウォームホイールを噛合してなる減速機構を備えたものが知られている。
ところで、上記のような減速機構を用いたEPSの場合、そのバックラッシュに起因して、操舵方向の切り替え時や逆入力の印加時等において、歯打ち音が発生することがある。そこで、こうしたEPSには、多くの場合、ウォーム軸の一端をモータの出力軸に対して傾動可能に連結するとともに、付勢手段を用いてウォーム軸の他端をウォームホイール側に押し付けることにより、これらの軸間距離を調整してバックラッシュを除去する所謂アンチ・バックラッシュ・システムが組み込まれている(例えば、特許文献1参照)。
このようなウォーム軸をモータの出力軸に対して傾動可能に連結する軸継手として、上記特許文献1には、一対の継体(ヨーク)と、これらの間に介在された弾性体とにより構成されるものが開示されている(特許文献1、第3図参照)。また、特許文献2には、互いに平行な一対のタブを有する一対のヨークと、各タブに形成された軸孔に回動可能に挿通される軸部が十字状に延出された中間部材とにより構成される軸継手が開示されている(特許文献2、第5図参照)。
この特許文献2のEPSに用いられる軸継手では、一方のヨークが他方のヨークに対して軸部を中心として回動することにより、ウォーム軸がモータ軸に対して傾動する。そのため、特許文献1のEPSに用いられる軸継手のように弾性体が圧縮されることによりウォーム軸が傾動する場合と異なり、ウォーム軸が傾動しても反発力が発生せず、安定してウォーム軸を傾動させることができるといった利点がある。
特開2004−203154号公報 特開2006−118539号公報
ところで、上記のように減速機構を備えたEPSでは、ステアリング操作によりステアリングシャフトを回転させる際に、同ステアリングシャフトに連結されたウォームホイールによってウォーム軸を回転させる必要がある。また、ウォーム軸及びウォームホイールは、回転する際にこれらの各歯部同士が互いに摺動する。従って、操舵開始時においては、ウォーム軸及びウォームホイールの各歯部の間に作用する摩擦力(静止摩擦力)を超える操舵力が必要となる。
ここで、上記のようなアンチ・バックラッシュ・システムが組み込まれたEPSでは、ウォーム軸がウォームホイールに押し付けられることで、これらの各歯部間に作用する摩擦力が大きくなるため、これが引っ掛かり感となって操舵フィーリングの低下を招く虞がある。その結果、操舵量の小さい微妙な操舵がしづらくなり、車両の進行方向を僅かに変更する場合において、所望の進行方向となるまでに繰り返しステアリングを切り返さなければならなくなることがあり、運転者の負担が大きくなるという問題があった。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、操舵開始時に生じる引っ掛かり感を低減して良好な操舵フィーリングを実現することのできる電動パワーステアリング装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、ウォーム軸及びウォームホイールを噛合してなる減速機構と、前記減速機構を介してステアリングシャフトに駆動連結されるモータと、前記モータの出力軸に対して前記ウォーム軸の一端部を傾動可能に連結する軸継手と、前記ウォーム軸の他端部を前記ウォームホイール側に付勢する付勢手段とを備えた電動パワーステアリング装置において、前記軸継手は、前記ウォーム軸に連結される第1ヨークと、前記出力軸に連結される第2ヨークと、前記第1ヨークと前記第2ヨークとをトルク伝達可能に連結する伝達部材とを備え、前記第1ヨーク及び前記第2ヨークは、軸孔が形成された一対のタブをそれぞれ有するとともに、前記伝達部材は、前記各軸孔にそれぞれ回動可能に挿入される軸部を有するものであって、前記ウォーム軸の他端部は、前記減速機構を収容するハウジングに対して軸方向移動可能に設けられ、前記第1ヨークの軸孔及び前記第2ヨークの軸孔の少なくとも一方は、前記軸部が前記ウォーム軸の軸方向に相対移動可能に形成され、前記第1ヨークの前記軸孔と前記軸部との間で、前記軸方向に介在される第1軸方向弾性体と、前記第2ヨークの前記軸孔と前記軸部との間で、前記軸方向に介在される第2軸方向弾性体とを備えたことを要旨とする。
上記構成では、伝達部材の軸部が第1ヨークの軸孔及び第2ヨークの軸孔の少なくとも一方をウォーム軸の軸方向に移動可能であるため、第1ヨークは、第2ヨークに対して同ウォーム軸の軸方向に相対移動できるようになる。そして、ウォーム軸の他端部はハウジングに対して軸方向に移動可能に設けられるため、ウォーム軸は、第1ヨークが第2ヨークに対して同ウォーム軸の軸方向に相対移動することにより、第1ヨークと一体で軸方向に移動できるようになる。これにより、操舵開始時において、ウォームホイールの歯部とウォーム軸の歯部とが摺動することなく、ウォーム軸が第1ヨークと一体で軸方向に移動することでウォームホイールが回転できるようになるため、引っ掛かり感を低減して良好な操舵フィーリングを実現することができる。また、上記構成では、第1ヨークが第2ヨークに対して軸方向に相対移動するため、例えばウォーム軸及び第1ヨークにセレーションを形成してこれらを軸方向に相対移動可能に連結する場合に比べ、ウォーム軸の移動時の摺動抵抗を低減して円滑にウォーム軸を軸方向に移動させることが可能になる。
上記構成によれば、第1ヨークが第2ヨークに対して軸方向に相対移動する際に、軸部が軸孔の内面に衝突することを防ぎ、異音の発生を抑制できる。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の電動パワーステアリング装置において、前記第1ヨークの前記軸孔と前記軸部との間で、該第1ヨークの回転方向に介在される第1回転方向弾性体と、前記第2ヨークの前記軸孔と前記軸部との間で、該第2ヨークの回転方向に介在される第2回転方向弾性体とを備えたことを要旨とする。
上記構成によれば、伝達部材は、第1回転方向弾性体及び第2回転方向弾性体を弾性変形させることにより、ウォーム軸と直交する方向に移動可能となるため、ウォーム軸の軸心と出力軸の軸心とが偏心した状態でこれら各軸を連結することができるようになる。すなわち、ウォーム軸と出力軸との軸心のずれを許容できる。これにより、ウォーム軸と出力軸との軸心のずれに起因して同出力軸を支持する軸受等に過大な負荷が作用することを防ぎ、モータトルクの伝達ロスを低減することができる。
請求項に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の電動パワーステアリング装置において、前記ウォーム軸の一端部側は、前記第2ヨークの前記出力軸が固定される基部に設けられた転がり軸受により回転可能に支持されたことを要旨とする。
上記構成によれば、ウォーム軸の一端部側を支持する転がり軸受が、ウォーム軸の傾動中心(軸継手を構成する伝達部材の軸部)よりもモータ側に配置される。そのため、転がり軸受が傾動中心よりもウォーム軸側に設けられる場合、すなわち転がり軸受がウォーム軸の傾動により変位する部分を支持する場合に比べ、同転がり軸受の内部隙間を小さくしてもウォーム軸を傾動させることが可能になり、異音の発生を抑制することができる。
本発明によれば、操舵開始時に生じる引っ掛かり感を低減して良好な操舵フィーリングを実現することのできる電動パワーステアリング装置を提供することができる。
電動パワーステアリング装置(EPS)の概略構成図。 本実施形態のEPSアクチュエータの概略構成を示す断面図。 図2のA−A断面図。 (a)軸継手の分解斜視図、(b)軸継手の斜視図。 本実施形態の軸継手近傍を示す拡大断面図。 図5のB−B断面図。 別の軸継手近傍を示す拡大断面図。 別の軸継手近傍を示す拡大断面図。
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、電動パワーステアリング装置(EPS)1において、ステアリング2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック軸5と連結されている。これにより、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック軸5の往復直線運動に変換される。なお、ステアリングシャフト3は、コラムシャフト8、インターミディエイトシャフト9、及びピニオンシャフト10を連結してなる。そして、このステアリングシャフト3の回転に伴うラック軸5の往復直線運動が、同ラック軸5の両端に連結されたタイロッド11を介して図示しないナックルに伝達されることにより、転舵輪12の舵角、即ち車両の進行方向が変更される。
また、EPS1は、モータ21を駆動源として操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与するEPSアクチュエータ22を備えている。本実施形態のEPSアクチュエータ22は、所謂コラム型のEPSアクチュエータとして構成されており、モータ21は、減速機構24を介してコラムシャフト8と駆動連結されている。減速機構24は、コラムシャフト8に連結されたウォームホイール25と、モータ21に連結されたウォーム軸26とを噛合することにより構成されている。そして、モータ21の回転を減速機構24により減速してコラムシャフト8に伝達することによって、そのモータトルクをアシスト力として操舵系に付与する構成になっている。
次に、本実施形態におけるEPSアクチュエータの構成について説明する。
図2に示すように、EPSアクチュエータ22は、減速機構24を収容するハウジング31を備えている。このハウジング31は、ウォーム軸26が収容されるウォーム軸収容部32、及び同ウォーム軸収容部32に連続して形成されるとともにウォームホイール25が収容されるウォームホイール収容部33を有している。ウォーム軸収容部32は、ウォーム軸26の軸方向(図2における左右方向)に延びる円柱状の空間であり、その一端側(図2における右側)は、モータ21が固定されるモータ固定孔34に連通している。また、ウォーム軸収容部32の他端側(図2における左側)は外部に開口しており、この開口端は、エンドカバー35により閉塞されている。
モータ21は、ハウジング31に貫設されたステアリングシャフト3(コラムシャフト8)の軸線方向に対して、その出力軸36の軸線方向が直交するように同ハウジング31に固定されている。そして、その出力軸36に連結されたウォーム軸26は、その両端がハウジング31内に設けられた第1及び第2の転がり軸受37,38により回転可能に支持されるとともに、ステアリングシャフト3に連結されたウォームホイール25に噛合されている。なお、本実施形態では、これら第1及び第2の転がり軸受37,38には、ボール軸受が採用されている。
ここで、本実施形態のEPSアクチュエータ22には、その減速機構24を構成するウォームホイール25とウォーム軸26との間の軸間距離を調整してバックラッシュを除去するための所謂アンチ・バックラッシュ・システムが組み込まれている。
詳述すると、ウォーム軸26の一端部(図2における右側端部)26aは、軸継手41を介してモータ21の出力軸36に対して傾動可能に連結されている。一方、ウォーム軸26の他端部(図2における左側端部)26bは、第2の転がり軸受38により回転可能に支持されている。第2の転がり軸受38は、ウォームホイール25に対して接離する方向(図2における上下方向)に移動可能に設けられており、その外周を囲繞するように湾曲した付勢手段としての湾曲板ばね42により、ウォームホイール25側に付勢されている。なお、他端部26bは、第2の転がり軸受38の内輪に圧入されている。
具体的には、ウォーム軸収容部32の他端側には、第2の転がり軸受38及び湾曲板ばね42を収容支持するための支持部43が形成されている。支持部43の内径は第2の転がり軸受38の外径よりも大きく形成されている。これにより、第2の転がり軸受38は、支持部43内で、ウォームホイール25に対して接離する方向に移動可能に設けられている。また、第2の転がり軸受38は、エンドカバー35との間にウォーム軸26の軸方向に間隔を空けて設けられており、ウォーム軸26の他端部26bは、第2の転がり軸受38と一体で軸方向に移動可能に設けられている。なお、支持部43内には、弾性材料からなる円弧状の弾性リング44が設けられており、湾曲板ばね42と支持部43との間、及びエンドカバー35と第2の転がり軸受38との間で異音が発生することが防止されるようになっている。
図3に示すように、湾曲板ばね42は、第2の転がり軸受38の外輪38aに当接する円弧状の円弧部45と、この円弧部45よりも径方向外側に配置されるばね部46と、これら各ばね部46及び円弧部45の両端をそれぞれ接続する接続部47とからなる。支持部43の周壁には、そのウォームホイール25と反対側(図3における上側)に、湾曲板ばね42のばね部46を収容する収容凹部48が形成されている。そして、ばね部46が当該収容凹部48の底面48aに当接して当該底面48aを押圧することにより、第2の転がり軸受38は、ウォームホイール25側(図3における下側)に向って付勢されている。これにより、図2に示すように、ウォーム軸26がその基端側を中心として傾動し、ウォーム軸26とウォームホイール25との軸間距離が調整され、バックラッシュが除去されるようになっている。
(ウォーム軸と出力軸との連結構造)
次に、本実施形態のEPSにおけるウォーム軸とモータの出力軸との連結構造について説明する。
図4(a),(b)に示すように、軸継手41は、ウォーム軸26に連結される第1ヨーク51と、出力軸36に連結される第2ヨーク52と、第1ヨーク51と第2ヨーク52とをトルク伝達可能に連結する伝達部材としての十字軸53とを備えている。
第1ヨーク51は、円柱状に形成された基部54及び同基部54からその軸方向に延びる一対のタブ55を有し、略U字状に形成されている。各タブ55は、互いに対向する略平板状に形成されるとともに、各タブ55の対向する位置には、その厚み方向に貫通した軸孔56がそれぞれ形成されている。
第2ヨーク52は、第1ヨーク51と略同形状に形成されており、円柱状に形成された基部57及び同基部57からその軸方向に延びる一対のタブ58を有し、略U字状に形成されている。各タブ58は、互いに対向する略平板状に形成されるとともに、各タブ58の対向する位置には、その厚み方向に貫通した軸孔59がそれぞれ形成されている。
十字軸53は、第1ヨーク51の各軸孔56にそれぞれ回動可能に挿入される一対の軸部61、及び各軸部61と直交する方向に突出するとともに第2ヨーク52の各軸孔59にそれぞれ回動可能に挿入される一対の軸部62を有している。そして、図4(b)に示すように、軸継手41は、第1ヨーク51のタブ55と第2ヨーク52のタブ58とが交互に配置されるとともに、十字軸53の十字状に突出する各軸部61,62が対応する各軸孔56,59に回動可能に挿入されるように組み付けられている。
図5及び図6に示すように、第1ヨーク51の基部54には、各タブ55と反対側に開口する丸穴状の嵌合穴54aが形成されている。そして、第1ヨーク51は、ウォーム軸26の一端部26aが嵌合穴54aに圧入されることにより、同ウォーム軸26と一体で軸方向移動可能且つ回転可能に連結されている。一方、第2ヨーク52の基部57には、各タブ58と反対側に開口する丸穴状の嵌合穴57aが形成されている。そして、第2ヨーク52は、出力軸36の他端部36aが嵌合穴57aに圧入されることにより、同出力軸36と一体で軸方向移動可能且つ回転可能に連結されている。これにより、モータトルクは出力軸36及び第2ヨーク52から十字軸53の各軸部61,62を介して第1ヨーク51及びウォーム軸26に伝達されるようになっている。また、ウォーム軸26は、第1ヨーク51が第2ヨーク52に対して各軸部61,62を中心として回動することにより、モータ21の出力軸36に対して傾動するように構成されている。
ここで、本実施形態では、第1ヨーク51の軸孔56及び第2ヨーク52の軸孔59は、挿入された各軸部61,62がウォーム軸26の軸方向に相対移動可能に構成されている。
詳述すると、第1ヨーク51の軸孔56は、各タブ55の中央付近からウォーム軸26の軸方向(図5及び図6における左右方向)に延びるとともにタブ55の先端側(図5における右側)に開口した長穴状に形成されている。一方、第2ヨーク52の軸孔59は、各タブ58の中央付近から出力軸36の軸方向(図5及び図6における左右方向)に延びるとともにタブ58の先端側(図6における左側)に開口した長穴状に形成されている。そして、第1ヨーク51の各軸孔56の内面には、その全面に当接する略U字状の第1弾性体63が設けられるとともに、第2ヨーク52の各軸孔59の内面には、第2弾性体64がそれぞれ設けられている。
図5に示すように、第1弾性体63は、軸孔56の長手方向(ウォーム軸26の軸方向)の端面に当接する端壁部63aと、軸孔56の長手方向に沿った側面に当接する一対の側壁部63bとからなる。端壁部63aは、各軸孔56と軸部61との間でウォーム軸26の軸方向に介在されるとともに、側壁部63bは各軸孔56と軸部61との間で第1ヨーク51の回転方向に介在されている。すなわち、本実施形態では、端壁部63aが第1軸方向弾性体に相当するとともに、側壁部63bが第1回転方向弾性体に相当する。
図6に示すように、第2弾性体64は、軸孔59の長手方向(出力軸36の軸方向)の端面に当接する端壁部64aと、軸孔59の長手方向に沿った側面に当接する一対の側壁部64bとからなる。端壁部64aは、各軸孔59と軸部62との間でウォーム軸26の軸方向に介在されるとともに、側壁部64bは各軸孔59と軸部62との間で第2ヨーク52の回転方向に介在されている。すなわち、本実施形態では、端壁部64aが第2軸方向弾性体に相当するとともに、側壁部64bが第2回転方向弾性体に相当する。なお、各側壁部63b間には、軸部61の直径と略等しい幅の隙間が形成されるとともに、各側壁部64b間には、軸部62の直径と略等しい幅の隙間が形成されている。
図5及び図6に示すように、第2ヨーク52の基部57は、第1の転がり軸受37によりウォーム軸収容部32内で回転可能に支持されており、ウォーム軸26の一端部26a側は、同第1の転がり軸受37により回転可能に支持されている。なお、第1の転がり軸受37は、ウォーム軸収容部32の一端側に形成された同ウォーム軸収容部32よりも大径の固定部65に設けられている。そして、第1の転がり軸受37は、その外輪がウォーム軸収容部32の一端に固定された固定部材66により、ハウジング31に対して軸方向への移動が規制された状態で設けられている。
このように構成された軸継手41では、第1ヨーク51がウォーム軸26の軸方向に沿って第2ヨーク52に近接する方向に相対移動する場合には、第1及び第2弾性体63,64の端壁部63a,64aが圧縮されることで、十字軸53の各軸部61,62が対応する各軸孔56,59内で軸方向に相対移動する。一方、第1ヨーク51がウォーム軸26の軸方向に沿って第2ヨーク52から離間する方向に相対移動する場合には、第1及び第2弾性体63,64の変形を伴わずに、十字軸53の各軸部61,62が対応する各軸孔56,59内で軸方向に相対移動する。そして、ウォーム軸26は、第1ヨーク51が第2ヨーク52に対して同ウォーム軸26の軸方向に相対移動することにより、ウォーム軸26は、第1ヨーク51と一体で軸方向に移動するように構成されている。
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)モータ21の出力軸36に対してウォーム軸26の一端部26aを傾動可能に連結する軸継手41は、ウォーム軸26に固定される第1ヨーク51と、出力軸36に固定される第2ヨーク52と、第1ヨーク51と第2ヨーク52とをトルク伝達可能に連結する十字軸53とを備えた。第1ヨーク51及び第2ヨーク52は、十字軸53の各軸部61,62が回動可能に挿入される軸孔56,59が形成された一対のタブ55,58をそれぞれ有する。そして、ウォーム軸26の他端部26bを、ハウジング31に対して軸方向移動可能に設け、第1ヨーク51の軸孔56及び第2ヨーク52の軸孔59を、軸部61,62がウォーム軸26の軸方向に相対移動可能に形成した。
上記構成では、ウォーム軸26の他端部26bはハウジング31に対して軸方向に移動可能に設けられるため、ウォーム軸26は、第1ヨーク51が第2ヨーク52に対して同ウォーム軸26の軸方向に相対移動することにより、第1ヨーク51と一体で軸方向に移動できるようになる。これにより、操舵開始時において、ウォームホイール25の歯部とウォーム軸26の歯部とが摺動することなく、ウォーム軸26が第1ヨーク51と一体で軸方向に移動することでウォームホイール25が回転できるようになるため、引っ掛かり感を低減して良好な操舵フィーリングを実現することができる。また、上記構成では、第1ヨーク51が第2ヨーク52に対して軸方向に相対移動するため、例えばウォーム軸26及び第1ヨーク51にセレーションを形成してこれらを軸方向に相対移動可能に連結する場合に比べ、ウォーム軸26の移動時の摺動抵抗を低減して円滑にウォーム軸26を軸方向に移動させることが可能になる。
(2)第1ヨーク51の各軸孔56と軸部61との間で、ウォーム軸26の軸方向に介在される端壁部63aを有する第1弾性体63と、第2ヨーク52の各軸孔59と軸部62との間で、ウォーム軸26の軸方向に介在される端壁部64aを有する第2弾性体64とを備えた。
上記構成によれば、第1ヨーク51が第2ヨーク52に対してウォーム軸26の軸方向に沿って近接する方向に相対移動する際に、各軸部61,62が各軸孔56,59の内面に衝突することを防ぎ、異音の発生を抑制できる。また、モータトルクを伝達する際に、各軸部61,62と各軸孔56,59との間で異音が発生することを抑制できる。
(3)第1ヨーク51の各軸孔56と軸部61との間で、同第1ヨーク51の回転方向に介在される側壁部63bを有する第1弾性体63と、第2ヨーク52の各軸孔59と軸部62との間で、同第2ヨーク52の回転方向に介在される側壁部64bを有する第2弾性体64とを備えた。
上記構成によれば、十字軸53は、各側壁部63b,64bが弾性変形することにより、ウォーム軸26と直交する方向に移動可能となるため、ウォーム軸26の軸心と出力軸36の軸心とが偏心した状態でこれら各軸を連結することができるようになる。すなわち、ウォーム軸26と出力軸36との軸心のずれを許容できる。これにより、ウォーム軸26と出力軸36との軸心のずれに起因して同出力軸36を支持する軸受等に過大な負荷が作用することを防ぎ、モータトルクの伝達ロスを低減することができる。また、モータトルクを伝達する際に、各軸部61,62と各軸孔56,59との間で異音が発生することを抑制できる。
(4)ウォーム軸26の一端部26a側を、第2ヨーク52の基部57に設けられた第1の転がり軸受37により回転可能に支持するとともに、他端部26b側を、同他端部26bに設けられた第2の転がり軸受38により回転可能に支持した。
上記構成によれば、ウォーム軸26の一端部側を支持する第1の転がり軸受37が、ウォーム軸26の傾動中心Oよりもモータ21側に配置される。そのため、第1の転がり軸受37が傾動中心Oよりもウォーム軸26側に設けられる場合、すなわち第1の転がり軸受37がウォーム軸26の傾動により変位する部分を支持する場合に比べ、同第1の転がり軸受37の内部隙間を小さくしてもウォーム軸26を傾動させることが可能になり、異音の発生を抑制することができる。
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・上記実施形態では、第1ヨーク51の各軸孔56に、端壁部63aと側壁部63bとを有する第1弾性体63を設けた。しかし、これに限らず、各軸孔56に、端壁部のみを有する弾性体を設け、十字軸53の軸部61が軸孔56の長手方向に沿った側面に摺接するようにしてもよい。また、各軸孔59に、側壁部のみを有する弾性体を設け、十字軸53の軸部61が軸孔56の端面に摺接するようにしてもよい。さらに、各軸孔56に第1弾性体63を設けなくともよい。同様に、第2ヨーク52の各軸孔59に、端壁部のみを有する弾性体、又は側壁部のみを有する弾性体を設けてもよく、さらに第2弾性体64を設けなくともよい。
・上記実施形態では、第1の転がり軸受37が第2ヨーク52の基部57を支持するようにしたが、これに限らず、第1ヨーク51の基部54やウォーム軸26の一端部26aを支持するようにしてもよい。
・上記実施形態では、第2の転がり軸受38の外周を囲繞するような円弧状に湾曲した湾曲板ばね42により付勢手段を構成したが、これに限らず、第2の転がり軸受38をウォームホイール25に近接するように付勢できれば、例えばコイルスプリング等の他の部材により付勢手段を構成してもよい。
・上記実施形態では、互いに直交する2本の軸線を有する十字軸53により、第1ヨーク51と第2ヨーク52とをトルク伝達可能に連結する伝達部材を構成した。しかし、これに限らず、例えば第1ヨーク51及び第2ヨーク52の各タブ55,58の内側面とそれぞれ滑り対偶する動力伝達面を有する直方体状の本体部及び同本体部から十字状に突出する4つの軸部(凸部)を有する中間部材(特許文献2参照)により、伝達部材を構成するようにしてもよい。
・上記実施形態では、ウォーム軸26の他端部26bと第2の転がり軸受38とが一体でハウジング31に対して軸方向に移動可能に構成した。しかし、これに限らず、例えば他端部26bを第2の転がり軸受38の内輪に対して隙間嵌めするとともに、同内輪とウォーム軸26との間で軸方向に挟持される弾性体を設けることにより、他端部26bがハウジング31に対して軸方向に移動可能となるようにしてもよい。
・上記実施形態では、第1ヨーク51及び第2ヨーク52の各軸孔56,59を、十字軸53の各軸部61,62がウォーム軸26の軸方向に相対移動可能となるように形成したが、これに限らず、各軸孔56,59のいずれか一方のみを、対応する軸部61,62がウォーム軸26の軸方向に相対移動可能となるように形成してもよい。具体的には、例えば図7に示すように、第1ヨーク51の軸孔56をウォーム軸26の軸方向に延びる長穴状に形成するとともに、第2ヨーク52の軸孔59を十字軸53の各軸部62と同一の内径を有する丸孔状に形成してもよい。
・上記実施形態において、図8に示すように、第1ヨーク51及び第2ヨーク52の各軸孔56,59をそれぞれ十字軸53の各軸部61,62と同径の丸孔状に形成するとともに、ウォーム軸26の一端部26a側を第2ヨーク52の基部57に設けられた第1の転がり軸受37により回転可能に支持するようにしてよい。このように構成した場合には、各軸部61,62が各軸孔56,59内でウォーム軸26の軸方向に相対移動することが規制されるものの、ウォーム軸26の一端部26aが、第2ヨーク52の基部57に設けられた第1の転がり軸受37により支持されるため、上記実施形態の(4)と同様の作用・効果を得ることができる。
・上記実施形態では、本発明を所謂コラム型のEPS1に具体化したが、これに限らず、例えばピニオンシャフト10に対してアシスト力を付与する所謂ピニオン型のEPSに適用してもよい。
次に、上記各実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(イ)ウォーム軸及びウォームホイールを噛合してなる減速機構と、前記減速機構を介してステアリングシャフトに駆動連結されるモータと、前記モータの出力軸に対して前記ウォーム軸の一端部を傾動可能に連結する軸継手と、前記ウォーム軸の他端部を前記ウォームホイール側に付勢する付勢手段とを備えた電動パワーステアリング装置において、前記軸継手は、前記ウォーム軸に連結される第1ヨークと、前記出力軸に連結される第2ヨークと、前記第1ヨークと前記第2ヨークとをトルク伝達可能に連結する伝達部材とを備え、前記伝達部材は、十字状に突出する軸部を有するとともに、前記第1ヨーク及び前記第2ヨークは、前記軸部が回動可能に挿入される軸孔が形成された一対のタブをそれぞれ有するものであって、前記ウォーム軸の一端部側は、前記第2ヨークの前記出力軸が固定される基部に設けられた転がり軸受により回転可能に支持されたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。上記構成によれば、請求項4に記載の作用効果と同様の作用効果を奏することができる。
1…電動パワーステアリング装置(EPS)、3…ステアリングシャフト、21…モータ、24…減速機構、25…ウォームホイール、26…ウォーム軸、26a…一端部、26b…他端部、31…ハウジング、36…出力軸、37…第1の転がり軸受、41…軸継手、42…湾曲板ばね、51…第1ヨーク、52…第2ヨーク、53…十字軸、54,57…基部、55,58…タブ、56,59…軸孔、61,62…軸部。

Claims (3)

  1. ウォーム軸及びウォームホイールを噛合してなる減速機構と、前記減速機構を介してステアリングシャフトに駆動連結されるモータと、前記モータの出力軸に対して前記ウォーム軸の一端部を傾動可能に連結する軸継手と、前記ウォーム軸の他端部を前記ウォームホイール側に付勢する付勢手段とを備えた電動パワーステアリング装置において、
    前記軸継手は、前記ウォーム軸に連結される第1ヨークと、前記出力軸に連結される第2ヨークと、前記第1ヨークと前記第2ヨークとをトルク伝達可能に連結する伝達部材とを備え、前記伝達部材は、十字状に突出する軸部を有するとともに、前記第1ヨーク及び前記第2ヨークは、前記軸部が回動可能に挿入される軸孔が形成された一対のタブをそれぞれ有するものであって、
    前記ウォーム軸の他端部は、前記減速機構を収容するハウジングに対して軸方向移動可能に設けられ、
    前記第1ヨークの軸孔及び前記第2ヨークの軸孔の少なくとも一方は、前記軸部が前記ウォーム軸の軸方向に相対移動可能に形成され
    前記第1ヨークの前記軸孔と前記軸部との間で、前記軸方向に介在される第1軸方向弾性体と、
    前記第2ヨークの前記軸孔と前記軸部との間で、前記軸方向に介在される第2軸方向弾性体とを備えたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 請求項に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記第1ヨークの前記軸孔と前記軸部との間で、該第1ヨークの回転方向に介在される第1回転方向弾性体と、
    前記第2ヨークの前記軸孔と前記軸部との間で、該第2ヨークの回転方向に介在される第2回転方向弾性体とを備えたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記ウォーム軸の一端部側は、前記第2ヨークの前記出力軸が固定される基部に設けられた転がり軸受により回転可能に支持されたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
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