JP5570990B2 - 改変型ビオチン結合タンパク質 - Google Patents

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Description

本出願は、2008年8月13日に出願された日本国特許出願2008−208766に基づく優先権を主張する。
本発明は、改変型ビオチン結合タンパク質に関する。
アビジンは卵白由来タンパク質、ストレプトアビジンは放線菌(Streptomyces avidinii)由来のタンパク質である。アビジン又はストレプトアビジンは、ビオチン(D−[(+)−cis−ヘキサヒドロ−2−オキソ−1H−チエノ−(3,4)−イミダゾール−4−吉草酸]との親和性(アフィニティ)が非常に高く(KD=10−16−14)、生体二分子間の相互作用としては、最も強い相互作用の一つである。分子量は60kDa程度である。現在、アビジン/ストレプトアビジン−ビオチン相互作用は、生化学、分子生物学、あるいは医学の分野で広く応用されている(Green, (1975), Adv. Protein Chem., 29: 85−133;Green, (1990), Methods Enzymol., 184: 51−67)。アビジン/ストレプトアビジンは両タンパク質とも四量体を形成し、1つのサブユニット当たり1分子のビオチンと結合する。
アビジンの利用に関して、その非特異結合が問題となっている。アビジンは細胞の他、DNAやタンパク質、あるいは膜といった生体成分に非特異に結合する場合があり、例えばアビジン−ビオチン結合を用いて物質を検出しようとするとき、アビジンが検出対象物質以外にも非特異に結合し、バックグラウンドを高めてしまう場合がある。アビジンの非特異結合が高い理由として、等電点が高いこと、分子量の約10%の糖鎖を有していること、などが挙げられている。アビジンは、強塩基性のタンパク質であり、等電点が10以上と非常に高く、全体として正の電荷を帯びているため、負の電荷を帯びているものの多い生体成分と結合しやすいと考えられている。
また、アビジン表面の糖鎖は、生体成分と結合しやすいと考えられている(Marttila et al. (2000) FEBS Lett, 467, 31−36)。アビジンの非特異結合を低下させるために、グリコシダーゼによってアビジンの糖鎖を除去した化学修飾ニュートラアビジンの研究(Bayer et al. (1995) Appl Biochem Biotechnol, 53(1), 1−9)や、アビジンにおいてグリコシル化のターゲットとなっている17番目のアスパラギン残基をイソロイシン残基に置換することによって、糖鎖修飾を受けないアビジンを生合成する研究(Marttila et al. (2000) FEBS Lett, 467, 31−36)などが行われている。さらに、アビジンが有するリジン残基、アルギニン残基を中性アミノ酸や酸性アミノ酸に遺伝子工学的に変換することによって、アビジンの等電点を下げる研究も行われている(Marttila et al. (1998) FEBS Lett, 441, 313−317)。
しかし、このような改変によって、例えばアビジンに対するDNAや細胞の非特異結合は低下しているものの、臨床検査システムなどへの応用時に必要なヒト血清への非特異結合抑制に関しては十分に検討されていない。また、アビジン変異体を生合成する際は、昆虫細胞による発現系を使用する必要がある。そのため、培養に時間を要することと、コストが高いことから、配列改変アビジンの実用化には至っていないのが現状である。
アビジンやストレプトアビジンのようなビオチン結合性タンパク質とビオチンとのアフィニティ(親和性)に関する研究として、ストレプトアビジンの構造を大きく改変させて、蛍光ビオチンとの結合を強化したという報告がある(Aslan et al. (2005) Proc Natl Acad Sci U.S.A., 102,8507−8512)。しかし、このタンパク質は、同時にビオチンとの結合能を大幅に損なってしまっている。
本発明者らは、食用キノコタモギタケ(Pueurotus conucopiae)から、イネいもち病菌Magnaporthe griseaに対して抗菌性を示すタンパク質を精製した。当該タンパク質は、ビオチン結合性を示すことが見いだされ、タマビジン(タマビジン1)と命名された。タマビジン1タンパク質のアミノ酸配列、及び当該タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列はともにWO02/072817に開示されている(WO02/072817中の配列番号1及び2)。さらに、タマビジン1のホモローグ(タマビジン2)も同キノコから同定され、強いビオチン結合能を有することが示された。タマビジン2タンパク質のアミノ酸配列、及び当該タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列はともにWO02/072817に開示されており、(WO02/072817中の配列番号3及び4)、組換えタンパク質の生産にも成功している。タマビジン1及び2は、大腸菌で発現をさせることができ、特にタマビジン2は、イミノビオチンカラムを用いた精製により容易に調製でき、ストレプトアビジンと比べても高い耐熱性を有する、といった点で優れたビオチン結合性タンパク質である。しかしながら、核酸及び/又はタンパク質に対する非特異結合については、従来のアビジンよりも少ないもののストレプトアビジンと同程度には存在していた。
WO02/072817 A1
【特許文献2】
WO2008/081938 A1
【非特許文献1】
Marttila et al. (2000) FEBS Lett, 467, 31−36
【非特許文献2】
Bayer et al. (1995) Appl Biochem Biotechnol, 53(1), 1−9)
【非特許文献3】
Marttila et al. (1998) FEBS Lett, 441, 313−317
【非特許文献4】
Alon et al. (1990) Biochem Biophys Res Commun, 170, 1236−1241
【非特許文献5】
Aslan et al. (2005) Proc Natl Acad Sci U.S.A., 102,8507−8512
【非特許文献6】
Weber et al. (1989)Science 243: 85−88
【非特許文献7】
Livnah et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90: 5076−5080
【非特許文献8】
Qureshi et al.(2001) J. Biol. Chem. 276(49),p.46422−46428
本発明の課題は、高いビオチン結合能というタマビジンの特性を保持しつつ、非特異結合性の低下、及び/又は更なるビオチン結合の向上、といった性能を向上させた改変型ビオチン結合タンパク質の提供である。
本発明は天然のタマビジン2(以下、本明細書において「TM2」と記載する場合がある)のアミノ酸配列(配列番号2)を改変することにより、その性能を向上させることに成功したものである。
本発明の好ましい態様
本発明は好ましくは以下の態様を含む。
[態様1]
配列番号2に記載のアミノ酸配列、あるいはこの配列中に1から数個のアミノ酸変異を有するアミノ酸配列、又はこの配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、ビオチン結合活性を示すタンパク質において、以下のグループ
1)配列番号2の104番目のアルギニン残基;
2)配列番号2の141番目のリジン残基;
3)配列番号2の26番目のリジン残基;及び
4)配列番号2の73番目のリジン残基
から選択される1又は複数の残基が、酸性アミノ酸残基又は中性アミノ酸残基に置換されていることを特徴とする、改変型ビオチン結合タンパク質。
[態様2]
1)〜4)のいずれかのアミノ酸残基が、疎水性指標が2以下のアミノ酸残基に置換されている、態様1に記載の改変型ビオチン結合タンパク質。
[態様3]
1)配列番号2の104番目のアルギニン残基、及び/又は、2)配列番号2の141番目のリジン残基が、酸性アミノ酸残基又は中性アミノ酸残基に置換されている、態様1に記載の改変型ビオチン結合タンパク質。
[態様4]
1)配列番号2の104番目のアルギニン残基、及び/又は、2)配列番号2の141番目のリジン残基が、酸性アミノ酸残基に置換されている、態様3に記載の改変型ビオチン結合タンパク質。
[態様5]
1)配列番号2の104番目のアルギニン残基、及び/又は、2)配列番号2の141番目のリジン残基が、グルタミン酸残基に置換されている、態様3又は4に記載の改変型ビオチン結合タンパク質。
[態様6]
さらに、配列番号2の40番目のアスパラギン酸残基がアスパラギン残基に置換されている、態様1ないし5のいずれか1項に記載の改変型ビオチン結合タンパク質。
[態様7]
配列番号2において、104番目のアルギニン残基がグルタミン酸残基に置換されており、そして、141番目のリジン残基がグルタミン酸残基に置換されている、改変型ビオチン結合タンパク質(R104E−K141E);
配列番号2において、40番目のアスパラギン酸残基がアスパラギン残基に置換されており、そして、104番目のアルギニン残基がグルタミン酸残基に置換されている、改変型ビオチン結合タンパク質(D40N−R104E);
配列番号2において、40番目のアスパラギン酸残基がアスパラギン残基に置換されており、そして、141番目のリジン残基がグルタミン酸残基に置換されている、改変型ビオチン結合タンパク質(D40N−K141E);並びに、
配列番号2において、40番目のアスパラギン酸残基がアスパラギン残基に置換されており、104番目のアルギニン残基がグルタミン酸残基に置換されており、そして、141番目のリジン残基がグルタミン酸残基に置換されている、改変型ビオチン結合タンパク質(D40N−R104E−K141E)、
からなるグループから選択される、態様1ないし6のいずれか1項に記載の改変型ビオチン結合タンパク質。
[態様8]
以下のa)−l)
a)配列番号2の14番目のアスパラギン残基は改変されていない、あるいはグルタミン又はアスパラギン酸に置換されている;
b)配列番号2の18番目のセリン残基は改変されていない、あるいはスレオニン又はチロシンに置換されている;
c)配列番号2の34番目のチロシン残基は改変されていない、あるいはセリン、スレオニン又はフェニルアラニンに置換されている;
d)配列番号2の36番目のセリン残基は改変されていない、あるいはスレオニン又はチロシンに置換されている;
e)配列番号2の40番目のアスパラギン酸残基は改変されていない、あるいはアスパラギンに置換されている;
f)配列番号2の69番目のトリプトファン残基は改変されていない;
g)配列番号2の76番目のセリン残基は改変されていない、あるいはスレオニン又はチロシンに置換されている;
h)配列番号2の78番目のスレオニン残基は改変されていない、あるいはセリン又はチロシンに置換されている;
i)配列番号2の80番目のトリプトファン残基は改変されていない;
j)配列番号2の96番目のトリプトファン残基は改変されていない;
k)配列番号2の108番目のトリプトファン残基は改変されていない;
そして、
l)配列番号2の116番目のアスパラギン酸残基は改変されていない、あるいはグルタミン酸又はアスパラギンに置換されている
の1ないし全ての条件を満たす、態様1ないし7のいずれか1項に記載の改変型ビオチン結合タンパク質。
[態様9]
配列番号2に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む、態様1に記載の改変型ビオチン結合タンパク質。
[態様10]
以下の性質
i)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質よりも、低い等電点を有する;
ii)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質よりも、核酸及び/又はタンパク質に対する低い非特異的結合を示す;
iii)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質よりも、低いフィブロネクチン結合性を示す;
iv)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質よりも、高いビオチン結合性を示す;
の1ないし全部を満たす、態様1ないし9のいずれか1項に記載の改変型ビオチン結合タンパク質。
[態様11]
配列番号2に記載のアミノ酸配列、あるいはこの配列中に1から数個のアミノ酸変異を有するアミノ酸配列、又はこの配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、ビオチン結合活性を示すタンパク質において、配列番号2の40番目のアスパラギン酸残基がアスパラギン残基に置換されている、改変型ビオチン結合タンパク質。
[態様12]
配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質よりも、高いビオチン結合性を示す、態様11に記載の改変型ビオチン結合タンパク質。
[態様13]
態様1ないし12のいずれか1項に記載のタンパク質をコードする核酸。
[態様14]
態様13に記載の核酸を含む、ベクター。
[態様15]
態様1ないし12のいずれか1項に記載のタンパク質を固定化した担体。
以下、本発明を実施するための好ましい形態について説明する。
タマビジン
タマビジンは、食用キノコである担子菌タモギタケ(Pleurotus conucopiae)から発見された新規ビオチン結合タンパク質である(WO02/072817)。当該文献には、
−タマビジン1とタマビジン2の相互のアミノ酸相同性は65.5%で、ビオチンと強く結合する;
−タマビジン2は、大腸菌で可溶性画分に高発現する;そして
−タマビジン2を大腸菌で発現させた場合、4.5時間の培養で、50mlの培養当たり約1mgの純度の高い精製組換えタンパク質が得られた。これはビオチン結合性タンパク質として知られているアビジンやストレプトアビジンと比較しても、非常に高い値である;
ことが記載されている。
本明細書における「タマビジン2」は、タマビジン2(TM2)又はそれらの変異体を意味する。本発明は、TM2又はその変異体の特定のアミノ酸残基を改変させることにより、核酸及び/又はタンパク質へのより低い非特異的結合を示す、改変型TM2を提供するものである。本明細書において「タマビジン2」、「TM2」と記載した場合には、特に言及しない限り野生型のTM2及びその変異体を意味する。ただし、文意により、本発明の改変型TM2も含めてTM2の野生型、変異型、本発明の改変型の総称として使用する場合もある。また、TM2はビオチン結合性を示すことから、本明細書においてTM2を「ビオチン結合タンパク質」と呼称することがある。
具体的には、TM2(野生型)は典型的には、配列番号2のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質、又は、配列番号1の塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるタンパク質、であってよい。あるいは、TM2は、配列番号2のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質、又は、配列番号1の塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるタンパク質、の変異体であって、タマビジン2と同様のビオチン結合活性を有するタンパク質であってよい。TM2の変異体は、配列番号2のアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含むアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であって、TM2と同様のビオチン結合活性を有するタンパク質であってもよい。置換は、保存的置換であってもよく、これは、特定のアミノ酸残基を類似の物理化学的特徴を有する残基で置き換えることである。保存的置換の非限定的な例には、Ile、Val、LeuまたはAla相互の置換のような脂肪族基含有アミノ酸残基の間の置換、Lys及びArg、Glu及びAsp、Gln及びAsn相互の置換のような極性残基の間での置換などが含まれる。
アミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加による変異体は、野生型タンパク質をコードするDNAに、例えば周知技術である部位特異的変異誘発(例えば、Nucleic Acid Research, Vol.10, No. 20, p.6487-6500, 1982参照、引用によりその全体を本明細書に援用する)を施すことにより作成することができる。本明細書において、「1又は複数のアミノ酸」とは、部位特異的変異誘発法により欠失、置換、挿入及び/又は付加できる程度のアミノ酸を意味する。また、本明細書において「1又は複数のアミノ酸」とは、場合により、1又は数個のアミノ酸を意味してもよい。
部位特異的変異誘発法は、例えば、所望の変異である特定の不一致の他は、変異を受けるべき一本鎖ファージDNAに相補的な合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いて次のように行うことができる。即ち、プライマーとして上記合成オリゴヌクレオチドを用いてファージに相補的な鎖を合成させ、得られた二重鎖DNAで宿主細胞を形質転換する。形質転換された細菌の培養物を寒天にプレーティングし、ファージを含有する単一細胞からプラークを形成させる。そうすると、理論的には50%の新コロニーが一本鎖として変異を有するファージを含有し、残りの50%が元の配列を有する。上記所望の変異を有するDNAと完全に一致するものとはハイブリダイズするが、元の鎖を有するものとはハイブリダイズしない温度において、得られたプラークをキナーゼ処理により標識した合成プローブとハイブリダイズさせる。次に該プローブとハイブリダイズするプラークを拾い、培養してDNAを回収する。
なお、生物活性ペプチドのアミノ酸配列にその活性を保持しつつ1または複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入及び/又は付加を施す方法としては、上記の部位特異的変異誘発の他にも、遺伝子を変異源で処理する方法、及び遺伝子を選択的に開裂し、次に選択されたヌクレオチドを除去、置換、挿入又は付加し、次いで連結する方法もある。より好ましくは、本発明におけるTM2は、配列番号2において1ないしは10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、ビオチン活性を有するタンパク質である。
TM2の変異体はさらに、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%以上、好ましくは85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上、より好ましくは99.3%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であって、TM2と同様のビオチン結合活性を有するタンパク質であってもよい。
2つのアミノ酸配列の同一性%は、視覚的検査および数学的計算によって決定してもよい。あるいは、2つのタンパク質配列の同一性パーセントは、Needleman, S. B. 及びWunsch, C. D. (J. Mol. Biol., 48: 443-453, 1970)のアルゴリズムに基づき、そしてウィスコンシン大学遺伝学コンピューターグループ(UWGCG)より入手可能なGAPコンピュータープログラムを用い配列情報を比較することにより、決定してもよい。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)Henikoff, S. 及びHenikoff, J. G. (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 10915-10919, 1992)に記載されるような、スコアリング・マトリックス、blosum62;(2)12のギャップ加重;(3)4のギャップ長加重;及び(4)末端ギャップに対するペナルティなし、が含まれる。
当業者に用いられる、配列比較の他のプログラムもまた、用いてもよい。同一性のパーセントは、例えばAltschulら(Nucl. Acids. Res., 25, p.3389-3402, 1997)に記載されているBLASTプログラムを用いて配列情報と比較し決定することが可能である。当該プログラムは、インターネット上でNational Center for Biotechnology Information(NCBI)、あるいはDNA Data Bank of Japan(DDBJ)のウェブサイトから利用することが可能である。BLASTプログラムによる同一性検索の各種条件(パラメーター)は同サイトに詳しく記載されており、一部の設定を適宜変更することが可能であるが、検索は通常デフォルト値を用いて行う。又は、2つのアミノ酸配列の同一性%は、遺伝情報処理ソフトウエアGENETYX Ver.7(ゼネティックス製)などのプログラム、又は、FASTAアルゴリズムなどを用いて決定してもよい。その際、検索はデフォルト値を用いてよい。
2つの核酸配列の同一性%は、視覚的検査と数学的計算により決定可能であるか、またはより好ましくは、この比較はコンピュータ・プログラムを使用して配列情報を比較することによってなされる。代表的な、好ましいコンピュータ・プログラムは、遺伝学コンピュータ・グループ(GCG;ウィスコンシン州マディソン)のウィスコンシン・パッケージ、バージョン10.0プログラム「GAP」である(Devereux, et al., 1984, Nucl. Acids Res., 12: 387)。この「GAP」プログラムの使用により、2つの核酸配列の比較の他に、2つのアミノ酸配列の比較、核酸配列とアミノ酸配列との比較を行うことができる。ここで、「GAP」プログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)ヌクレオチドについての(同一物について1、及び非同一物について0の値を含む)一元(unary)比較マトリックスのGCG実行と、Schwartz及びDayhoff監修「ポリペプチドの配列および構造のアトラス(Atlas of Polypeptide Sequence and Structure)」国立バイオ医学研究財団、353−358頁、1979により記載されるような、GribskovおよびBurgess, Nucl. Acids Res., 14: 6745, 1986の加重アミノ酸比較マトリックス;又は他の比較可能な比較マトリックス;(2)アミノ酸の各ギャップについて30のペナルティと各ギャップ中の各記号について追加の1のペナルティ;又はヌクレオチド配列の各ギャップについて50のペナルティと各ギャップ中の各記号について追加の3のペナルティ;(3)エンドギャップへのノーペナルティ:及び(4)長いギャップへは最大ペナルティなし、が含まれる。当業者により使用される他の配列比較プログラムでは、例えば、米国国立医学ライブラリーのウェブサイト:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/bls.htmlにより使用が利用可能なBLASTNプログラム、バージョン2.2.7、またはUW−BLAST2.0アルゴリズムが使用可能である。UW−BLAST2.0についての標準的なデフォルトパラメーターの設定は、以下のインターネットサイト:http://blast.wustl.eduに記載されている。さらに、BLASTアルゴリズムは、BLOSUM62アミノ酸スコア付けマトリックスを使用し、使用可能である選択パラメーターは以下の通りである:(A)低い組成複雑性を有するクエリー配列のセグメント(WoottonおよびFederhenのSEGプログラム(Computers and Chemistry, 1993)により決定される;WoottonおよびFederhen, 1996「配列データベースにおける組成編重領域の解析(Analysis of compositionally biased regions in sequence databases)」Methods Enzymol., 266: 544-71も参照されたい)、又は、短周期性の内部リピートからなるセグメント(ClaverieおよびStates(Computers and Chemistry, 1993)のXNUプログラムにより決定される)をマスクするためのフィルターを含むこと、及び(B)データベース配列に対する適合を報告するための統計学的有意性の閾値、またはE−スコア(KarlinおよびAltschul, 1990)の統計学的モデルにしたがって、単に偶然により見出される適合の期待確率;ある適合に起因する統計学的有意差がE−スコア閾値より大きい場合、この適合は報告されない);好ましいE−スコア閾値の数値は0.5であるか、または好ましさが増える順に、0.25、0.1、0.05、0.01、0.001、0.0001、1e−5、1e−10、1e−15、1e−20、1e−25、1e−30、1e−40、1e−50、1e−75、または1e−100である。
TM2の変異体はまた、配列番号1の塩基配列の相補鎖にストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるタンパク質であって、TM2と同様のビオチン結合活性を有するタンパク質であってもよい。
ここで、「ストリンジェントな条件下」とは、中程度または高程度にストリンジェントな条件においてハイブリダイズすることを意味する。具体的には、中程度にストリンジェントな条件は、例えば、DNAの長さに基づき、一般の技術を有する当業者によって、容易に決定することが可能である。基本的な条件は、Sambrookら,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第3版,第6章,Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001に示され、例えば5×SSC、0.5% SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の前洗浄溶液、約42℃での、約50%ホルムアミド、2×SSC−6×SSC、好ましくは5−6×SSC、0.5% SDS(または約42℃での約50%ホルムアミド中の、スターク溶液(Stark’s solution)などの他の同様のハイブリダイゼーション溶液)のハイブリダイゼーション条件、及び例えば、約50℃−68℃、0.1−6×SSC、0.1% SDSの洗浄条件の使用が含まれる。好ましくは中程度にストリンジェントな条件は、約50℃、6×SSC、0.5% SDSのハイブリダイゼーション条件(及び洗浄条件)を含む。高ストリンジェントな条件もまた、例えばDNAの長さに基づき、当業者によって、容易に決定することが可能である。
一般に、こうした条件は、中程度にストリンジェントな条件よりも高い温度及び/又は低い塩濃度でのハイブリダイゼーション(例えば、0.5%程度のSDSを含み、約65℃、6×SSCないし0.2×SSC、好ましくは6×SSC、より好ましくは2×SSC、より好ましくは0.2×SSC、あるいは0.1×SSCのハイブリダイゼーション)及び/又は洗浄を含み、例えば上記のようなハイブリダイゼーション条件、及びおよそ65℃−68℃、0.2ないし0.1×SSC、0.1% SDSの洗浄を伴うと定義される。ハイブリダイゼーションおよび洗浄の緩衝液では、SSC(1×SSCは、0.15M NaClおよび15mM クエン酸ナトリウムである)にSSPE(1×SSPEは、0.15M NaCl、10mM NaHPO、および1.25mM EDTA、pH7.4である)を代用することが可能であり、洗浄はハイブリダイゼーションが完了した後で15分間ないし1時間程度行う。
また、プローブに放射性物質を使用しない市販のハイブリダイゼーションキットを使用することもできる。具体的には、ECL direct labeling & detection system(Amersham社製)を使用したハイブリダイゼーション等が挙げられる。ストリンジェントなハイブリダイゼーションとしては、例えば、キット中のhybridization bufferにBlocking試薬を5%(w/v)、NaClを0.5Mになるように加え、42℃で4時間行い、洗浄は、0.4% SDS、0.5xSSC中で、55℃で20分を2回、2xSSC中で室温、5分を一回行う、という条件が挙げられる。
TM2の変異体のビオチン結合活性は、公知の手法のいずれかにより測定することが可能である。例えば、Kadaら(Biochim. Biophys. Acta., 1427: 33-43 (1999))に記載されるように蛍光ビオチンを用いる方法により測定してもよい。この方法は、ビオチン結合タンパク質のビオチン結合サイトに蛍光ビオチンが結合すると、蛍光ビオチンの蛍光強度が消失する性質を利用したアッセイ系である。あるいは、表面プラズモン共鳴を原理としたバイオセンサーなど、タンパク質とビオチンの結合を測定することが可能なセンサーを用いて、変異体タンパク質のビオチン結合活性を評価することもできる。
本発明の改変タマビジンにおいて、改変しないことが望ましいアミノ酸残基については後述する。
本発明の非特異結合を低下させた改変タマビジン
本発明の改変型TM2は、配列番号2に記載のアミノ酸配列、あるいはこの配列中に1から数個のアミノ酸変異を有するアミノ酸配列、又はこの配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、ビオチン結合活性を示すタンパク質(野生型TM2及び変異型TM2)において、以下のグループ
1)配列番号2の104番目のアルギニン残基;
2)配列番号2の141番目のリジン残基;
3)配列番号2の26番目のリジン残基;及び
4)配列番号2の73番目のリジン残基
から選択される1又は複数の残基が、酸性アミノ酸残基又は中性アミノ酸残基に置換されていることを特徴とする。
野生型TM2の等電点(pI)は、その一次構造から計算された値は約7.4、実測値は8.2−8.6程度であり、中性〜弱塩基性のタンパク質である。TM2の非特異結合の程度についてはアビジンよりも遥かに少なく、中性タンパク質であるストレプトアビジンとほぼ同等である。
本発明者らは、TM2の非特異結合をさらに小さくすることを検討した。すなわち、TM2のような中性〜弱塩基性タンパク質であっても、pIを低下させることにより、非特異結合がさらに下がるのではないかと考え、TM2が有する塩基性アミノ酸残基を、酸性アミノ酸又は中性アミノ酸に改変し、実験を行なった。
ここで、ストレプトアビジンまたはアビジンでは、1つ又は数個のアミノ酸の置換によりビオチンへの結合親和力が低下してしまう場合があることが知られていることから、実験にあたっては、等電点を下げるだけでなく、TM2の優れた特徴である、高いビオチン結合能を損なわないよう、後述のような検討を行ないつつアミノ酸残基の改変を行なった。
鋭意研究の結果、本発明者らはこのような条件を満たす本発明の低pIの改変型TM2は、以下のグループ
1)配列番号2の104番目のアルギニン残基(R104);
2)配列番号2の141番目のリジン残基(K141);
3)配列番号2の26番目のリジン残基(K26);及び
4)配列番号2の73番目のリジン残基(K73)
から選択される1または複数の残基の変異を含む改変TM2タンパク質であることを見いだし、本発明を想到した。
変異後のアミノ酸は、酸性アミノ酸残基(アスパラギン酸、グルタミン酸)又は中性アミノ酸残基(アスパラギン、セリン、グルタミン、トレオニン、グリシン、チロシン、トリプトファン、システイン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン)である。
また、非極性のアミノ酸は疎水性相互作用に基づく非特異結合があることが懸念されるため、好ましくは疎水性指標が2以下の酸性アミノ酸残基又は中性アミノ酸残基である。疎水性指標(hydropathy index)とは、例えばKyte and Doolittle, J. Mol. Biol., 157, 105−132(1982)に記載されている各アミノ酸残基の疎水性の程度を数値化したものであり、当業者に公知である。「疎水性指標が2以下の酸性アミノ酸残基または中性アミノ酸残基」は、酸性アミノ酸残基のアスパラギン酸及びグルタミン酸、並びに中性アミノ酸残基のアスパラギン、セリン、グルタミン、トレオニン、グリシン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、プロリン及びアラニン、である。
より好ましくは、1)配列番号2の104番目のアルギニン残基、及び/又は、2)配列番号2の141番目のリジン残基が、酸性アミノ酸残基又は中性アミノ酸残基に置換されている。さらに好ましくは、1)配列番号2の104番目のアルギニン残基、及び/又は、2)配列番号2の141番目のリジン残基が、酸性アミノ酸残基に置換されている。
K26においてはA(アラニン)、K73においてはQ(グルタミン)、R104においてはE(グルタミン酸)もしくはD(アスパラギン酸)、K141においてはE(グルタミン酸)もしくはD(アスパラギン酸)であり、R104においてはEが、K141においてはEが、一層好ましい。
本発明の低pI型改変TM2は、野生型TM2と比べ有意に低い等電点を示す。具体的には、実施例1の1−8)では変異を導入した改変型TM2の等電点はいずれも、野生型のTM2より1以上低下していることが明らかになった。
この性質により、本発明の改変型TM2タンパク質は、野生型または変異型TM2タンパク質よりも、核酸及び/又はタンパク質に対する低い非特異的結合を示す。具体的には、実施例1の1−11)において、DNAに対する非特異結合が低下していることが示された。さらに、実施例1の1−9)には、血清タンパク質の非特異吸着性が低下したことが示された。K26、K73、K141を変異させたものについてはいずれも野生型TM2の6割程度にまで減少し、さらにR104−K141(R104とK141の両方を変異させたもの)に至ってはTM2の2割強にまで減少していた。これに対し、アビジンの塩基性アミノ酸変異体については、DNA若しくは細胞に関する非特異結合の低下は報告されているものの(Marttila et al. (2000) FEBS, 467,p.31−36)、血清タンパク質の非特異結合に関するこのような大きな低下は報告されていない。
また、本発明の低pI型改変TM2について、フィブロネクチンとの結合性を調べたところ、大きく低下していた。フィブロネクチンは細胞外マトリクスにある細胞接着分子であり、特に血漿や血清中のタンパク質を検出する場合にノイズの一因となるものである。従って、フィブロネクチンとの結合が少ないことが望ましい。実施例1の1−10)に示されたように、TM2と比べ、いずれの変異体もフィブロネクチンの結合量が減少していた。特に、K141、R104−K141については、野生型TM2結合量の1割〜2割の結合量にまで著しく減少していた。なお、pI値とフィブロネクチン結合能との関係は知られておらず、実際にpI値とフィブロネクチン減少度合いに明確な相関は見られなかった。このことを考慮しても、K141、R104−K141の変異体のフィブロネクチン結合量の減少は非常に大きく、予想できない顕著なものであった。
フィブロネクチン結合を減少させる、本発明の好ましい改変TM2の一つは、TM2アミノ酸配列の141番目のリジン残基を、酸性アミノ酸または中性アミノ酸に改変したものである。さらに好ましくは疎水性指標が2以下の酸性アミノ酸または中性アミノ酸に改変したものである。さらに好ましくは、E(グルタミン酸)もしくはD(アスパラギン酸)であり、中でもEが最も好ましい。
あるいは、フィブロネクチン結合を減少させる別の改変TM2は、R104及びK141の両方のアミノ酸残基を同時に酸性アミノ酸または中性アミノ酸に改変したものである。さらに好ましくは疎水性指標が2以下の酸性アミノ酸または中性アミノ酸に改変したもの、さらに好ましくは、E(グルタミン酸)もしくはD(アスパラギン酸)であり、中でもEが最も好ましい。
ビオチン結合能を向上させた改変タマビジン
TM2とビオチンとの結合速度定数(ka)は9.19´10(M−1−1)、解離速度定数(kd)は6.83´10−6(s−1)、解離定数(KD)は7.43´10−12(M)であり、ビオチンと非常に強く結合する。他のビオチン結合性タンパク質であるストレプトアビジンについて同様に測定したところ、kaは2.28´10(M−1−1)、kdは2.52´10−6(s−1)、KDは1.11´10−12(M)であった。すなわちTM2とビオチンとの結合力をストレプトアビジンと比較すると、オーダーは同じものの、やや弱い(WO2008/081938 A1)。ビオチン結合タンパク質とビオチンを、より早く結合させたい場合やより多く結合させたい場合には、より高いビオチン結合能を有することが望ましい。
発明者らは、TM2のアミノ酸残基を改変し、元来高いビオチン結合能を持つ野生型TM2について、さらにビオチン結合能の向上した高アフィニティ型改変TM2の作製に成功した。本発明の高アフィニティ型TM2は、TM2の配列番号2のアミノ酸配列のうち、少なくとも40番目のアスパラギン酸残基(D40)を変異させたものである。変異後のアミノ酸は、N(アスパラギン)が好ましい。
D40の改変は、前述の非特異的結合を低下させるためのR104、K141、K26及び/又はK73の改変と組み合わせて行ってもよく(態様6)、あるいは、単独で行ってもよい(態様11)。実施例2及び3で示されたように、D40の改変された改変TM2は野生型TM2よりも有意に高いビオチン結合能を示す。
非特異結合を低下させ、かつビオチン結合能を向上させた改変タマビジン
上記の「非特異結合を低下させた改変タマビジン」と「ビオチン結合能を向上させた改変タマビジン」におけるアミノ酸変異を組み合わせた改変タマビジンを作製したところ、非特異結合が低下し、ビオチン結合能を向上させた改変タマビジンを得ることができた。このような改変タマビジンは、TM2アミノ酸配列のK26、K73、R104、K141のうち、少なくとも一つのアミノ酸残基の変異を含み、さらにD40のアミノ酸残基をNに変異させた改変TM2タンパク質である(態様6)。
K26、K73、R104、K141の変異後のアミノ酸は、酸性アミノ酸又は中性アミノ酸であり、好ましくは疎水性指標(hydropathy index:Kyte and Doolittle, J. Mol. Biol., 157, 105−132(1982))が2以下の酸性アミノ酸又は中性アミノ酸である。さらに好ましくは、K26においてはA(アラニン)、K73においてはQ(グルタミン)、R104においてはE(グルタミン酸)もしくはD(アスパラギン酸)、K141においてはE(グルタミン酸)もしくはD(アスパラギン酸)であり、R104においてはEが、K141においてはEが、一層好ましい。
R104とD40の改変とを同時に行なった改変タマビジンについては、アフィニティ向上及びタンパク質非特異結合の低下が見られた(実施例3の、3−7)及び3−9))。
またR104、K141、D40を同時に改変した改変タマビジンについては、等電点の低下、アフィニティ向上、タンパク質非特異結合の低下、フィブロネクチン結合性の低下、及び核酸非特異結合の低下(実施例3の3−6)、3−7)、3−9)、3−10)、及び3−11)が観察された。さらに、驚くべきことにタンパク質構造の熱安定性が大幅に向上した(実施例3の3−8))。
従って、D40とR104アミノ酸残基を同時に改変することが好ましく、D40、R104及びK141を同時に改変することがより好ましい。
以上より、好ましくは本発明の改変型TM2は、非限定的に、
配列番号2において、40番目のアスパラギン酸残基がアスパラギン残基に置換されており、そして、104番目のアルギニン残基がグルタミン酸残基に置換されている、改変型ビオチン結合タンパク質(D40N−R104E);
配列番号2において、40番目のアスパラギン酸残基がアスパラギン残基に置換されており、そして、141番目のリジン残基がグルタミン酸残基に置換されている、改変型ビオチン結合タンパク質(D40N−K141E);並びに、
配列番号2において、40番目のアスパラギン酸残基がアスパラギン残基に置換されており、104番目のアルギニン残基がグルタミン酸残基に置換されており、そして、141番目のリジン残基がグルタミン酸残基に置換されている、改変型ビオチン結合タンパク質(D40N−R104E−K141E)、
からなるグループから選択される。
本発明の改変TM2タンパク質の好ましい態様は、例えば、配列番号8、10、16、20、22、24及び25のいずれかのアミノ酸配列を有する。
より好ましくはD40N−R104E、D40N−K141E又はD40N−R104E−K141E、もっとも好ましくはD40N−R104E−K141Eである。
本願発明の改変型TM2タンパク質は、好ましくは、以下の性質
i)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質よりも、低い等電点を有する;
ii)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質よりも、核酸及び/又はタンパク質に対する低い非特異的結合を示す;
iii)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質よりも、低いフィブロネクチン結合性を示す;
iv)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質よりも、高いビオチン結合性を示す;
の1ないし全部を満たす。
i)について野生型のTM2の等電点は、約8.5−8.8である。本発明の改変TM2の等電点は、好ましくは8.0以下、より好ましくは7,7以下である。
iii)について、野生型TM2のフィブロネクチンへの結合性を1.3〜1.4とした場合、本発明の改変TM2のフィブロネクチン結合性は好ましくは1.0以下、より好ましくは0.7以下、0.25以下、0.15以下である。
本発明の改変TM2において改変されないことが望ましいアミノ酸残基
本発明の改変TM2におけるアミノ酸残基の改変については、ビオチン結合能に影響を及ぼさないことが求められる。ところで、ビオチン結合タンパク質の一つであるストレプトアビジンのビオチンポケットについては既に解明が進んでいる。このストレプトアビジンとTM2のアミノ酸配列のホモロジーは50%程度に過ぎないが、発明者らは、TM2のビオチンポケットについての知見を得るべく、TM2とストレプトアビジンのアミノ酸配列を並列させて比較した。すると、ストレプトアビジンのビオチンポケットを形成するアミノ酸の中で、ビオチンと直接相互作用する残基N23、S27、Y43、S45、N49、W79、S88、T90、W92、W108、W120、D128(Weber et al. (1989)Science 243: 85−88、Livnah et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90: 5076−5080)は、TM2では各々、N14、S18、Y34、S36、D40、W69、S76、T78、W80、W96、W108、D116に該当し、非常によく保存されていることが見出された。
唯一、ストレプトアビジンの49番目のN(アスパラギン)は、TM2においては40番目のD(アスパラギン酸)になっており、例外であったが、これをストレプトアビジンと同様にアスパラギンに改変したD40N TM2は前記のとおり、ビオチン結合能が向上していた。これらの結果から、TM2とストレプトアビジンのビオチン結合ポケットは非常に似た構造を有し、これらのアミノ酸残基はビオチン結合に大きく関与していると考えられる。
特に4つのトリプトファン残基(W69、W80、W96、W108)はビオチンポケットの構造に重要な役割を果たしていると考えられるため、改変されないことが望ましい。一方、ビオチンとの結合に関与すると考えられるその他のアミノ酸すなわち、TM2においては、ビオチンと直接相互作用すると考えられるアミノ酸残基(N14、S18、Y34、S36、S76、T78、D116)についても改変されないことが望ましい。あるいは、これらを改変する場合にはビオチンとの結合を維持できるよう、性質あるいは構造が類似したアミノ酸に改変することが望ましく、例えばアスパラギン(N14)の場合は、グルタミン(Q)やアスパラギン酸(D)へ、好ましくはアスパラギン酸へ、アスパラギン酸(D40)の場合は、アスパラギン(N)へ、セリン(S18、S36、S76)の場合は、スレオニン(T)あるいはチロシン(Y)へ、好ましくはスレオニンへ、チロシン(Y34)の場合は、セリン(S)やスレオニン(T)あるいはフェニルアラニン(F)へ、好ましくはフェニルアラニンへ、スレオニン(T78)の場合は、セリン(S)やチロシン(Y)へ、好ましくはセリンへ、アスパラギン酸(D116)の場合は、グルタミン酸(E)やアスパラギン(N)へ、好ましくはアスパラギンへ、それぞれ改変することが望ましい。
アミノ酸の改変方法
TM2のアミノ酸を改変して、本発明の改変TM2を得るための方法は、公知のアミノ酸配列に変異を施す方法を使用でき、特に限定されない。好ましくはTM2をコードする核酸の塩基配列に修飾を施し改変する。
例えば、アミノ酸配列の特定の位置のアミノ酸を改変するには、例えばPCRを利用した方法が挙げられる(Higuchi et al (1988), Ho et al.(1989))。すなわち、標的変異のミスマッチコドンを含むプライマーを利用してPCRを行ない、目的の変異体をコードするDNAを作成しこれを発現させることにより、目的の変異体を得ることができる。
また、アミノ酸の欠失、置換、挿入及び/又は付加による変異体は、野生型タンパク質をコードするDNAに、例えば周知技術である部位特異的変異誘発(例えば、Nucleic Acid Research, Vol.10, No. 20, p.6487−6500, 1982参照、引用によりその全体を本明細書に援用する)を施すことにより作成することができる。部位特異的変異誘発法は、例えば、所望の変異である特定の不一致の他は、変異を受けるべき一本鎖ファージDNAに相補的な合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いて次のように行うことができる。即ち、プライマーとして上記合成オリゴヌクレオチドを用いてファージに相補的な鎖を合成させ、得られた二重鎖DNAで宿主細胞を形質転換する。形質転換された細菌の培養物を寒天にプレーティングし、ファージを含有する単一細胞からプラークを形成させる。そうすると、理論的には50%の新コロニーが一本鎖として変異を有するファージを含有し、残りの50%が元の配列を有する。上記所望の変異を有するDNAと完全に一致するものとはハイブリダイズするが、元の鎖を有するものとはハイブリダイズしない温度において、得られたプラークをキナーゼ処理により標識した合成プローブとハイブリダイズさせる。次に該プローブとハイブリダイズするプラークを拾い、培養してDNAを回収する。
改変タマビジン2(TM2)タンパク質をコードする核酸
本発明は、本発明の改変型TM2をコードする核酸を提供する。このような核酸の塩基配列は、TM2の塩基配列(配列番号1)を改変型TM2タンパク質の改変アミノ酸をコードする塩基配列に改変したものである。改変される塩基配列は、改変後アミノ酸をコードする塩基配列であれば限定されない。例えば、配列番号1の塩基配列からなる核酸、またはそれらの相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつビオチン結合活性を有するタンパク質をコードする核酸(以下、「TM2遺伝子」)に本発明の改変を施すために塩基配列を改変させたものを含む。
本発明の核酸は、好ましくは、配列番号8、10、16、20、22、24及び25のいずれかのアミノ酸配列をコードする。より好ましくはアミノ酸配列22または24をコードする。本発明の核酸は、好ましくは配列番号7、9、15、19、21及び23の核酸配列からなる。より好ましくは、配列番号21又は23の核酸配列からなる。
本発明の核酸を含むベクター
また、本発明は、改変TM2タンパク質をコードする核酸を含むベクターを提供する。好ましくは、改変TM2タンパク質を発現するための発現ベクターである。
本発明の改変TM2タンパク質をコードする核酸は、上記「改変タマビジンタンパク質をコードする核酸」に記載された通りであり、特に限定されない。
さらに、改変TM2タンパク質をコードする核酸の片側もしくは両端に、制限酵素認識部位や、aatB1、aatB2、aatB3などのGatewayシステム(Invitrogen社)で用いられる配列などを有し、さらに改変TM2タンパク質コード核酸の上流には所望の宿主で機能するプロモーターが、またその下流にはターミネーターが配置されていてもよい。
なお、制限酵素認識部位の種類は特に限定されないが、発現ベクターにおいては、それが唯一の認識部位であることが好ましい。認識部位の数も特に限定されないが、1又は2個以上であり、好ましくは10個以下である。
なお、制限酵素部位やaatB配列と改変TM2核酸の塩基配列の間には、1アミノ酸以上、好ましくは5アミノ酸以上、更に好ましくは10アミノ酸以上、更に好ましくは25アミノ酸以上であり、50アミノ酸以下のリンカーアミノ酸配列(特に限定されないが、グリシンやセリンを多く含む配列など、当業者が通常使用する配列でよい)をコードする核酸配列を配置してもよく、また特に限定されないが、例えばエンテロキナーゼやFactor Xa等のようなプロテアーゼの認識部位をコードする配列を配置してもよい。
また、例えばscFvやFab等の抗体遺伝子を本発現ベクターに挿入する場合において、融合タンパク質の発現に細胞質内部のような還元条件が適さないときには、プロモーターと、改変タマビジンコード核酸を挿入するための配列からなるユニットとの間に、シグナルペプチドや分泌シグナルなどのような、リーダーペプチドをコードする核酸配列を含んでもよい。
本発明のベクターは、好ましくは発現ベクターである。発現ベクターは、このような発現ユニットの他に、所望の宿主で複製できるためのユニット、例えば複製開始点を有し、また所望の宿主細胞を選抜するための、薬剤抵抗性マーカー遺伝子を有してもよい。宿主は特に限定されないが、好ましくは大腸菌である。また、本発現ベクターに、例えば、大腸菌におけるラクトースリプレッサー系のような適当な発現制御系を組み込んでもよい。
改変タマビジンを固定化した担体
本発明は、本発明の改変TM2タンパク質を固定化した担体を提供する。
担体を構成する材料は公知のものを使用可能である。例えば、セルロース、テフロン、ニトロセルロース、アガロース、デキストラン、キトサン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリプロピレン、ナイロン、ポリジビニリデンジフルオライド、ラテックス、シリカ、ガラス、ガラス繊維、金、白金、銀、銅、鉄、ステンレススチール、フェライト、シリコンウエハ、ポリエチレン、ポリエチレンイミン、ポリ乳酸、樹脂、多糖類、タンパク(アルブミン等)、炭素又はそれらの組合せ、などを含むがこれらに限定されない。また、一定の強度を有し、組成が安定し、かつ非特異結合が少ないものが好ましい。
固体担体の形状は、ビーズ、磁性ビーズ、薄膜、微細管、フィルター、プレート、マイクロプレート、カーボンナノチューブ、センサーチップなどを含むがこれらに限定されない。薄膜やプレートなどの平坦な固体担体は、当該技術分野で知られているように、ピット、溝、フィルター底部などを設けてもよい。
発明の一態様において、ビーズは、約25nm〜約1mmの範囲の球体直径を有しうる。好ましい態様では、ビーズは約50nm〜約10μmの範囲の直径を有する。ビーズのサイズは特定の適用に応じて選択されうる。いくらかの細菌スポアは約1μmのオーダーのサイズを有するので、かかるスポアを捕捉するための好ましいビーズは1μmよりも大きい直径を有する。
タンパク質の担体への結合は特に限定されず、タンパク質を担体に結合させるための公知の方法を使用することが可能である。具体的な結合方法は、担体の種類等によって、当業者が適宜選択可能である。
本発明によって、高いビオチン結合能というタマビジンの特性を保持しつつ、非特異結合性の低下、及び/又は更なるビオチン結合の向上、といった性能を向上させた改変タマビジンが提供された。これらの改変タマビジンを利用することにより、アビジン−ビオチン結合を利用した被検体を測定するための検出法、例えばイムノアッセイや核酸ハイブリダイゼーションアッセイにおいて、バックグラウンドの低下、感度の向上、劣悪環境(高温、変性剤、酵素存在下など)におけるビオチンとの結合性維持を図ることができる。
図1は、血清タンパク質固定化磁性ビーズに対する、本発明の低pI型改変TM2タンパク質の非特異的結合性を示す。** p<0.01 vs TM2 図2は、フィブロネクチンに対する、本発明の低pI型改変TM2タンパク質の非特異的結合性を示す。 * p<0.01 vs TM2 図3は、DNAに対する本発明の低pI型改変TM2タンパク質の非特異的結合性を示す。 図4は、本発明の低非特異結合・高アフィニティ型TM2タンパク質を固定化した磁性ビーズに対する血清タンパク質の非特異吸着性を調べた。* p<0.1 vs TM2 図5は、本発明の低非特異結合・高アフィニティ型TM2タンパク質のフィブロネクチンに対する非特異的結合性を示す。* p<0.01 vs TM2 図6は、DNAに対する本発明の低非特異結合・高アフィニティ型TM2タンパク質の非特異的結合性を示す。図6の上段、中段、下段は各々野生型TM2、TM2 R104EK141E、TM2 D40NR104EK141Eの結果を示す。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の技術的範囲を限定するためのものではない。当業者は本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾・変更を加えることができ、それらは本発明の技術的範囲に含まれる。
実施例1 低pI型TM2の構築と分析
1−1) 低pI型TM2の構築
TM2の等電点を低下させることを目的に、TM2中の塩基性アミノ酸残基を、中性アミノ酸または酸性アミノ酸に置換し、以下の7つの改変体を構築した。
(1)26番目のリジンをアラニンに置換したTM2(以下、「TM2 K26A」、塩基配列は配列番号3に記載、アミノ酸配列は配列番号4に記載);
(2)73番目のリジンをグルタミンに置換したTM2(以下、「TM2 K73Q」、塩基配列は配列番号5に記載、アミノ酸配列は配列番号6に記載);
(3)104番目のアルギニンをグルタミン酸に置換したTM2(以下、「TM2 R104E」、塩基配列は配列番号7に記載、アミノ酸配列は配列番号8に記載);
(4)141番目のリジンをグルタミン酸に変異したTM2(以下、「TM2 K141E」、塩基配列は配列番号9に記載、アミノ酸配列は配列番号10に記載);
(5)33番目のリジンからスレオニンへの置換と37番目のリジンからアラニンへの置換を持つTM2(以下、「TM2 K33TK37A」、塩基配列は配列番号11に記載、アミノ酸配列は配列番号12に記載);
(6)33番目のリジンからスレオニンへの置換と37番目のリジンからアラニンへの置換、さらに104番目のアルギニンからグルタミン酸への置換をもつTM2(以下、「TM2 K33TK37AR104E」、塩基配列は配列番号13に記載、アミノ酸配列は配列番号14に記載);並びに
(7)104番目のアルギニンからグルタミン酸への置換と141番目のリジンからグルタミン酸への置換を持つTM2(以下、「TM2 R104EK141E」、塩基配列は配列番号15に記載、アミノ酸配列は配列番号16に記載)。
(8)19番目のリジンをスレオニンに置換したTM2(以下、「TM2 K19T」、塩基配列は配列番号17に記載、アミノ酸配列は配列番号18に記載);
R104EのE、K33TK37AのTとAは、TM2とストレプトアビジンのアミノ酸配列の比較から、ストレプトアビジン配列上の当該部分のアミノ酸を参考にして決定した。また、K141EのEはタマビジン1配列上の該当部分のアミノ酸を参考にして決定した。
まず、低pI型TM2を構築するために、各変異を導入するようなプライマーを設計した。TM2遺伝子の5’部分と、その上流にPci I制限酵素切断部位(ACATGT)をコードする配列からなるプライマーTm2NtermPci、TM2遺伝子の3’部分と、その下流にBamH I制限酵素切断部位(GGATCC)をコードする配列からなるプライマーTm2CtermBamを設計した。各変異体についてのミスマッチコドンを含む一連のセンスプライマー、およびアンチセンスプライマーは、それぞれ以下の通りである(配列番号26−37)。
表1 低pI型TM2構築用プライマー
制限酵素認識部位を下線で示し、変異導入部位を点線で示した。
1−2) PCR
低pI型TM2遺伝子を構築するために、2段階のPCRを行った。1段階目のPCRは、TM2遺伝子がベクターpTrc99Aに組み込まれたプラスミドを鋳型にして、プライマー Tm2NtermPciと各変異体のミスマッチコドンを含むアンチセンスプライマーTm2 K26A R、Tm2 K73Q R、Tm2 K33TK37A R、Tm2 R104E R、Tm2 K19T Rそれぞれを用いて5’部分の増幅を、ミスマッチコドンを含むセンスプライマーTm2 K26A F、Tm2 K73Q F、Tm2 K33TK37A F、Tm2 R104E F、Tm2 K19T FのいずれかとTm2CtermBamを用いて3’部分の増幅を、それぞれ行った。
TM2 K141Eについては、プライマーTm2NtermPciとTm2 K141E Bamを用いて、1度のPCR反応で変異を導入した。
PCR反応条件は、50μLの反応液中に鋳型DNAを500ng、10×Pyrobest buffer(Takara社)を5μL、2.5mM dNTPを4μL、プライマーを各25pmoles、5U/μL Pyrobest DNA polymerase(Takara社製)を0.5μL添加し、プログラムテンプコントロールシステムPC−700(ASTEK)を用いて、96℃−3分を1回、96℃−1分、55℃−1分、72℃−2分を10回、72℃−6分を1回とした。その結果、5’部分において、TM2 K33TK37Aは約120bp、TM2 K R104Eは約330bp、3’部分において、TM2 K33TK37Aは約310bp、TM2 K R104Eは約100bp、TM2 K19Tは約60bpのPCR産物が得られた。また、TM2 K141Eにおいては、約430bpのPCR産物が得られた。
これらのPCR産物を、低融点アガロース(SeaPlaqueGTG)を用いてTAE緩衝液中でアガロース電気泳動を行った。各DNA断片をゲルごと切り出し、ゲルと等量の200 mM NaClを加え、70℃で10分間処理し、ゲルを融解した。このサンプルをフェノール抽出、フェノール・クロロホルム抽出、クロロホルム抽出を各1回行い、エタノール沈殿によって5’部分と3’部分のDNA断片を回収した。この断片を鋳型にして、TM2 K141E以外の遺伝子を構築するためにプライマーTm2NtermPciとTm2CtermBamを用いて、2段階目のPCRを行った。反応条件は1段階目と同様とした。その結果、430bpのPCR産物が得られた。
1−3) クローニング
PCRによって得られた低pI型TM2遺伝子断片をベクターpCR4 Blunt TOPO(Invitrogen社製)にクローニングした。ライゲーション反応はベクターキット添付の説明書きに従った。大腸菌TB1にエレクトロポレーション法を用いてDNAを導入し、常法(Sambrook et al. 1989, Molecular Cloning, A laboratory manual, 2nd edition)に従ってプラスミドDNAを抽出した。インサートが確認されたクローンに関して、M13プライマー(Takara社)を用いて、ABI PRISM蛍光シークエンサー(Model 310 Genetic Analyzer, Perkin Elmer社)で、PCR産物の塩基配列をその両端から決定し、対象塩基に変異が導入されていることを確認した。
塩基配列が確認された遺伝子について、それらがpCR4 Blunt TOPOに組み込まれたプラスミドをPci IとBamH Iで二重消化し、前述の方法でゲル精製を行い、DNA断片を回収した。この断片を、あらかじめNcoIとBamH Iで消化しておいた大腸菌発現用ベクターpTrc99Aに、Ligation kit(Takara社製)を用いてライゲーションした。ライゲーション産物を大腸菌TB1に形質転換し、常法に従いプラスミドDNAを抽出、制限酵素分析を行い、挿入遺伝子の有無を確認し、低pI型TM2タンパク発現用のベクターTM2 K26A/pTrc99A、TM2 K73Q/pTrc99A、TM2 K33TK37A、TM2 R104E/pTrc99A、TM2 K141E/pTrc99A、TM2 K19T/pTrc99Aを完成させた。さらに、TM2 R104EK141Eをコードする遺伝子の構築は、ベクターTM2 R104E/pTrc99Aを鋳型として、プライマーTm2NtermPciとTm2 K141E Bamを用いたPCRによって変異を導入した。また、TM2 K33TK37AR104Eをコードする遺伝子の構築は、ベクターTM2 K33TK37A/pTrc99Aを鋳型として、プライマーTm2NtermPciとTm2 K141E Bamを用いたPCRによって変異を導入し、上記と同様の方法でクローニングした。
1−4) 低pI型 TM2の大腸菌発現
各低pI型TM2/pTrc99Aにより形質転換した大腸菌 TB1を、抗生物質アンピシリン(最終濃度100μg/mL)を含むLB培地6mLに接種し、OD600における吸光度が0.5に達するまで37℃で振とう培養した。その後、1mM IPTGを添加し、さらに37℃で一晩振とう培養した。培養液1mLから遠心にて大腸菌を集菌し、20 mM リン酸緩衝液(pH7)400uL中に懸濁後、菌体を超音波により破砕した。破砕液を遠心(15000rpm)し、その上清を可溶性画分とした。
この可溶性画分についてウエスタンブロッティング解析を行った。可溶性画分と2×SDS sample buffer(250mM Tris−HCl pH 6.8, 20% 2−メルカプトエタノール, 20% SDS, 20% グルセロール)を等量ずつ混和し、95℃で10分間加熱したものをSDS−PAGEで展開し、ウエスタンブロッティング解析に用いた。1次抗体としてウサギ抗TM2抗体(PCT/JP2006/326260)を用いた。さらに、2次抗体としてアルカリフォスファターゼ標識抗ウサギ IgG抗体(BIO−RAD社製)を用いた。ウエスタンブロッティング解析の結果、低pI TM2/pTrc99Aで形質転換した大腸菌いずれにおいても、低pI型TM2遺伝子を挿入していないベクターpTrc99Aで形質転換した大腸菌にはない、15.5kDa付近のバンドが検出された。これらのバンドのサイズは、TM2のアミノ酸配列から予測される単量体の分子量15.5kDaと一致した。
続いて、Bayerら(1996,Electrophoresis 17(8) 1319−24)の方法に従って、非変性状態のTM2変異体が四量体を形成しているか否かを確認した。つまり、DTTやメルカプトエタノール等の還元剤を添加していないSDS sample bufferとTM2変異体可溶性画分を混和し、加熱処理を加えずにSDS−PAGE解析を行なった。その結果、いずれのTM2変異体も野生型TM2と同様のサイズにバンドが検出されたため、四量体を形成していた。また、培養液1L当たりの可溶性低pI型TM2タンパクの発現量は、TM2 K26A、TM2 K73Q、TM2 R104E、TM2 K141E、TM2 R104EK141Eはいずれも20mgであった。これは、野生型TM2の発現量と同等であった。
一方、これらの変異体と比較してTM2K33TK37A、TM2 K33TK37AR104E、TM2 K19Tは発現量が2mgであった。
1−5) 蛍光ビオチンによる活性測定
大腸菌発現した各低pI型TM2のビオチン結合能を、Biochim. Biophys. Acta, 1427, 44−48(1999)の方法に従って確認した。150μL Assay Buffer(50mM NaHPO4、100mM NaCl、1mM EDTA(pH7.5))中に、25mL培養液から1.5mLの20mM リン酸緩衝液(pH7)で各低pI型TM2を抽出した抽出液を段階的に含むように調整した。この溶液に10pmol/μL 蛍光ビオチン溶液(biotin−4−fluorescein: Molecular Probe社製)50μL(500pmol)を混和し、室温で10分間反応後、Infinite M200(TECAN社製)を用いてEx=460nm、Em=525nmにて蛍光強度を測定した。
その結果、低pI型TM2抽出液の添加量に比例して、蛍光強度が低下した。このことから、塩基性アミノ酸を中性および酸性アミノ酸に置換した全長TM2は、ビオチン様化合物と結合することが確認された。
1−6) 低pI型TM2の精製
低pI型TM2の精製は、Hofmann et al.(1980)の方法に従い、2−iminobiotin agarose(Sigma社製)を充填したカラムを用いて行った。各低pI型TM2の発現誘導をかけた大腸菌培養液25mLを50mM NaClを含む50mM CAPS(pH11) 1.5mLで懸濁し、超音波破砕後の上清を2−iminobiotin agarose 500μLを充填したカラムに供した。500mM NaClを含む50mM CAPS(pH11)でカラムをよく洗浄した後、50mM NHOAC(pH4)で溶出した。各低pI型TM2の精製タンパク質量は、それぞれの大腸菌発現量と同程度であり、精製度は95%以上であった。
1−7) ビオチン結合能の測定
Biacore(登録商標) 3000(Biacore社製。表面プラズモン共鳴を原理としたバイオセンサー)を用いて、低pI型TM2のビオチン結合試験を実施した。センサーチップCM5(Biacore社製)上に、EZ−Link(R) NHS−LC−Biotin(22.4Å)またはEZ−Link(登録商標) NHS−LCLC−Biotin(30.5Å)(両者ともPIERCE社製)でビオチン化したウシ血清アルブミン(BSA)を、アミンカップリング法を用いて固定した。ランニング緩衝液にはHBS−EP(Biacore社製)を使用し、各低pI型TM2を25℃、流速20μl/minで40μl(2分間)ずつインジェクションした。
得られたセンサーグラムから解析ソフトウェア BIAevaluation version 4.1を用いて結合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)、解離定数(KD)を算出した。この結果を表2に示す。表中の( )内の値はBiacore 3000の測定限界以下(ka<5×10−6)であることを示す。いずれの低pI型TM2とも、ビオチンとの特異的な結合を示し、これらの変異はビオチン結合力に大きな影響を与えていないことが示された。
表2 低pI型TM2とビオチンの相互作用解析
1−8) 等電点電気泳動
低pI型TM2の等電点を、XCell SureLock Mini−Cell(Invitrogen社製)を用いた等電点電気泳動にて測定した。取扱説明書の記載に従い、各低pI型TM2 500ngずつをIEF Sample Buffer pH 3−10(2×)(Invitrogen社製)と混和し、pHレンジ 3−10のポリアクリルアミドゲル(pH3−10 IEF Gel(Invitrogen社製))へ添加した。100Vで1時間、200Vで1時間、500Vで45分間の順に電圧を上げながら電気泳動を行った。
泳動後、ゲルをブロッティング緩衝液(0.7% 酢酸)中で10分間振とうした後、XCell ll Blot Module(Invitrogen社製)を用い、PVDF膜へ10Vで1時間転写した。このPVDF膜に、1次抗体としてウサギ抗TM2抗体(PCT/JP2006/326260)、2次抗体としてアルカリフォスファターゼ標識抗ウサギ IgG抗体(BIO−RAD社製)を反応させ、Alkaline Phosphatase Substrate Kit II <VECTOR Black>(VECTRO社製)でバンドの検出を行った。
その結果、変異を導入したTM2の等電点はいずれも、野生型のTM2より1以上低下していることが明らかになった。等電点電気泳動によるpIの実測値、およびGenetyxによるpIの算出値を以下の表3に示す。
表3 低pI型TM2の等電点
1−9) ヒト血清に対する非特異結合
本実施例では、ヒト血清に対する非特異的結合を、血清タンパク質固定化磁性ビーズに対する低pI型TM2の非特異吸着性として調べた。具体的には、低pI型TM2の非特異結合性を検討するために、磁性ビーズにヒト血清タンパク質を共有結合させ、そのビーズに吸着する低pI型TM2量を測定した。検討する低pI型TM2としては、大腸菌で発現量の高かったTM2 K26A、TM2 K73Q、TM2 R104E、TM2 K141E、TM2 R104EK141Eを選択した。
ヒト血清タンパク質と磁性ビーズの結合は以下の方法で行った。カルボキシル基で表面をコートされた磁性ビーズ(Dynabeads M−270 Carboxylic Acid, Dynal社製)210μlを0.01N 水酸化ナトリウム210μLで10分間洗浄後、さらに超純水 210μLで10分間3回洗浄した。洗浄済みの磁性ビーズに、冷超純水で溶解した1−Ethyl−3−(3−Dimethylaminopropyl)carbodiimide Hydrochloride(EDC)(PIERCE社製)を最終濃度0.2Mになるように添加し30分間、室温で振とうした。その後、冷超純水210μl、続いて50mM MES緩衝液(pH5.0) 210μLで磁性ビーズを洗浄した。
この磁性ビーズ に50mM MES緩衝液(pH 5.0)で透析した1mg/mLヒト血清タンパク質(CHEMICON社製) 210μLを添加した。室温で30分間振とうさせることにより、共有結合にてヒト血清タンパク質と磁性ビーズを結合させた。磁石で磁性ビーズを回収し、上清を除去した。次に50mM トリス緩衝液(pH 7.0)210μlでビーズの未反応の活性基を消去後、0.5% BSA、0.1% Tween 20を含むPBS緩衝液 420μlで磁性ビーズをブロッキングした。PBS緩衝液210μlで磁性ビーズを懸濁し、ヒト血清タンパク質固定化磁性ビーズを完成させた。
この磁性ビーズ7μLと0.56μg/mLの各低pI型TM2 100μLを混和し、室温で1時間反応させた。磁石で磁性ビーズを回収し、上清を除去した。続いて、500mM 塩化ナトリウムを含む20mM リン酸カリウム緩衝液500μLで洗浄を行った後、磁性ビーズに2×SDS sample buffer(250mM Tris−HCl pH 6.8, 20% 2−メルカプトエタノール, 20% SDS, 20% glycerol)20μLを添加し、95℃で20分間加熱することによって磁性ビーズに低pI型TM2を遊離させた。
このサンプルをSDS−PAGE後、ウエスタンブロッティング解析することによって、低pI型TM2の存在量を確認した。1次抗体としてウサギ抗タマビジン2抗体、2次抗体としてアルカリホスファターゼ標識ヤギ抗ウサギIgG抗体を使用した。Alkaline Phosphatase Substrate Kit II <VECTOR Black>(VECTRO社製)でバンドの検出を行ない、Las−3000(FUJIFILM)でそれらのバンドの定量化をした。結果を図1に示す。
図1に示されるように、野生型TM2と比較して、ヒト血清タンパク質に吸着した割合は、TM2 R104Eは1割減、TM2 K26Aは3割減、K73QとK141Eは4割減、TM2 R104EK141Eは7割減であり、K26A、K73Q、K141E、K104EK141EはTM2より有意に非特異結合が低かった。
1−10) フィブロネクチンに対する非特異結合
フィブロネクチンをマイクロプレートに固相化し、各低pI型TM2の結合性を比較した。New ELISAプレート専用固定化溶液で50μg/mlに調整したフィブロネクチンをNew ELISAプレート(住友ベークライト社)に50μlずつ添加し、37℃で4時間振とうすることによって固相化した。その後、0.1% Triton X−100含有PBS 300μlで3回洗浄し、自然乾燥させた。
ここに50μg/ml TM2、K26A、K73Q、R104E、K141E、R104EK141Eを50μl添加し、室温で1時間静置した。300μL/well PBST(0.1% Tween 20を含むPBS緩衝液)で3回洗浄後、0.5% BSAを含むPBSTで5000倍希釈したビオチン化HRPを50μL/well添加し、室温で1時間反応を行った。続いて300μL/well PBSTで3回洗浄後、50μL/well 1−Step Ultra TMB−ELISAで発色させた。50μL/well 2M 硫酸で発色を停止させた後、450nmにおける吸光度をInfinite 200にて測定した。その結果、いずれの低pI型TM2もTM2よりフィブロネクチンに対する結合性が有意に低下した。
結果を図2に示す。図2に示されるように、フィブロネクチンとの結合抑制効果はR104EK141E、K141E、R104E、K26A、K73Qの順に高かった。
1−11) DNAに対する非特異結合
低pI型TM2のDNAに対する非特異結合性を解析した。
2×SSC緩衝液で10μgから1μgまで段階希釈したサケ精子DNAをアルカリ変性させ、Bio−Dot SF(BIO−RAD)を用いて、Hybond N+膜(Amersham Biosceinces)に吸着させた。5×デンハルト液(0.1%BSA、0.1%フィコール、0.1%ポロビニルプロリドン)で膜をブロッキングした後、25μg/mLの各低pI型TM2、野生型TM2に室温で90分間浸した。その後、膜をTTBS緩衝液(0.05%Tween20を含むTBS緩衝液)によって、室温で5分間3回洗浄した。3%スキムミルク、0.1%Tween20を含むTBS緩衝液で1時間、膜をブロッキングした。3%スキムミルク、0.1%Tween20を含むTBS緩衝液で5000倍希釈したBiotinylated Horseradise Peroxidase(Vector社製)を室温で1時間反応させた。再び0.1% Tween 20含有TBSで膜を洗浄後、ECL(Amasham社製)の試薬1と試薬2を等量混和した溶液中で膜を1分間振とうさせた。その後、Las3000(FUJIFILM)を用いてルミノール反応の検出を行った。
結果を図3に示す。図3に示されるように、10μg DNAに対してTM2のみが弱く結合したものの、低pI変異を導入した全てのTM2においては、検出限界以下であった。よって、低pI型TM2のDNAに対する非特異結合性は有意に低下することが示された。
実施例1の結果に基づき、本発明の低pI型改変TM2の特性を以下の表4にまとめた。
表4 低pI型改変TM2の特性のまとめ
実施例2 高アフィニティ型TM2の構築と分析
2−1) 高アフィニティ型TM2の構築
ビオチンに対する親和性を高めることができるかどうか検証するため、アミノ酸変異をTM2に導入した。
ストレプトアビジンとして、streptmyces violaceusのストレプトアビジン v2(寄託番号:Q53533, Bayer et al. (1995) Biochim Biophys Acta 1263:p.60−66)、ストレプトアビジン v1(寄託番号:Q53532)、streptmyces avidiniiのストレプトアビジン(寄託番号:P22629, Argarana et al. (1986) Nucleic Acids Res 14:p.1871−1882)などが知られている。WO02/072817に記載されているように、これらのストレプトアビジンとTM2タンパク質のアミノ酸配列の同一性は、各々50%、48%、48%と、約50%程度である。
しかしながら本発明者らは、TM2タンパク質がビオチン結合性を維持するため、あるいは、より高いビオチン結合性を取得するためには、ストレプトアビジンと類似した構造を有する必要性があるのではと考えた。ストレプトアビジンのビオチンとの結合に重要な役割を果たしていると考えられるトリプトファン残基、水素結合に関与する残基(Qureshi et al.(2001),J. Biol. Chem. 276(49),p.46422−46428)について、ストレプトアビジンとTM2のアミノ酸配列を比較した。
その結果、ビオチンとの水素結合に関与する残基のうち、ストレプトアビジン配列の49番目のアスパラギンが、TM2配列における該当アミノ酸(40番目のアスパラギン酸)と異なっていることを見出した。このTM2のD40をストレプトアビジン型のアスパラギンに改変し、アフィニティが向上するかどうかを確認した。
まず、高アフィニティ型TM2を構築するために、上記の変異を導入するようなプライマーを設計した。TM2遺伝子の5’部分と、その上流にPci I制限酵素切断部位(ACATGT)をコードする配列からなるプライマーTm2NtermPci、TM2遺伝子の3’部分と、その下流にBamH I制限酵素切断部位(GGATCC)をコードする配列からなるプライマーTm2CtermBamは、上述した通りである。各変異体についてのミスマッチコドンを含む一連のセンスプライマー、およびアンチセンスプライマーは、それぞれ以下の通りである(配列番号38−39)。
表5 高アフィニティ型TM2構築用プライマー
制限酵素認識部位を下線で示し、変異導入部位を点線で示した。
2−2) PCR、クローニング
上記のように40番目のアスパラギン酸をアスパラギンに置換したTM2変異体(以下、「TM2 D40N」、塩基配列は配列番号19に記載、アミノ酸配列は配列番号20に記載)を構築した。
このTM2変異体をコードする遺伝子を構築するために2段階のPCRを繰り返し行った。最初の1段階目のPCRは、TM2遺伝子がベクターpTrc99Aに組み込まれたプラスミドを鋳型にして、プライマー Tm2NtermPciと各変異体のミスマッチコドンを含むアンチセンスプライマーTM2 SA D40N Rを用いて5’部分の増幅を、ミスマッチコドンを含むセンスプライマーTM2 SAD40N FとTm2CtermBamを用いて3’部分の増幅を、それぞれ行った。
PCR反応条件は、50μLの反応液中に鋳型DNAを500ng、10×Pyrobest buffer(Takara社)を5μL、2.5mM dNTPを4μL、プライマーを各25pmoles、5U/μL Pyrobest DNA polymerase(Takara社製)を0.5μL添加し、プログラムテンプコントロールシステムPC−700(ASTEK)を用いて、96℃−3分を1回、96℃−1分、55℃−1分、72℃−2分を10回、72℃−6分を1回とした。その結果、5’部分において想定されるサイズのPCR産物が得られた。これらのPCR産物を、低融点アガロース(SeaPlaqueGTG)を用いてTAE緩衝液中でアガロース電気泳動を行い、上述の通りDNA断片を精製した。
この断片を鋳型にして、プライマーTm2NtermPciとTm2CtermBamを用いて、2段階目のPCRを行った。反応条件は1段階目と同様とした。得られた430 bpの高アフィニティ型TM2遺伝子断片をベクターpCR4 Blunt TOPO(Invitrogen社製)にクローニングした。方法は、上述と同様である。その結果TM2 D40Nタンパク発現用のベクターTM2 D40N/pTrc99Aを完成させた。
2−3) 高アフィニティ型TM2の大腸菌発現
2−2)で作製したTM2変異体を挿入したpTrc99Aベクターにより形質転換した大腸菌 TB1を、抗生物質アンピシリン(最終濃度100μg/mL)を含むLB培地6mLに接種し、OD600における吸光度が0.5に達するまで37℃で振とう培養した。
その後、1mM IPTGを添加し、さらに37℃で一晩振とう培養した。培養液1mLから遠心にて大腸菌を集菌し、20mM リン酸緩衝液(pH7)400μL中に懸濁後、菌体を超音波により破砕した。破砕液を遠心(15000rpm)し、その上清を可溶性画分とした。この可溶性画分についてウエスタンブロッティング解析を行った。可溶性画分と2×SDS sample bufferを等量混和し、95℃で10分間加熱後したものをSDS−PAGEで展開し、ウエスタンブロッティング解析に用いた。1次抗体としてウサギ抗TM2抗体(PCT/JP2006/326260)を用いた。さらに、2次抗体としてアルカリフォスファターゼ標識抗ウサギ IgG抗体(BIO−RAD社製)を用いた。
その結果TM2 D40Nを挿入したpTrc99Aベクターで形質転換した大腸菌において、TM2変異体を挿入していないpTrc99Aベクターで形質転換した大腸菌にはない、15.5kDa付近のバンドが検出された。これらのサイズは、TM2のアミノ酸配列から予測される単量体の分子量15.5kDaと一致した。続いて、低pI型TM2と同様に、非変性状態の高アフィニティ型TM2が四量体を形成しているか否かをBayer et al. (1996), Electrophoresis. 17(8) 1319−1324)の方法に従って確認した。その結果、高アフィニティ型TM2も野生型TM2と同様のサイズにバンドが検出されたため、四量体を形成していることが明らかになった。また、培養液1L当たりの可溶性TM2 D40Nタンパクの発現量は20mgであった。
2−4) 高アフィニティ型TM2の精製
高アフィニティ型TM2の精製は、上述の通りHofmann et al.(1980)の方法に従って行なった。その結果、TM2変異体の精製タンパク質量は大腸菌発現量と同程度であり、精製度は95%以上であった。
2−5) 蛍光ビオチンによる活性測定
精製したTM2変異体のビオチン結合能を、Biochim. Biophys. Acta, 1427, 44−48(1999)の方法に従って確認した。その結果、TM2変異体溶液の添加量に比例して、蛍光強度が低下した。このことから、D40Nの変異はTM2とビオチン様化合物との結合を大きく阻害しないことが確認された。
2−6) 等電点電気泳動
高アフィニティ型TM2の等電点を、XCell SureLock Mini−Cell(Invitrogen)を用いた等電点電気泳動にて測定した。取扱説明書の記載に従い、高アフィニティ型TM2 200ng用いて解析をした結果を表6に示す。塩基性よりのアミノ酸に置換したTM2 D40Nは、等電点電気泳動においても、野生型TM2の等電点を上回っていた。
表6 高アフィニティ型TM2の等電点
2−7) ビオチン結合能の測定
Biacore 3000(Biacore社製)を用いて、高アフィニティ型TM2のイミノビオチン(Iminobiotin)結合試験、ならびにビオチン結合試験を実施し、分子間相互作用の分析を行った。
2−7−1)イミノビオチン結合試験
センサーチップに貼付するリガンドとして用いるTM2もしくは高アフィニティ型TM2は、常法に従い2−Iminobiotin agaroseで精製し20mM KPi(pH 7)に一晩透析した。これらの試料を10mM 酢酸緩衝液 pH5(BIAcore社製)に50μg/ml程度になるように調整した。
固定化は、25℃、流速10μl/min、HBS−EP(Biacore社製)をランニングbufferとして行った。センサーチップCM5(Biacore社製)上に上記のTM2もしくはTM2変異体を、アミンカップリング法を用いて4000〜8000RU程度固定した。活性化時間は10分とした。
特異的相互作用の測定は、イミノビオチンBSAをアナライト(流路系に流す物質)として、25℃、流速20μl/min、CAPS buffer(50mM CAPS、150mM NaCl、0.005% Tween20、pH11)をランニングbufferとして行った。イミノビオチンBSAは以下の様に作成した。高精製度のBSA(Sigma)2mgとNHS−Iminobiotin(イミノビオチン)(Pierce)1mgを1mlの50mM ホウ酸ナトリウム pH8.0中で溶解し、4℃で2時間インキュベーションした。これを透析チューブ(MWCO 6−8,000)に入れ、50mM 炭酸ナトリウム pH6.7に対して4℃で一晩透析した。こうして作成したイミノビオチン−BSAコンジュゲート(MW 67kDa,30μM)をBiacore(登録商標)バイオセンサーのアナライトとした。イミノビオチン−BSAのインジェクション時間は2分間、解離時間は10分間とした。測定は、再生操作を行わず、低濃度から段階的に濃度を上げて行った。まず目的のタンパク質を固定化したフローセルに、ランニングbufferで9.375nM、18.75nM、37.5nM、75nM、150nM、300nM、600nMに希釈したBSAを低濃度側から40μl(2分間)インジェクションし、解離を測定した。続いて、同じフローセルに、上記の方法に従い作製したイミノビオチン−BSAを同様に測定した。
相互作用の見られたものについて、解析ソフトウェアBIAevaluation ver.4.1を用いて各定数の算出を行った。イミノビオチン−BSAの各濃度で得られたセンサグラムを、同濃度のBSAで得られたセンサグラムをリファレンスとして差し引きを行い、得られたセンサグラムに対して反応モデル1:1(Langmuir)bindingを用いて反応速度論的解析を行い、結合速度定数(ka)と解離速度定数(kd)を計算した。解離定数(KD)は、kd/kaから求めた。なお、再生操作を行わない場合、各濃度の測定を行うごとにRmax(アナライトの最大結合量)が減少するが、解析時にはRmaxをローカルフィッティングして濃度ごとに算出を行った。この時、1:1(Langmuir)bindingモデルに近似できた濃度(主に18.75〜75nM)の結果のみを採用した。
その結果、TM2に比べTM2 D40Nは、イミノビオチンへの結合速度定数(ka)がおよそ40%上昇し、解離速度定数(kd)が45%低下した。結果としてKDがおよそ60%減少した。即ち、TM2 D40NはTM2に比べて、イミノビオチンへの親和性が2.5倍になった(表7)。
2−7−2)ビオチン結合試験
高精製度のBSA(Sigma)2mgとNHS−LC−ビオチン(Pierce)1mgを1mlの50mM ホウ酸ナトリウム pH8.0中で溶解し、4℃で2時間インキュベーションした。これを透析チューブ(MWCO 6−8,000)に入れ、50mM 炭酸ナトリウム pH6.7に対して4℃で一晩透析した。こうして作成したビオチン−LC−BSAコンジュゲート(MW 67kDa,30μM)をBiacore(登録商標)バイオセンサーのリガンドとした。一方、アナライトとしてTM2ならびに高アフィニティ型TM2(D40N)を、上述の様に2−Iminobiotin agaroseを用いて精製し、20mM KPi(pH7)に一晩透析し調製した。
ビオチン−LC−BSA、およびネガティブコントロールとしたBSAは、アミンカップリング法によってCM5センサーチップに固定化した。固定化量は、200RU程度になるように調節した。BSAを固定化したチップは、フローセル1と3に、ビオチン−LC−BSAを固体化したチップは、フローセル2と4に配置した。TM2は、フローセル1と2に、高アフィニティ型TM2(D40N)は、フローセル3と4に、流速20μl/minで2分間、ランニングバッファー[10mM HEPES pH7.4,150mM NaCl,3mM EDTA,0.005% Surfactantat20(Biacore Inc.)]中にロードした。
その後、60分間、サンプルの解離をモニターした。なお、結合したTM2ならびに高アフィニティ型TM2(D40N)を解離させることは不可能であったため、測定では再生操作を行わず、低濃度側から7段階の測定を行った(3.125、6.25、12.5、25、50、100、および200nM)。BSAのデータはレファレンスとして、BSA−LC−ビオチンのデータから差し引いた。測定は25℃で行った。得られたセンサーグラムから、解析ソフトウェア BIAevaluation ver.4.1を用いて、1:1結合モデルを用いて、反応速度論的解析を行い、結合速度定数(ka)と解離速度定数(kd)を計算した。解離定数(KD)は、kd/kaから求めた。なお、再生操作を行わない場合、各濃度の測定を行うごとにRmax(アナライトの最大結合量)が減少するが、解析時にはRmaxをローカルフィッティングして濃度ごとに算出を行った。また、1:1結合モデルに近似できたアナライト濃度のデータのみを採用した。
その結果、TM2に比べTM2 D40Nは、結合速度定数(ka)が上昇し、解離速度定数(kd)が低下した(表7)。
以上のことから、TM2 D40Nのビオチン結合能(親和性)が向上していることが示された。
表7 高アフィニティ型TM2とイミノビオチンならびにビオチンとの相互作用解析
実施例2の結果に基づき、本発明の高アフィニティ型TM2の特性を以下の表8にまとめた。
表8 高アフィニティ型TM2の特性のまとめ
実施例3 低非特異結合・高アフィニティ型TM2の構築と分析
3−1) 低非特異結合・高アフィニティ型TM2(HALU TM2:高アフィニティ及び低い非特異性(High affinity and low unspecificity))の構築
非特異結合性を下げると同時に、ビオチンに対する親和性を高めるための変異をTM2に導入した。
非特異結合性を下げるための変異は、実施例1の結果に鑑み、非特異結合性を下げるアミノ酸変異として、R104EとK141Eの変異を導入した。また、ビオチンに対する親和性を高めるための変異は、実施例2のビオチン結合能の測定の結果からD40Nの変異を導入した。つまり、D40Nに加えR104Eの変異を同時に有するTM2(以下「TM2 D40NR104E」、塩基配列は配列番号21に記載、アミノ酸配列は配列番号22に記載)と、R104EK141Eの変異を同時に有するTM2(以下、「TM2 D40NR104EK141E」、塩基配列は配列番号23に記載、アミノ酸配列は配列番号24に記載)を構築した。
3−2) PCR、クローニング
HALU TM2を構築するためのプライマーは、上述した各変異を導入する際に用いたものを使用した。また、PCRの条件やクローニングについても上述と同様の方法で実施した。
TM2 D40NR104Eをコードする遺伝子の構築は、ベクターTM2 D40N/pTrc99Aを鋳型として、プライマーTm2NtermPci とTm2 R104E R、Tm2 R104E FとTm2CtermBamを用いて2度のPCR反応によって変異を導入し、TM2 D40NR104Eタンパク発現用ベクターTM2 D40NR104E/pTrc99Aを完成させた。TM2 D40NR104EK141Eをコードする遺伝子の構築は、ベクターTM2 D40NR104E/pTrc99Aを鋳型として、プライマーTm2NtermPci とTm2 K141E Bamを用いて1度のPCR反応によって変異を導入し、TM2 D40NR104EK141Eタンパク発現用のベクターTM2 D40NR104EK141E/pTrc99Aを完成させた。
3−3) HALU TM2の大腸菌発現
各TM2変異体を挿入したpTrc99Aベクターにより形質転換した大腸菌 TB1を、抗生物質アンピシリン(最終濃度100μg/mL)を含むLB培地6mLに接種し、OD600における吸光度が0.5に達するまで37℃、または25℃で振とう培養した。その後、1mM IPTGを添加し、さらに37℃、または25℃で一晩振とう培養した。培養液1mLから遠心にて大腸菌を集菌し、20mM リン酸緩衝液(pH7)400uL中に懸濁後、菌体を超音波により破砕した。破砕液を遠心(15000rpm)し、その上清を可溶性画分とした。この可溶性画分について2×SDS sample bufferを等量混和し、95℃で10分間加熱後した。SDS−PAGEでタンパク質を展開し、その後CBB染色によってタンパク質の検出を行なった。
その結果、TM2変異体を挿入したpTrc99Aベクターで形質転換した大腸菌いずれにおいても、TM2変異体を挿入していないpTrc99Aベクターで形質転換した大腸菌にはない15.5kDa付近のバンドが検出された。これらのサイズは、TM2のアミノ酸配列から予測される単量体の分子量15.5kDaと一致した。続いて、低pI型TM2、高アフィニティ型TM2と同様に、非変性状態のHALU TM2が四量体を形成しているか否かをBayer et al. (1996,Electrophoresis. 17(8) 1319−24)の方法に従って確認した。その結果、HALU TM2も野生型TM2と同様のサイズにバンドが検出されたため、四量体を形成していることが明らかになった。また、培養液1L当たりの可溶性TM2変異体タンパク質の発現量は、TM2 D40NR104Eは37℃培養で24mg、TM2 D40NR104EK141Eは37℃培養で10mg、TM2 D40NR104Eは25℃培養で32mgであった。TM2 D40NR104EK141Eは、宿主をBL21(DE3)に変更することによって25℃培養で可溶性の発現量が43mgに増加した。
3−4) HALU TM2の精製
HALU TM2の精製は、上述の通りHofmann et al.(1980)の方法に従って行なった。その結果、各TM2変異体の精製タンパク質量は、それぞれのタンパク質発現量と同程度であり、精製度は90%以上であった。
3−5) 蛍光ビオチンによる活性測定
精製した各TM2変異体のビオチン結合能を、Biochim. Biophys. Acta, 1427, 44−48(1999)の方法に従って確認した。その結果、全てのHALU TM2変異体溶液の添加量に比例して、蛍光強度が低下した。このことから、HALU TM2変異体はビオチン様化合物と結合することが確認された。
3−6) 等電点電気泳動
HALU TM2の等電点を、XCell SureLock Mini−Cell(Invitrogen)を用いた等電点電気泳動にて測定した。取り扱い説明書の記載に従い、各HALU TM2 4μgを用い、CBB染色によってバンドを検出した。結果を表9に示す。TM2 D40Nの実測等電点は9.7であったが、R104Eの変異を加えることによって8.9まで下がり、さらにK141Eの変異を加えることによって7.3−7.5まで下がることが明らかになった。
表9 HALU TM2の等電点
3−7) ビオチン結合能の測定
Biacore 3000(Biacore社製)を用いて、高アフィニティ型TM2のビオチン結合試験を実施した。
リガンドに用いるビオチンBSAは上述の2−7−2)の様に調製した。一方アナライトとして用いたTM2もしくはHALU TM2は、常法に従い2−Iminobiotin agaroseで精製し20MM KPi(pH 7)に一晩透析した。アナライトを10mM 酢酸緩衝液 pH5(BIAcore社製)に50μg/ml程度になるように調整した。
リガンドの固定化、アナライトとの特異的相互作用の測定、及びその解析は、2−7−2)と同様に行った。その結果、TM2に比べHALU TM2は両者とも、ビオチンに対する結合速度定数(ka)が上昇した。
また、TM2 D40NR104EK141Eに関しては解離速度定数(kd)が低下し、よりビオチン結合能が向上していることが示された。
表10 高アフィニティTM2とビオチンの相互作用解析
3−8) HALU TM2タンパク質構造の熱安定性
0.2μg/μLに調整したTM2変異体を10μL(2μg)ずつ室温、50、60、70、80、90、99℃で20分間加熱した。続いて、15000rpmで10分間遠心し、上清の可溶性タンパク質を等量の2×SDS サンプルバッファー(250mM Tris−HCl pH6.8,20% 2−メルカプトエタノール,20%SDS,20%グリセロール)と懸濁し、95℃で10分間加熱後、SDS−PAGEを行った。タンパク質バンドはCBB染色によって検出した。Las−3000(FUJIFILM)を用いて定量マーカー(LMW ELECTROPHORESIS CALIBRATION KIT; Pharmacia Biotech)をもとに検量線を作成し、タンパク質バンドを定量化した。
その結果、D40NR104Eの50%のタンパク質が消失する温度は78℃であった。一方、D40NR104EK141Eは、99℃加熱でも78%のタンパク質が上清に残っていた。なお、50%のタンパク質が消失する温度はTM2において87.5℃、ストレプトアビジンは70℃であった。
3−9) HALU TM2のヒト血清に対する非特異結合
本実施例では、HALU TM2固定化磁性ビーズに対する血清タンパク質の非特異吸着性を調べた。
磁性ビーズ(Dynabeads M−270 Carboxylic Acid, Dynal社製)にTM2 D40NR104E、およびTM2 D40NR104EK141Eを、上述の1−9)の方法で共有結合させ、そのビーズに吸着するヒト血清タンパク質量を測定した。各HALU TM2の固定化量が10μg/100μl beadsになるように磁性ビーズを調製した。ヒト血清(CHEMICON社製)をPBS緩衝液で800倍希釈し、ここに固定化タンパク質量を調整したHALU TM2磁性ビーズ 50μlを添加し、室温で15分間転倒混和した。0.1% Tween 20を含むPBS緩衝液(PBST) 500μlで4回洗浄後、0.5% BSAを含むPBSTで5000倍希釈したHRP標識マウス抗ヒトIgG抗体 100μLを添加し、室温で15分間抗原抗体反応を行った。続いてPBST 500μlで5回洗浄後、1−Step Ultra TMB−ELISA 100μlで発色させた。 2M 硫酸 100μlで発色を停止させた後、磁石で磁性ビーズを回収し上清の450nmにおける吸光度をInfinite 200にて測定した。
結果を図4に示す。図4に示される通り、TM2 D40NR104E、TM2 D40NR104EK141Eともに、野生型TM2磁性ビーズより低い値を示した。
3−10) フィブロネクチンに対する非特異結合
HALU TM2においても、実施例1の1−10)と同様の方法でフィブロネクチンに対する非特異結合の実験を行なった。
その結果、TM2 D40NR104EK141Eもフィブロネクチンに対する結合性が極めて低く、TM2と比較してフィブロネクチンに対する結合性が有意に低下した(図5)。低pI TM2の中で、フィブロネクチンとの結合抑制効果が最も表れるTM2 R104EK141Eと比較して、D40NR104EK141Eは同等であった。
この結果より、D40N変異はR104EK141Eのフィブロネクチンとの結合に影響を与えないことが確認された。
3−11) DNAに対する非特異結合
HALU TM2のDNAに対する非特異結合性を、実施例1の1−11)の方法で解析した。その結果、10μg DNAに対して野生型TM2は弱く結合したが、TM2 D40NR104EK141Eは、TM2 R104EK141Eと同様に、検出限界以下であった(図6)。よって、D40N変異はDNAとの結合においても影響を与えないことが確認された。
実施例3の結果に基づき、本発明の低非特異結合・高アフィニティ型TM2の特性を以下の表11にまとめた。
表11 低非特異結合・高アフィニティ型TM2の特性のまとめ

Claims (12)

  1. 配列番号2に記載のアミノ酸配列、あるいはこの配列中に1から数個のアミノ酸変異を有するアミノ酸配列、又はこの配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、ビオチン結合活性を示すタンパク質において、以下のグループ
    1)配列番号2の104番目のアルギニン残基;
    2)配列番号2の141番目のリジン残基;
    3)配列番号2の26番目のリジン残基;及び
    4)配列番号2の73番目のリジン残基
    から選択される1または複数の残基が、酸性アミノ酸残基又は中性アミノ酸残基に置換されており、そして、
    以下の性質
    i)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質よりも、低い等電点を有する;
    ii)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質よりも、核酸及び/又はタンパク質に対する低い非特異的結合を示す;
    iii)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質よりも、低いフィブロネクチン結合性を示す;
    iv)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質よりも、高いビオチン結合性を示す;
    の1ないし全部を満たす、
    ことを特徴とする、改変型ビオチン結合タンパク質。
  2. 1)〜4)のいずれかのアミノ酸残基が、疎水性指標が2以下のアミノ酸残基に置換されている、請求項1に記載の改変型ビオチン結合タンパク質。
  3. 1)配列番号2の104番目のアルギニン残基、及び/又は、2)配列番号2の141番目のリジン残基が、酸性アミノ酸残基又は中性アミノ酸残基に置換されている、請求項1に記載の改変型ビオチン結合タンパク質。
  4. 1)配列番号2の104番目のアルギニン残基、及び/又は、2)配列番号2の141番目のリジン残基が、酸性アミノ酸残基に置換されている、請求項3に記載の改変型ビオチン結合タンパク質。
  5. 1)配列番号2の104番目のアルギニン残基、及び/又は、2)配列番号2の141番目のリジン残基が、グルタミン酸残基に置換されている、請求項3又は4に記載の改変型ビオチン結合タンパク質。
  6. さらに、配列番号2の40番目のアスパラギン酸残基がアスパラギン残基に置換されている、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の改変型ビオチン結合タンパク質。
  7. 配列番号2において、104番目のアルギニン残基がグルタミン酸残基に置換されており、そして、141番目のリジン残基がグルタミン酸残基に置換されている、改変型ビオチン結合タンパク質(R104E−K141E);
    配列番号2において、40番目のアスパラギン酸残基がアスパラギン残基に置換されており、そして、104番目のアルギニン残基がグルタミン酸残基に置換されている、改変型ビオチン結合タンパク質(D40N−R104E);
    配列番号2において、40番目のアスパラギン酸残基がアスパラギン残基に置換されており、そして、141番目のリジン残基がグルタミン酸残基に置換されている、改変型ビオチン結合タンパク質(D40N−K141E);並びに、
    配列番号2において、40番目のアスパラギン酸残基がアスパラギン残基に置換されており、104番目のアルギニン残基がグルタミン酸残基に置換されており、そして、141番目のリジン残基がグルタミン酸残基に置換されている、改変型ビオチン結合タンパク質(D40N−R104E−K141E)、
    からなるグループから選択される、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の改変型ビオチン結合タンパク質。
  8. 以下のa)−l)
    a)配列番号2の14番目のアスパラギン残基は改変されていない、あるいはグルタミン又はアスパラギン酸に置換されている;
    b)配列番号2の18番目のセリン残基は改変されていない、あるいはスレオニン又はチロシンに置換されている;
    c)配列番号2の34番目のチロシン残基は改変されていない、あるいはセリン、スレオニン又はフェニルアラニンに置換されている;
    d)配列番号2の36番目のセリン残基は改変されていない、あるいはスレオニン又はチロシンに置換されている;
    e)配列番号2の40番目のアスパラギン酸残基は改変されていない、あるいはアスパラギンに置換されている;
    f)配列番号2の69番目のトリプトファン残基は改変されていない;
    g)配列番号2の76番目のセリン残基は改変されていない、あるいはスレオニン又はチロシンに置換されている;
    h)配列番号2の78番目のスレオニン残基は改変されていない、あるいはセリン又はチロシンに置換されている;
    i)配列番号2の80番目のトリプトファン残基は改変されていない;
    j)配列番号2の96番目のトリプトファン残基は改変されていない;
    k)配列番号2の108番目のトリプトファン残基は改変されていない;
    そして、
    l)配列番号2の116番目のアスパラギン酸残基は改変されていない、あるいはグルタミン酸又はアスパラギンに置換されている
    の1ないし全ての条件を満たす、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の改変型ビオチン結合タンパク質。
  9. 配列番号2に記載のアミノ酸配列、あるいはこの配列中に1から数個のアミノ酸変異を有するアミノ酸配列、又はこの配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、ビオチン結合活性を示すタンパク質において、配列番号2の40番目のアスパラギン酸残基がアスパラギン残基に置換されており、そして、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質よりも、高いビオチン結合性を示す、改変型ビオチン結合タンパク質。
  10. 請求項1ないし9のいずれか1項に記載のタンパク質をコードする核酸。
  11. 請求項10に記載の核酸を含む、ベクター。
  12. 請求項1ないし9のいずれか1項に記載のタンパク質を固定化した担体。
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