JP5566688B2 - プロピレンの共重合用触媒組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、2つの異なる内部供与体を含むチーグラーナッタ触媒の存在下でのプロピレンと一種以上のコモノマーとの共重合に関するものである。
ポリプロピレンは特性のバランスが良く、広く用いられるポリマーの一つになっている。今日の大部分のポリプロピレンはチーグラーナッタ触媒(すなわち遷移金属配位触媒、特にハロゲン化チタンを含む触媒)の存在下でプロピレンと任意成分の一種または複数のコモノマーとを重合して製造される。この触媒は内部電子供与体、一般にはフタレートをさらに含んでいる。この触媒で作られたポリプロピレンの特性は許容可能なバランスを有している。さらに、触媒組成物が種々に改良され、特に種々の内部電子供与体が開発、試験され、いくつかは市販されている。
下記文献には内部電子供与体としての1,3−ジエーテルが開示されている。
国際特許第WO 02/100904号公報
このジエーテルは一般式:R12C(CH2OR2)(ここで、RはC1〜C10のアルキル基、R1は少なくとも3つの炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の第一級アルキル基、R2はイソプロピルとは異なる第2級アルキル基またはシクロアルキル基)を有する。R1とR2の両者は任意成分としてヘテロ原子を含むことができる。1,3−ジエーテルを用いると分子量分布が狭く、アイソタクチック性が極めて高いポリプロピレンが得られる。
下記文献には内部電子供与体としての置換したスクシナートが開示されている。
国際特許第WO 00/63261号公報
内部電子供与体としてのスクシナートを含む重合触媒を用いて作られたポリプロピレンは広い分子量分布と高いアイソタクチック性とを有するという特徴がある。
内部電子供与体としてジエーテルまたはスクシナート化合物を用いて製造したプロピレンポリマーはフタレートの場合より改良された特性を有するが、依然としていくつかの欠点がある。
内部電子供与体としてジエーテル化合物を用いたチーグラーナッタ触媒の存在下で製造されたプロピレンポリマーは、許容可能な機械特性を有するが、分子量分布が狭いために加工性が限定されることがある。一方で、内部電子供与体としてスクシナート化合物を用いたチーグラーナッタ触媒の存在下で製造したプロピレンポリマーは、分子量分布が広いために加工性に問題が生じることがある。従って、製造においてさらなる努力が求められている。すなわち、プロピレンポリマーの特性の改良、特に、特性および/または加工性の改良が求められている。
本発明者は、特性と加工性との改良された組合せを有するプロピレンのポリマーの製造方法を見出した。
本発明の対象は、下記(a)〜(c):
(a)少なくとも一つのチタン−ハロゲン結合を有するチタン化合物と、内部電子供与体としてのジエーテル化合物とスクシナート化合物とのブレンド物とを含み、これらが活性型でハロゲン化マグネシウム上に支持されているチーグラー−ナッタ触媒と、
(b)有機アルミニウム化合物、好ましくはAl−トリアルキル、さらに好ましくはAl−トリエチルと、
(c)任意成分の外部電子供与体と
の存在下で、一つまたは複数の重合反応装置中で、プロピレンと一種以上のコモノマーとを一緒に重合する段階を含むプロピレンコポリマーの製造方法において、
スクシナート化合物に対するジエーテル化合物の重量比を0.01〜100、好ましくは0.02〜10、さらに好ましくは0.05〜5、最も好ましくは0.1〜1.5にすることを特徴とする方法にある。
本発明の他の対象は上記方法で製造されたプロピレンポリマーにある。
理解を容易にするために、内部電子供与体としてのジエーテル化合物を有するチーグラー−ナッタ触媒および内部電子供与体としてのスクシナート化合物を有するチーグラー−ナッタ触媒を、それぞれ簡単な「ジエーテル触媒」および「スクシナート触媒」という用語を用いて表すことにする。
本発明のプロピレンポリマーはプロピレンと、一種以上のコモノマー(エチレンまたはC4-C20アルファオレフィンにすることができる)とのコポリマーにすることができる。このコポリマーはランダムコポリマーまたはヘテロ相コポリマーにすることができる。
本発明のランダムコポリマーは少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.2重量%、さらに好ましくは少なくとも0.5重量%、さらにより好ましくは少なくとも1重量%、最も好ましくは少なくとも2重量%のコモノマーを含む。コモノマーはコポリマーの10重量%以下、好ましくは8重量%以下、最も好ましくは6重量%以下である。ランダムコポリマーはプロピレンとエチレンのコポリマーであるのが好ましい。
本発明のヘテロ相(heterophasic)のコポリマーは、上記定義のプロピレンのホモポリマーまたはランダムコポリマーから成るマトリックスと、ゴム相とを有する。ヘテロ相コポリマーはプロピレンとエチレンとのコポリマーであるのが好ましい。ヘテロ相コポリマーのエチレン含有率は4〜15重量%である。ヘテロ相コポリマーは5〜35重量%のゴム相を有する。ゴム相はエチレンプロピレンゴムであるのが好ましい。
プロピレンと任意成分の一種以上のコモノマーとの重合を一種以上のチーグラーナッタ触媒、有機アルミニウム化合物および任意成分の外部電子供与体の存在下で行なう。
チーグラー−ナッタ触媒は、少なくとも一つのチタン−ハロゲン結合を有するチタン化合物と、内部電子供与体とを含み、両者は活性な型でハロゲン化マグネシウム上に担持される。本発明のチーグラーナッタ触媒のブレンド物は、少なくとも一種のジエーテル触媒とスクシナート触媒とを含むことが必須である。チーグラーナッタ触媒のブレンド物はジエーテル触媒とスクシナート触媒とのブレンド物であるのが好ましい。チーグラー−ナッタ触媒自体は当業者に公知で、例えば無水のハロゲン化マグネシウムをアルコールと反応させ、チタンのハロゲン化物でチタン化し、内部電子供与体としてのそれぞれジエーテル化合物、スクシナート化合物を下記文献に記載の方法に従って反応させて得ることができる。
国際特許出願第WO 00/63261号公報 国際特許出願第WO 02/100904号公報
これらの触媒は2.5〜7.5重量%のチタンと、約10〜20重量%のマグネシウムと、約5〜30重量%の内部電子供与体とを含み、残りは塩素と溶剤から成る。
特に適したジエーテル化合物は下記式:
12C(CH2OR3)(CH2OR4
(ここで、R1およびR2はC1〜C18アルキル、C3〜C18シクロアルキルまたはC7〜C18アリール基で、互いに同じでも異なっていてもよく、R3およびR4はC1〜C4アルキル基で、互いに同じでも異なっていてもよい)
の1,3−ジエーテルであるか、位置2の炭素原子が2つまたは3つの不飽和基を有する5、6または7つの炭素原子から成る環構造または多環構造に属する1,3−ジエーテルである。
このタイプのエーテルは下記文献に記載されている。
欧州特許第EP361493号公報 欧州特許第EP728769号公報
このジエーテルの代表例は2−メチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロ−ペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソアミル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンである。
適したスクシナート化合物は下記式を有する:
Figure 0005566688
(ここで、R1〜R4は水素または直鎖または分岐したC1〜C20アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基で、異種原子を含んでいてもよく、互いに同一でも異なっていてもよく、同じ炭素原子に結合したR1〜R4が環を形成することができ、R5とR6は直鎖または分岐したアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基で、異種原子を含んでいてもよく、互いに同一でも異なっていてもよい)
有機アルミニウム化合物はAl−トリアルキルファミリのAl−アルキル化合物、例えばAl−トリエチル、Al−トリイソブチル、Al−トリ−n−ブチルまたは例えばOまたはN原子またはSO4またはSO3基と結合した少なくとも2つのAl原子を含む直鎖または環状のAl−アルキル化合物であるのが有利である。Al−トリエチルが好ましい。Al−トリアルキルはAlH3で表される水素化物の含有量がAl−トリアルキルに対して1.0重量%以下であるのが有利である。この水素化物の含有量は0.5重量%以下、最も好ましくは0.1重量%以下であるのが好ましい。
有機アルミニウム化合物はAl/Tiのモル比が1〜1000になるような量で用いる。この比の上限は500であるのが好ましい。上限は400であるのがさらに好ましい。下限は好ましくは10、さらに好ましくは20、最も好ましくは50である。
本発明に適した外部電子供与体にはシラン、エーテル、エステル、アミン、ケトンおよび複素環化合物が含まれる。上記の1,3−ジエーテルまたはシランを使用するのが好ましい。下記一般式のシランを使用するのが最も好ましい:
a pb qSi(ORc(4-p-q)
(ここで、Ra、RbおよびRcは炭化水素基、特に、アルキルまたはシクロアルキル基を表し、pおよびqは0〜3の数を表し、p+qの和は3以下であり、Ra、RbおよびRcはそれぞれ互いに独立して選択でき、互いに同一でも異なっていてもよい)
このようなシランの具体例は(tert-ブチル)2Si(OCH32、(シクロヘキシル)(メチル)Si(OCH32(「Cドナー」という)、(フェニル)2Si(OCH32および(シクロペンチル)2Si(OCH32(「Dドナー」という)である。
本発明のプロピレンコポリマーの製造では、外部電子供与体(存在する場合)に対する有機アルミニウム化合物のモル比(「Al/ED」)は1〜200であるのが有利である。Al/ED比の上限は好ましくは150以下、さらに好ましくは100以下、さらにより好ましくは80以下、最も好ましくは65以下である。Al/ED比の下限は好ましくは少なくとも3、さらに好ましくは少なくとも5である。
驚くべきことに、本発明者は内部電子供与体としてのジエーテル化合物とスクシナート化合物とのブレンド物を含むチーグラーナッタ触媒を用いると、特性および/または加工性が改良されたプロピレンポリマーが得られるということを見出した。特に、この触媒を使用すると特性および/または加工性が改良されたプロピレンと一種以上のコモノマーとのコポリマーが得られる。
本発明の内部電子供与体ブレンド物は、スクシナート化合物に対するジエーテル化合物の重量比が0.01〜100である。重量比の上限は好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下、さらにより好ましくは3以下、最も好ましくは1.5以下である。重量比の下限は好ましくは少なくとも0.02、さらに好ましくは少なくとも0.05、さらにより好ましくは少なくとも0.1、最も好ましくは少なくとも0.2である。
ジエチル−2,3−ジイソプロピルスクシナートと9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンの両者を含むチーグラーナッタ触媒をプロピレンの単重合テ使用することは特許文献3(国際特許出願第WO 00/63261号公報)に開示されている。しかし、特許文献3にはキシレン不溶分の含有率以外、得られたプロピレンホモポリマーの特性に関する記載はない。また、特許文献3にはプロピレンと一種以上のコモノマーとの共重合での上記触媒の使用に関する記載はない。
プロピレンと一種以上のコモノマーの重合は公知の方法に従って実行できる。重合は例えば反応媒体としての液体プロピレン中で実行できる。また、希釈剤、例えば不活性炭化水素中(スラリー重合)または気相で実行することもできる。ヘテロ相のプロピレンコポリマーの製造では、重合は反応媒体として液体プロピレンを用いて直列に連結された一つまたは複数の重合反応装置で、次いで、直列に連結された一つまたは複数の気相反応装置で、例えばスフェリポル(Spheripol)技術を利用したプロピレンポリマー製造ラインで実施するのが好ましい。(a)一つまたは複数のループ反応装置と(b)一つまたは複数の気相反応装置で順番にヘテロ相プロピレンコポリマーを製造するのが好ましい。最も好ましいのは一つの気相反応装置のみを使用することである。
本発明のプロピレンのランダムコポリマーは、液体プロピレン中で20℃〜100℃の温度で重合するのが好ましい。温度は60℃〜80℃の範囲が好ましい。圧力は大気圧かそれより高い圧力にすることができ、圧力は25〜50バールにするのが好ましい。ポリマー鎖の分子量、従って、プロピレンポリマーの溶融流動性は水素を加えることによって制御できる。
本発明方法で製造したプロピレンポリマーの特徴は広い分子量分布と高いアイソタクチック指数にある。すなわち、本発明を用いることで単一の重合反応装置でビモダル(双峰)のプロピレンポリマーが製造できる。特に、メルトフローインデックスが高い(粘度が低い)プロピレンポリマーは高分子量画分のテーリングに起因して溶融強度が高く、従って、加工性、例えば押出時の加工性が良くなる。本発明のビモダルなプロピレンポリマー(すなわち分子量分布がビモダル(双峰)なプロピレンポリマー)は十分に異なった2つのプロピレンポリマー画分を有している。これらのポリマー画分の差は適切な分析法、例えばゲル透過クロマトグラフィ(GPC)によって再現性よく見られる。
本発明方法で製造したヘテロ相プロピレンコポリマーは広いまたはビモダルな分子量分布を有するホモまたはランダムコポリマーのマトリックス(場合によってはさらに、挿入されたコモノマーのビモダル分布)と、広いまたはビモダルな分子量分布と挿入されたコモノマーのビモダル分布を有するゴム相とを有する。ゴム相は例えばエチレンプロピレンゴム(EPR)にすることができる。重合反応装置への供給流中の体積比Rが一定の場合、すなわち、R=C2(体積%)/(C2(体積%)+C3(体積%))が0.42の場合、内部電子供与体としてのジエーテルから生じるEPRは42.7重量%のエチレンを有し、内部電子供与体としてのスクシナートから生じるEPRは47.1重量%のエチレンを有する。理論に縛られるものではないが、これはスクシナート触媒のエチレンに対する反応性がジエーテル触媒に比べて高いためと考えられる。その結果、スクシナート触媒を用いることで重合反応器内のエチレン濃度が同じ場合、より高レベルのエチレンを取りこむことができ、得られたプロピレンポリマーはポリマー鎖中にビモダルなエチレン分布を有するといえる。この挙動は既存の重合プラントでより広範囲な製品を製造できるという別の利点になる。特に、従来の方法で内部電子供与体としてスクシナート化合物を単独で用いて剛性/衝撃バランスの良いヘテロ相コポリマーを作るためのEPR相の製造で、本発明を用いれば2つの気相反応装置を用いなくてすむ。
本発明で作られたプロピレンポリマーは改良された流動特性、低収縮性および加工性を有する。
上記プロピレンポリマーは添加剤、例えば抗酸化剤、光安定剤、酸スカベンジャ、滑剤、帯電防止剤、核剤/清澄剤、着色剤を含むことができる。この種の添加剤の概要は下記文献に記載されている。
Plastics Additives Handbook、ed. H. Zweifel、第5版、2001、Hanser Publishers
本発明のプロピレンポリマーは押出用途および射出成形用途、特にフィルム押出、繊維押出、シート、射出成形、ブロー成形、押出延伸ブロー成形、熱成形などに用いることができる。

Claims (7)

  1. 下記(a)〜(c):
    (a)少なくとも一つのチタン−ハロゲン結合を有するチタン化合物と、内部電子供与体としてのジエーテル化合物とスクシナート化合物とのブレンド物とを含み、これらが活性型でハロゲン化マグネシウム上に支持されているチーグラー−ナッタ触媒と、
    (b)有機アルミニウム化合物と
    (c)任意成分の外部電子供与体と
    の存在下で、一つまたは複数の重合反応装置中で、プロピレンと一種以上のコモノマーとを一緒に重合する段階を含むプロピレンコポリマーの製造方法において、
    スクシナート化合物に対するジエーテル化合物の重量比を0.01〜100にし、上記プロピレンポリマーがヘテロ相のプロピレンコポリマーであることを特徴とする方法。
  2. スクシナート化合物に対するジエーテル化合物の重量比を0.02〜10にする請求項1に記載の方法。
  3. スクシナート化合物に対するジエーテル化合物の重量比を0.05〜5にする請求項1に記載の方法。
  4. スクシナート化合物に対するジエーテル化合物の重量比を0.1〜1.5にする請求項1に記載の方法。
  5. プロピレンコポリマーがビモダル(双峰)なプロピレンポリマーである請求項1に記載の方法。
  6. プロピレンコポリマーがビモダルなエチレン分布を有する請求項5に記載の方法。
  7. ヘテロ相のプロピレンコポリマーを下記(a)と(b):
    (a)一つまたは複数のループ反応装置、
    (b)一つの気相反応装置、
    で順番に製造する請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
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