ところで、複数のターン部が形成された複数のコイル線材を互いに編込む方法としては、さらに以下の各方法が考えられる。例えば、公知の撚り線機で行われているように、固定した一のコイル線材の周りに他のコイル線材を回転(公転)させ、1公転でコイルピッチ分をコイル長手方向に移動することで編込む方法や、2つのコイル線材の編込み箇所を中心に所定角度で保持し、互いに相手の周りを回転(公転)させて編込む方法である。
そして、これらの編込み方法で、複数のコイル線材を互いに編込んで帯状の線材集積体を形成した後、その線材集積体を渦巻き状に巻き付けて円筒状に成形することによりコイル組立体を形成することができる。完成したコイル組立体は、周方向に配列された複数のスロットを有する円環状の固定子コアに対してスロットに巻装された状態に組み付けられることにより、回転電機の固定子を構成する固定子巻線として用いられる。
なお、上記の編込み方法に用いられるコイル線材は、通常、所定距離を隔てて並列状に配置された複数のスロット収容部と、隣り合うスロット収容部同士を接続する複数のターン部とを有し、全体形状が波形形状に形成されている。このコイル線材は、固定子コアの周方向に隣り合うスロット同士の周方向間隔が外径側よりも内径側の方が狭くなっていることに合わせて、隣り合うスロット収容部同士の間隔が長手方向の一端側(内径側)から他端側(外径側)に向かって増加するように形成されている。そのため、上記の編込み方法で複数のコイル線材を編込む場合に、編込み易さや、編込み時に発生するコイル線材の変形リスクを考慮すると、隣り合うスロット収容部同士の間隔が広い側となる他端側(外径側)から一端側(内径側)へ向かって編込む方が有利であると考えられる。
しかしながら、隣り合うスロット収容部同士の間隔が広い側となる他端側(外径側)から一端側(内径側)へ向かって編込む場合、編込みを開始する他端側(外径側)ではコイル線材の変位自由度が大きいことから変形量を小さくできるものの、編込みが終了する一端側(内径側)では変形量が大きくなる。そのため、一端側(内径側)で変形量が大きくなった編込み済みコイル線材よりなる線材集積体を渦巻き状に巻き付けて円筒状に成形されたコイル組立体は、内径側に位置するスロット収容部及びターン部の位置精度や整列精度が低下してしまう。スロット収容部の位置精度や整列精度が低下すると、磁気ギャップを小さくすることが困難になるため、回転電機の高性能化や小型化を図ることができなくなる。また、ターン部の位置精度や整列精度が低下すると、固定子の内周側に配置される回転子と干渉し易くなるため、破損などの恐れが発生する。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、内径側に位置するスロット収容部及びターン部の良好な位置精度や整列精度を確保し得るようにした回転電機のコイル組立体製造方法を提供することを解決すべき課題とするものである。
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、複数のコイル線材を互いに編込んで形成した帯状の線材集積体を巻き付けて回転電機のコイル組立体を製造する方法であって、所定距離を隔てて並列状に配置された複数のスロット収容部と、隣り合う前記スロット収容部同士を接続する複数のターン部とを有し、隣り合う前記スロット収容部同士の間隔が長手方向の一端側から他端側に向かって増加している前記コイル線材を準備する準備工程と、複数の前記コイル線材を、前記スロット収容部同士の間隔が狭い側となる一端側から他端側に向かって編込んで帯状の線材集積体を形成する編込み工程と、前記線材集積体を、前記スロット収容部同士の間隔が狭い側となる一端側を内径側にして渦巻き状に巻き付けて円筒状の成形体を形成する巻付け工程と、を有することを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、編込み工程では、複数のコイル線材を、スロット収容部同士の間隔が狭い側となる一端側から他端側に向かって編込んで帯状の線材集積体を形成するようにしている。即ち、スロット収容部同士の間隔が狭い側となる一端側(内径側)からコイル線材の編込みを開始するようにしている。これにより、コイル線材の一端側(内径側)の変形量を、編込み終了側の他端側(外径側)よりも小さくすることができる。そして、次の巻付け工程では、編込み工程で得られた線材集積体を、スロット収容部同士の間隔が狭い側となる一端側を内径側にして渦巻き状に巻き付けて円筒状の成形体を形成するようにしている。これにより、成形体の内径側に位置するスロット収容部及びターン部の良好な位置精度や整列精度が確保することができる。
そのため、スロット収容部の良好な位置精度や整列精度を確保することができることから、磁気ギャップを小さくすることが可能となり、回転電機の高性能化や小型化を図ることが可能となる。また、ターン部の良好な位置精度や整列精度を確保することができることから、固定子の内周側に配置される回転子との干渉を回避して、破損などの発生を回避することが可能となる。
なお、本発明の製造方法により製造されるコイル組立体は、例えば、回転子と固定子を備えた回転電機の固定子において、固定子コアに設けられた複数のスロットに設置されて固定子コアに巻装される多相固定子巻線として好適に採用されるものである。
また、コイル線材としては、例えば、周方向の異なるスロットに設置されるスロット収容部と、隣り合うスロット収容部同士をスロットの外部で接続しているターン部とを有するものを採用することができる。このコイル線材のスロットから突出するターン部の突出箇所は、コイル線材がまたがって設置されているスロット同士に向けたクランク形状に形成されたものであってもよい。また、ターン部の略中央部は、ねじりを伴わないクランク形状に形成されたものであってもよく、コイル線材のクランク形状が形成されている略中央部が、コイル線材の略幅分クランク形状にずれたものであってもよい。また、コイル線材は、固定子コアの全周にわたって連続して形成されたものであってもよい。
請求項2に記載の発明は、前記コイル線材は、前記ターン部が階段状に形成されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、ターン部が階段状に形成されていることから、ターン部の剛性が高まり、編込み時においてコイル線材が変形し難くなる。そのため、編込み工程において、スロット収容部同士の間隔が狭い側となる一端側(内径側)から編込みを開始することによる効果をより確実に発揮させることができる。
請求項3に記載の発明は、前記コイル線材は、前記ターン部の頂部にクランク部を有することを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、ターン部の頂部にクランク部を有することから、ターン部の剛性が高まり、編込み時においてコイル線材が変形し難くなる。そのため、編込み工程において、スロット収容部同士の間隔が狭い側となる一端側(内径側)から編込みを開始することによる効果をより確実に発揮させることができる。
請求項4に記載の発明は、前記編込み工程は、第1コイル線材と第2コイル線材とを互いに所定の位置に配置する配置工程と、前記第1コイル線材の第1ターン部と前記第2コイル線材の第1ターン部とを係合しつつ、前記第1コイル線材及び第2コイル線材のうちの少なくともいずれか一方を回転させて、前記第1コイル線材の第2ターン部と前記第2コイル線材の第2ターン部とを係合させる第1回転工程と、前記第1コイル線材の第2ターン部と前記第2コイル線材の第2ターン部とを係合しつつ、前記第1コイル線材及び前記第2コイル線材のうちの少なくともいずれか一方を回転させて、前記第1コイル線材の第3ターン部と前記第2コイル線材の第3ターン部とを係合させる第2回転工程と、を有することを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、編込み工程は、上記のような第1回転工程及び第2回転工程を有するため、複数のターン部が形成された第1コイル線材と第2コイル線材との編込みを簡易に且つ確実に行うことができる。また、第1コイル線材と第2コイル線材との編込みを行った後に、各コイル線材を変形させる工程を必要としないので、工数の増大や、コイル線材の表面を被覆する絶縁被膜の損傷発生を回避することができる。
請求項5に記載の発明は、前記編込み工程は、前記第2回転工程終了後、前記第2回転工程と同様の動作を繰り返して前記第1コイル線材及び前記第2コイル線材の第4ターン部以降の係合を順次行うことを特徴とする。
請求項5に記載の発明によれば、第1及び第2コイル線材の一端側(内径側)の変形量を編込み終了側の他端側(外径側)よりも小さくしつつ、第1コイル線材と第2コイル線材との編込みを全長に渡って確実に行うことができる。
請求項6に記載の発明は、前記編込み工程は、請求項4又は5に記載の方法により編込まれた前記第1及び第2コイル線材よりなる第1コイル線材束と第3コイル線材とを互いに所定の位置に配置する配置工程と、前記第1コイル線材束の第1ターン部と前記第3コイル線材の第1ターン部とを係合しつつ、前記第1コイル線材束及び第3コイル線材のうちの少なくともいずれか一方を回転させて、前記第1コイル線材束の第2ターン部と前記第3コイル線材の第2ターン部とを係合させる第1回転工程と、前記第1コイル線材束の第2ターン部と前記第3コイル線材の第2ターン部とを係合しつつ、前記第1コイル線材束及び前記第3コイル線材のうちの少なくともいずれか一方を回転させて、前記第1コイル線材束の第3ターン部と前記第3コイル線材の第3ターン部とを係合させる第2回転工程と、を有することを特徴とする。
請求項6に記載の発明によれば、編込み工程は、上記のような第1回転工程及び第2回転工程を有するため、複数のターン部が形成された第1コイル線材束と第3コイル線材との編込みを簡易に且つ確実に行うことができる。また、第1コイル線材束と第3コイル線材との編込みを行った後に、各コイル線材を変形させる工程を必要としないので、工数の増大や、コイル線材の表面を被覆する絶縁被膜の損傷発生を回避することができる。
請求項7に記載の発明は、前記編込み工程は、請求項6に記載の方法により編込まれた複数の前記コイル線材よりなる第2コイル線材束と第3コイル線材束とを互いに所定の位置に配置する配置工程と、前記第2コイル線材束の第1ターン部と前記第3コイル線材束の第1ターン部とを係合しつつ、前記第2コイル線材束及び第3コイル線材束のうちの少なくともいずれか一方を回転させて、前記第2コイル線材束の第2ターン部と前記第3コイル線材束の第2ターン部とを係合させる第1回転工程と、前記第2コイル線材束の第2ターン部と前記第3コイル線材束の第2ターン部とを係合しつつ、前記第2コイル線材束及び前記第3コイル線材束のうちの少なくともいずれか一方を回転させて、前記第2コイル線材束の第3ターン部と前記第3コイル線材束の第3ターン部とを係合させる第2回転工程と、を有することを特徴とする。
請求項7に記載の発明によれば、編込み工程は、上記のような第1回転工程及び第2回転工程を有するため、複数のターン部が形成された第2コイル線材束と第3コイル線材束との編込みを簡易に且つ確実に行うことができる。また、第2コイル線材束と第3コイル線材束との編込みを行った後に、各コイル線材を変形させる工程を必要としないので、工数の増大や、コイル線材の表面を被覆する絶縁被膜の損傷発生を回避することができる。
以下、本発明の回転電機のコイル組立体製造方法を具体化した実施形態について図面を参照しつつ具体的に説明する。
最初に、本発明の各実施形態の製造方法により製造されるコイル組立体20を適用した回転電機の固定子10の概略構成について説明する。図1は、コイル組立体20を適用した回転電機の固定子10の外観を示す斜視図であり、(B)は固定子10を側方から見た図である。図2は、固定子10の一部分を拡大して示す斜視図である。
図1に示す固定子10は、例えば車両の電動機および発電機を兼ねる回転電機に使用される。固定子10は、内周側に回転子(図示せず)を回転自在に収容する。回転子は、永久磁石により周方向に磁性が交互に異なる磁極を固定子10の内周側と向き合う外周側に複数形成している。固定子コア12は、所定厚さの磁性鋼板を軸方向に積層して環状に形成されている。固定子コア12には、図2に示すように、軸方向に沿い周方向に隣接するスロット14、15を一組として固定子コア12の内周側の周方向に複数組のスロットが形成されている。固定子巻線としてのコイル組立体20は三相巻線であり、周方向に隣接する一組のスロット14、15に各相の固定子巻線が設置されている。そして、スロット14、15を一組として周方向に隣接する三組のスロット14、15に異なる相の固定子巻線が設置されている。
次に、コイル組立体20の構成について説明する。図3は、コイル組立体20の外観を示す斜視図である。図4は、コイル組立体20のコイルエンド部を示す正面図である。図5は、コイル線材30の全体形状を示す正面図である。図6は、コイル線材30の断面図である。図7は、コイル線材30のターン部42の形状を示す斜視図である。
コイル組立体20のコイル線材30は、図5に示すように、所定距離を隔てて並列状に配置された複数(本実施形態では40個)のスロット収容部40と、隣り合うスロット収容部40同士を接続する複数(本実施形態では39個)のターン部42とを有する。このコイル線材30は、隣り合うスロット収容部40同士の間隔Xが長手方向の一端側(図5の右側)から他端側(図5の左側)に向かって徐々に増加している。即ち、最も一端側にある間隔X1が最も狭く、最も他端側にある間隔X39が最も広くされている。このコイル線材30は、長手方向一端側から奇数番目のターン部42と偶数番目のターン部42が、軸線周りの180度位相がずれた位置に交互に設けられている。1本のコイル線材30の長さは約3mである。
コイル線材30の両端には、他のコイル線材30等と接続するための引出し部43a、43bが設けられている。一方の引出し部43aは、最も一端側にあるスロット収容部40の端末から外側(図5の右側)へ延出するように、スロット収容部40間にあるターン部42の略半分の長さに形成されたターン部42Aを介して形成されている。他方の引出し部43bは、最も他端側にあるスロット収容部40の端末から外側(図5の左側)へ延出するように、スロット収容部40間にあるターン部42の略半分の長さに形成されたターン部42Bを介して形成されている。
また、コイル線材30は、図6に示すように、銅製の導体31と、導体31の外周を覆い導体31を絶縁する内層32および外層33からなる絶縁被覆とから形成されている。内層32は導体31の外周を覆い、外層33は内層32の外周を覆っている。内層32および外層33を合わせた絶縁被覆の厚みは、100μm〜200μmの間に設定されている。このように、内層32および外層33からなる絶縁被覆の厚みが厚いので、コイル線材30同士を絶縁するためにコイル線材30同士の間に絶縁紙等を挟み込んで絶縁する必要がない。
外層33はナイロン等の絶縁材で形成され、内層32は外層33よりもガラス転移温度の高い熱可塑性樹脂またはポリアミドイミド等の絶縁材で形成されている。これにより、回転電機に発生する熱により外層33は内層32よりも早く結晶化するため、外層68bの表面硬度が高くなり、コイル線材30に傷がつきにくくなる。
コイル線材30は、図2に示すように、固定子コア12のスロット14、15内に設置されるスロット収容部40と、スロット14、15から固定子コア12の外に突出し、周方向に異なるスロットに設置されているスロット収容部40同士を接続しているターン部42とを有しており、固定子コア12に波巻きされた状態で固定子巻線(コイル組立体20)を形成している。ターン部42は、固定子コア12の軸方向両側にそれぞれ形成されている。この場合、スロット収容部40とターン部42との接続部は、略直角に屈曲している。
ターン部42の略中央部には、図7に示すように、ねじりを伴わないクランク部44が形成されている。クランク部44は、固定子コア12の端面13に沿ってクランク形状に形成されている。このクランク部44のクランク形状によるずれ量は、コイル線材30の略幅分である。これにより、径方向に隣接しているコイル線材30のターン部42同士を密に巻回できる。その結果、コイルエンドの径方向の幅が小さくなるので、コイル組立体20が径方向外側に張り出すことを防止する。
また、スロット14、15から固定子コア12の外に突出するターン部42の突出箇所に、コイル線材30がまたがって設置されているスロット同士に向けて固定子コア12の軸方向両側の端面13に沿って段部46が形成されている。これにより、スロット14、15から突出しているコイル線材30のターン部42の突出箇所の間隔、言い換えればターン部42が形成する三角形状部分の底辺の長さは、コイル線材30がまたがって設置されているスロット同士の間隔よりも狭くなっている。その結果、コイルエンドの高さhが低くなる。
また、固定子コア12の端面13に沿った段部46の長さをd1、周方向に隣接するスロット同士の間隔をd2とすると、d1≦d2になっている。これにより、コイル線材30の段部46が周方向に隣り合うスロットから突出するコイル線材30と干渉することを防止できる。これにより、周方向に隣接するスロットから突出するコイル線材30同士が互いに干渉することを避けるために、コイルエンドの高さが高くなったり、あるいはコイルエンドの径方向の幅が大きくなったりすることを防止できる。その結果、コイルエンドの高さが低くなる。さらに、コイルエンドの径方向の幅が小さくなるので、コイル組立体20が径方向外側に張り出すことを防止する。
さらに、コイル線材30には、ターン部42の略中央部のクランク部44と、ターン部42の突出箇所に形成した段部46との間に、それぞれ2個の段部48が形成されている。つまり、固定子コア12の一方の軸方向の端面13側のコイル線材30のターン部42には、クランク部44を含む合計7個の段部が形成されている。これにより、段部を形成しない三角形状のターン部の高さに比べ、ターン部42の高さhが低くなる。段部46、48は、クランク部44と同様に、固定子コア12の端面13と平行に形成されている。したがって、コイル線材30のターン部42は、クランク部44を挟んで両側が階段状に形成されている。
ここで、三相の固定子巻線としてのコイル組立体20において、回転子の1極当たり各相のコイル線材30は2個のスロット14、15に設置されている。つまり、周方向に連続して隣接しているコイル組立体20の回転子の1極当たりのスロットの総数は3×2=6である。その結果、周方向の異なるスロットにまたがって設置されているコイル線材30は、周方向に6個離れたスロット同士に設置されるので、コイル線材30の略中央部の1個のクランク部44を加え、周方向に隣接しているスロットから突出するコイル線材30同士の干渉を避けるため、(3×2+1)個の段部をターン部42に形成することが望ましい。このように固定子コア12の一方の軸方向側のコイルエンドでコイル線材30に7個の段部(クランク部44を含む)を形成したことにより、コイルエンドの高さを低くし、コイルエンドの径方向の幅を小さくすることができる。
次に、本実施形態のコイル組立体20の製造方法について図8〜図11を参照して説明する。本実施形態のコイル組立体20の製造方法は、図8に示すように、準備工程101と、編込み工程102と、巻付け工程103とを順に行うものである。
まず、準備工程101では、図5に示すように、所定距離を隔てて並列状に配置された複数(40個)のスロット収容部40と、隣り合うスロット収容部40同士を接続する複数(39個)のターン部42とを有し、隣り合うスロット収容部40同士の間隔が長手方向の一端側から他端側に向かって増加しているコイル線材30を準備する。なお、コイル線材30は、1個の完成品のコイル組立体20につき12本を準備する。
次の編込み工程102では、12本のコイル線材30を互いに編み込んで、最終的に図10に示す帯状の線材集積体55を形成する。本実施形態では、まず、2本の第1及び第2コイル線材30A、30Bを編込む編込み工程を行う。この編込み工程では、最初に、図9に示すように、第1コイル線材30Aと第2コイル線材30Bを互いに所定の位置に配置する(配置工程)。
この場合、第1及び第2コイル線材30A、30Bの、隣り合うスロット収容部40同士の間隔Xが狭い側となる一端側(図9の右側)の端部(引出し部43a)を保持するとともに、第1及び第2コイル線材30A、30Bの各軸線のなす角度θが所定範囲(約10°〜90°)となるように他端側(図9の左側)の端部(引出し部43b)を保持する。このとき、第1コイル線材30Aと第2コイル線材30Bは、長手方向に1スロットピッチずれた状態に配置される。なお、第1及び第2コイル線材30A、30Bの一端側がコイル内径側となり、第1及び第2コイル線材30A、30Bの他端側がコイル外径側となっている。
この状態で、第1コイル線材30Aの最も一端側にある第1ターン部A1と第2コイル線材30Bの最も一端側にある第1ターン部B1とを交差させて係合しつつ、第1コイル線材30Aの軸線周りに第2コイル線材30Bを1回転(公転)させて、第1コイル線材30Aの第2ターン部A2と第2コイル線材30Bの第2ターン部B2とを交差させて係合させる(第1回転工程)。これにより、スロット収容部40同士の間隔Xが狭い側となる一端側から、第1コイル線材30Aと第2コイル線材30Bとの編込みを開始する。
次いで、第1コイル線材30Aの第2ターン部A2と第2コイル線材30Bの第2ターン部B2とを交差させて係合しつつ、第1コイル線材30Aの軸線周りに第2コイル線材30Bを回転(公転)させて、第1コイル線材30Aの第3ターン部A3と第2コイル線材30Bの第3ターン部B3とを交差させて係合させる(第2回転工程)。
その後、第1及び第2回転工程と同様の第2コイル線材30Bの回転動作を繰り返すことによって、第1及び第2コイル線材30A、30Bの第4ターン部A4、B4から第39ターン部A39、B39までの対応するターン部同士を一端側から他端側に向かって順に交差させて係合させる。これにより、第1コイル線材30Aと第2コイル線材30Bの編込みが完了する。この場合、両コイル線材30A、30Bの編込みは、スロット収容部40同士の間隔Xが狭い側となる一端側(内径側)から開始されているので、両コイル線材30A、30Bの一端側(内径側)の変形量が、編込み終了側の他端側(外径側)よりも小さくなっている。
なお、編込み完了後の第1及び第2コイル線材30A、30Bは、奇数番目のターン部同士の係合位置では第2コイル線材30Bが第1コイル線材30Aの第1面側(図9の奥側)から第2面側(図9の手前側)へ交差し、偶数番目のターン部同士の係合位置では第2コイル線材30Bが第2面側から第1面側へ交差する状態に編み込まれている。
その後、上記のようにして編込まれた第1及び第2コイル線材30A、30Bよりなる第1コイル線材束を第1コイル線材30Aと見なして、第1コイル線材束と第3コイル線材とを、上記の第1及び第2コイル線材30A、30Bの編込み方法と同様の方法で編込むことによって、3本のコイル線材30が編込まれてなる第2コイル線材束を形成する。
また、3本のコイル線材30が編込まれてなる第2コイル線材束を第1コイル線材30Aと見なし、同様に3本のコイル線材30が編込まれてなる第3コイル線材束を第2コイル線材30Bと見なして、上記の第1及び第2コイル線材30A、30Bの編込み方法と同様の方法で編込むことによって、6本のコイル線材30が編込まれてなる第4コイル線材束を形成する。
さらに、6本のコイル線材30が編込まれてなる第4コイル線材束と同様に6本のコイル線材30が編込まれてなる第5コイル線材束とを、上記の編込み方法と同様の方法で編込むことによって、12本のコイル線材30が編込まれてなる線材集積体55を形成する。このようにして、最終的に三相の固定子巻線として所望の本数(本実施形態では12本)のコイル線材30が編込まれてなる帯状の線材集積体55を形成して、編込み工程102を終了する。
次の巻付け工程103では、編込み工程102で形成された帯状の線材集積体55を渦巻き状に巻き付けて、図11に示す円筒状の成形体56を形成する。このとき、線材集積体55の巻き付けは、図10に示すように、スロット収容部40同士の間隔Xが狭い側となる一端側(引出し部43a側)がコイル内径側となるように、一端側(引出し部43a側)から開始される。これにより、形成された成形体56は、内径側に位置するスロット収容部40及びターン部42の良好な位置精度や整列精度が確保されている。
その後、所定のコイル線材30の端部(引出し部43a、43b)同士を溶接等により接続することによって、図3に示すコイル組立体20が完成する。
以上のように、本実施形態のコイル組立体20の製造方法によれば、編込み工程102において、スロット収容部40同士の間隔が狭い側となる一端側(内径側)からコイル線材30の編込みを開始するようにしているので、コイル線材30の一端側(内径側)の変形量を、編込み終了側の他端側(外径側)よりも小さくすることができる。そして、次の巻付け工程103において、編込み工程102で形成した線材集積体55を、スロット収容部40同士の間隔が狭い側となる一端側を内径側にして渦巻き状に巻き付けて円筒状の成形体56を形成するようにしている。これにより、成形体56の内径側に位置するスロット収容部40及びターン部42の良好な位置精度や整列精度を確保することができる。
そのため、スロット収容部40の良好な位置精度や整列精度を確保することができることから、磁気ギャップを小さくすることが可能となり、回転電機の高性能化や小型化を図ることが可能となる。また、ターン部42の良好な位置精度や整列精度を確保することができることから、固定子の内周側に配置される回転子との干渉を回避して、破損などの発生を回避することが可能となる。
また、本実施形態では、コイル線材30のターン部42が階段状に形成されていることから、ターン部42の剛性が高まり、編込み時においてコイル線材30が変形し難くされている。そのため、編込み工程102において、スロット収容部40同士の間隔が狭い側となる一端側(内径側)から編込みを開始することによる上記の効果をより確実に発揮させることができる。
さらに、本実施形態では、コイル線材30は、ターン部42の頂部にクランク部44を有することから、ターン部42の剛性が高まり、編込み時においてコイル線材30が変形し難くされている。そのため、編込み工程102において、スロット収容部40同士の間隔が狭い側となる一端側(内径側)から編込みを開始することによる効果をより確実に発揮させることができる。
また、本実施形態の編込み工程102は、上記のような第1回転工程及び第2回転工程を有するため、複数のターン部42が形成された第1コイル線材30Aと第2コイル線材30Bとの編込みを簡易に且つ確実に行うことができる。また、第1コイル線材30Aと第2コイル線材30Bとの編込みを行った後に、各コイル線材30を変形させる工程を必要としないので、工数の増大や、コイル線材30の表面を被覆する絶縁被膜の損傷発生を回避することができる。
また、編込み工程102は、第1及び第2コイル線材30A、30Bの第3ターン部A3、B3を係合させる第2回転工程終了後、第2回転工程と同様の動作を繰り返して第1及び第2コイル線材30A、30Bの第4ターン部A4、B4以降の係合を順次行うようにしている。そのため、第1及び第2コイル線材30A、30Bの一端側(内径側)の変形量を編込み終了側の他端側(外径側)よりも小さくしつつ、第1コイル線材30Aと第2コイル線材30Bとの編込みを全長に渡って確実に行うことができる。
また、本実施形態の編込み工程102は、第1コイル線材束と第3コイル線材を編込む第1回転工程及び第2回転工程を有するため、複数のターン部42が形成された第1コイル線材束と第3コイル線材との編込みを簡易に且つ確実に行うことができる。また、第1コイル線材束と第3コイル線材との編込みを行った後に、各コイル線材を変形させる工程を必要としないので、工数の増大や、コイル線材30の表面を被覆する絶縁被膜の損傷発生を回避することができる。
さらに、本実施形態の編込み工程102は、第2コイル線材束と第3コイル線材束を編込む第1回転工程及び第2回転工程を有するため、複数のターン部42が形成された第2コイル線材束と第3コイル線材束との編込みを簡易に且つ確実に行うことができる。また、第2コイル線材束と第3コイル線材束との編込みを行った後に、各コイル線材を変形させる工程を必要としないので、工数の増大や、コイル線材30の表面を被覆する絶縁被膜の損傷発生を回避することができる。
〔他の実施形態〕
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
例えば、上記の実施形態の編込み工程102においては、第1コイル線材30Aの軸線周りに第2コイル線材30Bを公転させることにより編込むようにしていたが、図12に示す変形例1のように、第1コイル線材30A及び第2コイル線材30Bの両方を互いに公転させるようにしてもよい。
また、上記の実施形態の編込み工程102では、第1及び第2コイル線材よりなる第1コイル線材束と第3コイル線材とを編込んで、3本のコイル線材30よりなる第2コイル線材束を形成した後、3の倍数の本数のコイル線材30が編込まれてなるコイル線材束を形成することによって、最終的に12本のコイル線材30が編込まれてなる帯状の線材集積体55を形成するようにしていたが、他の方法で最終的に12本のコイル線材30が編込まれてなる帯状のコイル線材束を形成することも可能である。例えば、第1及び第2コイル線材よりなる第1コイル線材束を6束形成し、それら第1コイル線材束を2束ずつ編込んで、4本のコイル線材30が編込まれてなる第2コイル線材束を3束形成する。そして、2束の第2コイル線材束を編込んで、8本のコイル線材30が編込まれてなる第3コイル線材束を形成し、その第3コイル線材束と第2コイル線材束とを編込んで、最終的に12本のコイル線材30が編込まれてなる帯状の線材集積体55を形成するようにしてもよい。
また、上記の実施形態編込み工程102では、第1及び第2コイル線材30A、30Bの少なくともいずれか一方を他方の軸線周りに公転させることにより編込むようにしていたが、他端の方法で編込むことも可能である。例えば、図13に示す変形例2のように、第1及び第2コイル線材30A、30Bの一端側にて第1ターン部同士を交差させるとともに、各コイル線材30A、30Bの各軸線のなす角度θが所定範囲となるように各コイル線材30A、30Bの他端側を保持した状態で、各コイル線材30A、30Bを各々の軸線周りに同一方向へそれぞれ回転(自転)させることによって、第1及び第2コイル線材30A、30Bの各ターン部42同士を順次交差させて編込むようにしてもよい。このようにすれば、第1及び第2コイル線材30A、30Bの各軸線のなす角度θを小さくすることが可能となるので、編込み時に発生する第1及び第2コイル線材30A、30Bの変形を少なく抑制することができる。