JP5566874B2 - エアバッグ作動回路 - Google Patents

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Description

本発明は、衝突事故等が発生した時にスクイブ(Squib)を発熱させて起爆剤に点火させエアバッグを膨張させる、エアバッグ作動回路に関するものである。
近年、車両に搭載される安全装置として、衝突時の衝撃から乗員を保護するエアバッグが普及している。エアバッグには、車両への設置場所や機能に応じて様々な種類がある。例えば運転席用エアバッグ、助手席用エアバッグへは、車両のヘッドライトの後部等に備えられた衝突センサが衝突を検出すると、同センサから作動信号が発信される。作動信号を受けたエアバッグ作動回路は、車両のステアリングやインストルメントパネルに搭載された運転席用エアバッグ、助手席用エアバッグを膨張させて乗員を保護する。
スクイブは典型的には抵抗素子であり、エアバッグにガスを供給するインフレータ内に備えられている。エアバッグ作動回路がスクイブに大電流を流すとスクイブが発熱し、隣接する起爆剤に点火する。その爆発熱を使った化学物質反応によって瞬時にエアバッグ内にチッソガスを大量発生させてエアバッグが膨張する。
エアバッグ作動時にスクイブに流れる電流は、エアバッグ作動回路に含まれるバックアップコンデンサに予め充電されている。しかし車両のイグニッションキーをOFFからONにした当初は、未だバックアップコンデンサが充電されていないため、充電完了までエアバッグは作動不能である。バックアップコンデンサの充電が完了するまでに要する時間を、以下「スタートアップ時間」と呼ぶ。
現状では10秒程度のスタートアップ時間が必要とされている。このスタートアップ時間が経過するまでの間に、例えば乗員がアクセルとブレーキを踏み間違え、車両が急発進して衝突事故を起こした場合、エアバッグは作動することができない。エアバッグには、衝突事故などの必要時には必ず作動することが求められるため、エアバッグが作動不能なスタートアップ時間は、可能な限り短縮すべきである。
特許文献1では、エアバッグ点火保証電圧の低下によって、バックアップコンデンサの容量を小さくしている。特許文献2では、バックアップコンデンサを複数備えることで、バックアップ時間(エアバッグ点火保証電圧で放電し続けられる時間)を長くしている。特許文献3では電源とバックアップコンデンサとの間に定電流回路を入れることによって、小さい電流でバックアップコンデンサを充電可能としている。
特開2005−88748号公報 特開2004−262369号公報 特開平11−332131号公報
特許文献1の技術では、バックアップコンデンサの容量が小さいため、スタートアップ時間の短縮を実現できる可能性がある。しかしバックアップコンデンサの容量を小さくした分、バックアップコンデンサの容量が大きいときよりも任意のバックアップ時間経過後においてエアバッグ作動時にスクイブに流れる電流は小さくなる。これでは必要時にエアバッグが作動しないおそれがあり、エアバッグの信頼性が損なわれてしまう。
特許文献2の目的はバックアップ時間の延長であり、スタートアップ時間の短縮に関連するものではない。特許文献3では電源の負担軽減、小型化が可能とされているが、小さい電流で充電するならば、スタートアップ時間の短縮は図れない。
本発明は、このような課題に鑑み、バックアップコンデンサの充電完了までのスタートアップ時間を短縮しつつ、エアバッグを作動させるのに十分な大電流をスクイブに流すことも可能なエアバッグ作動回路を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明にかかるエアバッグ作動回路の代表的な構成は、電源と接続された第1の抵抗と、第1の抵抗の下流に直列に接続されたスクイブと、第1のスイッチを介して第1の抵抗に並列に接続され、スクイブが発熱してエアバッグを膨張させるのに十分な大電流をスクイブに流すことが可能な電流路と、電源と電流路との間に接続され、電源からの電流を充電し、第1のスイッチがONになったときに放電して大電流を電流路に流すバックアップコンデンサと、電源とバックアップコンデンサとの間に接続された第2の抵抗と、第2のスイッチを介して第2の抵抗に並列に接続された第3の抵抗とを備え、第2のスイッチは、車両のイグニッションがONになった時点またはイグニッションON後のスクイブ電源ラインのチェックの直後からONになり、バックアップコンデンサの充電が完了するとOFFになることを特徴とする。
上記の構成によれば、車両のイグニッションがONになり、バックアップコンデンサの充電が開始されると同時に、第2のスイッチもONになる。したがって充電中、バックアップコンデンサは、並列に接続された第2および第3の抵抗を介して電源に接続される。第2の抵抗のみを介する場合と比較すると、並列接続された第2および第3の抵抗の合成抵抗のほうが小さくなるから、バックアップコンデンサはより短時間で充電される。すなわち、上記の大電流を流すのに十分な電荷を蓄積するまでのスタートアップ時間が短くなる。
車両のイグニッションがONになった当初は、充電完了までに要するスタートアップ時間が経過しないとバックアップコンデンサは大電流を流すことができず、エアバッグを作動させることができない。しかし本発明によれば、スタートアップ時間が短縮され、エアバッグは迅速に作動可能な状態となる。
なおエアバッグが作動するときには第1のスイッチがONになり、過電流保護機能を担っている第1の抵抗を迂回して、これに並列に接続された電流路に大電流が流れる。この電流路にはほとんど抵抗がないため、エアバッグを作動させるのに十分な大電流をスクイブまで流すことが可能である。
また、第2のスイッチは、バックアップコンデンサの充電が完了すると、すなわちスタートアップ時間が経過すると、OFFになる。これによって第3の抵抗はエアバッグ作動回路から切り離され、第2の抵抗のみが残る。並列接続されていた第2および第3の抵抗の合成抵抗より、第2の抵抗単独のほうが抵抗値は大きい。かかる第2の抵抗は、スタートアップ時間の経過後は、第1の抵抗とともに、スクイブに過電流が流れることを防止する過電流保護機能を担うことができる。
なお、車両のイグニッションONと同時に第2のスイッチをONにせず、一旦第2の抵抗のみ通電してスクイブの電源ラインの不具合をチェックし、その直後に第2のスイッチをONさせるようにしてもよい。このチェックは短時間(数十msecから長くても500msec程度)で行われ、スタートアップ時間に大きく影響することはない。もし電源ラインに不具合があると第2のスイッチはONされない。こうすることで、スクイブに過電流が流れることを防止する過電流保護機能を付与できる。
エアバッグ作動回路は、バックアップコンデンサの電圧を測定する測定手段(例えば電圧計)をさらに備え、測定手段は、所定のテストモードにおいて、第2のスイッチをONにして充電が完了したバックアップコンデンサが放電するときの電圧降下と、第2のスイッチをOFFにして充電が完了したバックアップコンデンサが放電するときの電圧降下とを測定するとよい。測定手段は、あるいは、両方の電圧降下のうちいずれか一方を測定してもよい。
上記の構成によれば、例えばエアバッグ作動回路を組み付けたときに上記のテストモードを実行し、バックアップコンデンサの容量の正否をより精度よくテストできる。テストモードでは、バックアップコンデンサを、並列接続された第2および第3の抵抗を介して充電した場合と、第2の抵抗のみを介して充電した場合とで比較する。これら2通りの方法で充電したバックアップコンデンサを放電させて、それぞれの電圧降下(電圧と時間との関係)を測定する。
バックアップコンデンサの容量が正しければ、所定の適切な時間にわたって放電が行われ、電圧が降下する。バックアップコンデンサの容量が誤って小さければ放電時間は短くなる。これにより、大電流を流すだけの容量が不足していることが分かる。バックアップコンデンサの容量が誤って大きければ放電時間は長くなる。これにより、大電流を流すことはできるものの、スタートアップ時間が長くなり、並列接続された第2および第3の抵抗を介して充電した効果が損なわれていることが分かる。
本発明によれば、バックアップコンデンサの充電完了までのスタートアップ時間を短縮しつつ、エアバッグを作動させるのに十分な大電流をスクイブに流すことも可能なエアバッグ作動回路を提供可能である。
本発明によるエアバッグ作動回路の実施形態を適用可能な運転席用エアバッグ装置を例示するステアリングホイールの正面図である。 図1のA−A断面図である。 図2のエアバッグ作動回路の一例を示す回路図である。 図2のバックアップコンデンサの充電が完了するまでのスタートアップ時間を例示する概略図である。 図2の電圧計がテストモードにおいて測定するバックアップコンデンサの電圧降下を例示する概略図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
(運転席用エアバッグ装置)
図1は、本発明によるエアバッグ作動回路の実施形態を適用可能な運転席用エアバッグ装置を例示するステアリングホイールの正面図である。運転席用エアバッグ装置100は、ステアリングホイール110に組み込まれている。
ステアリングホイール110の中央部のカバー150は、後述するエアバッグ140が膨張展開する時に開裂して、エアバッグ140を車室内へ導く。カバー150の中央にはエンブレム設置部160があり、エンブレム設置部160に近接して、テアライン(開裂線とも称される)170が設けられている。テアライン170は、エアバッグ140の膨張展開初期にカバー150が開裂し易いように、断面が略三角形の連続した溝部を成形して、略三角形の一つの頂点の角部を表面側にして薄肉化したものである。
図2は、図1のA−A断面図であり、運転席用エアバッグ装置100が膨張展開する前の、通常状態を例示するものである。エアバッグ140内に収容されたリテーナリング250は、組付用ボルト260の圧入・かしめまたはそれらの組み合わせによって、エアバッグ140のガス吹込口をハウジング220に固定している。
ハウジング220は、ディスク型インフレータ230の径より大きな径を有する貫通孔を中央に備えている。ハウジング220の一方側(車内側)では、上述のようにリテーナリング250を用いて、ハウジング220の貫通孔にエアバッグ140のガス吹込口が接続されている。他方側(車外側)からはハウジング220の貫通孔に、ディスク型インフレータ230が進入している。
ハウジング220は、エアバッグ140を収納する一部の側壁部と、上部にエアバッグを収納する一部の側壁部を成形したカバー150とを構成する。ハウジング220を経由した組付用ボルト260に、組付用ナット280を締込むことにより、エアバッグ140をハウジング220に固定する。
図2に例示するように、ディスク型インフレータ230にはスクイブ290が内蔵されている。スクイブ290はクロックスプリング(回転接続回路体)292に電気的に接続され、さらにハーネス294を介してエアバッグ作動回路300に接続されている。クロックスプリング292の構造の詳細は省略するが、ステアリングホイール110を回転させてもハーネス294が切れることなく通電状態を保てる構造を有する。
(エアバッグ作動回路)
図3は図2のエアバッグ作動回路300の一例を示す回路図である。以下、本発明の実施形態に直接関係する要素のみ説明する。エアバッグ作動回路300は、起爆用ASIC(Application Specific Integrated Circuit)310とそれ以外の部分とに大別される。エアバッグ作動回路300は制御部328によって制御され、とりわけエアバッグ作動回路300に含まれる半導体スイッチやセレクタなどのスイッチ類は、制御部328によって操作される。
エアバッグ作動回路300は、電源ASIC302と定常的に電気的に接続されているバイアス電圧供給用抵抗R1(第1の抵抗)を備える。バイアス電圧供給用抵抗R1の抵抗値は、本実施形態では620Ωであるが、かかる値に限定されるものではない。
エアバッグ作動回路300は、バイアス電圧供給用抵抗R1の下流に直列に接続され所定の値を超過する電流が流れるのを防止する電流制限回路A03を備え、これは、過電流保護回路として機能する。
エアバッグ作動回路300は、半導体スイッチA02を介してバイアス電圧供給用抵抗R1に並列に接続可能な過電流保護抵抗R4を備える。過電流保護抵抗R4の抵抗値は、本実施形態では200Ωであるが、かかる値に限定されるものではない。
(エアバッグ作動時の挙動)
エアバッグ作動回路300は、電流制限回路A03の下流に直列に接続されるスクイブ290を備える。図2の衝突センサ329が衝突を検知し、同センサ329からエアバッグ作動回路300に作動信号が発信されると、制御部328は半導体スイッチS01(第1のスイッチ)をON、起爆用FET(Field Effect Transistor)312、314をONにする。その結果、バックアップコンデンサ326から起爆用ASIC310まで、ほとんど抵抗を介さない電流路331を大電流330が流れる。この大電流330は、予めバックアップコンデンサ326に充電されていたものである。スクイブ290は、この大電流330を受けて発熱し、起爆剤(図示省略)に点火してエアバッグ140を膨張させる。
バックアップコンデンサ326は、電源ASIC302と電流路331との間に接続されている。バックアップコンデンサ326は、電源ASIC302からの電流を充電し、半導体スイッチS01がONになったときに放電して大電流330を電流路331に流す。
電源ASIC302とバックアップコンデンサ326との間には、第2の抵抗R2が接続されている。第2の抵抗R2には、第2のスイッチS05を介して急速充電用抵抗R3(第3の抵抗)が並列に接続されている。第2および第3の抵抗R2、R3はいずれも、本実施形態では225Ωであるが、かかる値に限定されるものではない。
制御部328は、乗員が車両のイグニッションキー(不図示)を回すなどして、図2のイグニッション327がONになった時点から第2のスイッチS05をONにし、バックアップコンデンサ326の充電が完了するとOFFにする。
上記の構成によれば、車両のイグニッション327がONになり、バックアップコンデンサ326の充電が開始されると同時に、第2のスイッチS05もONになる。したがって充電中、バックアップコンデンサ326は、並列に接続された第2の抵抗R2および急速充電用抵抗R3(第3の抵抗)を介して電源ASIC302に接続される。第2の抵抗R2のみを介する場合と比較すると、並列接続された第2および第3の抵抗R2、R3の合成抵抗のほうが小さくなる。
図4は図2のバックアップコンデンサ326の充電が完了するまでのスタートアップ時間を例示する概略図である。ライン334は、並列接続された第2および第3の抵抗R2、R3を介してバックアップコンデンサ326を充電した場合の電荷−時間の関係を例示する。一方、ライン336は、仮に第2の抵抗R2のみを介してバックアップコンデンサ326を充電した場合の電荷Q−時間Tの関係を例示する。
図4に例示する電荷Q1は、大電流330を流すのに十分な電荷である。ライン334、336を比較すれば明らかなように、バックアップコンデンサ326は、並列接続された2つの抵抗R2、R3を介したほうが、より短いスタートアップ時間T1で電荷Q1まで充電される。すなわち、上記の大電流330を流すのに十分な電荷を蓄積するまでのスタートアップ時間が短くなる。第2の抵抗R2のみを介してバックアップコンデンサ326を充電した場合は、より長いスタートアップ時間T2がかかってしまう。
車両のイグニッション327がONになった当初は、充電完了までに要するスタートアップ時間が経過しないとバックアップコンデンサ326は大電流330を流すことができず、エアバッグ140を作動させることができない。しかし本実施形態によれば、スタートアップ時間が短縮され、エアバッグ140は迅速に作動可能な状態となる。
従来のスタートアップ時間T2は10秒程度であった。しかし本実施形態によってスタートアップ時間が短縮される(スタートアップ時間T1)ため、イグニッション327がONになってから間もなく、例えば乗員がアクセルとブレーキを踏み間違え、車両が急発進して衝突事故を起こした場合も、エアバッグ140が作動する。
なおエアバッグ140が作動するときには半導体スイッチS01がONになり、過電流保護機能を担っているバイアス電圧供給用抵抗R1を迂回して、これに並列に接続された電流路331に大電流330が流れる。この電流路331にはほとんど抵抗がないため、エアバッグ140を作動させるのに十分な大電流330をスクイブ290まで流すことが可能である。
また、第2のスイッチS05は、バックアップコンデンサ326の充電が完了すると、すなわちスタートアップ時間T1が経過すると、OFFになる。これによって急速充電用抵抗R3はエアバッグ作動回路から切り離され、第2の抵抗R2のみが残る。並列接続されていた第2の抵抗R2および急速充電用抵抗R3の合成抵抗より、第2の抵抗R2単独のほうが抵抗値は大きい。かかる第2の抵抗R2は、スタートアップ時間T1の経過後は、第1の抵抗R1とともに、スクイブ290に過電流が流れることを防止する過電流保護機能を担うことができる。
(バックアップコンデンサ326のテスト)
エアバッグ作動回路300は、バックアップコンデンサ326の電圧を測定する測定手段として、電圧計333をさらに備えている。制御部328が所定のテストモードにあるとき(電源ASIC302がエネルギーを消費する負荷になっている)、電圧計333は、第2のスイッチS05をONにして充電が完了したバックアップコンデンサ326が放電するときの電圧降下を測定する。また、それに続いて、第2のスイッチS05をOFFにして充電が完了したバックアップコンデンサ326が放電するときの電圧降下をも測定する。これら2通りの電圧降下の測定は、順不同である。通常このコンデンサのテストは、イグニッションをONする都度行われる。
上記の構成によれば、例えばエアバッグ作動回路300を組み付けたときに上記のテストモードを実行し、バックアップコンデンサ326の容量の正否をより精度よくテストできる。テストモードでは、バックアップコンデンサ326を、並列接続された第2の抵抗R2および急速充電用抵抗R3を介して充電した場合と、第2の抵抗R2のみを介して充電した場合とで比較する。これら2通りの方法で充電したバックアップコンデンサ326を放電させて、それぞれの電圧降下(電圧と時間との関係)を測定する。
図5は、図2の電圧計333がテストモードにおいて測定するバックアップコンデンサ326の電圧降下を例示する概略図である。2通りのライン337、339は、正しい容量を有するバックアップコンデンサ326を用いた場合の電圧降下を例示する。ライン337は、並列接続された第2の抵抗R2および急速充電用抵抗R3を介して充電した後に放電させた場合であり、ライン339は、第2の抵抗R2のみを介して充電した後に放電させた場合である。バックアップコンデンサ326の容量が正しければ、所定の適切な時間にわたって放電が行われ、電圧が降下する。
図5(a)の2通りのライン341、343は、誤った過小容量のコンデンサを用いた場合の放電時の電圧降下を例示する。ライン341は、並列接続された第2の抵抗R2および急速充電用抵抗R3を介して充電した後に放電させた場合であり、ライン343は、第2の抵抗R2のみを介して充電した後に放電させた場合である。コンデンサの容量が小さいため、放電時間が短く、短時間で電圧が降下する。この場合、大電流330を流すだけの容量が不足しているため、エアバッグ140を作動させられないおそれがある。
図5(b)の2通りのライン345、347は、誤った過大容量のコンデンサを用いた場合の放電時の電圧降下を例示する。ライン345は、並列接続された第2の抵抗R2および急速充電用抵抗R3を介して充電した後に放電させた場合であり、ライン347は、第2の抵抗R2のみを介して充電した後に放電させた場合である。コンデンサの容量が大きいため、放電時間が長く、エアバッグ140は作動させられるものの、スタートアップ時間が長くなり、並列接続された第2の抵抗R2および急速充電用抵抗R3を介して充電する効果が損なわれてしまう。
バックアップコンデンサ326の容量の正否は、単一の充電方法で充電されたコンデンサの放電時の電圧降下を観察すれば、可能ではある。すなわち、正しい電圧降下ライン337が予め分かっていれば、ライン341やライン345が出現した場合に、正しいライン337と放電時間が異なるため、誤った容量のコンデンサであることは判明する。しかし本実施形態のように、2通りの充電方法で充電されたコンデンサの放電時の電圧降下を比較したほうが、より精度よくバックアップコンデンサ326の容量の正否を判定できることは明らかである。
この2回充放電して確認する方式では、測定値(ライン339とライン337)および(ライン334とライン336)のそれぞれの差分を取り、その平均値を求める。この方式は、精度は向上するが、測定に長い時間を必要とする。第2の抵抗R2と急速充電用抵抗R3を介して急速充電しても、より短時間で行うコンデンサのチェックにおいては、不十分な場合がある。そこで、1回だけの放電で簡易にチェックを行うようにしてもよい。その場合、放電時の抵抗は、第2の抵抗R2のみ使用するようにしても良いし、第2の抵抗R2と急速充電用抵抗R3の両方の抵抗を用いるようにしてもよい。また、第2の抵抗R2や急速充電用抵抗R3を用いずに別の回路を設けて放電させるようにしてもよい。これらのことによりスタートアップ時間を、少なくとも数秒は短縮できる。
エアバッグ作動回路300は、並列に接続された測定対象の抵抗値を測定する抵抗測定回路320を備える。抵抗測定回路320は、スイッチを介して少なくともスクイブと並列に接続可能である。
エアバッグ作動回路300は、起爆用ASIC310内に、定電圧制御回路318および定電流源322を備えている。定電圧制御回路318および定電流源322は、抵抗測定回路320の上流および下流にそれぞれ直列に接続されている。定電圧制御回路318は、所定の電圧を超過する電圧が印加されるのを防止し、安定した電圧を供給する。定電流源322は所定の電流値を流す電流源であり、半導体スイッチS04を介して抵抗測定回路320に接続されている。
定電圧制御回路(定電圧源)318および定電流源322の組み合わせによって、事前に基準抵抗324の抵抗値を測定することにより、各機能が、正常に動作しているか否かを確認することができる。正常に動作していない場合は、スクイブ290に電流を流すことを中止することによりスクイブ290の不要な誤爆や劣化を防ぐことができ、冗長性を増すことが可能である。
また定電流源322は、電流を制限することにより、それ単体でも、スクイブ290の誤爆や劣化を防止する作用がある。
定電圧制御回路318および定電流源322の組み合わせによって、安定した電圧と電流をスクイブ290に供給し、スクイブ抵抗の測定精度を向上させる効果も得られる。また、外付けの基準抵抗324と組み合わせることで、更なる精度向上を達成することも可能である。
(起爆用ASICの異常チェック時の挙動)
エアバッグ作動回路300によれば、スクイブ290を起爆させる起爆用ASIC310の回路状態をチェックする場合など、特に大きな電流を必要としないときには、バイアス電圧供給用抵抗R1にのみ、弱いバイアス電流340を通電することが可能である。
つまり制御部328は、過電流保護抵抗R4につながる半導体スイッチA02をOFF、起爆用FET312、314を両方ともON、スイッチS02、S03をOFF(選択なし)にする。バイアス電流340は、次の経路を流れる。すなわち、電源ASIC302→第2の抵抗R2→バイアス電圧供給用抵抗R1→電流制限回路A03→起爆用FET312→スクイブ290→起爆用FET314→電流制限回路316→GNDという経路である。
以上のように、バイアス電流340は、エアバッグ140を作動させる場合に大電流を流すのと同じ経路でスクイブ290に流すことが可能である。これにより、ASIC310の回路状態をチェック可能である。
(スクイブの抵抗測定時の挙動)
エアバッグ作動回路300によれば、スクイブ290の抵抗を測定する場合に、過電流保護抵抗R4をバイアス電圧供給用抵抗に並列に接続する。スクイブ290の抵抗を測定する場合には、ASIC310の回路状態のチェック時のバイアス電流340より大きなスクイブチェック電流350をスクイブ290に流す必要がある。
そこで制御部328は、過電流保護抵抗R4につながる半導体スイッチA02をON、起爆用FET(Field Effect Transistor)312、314を両方ともOFF、スイッチS02、S03にそれぞれ端子315、319を選択させ、スイッチS04をONにする。スクイブチェック電流350は、次の経路を流れる。すなわち、電源ASIC302→第2の抵抗R2→並列に接続されたバイアス電圧供給用抵抗R1・過電流保護抵抗R4→電流制限回路A03→定電圧制御回路318→並列に接続されたスクイブ290・抵抗測定回路320→定電流源322→GNDという経路である。
このように、スクイブの抵抗測定時に、過電流保護抵抗R4(第1段)と、その下流の電流制限回路A03(第2段)という、直列接続された2段電流制限回路が構成される。2段電流制限回路によってスクイブ290保護の冗長性が増し、過電流防止措置の信頼性が向上する。
2段電流制限回路A03の下流では、スクイブ290に電流が流れ、スクイブ290に並列接続された抵抗測定回路320が、スクイブ290の抵抗を測定する。2段電流制限回路R4、A03によって、スクイブ290に流れる電流は、当初のスクイブチェック電流350から低電流化されている。したがって抵抗測定回路320は、スクイブ290の劣化が防止された状態でスクイブ290の抵抗を測定可能である。これによりスクイブ290の寿命を延長する効果も得られる。
エアバッグ作動回路300は、図2に例示したハーネス294およびクロックスプリング292を備えている。ハーネス294およびクロックスプリング292は、スクイブ290に直列に接続された抵抗素子と見なすことができる。スイッチS02、S03によって抵抗測定回路320に対してスクイブ290が並列に接続されると、ハーネス294およびクロックスプリング292は、スクイブ290とともに抵抗測定回路320に対して並列に接続される。
したがって、抵抗測定回路320が測定する抵抗値は、スクイブ290だけの抵抗値ではなく、ハーネス294およびクロックスプリング292といった周辺の抵抗素子も含めた抵抗値である。
本実施形態では運転席用エアバッグ装置100を用いているため、ハーネス294およびクロックスプリング292といった部品が抵抗素子となる。ただし本発明を例えば助手席用エアバッグ装置に適用した場合、助手席にはステアリングホイール110がないため、クロックスプリング292のような抵抗素子は存在しない。代わりにハーネスやコネクタなどの抵抗素子が存在することとなる。その他、各種エアバッグに本発明を適用した場合、抵抗素子となる部品は様々に異なる。
(大電流によるスクイブ誤爆の防止)
エアバッグ作動回路300によれば、2段電流制限回路の第1段である過電流保護抵抗R4には、常にバイアス電圧供給用抵抗R1が並列に接続されている。したがって、上述の、起爆用ASIC310の異常チェックを行う場合も、スクイブ290の抵抗を測定する場合も、スクイブ290の誤爆が防止される。例えば電源ASIC302がショートするなどして、大電流330に匹敵する電流がスクイブ290に流れようとしても、バイアス電圧供給用抵抗R1によって電流値が抑制されるからである。
(基準抵抗の抵抗測定時の挙動)
エアバッグ作動回路300は、所定の抵抗値を有する基準抵抗324をさらに備えている。基準抵抗324は、スイッチS02、S03によって、抵抗測定回路320に対して、スクイブ290と択一的に並列に接続可能である。
上記の構成によれば、スイッチS02、S03にそれぞれ端子317、321を選択させ、その他のスイッチの状態はスクイブ290の抵抗測定時と同様にすることで、抵抗測定回路320が基準抵抗324の抵抗を測定することも可能となる。すなわち、2段過電流保護回路R4、A03の下流では、基準抵抗324に電流を流し、基準抵抗324に並列接続された抵抗測定回路320が、基準抵抗324の抵抗を測定する。
そして、基準抵抗324の既知の抵抗値と、抵抗測定回路320が測定した基準抵抗324の測定抵抗値とに差がある場合には、その差が解消されるよう抵抗測定回路320を調整可能である。これにより、抵抗測定回路320がスクイブ290の抵抗を測定する際の測定精度を向上させることが可能である。
なお、抵抗測定回路320で差が解消されるよう調整せずに、抵抗測定回路320からデータを受け取った側で調整してもよい。
さらに、基準抵抗324の測定抵抗値と、既知の抵抗値との差が、通常考えられないほどの差になっていないかを、抵抗測定回路320または抵抗測定回路320からデータを受け取った側で診断することで、各回路A03、318、S02、324、320、S03、S04、322が、正常に動作しているか否かを確認することができる。正常に動作していない場合(回路に異常があると疑われる場合)は、スクイブ290に電流を流すことを中止することにより、スクイブ290の不要な誤爆や劣化を防ぐことができ、冗長性を増すことが可能である。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、以上に述べた実施形態は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
したがって、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明の実施形態を運転席用エアバッグを用いて説明したが、その他のあらゆる種類のエアバッグに本発明を適用してよい。例えば助手席用エアバッグ、サイドエアバッグ、インフレータブルカーテンエアバッグまたはニーエアバッグのいずれに本発明を適用してもよい。
本発明は、衝突事故等が発生した時にスクイブ(Squib)を発熱させて起爆剤に点火させエアバッグを膨張させる、エアバッグ作動回路に利用することができる。
100 …運転席用エアバッグ装置、110 …ステアリングホイール、140 …エアバッグ、150 …カバー、160 …エンブレム設置部、170 …テアライン、220 …ハウジング、230 …ディスク型インフレータ、250 …リテーナリング、260 …組付用ボルト、280 …組付用ナット、290 …スクイブ、292 …クロックスプリング、294 …ハーネス、300 …エアバッグ作動回路、302 …電源ASIC、310 …起爆用ASIC、312、314 …起爆用FET、318 …定電圧制御回路、320 …抵抗測定回路、322 …定電流源、324 …基準抵抗、326 …バックアップコンデンサ、327 …イグニッション、328 …制御部、329 …衝突センサ、330 …大電流、331 …電流路、333 …電圧計、340 …バイアス電流、350 …スクイブチェック電流、A02、S01、S04 …半導体スイッチ、A03 …電流制限回路、R1 …バイアス電圧供給用抵抗、R4 …過電流保護抵抗、S02、S03、S05 …スイッチ

Claims (3)

  1. 電源と接続された第1の抵抗と、
    第1の抵抗の下流に直列に接続されたスクイブと、
    第1のスイッチを介して第1の抵抗に並列に接続され、前記スクイブが発熱してエアバッグを膨張させるのに十分な大電流を該スクイブに流すことが可能な電流路と、
    前記電源と電流路との間に接続され、該電源からの電流を充電し、第1のスイッチがONになったときに放電して前記大電流を前記電流路に流すバックアップコンデンサと、
    前記電源とバックアップコンデンサとの間に接続された第2の抵抗と、
    第2のスイッチを介して第2の抵抗に並列に接続された第3の抵抗とを備え、
    第2のスイッチは、車両のイグニッションがONになった時点または該イグニッションON後のスクイブ電源ラインのチェックの直後からONになり、前記バックアップコンデンサの充電が完了するとOFFになるエアバッグ作動回路であって、
    当該エアバッグ作動回路は、
    前記バックアップコンデンサの電圧を測定する測定手段をさらに備え、
    前記測定手段は、所定のテストモードにおいて、
    第2のスイッチをONにして充電が完了した前記バックアップコンデンサが放電するときの電圧降下と、
    第2のスイッチをOFFにして充電が完了した前記バックアップコンデンサが放電するときの電圧降下とを測定することを特徴とするエアバッグ作動回路。
  2. 電源と接続された第1の抵抗と、
    第1の抵抗の下流に直列に接続されたスクイブと、
    第1のスイッチを介して第1の抵抗に並列に接続され、前記スクイブが発熱してエアバッグを膨張させるのに十分な大電流を該スクイブに流すことが可能な電流路と、
    前記電源と電流路との間に接続され、該電源からの電流を充電し、第1のスイッチがONになったときに放電して前記大電流を前記電流路に流すバックアップコンデンサと、
    前記電源とバックアップコンデンサとの間に接続された第2の抵抗と、
    第2のスイッチを介して第2の抵抗に並列に接続された第3の抵抗とを備え、
    第2のスイッチは、車両のイグニッションがONになった時点または該イグニッションON後のスクイブ電源ラインのチェックの直後からONになり、前記バックアップコンデンサの充電が完了するとOFFになるエアバッグ作動回路であって、
    当該エアバッグ作動回路は、
    前記バックアップコンデンサの電圧を測定する測定手段をさらに備え、
    前記測定手段は、所定のテストモードにおいて、
    第2のスイッチをONにして充電が完了した前記バックアップコンデンサが放電するときの電圧降下、または、第2のスイッチをOFFにして充電が完了した前記バックアップコンデンサが放電するときの電圧降下を測定することを特徴とするエアバッグ作動回路。
  3. 前記測定手段は、電圧計であることを特徴とする請求項1または2に記載のエアバッグ作動回路。
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