JP5163278B2 - 回転電機の固定子 - Google Patents

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Description

本発明は、乗用車等に搭載される回転電機の固定子に関する。
従来から、U字状に成形した導体セグメントを固定子コアのスロットに挿入し、反対側に突出した導体セグメントの端部同士を溶接等で接合することにより構成された固定子巻線の構造が知られている(例えば特許文献1参照。)。この固定子巻線では、ねじって成形されたU字状の導体セグメントを用いているため、固定子コアに組み付けたときに、隣接する導体セグメントのターン部間に隙間が生じる。このため、コイルエンド部において導体間の絶縁距離が確保されている。
特許第3438570号公報(第5−7頁、図1−13)
ところで、特許文献1に開示された構成ではねじって成形されたU字状の導体セグメントを用いているためコイルエンド部の導体間の絶縁距離が確保されているが、コイルエンド部の高さを低くするためにコイルエンド部の導体の形状を成形したり、ねじりを伴わない線材を成形して高さが低いコイルエンド部を形成しようとすると、線材の外周に形成された絶縁被膜が部分的に薄くなって絶縁性能が低下するという問題があった。この問題は、コイルエンド部の導体間に絶縁紙等の絶縁部材を挿入することで解決することができるが、その分コイルエンドの高さが高くなったり、部品点数が増加することになるため望ましくない。
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、絶縁性能を向上させることができる回転電機の固定子を提供することにある。
上述した課題を解決するために、本発明の回転電機の固定子は、周方向に複数のスロットを有する固定子コアと、線材により形成されスロットに設置されている固定子巻線とを備えており、固定子巻線は、周方向の異なるスロットに収容されたスロット収容部と、スロットの外部でスロット収容部同士を接続しているターン部とを有し、スロットから突出するターン部に、固定子コアの端面に沿った段部が形成されており、段部の屈曲部位の内側に凹部を有している。
このように、線材の階段形状の屈曲部位の内側に凹部を形成することにより、同一形状の線材を重ねて配置した際に、隣接する他の線材の階段形状の屈曲部位の外側の絶縁被膜が薄くなった部位との間の線材間の距離を確保することができ、コロナ放電等の発生による絶縁性の低下を防止して絶縁性能を向上させることができる。また、スロットの外部で線材のスロット収容部同士を接続している線材のターン部がスロットから突出する突出箇所は、線材がまたがって配置されているスロット同士に向けて段部が形成されているため、ターン部の突出箇所の間隔が、線材が配置されているスロット同士の間隔よりも狭くなり、固定子コアから突出している線材の形状が全体に小さくなって、コイルエンドの高さを低くすることができる。
また、上述したスロットから突出するターン部のすべての突出箇所に、固定子コアの端面に沿った段部が形成されていることが望ましい。あるいは、上述した凹部は線材の幅分形成されていることが望ましい。これにより、ターン部のすべてにおいて、あるいは線材の幅方向の全体において、隣接する線材間の距離を確保して確実に絶縁性能を向上させることができる。
また、上述した線材は導体を有し、さらに導体の外周を覆う絶縁皮膜を有し、絶縁被膜は100〜200μmの厚みであり、凹部の深さは50μm以下であることが望ましい。100〜200μmの厚みを有する絶縁被膜で覆われた線材を階段形状に折り曲げた場合、屈曲部位の外側の絶縁被膜の厚みが20〜30μm程度減少する。したがって、凹部の深さを50μm以下に設定してもこの減少した厚み分線材間の間隔を拡大することができる。また、凹部の深さを50μm以下とすることにより、線材の断面減少がほとんどないため、固定子巻線の抵抗値の増加を抑制することができる。
また、上述したターン部は、固定子コアから最も離れた位置にクランク形状に形成されたクランク部を有することが望ましい。これにより、固定子コア端面からクランク部までの線材の長さが長くなるため、段部の形成が容易となる。
また、上述したクランク部は、固定子コアの端面に平行に形成されていることが望ましい。これにより、線材をねじらずに固定子巻線の形状に成形することができるため、固定子巻線の製造が容易となる。
また、上述したクランク部は、線材の幅分だけ固定子コアの径方向にずれていることが望ましい。これにより、線材同士を径方向に隙間なく並べることができるため、固定子巻線の径方向の幅を狭くすることができる。
また、上述した固定子巻線の相数をk、回転子の1極あたりの各相のスロットの数をtとすると、ターン部に形成されている段部の合計は(k×t)であることが望ましい。
固定子巻線の相数がk、回転子の1極あたりの各相のスロットの数がtであると、周方向に隣接しているk相の固定子巻線が巻回されている1極当たりのスロットの総数はk×tである。その結果、周方向の異なるスロット同士にまたがって配置されている線材は、周方向にk×t個離れたスロット同士に配置されるので、周方向に隣接しているスロットから突出する線材同士の干渉を避けるため、(k×t)個の段部がターン部に必要になる。このように、(k×t)個の階段形状を形成することにより、線材同士の干渉を防止することができるとともに、コイルエンドの高さをさらに低くすることができる。
また、上述したターン部の突出箇所が固定子コアの軸方向端面に沿っている長さは、周方向に隣り合うスロットの間隔以下の長さであることが望ましい。これにより、スロットから突出する線材の突出部が周方向に隣り合うスロットから突出する線材と干渉することを防止することができる。
また、上述した線材は、固定子コアの全周にわたって連続して形成されていることが望ましい。これにより、固定子巻線の製造コストを低減することができるとともに、電気的接続箇所に腐食等の接続不良が発生することを低減することができる。
また、上述した線材は、断面形状が矩形状であることが望ましい。これにより、線材の断面積増加による固定子巻線の抵抗値低減が可能になり、回転電機の出力を向上させることができる。
また、上述した絶縁被膜は、内層と、内層の外周を覆って内層よりもガラス転移温度の低い外層とを有することが望ましい。これにより、回転電機に発生する熱により絶縁被膜の外層は内層よりも早く結晶化するため、外層の表面硬度が高くなり、線材に傷がつきにくくなる。このため、ターン部に段部を形成する加工を施した線材の絶縁を確保することができる。
以下、本発明を適用した一実施形態の回転電機の固定子について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、一実施形態の回転電機の固定子の部分的な斜視図である。図2は、図1に示す固定子に含まれる固定子巻線を構成する線材の部分的な斜視図である。図1に示す固定子は、例えば車両の電動機および発電機を兼ねる回転電機に使用される。この固定子は、内周側に回転子60(図7参照)を回転自在に収容する。回転子60は、永久磁石により周方向に交互に異なる磁極を、固定子10の内周側と対向する外周側に複数形成している。固定子コア12は、所定厚さの磁性鋼板を軸方向に積層して環状に形成されている。図1に示すように、固定子コア12には、軸方向に沿って内周側に開口して互いに周方向に隣接するスロット14、15が形成されている。隣接するスロット14、15を一組とし、複数組のスロット14、15が周方向に等間隔に並んで配置されている。固定子巻線20は、例えば三相巻線であり、周方向に隣接する一組のスロット14、15に各相の固定子巻線20が巻回されている。そして、周方向に隣接する三組のスロット14、15のそれぞれの組には、異なる相の固定子巻線20が巻回されている。
図3は、固定子巻線20を形成している線材30の断面図である。図3に示すように、固定子巻線20を形成している線材30は、断面形状が矩形状であって、銅製の導体32と、導体32の外周を覆って導体32を絶縁する内層34および外層36からなる絶縁被膜とから形成されている。内層34は、導体32の外周を覆い、外層36は内層34の外周を覆っている。内層34と外層36を合わせた絶縁被膜の厚みは、100μm〜200μmの間に設定されている。このように、内層34および外層36からなる絶縁被膜の厚みが厚いので、線材30同士を絶縁するために線材30同士の間に絶縁紙等を挟み込んで絶縁する必要がない。
外層36は、ナイロン等の絶縁材で形成されている。内層34は、外層36よりもガラス転移温度の高い熱可塑性樹脂またはガラス転移温度が高いポリアミドイミド等の絶縁材で形成されている。すなわち、外層36は、内層34よりもガラス転移温度が低く設定されている。これにより、回転電機に発生する熱により外層36は内層34よりも早く結晶化するため、外層36の表面硬度が高くなり、線材30に傷がつきにくくなる。このため、線材30の絶縁を確保することができる。
図2に示すように、線材30は、固定子コア12のスロット14、15内に配置されるスロット収容部40と、スロット14、15から固定子コア12の外に突出し、周方向に異なるスロットに配置されているスロット収容部40同士を接続しているターン部42とを有しており、固定子コア12に波巻されることにより固定子巻線20が形成されている。ターン部42は、固定子コア12の軸方向端面13の両側にそれぞれ形成されている。ターン部42のほぼ中央部であって固定子コア12から最も離れた位置にねじりを伴わないクランク部44が形成されている。クランク部44は、固定子コア12の軸方向端面13に沿って平行にクランク形状に形成されている。このクランク部44のクランク形状によるずれ量は、線材30のほぼ幅分に設定されている。これにより、径方向に隣接している線材30のターン部42同士を密に巻回することができる。その結果、コイルエンドの径方向の幅を狭くすることができるので、固定子巻線20が径方向外側に張り出すことを防止することができる。
また、スロット14、15から固定子コア12の外に突出するターン部42のすべての突出箇所に、線材30がまたがって配置されているスロット同士に向けて固定子コア12の軸方向端面13に沿って段部46が形成されている。図6に示すように、スロット14、15から突出している線材30のターン部42の突出箇所の間隔、言い換えればターン部42が形成する三角形状部分の底辺の長さは、線材30がまたがって配置されているスロット同士の間隔よりも狭くなっている。その結果、コイルエンドの高さhが低くなる。
また、固定子コア12の端面13に沿った段部46の長さをd1、周方向に隣接するスロット同士の間隔をd2とすると、d1≦d2になっている。これにより、線材30の段部46が周方向に隣り合うスロットから突出する線材30と干渉することを防止することができる。また、周方向に隣接するスロットから突出する線材30同士が互いに干渉することを避けるために、コイルエンドの高さが高くなったり、あるいはコイルエンドの径方向の幅が広がることを防止することができる。その結果、コイルエンドの高さが低くなる。さらに、コイルエンドの径方向の幅を狭くすることができるため、固定子巻線20が径方向外側に張り出すことを防止することができる。
さらに、線材30には、ターン部42のほぼ中央部のクランク部44と、ターン部42の突出箇所に形成した段部46との間に、それぞれ2個の段部48が形成されている。つまり、固定子コア12の一方の軸方向端面13側の線材30のターン部42には、合計6個の段部が形成されている。これにより、段部を有しない三角形状のターン部330(図6)の高さに比べ、ターン部42の高さhが低くなる。段部48の階段形状も、クランク部44、段部46と同様に、固定子コア12の軸方向端面13に沿った形状に形成されている。したがって、線材30のターン部42は、クランク部44を挟んで両側に階段状に形成されている。
上述した三相の固定子巻線20では、回転子の1極当たり各相の線材30は2個のスロット14、15に配置されている。つまり、周方向に連続して隣接している三相の固定子巻線20の回転子60の1極当たりのスロット総数は3×2=6である。その結果、周方向の異なるスロットにまたがって配置されている線材30は、周方向に6個離れたスロット同士に配置されるので、周方向に隣接しているスロットから突出する線材30同士の干渉を避けるため、(3×2)個の段部をターン部42に形成することが望ましい。このように固定子コア12の一方の軸方向側のコイルエンドで線材30に6個の段部を形成することにより、コイルエンドの高さを低くし、コイルエンドの径方向の幅を狭くすることができる。なお、固定子巻線20の相数をk、回転子60の1極あたりの各相のスロット数をtとして、望ましいターン部42の段数を一般化すると(k×t)となる。
次に、上述した固定子巻線20の巻線仕様を図7〜図9に基づいて説明する。図7〜図9では、説明を簡単にするために、回転子60の磁極数、固定子コア12のスロット14、15の総数を実際のものよりも少なくしている。各相においてスロット14、15を一組とし、図8に示すように、4組のスロット14、15が90°間隔に固定子コア12に形成されているものとする。したがって、図7に示すように、スロット14、15を一組とした相の異なる組同士は30°間隔で固定子コア12に形成されている。各スロット14、15には、それぞれ線材30の4本のスロット収容部40が合計8本配置されている。各組のスロット14の径方向外側から内側に向けて線材30が配置されている位置に1〜4の符号を付し、各組のスロット15の径方向外側から内側に向けて線材30が配置されている位置に5〜8の符号を付している。
なお、図1に示した例では、各スロット14、15には、それぞれ線材30の6本のスロット収容部40が合計12本配置されており、その中で周方向の向きが同一の6本が図示されている。
以下では、図9を用いて、一相の固定子巻線20について巻線仕様を説明する。図9において、例えば(1−4)とは、図8の#1の4の位置に配置されている線材30を表している。図9に示すように、スロット14、15の8箇所の位置に配置されている線材は、まず、以下に示す位置の線材が連続して接続されて8グループを形成している。(1−1)、(1−5)の位置の線材は入力部50と接続されている。また、一相の固定子巻線20は、(4−1)、(4−5)の2個の巻端をそれぞれ中性点52としている。三相の固定子巻線20の合計6個の中性点52は、図4および図5に示すように1箇所に集められている。つまり、固定子巻線20はスター結線されており、各相の一方の巻端が中性点52、他方の巻端が入力部50となっている。
(グループ1) (1−1)−(2−2)−(3−1)−(4−2)
(グループ2) (1−2)−(2−1)−(3−2)−(4−1)
(グループ3) (1−3)−(2−4)−(3−3)−(4−4)
(グループ4) (1−4)−(2−3)−(3−4)−(4−3)
(グループ5) (1−5)−(2−6)−(3−5)−(4−6)
(グループ6) (1−6)−(2−5)−(3−6)−(4−5)
(グループ7) (1−7)−(2−8)−(3−7)−(4−8)
(グループ8) (1−8)−(2−7)−(3−8)−(4−7)
そして、これら8グループの連続する線材は、(1−2)と(4−3)、(1−3)と(4−2)、(1−4)と(4−8)、(1−6)と(4−7)、(1−7)と(4−6)、(1−8)と(4−4)を接続することにより、以下に示す入力部50から中性点52に至る図9において点線と実線とで示された連続した線材30により、並列に接続された固定子巻線20(#1)および固定子巻線20(#2)を一組形成している。他の二相の固定子巻線20も同様に、入力部50から中性点52に至る連続した線材30により、並列に接続された固定子巻線20をそれぞれ一組形成している。図9に示す(1−4)と(4−8)、(1−8)と(4−4)の接続部54は、図4および図5において、三相分が同じ符号54で示されている。
・固定子巻線#1
(入力部)−(グループ1)−(グループ3)−(グループ8)−(グループ6)−(中性点)
・固定子巻線#2
(入力部)−(グループ5)−(グループ7)−(グループ4)−(グループ2)−(中性点)
このように、固定子コア12の全周にわたり連続した線材30により入力部50から中性点52まで一相の固定子巻線を形成しているので、公知のセグメント導体を溶接等により電気的に接続して入力部50から中性点52までの固定子巻線を形成する構成に比べ、電気的接続箇所を極力減らすことができる。これにより、固定子巻線20の製造コストが低下するとともに、固定子巻線20の電気的接続不良を極力低減することができる。
また、コイルエンドの径方向の幅が狭くなってコイルエンドが径方向外側に張り出さなくなるため、中性点52をコイルエンドの径方向外側に取り出すことができる。
ところで、上述したように、線材30のターン部42に段部46、48を形成し、これらの段部46、48が隣接する線材30同士でほぼ接するように線材30が配置される。これらの段部46、48では、屈曲部位の周辺の絶縁被膜(内層34、外層36)に着目すると、直線形状の線材を曲げ加工(プレス成形)して段部46、48を形成する際に屈曲部位の外側の絶縁被膜が減少する。一般には、絶縁被膜の厚みが100〜200μmの場合には屈曲部位の外側の絶縁被膜の厚みは20〜30μm程度減少する。図10は、段部46、48の屈曲部位の拡大図である。屈曲部位の内側の半径R2よりも外側の半径R1の方が大きいため、この半径R1の部位の表面を覆っている絶縁被膜の厚みが減少する。このように、絶縁被膜が部分的に薄くなったターン部42を隣接配置すると、この絶縁被膜が薄くなった部位の線材30とこれに隣接する線材30との間でコロナ放電等が発生するおそれがある。このため、本実施形態では、段部46、48の屈曲部位の内側に幅分の凹部を設け、線材30の絶縁被膜が薄くなった部位との間の距離の拡大を図っている。
図11は、隣接する段部の拡大図である。図12は、周方向に隣接する2本の線材のそれぞれのターン部同士の重なり状態を示す斜視図である。これらの図に示すように、本実施形態では、ターン部42の段部46、48およびクランク部44のそれぞれについて、屈曲形状の内側に凹部41が形成されている。この凹部41は、線材を曲げ加工してクランク形状に成形する際に用いる治具の形状を工夫して、すなわち、屈曲形状の内側に対応する治具に凹部41と対応する凸部を設けることにより、形成するための曲げ加工と同時に形成している。
なお、凹部41は、図11に示した形状以外に、図13に示した通り、屈曲部位の内側のなめらかな半径R2に対し、より曲率の大きい(R寸法の小さい)曲線を描く形状の凹部410としてもよい。さらに、凹部410はすべて曲面ではなく、途中に平面部を持つものでもよい。
また、この凹部410(41も同様)の深さは、図13に示すように、半径R2の仮想曲線と凹部410との距離dとして、定義されるものである。この深さは、50μm以下に設定されている。望ましくは、屈曲部位の外側表面43の絶縁被膜の厚みが20〜30μm程度減少することを考慮すると、凹部41の深さは30〜50μmの範囲に設定されている。屈曲部位の外側の絶縁被膜の厚みが20〜30μm程度減少するため、凹部の深さを50μm以下に設定してもこの減少した厚み分線材間の間隔を拡大することができる。また、凹部の深さを50μm以下とすることにより、線材の断面減少がほとんどないため、固定子巻線20の抵抗値の増加を抑制することができる。
このように、線材30の階段形状の屈曲部位の内側に凹部41を形成することにより、同一形状の線材30を重ねて配置した際に、隣接する他の線材30の階段形状の屈曲部位の外側の絶縁被膜が薄くなった部位との間の線材30間の距離を確保することができ、コロナ放電等の発生による絶縁性の低下を防止して絶縁性能を向上させることができる。また、スロットの外部で線材30のスロット収容部40同士を接続している線材30のターン部42がスロットから突出する突出箇所は、線材30がまたがって配置されているスロット同士に向けて階段形状に形成されているため、ターン部42の突出箇所の間隔が、線材30が配置されているスロット同士の間隔よりも狭くなり、固定子コア12から突出している線材30の形状が全体に小さくなって、コイルエンドの高さを低くすることができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、図2に示したように、線材30のターン部42に固定子コア12の軸方向端面13に沿った段部46とほぼ中央部のクランク部44の他に4箇所に段部48を形成したが、これらの段部48の数を減らしすようにしてもよい。
また、上述した実施形態では、段部の屈曲部位の内側の凹部41は線材30を階段形状に曲げ加工する際に同時に成形したが、曲げ加工とは別に後工程で追加するようにしてもよい。また、図12に示した例では、全ての段部の屈曲部位の内側に凹部41を形成したが、他の線材の段部の屈曲部位の外側表面43が隣接する箇所に対応する場合に限って凹部41を形成するようにしてもよい。
また、上述した実施形態では、電動機および発電機を兼ねている回転電機の固定子について説明したが、電動機または発電機のいずれか一方の機能のみを有する回転電機の固定子についても本発明を適用することができる。
また、上述した実施形態では、線材30のターン部42のほぼ中央部にねじりを伴わない径方向に沿ったクランク部44を形成したが、クランク部44の位置は中央部からずれてもよい。また、スター結線の固定子巻線に限定されず、デルタ結線の固定子巻線を有する固定子に本発明を適用してもよい。
一実施形態の回転電機の固定子の部分的な斜視図である。 図1に示す固定子に含まれる固定子巻線を構成する線材の部分的な斜視図である。 固定子巻線を形成している線材の断面図である。 本実施形態の固定子の部分的な斜視図である。 固定子の部分的な斜視図である。 線材のターン部の形状を示す模式図である。 回転電機の回転子の磁極および固定子のスロットの構成を示す模式図である。 1相当たりのスロットの配置を示す説明図である。 1相当たりの巻線仕様図である。 段部の屈曲部位の拡大図である。 隣接する段部の拡大図である。 周方向に隣接する2本の線材のそれぞれのターン部同士の重なり状態を示す斜視図である。 凹部の変形例を示す図である。
符号の説明
10 固定子
12 固定子コア
13 軸方向端面
14、15 スロット
20 固定子巻線
30 線材
32 導体
40 スロット収容部
41 凹部
42 ターン部
44 クランク部
46、48 段部
50 入力部
52 中性点
54 接続部
60 回転子

Claims (12)

  1. 周方向に複数のスロットを有する固定子コアと、線材により形成され前記スロットに設置されている固定子巻線とを備える回転電機の固定子において、
    前記固定子巻線は、周方向の異なる前記スロットに収容されたスロット収容部と、前記スロットの外部で前記スロット収容部同士を接続しているターン部とを有し、
    前記スロットから突出する前記ターン部に、前記固定子コアの端面に沿った段部が形成されており、
    前記段部の屈曲部位の内側に凹部を有することを特徴とする回転電機の固定子。
  2. 前記スロットから突出する前記ターン部のすべての突出箇所に、前記固定子コアの端面に沿った段部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機の固定子。
  3. 前記凹部は前記線材の幅分形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の回転電機の固定子。
  4. 前記線材は導体を有し、さらに前記導体の外周を覆う絶縁皮膜を有し、前記絶縁被膜は100〜200μmの厚みであり、前記凹部の深さは50μm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の回転電機の固定子。
  5. 前記ターン部は、前記固定子コアから最も離れた位置にクランク形状に形成されたクランク部を有することを特徴とする請求項4に記載の回転電機の固定子。
  6. 前記クランク部は、前記固定子コアの端面に平行に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の回転電機の固定子。
  7. 前記クランク部は、前記線材の幅分だけ前記固定子コアの径方向にずれていることを特徴とする請求項5または6に記載の回転電機の固定子。
  8. 前記固定子巻線の相数をk、回転子の1極あたりの各相の前記スロットの数をtとすると、前記ターン部に形成されている前記段部の合計は(k×t)であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の回転電機の固定子。
  9. 前記ターン部の突出箇所が前記固定子コアの軸方向端面に沿っている長さは、周方向に隣り合う前記スロットの間隔以下の長さであることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項記載の回転電機の固定子。
  10. 前記線材は、前記固定子コアの全周にわたって連続して形成されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の回転電機の固定子。
  11. 前記線材は、断面形状が矩形状であることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の回転電機の固定子。
  12. 前記絶縁被膜は、内層と、前記内層の外周を覆って前記内層よりもガラス転移温度の低い外層とを有することを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の回転電機の固定子。
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