以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比係数などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比係数が異なって表される場合もある。
また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る磁気記録ヘッドの構成を例示する模式図である。
すなわち、同図(a)は模式的斜視図であり、同図(b)は模式的側面図であり、同図(c)は模式的正面図である。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る磁気記録ヘッドの構成を例示する模式的斜視図である。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る磁気記録ヘッドが搭載されるヘッドスライダーの構成を例示する模式的斜視図である。
以下、まず、本実施形態に係る磁気記録ヘッドの概要と動作について図2及び図3を用いて説明する。なお、以下では、多粒子系の垂直磁気記録媒体に記録する場合を想定して、説明する。
図2に表したように、本実施形態に係る磁気記録ヘッド110は、主磁極61とスピントルク発振子10(積層構造体)とを備える。主磁極61とスピントルク発振子10の詳細については後述する。
主磁極61とスピントルク発振子10とは、書き込みヘッド部60に含まれる。
さらに、書き込みヘッド部60は、リターンパス(シールド)62をさらに含むことができる。
磁気記録ヘッド110には、さらに、再生ヘッド部70を設けることができる。
再生ヘッド部70は、第1磁気シールド層72aと、第2磁気シールド層72bと、第1磁気シールド層72aと第2磁気シールド層72bとの間に設けられた磁気再生素子71と、を含む。
上記の再生ヘッド部70の各要素、及び、上記の書き込みヘッド部60の各要素は、図示しないアルミナ等の絶縁体により分離される。
磁気再生素子71としては、GMR素子やTMR(Tunnel Magneto-Resistive effect)素子などを利用することが可能である。なお、再生分解能をあげるために、磁気再生素子71は、2枚の磁気シールド層、すなわち、第1及び第2磁気シールド層72a、72bの間に設置される。
図3に表したように、磁気記録ヘッド110は、ヘッドスライダー3に搭載される。ヘッドスライダー3は、Al2O3/TiCなどからなり、磁気ディスクなどの磁気記録媒体80の上を、浮上または接触しながら相対的に運動できるように設計され、製作される。 ヘッドスライダー3は、例えば、空気流入側3Aと空気流出側3Bとを有し、磁気記録ヘッド110は、空気流出側3Bの側面などに配置される。これにより、ヘッドスライダー3に搭載された磁気記録ヘッド110は、磁気記録媒体80の上を浮上または接触しながら相対的に運動する。
図2に表したように、磁気記録媒体80は、媒体基板82と、その上に設けられた磁気記録層81と、を有する。書き込みヘッド部60から印加される磁界により、磁気記録層81の磁化83が所定の方向に制御され、書き込みがなされる。なお、この時、磁気記録媒体80は、媒体移動方向85の方向に、磁気記録ヘッド110に対して相対的に移動する。一方、再生ヘッド部70は、磁気記録層81の磁化の方向を読み取る。
そして、スピントルク発振子10に駆動電子流を流すことにより、スピントルク発振子10から高周波磁界を発生させ、磁気記録媒体80を高周波磁界と共鳴させ、磁気記録媒体80の保磁力(Hc)を局所的に低下させ、高周波アシスト記録を行う。
図1に表したように、本実施形態に係る磁気記録ヘッド110は、主磁極61と積層構造体25とを備える。この積層構造体25はスピントルク発振子10となる。なお、本具体例は、磁気記録ヘッド110がリターンパス62をさらに備える例である。
主磁極61は、磁気記録媒体80に記録磁界を印加する。主磁極61は、磁気記録媒体80に対向する媒体対向面61a(第1面)と、媒体対向面と交わるSTO対向面61b(第2面)と、を有する。
積層構造体25は、主磁極61のSTO対向面61bに対向して設けられる。なお、この時、積層構造体25の全ての部分がSTO対向面61bに対向していなくても良く、積層構造体25の少なくとも一部がSTO対向面61bに対向して設けられれば良い。すなわち、積層構造体25は、STO対向面61bに対向して設けられた部分を有している。
積層構造体25は、発振層10a(第1磁性体層)と、スピン注入層30(第2磁性体層)と、発振層10aとスピン注入層30との間に設けられた中間層22と、を有する。
また、例えば、主磁極61と積層構造体25との間、及び主磁極61と積層構造体25の周囲には、絶縁体が埋め込まれている。積層構造体25は、例えば、媒体対向面61aを含む面においてこの絶縁層から露出される。本具体例では、発振層10aが、媒体対向面61aにおいて露出している。
積層構造体25には、主磁極61から磁界が印加され、積層構造体25は、スピントルク発振子10として機能する。
発振層10aの異方性エネルギー定数と発振層10aの体積との積は、スピン注入層30の異方性エネルギーとスピン注入層30の体積との積よりも小さく設定されている。
例えば、発振層10aの体積とスピン注入層30の体積が同じ場合は、発振層10aの保磁力はスピン注入層30よりも小さい。
また、発振層10aの保磁力は、主磁極61から印加される磁界より小さく設定され、スピン注入層30の保磁力は、主磁極61から印加される磁界より小さく設定されることが望ましい。この時、スピン注入層30の磁化方向と、主磁極61からの印加磁界方向とは略平行となる。その結果、主磁極61から発振層10aに印加される磁界と、スピン注入層30から発振層10aに印加されるスピントルクとが、主磁極61からの印加磁界方向に依存せず常につりあい、安定した発振が可能となる。このため、主磁極61が、「0」及び「1」のどちらを磁気記録媒体80に記録する場合にも、安定した高周波磁界アシスト記録が可能となる。
図1に例示した具体例では、スピントルク発振子10には、主磁極61からリターンパス62の方向への磁界(外部磁界Hex)が印加される。
そして、スピントルク発振子10に駆動電子流Jeを通電することにより、発振層10aから高周波磁界を発生させることができる。なお、このとき、発振層10aから中間層22を経由してスピン注入層30の方向に電子が通電される。
すなわち、スピントルク発振子10における電流の向きは、スピン注入層30から発振層10aに向けた方向である。なお、スピントルク発振子10への駆動電子流Jeの通電は、例えば、発振層10aの側に設けられた電極(図示しない)と、スピン注入層30の側に設けられた電極(図示しない)と、を介して行うことができる。これらの電極の少なくともいずれかは、主磁極61またはリターンパス62と兼用されても良い。
本実施形態に係る磁気記録ヘッド110においては、積層構造体25(スピントルク発振子10)の積層方向(すなわち、発振層10a、中間層22及びスピン注入層30の積層方向)は、主磁極61のSTO対向面61bに対して平行である、または、傾斜している。
ここで、「傾斜」とは、積層構造体25の積層方向が、STO対向面61bに対して平行でもなく、垂直でもない状態を表す。すなわち、上記の積層方向は、STO対向面61bに対して垂直ではない。
なお、本願明細書において、「平行」及び「垂直」は、それぞれ厳密な平行及び垂直の他、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、それぞれ実質的に平行及実質的に垂直であれば良い。
すなわち、本実施形態に係る磁気記録ヘッドにおいては、積層構造体25の積層方向は、STO対向面61bに対して、実質的に平行であるか、傾斜しており、実質的に垂直ではない。例えば、積層構造体25の積層方向と、STO対向面61bの法線と、のなす角度の絶対値が、5度よりも大きく、90度以下とすることができる。5度よりも大きく85度未満の場合が、積層方向がSTO対向面61bに対して傾斜している状態であり、85度以上90度以下が、積層方向がSTO対向面61bに対して平行である状態である。
ここで、本願明細書において、説明の便宜上、XYZ直交座標系を導入する。この座標系においては、媒体対向面61aの法線をZ軸方向とする。すなわち、媒体対向面61aはX−Y平面に対して平行である。そして、媒体対向面61aとSTO対向面61bとが交わる線分の方向をX軸方向とする。そして、X−Y平面内において主磁極61から積層構造体25に向かう方向をY軸方向とする。
本具体例では、媒体対向面61aはX−Y平面に対して平行であり、STO対向面61bがX−Z平面に対して平行である例である。すなわち、STO対向面61bの法線がY軸方向である例である。
そして、積層構造体25は、X−Z平面に対して平行な側面と、Y−Z平面に対して平行な側面と、X−Y平面に対して平行な上面と下面と、を有する直方体の形状を有しており、積層構造体25の積層方向はZ軸方向に対して平行である。
従って、積層構造体25(スピントルク発振子10)の積層方向はZ軸方向であり、STO対向面61bに対して平行である。
ただし、本発明はこれに限らず、後述するように、積層構造体25の積層方向は、STO対向面61bに対して平行、または、STO対向面61bに対して傾斜していれば良い。
例えば、上記の積層方向は、STO対向面61bに対して平行でありつつ、媒体対向面61aに対して垂直とすることができる。
または、上記の積層方向は、STO対向面61bに対して平行でありつつ、媒体対向面61aに対して傾斜しているとすることができる。
または、上記の積層方向は、STO対向面61bに対して平行でありつつ、媒体対向面61aに対しても平行とすることができる。
また、上記の積層方向は、STO対向面61bに対して傾斜しつつ、媒体対向面61aに対して垂直とすることができる。
また、上記の積層方向は、STO対向面61bに対して傾斜しつつ、媒体対向面61aに対しても傾斜しているとすることができる。
また、上記の積層方向は、STO対向面61bに対して傾斜しつつ、媒体抵抗面61aに対して平行とすることができる。
なお、磁気記録ヘッド110は、上記のうち、積層方向が、STO対向面61bに対して平行でありつつ、媒体対向面61aに対して垂直である例である。
本実施形態に係る磁気記録ヘッド110において、例えば、発振層10a及びスピン注入層30が、立方体であり、その立方体のそれぞれの辺の長さが20nmであるとする。そして、中間層22が、20nmの辺と20nmの辺と3nmの辺とを有する直方体であるとする。この時、スピントルク発振子10は、20nm×20nm×43nmの直方体となる。そして、スピントルク発振子10の主磁極61とリターンパス62とに挟まれている方向の長さt110は、20nmとなる。従って、主磁極61とリターンパス62との間の間隔は、20nmに近い値にすることができ、狭いライトギャップを実現できる。
(比較例)
図4は、比較例の磁気記録ヘッドの構成を例示する模式図である。
すなわち、同図(a)は模式的斜視図であり、同図(b)は模式的側面図であり、同図(c)は模式的正面図である。
図4に表したように、比較例の磁気記録ヘッド130においては、積層構造体25(スピントルク発振子10)の積層方向が、Y軸方向である。すなわち、積層方向は、主磁極61のSTO対向面61bに対して垂直である。
このような磁気記録ヘッド130において、スピントルク発振子10の発振層10a、スピン注入層30及び中間層22のそれぞれの大きさが、磁気記録ヘッド110と同じとすると、スピントルク発振子10の主磁極61とリターンパス62とに挟まれている方向の長さt130は、43nmとなり、主磁極61とリターンパス62との間の間隔は、43nmよりも大きくなる。このように、比較例の磁気記録ヘッド130においては、ライトギャップが広くなってしまう。
これに対し、既に説明したように、本実施形態に係る磁気記録ヘッド110によれば、記録密度を高めた高周波磁界アシスト記録を可能とする磁気記録ヘッドが提供できる。
図5は、本発明の第1の実施形態に係る磁気記録ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
すなわち、同図は、図1に例示した磁気記録ヘッド110において、積層構造体25の積層方向と、STO対向面61bの法線と、のなす角度θを変えた時の最小のライトギャップ幅Wminのシミュレーション結果を例示している。
すなわち、積層構造体25(スピントルク発振子10)が、20nm×20nm×43nmの直方体であるとし、積層構造体25の積層方向を、X軸を中心に角度θで回転し、そのときの積層構造体25のY軸方向の幅を計算した。その結果を例示したのが図5である。同図において、横軸は角度θを示し、縦軸は最小のライトギャップ幅Wminを示す。
図5において、角度θが0度の時が比較例の磁気記録ヘッド130に相当し、角度θが−90度または+90度の時が、本実施形態に係る磁気記録ヘッド110に相当する。
図5に表したように、θが50度〜90度の場合において、最小のライトギャップ幅Wminは、比較例の磁気記録ヘッド130の最小のライトギャップ幅Wminよりも小さくなる。そして、角度θが±90度、すなわち、積層方向がSTO対向面61bに対して平行である磁気記録ヘッド110の時に、最小のライトギャップ幅Wminは最も小さくなる。
このように、本実施形態に係る磁気記録ヘッド110においては、記録密度を高めた高周波磁界アシスト記録が可能となる。そして、積層構造体25の積層方向は、STO対向面61bに対して必ずしも平行でなくても良く、STO対向面61bに対して傾斜していても良い。この時、積層構造体25の積層方向と、STO対向面61bの法線と、のなす角度θは、50度〜90度に設定することで、比較例の磁気記録ヘッド130よりもライトギャップを小さくできる。すなわち、積層構造体25の積層方向をSTO対向面61bに対して傾斜させる場合は、積層構造体25の積層方向と、STO対向面61bの法線と、のなす角度θを50度〜90度に設定することが望ましい。また、製造条件等によるばらつきを含めると、角度θは、55度〜95度であることが望ましい。
ただし、上記は、積層構造体25の形状を一定として、積層構造体25をX軸を中心にして回転させた場合の結果であり、角度θの変化に対応させて積層構造体25の形状を変化させ、ライトギャップを縮小することもできる。例えば、積層構造体25が直方体である場合、Y−Z平面に平行な平面で切断した時の積層構造体25の形状は長方形である。この時、その長方形の対角線の長さを短くするように、長方形の対角部分を削った形状にすることで、角度θが50度未満の場合においても、磁気記録ヘッド130よりも最小のライトギャップを小さくできる。このように、本実施形態において、積層構造体25の積層方向と、STO対向面61bの法線と、のなす角度は、必ずしも50度〜90度に制限されない。
磁気記録媒体80へ印加される発振層10aからの高周波磁界の大きさは、媒体対向面61aに露出している発振層10aの面積に依存する。磁気記録ヘッド110においては、ライトギャップを狭くしつつ、発振層10aが媒体対向面61aに露出する面積は、比較例の磁気記録ヘッド130と同じである。従って、磁気記録ヘッド110においては、ライトギャップを狭くしつつ、発振層10aによる高周波磁界強度を比較例と同一にすることが可能となり、記録能力を劣化させずに記録密度を向上できる。
また、磁気記録ヘッド110の構成によれば、ライトギャップが一定の場合には、比較例の構成に比べて、発振層10aの媒体対向面61aでの露出面積の増大が可能となり、高周波磁界強度が向上し、記録能力が向上する。
なお、スピン注入層30の漏洩磁界が磁気記録媒体80に印加されると、主磁極61から磁気記録媒体80に印加され記録磁界をキャンセルし、磁気記録の効率が低下する。本実施形態に係る磁気記録ヘッド110においては、媒体対向面61aを含む面に対して、発振層10aの方がスピン注入層30よりも近接し、スピン注入層30と磁気記録媒体80との距離が長くなる。これにより、スピン注入層30の漏洩磁界が磁気記録媒体80に印加されることを抑制し、記録能力を向上させることができる。
そして、この構成によれば、スピン注入層30が媒体対向面61aから離れるため、主磁極61からスピン注入層30へ印加される磁界の分布が均一になる。この結果、スピン注入層30によって発生する磁界の分布が均一になり、ピンフリップ時に遅延なくスピン注入層30が均一に反転することができる。これによっても記録能力がさらに向上する。
なお、上記においては、説明を簡単にするために、スピントルク発振子10がモデル的に直方体である場合として説明したが、スピントルク発振子10の形状は任意である。
例えば、スピントルク発振子10は、各種の形状の柱状の形状を有することができ、例えば、その時、発振層10a、中間層22及びスピン注入層30のそれぞれにおいて、積層方向に垂直な平面における形状は任意であり、それぞれで異なっていても良い。また、発振層10aの中間層22とは反対側の面と、スピン注入層30の中間層22とは反対側の面とは、非平行であっても良く、スピントルク発振子10の外形も任意である。
発振層10a、中間層22及びスピン注入層30のそれぞれの層は、必ずしも厳密に平行でなくても良い。これらの層は、湾曲していても良い。
ここで、スピントルク発振子10(積層構造体25)の積層方向は、中間層22と発振層10aとの界面に対して垂直な方向とすることができる。なお、中間層22の層厚が一定の場合には、中間層22と発振層10aとの界面に対して垂直な方向と、中間層22とスピン注入層30との界面に対して垂直な方向とは一致する。もし、中間層22の層厚が一定でない場合には、積層構造体25の積層方向は、中間層22と発振層10aとの界面に対して垂直な方向と、中間層22とスピン注入層30との界面に対して垂直な方向と、の平均とされる。
なお、図1において、主磁極61からスピントルク発振子10に印加される外部磁界Hexが、Y軸方向の正の方向(主磁極61からリターンパス62に向けた方向)の磁界である場合が例示されているが、Y軸方向の負の方向(リターンパス62から主磁極61に向けた方向)の磁界としても良い。
なお、発振層10aにおける磁化容易軸は、膜面(積層方向に対して垂直な面)に対して垂直でも良く、平行でも良く、任意である。また、スピン注入層30における磁化容易軸は、Y軸方向(主磁極61からリターンパス62に向けた方向またはその逆の方向)であることが望ましい。
磁気記録ヘッド110において、主磁極61及びリターンパス62には、FeCo、CoFe、CoNiFe、NiFe、CoZrNb、FeN、FeSi、FeAlSi等の、比較的、飽和磁束密度の大きい軟磁性材料を用いることができる。
また、主磁極61は、媒体対向面61aの側の部分と、それ以外の部分の材料を別々の材料としても良い。すなわち、例えば、磁気記録媒体80やスピントルク発振子10に発生する磁界を大きくするため、媒体対向面61aの側の部分の材料を、飽和磁束密度の特に大きいFeCo、CoNiFe、FeN等とし、それ以外の部分は、特に透磁率が高いNiFe等にしても良い。また、磁気記録媒体80やスピントルク発振子10に発生する磁界を大きくするため、主磁極61の媒体対向面61aの側の形状を、バックギャップ部より小さくしても良い。これにより、磁束が媒体対向面61aの側の部分に集中し、高強度の磁界を発生することが可能となる。
発振層10a及びスピン注入層30には、CoFe、CoNiFe、NiFe、CoZrNb、FeN、FeSi、FeAlSi、FeCoAl、FeCoSi、CoFeB等の、比較的、飽和磁束密度が大きく膜面内方向に磁気異方性を有する軟磁性層やCoIr等の膜面内方向に磁化が配向したCoCr系の磁性合金膜を用いることができる。
さらに、スピン注入層30及び発振層10aには、膜面に対して垂直方向に磁化配向したCoCrPt、CoCrTa、CoCrTaPt、CoCrTaNb等のCoCr系磁性、TbFeCo等のRE−TM系アモルファス合金磁性層、Co/Pd、Co/Pt、Co/Ni、CoCrTa/Pd等のCo人工格子磁性層、CoPt系やFePt系の合金磁性層、SmCo系合金磁性層など、垂直配向性に優れた材料も適宜用いることができる。
また、複数の上記材料を積層した積層膜を用いることもできる。積層膜を用いた場合には、発振層10aとスピン注入層30との飽和磁束密度(Bs)及び異方性磁界(Hk)を調整することができる。
発振層10aには、例えば、高Bs軟磁性材料(FeCo/NiFe積層膜)の厚さが5nm〜20nmの膜を用いることができる。この時、例えば、スピン注入層30には、膜面垂直方向に磁化配向したCoPt合金からなる厚さが2nm〜60nmの膜を用いることができる。
中間層22としては、Cu、Au、Agなどのスピン透過率の高い非磁性材料を用いることができる。中間層22の膜厚は、1原子層から3nm程度とすることができる。これにより発振層10aとスピン注入層30の交換結合を少なくすることが可能となる。
また、スピントルク発振子10の素子のサイズ(積層方向に対して垂直な平面で切断したときの断面の大きさ)は、10nm四方から100nm四方にすることが望ましく、素子形状も直方体だけでなく、円柱状や六角柱状としてもよい。
ただし、本発明は上記に限らず、発振層10a、スピン注入層30及び中間層22に用いられる材料及びこれらの大きさは任意である。
図6は、本発明の第1の実施形態に係る別の磁気記録ヘッドの構成を例示する模式図である。
すなわち、同図(a)は、磁気記録媒体80の側から磁気記録ヘッドみたときの下面図であり、同図(b)は、同図(a)のA−A’線断面図である。
図6に表したように、本実施形態に係る別の磁気記録ヘッド110aにおいては、主磁極61及びスピントルク発振子10の側面にサイドシールド64a及び64bが設けられている。
すなわち、磁気記録ヘッド110aは、主磁極61及び積層構造体25(スピントルク発振子10)の少なくともいずれかの側面、すなわち、主磁極61とスピントルク発振子10とが並ぶ方向と直交し、主磁極61の媒体対向面61aとは異なる面に対向して設けられたサイドシールド64a及び64bをさらに備えている。これ以外については、磁気記録ヘッド110と同様とすることができるので説明を省略する。
これにより、磁気記録媒体80の隣接記録トラックへの、主磁極61からの記録磁界の漏洩を抑制することができると供に、磁気記録媒体80の隣接記録トラックへの、発振層10aからの高周波磁界の漏洩を抑制することができる。その結果、記録トラックピッチをより狭くすることが可能となり、記録密度をさらに向上させることができる。
なお、このサイドシールド64a及び64bは、例えば、リターンパス62と供に、一体の形状であっても良い。
また、サイドシールド64a及び64bは、以下説明する本発明の実施形態に係る磁気記録ヘッドのいずれにおいても設けることができ、同様の効果を発揮する。
図7〜図15は、本発明の第1の実施形態に係る別の磁気記録ヘッドの構成を例示する模式図である。
すなわち、図7(a)〜図15(a)は模式的斜視図であり、図7(b)〜図15(b)は模式的側面図であり、図7(c)〜図15(c)は模式的正面図である。
図7、図8及び図9に表したように、本実施形態に係る別の磁気記録ヘッド111a、111b及び111cでは、積層構造体25の積層方向が、磁気記録ヘッド110に対してX軸を中心にして回転させられている。これ以外は、磁気記録ヘッド110と同様である。
図7に例示した磁気記録ヘッド111aでは、スピントルク発振子10の中間層22と発振層10aとの界面は、リターンパス62の側で媒体対向面61aを含む平面に近く、主磁極61の側で遠くなるように、積層方向がX軸を中心にして回転させられている。
一方、図8に例示した磁気記録ヘッド111bでは、積層方向が、磁気記録ヘッド111aの場合とは反対の方向に回転させられている。
なお、磁気記録ヘッド111a及び111bでは、発振層10aが磁気記録媒体80に対向する面は、主磁極61の媒体対向面61aと実質的に平行である。本具体例では、発振層10aが磁気記録媒体80に対向する面は、媒体対向面61aを含む面内に配置されている。そして、スピン注入層30の中間層22とは反対の面は、媒体対向面61aと実質的に平行である。
図9に表したように、磁気記録ヘッド111cにおいては、積層方向が、磁気記録ヘッド111aの場合とは反対の方向に回転させられている。そして、発振層10aが磁気記録媒体80に対向する側の一部の面、及び、スピン注入層30の中間層22とは反対の面は、主磁極61の媒体対向面61aに対して非平行である。発振層10aが磁気記録媒体80に対向する側の別の一部の面は、主磁極61の媒体対向面61aに対して平行である。
このように、積層方向が、X軸を中心に回転させられ、主磁極61のSTO対向面61bの法線に対して非平行でありつつ、媒体対向面61aとSTO対向面61bとが交わる線分の方向に対して非平行であれば、積層構造体25の形状(各辺の方向)は任意である。
すなわち、磁気記録ヘッド111a、111b及び111cにおいては、積層構造体25の積層方向は、STO対向面61bに対して傾斜している。
磁気記録ヘッド111a、111b及び111cにおいても、積層構造体25の積層方向がSTO対向面61bに対して傾斜しているので、比較例の磁気記録ヘッド130に対してライトギャップを縮小でき、記録密度を高めた高周波磁界アシスト記録が可能となる。
なお、図9に例示したように、発振層10aが磁気記録媒体80に対向する面が、媒体対向面61a(すなわち、磁気記録媒体80)に対して傾いている場合には、主磁極61の側の発振層10aの下部(中間層22とは反対の側の部分)が媒体対向面61aを含む平面に近接し、主磁極61とは反対の側(すなわちリターンパス62の側)の発振層10aの下部が媒体対向面61aを含む平面から離間している方が望ましい。これにより、発振層10aを主磁極61の側で磁気記録媒体80により近接させることができる。その結果、発振層10aの主磁極61の側の高周波磁界強度を保ったまま、発振層10aの隣接記録トラック方向で発生する高周波磁界強度を弱めることが可能となる。この結果、狭記録トラック化が可能となり、記録密度の向上が可能となる。
図10及び図11に表したように、本実施形態に係る別の磁気記録ヘッド111d及び111eにおいては、主磁極61のSTO対向面61bが媒体対向面61aに対して傾斜している。そして、リターンパス62がスピントルク発振子10に対向する面も、媒体対向面61aに対して傾斜している。
磁気記録ヘッド111dの場合には、主磁極61のSTO対向面61bとリターンパス62のスピントルク発振子に対向する面とが実質的に平行である。
磁気記録ヘッド111eの場合には、主磁極61のSTO対向面61bとリターンパス62のスピントルク発振子に対向する面とが非平行である。本具体例では、リターンパス62のスピントルク発振子10に対向する面の方が、主磁極61のSTO対向面61bよりも、大きな角度で媒体対向面61aの法線から傾斜している。
そして、磁気記録ヘッド111d及び111eにおいては、積層構造体25の積層方向は、磁気記録ヘッド110に対してX軸を中心にして回転させられており、主磁極61のSTO対向面61bに対して傾斜している。
なお、図11に例示した磁気記録ヘッド111eにおいては、積層構造体25の積層方向は、リターンパス62のスピントルク発振子10に対向する面に対して平行である。そして、積層構造体25の外形は、リターンパス62のスピントルク発振子10に対向する面に沿っている。
磁気記録ヘッド111dにおいては、積層構造体25の積層方向は、媒体対向面61aに対して傾斜しつつSTO対向面61bに対して平行である。そして、磁気記録ヘッド111eにおいては、積層構造体25の積層方向は、STO対向面61bに対して傾斜しつつ媒体対向面61aに対して傾斜している。
このような、磁気記録ヘッド111d及び111eも、積層構造体25の積層方向はSTO対向面61bに対して平行であるか傾斜しており、ライトギャップを縮小し、記録密度を高めた高周波磁界アシスト記録が可能となる。
磁気記録ヘッド111d及び111eにおいては、主磁極61とリターンパス62との間のギャップを、媒体対向面61aの法線に対して傾けたテーパードギャップ構造を有している。これにより、主磁極61からスピントルク発振子10に印加される磁界の強度が向上する。この結果、発振層10aにおける発振周波数が上昇する。さらに、主磁極61から磁気記録媒体80へ印加される記録磁界も増大する。このような発振周波数の上昇、及び、記録磁界の増大により、より高Kuかつ高Hkの磁気記録媒体80との共鳴、及び、より高Kuかつ高Hkの磁気記録媒体80への磁気記録が可能となる。この結果、記録密度がさらに向上する。
なお、磁気記録ヘッド111d及び111eにおいては、主磁極61の媒体対向面61aの法線に垂直な平面で切断したときの断面は、媒体対向面61aの側で小さく、媒体対向面61aから離れた部分は大きい。このように、主磁極61の断面を媒体対向面61aの側で小さくすることで、主磁極61から発生する磁界を集中させ、より記録密度を高めることができる。
また、上記のように、主磁極61の媒体対向面61aの法線に垂直な平面で切断したときの断面が、媒体対向面61aの側で小さく、媒体対向面61aから離れた部分は大きい構造、すなわち、主磁極61のSTO対向面61bが媒体対向面61aに対してテーパとなっている構造の場合に、積層構造体25の積層方向が、STO対向面61bに対して傾斜しつつ、媒体対向面61aに対して垂直である構成としても良い。この場合も、ライトギャップを縮小し、記録密度を高めた高周波磁界アシスト記録が可能となる。
図12及び図13に表したように、本実施形態に係る別の磁気記録ヘッド112a及び112bでは、積層構造体25の積層方向が、磁気記録ヘッド110に対してY軸を中心にして回転させられている。これ以外は、磁気記録ヘッド110と同様である。
磁気記録ヘッド112aでは、発振層10aが磁気記録媒体80に対向する面は、主磁極61の媒体対向面61aと実質的に平行である。本具体例では、発振層10aが磁気記録媒体80に対向する面は、媒体対向面61aを含む面内に配置されている。そして、スピン注入層30の中間層22とは反対の面は、媒体対向面61aと実質的に平行である。
磁気記録ヘッド112bにおいては、発振層10aが磁気記録媒体80に対向する側の一部の面、及び、スピン注入層30の中間層22とは反対の面は、主磁極61の媒体対向面61aに対して非平行である。発振層10aが磁気記録媒体80に対向する側の別の一部の面は、主磁極61の媒体対向面61aに対して平行である。
磁気記録ヘッド112a及び112bにおいては、積層構造体25の積層方向は、STO対向面61bに対して傾斜しつつ媒体対向面61aに対して平行である。
磁気記録ヘッド112a及び112bにおいても、積層構造体25の積層方向はSTO対向面61bの法線に対して傾斜しており、ライトギャップを縮小し、記録密度を高めた高周波磁界アシスト記録が可能となる。
なお、磁気記録ヘッド112a及び112bの例では、スピントルク発振子10の全体は主磁極61のSTO対向面61bには対向していない。すなわち、発振層10aはSTO対向面61bに対向しているが、スピン注入層30はSTO対向面61bに対向していない部分を有している。
磁気記録ヘッド112a及び112bの場合、例えば、発振層10aへの電流供給部分10aeを主磁極61のSTO対向面61bに設け、スピン注入層30への電流供給部分30eをリターンパス62に設けることで、電気的な接続が容易となり、磁気記録ヘッドを小型化することができる。
図14に表したように、本実施形態に係る別の磁気記録ヘッド113aでは、積層構造体25が、磁気記録ヘッド110に対してZ軸を中心にして回転させられている。この場合も、積層構造体25の積層方向はSTO対向面61bに対して平行であり、記録密度を高めた高周波磁界アシスト記録が可能となる。
図15に表したように、本実施形態に係る別の磁気記録ヘッド113bでは、積層構造体25の積層方向に対して平行な平面で切断した時の断面が、磁気記録ヘッド110に対して異なっている。これ以外は、磁気記録ヘッド110と同様である。
磁気記録ヘッド113bにおいても、積層構造体25の積層方向は、STO対向61bに対して平行であり、磁気記録ヘッド110と同様に、記録密度を高めた高周波磁界アシスト記録が可能となる。
そして、磁気記録ヘッド113bにおいては、積層構造体25のX−Y平面における断面が、台形である。そして、その台形の底辺(長い方の辺)は主磁極61の側に対向している。スピントルク発振子10(すなわち、発振層10a)の形状をこのような台形の柱状とすることで、発振層10aから発生する高周波磁界の形状を整形し、サイドフリンジ効果を抑制でき、狭記録トラック化が可能となるため、さらに記録密度を高めることができる。サイドフリンジ効果の抑制に関しては後述する。
以上、図7〜図15に関して説明したように、積層構造体25の積層方向がSTO対向面61bに対して平行な(この場合は、同時に媒体対向面61bに対して垂直でもある)磁気記録ヘッド110の構成において、積層方向を、X軸及びY軸の少なくともいずれかを中心とて回転する変形を行っても良く、また、積層構造体25の形状(発振層10a、中間層22及びスピン注入層30)を任意に変化させる変形を行って良く、またこれらの変形を組み合わせて実施しても良い。
なお、上記の磁気記録ヘッド111a〜111e、112a、112b、113a及び113bにおいて、積層構造体25の積層方向の磁気記録ヘッド110に対する回転角は、例えば0度〜40度(すなわち、積層方向とSTO対向面61bとのなす角度θが50度〜90度)とすることができる。これにより上記の効果が効率的に発揮できる。ただし、回転角に対応させて積層構造体25の形状を変形することもでき、本発明はこれに制限されない。
図16〜図18は、本発明の第1の実施形態に係る別の磁気記録ヘッドの構成を例示する模式図である。
すなわち、図16(a)〜図18(a)は模式的斜視図であり、図16(b)〜図18(b)は模式的側面図であり、図16(c)〜図18(c)は模式的正面図である。
図16に表したように、本実施形態に係る別の磁気記録ヘッド120においては、積層構造体25の積層方向は、X軸方向に対して平行である。これ以外は、磁気記録ヘッド110と同様である。この場合も、積層構造体25の積層方向は、STO対向面61bに対して平行である。
磁気記録ヘッド120において、積層構造体25(スピントルク発振子10)の外形が、20nm×20nm×43nmの直方体である場合は、スピントルク発振子10の主磁極61とリターンパス62とに挟まれている方向の長さt120は20nmとなり、狭いライトギャップを実現できる。
このように、磁気記録ヘッド120によっても、記録密度を高めた高周波磁界アシスト記録が可能となる。
図17に表したように、本実施形態に係る別の磁気記録ヘッド121aにおいては、積層構造体25が、磁気記録ヘッド110に対してX軸を中心にして回転させられている。これ以外は、磁気記録ヘッド120と同様である。なお、この場合も積層構造体25の積層方向は、STO対向面61bに対して平行である。このように、積層構造体25の形状は任意である。
なお、磁気記録ヘッド121aの場合も、主磁極61の側のスピントルク発振子10の下部(中間層22とは反対の側の部分)が媒体対向面61aを含む平面に近接し、主磁極61とは反対の側(すなわちリターンパス62の側)のスピントルク発振子10の下部が媒体対向面61aを含む平面から離間している。これにより、スピントルク発振子10を主磁極61の側で磁気記録媒体80により近接させることができる。その結果、発振層10aの主磁極61の側の高周波磁界強度を保ったまま、発振層10aの隣接記録トラック方向で発生する高周波磁界強度を弱めることが可能となる。この結果、狭記録トラック化が可能となり、記録密度の向上が可能となる。
なお、図17に例示した具体例では、スピントルク発振子10の下部は媒体対向面61aを含む平面に線状で接する形状であるが、スピントルク発振子10がより下方に配置され、スピントルク発振子10の下部が媒体対向面61aを含む平面に面状で接する形状としても良い。
図18に表したように、本実施形態に係る別の磁気記録ヘッド122aでは、積層構造体25の積層方向が、磁気記録ヘッド120に対してY軸を中心にして回転させられている。これ以外は、磁気記録ヘッド120と同様である。なお、この場合も積層構造体25の積層方向は、STO対向面61bに対して平行である。
磁気記録ヘッド122aにおいても、積層構造体25の積層方向はSTO対向面61bの法線に対して非平行であり、記録密度を高めた高周波磁界アシスト記録が可能となる。
なお、磁気記録ヘッド122aにおいては、積層方向は、媒体対向面61aとSTO対向面61bとが交わる線分の方向(X軸方向)に対して非平行である。
また、磁気記録ヘッド122aにおいては、発振層10aはSTO対向面61bに対向しているが、スピン注入層30はSTO対向面に対向していない部分を有している。これにより、例えば、発振層10aへの電流供給部分10aeを主磁極61のSTO対向面61bに設け、スピン注入層30への電流供給部分30eをリターンパス62に設けることで、電気的な接続が容易となり、磁気記録ヘッドを小型化することができる。
なお、磁気記録ヘッド120の構成において、積層構造体25の積層方向をY軸を中心に回転する場合、磁気記録ヘッド122aのように、発振層10aの方が、スピン注入層30よりも、媒体対向面61aを含む平面に近接するように回転することが望ましい。この方向に回転することにより、発振層10aがスピン注入層30よりも磁気記録媒体80に近接することができ、スピン注入層30が磁気記録媒体80に与える悪影響を抑制できる。
すなわち、スピン注入層30の漏洩磁界が磁気記録媒体80に印加された場合に発生する、主磁極61から磁気記録媒体80への記録磁界のキャンセルの効果を抑制し、記録能力が向上する。
例えば、発振層10aが媒体対向面61aにおいて露出している面積と同じ程度の面積で、スピン注入層30が媒体対向面61aで露出していると、スピン注入層30からの漏洩磁界により、記録能力が記録トラック内周側・外周側とで異なることが生じてしまう。この時、磁気記録ヘッド122aのように、発振層10aよりもスピン注入層30を媒体対向面61aを含む平面から後退させることにより、スピン注入層30の漏洩磁界が減少する。これにより、記録能力を記録トラック内周側・外周側とで実質的に均一にすることができ、記録トラックピッチを縮めることが可能となり、記録密度をさらに向上させることができる。
図19は、本発明の第1の実施形態に係る別の磁気記録ヘッドの構成を例示する模式的正面図である。
図19に表したように、本実施形態に係る別の磁気記録ヘッド122bでは、スピントルク発振子10が、図18に例示した磁気記録ヘッド122aよりも下方に配置されている。すなわち、スピントルク発振子10の下部が、媒体対向面61aを含む平面内に面状で接している。これ以外は、磁気記録ヘッド120と同様である。なお、この場合も、積層構造体25の積層方向は、STO対向面61bに対して平行である。
これにより、スピントルク発振子10の下部が媒体対向面61aを含む平面内に線状で接する形状の磁気記録ヘッド122aに比べて、磁気記録ヘッド122bでは、スピントルク発振子10から発生する高周波磁気を安定して磁気記録媒体80に印加することができ、安定した記録密度を高めた高周波磁界アシスト記録が可能となる。
なお、磁気記録ヘッド122bにおいては、発振層10a、中間層22及びスピン注入層30が、媒体対向面61aを含む平面に接しているが、発振層10aのみが媒体対向面61aを含む平面に接していても良く、また、発振層10aと中間層22とが媒体対向面61aを含む平面に接していても良い。
なお、上記の磁気記録ヘッド121a、122a及び122bにおいても、積層構造体25の積層方向の回転角は、例えば5度〜85度とすることが望ましく、30度以上にすることがさらに望ましい。
図20は、本発明の第1の実施形態に係る別の磁気記録ヘッドの構成を例示する模式図である。
すなわち、図20(a)は模式的斜視図であり、図20(b)は模式的側面図であり、図20(c)は模式的正面図である。
図20に表したように、本実施形態に係る別の磁気記録ヘッド123aでは、積層構造体25の積層方向が、磁気記録ヘッド120に対してZ軸を中心にして回転させられている。
そして、積層構造体25の発振層10a及びスピン注入層30の中間層22とは反対の側の面が、中間層22の層の方向と実質的に平行である例である。
磁気記録ヘッド123aにおいても、積層構造体25の積層方向はSTO対向面61bに対して傾斜しており、記録密度を高めた高周波磁界アシスト記録が可能となる。
この場合も、発振層10aはSTO対向面61bに対向しているが、スピン注入層30はSTO対向面61bに対向していない部分を有している。これにより、例えば、発振層10aへの電流供給部分10ae(図示しない)を主磁極61のSTO対向面61bに設け、スピン注入層30への電流供給部分30e(図示しない)をリターンパス62に設けることで、電気的な接続が容易となり、磁気記録ヘッドを小型化することができる。
図21は、本発明の第1の実施形態に係る別の磁気記録ヘッドの構成を例示する模式図である。
すなわち、同図(a)及び(b)は、2種類の磁気記録ヘッドの模式的上面図である。
図21(a)及び(b)に表したように、本実施形態に係る別の磁気記録ヘッド123b及び123cでは、積層構造体25の外形が、図20に例示した磁気記録ヘッド123aに対して異なっている。
図21(a)に例示した磁気記録ヘッド123bにおいては、積層構造体25の外形が、主磁極61のSTO対向面61bに対して平行な側面と垂直な側面とを有する直方体である例である。これ以外は、磁気記録ヘッド120と同様である。
すなわち、磁気記録ヘッド123bにおいては、発振層10aのX−Y平面で切断した時の断面は、STO対向面61bに対向する側の辺の長さは、STO対向面とは反対の側の辺よりも長い。
一方、図21(b)に例示した磁気記録ヘッド123cにおいては、発振層10aのX−Y平面で切断した時の断面は、台形である。そして、その台形の底辺(長い方の辺)は主磁極61の側に対向している。
すなわち、磁気記録ヘッド123bの場合も、発振層10aのX−Y平面で切断した時の断面は、STO対向面61bに対向する側の辺の長さは、STO対向面とは反対の側の辺よりも長い。
すなわち、磁気記録ヘッド123b及び123cにおいては、発振層10aの媒体対向面61aを含む面の側の端面のSTO対向面61bの側の辺の長さは、STO対向面61bとは反対の側の辺の長さよりも長い。
発振層10aの平面形状をこのような形状とすることで、発振層10aから発生する高周波磁界の形状を整形し、サイドフリンジ効果を抑制でき、さらに記録密度を高めることができる。
図22及び図23は、本発明の第1の実施形態に係る別の磁気記録ヘッドの動作を例示する模式図である。
すなわち、これらの図は、主磁極61と積層構造体25(スピントルク発振子10)と磁気記録媒体80とのX−Y平面における位置関係を例示する模式的上面図である。図22は、図16に例示した磁気記録ヘッド120における動作を例示しており、図23は、図21(b)に例示した磁気記録ヘッド123cの動作を例示している。
図22に表したように、磁気記録ヘッド120の場合は、発振層10aが直方体で、発振層10aの主磁極61のSTO対向面61bに対向する側の辺の長さと、STO対向面61bとは反対の側の辺の長さとが同じである。この場合には、発振層10aから発生する高周波磁界の領域(高周波磁界発生領域RHa)は、略長方形の形状となる。一方、主磁極61から発生する磁界の領域(主磁極磁界発生領域RH61)は、主磁極61のSTO対向面61bと、主磁極61の側面のSTO対向面61bの側の辺と、に沿って、U字状の形状となる。
そして、これらが重畳されて磁気記録媒体80に印加される。従って、磁気記録媒体80において磁化反転がおきる領域(磁化反転領域RH80)は、U字形状となる。
このため、磁気記録媒体80における記録トラック86の媒体記録パターン80p端において、サイドフリンジSFが発生する。
これに対し、図23に表したように、磁気記録ヘッド123cの場合は、発振層10aの断面形状が台形であり、発振層10aの主磁極61のSTO対向面61bに対向する側の辺の長さは、STO対向面61bとは反対の側の辺の長さよりも長い。このため、発振層10aから発生する高周波磁界の高周波磁界発生領域RHaは、主磁極61の側が凸の湾曲した形状となる。すなわち、高周波磁界発生領域RHaのX軸方向における中心部ではY軸方向の長さが長く、X軸方向における端部(すなわち、主磁極61の端に対向する部分)ではY軸方向の長さが短い。
このため、発振層10aからの高周波磁界と、主磁極からの磁界と、が重畳され、磁気記録媒体80において磁化反転がおきる磁化反転領域RH80は、略長方形となる。
このため、磁気記録媒体80における記録トラック86の媒体記録パターン80p端において、サイドフリンジSFの発生は抑制される。
なお、サイドフリンジSFの発生は、主磁極61のSTO対向面61bの法線と記録トラック86の方向がなすスキュー角度θs(図22参照)にも依存する。このため、発振層10aの主磁極61のSTO対向面61bに対向する側の辺の長さと、STO対向面61bとは反対の側の辺の長さの比は、磁気記録装置での最大のスキュー角度θsに応じて、サイドフリンジSFが最小となるように選択することが望ましい。すなわち、発振層10aの下面(発振層10aの媒体対向面61aを含む面の側の端面)におけるSTO対向面61bに対向する側のx軸方向の長さと、STO対向面61bとは反対の側のx軸方向の長さと、の比は、最大のスキュー角度θsに応じて、サイドフリンジSFが最小となるように選択することが望ましい。
これにより、磁気記録ヘッド123cのように、発振層10aを台形の形状とすることで、さらに記録密度を高めることができる。
なお、上記の磁気記録ヘッド123b及び123cにおいても、積層構造体25の積層方向は、STO対向面61bに対して傾斜している。
なお、上記の磁気記録ヘッド123a、123b及び123cにおいても、積層構造体25の積層方向の回転角は、例えば5度〜85度とすることが望ましく、30度以上にすることがさらに望ましい。
以上、図17〜図21に関して説明したように、積層構造体25の積層方向がSTO対向面61bに対して平行な(この場合には、同時に媒体対向面61aに対しても平行である)磁気記録ヘッド120の構成において、積層方向をX軸及びZ軸の少なくともいずれかを中心として回転する変形を行っても良く、また、積層構造体25の形状や発振層の形状を任意に変化させる変形を行っても良く、またこれらの変形を組み合わせて実施しても良い。
図24は、本発明の第1の実施形態に係る別の磁気記録ヘッドの構成を例示する模式図である。
すなわち、図24(a)は模式的斜視図であり、図24(b)は模式的側面図であり、図24(c)は模式的正面図である。
図24に表したように、本実施形態に係る別の磁気記録ヘッド132では、図4に例示した磁気記録ヘッド130に対して、積層構造体25の積層方向が、X軸を中心にして回転され、さらに、Y軸を中心にして回転させられている。すなわち、積層構造体25の積層方向が、STO対向面61bに対して傾斜している。
そして、発振層10aがスピン注入層30よりも磁気記録媒体80に近接できる。これにより、スピン注入層30が磁気記録媒体80に与える悪影響を抑制できる。
さらに、磁気記録ヘッド132においては、発振層10aの磁気記録媒体80に対向する面の大きさが、磁気記録媒体80に対向する面よりも後退した部分の大きさよりも小さくされている。
すなわち、本具体例では、積層構造体25の下側(磁気記録媒体80に対向する側)の下端面25aにおけるX軸方向の長さt132a1は、積層構造体25の下端面25aから後退した部分における、X軸方向の長さt231a2よりも短い。
一方、例えば、図4に例示した比較例の磁気記録ヘッド130においては、積層構造体25のX軸方向の長さt130はZ軸方向において一定である。
磁気記録ヘッド132と磁気記録ヘッド130とにおいて、長さt132a2と長さt130とがもし同じ長さである場合には、磁気記録ヘッド132においては、積層構造体25が磁気記録媒体80に対向する下端面25aにおいては、X軸方向の長さが長さt132a2よりも短い長さt132a1であるので、発振層10aが磁気記録媒体80に与える高周波磁界を狭い領域に集中させることができる。
このように、比較例の磁気記録ヘッド130と比較して、磁気記録ヘッド132の方が、記録密度を向上することができる。
図25は、本発明の第1の実施形態に係る別の磁気記録ヘッドの構成を例示する模式図である。
すなわち、図25(a)は模式的上面図であり、図25(b)は模式的側面図であり、図25(c)は模式的正面図である。
図25に表したように、本実施形態に係る別の磁気記録ヘッド133では、図4に例示した磁気記録ヘッド130に対して、積層構造体25の積層方向をZ軸を中心にして回転している。すなわち、積層構造体25の積層方向が、STO対向面61bに対して傾斜している。
さらに、発振層10aのX−Y平面で切断した時の断面は、長方形ではない四角形である。そして、その四角形の長い方の辺は主磁極61の側に対向している。
すなわち、磁気記録ヘッド133においては、発振層10aの媒体対向面61aを含む面の側の端面のSTO対向面61bの側の辺の長さは、STO対向面61bとは反対の側の辺の長さよりも長い。
これにより、発振層10aから発生する高周波磁界の形状を整形し、サイドフリンジ効果を抑制でき、さらに記録密度を高めることができる。
なお、上記の磁気記録ヘッド132及び133においても、積層構造体25の積層方向の回転角は、例えば5度〜85度とすることが望ましく、30度以上にすることがさらに望ましい。
以上、図24及び図25に関して説明したように、積層構造体25の積層方向がY軸方向(STO対向面61bの法線方向)に対して平行な比較例の磁気記録ヘッド130の構成において、積層方向のX軸及びZ軸の少なくともいずれかを中心とした回転、及び、積層構造体25の形状(例えば発振層10aの形状)の変形の少なくともいずれかによって、比較例の磁気記録ヘッド130よりも記録密度を高めた高周波磁界アシスト記録が可能となる。
なお、既に説明したように、本実施形態の磁気記録ヘッドにおいて、発振層10aはスピン注入層30よりも磁気記録媒体80に近接している構成とすることが望ましい。これにより、スピン注入層30から発生する磁気が磁気記録媒体80に印加される悪影響を抑制できる。
すなわち、例えば、スピン注入層30の媒体対向面61aを含む平面に最も近接する部分(第2磁性体近接部)は、発振層10aの前記平面に最も近接する部分(第1磁性体近接部)よりも、媒体対向面61aに対して垂直な方向であって、主磁極61の外部側から主磁極61の内部側に向かう方向の側に配置されることが望ましい。
この構成は、例えば、上記の磁気記録ヘッド110、110a、111b、111c、111d、111e、112a、112b、113a、113b、122a及び132に適用されている。
また、例えば、スピン注入層30の重心は、発振層10aの重心よりも、媒体対向面61aに対して垂直な方向であって、主磁極61の外部側から主磁極61の内部側に向かう方向の側に配置されていることが望ましい。
この構成は、例えば、上記の磁気記録ヘッド110、110a、111b、111c、111d、111e、112a、112b、113a、113b、122a、122b及び132に適用されている。
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施形態に係る磁気記録ヘッドにおいては、発振層10aの端面であって、発振層10aの媒体対向面61aを含む面の側の端面におけるX軸方向(媒体対向面61aとSTO対向面61bとが交わる線分の方向)の長さは、前記端面のSTO対向面61bに対向する側よりも、前記端面のSTO対向面61bに対向する側とは反対の側の方が短く設定される。
例えば、発振層10aの媒体対向面61aを含む面の側の端面のSTO対向面61bの側の辺の長さは、STO対向面61bとは反対の側の辺の長さよりも長く設定される。
これにより、フリンジ効果が抑制され、記録密度を高めた高周波磁界アシスト記録を可能とする磁気記録ヘッドが提供できる。
この構成は、例えば、上記の磁気記録ヘッド113b、123b、123c及び133に適用されている。
なお、この構成においては、積層構造体25の積層方向は任意であり、例えば積層方向は、STO対向面61bに対して垂直であっても良い。
なお、本発明の第1及び第2の実施形態に係るいずれかの磁気記録ヘッドにおいて、積層構造体25の下端面25a(媒体対向面61aを含む平面の側の端面)の面積は、積層構造体25の下端面25aから後退した部分における媒体対向面61aに対して平行な平面で切断したときの断面の面積よりも小さく設定することができる。
例えば、積層構造体25の下端面25aにおける、X軸方向(媒体対向面61aとSTO対向面61bとが交差する方向)における長さは、積層構造体25の下端面25aから後退した部分における、X軸方向における長さよりも短く設定することができる。
これにより、発振層10aが磁気記録媒体80に与える高周波磁界を狭い領域に集中でき、記録密度をより向上できる。
この構成は、例えば、上記の磁気記録ヘッド111c、112b、121a、122a122b及び132に適用されている。ただし、この構成を本発明の実施形態に係る任意の磁気記録ヘッドに適用しても良い。
(第3の実施の形態)
以下、本発明の第3の実施の形態に係る磁気記録装置及び磁気ヘッドアセンブリについて説明する。
上記で説明した本発明の実施形態に係る磁気記録ヘッドは、例えば、記録再生一体型の磁気ヘッドアセンブリに組み込まれ、磁気記録装置に搭載することができる。なお、本実施形態に係る磁気記録装置は、記録機能のみを有することもできるし、記録機能と再生機能の両方を有することもできる。
図26は、本発明の第3の実施形態に係る磁気記録装置の構成を例示する模式的斜視図である。
図27は、本発明の第3の実施形態に係る磁気記録装置の一部の構成を例示する模式的斜視図である。
図26に表したように、本発明の第3の実施形態に係る磁気記録装置150は、ロータリーアクチュエータを用いた形式の装置である。同図において、記録用媒体ディスク180は、スピンドルモータ4に装着され、図示しない駆動装置制御部からの制御信号に応答する図示しないモータにより矢印Aの方向に回転する。本実施形態に係る磁気記録装置150は、複数の記録用媒体ディスク180を備えたものとしても良い。
記録用媒体ディスク180に格納する情報の記録再生を行うヘッドスライダー3は、既に説明したような構成を有し、薄膜状のサスペンション154の先端に取り付けられている。ここで、ヘッドスライダー3は、例えば、本発明の実施形態に係る磁気記録ヘッドのいずれかをその先端付近に搭載している。
記録用媒体ディスク180が回転すると、サスペンション154による押付け圧力とヘッドスライダー3の媒体対向面(ABS)で発生する圧力とがつりあい、ヘッドスライダー3の媒体対向面は、記録用媒体ディスク180の表面から所定の浮上量をもって保持される。なお、ヘッドスライダー3が記録用媒体ディスク180と接触するいわゆる「接触走行型」としても良い。
サスペンション154は、図示しない駆動コイルを保持するボビン部などを有するアクチュエータアーム155の一端に接続されている。アクチュエータアーム155の他端には、リニアモータの一種であるボイスコイルモータ156が設けられている。ボイスコイルモータ156は、アクチュエータアーム155のボビン部に巻き上げられた図示しない駆動コイルと、このコイルを挟み込むように対向して配置された永久磁石及び対向ヨークからなる磁気回路とから構成することができる。
アクチュエータアーム155は、軸受部157の上下2箇所に設けられた図示しないボールベアリングによって保持され、ボイスコイルモータ156により回転摺動が自在にできるようになっている。その結果、磁気記録ヘッドを記録用媒体ディスク180の任意の位置に移動可能となる。
図27(a)は、本実施形態に係る磁気記録装置の一部の構成を例示しており、ヘッドスタックアセンブリ160の拡大斜視図である。
また、図27(b)は、ヘッドスタックアセンブリ160の一部となる磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ)158を例示する斜視図である。
図27(a)に表したように、ヘッドスタックアセンブリ160は、軸受部157と、この軸受部157から延出したヘッドジンバルアセンブリ158と、軸受部157からHGAと反対方向に延出していると供にボイスコイルモータのコイル162を支持した支持フレーム161を有している。
また、図27(b)に表したように、ヘッドジンバルアセンブリ158は、軸受部157から延出したアクチュエータアーム155と、アクチュエータアーム155から延出したサスペンション154と、を有している。
サスペンション154の先端には、ヘッドスライダー3が取り付けられている。そして、ヘッドスライダー3には、本発明の実施形態に係る磁気記録ヘッドのいずれかが搭載される。
すなわち、本発明の実施形態に係る磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ)158は、本発明の実施形態に係る磁気記録ヘッドと、前記磁気記録ヘッドが搭載されたヘッドスライダー3と、ヘッドスライダー3を一端に搭載するサスペンション154と、サスペンション154の他端に接続されたアクチュエータアーム155と、を備える。
サスペンション154は、信号の書き込み及び読み取り用、浮上量調整のためのヒーター用、スピントルク発振子用のリード線(図示しない)を有し、このリード線とヘッドスライダー3に組み込まれた磁気ヘッドの各電極とが電気的に接続される。また、図示しない電極パッドが、ヘッドジンバルアセンブリ158に設けられる。本具体例においては、電極パッドは8個設けられる。すなわち、主磁極61のコイル用の電極パッドが2つ、磁気再生素子71用の電極パッドが2つ、DFH(ダイナミックフライングハイト)用の電極パッドが2つ、スピントルク発振子10用の電極パッドが2つ、設けられる。
そして、磁気記録ヘッドを用いて磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しを行う、信号処理部190が設けられる。信号処理部190は、例えば、図26に例示した磁気記録装置150の図面中の背面側に設けられる。信号処理部190の入出力線は、ヘッドジンバルアセンブリ158の電極パッドに接続され、磁気記録ヘッドと電気的に結合される。
このように、本実施形態に係る磁気記録装置150は、磁気記録媒体と、上記の実施形態に係る磁気記録ヘッドと、磁気記録媒体と磁気記録ヘッドとを離間させ、または、接触させた状態で対峙させながら相対的に移動可能とした可動部と、磁気記録ヘッドを磁気記録媒体の所定記録位置に位置合せする位置制御部と、磁気記録ヘッドを用いて磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しを行う信号処理部と、を備える。
すなわち、上記の磁気記録媒体として、記録用媒体ディスク180が用いられる。
上記の可動部は、ヘッドスライダー3を含むことができる。
また、上記の位置制御部は、ヘッドジンバルアセンブリ158を含むことができる。
すなわち、本実施形態に係る磁気記録装置150は、磁気記録媒体と、本発明の実施形態に係る磁気ヘッドアセンブリと、前記磁気ヘッドアセンブリに搭載された前記磁気記録ヘッドを用いて前記磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しを行う信号処理部と、を備える。
本実施形態に係る磁気記録装置150によれば、上記の実施形態に係る磁気記録ヘッドを用いることで、記録密度を高めた高周波磁界アシスト記録を可能とする磁気記録装置が提供できる。
なお、本発明の実施形態に係る磁気記録装置において、スピントルク発振子10は、主磁極61のトレーリング側に設けることができる。この場合は、磁気記録媒体80の磁気記録層81は、まず、主磁極61に対向し、その後でスピントルク発振子10に対向する。
また、本発明の実施形態に係る磁気記録装置において、スピントルク発振子10は、主磁極61のリーディング側に設けることができる。この場合は、磁気記録媒体80の磁気記録層81は、まず、スピントルク発振子10に対向し、その後で主磁極61に対向する。
以下、上記の実施形態の磁気記録装置に用いることができる磁気記録媒体について説明する。
図28は、本発明の実施形態に係る磁気記録装置の磁気記録媒体の構成を例示する模式的斜視図である。
図28に表したように、本発明の実施形態に係る磁気記録装置に用いられる磁気記録媒体80は、非磁性体(あるいは空気)87により互いに分離された垂直配向した多粒子系の磁性ディスクリートトラック(記録トラック)86を有する。この磁気記録媒体80がスピンドルモータ4により回転され、媒体移動方向85に向けて移動する際に、上記の実施形態に係る磁気記録ヘッドのいずれかが設けられ、これにより、記録磁化84を形成することができる。
このように、本発明の実施形態に係る磁気記録装置においては、磁気記録媒体80は、隣接し合う記録トラック同士が非磁性部材を介して形成されたディスクリートトラック媒体とすることができる。
スピントルク発振子10の記録トラック幅方向の幅(TS)を記録トラック86の幅(TW)以上で、かつ記録トラックピッチ(TP)以下とすることによって、スピントルク発振子10から発生する漏れ高周波磁界による隣接記録トラックの保磁力低下を大幅に抑制することができる。このため、本具体例の磁気記録媒体80では、記録したい記録トラック86のみを効果的に高周波磁界アシスト記録することができる。
本具体例によれば、いわゆる「べた膜状」の多粒子系垂直媒体を用いるよりも、狭記録トラックすなわち高記録トラック密度の高周波アシスト記録装置を実現することが容易になる。また、高周波磁界アシスト記録方式を利用し、さらに従来の磁気記録ヘッドでは書き込み不可能なFePtやSmCo等の高磁気異方性エネルギー(Ku)の媒体磁性材料を用いることによって、媒体磁性粒子をナノメートルのサイズまでさらに微細化することが可能となり、線記録密度方向(ビット方向)においても、従来よりも遥かに線記録密度の高い磁気記録装置を実現することができる。
本実施形態に係る磁気記録装置によれば、ディスクリート型の磁気記録媒体80において、高い保磁力を有する磁気記録層に対しても確実に記録することができ、高密度かつ高速の磁気記録が可能となる。
図29は、本発明の実施形態に係る磁気記録装置の別の磁気記録媒体の構成を例示する模式的斜視図である。
図29に表したように、本発明の実施形態に係る磁気記録装置に用いることができる別の磁気記録媒体80は、非磁性体87により互いに分離された磁性ディスクリートビット88を有する。この磁気記録媒体80がスピンドルモータ4により回転され、媒体移動方向85に向けて移動する際に、本発明の実施形態に係る磁気記録ヘッドにより、記録磁化84を形成することができる。
このように、本発明の実施形態に係る磁気記録装置においては、磁気記録媒体80は、非磁性部材を介して孤立した記録磁性ドットが規則的に配列形成されたディスクリートビット媒体とすることができる。
本実施形態に係る磁気記録装置によれば、ディスクリート型の磁気記録媒体80において、高い保磁力を有する磁気記録層に対しても確実に記録することができ、高密度かつ高速の磁気記録が可能となる。
この具体例においても、スピントルク発振子10の記録トラック幅方向の幅(TS)を記録トラック86の幅(TW)以上で、かつ記録トラックピッチ(TP)以下とすることによって、スピントルク発振子10から発生する漏れ高周波磁界による隣接記録トラックの保磁力低下を大幅に抑制することができるため、記録したい記録トラック86のみを効果的に高周波磁界アシスト記録することができる。本具体例を用いれば、使用環境下での熱揺らぎ耐性を維持できる限りは、磁性ディスクリートビット88の高磁気異方性エネルギー(Ku)化と微細化を進めることで、10Tbits/inch2以上の高い記録密度の高周波磁界アシスト記録装置を実現できる可能性がある。
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、磁気記録ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録装置を構成する各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
その他、本発明の実施の形態として上述した磁気記録ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての磁気記録ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。